(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593631
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/533 20060101AFI20191010BHJP
H01R 13/46 20060101ALI20191010BHJP
H01R 24/20 20110101ALI20191010BHJP
【FI】
H01R13/533 D
H01R13/46 301H
H01R24/20
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-187125(P2015-187125)
(22)【出願日】2015年9月24日
(65)【公開番号】特開2017-62922(P2017-62922A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2017年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 聖和
【審査官】
杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−288116(JP,A)
【文献】
特開2015−092441(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/124801(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/533
H01R 13/46
H01R 13/52
H01R 24/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線が絶縁被覆に覆われ、直線で配置された被覆電線と、
前記絶縁被覆の一部を皮剥ぎすることで露出させ、直線でかつ前記被覆電線と同軸に配置された露出芯線と、
前記絶縁被覆の一部を皮剥ぎすることで露出させた前記露出芯線を内部に収容する芯線収容部と、
前記芯線収容部の内部に露出した前記露出芯線に接続された芯線接続部を有し、前記芯線接続部から前記被覆電線の直線方向と交差する方向に突出する形態で端子接続部が設けられた端子と、
前記端子を内部に収容し、前記芯線収容部に連なる端子収容部と、
前記絶縁被覆を固定し、前記芯線収容部に連なる被覆固定部とを備え、
前記露出芯線は、前記芯線収容部内において前記交差する方向に移動可能とされ、
前記芯線接続部のうち前記露出芯線が固着された固着部分は、前記端子接続部における前記絶縁被覆とは反対側の端部から前記絶縁被覆とは反対側に突出しており、
前記端子は、前記露出芯線のうち前記固着部分よりも前記絶縁被覆側の部分の移動に伴って前記端子収容部内において前記交差する方向に移動可能とされているコネクタ。
【請求項2】
前記端子接続部は、前記被覆電線の直線方向において前記露出芯線の端末よりも前記絶縁被覆側に配されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記被覆固定部は、露出させた前記露出芯線に連なる前記絶縁被覆を埋設した状態で前記被覆電線を固定している請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータやインバータなどの機器に接続されるコネクタとして、例えば特開2014−7133号公報(下記特許文献1)に記載のものが知られている。このコネクタは、電線の端末部に第1端子が接続された端子付き電線と、第1端子及び相手側コネクタの端子に接続される接続部材と、第1端子及び接続部材を収容するハウジングとを備える。接続部材は、相手側コネクタの端子に接続される第2端子と、第2端子に接続される可撓性導電部材と、可撓性導電部材を介して第2端子に接続される中継端子とを備える。中継端子と第1端子はいずれも丸形端子であって、ハウジングに対してネジで共締めされている。これにより、電線から伝わる振動が第1端子で遮断され、第2端子に伝わることが阻止される。また、急激な温度変化によって相手側コネクタの端子が変位した場合には、第2端子に接続された可撓性導電部材が伸縮することで相手側コネクタの端子と第2端子との摺動が阻止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−7133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のコネクタでは、電線から第2端子に至るまでに、第1端子、中継端子、ネジ、および可撓性導電部材の4部品が必要であり、部品点数の増加に伴ってコストがかかる上にコネクタが大型化してしまう。なお、被覆電線の絶縁被覆を皮剥ぎすることで芯線を長めに露出させたロングストリップにより部品点数を削減しつつ可撓性導電部材と同様の効果を得ることも考えられるが、ロングストリップを収容するための大きな空間が必要になるため、ハウジングを小型化する上では不利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示されるコネクタは、芯線が絶縁被覆に覆われ、直線で配置された被覆電線と、前記絶縁被覆の一部を皮剥ぎすることで露出させた前記芯線を内部に収容する芯線収容部と、前記芯線収容部の内部に露出した前記芯線に接続された芯線接続部を有し、前記芯線接続部から前記被覆電線の直線方向と交差する方向に突出する形態で端子接続部が設けられた端子と、前記端子を内部に収容し、前記芯線収容部に連なる端子収容部と、前記絶縁被覆を固定し、前記芯線収容部に連なる被覆固定部とを備え、前記芯線は、前記芯線収容部内において前記交差する方向に移動可能とされ、前記端子は、前記芯線の移動に伴って前記端子収容部内において前記交差する方向に移動可能とされている構成とした。
【0006】
このような構成によると、自然状態のまま直線で配置された被覆電線が最も撓みやすい方向、すなわち被覆電線の直線方向と交差する方向に端子接続部が突出する形態とすることにより、被覆電線の撓みを利用して相手側端子から受ける外力を吸収することができる。例えば被覆電線として太い電線を用いた場合でも、自然状態であればわずかな力で撓ませることが可能であるため、編組線やロングストリップなどを用いなくても外力を吸収することができる。また、被覆固定部によって被覆電線が固定されているため、被覆電線から伝わる振動を被覆固定部で遮断することができる。
【0007】
また、上記の構成によると、従来と同様の効果を得ることができるにもかかわらず、被覆電線と端子を直結したことによって、複数の部品を用いる必要がないため、内部抵抗が低下することで通電時の温度上昇が抑制され、部品点数の削減による大幅なコスト低減が見込める。さらに、部品点数の削減に伴ってコネクタを大幅に小型化することが可能になる。
【0008】
本明細書によって開示されるコネクタは、以下の構成としてもよい。
前記端子接続部は、前記被覆電線の直線方向において前記芯線の端末よりも前記絶縁被覆側に配されている構成としてもよい。
このような構成によると、被覆固定部によって固定された位置から芯線の端末までの距離をできるだけ長くすることができるため、芯線の柔軟性が高くなる。
【0009】
前記被覆固定部は、露出させた前記芯線に連なる前記絶縁被覆を埋設した状態で前記被覆電線を固定している構成としてもよい。
このような構成によると、例えばインサート成形によって被覆固定部を設ける場合、樹脂が冷え固まる際に収縮し、被覆固定部が絶縁被覆に密着し、電線の保持力を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本明細書によって開示されるコネクタによれば、部品点数を削減しつつも外力を吸収することができ、被覆電線から伝わる振動を遮断することができ、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態におけるコネクタの構成部品を示した分解斜視図
【
図4】芯線収容部にリアカバーを装着した状態を示した背面図
【
図6】被覆電線に端子が接続された状態を示した斜視図
【
図7】絶縁被覆にインサート成形を行うことで芯線収容部と被覆固定部とが設けられた状態を示した斜視図
【
図8】
図7において絶縁被覆が被覆固定部に埋設された状態を示した斜視断面図
【
図9】芯線収容部に端子収容部を装着した状態を示した斜視図
【
図10】端子収容部にフロントカバーを装着した状態を示した斜視図
【
図11】芯線接続部に芯線が接続された状態を示した正面図
【
図12】芯線接続部に芯線が接続された状態を示した側面図
【
図13】芯線収容部にリアカバーを装着する前の状態を示した背面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
実施形態を
図1から
図13の図面を参照しながら説明する。本実施形態におけるコネクタ10は、
図1に示すように、端子30と被覆電線Wが保持されたコネクタ本体20と、コネクタ本体20に前方から装着される端子収容部40と、端子収容部40に前方から装着されるフロントカバー50と、コネクタ本体20に後方から装着されるリアカバー60とを備えて構成されている。被覆電線Wは、芯線W1が絶縁被覆W2で覆われた構成である。本実施形態では、
図6に示すように、被覆電線Wの端末における絶縁被覆W2が皮剥ぎされることで芯線W1が露出している。
【0013】
端子30は、角筒状をなす端子接続部31と、被覆電線Wの芯線W1に接続される芯線接続部32とを備えて構成されている。端子接続部31の内部には、図示しない弾性接触片が設けられており、この弾性接触片が相手側端子に対して弾性的に接触することで端子30と相手側端子とが導通可能に接続される。
図12に示すように、芯線接続部32は略L字状をなし、端子接続部31の後方に連なり、端子接続部31よりも上方に突出する形態をなしている。言い換えると、端子接続部31は、被覆電線Wの直線方向(すなわち芯線W1の軸方向)において芯線W1の端末よりも絶縁被覆W2側に配されている。
【0014】
図12において網掛け模様で示した部分は、芯線W1が溶接等によって芯線接続部32に固着された固着部分33である。固着部分33の下端部は、端子接続部31の上端部とほぼ同じ高さに位置しており、固着部分33の大部分は、端子接続部31よりも上方に位置している。したがって、芯線接続部32のうち固着部分33より下方の部分では、芯線W1が固着されておらず、撓み可能で自由に動けるようになっている。
【0015】
被覆電線Wは、上下方向に真っ直ぐ延びるように直線で配置されているのに対して、端子接続部31は、前後方向に真っ直ぐ延びるように直線で配置されている。また、端子接続部31は、芯線接続部32から前方(芯線W1の軸方向と直交する方向)に突出する形態で設けられている。つまり、芯線接続部32は、芯線W1に沿って配されているのに対して、端子接続部31は、被覆電線Wの芯線W1の前方に配されている。
【0016】
コネクタ本体20は、
図8に示すように、芯線W1を内部に収容する芯線収容部21と、絶縁被覆W2を固定する被覆固定部22と、一対のカラー24が埋設された一対の取付部23とを備えて構成されている。被覆固定部22は、芯線収容部21の下端部から下方に連なり、一対の取付部23は、芯線収容部21の左右両側部から側方に連なっている。被覆固定部22は、インサート成形によって設けられており、被覆電線Wの端末に露出させた芯線W1に連なる絶縁被覆W2を埋設した状態で被覆電線Wを固定している。また、被覆固定部22は、インサート成形の際に樹脂が冷えて収縮することで絶縁被覆W2に密着しているため、被覆電線Wを強固に保持している。これにより、被覆電線Wから伝わる振動は、被覆固定部22において遮断され、端子接続部31に伝わることはない。
【0017】
図9に示すように、芯線収容部21に端子収容部40を前方から装着すると、一対の端子接続部31が端子収容部40の内部に収容される。また、端子収容部40にフロントカバー50を前方から装着すると、
図10に示すように、端子収容部40の開口がフロントカバー50によって閉止される。フロントカバー50には、一対の相手側端子を挿通させる一対の端子挿通孔51が設けられている。これらの端子挿通孔51に一対の相手側端子が挿通されて一対の端子30に接続されるようになっている。
【0018】
図3に示すように、フロントカバー50の上下両側には、一対の係止片52が設けられている。係止片52は、フロントカバー50の周縁部から後方に突出する形態をなしている。これらの係止片52は、端子収容部40の後端開口縁部に設けられた上下一対の被係止部41に係止することによりフロントカバー50を端子収容部40に保持させる。
【0019】
リアカバー60は、平板状をなすカバー本体61と、カバー本体61から前方に突出する形態をなす隔壁62と、隔壁62の左右両側に配された一対の支持壁63とを備えて構成されている。
図5に示すように、芯線収容部21にリアカバー60を後方から装着すると、カバー本体61が芯線収容部21の後端開口縁部に周設された装着壁25の内部に圧入気味に収容され、芯線収容部21の開口がリアカバー60によって閉止される。
図3に示すように、芯線W1および芯線接続部32は、支持壁63によって三方から囲まれた状態となる。また、隔壁62によって一対の芯線接続部32が隔離される。
【0020】
さて、本実施形態では端子30が端子収容部40の内部において前後方向に移動可能に収容されている。その理由は、
図12を見ればわかるように、芯線W1に外力がかかっておらず、前後方向(芯線W1の径方向)に最も撓みやすい自然状態で配置されているためである。仮に芯線W1の軸方向に芯線W1を撓ませようとする場合、かなり大きな外力が必要であり、その場合には、芯線W1の代わりに編組線等の柔軟導体を使用する必要がある。しかしながら、本実施形態では柔軟導体を使用することなく、一般的な被覆電線Wを使用しつつも、柔軟導体と同等もしくはそれ以上の柔軟性を実現可能としている。
【0021】
また、芯線W1の柔軟性をさらに高めるべく、芯線W1が軸方向に少しでも長くなるように、固着部分33が絶縁被覆W2から最も遠く配置されるように芯線接続部32をL字状に設けている。この結果、端子30の端子接続部31は、
図3に示すように、芯線W1の撓みによる移動に伴って端子収容部40の内部において前後方向に移動可能となっている。したがって、温度変化によって相手側端子が前後方向に移動した場合に、相手側端子とともに芯線W1および端子30が前後方向に移動可能となり、相手側端子と端子30の摺動が阻止される。
【0022】
以上のように本実施形態では、自然状態のまま直線で配置された被覆電線Wが最も撓みやすい方向、すなわち被覆電線Wの直線方向と交差する方向に端子接続部31が突出する形態とすることにより、被覆電線Wの撓みを利用して相手側端子から受ける外力を吸収することができる。例えば被覆電線Wとして太い電線を用いた場合でも、自然状態であればわずかな力で撓ませることが可能であるため、編組線やロングストリップなどを用いなくても外力を吸収することができる。また、被覆固定部22によって被覆電線Wが固定されているため、被覆電線Wから伝わる振動を被覆固定部22で遮断することができる。
【0023】
また、上記の構成によると、従来と同様の効果を得ることができるにもかかわらず、被覆電線Wと端子30を直結したことによって、複数の部品を用いる必要がないため、内部抵抗が低下することで通電時の温度上昇が抑制され、部品点数の削減による大幅なコスト低減が見込める。さらに、部品点数の削減に伴ってコネクタ10を大幅に小型化することが可能になる。
【0024】
端子接続部31は、被覆電線Wの直線方向において芯線W1の端末よりも絶縁被覆W2側に配されている構成としてもよい。
このような構成によると、被覆固定部によって固定された位置から芯線の端末までの距離をできるだけ長くすることができるため、芯線の柔軟性が高くなる。
【0025】
被覆固定部22は、露出させた芯線W1に連なる絶縁被覆W2を埋設した状態で被覆電線Wを固定している構成としてもよい。
このような構成によると、例えばインサート成形によって被覆固定部22を設ける場合、樹脂が冷え固まる際に収縮し、被覆固定部22が絶縁被覆W2に密着し、被覆電線Wの保持力を高めることができる。
【0026】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)上記実施形態では芯線接続部32が端子接続部31の後方に設けられているものの、芯線接続部は、端子接続部31の側方に設けられているものとしてもよい。
【0027】
(2)上記実施形態では端子接続部31が上下方向において芯線W1の端末よりも絶縁被覆W2側に配されているものの、芯線W1の端末に端子接続部を配してもよい。
【0028】
(3)上記実施形態では絶縁被覆W2がインサート成形等によって被覆固定部22に埋設されているものの、絶縁被覆W2の外周面に円筒状の金属スリーブをかしめた後に、この金属スリーブを被覆固定部の電線挿通孔に圧入してもよい。
【0029】
(4)上記実施形態では芯線W1の軸方向と端子接続部31の突出方向とが直交しているものを例示したが、厳密に直交していなくてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10…コネクタ
21…芯線収容部
22…被覆固定部
30…端子
31…端子接続部
32…芯線接続部
40…端子収容部
W…被覆電線
W1…芯線
W2…絶縁被覆