特許第6593644号(P6593644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593644
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】電線の接続構造およびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/20 20060101AFI20191010BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20191010BHJP
   H02G 15/08 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   H01R4/20
   B60R16/02 620Z
   H02G15/08
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-6782(P2016-6782)
(22)【出願日】2016年1月18日
(65)【公開番号】特開2017-130254(P2017-130254A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 洋和
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第203503811(CN,U)
【文献】 米国特許第03006983(US,A)
【文献】 特開2009−021148(JP,A)
【文献】 特開2015−015207(JP,A)
【文献】 特開2012−186100(JP,A)
【文献】 特開2010−272301(JP,A)
【文献】 特開2013−069623(JP,A)
【文献】 藤巻裕彦、鷹合徹也、佐野一仁,銅より線と黄銅端子圧着部の力学的作用,溶接学会論文集,日本,一般社団法人溶接学会,1995年11月 5日,13巻4号,P.550−555
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18−4/20
H02G 15/08
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体の径寸法が異なる電線同士を接続する電線の接続構造であって、
一方の電線の導体の端面と他方の電線の導体の端面とが前記導体の軸方向に対向して配され、
前記一方の電線の導体の端部から前記他方の電線の導体の端部にわたって前記導体を包囲する筒状部材が、前記一方の電線の導体および前記他方の電線の導体にかしめ付けられており、
前記筒状部材は全周方向から加圧され円形状を保って縮径し、
前記筒状部材の外径寸法は、前記一方の電線及び前記他方の電線の外径寸法と同等もしくは小さくなっており、
前記一方の電線の導体及び前記他方の電線の導体の前記筒状部材にかしめ付けられた部分は径寸法が同等である電線の接続構造。
【請求項2】
前記導体のうち前記筒状部材に包囲された部分が、前記筒状部材から露出されている部分に比して、径方向に圧縮されている請求項1に記載の電線の接続構造。
【請求項3】
前記一方の電線の導体が、複数本の素線を撚り合わせてなる撚線導体であり、
前記他方の電線の導体が、1本の棒状をなす単芯導体であり、
前記単芯導体の圧縮量よりも前記撚線導体の圧縮量が大きくされている請求項2に記載の電線の接続構造。
【請求項4】
前記筒状部材が、前記導体に打ち込まれた打ち込み部を有している請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電線の接続構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載された電線の接続構造を備えたワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の接続構造およびワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的柔らかい電線を、所定の形状に屈曲した金属パイプ等に挿通することで、所定の配索経路に保持することが知られている。例えば下記特許文献1には、ワイヤハーネスを構成する複数の電線を、金属パイプに一括して挿通したものが記載されている。電線は、複数本の素線を撚り合わせてなる導体を絶縁被覆で包囲した撚線電線であり、電線の端部は金属パイプから外側に引き出されて機器等に接続される。金属パイプから引き出された電線は、柔軟に屈曲することができるから、機器等への接続を容易に行うことができる。
【0003】
ところで、比較的硬い電線(例えば一本の太い導体を絶縁被覆で包囲してなる単芯電線等)を用いることで、電線自体によって形状保持ができるようにし、上記のような金属パイプを省くことが考えられる。このような場合、機器等との接続のために柔軟性が必要な部分には、柔らかい電線を接続することが考えられる。
【0004】
電線同士を接続する方法は、例えば下記特許文献2に記載のように、電線の端部において絶縁被覆を剥いで導体を露出させ、互いの導体を重ね合わせて超音波溶接する方法が知られている。導体の接続部分には、熱収縮チューブを被せて絶縁し、熱収縮チューブの外側には、グロメット等の外装部材を被せて保護するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−171952号公報
【特許文献2】特開2011−168104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような電線の接続方法では、導体を重ね合わせることによって、各導体の幅寸法分の段差が接続部分に形成されるとともに、接続部分の幅寸法が、各電線の径寸法に比して大きくなりがちである。このため、電線の接続部分を外装部材等に挿通する際に、接続部分が外装部材等に引っ掛かったり、外装部材等を破損させたりする虞がある。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、接続部分の段差および幅寸法を小さく抑えることが可能な電線の接続構造およびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電線の接続構造は、一方の電線の導体の端面と他方の電線の導体の端面とが前記導体の軸方向に対向して配され、前記一方の電線の導体の端部から前記他方の電線の導体の端部にわたって前記導体を包囲する筒状部材が、前記一方の電線の導体および前記他方の電線の導体にかしめ付けられており、前記筒状部材は全周方向から加圧され円形状を保って縮径し、前記筒状部材の外径寸法は、前記一方の電線及び前記他方の電線の外径寸法と同等もしくは小さくなっており、前記一方の電線の導体及び前記他方の電線の導体の前記筒状部材にかしめ付けられた部分は径寸法が同等であるものである。
本発明のワイヤハーネスは、前記電線の接続構造を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来のように導体を重ね合わせて接続する場合に比して接続部分の段差および幅寸法を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1におけるワイヤハーネスであって、車両に配索されている状態を概略的に示す概略図
図2】電線の接続構造を示す一部拡大断面図
図3】電線の接続構造を示す一部拡大断面図であって、(A)は筒状部材をかしめ付ける前の状態を示す断面図であり、(B)は筒状部材をかしめ付けた後の状態を示す断面図である。
図4】実施例2における電線の接続構造を示す一部拡大断面図であって、(A)は筒状部材をかしめ付ける前の状態を示す断面図であり、(B)は筒状部材をかしめ付けた後の状態を示す断面図である。
図5】実施例3における電線の接続構造を示す一部拡大側面図
図6】電線の接続構造を示す断面図であって、図5のA−A位置における断面に相当する断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好ましい形態を以下に示す。
本発明の電線の接続構造は、前記導体のうち前記筒状部材に包囲された部分が、前記筒状部材から露出されている部分に比して、径方向に圧縮されているものとしてもよい。このような構成によれば、導体の接続部分の幅寸法をより小さくすることができる。
【0012】
また、本発明の電線の接続構造は、前記一方の電線の導体が、複数本の素線を撚り合わせてなる撚線導体であり、前記他方の電線の導体が、1本の棒状をなす単芯導体であり、前記単芯導体の圧縮量よりも前記撚線導体の圧縮量が大きくされているものとしてもよい。ここで、撚線導体は、素線間に隙間があるため、筒状部材を撚線導体に強くかしめ付けるためには、単芯導体に比して大きく圧縮させる必要があるところ、上記のような構成によれば、筒状部材を撚線導体に十分にかしめ付けることができる。
【0013】
また、本発明の電線の接続構造は、前記筒状部材が、前記導体に打ち込まれた打ち込み部を有しているものとしてもよい。このような構成によれば、筒状部材が導体を保持する力が増すから、電線の接続状態をより確実に保持することができる。
【0014】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1について、図1図3を参照しつつ詳細に説明する。
本実施例におけるワイヤハーネス10は、ハイブリッド車等の車両において、例えば車両の後部に備えられた高圧バッテリ等の機器M1と、車両の前部に備えられたインバータやヒューズボックス等の機器M2とを接続するべく、車両の床下を通って配索されるものである(図1参照)。
【0015】
ワイヤハーネス10は、複数の電線11を有し、一括してコルゲートチューブ等の外装部材14に挿通されている。なお、図面には、一の電線11のみを示している。
【0016】
電線11は、導体12の構成が異なる異種の電線同士を接続したものである。本実施例では、異種の電線のうち一方の電線(以後、第1電線11Aと称する)は、比較的柔らかい(剛性が低く撓みやすい)導体12を有し、他方の電線(以後、第2電線11Bと称する)は、比較的硬い(剛性が高く撓み難い)導体12を有している。第1電線11Aおよび第2電線11Bは、いずれも導体12を絶縁被覆13で包囲してなる被覆電線である。
【0017】
第1電線11Aの導体12は、複数本の素線(めっき線を含む)を螺旋状に撚り合わせてなる撚線導体であり、第2電線11Bの導体12は、1本の金属棒である単芯導体である。撚線導体および単芯導体はいずれも、銅、銅合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金等、任意の金属によって形成されている。撚線導体の径寸法は、単芯導体の径寸法よりも大きくされている。なお、後述する筒状部材15の収縮量を考慮すると、撚線導体の径寸法は、単芯導体の径寸法に対し、最大でも1.8倍程度に止めることが望ましい。
【0018】
第1電線11Aと第2電線11Bとは、図2に示すように、筒状部材15によって電気的に接続されている。第1電線11Aの端部および第2電線11Bの端部は、それぞれ絶縁被覆13が剥がされて導体12が露出している。第1電線11Aの露出された導体12と第2電線11Bの露出された導体12とは、筒状部材15の内部に挿入されている。筒状部材15の内部において第1電線11Aの導体12の端面と第2電線11Bの導体12の端面とは、導体12の軸方向に対向し、突き当てられている。筒状部材15は、第1電線11Aの導体12から第2電線11Bの導体12にわたって導体12の全周を包囲している。筒状部材15は、第1電線11Aの導体12および第2電線11Bの導体12にかしめ付けられている。
【0019】
第1電線11Aの導体12および第2電線11Bの導体12はいずれも筒状部材15に包囲された部分(以後、かしめ部16と称する)が径方向に圧縮されている。かしめ部16は、導体12のうち筒状部材15から露出されている部分(以後、露出部17と称する)に比して、径方向の寸法が小さくなっている。露出部17は、かしめ部16に向かって次第に径寸法が減じており、導体12の露出部17とかしめ部16との境界に、急激な段差は形成されていない。
【0020】
筒状部材15は、例えばステンレス、銅、黄銅、または鉄等、任意の金属によって形成されたものであり、電線11の導体12を内側に挿通可能な筒状をなしている。筒状部材15は、第1電線11Aの導体12と第2電線11Bの導体12との両方にわたる長さ寸法(軸方向の寸法)を有している。筒状部材15の断面(軸方向に対して直交する断面)は、円形状をなしている。筒状部材15の厚さ寸法(径方向の寸法)は、全周および全長にわたり略一定とされている。筒状部材15のかしめ付けられる前の内径寸法は、図3(A)に示すように、第1電線11Aおよび第2電線11Bの外径寸法よりも大きくされている。なお、筒状部材15の端部には、エッジ処理が実施されている。
【0021】
次に、第1電線11Aと第2電線11Bとを接続する作業の一例を説明する。
まず、図3(A)に示すように、第1電線11Aおよび第2電線11Bの接続部分に筒状部材15を配置する。第1電線11Aおよび第2電線11Bの端末部において、それぞれ絶縁被覆13を剥いで導体12を露出させる。露出された導体12を、筒状部材15の軸方向における両端部から、それぞれ筒状部材15の内部に挿入し、導体12の端面同士を突き当てた状態にする。
【0022】
次いで、図3(B)に示すように、第1電線11Aと第2電線11Bとの接続部分に筒状部材15を圧着する。筒状部材15の全長にわたり全周方向から加圧すると、筒状部材15は円形状を保って縮径する。筒状部材15は、縮径に伴って、厚さ寸法が若干(約1.5倍)増す。筒状部材15の厚さ寸法の増加に伴って、内部の圧縮量が増加するため抵抗抑制効果を生じる。
【0023】
最終的には、筒状部材15の外径寸法は、電線11の外径寸法と同等もしくは小さくなる。また、第1電線11Aの導体12は、第2電線11Bの導体12よりも大きく圧縮し、筒状部材15の外径寸法は、全長にわたって一定となっている。すなわち、筒状部材15がかしめ付けられた状態では、第1電線11Aの導体12と第2電線11Bの導体12とは径寸法が同等になっている。
【0024】
また、筒状部材15は、加圧によって軸方向に若干伸び、第1電線11Aの導体12および第2電線11Bの導体12は、筒状部材15の圧着に伴って、軸方向に若干伸びる。なお、筒状部材15の収縮量は、かしめ付けられる前の外径寸法に対し、最大2割程度に止めることが望ましい。
【0025】
以上により、第1電線11Aと第2電線11Bとの接続作業が完了する。なお、第1電線11Aと第2電線11Bの接続部分に、絶縁部材または防水部材として図示しない熱収縮チューブ等を被せ付けてもよい。
【0026】
次に、上記のように構成された実施例の作用および効果について説明する。
本実施例のワイヤハーネス10は、第1電線11Aの導体12の端面と第2電線11Bの導体12の端面とが導体12の軸方向に対向して配され、第1電線11Aの導体12の端部から第2電線11Bの導体12の端部にわたって導体12を包囲する筒状部材15が、第1電線11Aの導体12および第2電線11Bの導体12にかしめ付けられている。この構成によれば、従来のように導体を重ね合わせて接続する場合に比して接続部分の段差および幅寸法を小さく抑えることができる。また、筒状部材15をかしめ付ける作業は、複雑な工程を含まないので、電線11の接続作業を容易に行うことができる。さらに、導体を重ねて溶着する場合に比して、接続部分の径寸法を小さく抑えることができる。また、導体を重ねて溶着する場合に比して、接続部分に作用する径方向の力(従来のように導体を重ねた場合には導体を引き離す方向の力)に対して高い耐久性を確保することができる。
【0027】
また、導体12のかしめ部16が、露出部17に比して径方向に圧縮されている。この構成によれば、導体12の接続部分の幅寸法をより小さくすることができるから、電線11を収縮チューブや外装部材14に挿通する作業を容易に行うことができる。
【0028】
また、第1電線11Aの導体12が、複数本の素線を撚り合わせてなる撚線導体であり、第2電線11Bの導体12が、1本の棒状をなす単芯導体であり、単芯導体の圧縮量よりも撚線導体の圧縮量が大きくされている。ここで、撚線導体は、素線間に隙間があるため、筒状部材15を撚線導体に強くかしめ付けるためには、単芯導体に比して大きく撚線導体を圧縮させる必要があるところ、上記のような構成によれば、筒状部材15を撚線導体に十分にかしめ付けることができる。
【0029】
<実施例2>
次に、本発明を具体化した実施例2に係るワイヤハーネス20を図4によって説明する。
本実施例のワイヤハーネス20は、第2電線11Bの導体12がパイプ21である点で、実施例1とは相違する。なお、実施例1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0030】
本実施例のワイヤハーネス20は、実施例1と同様、複数の電線11を一括してコルゲートチューブ等の外装部材14に挿通したものである。電線11は、実施例1と同様、導体12の構成が異なる異種の電線11を、軸方向に接続したものである。本実施例では、第1電線11Aは、撚線導体を有する撚線電線であり、第2電線11Bは、1本のパイプ21を導体12とした裸線である。
【0031】
パイプ21は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅または銅合金等、任意の導電性に優れた金属からなる。パイプ21は、長尺な円筒状をなし、例えば金属板を丸めることで形成されている。パイプ21は、車両の床下におけるワイヤハーネス20の配索経路に沿う形状に屈曲されて、その形状が保持されている。なお、パイプ21は中空であるから、中実の棒状部材である場合に比して曲げ加工が容易である。
【0032】
第1電線11Aおよび第2電線11Bは、実施例1と同様、筒状部材15の両端部から筒状部材15の内部に導体12の端部を挿入して、導体12の端面同士を突き当てた状態にし、筒状部材15の全長を全周方向から加圧することにより接続されている。圧着された筒状部材15の外径寸法は、実施例1と同様、電線11の外径寸法と同等もしくは小さくなり、また、筒状部材15の外径寸法は、全長にわたって一定となっている。
【0033】
以上のように本実施例においては、第1電線11Aの導体12の端面と第2電線11Bの導体12の端面とが導体12の軸方向に対向して配され、第1電線11Aの導体12の端部から第2電線11Bの導体12の端部にわたって導体12を包囲する筒状部材15が、第1電線11Aの導体12および第2電線11Bの導体12にかしめ付けられているから、実施例1と同様、従来のように導体を重ね合わせて接続する場合に比して接続部分の段差および幅寸法を小さく抑えることができる。
【0034】
<実施例3>
次に、本発明を具体化した実施例3に係るワイヤハーネス30を図5および図6によって説明する。
本実施例のワイヤハーネス30は、筒状部材15が、導体12に打ち込まれた打ち込み部31を有している点で、実施例1とは相違する。なお、実施例1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0035】
本実施例に係るワイヤハーネス30は、実施例1と同様、第1電線11Aの導体12の端面と第2電線11Bの導体12の端面とが導体12の軸方向に対向して配され、第1電線11Aの導体12の端部から第2電線11Bの導体12の端部にわたって導体12を包囲する筒状部材15が、第1電線11Aの導体12および第2電線11Bの導体12にかしめ付けられている。
【0036】
打ち込み部31は、図6に示すように、筒状部材15の長手方向における一端側と他端側とに設けられている。筒状部材15の一端側の打ち込み部31は、第1電線11Aの導体12に打ち込まれ、他端側の打ち込み部31は、第2電線11Bの導体12に打ち込まれている。
【0037】
打ち込み部31は、筒状部材15において径方向に対向する位置に一対ずつ設けられている。対向する一対の打ち込み部31は、筒状部材15の内側に同程度突出して導体12に食い込んでいる。
【0038】
第1電線11Aおよび第2電線11Bは、実施例1と同様、筒状部材15の両端から筒状部材15の内部に導体12を挿入して、導体12の端面同士を突き当てた状態にし、筒状部材15の全長を全周方向から加圧することにより接続されている。打ち込み部31は、筒状部材15を加圧する前の状態では形成されておらず、筒状部材15を加圧すると同時にプレス加工により形成され、導体12に楔のように食い込んだ状態になる。
【0039】
以上のように本実施例においては、第1電線11Aの導体12の端面と第2電線11Bの導体12の端面とが導体12の軸方向に対向して配され、第1電線11Aの導体12の端部から第2電線11Bの導体12の端部にわたって導体12を包囲する筒状部材15が、第1電線11Aの導体12および第2電線11Bの導体12にかしめ付けられているから、実施例1と同様、従来のように導体を重ね合わせて接続する場合に比して接続部分の段差および幅寸法を小さく抑えることができる。また、筒状部材15が、導体12に打ち込まれた打ち込み部31を有しているので、筒状部材15が導体12を保持する力が増し、もって第1電線11Aと第2電線11Bとの接続状態をより確実に保持することができる。
【0040】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、本発明を、ハイブリッド車等の車両の床下を通って配索されるワイヤハーネスに適用した場合について説明したが、これに限らず、本発明は、各種のワイヤハーネス全般、また束ねられていない電線等にも適用することができる。
(2)上記実施例では、第1電線11Aの導体12が、撚線導体とされているが、これに限らず、例えば第1電線の導体は、編組線等であってもよい。
(3)上記実施例では、かしめ付け後の筒状部材15の外径寸法は、全長にわたって一定となっているが、これに限らず、第1電線の導体と第2電線の導体との境界で若干の段差が生じていてもよい。
(4)上記実施例では、筒状部材15のかしめ付けられる前の内径寸法は、第1電線11Aおよび第2電線11Bの外径寸法よりも大きくされているが、これに限らず、筒状部材のかしめ付けられる前の内径寸法は、少なくとも第1電線の導体および第2電線の導体の径寸法より大きければよい。
(5)上記実施例2では、パイプ21が金属製とされているが、これに限らず、パイプは、例えば表面が金属コーティングされた樹脂製のパイプ等であってもよい。
(6)上記実施例3では、打ち込み部31の具体例を示したが、これに限らず、打ち込み部の位置、形状、数等は任意に変更することができる。
【符号の説明】
【0041】
10,20,30…ワイヤハーネス
11A…第1電線(一方の電線)
11B…第2電線(他方の電線)
12…導体
15…筒状部材
16…かしめ部(導体のうち筒状部材に包囲された部分)
17…露出部(筒状部材から露出されている部分)
31…打ち込み部
図1
図2
図3
図4
図5
図6