(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照して以下の順序で説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の機能構成を示すブロックダイアグラムである。画像形成装置1は、制御部10と、画像形成部20と、記憶部40と、画像読取部50と、定着部80とを備えている。画像読取部50は、原稿から画像を読み取ってデジタルデータである画像データIDを生成する。
【0013】
画像形成部20は、色変換処理部21と、ハーフトーン処理部22と、校正用濃度センサ28と、露光部29と、アモルファスシリコン感光体である有色トナー用感光体ドラム(像担持体)30c〜30kと、アモルファスシリコン感光体である透明トナー用感光体ドラム30tと、有色トナー用現像部100c〜100kと、有色トナー用現像部100c〜100kのそれぞれに有色トナーを供給する有色トナー供給部200c〜200kと、単一の透明トナー用現像部100tと、単一の透明トナー用現像部100tに透明トナーを供給する2つの透明トナー供給部200tg、200tmと、帯電部25c〜25tとを有している。
【0014】
感光体ドラム30c〜30tは、4つの有色トナー用感光体ドラム30c,30m,30y,30kと、1つの透明トナー用感光体ドラム30tとを含んでいる。現像部100c〜100tは、4つの有色トナー用現像部100c,100m,100y,100kと、1つの透明トナー用現像部100tとを含んでいる。帯電部25c〜25tは、4つの有色トナー用帯電部25c,25m,25y,25kと、1つの透明トナー用帯電部25tとを含んでいる。
【0015】
有色トナー用感光体ドラム30c〜30k、有色トナー用現像部100c〜100k及び有色トナー用帯電部25c〜25kは、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの有色トナーを含む有色現像剤を使用して有色トナー現像を行うことができる。一方、透明トナー用感光体ドラム30t、透明トナー用現像部100t及び透明トナー用帯電部25tは、透明トナーを含む透明現像剤を使用して透明トナー現像を行うことができる。
【0016】
透明トナーは、比較的に光沢度の高いグロストナーと、比較的に光沢度の低いマットトナーという特性が異なる2種類のトナーの混合物(混合透明トナーとも呼ばれる。)として構成されている。グロストナーは、グロストナーを収容する透明トナー供給部200tgから透明トナー用現像部100tに供給される。マットトナーは、マットトナーを収容する透明トナー供給部200tmから透明トナー用現像部100tに供給される。透明トナー供給部200tg及び透明トナー供給部200tmは、グロストナーの供給量とマットトナーの供給量とを独立して制御可能である。グロストナーは、第1の透明トナーとも呼ばれる。マットトナーは、第2の透明トナーとも呼ばれる。透明トナー供給部200tgは、第1の透明トナー供給部とも呼ばれる。透明トナー供給部200tmは、第2の透明トナー供給部とも呼ばれる。
【0017】
本実施形態では、予め設定されている光沢度に基づいて、2種類のトナーの混合比率が設定されている。混合比率は、たとえば写真画像用の高光沢度モードと、文字画像用の低光沢度モードとを含む複数の設定が可能である。高光沢度モードは、比較的にグロストナーの混合比率が高いモードである。低光沢度モードは、比較的にマットトナーの混合比率が高いモードである。
【0018】
グロストナーは、結晶性のポリエステル樹脂等を使用する低融点透明トナー粒子から構成されている。マットトナーは、非晶性の樹脂等を使用する高融点透明トナー粒子から構成されている。低融点透明トナー粒子は、高融点透明トナー粒子に含まれる樹脂よりも低融点の樹脂を含んでいる。樹脂としては、たとえば様々なポリエステル樹脂が利用可能である。本実施形態では、低融点透明トナー粒子には、95℃の融点のポリエステル樹脂が使用されている。高融点透明トナー粒子には、105℃の融点のポリエステル樹脂が使用されている。高融点透明トナーの融点と低融点透明トナーの融点との差は、5℃から15℃であることが好ましい。
【0019】
グロストナーは、低融点透明トナー粒子から構成されているので、定着工程における加熱・加圧処理によって比較的に多く溶融して高い光沢を発生させる。一方、マットトナーは、高融点透明トナー粒子から構成されているので、定着工程における加熱・加圧処理によって比較的に溶融が少なく光沢も低くなる。
【0020】
さらに、本願発明者は、定着工程前においては、グロストナー(低融点透明トナー粒子)を使用する透明トナー像が白色を呈し、マットトナー(高融点透明トナー粒子)を使用する透明トナー像が透明であり、光学的に区別可能であるという特徴を見いだした。
【0021】
色変換処理部21は、RGBデータである画像データIDをCMYKデータに色変換する。ハーフトーン処理部22は、CMYKデータにハーフトーン処理を実行してCMYKのハーフトーンデータを生成する。ハーフトーン処理部22は、さらに、透明トナーのドットが予め設定されているドット密度となるような透明トナー用のハーフトーンデータを生成する。
【0022】
制御部10は、RAMやROM等の主記憶手段、及びMPU(Micro Processing Unit)やCPU(Central Processing Unit)等の制御手段を備えている。また、制御部10は、各種I/O、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)、バス、その他ハードウェア等のインターフェイスに関連するコントローラ機能を備え、画像形成装置1全体を制御する。
【0023】
記憶部40は、非一時的な記録媒体であるハードディスクドライブやフラッシュメモリー等からなる記憶装置で、制御部10が実行する処理の制御プログラムやデータを記憶する。
【0024】
記憶部40は、本実施形態では、さらにCMYK階調校正用調整パッチと、CMYKハーフパッチとを形成するための校正用データCDを格納している。ハーフパッチは、100%未満のドット面積率を有し、ベタ画像(ベタ濃度の画像)を表現するパッチである。記憶部40は、さらに、透明トナー混合比率調整用パッチを形成して反射光量を検知するための混合比率調整用データADを含んでいる。
【0025】
図2は、一実施形態に係る画像形成装置1の全体構成を示す断面図である。本実施形態の画像形成装置1は、タンデム型のカラープリンターである。画像形成装置1は、その筐体70内に、マゼンタ、シアン、イエロー、及びブラックの各色に対応させて有色トナー用感光体ドラム(像担持体)30m、30c、30y及び30kと、透明トナー用感光体ドラム30tとが一列に配置されている。有色トナー用感光体ドラム30m、30c、30y及び30kのそれぞれに隣接して、有色トナー用現像部100m、100c、100y及び100kが配置されている。透明トナー用感光体ドラム30tに隣接して、透明トナー用現像部100tが配置されている。
【0026】
有色トナー用感光体ドラム30c〜30k及び透明トナー用感光体ドラム30tには、露光部29から各色用のレーザー光Lm、Lc、Ly、Lk及びLtが照射(露光)される。この照射によって、有色トナー用感光体ドラム30c〜30k及び透明トナー用感光体ドラム30tに静電潜像が形成される。有色トナー用現像部100m、100c、100y及び100kは、有色トナーを攪拌しながら、有色トナー用感光体ドラム30m、30c、30y及び30kの表面に形成された静電潜像にトナーを付着させる。
【0027】
透明トナー用現像部100tは、グロストナーとマットトナーとを攪拌して所定の比率で混合された透明トナーとしつつ、透明トナー用感光体ドラム30tの表面に形成された静電潜像にトナーを付着させる。これにより、現像工程が完了し、有色トナー用感光体ドラム30c〜30kの表面に各色の有色トナー像が形成され、透明トナー用感光体ドラム30tの表面に透明トナー像が形成される。
【0028】
画像形成装置1は、無端状の中間転写ベルト27を有している。中間転写ベルト27は、テンションローラ24、駆動ローラ26a及び従動ローラ26bに張架されている。中間転写ベルト27は、駆動ローラ26aの回転によって循環駆動させられる。
【0029】
たとえば透明トナー用感光体ドラム30t上の透明トナーのトナー像である透明トナー像は、透明トナー用感光体ドラム30tと一次転写ローラ23tとで中間転写ベルト27を挟み、中間転写ベルト27が循環駆動させられることによって中間転写ベルト27に一次転写される。この点は、シアン、イエロー、マゼンタ及びブラックの有色トナーについても同様である。中間転写ベルト27の表面には、所定のタイミングで相互に重ね合わせられるように一次転写が行われることによって、透明トナー像の上に重ねてフルカラートナー像が形成される。フルカラートナー像は有色トナー像とも呼ばれる。
【0030】
透明トナー像とその上に重ねて形成されているフルカラートナー像は、一体として合成トナー像とも呼ばれる。合成トナー像は、その後、給紙カセット60から供給された印刷用紙Pに二次転写される。これにより、印刷用紙Pでは、フルカラートナー像の上側(印刷用紙Pの反対側)に透明トナー像が形成されていることになる。定着部80は、定着ローラ対81によって透明トナー像及びフルカラートナー像を印刷媒体としての印刷用紙Pに定着させることができる。
【0031】
図3は、本発明の一実施形態に係る現像部100の構造を示した側面断面図である。本実施形態では、現像部100は、透明トナー用現像部100t及び有色トナー用現像部100c〜100kとして使用されている。現像部100は、2本の攪拌搬送部材141,142と、磁気ローラ143と、現像ローラ(現像剤担持体)144と、現像容器145と、規制ブレード146と、現像バイアス電位印加部150とを備えている。現像バイアス電位印加部150は、制御部10によって制御されている。
【0032】
現像容器145は、現像部100の外郭を構成している。現像容器145の下部には、仕切り部145bが設けられている。仕切り部145bは、現像容器145の内部を第1搬送室145aと第2搬送室145cとに仕切っている。第1搬送室145a及び第2搬送室145cは、
図3に垂直な方向に柱状に延びており、磁性キャリアと透明トナーからなる2成分現像剤(単に現像剤とも呼ばれる。)を収容する。
【0033】
現像容器145は、さらに磁気ローラ143及び現像ローラ144を保持している。現像容器145には、現像ローラ144を透明トナー用感光体ドラム30tに向けて露出させる開口147が形成されている。
【0034】
2本の攪拌搬送部材141,142は、それぞれ第1搬送室145a及び第2搬送室145cの内部で現像剤を攪拌しつつ循環的に移動させている。攪拌搬送部材141,142は、混合に必要な時間として予め設定されている時間だけ現像剤を攪拌することによって、グロストナーとマットトナーの混合物としての透明トナーを磁性キャリア中で生成しつつ正の極性に帯電することができる。
【0035】
攪拌搬送部材142は、磁気ブラシとして、帯電した現像剤を磁気ローラ143に供給する。磁気ローラ143は、非磁性の回転スリーブ143aと、回転スリーブ143aの内部に固定されている固定マグネット体143bとを有している。磁気ローラ143と現像ローラ144とは、所定のクリアランスで対向している。規制ブレード146は、磁気ブラシを予め設定されている所定の高さに調整することができる。
【0036】
現像ローラ144は、回転可能な非磁性の現像スリーブ144aと、現像スリーブ144aの内部で固定されている現像ローラ側磁極144bとを有している。磁気ローラ143には、磁気ローラ電位Vmagが印加されている。現像ローラ144には、現像バイアス電位印加部150によって現像バイアス電位Vslvが印加されている。現像バイアス電位印加部150は、交流バイアス電位を印加する交流印加部151と、交流印加部151に直列に接続されて直流バイアス電位を印加する直流印加部152とを備えている。
【0037】
図4は、一実施形態に係る画像形成装置1における透明トナーパッチを形成するための現像バイアス電位を示す図である。現像バイアス電位印加部150は、現像ローラ144に現像バイアス電位Vslvとしての直流バイアス電位20〜80Vと、周波数2.7kHzのピークツーピーク値1600Vの矩形波電位とが重畳された交流バイアス電位が印加されている。磁気ローラ143には、現像時において、磁気ローラ電位Vmagとして直流バイアス電位300Vが印加され、非現像時において、直流バイアス電位−300Vが印加される。
【0038】
これにより、現像時においては、磁気ローラ電位Vmagと現像バイアス電位Vslv(トナーが現像ローラ144に供給される電位状態)の電位差が大きくなってトナーが現像ローラ144に供給される量が多くなり、非現像時においては、現像バイアス電位Vslvと磁気ローラ電位Vmag(トナーが現像ローラ144から回収される電位状態)の電位差が大きくなってトナーが現像ローラ144から回収される量が多くなる。
【0039】
さらに、磁気ローラ143に現像時と非現像時に印加される磁気ローラ電位Vmagを調整することによって、現像バイアス電位Vslvと磁気ローラ電位Vmagとの間の現像時のトナー層形成電位差ΔVを変化させることができる。これにより、現像ローラ144には、現像バイアス電位Vslvと磁気ローラ電位Vmagとの間のトナー層形成電位差ΔVに応じた厚さのトナー薄層(単にトナー層とも呼ばれる。)が形成される。
【0040】
アモルファスシリコン感光体は、有機感光体(OPC)に比べ比誘電率が3倍程度高く、現像コントラスト電位に対して、感光体が保持できるトナー量が多いという特徴を有している。このため、アモルファスシリコン感光体は、通常使用するベタ濃度よりも多くのトナーを保持することが可能である。したがって、アモルファスシリコン感光体は、飽和状態で使用すると、ベタ濃度に必要な量を超えて保持してしまうことになる。よって、本実施形態では、アモルファスシリコン感光体は、ベタ濃度においても非飽和状態において使用され、現像ローラ144上に形成されたトナーがほぼすべて感光体に現像されて現像が終了することでベタ濃度が決定されるように使用される。なお、本発明は、アモルファスシリコン感光体に限られず、他の感光体にも適用可能である。
【0041】
現像ローラ144は、透明トナー用感光体ドラム30tとの間に所定のクリアランスを有する対向部分(現像ニップ)を介して透明トナー用感光体ドラム30tに透明トナーを付着させて、透明トナー像を透明トナー用感光体ドラム30tの表面に形成する。透明トナー像は、透明トナー用感光体ドラム30tの表面における静電潜像の電位と現像ローラ144に印加される現像バイアス電位Vslvの電位差に基づいて形成される。
【0042】
現像バイアス電位Vslvは、パルス幅変調における現像バイアスデューティ比(=T1/(T1+T2)×100)の矩形波として透明トナー用感光体ドラム30tへの現像を可能としている。透明トナー用感光体ドラム30tでは、表面電位が20Vに設定され、現像ローラ144との間に現像電界を形成している。この現像電界では、現像バイアス電位VslvがVHの時間T1においては、透明トナー粒子が透明トナー用感光体ドラム30tの方向に加速され、現像バイアス電位VslvがVLの時間T2においては、透明トナー粒子が現像ローラ144の方向に加速される。透明トナー用感光体ドラム30tへの現像量は、これらの加速の2回積分として顕在化することになる。
【0043】
本実施形態では、グロストナーの現像量とマットトナーの現像量の比である透明トナー現像比は、現像バイアス電位Vslvの現像バイアスデューティ比の変更によって調整することができる。グロストナーの低融点透明トナー粒子は、マットトナーの高融点透明トナー粒子と比較して、以下のような特徴を有するような物理的特性を有するように形成されているからである。現像バイアスデューティ比は、単にデューティ比とも呼ばれる。
【0044】
(1)マットトナー体積平均粒径(d50)>グロストナーの体積平均粒径(d50)
(2)マットトナーの平均円形度>グロストナーの平均円形度
(3)0.2<マットトナー体積平均粒径−グロストナーの体積平均粒径<1.0
【0045】
体積平均粒径が小さいトナー粒子は、ファンデルワールス力の影響等によって現像スリーブ144aから透明トナー用感光体ドラム30tへ飛翔しにくい。よって、グロストナーの低融点透明トナー粒子は、マットトナーの高融点透明トナー粒子よりも飛翔しにくいことになる。一方、平均円形度の低いトナー粒子は、現像スリーブ144aへの付着力が強く、透明トナー用感光体ドラム30tへ飛翔しにくい。よって、グロストナーの低融点透明トナー粒子は、マットトナーの高融点透明トナー粒子よりも飛翔しにくいことになる。
【0046】
本願発明者の実験によれば、現像バイアス電位Vslvのデューティ比が低い場合には、グロストナーの低融点透明トナー粒子が殆ど現像されず、マットトナーの高融点透明トナー粒子のみが現像されることを見いだした。さらに、現像バイアス電位Vslvのデューティ比を上昇させると、マットトナーの高融点透明トナー粒子の現像量の増加に比較して、グロストナーの低融点透明トナー粒子の現像量が急激に上昇することを見いだした。
【0047】
本願発明者は、マットトナー体積平均粒径とグロストナーの体積平均粒径の好ましい範囲として、0.2<マットトナー体積平均粒径−グロストナーの体積平均粒径<1.0を見いだした。この範囲において、画像形成装置1は、現像バイアス電位Vslvのデューティ比を使用してグロストナーの現像量とマットトナーの現像量の比である透明トナー現像比を効果的に調整することができる。
【0048】
このように、本実施形態に係る画像形成装置1は、グロストナーの現像量とマットトナーの現像量の比である透明トナー現像比は、現像バイアス電位のデューティ比によって調整することができる。ただし、現像バイアス電位Vslvのデューティ比による透明トナー現像比の制御は、透明トナー用現像部100tの内部で攪拌されているグロストナーとマットトナーの混合比を変化させ得ることを意味している。
【0049】
さらに、現像バイアス電位Vslvのデューティ比による透明トナー現像比の制御は、透明トナー用現像部100tにおけるグロストナーとマットトナーの混合比が予め設定されている混合比率である基準混合比率(後述)であることを前提としている。よって、本実施形態に係る画像形成装置1は、透明トナー用現像部100tにおける透明トナーの混合比が基準混合比率に対して許容誤差範囲内であることを要請していることになる。
【0050】
図5は、一実施形態に係る画像形成装置1の透明トナー混合比率調整処理の内容を示すフローチャートである。透明トナー混合比率調整処理は、透明トナー混合比率を計測し、予め設定されている範囲内となるように、透明トナー供給部200tgと透明トナー供給部200tmとからグロストナーとマットトナーの少なくとも一方を供給する処理である。
【0051】
ステップS10では、制御部10は、調整用データ読出処理を実行する。調整用データ読出処理では、制御部10は、混合比率調整用データADを記憶部40から読み出す。混合比率調整用データADは、高光沢度モード用の透明トナー混合比率調整用パッチを形成するためのデューティ比と低光沢度モード用の透明トナー混合比率調整用パッチを形成するためのデューティ比との間の複数のデューティ比と、これら複数のデューティ比に対応する各基準混合比率のテーブルを含んでいる。
【0052】
ステップS20では、画像形成装置1は、調整用パッチ形成処理を実行する。調整用パッチ形成処理では、制御部10は、混合比率調整用データADから読み出したデータを使用して画像形成部20に調整用パッチを形成させる。調整用パッチは、中間転写ベルト27上に形成される。
【0053】
ステップS30では、制御部10は、校正用濃度センサ28を透明トナーの調整用パッチの反射光量を計測する。校正用濃度センサ28は、たとえばLED(図示せず)から赤外光を出射し、P波のみを透過させる偏光フィルタを透過させて赤外光のP波をパッチに照射し、受光素子で検出した反射光のP波とS波の比率に基づいて濃度を検出する。ただし、透明トナーに関しては、校正用濃度センサ28は、濃度センサとしてではなく、反射光量を検知するための反射光量検知センサとして使用されている。
【0054】
図6は、一実施形態に係る画像形成装置1における透明トナーパッチの反射率とデューティ比の関係を示す図である。
図6は、現像バイアスデューティ比を正規化して横軸に示し、P波反射率を正規化して縦軸に示している。
図6(a)は、グロストナーのみを含む透明トナーを使用して透明トナーパッチを形成したときのデューティ比とP波反射率の関係を示すグロストナー線TGと、マットトナーのみを含む透明トナーを使用して透明トナーパッチを形成したときのデューティ比とP波反射率の関係を示すマットトナー線TMとを示している。
【0055】
マットトナーは、定着部80による印刷用紙Pへの定着工程における加熱作用の前から透明である。よって、マットトナーを使用する透明トナーパッチは、全体的にP波反射率が低く、デューティ比が高くなっても低い反射率を示している。一方、グロストナーは、定着部80による印刷用紙Pへの定着工程の前では、乱反射して透過率が低い白色の透明トナーパッチを形成する。
【0056】
ただし、グロストナーは、定着工程における加熱作用によって透過率が高くなって透明となる。よって、マットトナー及びグロストナーは、いずれも定着後においては光沢度のみが相違し、いずれも透明な層を形成することができる。これにより、画像形成装置1は、グロストナーとマットトナーの混合物としての透明トナーの混合比率を調整することによって、フルカラートナー像の画像を損なうことなく透過させつつ印刷物の光沢度を制御することができる。
【0057】
校正用濃度センサ28には、パッチからの正反射光を検出する正反射方式やパッチからの拡散反射光を検出する拡散反射方式もある。本実施形態では、透明トナーパッチにおけるグロストナーとマットトナーの混合比率の検出が求められているので、グロストナーの乱反射を効果的に検知できる観点からは拡散反射方式が好ましい。
【0058】
図6(b)は、グロストナーとマットトナーの混合物としての透明トナーを使用して透明トナーパッチを形成したときのデューティ比とP波反射率の関係を示している。曲線Rは、基準となる混合比率である基準混合比率の時に想定されるデューティ比とP波反射率の関係を示している。曲線L1は、グロストナーの混合比率が過度に高い時に想定されるデューティ比とP波反射率の関係を示している。曲線L2は、マットトナーの混合比率が過度に高い時に想定されるデューティ比とP波反射率の関係を示している。曲線Rw1,Rw2は、基準混合比率からの許容誤差の範囲を示している。
【0059】
ステップS40では、制御部10は、透明トナーパッチの計測値が基準値の範囲内であるか否かを決定する。具体的には、制御部10は、計測値が2本の曲線Rw1,Rw2に囲まれる範囲内であるか否か、すなわち許容誤差の範囲内であるか否かを決定する。制御部10は、許容誤差の範囲内である場合には処理を終了し、許容誤差の範囲内でない場合には処理をステップS50に進める。具体的には、校正用濃度センサ28による計測値が計測値P2である場合には処理が終了され、計測値が計測値P1又は計測値P3である場合には処理がステップS50に進められる。
【0060】
ステップS50では、制御部10は、トナー供給量算出処理を実行する。トナー供給量算出処理では、制御部10は、基準混合比率からの偏差d1,d3(
図6(b)参照)に基づいて、混合比が基準混合比率に十分に近づくようなトナー供給量を算出する。具体的には、制御部10は、計測値が計測値P1の時には、グロストナーの比率が過剰なので、偏差d1に基づいてマットトナーのトナー供給量を算出し、計測値が計測値P3の時には、マットトナーの比率が過剰なので、偏差d3に基づいてグロストナーのトナー供給量を算出する。
【0061】
ステップS60では、制御部10は、トナー供給処理を実行する。トナー供給処理では、制御部10は、透明トナー供給部200tg又は透明トナー供給部200tmを制御して算出されたトナー供給量だけグロストナー又はマットトナーを透明トナー用現像部100tに供給する。すなわち、制御部10は、グロストナーとマットトナーとを相違する量(たとえばグロストナーのみ供給)で供給することによって透明トナーの混合比率を調整することができる。
【0062】
このように、一実施形態に係る画像形成装置1によれば、定着工程前の透明パッチのP波反射率を検知し、グロストナーとマットトナーの混合比率を計測することができる。これにより、画像形成装置1は、グロストナーとマットトナーの混合物としての透明トナーの混合比率を適切に調整することができる。これにより、デューティ比の操作と混合比率の調整によって、簡易な構成で適切な光沢度を実現することができる。
【0063】
本発明は、上記実施形態だけでなく、以下のような変形例でも実施することができる。
【0064】
変形例1:上記実施形態では、透明トナー供給部からグロストナー又はマットトナーを透明トナー用現像部に供給することによって透明トナーの混合比率を調整しているが、これに限られない。現像バイアス電位Vslvのデューティ比を低い状態として現像工程を行ってマットトナーを強制排出することによって透明トナーの混合比率を調整するようにしてもよいし、あるいはマットトナーを強制排出しつつグロストナーを供給するようにしてもよい。
【0065】
変形例2:上記実施形態では、中間転写ベルト方式が採用されているが、これに限られず、たとえば転写ドラム方式を採用することもできる。本発明の画像形成装置は、広く一般に定着工程前の透明パッチの反射光量を計測できる中間転写部を有するものであればよい。