(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態による動作判定装置及び動作判定方法について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、この発明の一実施形態による動作判定装置が車両に設置された状態を示す概要図である。
図1(a)は、この発明の一実施形態による動作判定装置が車両に設置された状態を車両後部の正面から見た図を示している。
図1(b)は、車両後部の側面から見た図を示している。
図1に示される動作判定装置は、車両1のリアゲート等の開閉体の周辺に取付けられた2つのセンサから出力される検出値に基づいて、所定のキック動作が行われたか否かを判定する。動作判定装置が、キック動作が行われたと判定することにより、利用者2は機械的な鍵を使わずに、かつ電子キーを所持さえしていれば別途電子キーの操作を行うことなく、開閉体の開錠をさせることができる。なお、所定のキック動作については後で詳しく説明する。
【0022】
上側センサ10と下側センサ12は、互いに離間して、車両における相対的な上下関係を有する位置にそれぞれ取付けられている。
図1に示す例では、上側センサ10は、車両1の後部車両にあるリアバンパの上側の後部車両正面に取付けられ、下側センサ12は、リアバンパの下側の後部車両底面に取付けられている。
上側センサ10と下側センサ12の両センサは、相対的に上下の位置関係になるように配置されていればよく、車両側面のバンパにおいて相対的な上下関係をもって配置されてもよく、車両後部のリアバンパにおいて相対的な上下関係をもって配置されていてもよい。
リアバンパに配置される場合、上側センサ10と下側センサ12は、リアバンパの形状に応じて配置される。例えば、リアバンパが車両側面から見て、斜め下方向あるいは斜め上方向に傾斜して曲面状に形成されている場合、上側センサ10と下側センサ12は上記曲面に沿ってリアバンパに配置することができる。
【0023】
上側センサ10と下側センサ12は、物体の接近を検出する。上側センサ10と下側センサ12は、例えば静電容量検出用の電極を有する静電容量センサであり、センサ電極と付近にある物体との間の静電容量の変化を出力する。こうすることで、上側センサ10、および下側センサ12は、それぞれのセンサに接近する物体の距離に応じた検出値を出力することができる。
静電容量検出用の電極は、同軸ケーブル、或いは金属プレートで構成される。同軸ケーブルで電極を構成する場合には、金属プレートで構成する場合と比較してコストを抑えることができる。
【0024】
図1に示すように、上側センサ10が物体の接近を検出するセンサ検出領域は、上側センサ10を中心とした領域H1である。また、下側センサ12は、が物体の接近を検出するセンサ検出領域は、上側センサ10を中心とした領域H3である。領域H1と領域H3とは、重複する領域である領域H2を有していてもよいし、重複する領域がなくてもよい。本実施形態の動作判定装置は、複数のセンサのセンサ検出領域が重複する領域を有している場合でも、それぞれのセンサからの検出値に基づいてキック動作判定を行うことができ、それぞれのセンサ検出領域を区分けするシールドを設ける必要がないため、コストを抑えることができる。
【0025】
利用者2は、車両1のリアゲートを開けようとする場合、電子キーを所持した状態でリアゲートの周辺、例えば後部車両中央付近で、キック動作を行う。ここで、キック動作は、例えば利用者2の脚部がAからBの状態となった後にまたAに戻る動作である。
利用者2が上記キック動作を行った場合、AからBへの動作により、上側センサ10および下側センサ12によって、物体の接近に応じた検出値が出力される。また、BからAへの動作により、上側センサ10および下側センサ12によって、物体の離反に応じた検出値が出力される。
【0026】
動作判定装置は、上側センサ10と下側センサ12とによる検出値に基づいて、物体の接近および離反を認識し、かつその態様が、キック動作に想定される態様であった場合に、キック動作が行われたものと判定する。
【0027】
ここでは、
図2を用いて、本発明の一実施形態による動作判定装置が判定処理を行うために用いる処理ブロックを説明する。
図2は本発明の一実施形態による動作判定装置のブロック図である。
図2に示すように、動作判定装置は上側センサ10と、下側センサ12と、コントロールユニット22と、を含む。また、コントロールユニット22は、制御部23と記憶部24とを含む。
動作判定装置は、電源部30から電源の供給を受けて動作判定を行う。動作判定装置は、動作判定の結果、キック動作が行われたと判定する場合に、上位ECU(Electronic Control Unit)20に、その旨の通知を行う。
【0028】
上側センサ10、および下側センサ12は、それぞれセンサ電極を有し、センサ電極と接近してきた物体との間の静電容量の変化を出力する。
上側センサ10は、例えば、車両1のリアバンパの上面に設置され、検出領域内の物体の接近を検出する。下側センサ12は、例えば、車両1のリアバンパの下面に設置され、上側センサ10同様に略水平方向からの物体の接近を検出する。
すなわち、上側センサ10は、自身のセンサ電極の位置と同等の高さにある利用者2のひざ下の脚部の接近を検出することができる。また、下側センサ12は自身のセンサ電極の位置と同等の高さにある利用者2の足首より先の足部の接近を検出することができる。
また、上側センサ10、および下側センサ12は検出値を制御部23に出力する。
【0029】
上位ECU20は、コントロールユニット22と接続され、コントロールユニット22からの通知に基づいて、車両1のリアゲート等の開閉体の施錠開錠および開閉動作を制御する。
上位ECU20は、コントロールユニット22から、キック動作が行われたと判定した旨(キック判定OK)の通知があった場合、電子キーの認証を行う。上位ECU20は、電子キーの認証が正しく行われた場合に、図示しない車両1の開閉体の開閉制御部に開錠命令信号等を送信し、開閉体の施錠開錠および開閉動作を制御する。
または、上位ECU20は、電子キーの認証を行い、電子キーの認証が正しく行われている状態で、コントロールユニット22からキック判定OKの通知を受信があった場合、開閉体の施錠等の動作を制御する。なお、ここでの電子キーの認証とは、その電子キーが車両1の正当な電子キーであることを確認することをいう。
【0030】
コントロールユニット22は、上位ECU20と接続され、キック判定OKの通知を行う。
コントロールユニット22は、制御部23と記憶部24とを含み、これら制御部23と記憶部24とを用いてキック動作が行われたか否かを判定する。
【0031】
制御部23は、上側センサ10、および下側センサ12と接続され、両センサからセンサ検出値を取得する。制御部23は、取得したセンサ検出値に基づいて、キック動作が行われたか否かを判定する。制御部23は、係る判定をするために、検出値を継続して取得する。キック動作が行われたか否かを判定する処理の詳細については後で説明する。
また、制御部23は、記憶部24と接続され、判定に必要なしきい値等のパラメータを記憶部24から読み出し、また判定の過程で用いる検出値やパラメータ等を記憶部24に書き込む。
【0032】
電源部30は、例えば車両1のバッテリであり、コントロールユニット22の制御回路等に電源を供給する。
【0033】
以下、キック動作が行われたか否かを判定するための処理について説明する。
図3は、キック動作の判定で行う処理の一例を示すフローチャートである。
図4は、キック動作の判定で行う処理で、
図3とは異なる処理の一例を示すフローチャートである。
【0034】
制御部23は、キック動作判定するために、一次判定、および二次判定を行う。制御部23は、一次判定を行った結果、キック動作が行われた可能性があると判定する場合に、二次判定を行う。そして、制御部23は、二次判定の結果に基づいて、キック動作が行われたか否かを判定する。
【0035】
図3の例では、まず、制御部23は、上側センサ10と下側センサ12それぞれのセンサから、一定時間(例えば1秒間)、センサからの検出値を取得し、記憶部24に書き込んで記憶させる(ステップS1)。
【0036】
制御部23は、上側センサ10と下側センサ12それぞれのセンサの検出値を記憶部24から参照し、一次判定を行う(ステップS2)。
【0037】
制御部23は、上側センサ10と下側センサ12それぞれのセンサの検出値について一次判定を行うが、一次判定の処理の内容については同じであるため、以下の一次判定の説明では、上側センサ10についてのみ説明し、下側センサ12については説明を省略する。
制御部23は、上側センサ10のセンサの検出値について所定の条件を満たす場合に、一次判定においてキック動作が行われた可能性があると判定する。
所定の条件とは、例えば、第1の条件から第3の条件を含む。
第1の条件は、上側センサ10の検出値が時間経過とともに物体の接近と離反を示す所定の態様を示すことである。なお、所定の態様については後で詳しく説明する。
第2の条件は、その物体の接近と離反を示す所定の態様において、その接近から離反までに要した時間が所定の時間内に行われていることである。
第3の条件は、その物体の接近と離反の過程において、その物体が上側センサ10に最も接近した際のセンサ検出値が、所定の上限値を超えない(すなわち、接近しすぎない)ことである。
動作判定装置は、これらの条件のうち、第1条件と第2条件の両方の条件を満たす場合に、一次判定OKとする。動作判定装置は、さらに精度よく判定を行う場合には、第1条件と第2条件にさらに第3条件加え、これらすべての条件を満たす場合に、一次判定OKとする。
【0038】
制御部23は、一次判定においてキック動作が行われた可能性があると判定する場合に、二次判定を行う(ステップS3)。
制御部23は、上側センサ10、および下側センサ12のそれぞれの検出値の最大値の比が所定の範囲内にある場合に、二次判定においてキック動作が行われたと判定する。
【0039】
制御部23は、二次判定の結果に基づいて、所定のキック動作が行われたと判定する(ステップS4)。
制御部23は、上位ECUに所定のキック動作が行われたと判定する旨の通知を行う(ステップS5)。
【0040】
一方、制御部23は、一次判定についてキック動作が行われた可能性がないと判定する場合、または二次判定についてキック動作が行われていない、と判定とする場合は、所定のキック動作が行われていないと判定する(ステップS8)。
この場合、ステップS1に戻り、次の一定時間分の上側センサ10と下側センサ12それぞれのセンサの検出値について、一次判定を行う。
【0041】
また、
図4の例に示すように、制御部23は、二次判定について上側センサ10と下側センサ12それぞれのセンサの検出値の最大値の比の代わりに、それぞれのセンサの検出値を加算した面積値の比を用いて判定を行ってもよい。この面積値については後で詳しく説明する。
図4では、ステップS11、およびS12において、それぞれ
図3のステップS1、およびS2と同じ処理を行う。
【0042】
制御部23は、一次判定についてキック動作が行われた可能性があると判定する場合に、二次判定を行う(ステップS13)。
図4の二次判定は、上側センサ10、および下側センサ12のそれぞれの検出値が所定のしきい値を超えた分を、物体の接近と離反を示す所定の態様をとる間の時間で加算した値(所定時間における検出値の面積値)を取得し、下側センサ12の検出値の面積値に対する、上側センサ10の検出値の面積値が所定の範囲内か否かを判定する処理である。
【0043】
図4では、ステップS14、S15、およびS18において、それぞれ
図3のステップS4、S5、およびS8と同じ処理を行う。
【0044】
以下、一次判定および二次判定の内容を順に説明する。
【0045】
<一次判定>
ここでは、
図5を用いて一次判定について説明する。
図5は、一次判定を説明するための図である。
図5において、横軸は時間を示し、縦軸は上側センサ10の検出値を示している。
図5の例では、物体が上側センサ10電極の位置に近づくほど、検出値は大きくなる。すなわち、
図5では、点X1より点Y1の方が接近していること、点Zで最も接近していること、を示している。また、
図5では、点Y2より点X2の方が上側センサ10から物体が離反していることを示している。
【0046】
制御部23は、一次判定においてキック動作が行われた可能性があると判定する第1の条件として、検出値が物体の接近と離反を示す所定の態様であるか否かを判定する。
制御部23は、所定の態様であるか否かを判定するために、例えば、経過時間とその経過時間に伴う検出値の変化の過程を、5つのステージに区分する。
制御部23が用いる5つのステージは、例えば、
図5の横軸の時間軸の下に記載されている、(1)Normal、(2)Open、(3)In、(4)Close、および(5)OK、のそれぞれのステージである。
【0047】
(1)Normalステージは、通常の状態であって、上側センサ10に物体が接近していない状態を示すステージである。
(2)Openステージは、Normalステージから、上側センサ10に物体が接近してくる状態を示すステージである。
(3)Inステージは、Openステージから、上側センサ10に物体がさらに接近し、最も接近し、そして最も接近した状況から物体が離反していく状態を示すステージである。
(4)Closeステージは、Inステージから、物体がさらに離反していく状態を示すステージである。
(5)OKステージは、Closeステージよりも上側センサ10に物体がさらに離反し、上側センサ10に物体が接近していない通常の状態に戻った状態を示すステージである。
【0048】
また、制御部23は、上側センサ10の検出値に対し、複数のしきい値を設定する。
制御部23が設定するしきい値は、例えば
図5の縦軸に記載されている、STARTしきい値、およびMINしきい値である。
【0049】
STARTしきい値は、NormalステージからOpenステージへ移行する境界点(
図5における点X1)を示す値である。制御部23は、Normalステージにおいて、検出値が、STARTしきい値以上となった際に、Openステージに移行する。
MINしきい値は、OpenステージからInステージへ移行する境界点(
図5における点Y1)を示す値である。制御部23は、Openステージにおいて、検出値が、MINしきい値以上となった際に、Inステージに移行する。
また、MINしきい値は、InステージからCloseステージへ移行する境界点(
図5における点Y2)を示す値である。制御部23は、Inステージにおいて、検出値が、MINしきい値未満となった際に、Closeステージに移行する。
また、STARTしきい値は、CloseステージからOKステージへ移行する境界点(
図5における点X2)を示す値である。制御部23は、Closeステージにおいて、検出値が、STARTしきい値未満となった際に、OKステージに移行する。
【0050】
さらに、制御部23は、一次判定においてキック動作が行われた可能性があると判定する第2の条件として、上側センサ10の検出値が物体の接近と離反を示す間の時間が、所定の判定時間内(
図5において「判定期間」と記載)であるか否かを判定する。
【0051】
制御部23は、接近と離反を示す間の時間が、所定の判定時間内であるかを判定するために、例えば、検出値がOpenステージに移行した際にタイマーを始動させる。そして、制御部23は、タイマーを始動させてから、予め設定した判定時間が経過するまでの間にOKステージに移行しない場合、一次判定において、キック動作が行われた可能性がない旨の判定を行う。
【0052】
制御部23は、一次判定においてキック動作が行われた可能性があると判定する第3の条件として、検出値の最大値が所定の値を超えていないか否かを判定する。
【0053】
制御部23が用いる、最大値が所定の値を超えていないかを判定するためのしきい値は、例えば
図5の縦軸に記載されている、MAXしきい値である。
制御部23は、検出値の最大値(
図5における点Z)がMAXしきい値以上である場合、一次判定において、キック動作が行われた可能性がない旨の判定を行う。
【0054】
ここでは、制御部23が行う一次判定の処理の流れについて説明する。
【0055】
まず、前提として、制御部23は、一次判定を行うために用いる変数を予め記憶部24に書き込んで記憶する。
一次判定を行うために用いる変数は、STARTしきい値、MINしきい値、およびMAXしきい値のそれぞれのしきい値、管理フラグStgFlg_0、StgFlg_1、および判定時間TLmtである。
管理フラグStgFlg_0、StgFlg_1は、上側センサ10と下側センサ12それぞれの検出値のステージを管理するための変数で、例えば、0(ゼロ)のときNormalステージ、1のときOpenステージ、2のときInステージ、3のときCloseステージ、4のときOKステージをそれぞれ意味するものとする。
【0056】
また、制御部23が一次判定の処理に用いる変数の添え字の「_0」および「_1」の各々は、それぞれ上側センサ10、下側センサ12であることを示している。また、一次判定の処理においては、上側センサ10および下側センサ12について同じ処理を行うことから、以下の説明では、上側センサ10の一次判定についてのみ説明し、下側センサ12については省略する。
【0057】
制御部23は、一定時間(例えば、1秒)分の上側センサ10の検出値を取得し、検出値とその検出値が検出された時間とを記憶部24に記憶させる。
制御部23は、記憶部24に記憶させた検出値について、検出された順に検出値とSTARTしきい値とを比較する。
【0058】
制御部23は、上側センサ10の検出値がSTARTしきい値以上となった際、StgFlg_0を1とし、NormalステージからOpenステージへ移行させる。
【0059】
制御部23は、StgFlg_0が1(Openステージ)の状態で、上側センサ10の検出値がMINしきい値以上となった際、StgFlg_0を2とし、OpenステージからInステージへ移行させる。
【0060】
制御部23は、StgFlg_0が2(Inステージ)の状態で、上側センサ10の検出値がMINしきい値未満となった際、StgFlg_0を3として、Closeステージへ移行させる。
【0061】
制御部23は、StgFlg_0が3(Closeステージ)の状態で、上側センサ10の検出値がSTARTしきい値未満となった際、StgFlg_0を4として、OKステージへ移行する。
【0062】
また、制御部23は、StgFlg_0を1(Openステージ)とした際に、その検出値が検出された時刻Tsからタイマーを始動させる。また、制御部23は、タイマー始動後、判定時間TLmtを経過した際に、OKステージに移行していない場合、一次判定において、キック動作が行われた可能性がない旨の判定を行う。
図5の例では、Openステージ開始時刻Tsから、タイマーを始動させ、タイマー始動時刻から判定時間TLmtを経過後に、OKステージに移行していなかった場合、一次判定において、キック動作が行われた可能性がない旨の判定を行う。
【0063】
さらに、制御部23は、StgFlg_0が2(Inステージ)の状態で、上側センサ10の検出値がMAXしきい値以上となった際、一次判定についてキック動作が行われた可能性はない旨を判定する。
【0064】
なお、制御部23は、一次判定の過程においてステージの移行が、キック動作が行われたことを想定した態様から外れるパターンとなる場合、例えばOpenステージの状態で再びSTARTしきい値を下回る等の場合は、一次判定についてキック動作が行われた可能性はない旨を判定する。
【0065】
このように、制御部23は、一次判定において、センサの検出値を所定の時間分まとめて取得し、STARTしきい値、またはMINしきい値と比較して上記5つのステージに区分する。
そして、制御部23は、両センサの経過時間に伴う検出値の変化の過程が、Normalステージ、Openステージ、Inステージ、Closeステージ、およびOKステージ、の順にそれぞれ移行し、かつ、Openステージに移行してから、OKステージに移行するまでの時間が、所定の判定時間内である場合に、一次判定についてキック動作が行われた可能性があると判定する。この場合において、制御部23は、さらに、Inステージにおいて物体が最も接近した地点の検出値がMAXしきい値を超えなかった場合に、一次判定についてキック動作が行われた可能性があると判定してもよい。
【0066】
<二次判定>
ここでは、
図6を用いて、二次判定について説明する。
図6は、二次判定を説明するための図である。
図6(a)のグラフは、上側センサ10の検出値(
図6では「センサ値(上面)」と記載)の変化の一例を示すグラフである。
図6(b)のグラフは、下側センサ12の検出値(
図6では「センサ値(下面)」と記載)の変化の一例を示すグラフである。
図6(a)および
図6(b)のそれぞれのグラフの横軸は時間を示し、縦軸は検出値を示している。
【0067】
図6(a)は、
図5同様に、時間の経過とともに、上側センサ10に物体が接近し、やがて離反する様子を示している。その接近および離反のパターンが点Y1_0と点Y2_0との間でInステージとなり、また、点Z_0において物体が上側センサ10に最も接近していることを示している。
また、
図6(b)は、
図5同様に、時間の経過とともに、物体が下側センサ12に接近し、やがて離反する様子を示している。その接近および離反のパターンが点Y1_1と点Y2_1との間でInステージとなり、また、点Z_1において物体が下側センサ12に最も接近していることを示している。
【0068】
制御部23は、一次判定についてキック動作が行われた可能性があると判定する場合、二次判定を行う。
制御部23は、二次判定を行うために、上側センサ10の検出値の最大値Max_0(
図6(a)では、「上側センサMax値」と記載)、および下側センサ12の検出値の最大値Max_1(
図6(b)では、「下側センサMax値」と記載)を取得する。
【0069】
そして、制御部23は、最大値Max_1に対する最大値Max_0の比X(=Max_0/Max_1)が所定の範囲内である場合に二次判定について判定OKとする。
ここで、比Xの所定の範囲とは、予め定められた所定の範囲であり、例えば、上側センサ10と下側センサ12のセンサ性能が同等である場合、0.7≦X≦1.3、あるいは、0.5≦X≦1.5等である。
【0070】
上記比Xの範囲は、それぞれのセンサの性能、感度、および形状等によって決定される。例えば、上側センサ10と下側センサ12が同じ性能を有するセンサである場合であっても、それぞれの取り付け位置の関係によって、上記比Xの範囲は異なる場合があり得る。
【0071】
また、一概にキック動作と言っても、実際にはキック動作を行う人により、様々な動作が行われる。
例えば、リアバンパにかなり近づいてからキック動作を行うと、足の甲の部分が下側センサ12に最も接近した際に検出される値は、足のすねの部分が上側センサ10に最も接近した際に検出される値に対して小さくなり、上記比Xは1より大きくなる。他方、リアバンパにそれほど近づいていない時点で、キック動作を行うと、足の甲の部分が下側センサ12に最も接近した際に検出される値は、足のすねの部分が上側センサ10に最も接近した際に検出される値に対して大きくなり、上記比Xは1より小さくなる。
このように、上記比Xが一定の範囲内である場合に二次判定について判定OKとすることで、キック動作を行う際の足の出し方によって誤判定することなく、精度よくキック動作判定を行うことができる。
【0072】
また、制御部23は、二次判定について、それぞれの検出値の最大値の比を用いる代わりに、Inステージの面積値を用いて判定を行ってもよい。
上側センサ10のInステージの面積値Sr_0は、例えば、
図6(a)において、斜線で示されている部分である。また、下側センサ12のInステージの面積値Sr_1は、例えば、
図6(b)において、斜線で示されている部分である。
【0073】
そして、制御部23は、面積値Sr_0に対する面積値Sr_1の比Y(=Sr_1/Sr_0)が所定の範囲内、例えば、0.5≦Y≦1.5、である場合に二次判定について判定OKとする。
【0074】
ここで、制御部23が行う二次判定で用いる最大値および面積値の求め方について説明する。
【0075】
まず、最大値の求め方について説明する。
制御部23は、StgFlg_0を2(Inステージ)としたら、その際の上側センサ10の検出値を変数Tmp_0に代入する。
制御部23は、StgFlg_0が2(Inステージ)である間、上側センサ10の検出値と変数Tmp_0とを比較し、検出値が変数Tmp_0以上である場合、その検出値を変数Tmp_0に代入する。
制御部23は、StgFlg_0が3(Closeステージ)に移行した際の変数Tmp_0の値を最大値Max_0とする。
【0076】
は、下側センサ12についても、上側センサ10の場合と同様に、最大値Max_1を求める。
【0077】
次に、面積値の求め方について説明する。
制御部23は、StgFlg_0を2(Inステージ)としたら、その際の上側センサ10の検出値がMINしきい値を超えた分を変数Tmp_0に代入する。
制御部23は、StgFlg_0が2(Inステージ)である間、上側センサ10の検出値がMINしきい値を超えた分を、変数Tmp_0に加算する。
制御部23は、StgFlg_0が3(Closeステージ)に移行した際の変数Tmp_0の値を面積値Sr_0とする。
【0078】
制御部23は、下側センサ12についても、上側センサ10の場合と同様に、面積値Sr_1を求める。
【0079】
さらに、制御部23は、二次判定において、上側センサ10および下側センサ12のそれぞれの検出値の時間変化の関係が所定の関係にあるか否かを判定の条件に加えてもよい。
【0080】
制御部23は、例えば、上側センサ10の検出値がInステージである間に、下側センサ12の検出値がInステージである場合に、二次判定について判定OKとしてもよい。
【0081】
具体的な処理としては、制御部23は、上側センサ10の検出値のInステージ開始時刻Ts_0、および終了時刻Te_0に加えて、下側センサ12の検出値のInステージ開始時刻Ts_1、および終了時刻Te_1を、記憶部24に記憶させる。そして、制御部23は、下側センサ12のInステージ開始時刻Ts_1が、上側センサ10のInステージ開始時刻Ts_0以前である場合、または、下側センサ12のInステージ終了時刻Te_1が、上側センサ10のInステージ終了時刻Te_0以後である場合、二次判定について判定NGとする。
【0082】
このように、制御部23は、二次判定において、センサの検出値の最大値を上側センサ10および下側センサ12のそれぞれについて取得し、その最大値の比が所定の範囲内にある場合に、二次判定について、判定OKとする。
または、制御部23は、二次判定において、センサの検出値のMINしきい値を超える分について加算した面積値を上側センサ10および下側センサ12のそれぞれについて取得し、その面積値の比が所定の範囲内にある場合に、二次判定について、判定OKとする。
さらに、制御部23は、二次判定において、上側センサ10の検出値がInステージにある間の時間内に、下側センサ12の検出値の最大値が検出されている場合に、二次判定について、判定OKとしてもよい。
【0083】
以上説明した通り、本発明に係る実施形態の動作判定装置は、一次判定により物体のセンサへの接近と離反のパターンが所定のパターンであって、かつそのパターンが所定の時間の範囲内で行われている場合に、キック動作が行われた可能性があると判定する。動作判定装置は、それぞれパターンにおいて、さらに、センサからの検出値の最大値が所定の値を超えることがない場合にキック動作が行われた可能性があると判定することもできる。
そして、一次判定においてキック動作が行われた可能性があると判定された場合に、さらに二次判定が行われ、上側センサ10と下側センサ12のそれぞれの検出値の最大値の比が所定の範囲内である場合に、二次判定について判定OKと判定される。
こうすることで、本発明に係る実施形態の動作判定装置は、キック動作とキック動作とは異なる動作とを区別し、誤判定を防ぐことができる。
【0084】
また、本実施形態の動作判定装置は、多数のセンサを設置することなく、上側センサ10と下側センサ12の2つのセンサのみを用いて動作判定を行うことができるため、部品点数の増加を防ぐことができる。
【0085】
さらに、本実施形態の動作判定装置は、上側センサ10と下側センサ12とのセンサ検出領域が重複しているか否かに関わらず、動作判定を行うことができるため、それぞれのセンサの検出領域を区分けするためのシールドを設ける必要がない。
【0086】
本発明に係る実施形態の動作判定装置が、一次判定および二次判定を行うことにより、キック動作とは異なる物体の接近と離反についてキック動作が行われたと誤判定をすることを防ぐことができる。
ここで一般に動作判定においては、単に、静電容量センサの電極から検出される値に対し、しきい値を用いて物体の接近と離反を検出したとしても、それがキック動作によるものか否かを判断することは難しい。また、しきい値を用いて一定の距離以上に接近した場合にキック動作と判定すると、さほど接近せずにキック動作を行った場合には、実際にはキック動作しているにも関わらず誤判定され、キック動作とは判定されないこととなってしまう。
本実施形態の動作判定装置は、このような事象を鑑み、発明者らの鋭意検討の結果、ユーザが車両リアゲート等の開閉を意図して行うキック動作を正しく、かつ容易に判定することができるように一次判定および二次判定を行うこととしたものである。
【0087】
ここでは、
図7を用いて、本発明に係る実施形態の動作判定装置が行う、キック動作およびキック動作とは異なる動作があったときのキック動作判定の判定結果について説明する。
図7は、キック動作およびキック動作とは異なる動作でセンサに物体が接近したことによるセンサの検出値の時間変化の一例を示す。
【0088】
図7(a)は、キック動作による接近がなされた場合(
図7(a)では「Kick」と記載)の検出値の変化の一例を示す。
図7(b)は、人の付近通過による接近がなされた場合(
図7(b)では「Walking」と記載)の検出値の変化の一例を示す。
図7(c)は、小動物の付近通過による接近がなされた場合(
図7(c)では「Animal」と記載)の検出値の変化の一例を示す。
図7(d)は、洗車による水流通過による接近がなされた場合(
図7(d)では「Hose」と記載)の検出値の変化の一例を示す。
図7(e)は、降雨による雨滴通過による接近がなされた場合(
図7(e)では「Rain」と記載)の検出値の変化の一例を示す。
【0089】
図7(a)のキック動作において、上側センサ10および下側センサ12の検出値は、当然(キック動作を想定した)所定の接近と離反を示す態様となる。また、両センサの検出値の最大値がMAXしきい値を超える値とはならず、所定の接近と離反が予め定められた所定の判定時間内に行われるため、一次判定において、キック動作が行われた可能性があると判定される。
また、キック動作においては、上側センサ10および下側センサ12のそれぞれのセンサ検出最大値は同等の値となるため、その最大値同士の比は所定の範囲内となり、二次判定についても判定OKとなる。
二次判定について判定OKとなるため、本発明に係る実施形態の動作判定装置は、所定のキック動作があったと判定する。
【0090】
図7(b)の人が車両1の付近を通過することによる接近動作において、上側センサ10は、人の接近と離反を検出するため、検出値が(キック動作を想定した)所定の態様となる場合もあり得る。また、この接近動作が所定の距離を超えて接近せず、所定の時間内に接近と離反が行われる場合もあり得る。このとき下側センサ12も、同時に人の接近と離反を検出する。このため、一次判定について、キック動作が行われた可能性があると判定される場合が考えられる。
しかしながら、人が車両1の付近を通過する場合、人は下側センサ12にさほど接近しない。このため、上側センサ10の検出値の最大値と比較して、下側センサ12の検出値の最大値は小さな値となり、二次判定において、最大値の比が所定の範囲内とならず、二次判定において判定NGとなる。
二次判定について判定NGとなるため、本発明に係る実施形態の動作判定装置は、人が車両1の付近を通過することによる接近動作について所定のキック動作ではないと判定する。
【0091】
図7(c)の猫などの小動物が車両1の付近を通過することによる接近動作において、下側センサ12は、小動物の接近と離反を検出するため、検出値が(キック動作を想定した)所定の態様となる場合もあり得る。また、この接近動作が所定の距離を超えて接近せず、所定の時間内に接近と離反が行われる場合もあり得る。このとき下側センサ12も、同時に小動物の接近と離反を検出するため、検出値が(キック動作を想定した)所定の態様となる場合もあり得る。このため、一次判定について、キック動作が行われた可能性があると判定される場合が考えられる。
しかしながら、小動物が車両1の付近を通過する場合、小動物は上側センサ10にさほど接近しない。このため、上側センサ10の検出値の面積値は、下側センサ12の検出値の面積値と比較して小さな値となり、二次判定において、最大値の比が所定の範囲内とならず、二次判定において判定NGとなる。
二次判定について判定NGとなるため、本発明に係る実施形態の動作判定装置は、小動物が車両1の付近を通過することによる接近動作について所定のキック動作ではないと判定する。
【0092】
図7(d)の洗車による水流が車両1の側面を流れ落ちることによる接近動作において、上側センサ10および下側センサ12は(キック動作を想定した)判定時間内に水流の接近と離反を検出する場合もあり得る。
しかしながら、洗車による水流が車両1の側面を流れ落ちる場合、水流は車両1の側面に沿って、すなわちセンサに接するまで接近する。このため、センサの検出値の最大値が所定のMAXしきい値以上となり、一次判定においてキック動作が行われた可能性はないと判定される。
一次判定においてキック動作が行われた可能性はないと判定されるため、二次判定は行われず、本発明に係る実施形態の動作判定装置は、洗車による水流が車両1の側面を流れ落ちることによる接近動作について所定のキック動作ではないと判定する。
【0093】
図7(e)の降雨による雨滴が車両1に降り注ぐことによる接近動作において、上側センサ10および下側センサ12は、(キック動作を想定した)接近と離反を検出する場合もあり得る。
しかしながら、降雨による雨滴は、キック動作を想定した所定の判定時間よりも長時間降り続く。このため、センサの検出値の接近から離反までの間の時間が所定の判定時間を超えるものとなり、一次判定においてキック動作が行われた可能性はないと判定される。
一次判定においてキック動作が行われた可能性はないと判定されるため、二次判定は行われず、本発明に係る実施形態の動作判定装置は、降雨による雨滴が車両1に降り注ぐことによる接近動作について所定のキック動作ではないと判定する。
【0094】
このように、本発明に係る実施形態の動作判定装置は、一次判定および二次判定をおこなうことにより、利用者2が意図して行うキック動作について、キック動作が行われたものと正しく判定できる。
また、単なる人や小動物が車両1の付近を通過した場合に、キック動作が行われたものと誤判定されることはない。
さらに、洗車による流水や降雨時の雨滴の動きについて、キック動作が行われたものと誤判定されることはない。
【0095】
例えば、上記の実施形態において、上側センサ10および下側センサ12について、共通のしきい値(STARTしきい値、MINしきい値、MAXしきい値)に基づいて一次判定を行うものとして説明したが、上側センサ10および下側センサ12の各々について、それぞれ別個のしきい値(STARTしきい値、MINしきい値、MAXしきい値)を用いて一次判定を行ってもよい。これにより、上側センサ10と下側センサ12とが、センサ性能が異なるものであっても、適切な一次判定を行うことができる。
【0096】
また、上側センサ10および下側センサ12について、共通の判定時間に基づいて一次判定を行うものとして説明したが、上側センサ10および下側センサ12の各々について、それぞれ別個の判定時間を用いて一次判定を行ってもよい。これにより、上側センサ10と下側センサ12とが、それぞれ異なるしきい値を用いてステージ判定が行われる場合であっても、適切な一次判定を行うことができる。
【0097】
また、上記の実施形態において、ステップ3で用いる二次判定のInステージの面積値について、上側センサ10および下側センサ12それぞれの検出値とMINしきい値との差分を加算して面積値とするとして説明したが、それぞれの検出値を加算して面積値としてもよい。これにより、差分を算出する処理を省くことができる。
【0098】
また、上記の実施形態において、二次判定で、上側センサ10がInステージである間に下側センサ12の最大値が検出されることを条件としてもよい旨を説明したが、これに限定されない。例えば、キック動作においては、利用者2の足は、最初に上側センサ10に接近し、その後、下側センサ12に接近し、下側センサ12から離反した後に上側センサ10から離反する。このため、上側センサ10がInステージである間に、下側センサ12がInステージであることを条件としてもよい。これにより、適切なキック動作を判定することができる。
【0099】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。