特許第6593653号(P6593653)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オンダ製作所の特許一覧

<>
  • 特許6593653-鞘管サポート具 図000002
  • 特許6593653-鞘管サポート具 図000003
  • 特許6593653-鞘管サポート具 図000004
  • 特許6593653-鞘管サポート具 図000005
  • 特許6593653-鞘管サポート具 図000006
  • 特許6593653-鞘管サポート具 図000007
  • 特許6593653-鞘管サポート具 図000008
  • 特許6593653-鞘管サポート具 図000009
  • 特許6593653-鞘管サポート具 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593653
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】鞘管サポート具
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/12 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   F16L3/12 H
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-161612(P2016-161612)
(22)【出願日】2016年8月22日
(62)【分割の表示】特願2015-220491(P2015-220491)の分割
【原出願日】2015年11月10日
(65)【公開番号】特開2017-89880(P2017-89880A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128968
【氏名又は名称】株式会社オンダ製作所
(72)【発明者】
【氏名】堀 敬太
【審査官】 古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−201328(JP,A)
【文献】 特開2009−178931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/00− 3/26
B29C 45/26−45/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞘管を湾曲させて延在方向を転換するために用いられる鞘管サポート具であって、湾曲して形成されかつ半円筒状をなす樹脂製のサポート本体と、当該サポート本体の離間部分に架橋された部分と、湾曲された状態にある前記鞘管の中心を通る湾曲状の仮想的な線と、当該仮想的な線によって規定される仮想的な平面とを有し、
前記架橋された部分は、前記仮想的な平面を境界とした一方側の領域及び他方側の領域のそれぞれに配置された肉細の部分を備え、当該肉細の部分を介して前記サポート本体に連結されていることを特徴とする鞘管サポート具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管が挿通される鞘管を、例えば水平位置から垂直状態に立ち上げるために用いられる鞘管サポート具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鞘管立ち上がり保持具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−201328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新規な鞘管サポート具を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、鞘管を湾曲させて延在方向を転換するために用いられる鞘管サポート具であって、湾曲して形成されかつ半円筒状をなす樹脂製のサポート本体と、当該サポート本体の離間部分に架橋された部分と、湾曲された状態にある前記鞘管の中心を通る湾曲状の仮想的な線と、当該仮想的な線によって規定される仮想的な平面とを有し、前記架橋された部分は、前記仮想的な平面を境界とした一方側の領域及び他方側の領域のそれぞれに配置された肉細の部分を備え、当該肉細の部分を介して前記サポート本体に連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、新規な鞘管サポート具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態の鞘管サポート具を示す正面図。
図2】鞘管サポート具の側面図。
図3】鞘管サポート具の平面図。
図4】(a)は図1のA−A線断面図、(b)は(a)において保持扉を開いた状態を示す図。
図5】射出成形機から離型された直後の鞘管サポート具を示す側面図。
図6】射出成形機から離型された直後の鞘管サポート具を示す平面図。
図7】参考例のサドルを示す斜視図。
図8】射出成形機から離型された直後のサドル群を示す平面図。
図9】同じくサドル群の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を具体化した一実施形態について説明する。
(一実施形態)
図1に示すように、配管用具としての鞘管サポート具は、例えば建物の床下に設けられたコンクリートスラブ上で水平方向(図面の左右方向)に敷設された鞘管100を、図示しない床にまで垂直状態へと立ち上げるために用いられる。鞘管100は高密度ポリエチレン製で、例えば蛇腹状をなしている。鞘管100には、例えばポリブテン製又は架橋ポリエチレン製の給水パイプが挿通されている(図示しない)。
【0009】
図1図3に示すように、前記鞘管サポート具は、サポート本体11、脚部12及び保持扉13を備えている。サポート本体11は、水平状態から垂直状態に所定の曲率で湾曲して形成されかつ、当該湾曲の外周側が離間した半円筒状をなしている。脚部12は、サポート本体11において、水平状態側つまりコンクリートスラブ側に位置する第一端部11a付近に短い二つが形成され、また当該第一端部11aと、垂直状態側つまり床側に位置する第二端部11bとの間に長い二つが形成されている。各脚部12は平板部12aを備え、当該平板部12aにはビス孔12bが貫通形成されている。
【0010】
図4(a)及び図4(b)に示すように、前記サポート本体11の第二端部11bには、当該サポート本体11の離間部分11cに前記保持扉13が架橋されている。保持扉13は、水平方向(図面の上下方向)の第一端部13aがサポート本体11に対して、ヒンジとしてのフィルムヒンジ(薄肉ヒンジ)14を介して連結されて、当該サポート本体11の離間部分11cを開閉可能となっている。
【0011】
前記保持扉13において、フィルムヒンジ14とは反対側に位置する第二端部13bには、サポート本体11に向かってフック13cが突設されている。保持扉13においてサポート本体11側の面には、フック13cと第一端部13aとの間に、鞘管100を受ける凹曲面13dが形成されている。当該凹曲面13dにおいてフック13c側の縁部には、舌状部13eが当該凹曲面13dを延長するようにして突設されている。サポート本体11の第二端部11b付近においてフィルムヒンジ14とは反対側の側縁部には、保持扉13のフック13cに対峙してフック11dが突設されている。
【0012】
前記保持扉13が、図4(b)に示す開放状態から図4(a)に示す閉鎖状態に回動されると、サポート本体11のフック11dが、保持扉13のフック13cと舌状部13eとの間に入り込み、フック11dとフック13cとが弾性変形して互いを乗り越える。この状態では、保持扉13が開放状態へ回動しようとしても、フック11dとフック13cとが互いに引っ掛かるため、保持扉13が閉鎖状態から離脱することが防止される。本実施形態においては、サポート本体11のフック11dと保持扉13のフック13cとによって、スナップ係合が可能な係合部が構成されている。
【0013】
図1図3に示すように、前記鞘管サポート具は、脚部12のビス孔12bを介してコンクリートスラブにビス止めで固定されている。この固定状態(保持扉13は図4(b)の開放状態にあるものとする)にて、コンクリートスラブ上で水平方向に敷設された鞘管100を、サポート本体11に挿通しかつ当該サポート本体11の湾曲に沿わせて方向転換することで、垂直状態に立ち上げる。
【0014】
前記鞘管100が垂直に立ち上がった状態にて、保持扉13を開放状態から閉鎖状態に回動してフック11dとフック13cとを係合させることで、当該保持扉13の凹曲面13dとサポート本体11の内面との間において鞘管100が挟持されて、当該鞘管100が垂直に立上った状態を保持するようになっている。そして、当該鞘管100にパイプを挿通することで、当該パイプが水平方向から垂直状態に立ち上げられて、例えば床から室内へと引き出される。
【0015】
この鞘管100の保持状態では、方向転換された鞘管100及びパイプに強い弾性力が蓄積されることになるため、鞘管サポート具には鞘管100及びパイプが直線状に復元しようとする大きな力が作用されている。このため、特に鞘管サポート具の保持扉13には、常に開放方向への力が作用されている。
【0016】
図4(a)及び図4(b)に示すように、前記サポート本体11においてフィルムヒンジ14付近の部分には、閉鎖状態にある保持扉13に第一端面15aで対峙する係止壁15が突設されている。当該係止壁15は、垂直方向に延在するリブ状をなしている。保持扉13の凹曲面13dにおいて、第一端部13a側の縁部には、当該凹曲面13dを延長するようにして当接壁16が突設されている。当該当接壁16の先端縁は、保持扉13の閉鎖状態にて、係止壁15の背後である第二端面15b側に回り込むように、外側へ曲折されている。
【0017】
したがって、前記鞘管100及びパイプが直線状に復元しようとする大きな力は、フィルムヒンジ14付近においては当接壁16が係止壁15の第二端面15bに当接して分担して受け止められるため、フィルムヒンジ14の耐久性が向上される。
【0018】
次に、前記鞘管サポート具の製造方法について説明する。
本実施形態の鞘管サポート具は、合成樹脂製(例えばポリプロピレン製)の一体成形品であって、図5及び図6は、射出成形機(図示しない)から離型された直後の冷却工程にある状態を示している。この状態で鞘管サポート具は、保持扉13がサポート本体11の離間部分11cを開放状態としている。これは離型を容易とするための金型設定でもあるし、係合が容易でかつ離脱が困難なスナップ係合部(フック11d及びフック13c)の都合上、施工時まで保持扉13を閉じることは極力避けたいからでもある。
【0019】
また、前記鞘管サポート具は、成形工程時に形成されたスプール51、ランナー52及びゲート53が切除されずに残されており、当該スプール51、ランナー52及びゲート53は、サポート本体11の離間部分11cに架橋された状態となっている(架橋された部分)。したがって、鞘管サポート具は、スプール51、ランナー52及びゲート53が補強部として機能して、冷却工程における不均一な収縮等によっても、サポート本体11の変形が抑制される。サポート本体11の変形は、フック11dとフック13cとの円滑なスナップ係合を阻害するため、当該変形の抑制は、鞘管サポート具の施工性向上につながる。
【0020】
冷却工程を終えた鞘管サポート具は、次の(1)〜(4)のいずれかのタイミングで、スプール51、ランナー52及びゲート53が切除される。なお、この切除は、脆弱部としての肉細のゲート53を、ニッパー等の工具を利用して切断して、或いは作業者による引き千切りにより破断して、簡単に行うことができる。
【0021】
(1)冷却工程後から工場出荷までの期間。
(2)取次店に向けた工場出荷後、当該取次店から出荷されるまでの期間。
(3)取次店から施工店に向けて出荷された後、施工店から施工現場へと持ち出されるまでの期間。
(4)施工店から施工現場へと持ち出された後、施工現場にて施工が完了されるまでの期間。
【0022】
前記鞘管サポート具は、スプール51、ランナー52及びゲート53が切除されるまでは、当該スプール51、ランナー52及びゲート53が補強部として機能して、例えばその取扱い時に落下したり踏み付けられたりする等の外力の作用によっても、サポート本体11が変形し難くなっている。
【0023】
さて、図1に示す符号「L」は、水平位置から垂直状態に立ち上げられた湾曲状態にある鞘管100の中心を通る、湾曲状の仮想的な線である。図5及び図6に示す符号「H」は、当該線Lを含む(換言すれば当該線Lで規定される)、紙面と直交する仮想的な平面である。肉細の部分であるゲート53は、仮想的な平面Hを境界とした一方側の領域及び他方側の領域のそれぞれに配置されている。
【0024】
(参考例)
図7に示すように、配管用具としてのサドル71は、パイプを壁面等で保持するためのものである。当該サドル71はその構成部として、半円筒状の保持部72と、当該保持部72の両端部に設けられた平板状の取付部73とを備えている。サドル71は、取付部73に貫通形成されたビス孔73aを介して壁等にビス止めされて、保持部72と壁との間においてパイプを保持する。
【0025】
前記サドル71は、合成樹脂製(例えばポリエチレン製)の一体成形品であって、図8及び図9は、射出成形機から離型された直後の冷却工程にある状態を示している。この状態でサドル71は、複数がスプール81、ランナー82及びゲート83によって一体化されている。当該スプール81、ランナー82及びゲート83は、保持部72において一対の取付部73間に形成された離間部分72aに架橋された状態となっている。
【0026】
したがって、前記サドル71は、スプール81、ランナー82及びゲート83が補強部として機能して、冷却工程における不均一な収縮等によっても、変形が抑制される。サドル71の変形は、取付部73のビス止めのし易さや保持部72によるパイプの保持性を阻害するため、当該変形の抑制は、サドル71の施工性向上につながる。なお、スプール81、ランナー82及びゲート83は、上記一実施形態で述べた(1)〜(4)のいずれかのタイミングで切除される。
【0027】
本発明は次のように具体化してもよい。
○上記一実施形態において、スプール51、ランナー52及びゲート53は同時に切除されなくともよく、例えば工場出荷前までに、架橋状態を維持しつつスプール51の先鋭部分のみを切除し、その後に残りの部分を切除すること。
【0028】
○上記一実施形態において、鞘管100を避けるようにスプール51、ランナー52及びゲート53を設定すれば、当該スプール51、ランナー52及びゲート53を切除せずに残したままの施工が可能である。
【0029】
○上記一実施形態を変更し、流体管が挿通される鞘管を、水平状態から同じ水平状態へ方向転換するために用いられる鞘管サポート具において具体化すること。
【0030】
○上記一実施形態を変更し、ガス管やエア管等の通気管が挿通される鞘管に用いられる鞘管サポート具に具体化すること。
【0031】
○上記一実施形態を変更し、サポート本体11及び保持扉13のうちの一方に、凹部又は透孔からなる凹状部を形成して、当該凹状部を構成する肉部を係止壁及び当接壁のうちの一方とし、サポート本体11及び保持扉13のうちの他方に、保持扉13の閉鎖状態にて前記凹状部に入り込む凸状部を設けて、当該凸状部を係止壁及び当接壁のうちの他方とすること。
【0032】
○上記一実施形態において、フィルムヒンジ14を軸支構造に変更すること。
【0033】
○上記一実施形態において、スナップ係合部(フック11d及びフック13c)をボルト止めに変更すること。
【0034】
○参考例の発明を適用可能な配管用具としては、サドル以外にも、露出配管を覆うためのカバーや、パイプ継手や、水栓コンセントボックスや、排水路の負圧を解消するための通気弁装置や、浴槽用の循環口装置等が挙げられる。
【符号の説明】
【0035】
11…サポート本体、11c…離間部分、11d…係合部としてのフック、13…保持扉、13a…第一端部、13b…第二端部、13c…係合部としてのフック、14…ヒンジとしてのフィルムヒンジ、51…スプール、52…ランナー、53…ゲート、71…サドル、72…保持部、72a…離間部分、73…取付部、81…スプール、82…ランナー、83…ゲート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9