特許第6593673号(P6593673)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6593673身体情報取得装置および身体情報取得方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593673
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】身体情報取得装置および身体情報取得方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/107 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   A61B5/107 100
   A61B5/107ZDM
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-266243(P2014-266243)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-123589(P2016-123589A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100096873
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 廣泰
(74)【代理人】
【識別番号】100123319
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【弁理士】
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100138357
【弁理士】
【氏名又は名称】矢澤 広伸
(72)【発明者】
【氏名】小竹 康代
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 友紀
【審査官】 磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0340479(US,A1)
【文献】 特開2009−011734(JP,A)
【文献】 特開2012−059082(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0277571(US,A1)
【文献】 ゴールデンカノン,1995年 4月,URL,http://www.cocoros.jp/data/pdf/wacoal/report/W-R-34.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/107
A41H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の身体を測定して得られた、身体の全身の外形の3次元形状を表す身体形状データを取得する身体形状取得部と、
前記身体形状データの3次元座標系として、身体に対して前後の方向にZ軸、左右の方向にX軸、上下の方向にY軸をおいた場合に、Y軸に平行な所定の投影面に対し、前記身体形状データにより表される前記対象者の身体の3次元形状を平行投影した平行投影像を生成する投影像生成部と、
前記身体形状データに対し、身体情報を取得すべき1つ以上の特定Y位置を設定する位置設定部と、
設定された前記特定Y位置における、Y軸に直交する方向の前記平行投影像の長さを、前記対象者の身体情報の1つとして取得する身体情報取得部と、
を有し、
前記位置設定部は、予め定義された身長と前記特定Y位置と高さの比率を用いて、前記対象者の身長に基づいて、前記身体形状データにおける前記特定Y位置を設定し、
前記比率は、性別及び年齢に応じたものであり、
前記位置設定部は、前記対象者の性別と年齢と身長とに基づいて、前記身体形状データにおける前記特定Y位置を設定する
ことを特徴とする身体情報取得装置。
【請求項2】
前記所定の投影面は、YZ平面、又は、XY平面である
ことを特徴とする請求項1に記載の身体情報取得装置。
【請求項3】
前記特定Y位置は、バスト位置、ウエスト位置、及び、ヒップ位置のうち少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の身体情報取得装置。
【請求項4】
前記位置設定部により複数の特定Y位置が設定されている場合に、
前記身体情報取得部は、前記複数の特定Y位置のそれぞれで取得されたY軸に直交する方向の前記平行投影像の長さの比を、前記対象者の身体情報の1つとして取得する
ことを特徴とする請求項1〜のうちいずれか1項に記載の身体情報取得装置。
【請求項5】
前記身体情報取得部は、前記身体形状データにより表される前記対象者の身体の3次元形状の、前記特定Y位置におけるZX断面での周囲長を、前記対象者の身体情報の1つとして取得する
ことを特徴とする請求項1〜のうちいずれか1項に記載の身体情報取得装置。
【請求項6】
前記身体情報取得部で得られた前記対象者の身体情報と、
異なる時刻に取得された前記対象者と同じ人の同じ種類の身体情報、または、前記対象者と異なる人の同じ種類の身体情報、または、所定の方法で算出された同じ種類の身体情報と、を比較し、
当該比較した結果を前記対象者の身体情報の1つとして出力する身体情報比較部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1〜のうちいずれか1項に記載の身体情報取得装置。
【請求項7】
前記平行投影像又はその輪郭と共に前記対象者の身体情報を表示装置に出力する情報出力部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1〜のうちいずれか1項に記載の身体情報取得装置。
【請求項8】
コンピュータが、
対象者の身体を測定して得られた、身体の全身の外形の3次元形状を表す身体形状データを取得するステップと、
前記身体形状データの3次元座標系として、身体に対して前後の方向にZ軸、左右の方向にX軸、上下の方向にY軸をおいた場合に、Y軸に平行な所定の投影面に対し、前記身体形状データにより表される前記対象者の身体の3次元形状を平行投影した平行投影像を生成するステップと、
前記身体形状データに対し、身体情報を取得すべき1つ以上の特定Y位置を、設定するステップと、
設定された前記特定Y位置における、Y軸に直交する方向の前記平行投影像の長さを、前記対象者の身体情報の1つとして取得するステップと、
を実行し、
前記設定するステップでは、予め定義された身長と前記特定Y位置との高さの比率を用いて、前記対象者の身長に基づいて、前記身体形状データにおける前記特定Y位置を設定し、
前記比率は、性別及び年齢に応じたものであり、
前記設定するステップでは、前記対象者の性別と年齢と身長とに基づいて、前記身体形状データにおける前記特定Y位置を設定する
ことを特徴とする身体情報取得方法。
【請求項9】
請求項に記載の身体情報取得方法の各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の身体の外形に関わる情報を取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
健康管理や美容目的のために、人体に対して行った各種計測の結果を記録し、その変化を比較する装置が一般に普及している。例えば、特許文献1に記載の脂肪計は、体重や体脂肪率、BMIなどの値を記録し、過去の値と比較することで、変化の度合いをユーザに通知することができる。
【0003】
また、このような体の内部情報に加え、体の寸法や形状、ゆがみといった外部情報を計測する装置が考案されている。例えば、特許文献2に記載の体型比較装置では、デジタルカメラを用いて被検者を撮影し、当該被検者の体の輪郭を抽出したうえで、同年代の理想的な体型データと比較したデータを出力する。このように、体の形状についてのデータを提示することで、ユーザに対して健康増進や美容に対するより強い動機づけを与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−177223号公報
【特許文献2】特開平6−254077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の装置によると、正面または側面から撮影した2次元画像を用いることで、体型の大まかな把握や体型の経年変化を定性的に知ることはできる。しかしながら、カメラで撮影した2次元画像の場合、レンズ収差による歪曲やパースペクティブ(遠近感:レンズに近い部分ほど大きく写り、遠い部分ほど小さく写ること)によって、被写体像に歪みが生じることが避けられない。しかも、レンズ収差やパースペクティブの影響は被写体とカメラの相対的な位置関係に依存するため、(被写体とカメラを毎回同じ位置に配置しない限り)画像間の被写体像の違いを定量的に比較することは難しい。また、そもそも、カメラの原理上、画像から被写体像の外形寸法を正確に取得することはできない。その理由を図7(a)を用いて説明する。レンズの光軸Lから離れた点Pより発せられた光線はレンズに対し斜めに入射する。したがって、被写体の真の側縁Eはカメラの死角となり、画像には写らない。そのため、被写体を正面から撮影した画像から被写体の胴幅を測ろうとしても、実際の胴幅とは異なる値しか得られないのである。
【0006】
また、体の外部情報を計測する装置において、体の寸法としてバストの周囲長を測定するものが従来考案されているが、巻尺や物差しなどの測定器では体の寸法を正確に測定できない。また、これら従来の測定器ではバストの厚みを測定することはできないし、そもそも、健康増進や美容に対するより強い動機づけを目的としてバストの厚みという指標を測定するものは従来存在しなかった。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、身体の外形に関わる身体情報の正確かつ定量的な取得を可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では以下の構成を採用する。
【0009】
本発明に係る身体情報取得装置は、対象者の身体を測定して得られた、身体の全身の
形の3次元形状を表す身体形状データを取得する身体形状取得部と、前記身体形状データの3次元座標系として、身体に対して前後の方向にZ軸、左右の方向にX軸、上下の方向にY軸をおいた場合に、Y軸に平行な所定の投影面に対し、前記身体形状データにより表される前記対象者の身体の3次元形状を平行投影した平行投影像を生成する投影像生成部と、前記身体形状データに対し、身体情報を取得すべき1つ以上の特定Y位置を設定する位置設定部と、設定された前記特定Y位置における、Y軸に直交する方向の前記平行投影像の長さを、前記対象者の身体情報の1つとして取得する身体情報取得部と、を有し、前記位置設定部は、予め定義された身長と前記特定Y位置と高さの比率を用いて、前記対象者の身長に基づいて、前記身体形状データにおける前記特定Y位置を設定し、前記比率は、性別及び年齢に応じたものであり、前記位置設定部は、前記対象者の性別と年齢と身長とに基づいて、前記身体形状データにおける前記特定Y位置を設定することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、身体の外形の3次元形状を表す身体形状データに基づき身体情報の取得(測定)を行うため、従来のカメラ画像では避けがたかったレンズ収差やパースペクティブによる被写体像の歪みの問題が発生しない。また、平行投影像を生成し、その平行投影像の長さ(幅、厚み、と称してもよい)を測るため、従来のカメラ画像のような死角が発生することが無く、身体の外形の寸法を正確に取得することができる。よって、本発明によれば、身体の外形に関わる身体情報を正確に且つ定量的に取得することが可能となる。
【0011】
前記所定の投影面は、YZ平面、又は、XY平面であることが好ましい。YZ平面を投影面とした場合、身体の側面像を得ることができ、当該側面像からは身体の各部の厚み(身体の前後方向の長さ)を正確に測ることができる。XY平面を投影面とした場合、身体の正面像を得ることができ、当該正面像からは身体の各部の幅(身体の左右方向の長さ)を正確に測ることができる。
【0012】
前記特定Y位置は、バスト位置、ウエスト位置、及び、ヒップ位置のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。バスト、ウエスト、ヒップの寸法や形状は、美容やダイエットを意識する人の関心が高い情報だからである。
【0013】
前記位置設定部により複数の特定Y位置が設定されている場合に、前記身体情報取得部は、前記複数の特定Y位置の間隔を、前記対象者の身体情報の1つとして取得することが好ましい。また、前記身体情報取得部は、前記複数の特定Y位置のそれぞれで取得されたY軸に直交する方向の前記平行投影像の長さの比を、前記対象者の身体情報の1つとして取得することも好ましい。各特定Y位置における平行投影像の長さに加え、特定Y位置同士の間隔及び/又は長さの比を取得することで、体型やそのバランスなどの把握が可能となる。
【0014】
さらに、前記身体情報取得部は、前記身体形状データにより表される前記対象者の身体の3次元形状の、前記特定Y位置におけるZX断面での周囲長を、前記対象者の身体情報の1つとして取得することも好ましい。バスト、ウエスト、ヒップの周囲長、胴囲などは、美容やダイエットを意識する人の関心が高い情報だからである。
【0015】
前記平行投影像又はその輪郭と共に前記対象者の身体情報を表示装置に出力する情報出力部をさらに有することが好ましい。平行投影像又はその輪郭と共に各種の身体情報を表示することで、ユーザ(対象者)は自身の身体の外形に関わる特徴を正確かつ定量的に把握することができ、健康管理や美容に役立てることができる。
【0016】
なお、本発明は、上記構成ないし機能の少なくとも一部を有する身体情報取得装置として捉えることができる。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む身体情報取得方法、又は、斯かる方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、又は、そのよう
なプログラムを非一時的に記録したコンピュータ読取可能な記録媒体として捉えることもできる。上記構成及び処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、身体の外形に関わる身体情報の正確かつ定量的な取得が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】身体情報取得装置のシステム構成を示すブロック図。
図2】身体形状データの一例を示す図。
図3】身体情報取得処理のフローチャート。
図4】平行投影像の一例を示す図。
図5】身体情報の一例を示す図。
図6】身体情報表示画面の一例を示す図。
図7】従来技術と本発明の実施形態の比較を示す図。
図8】身体情報取得装置の他の実施形態のシステム構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
<身体情報取得装置の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る身体情報取得装置1のシステム構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、身体情報取得装置1は、身体形状取得部10、投影像生成部11、位置設定部12、身体情報取得部13、情報出力部14などの機能を有している。
【0021】
身体形状取得部10は、対象者の身体を測定して得られた、身体の外形の3次元形状を表す身体形状データを取得する機能を有する。
【0022】
身体形状データとしては、人の身体の外形の3次元形状を表現できるものであれば、どのようなフォーマットのデータを用いてもよい。例えば、身体の外形面を構成する複数のポリゴンの情報(ポリゴンの頂点座標と法線ベクトルなど)が記述されたポリゴンデータであってもよいし、身体の外形面上の複数の点の座標が記述された点群データであってもよい。本実施形態では、図2に示すように、身体に対して前後の方向にZ軸(前方が+)、左右の方向にX軸(右方が+)、上下の方向にY軸(上方が+)をとった3次元座標系を用い、身体の外形面上の複数の点の3次元座標(XYZ座標)を記述した点群データからなる身体形状データを用いる。
【0023】
身体形状取得部10は、対象者の身体の3次元形状を計測する計測装置から身体形状データを直接取得してもよいし、記憶装置やネットワーク上のサーバ(例えばクラウドサーバやネットワークストレージ)から身体形状データを取得してもよい。
【0024】
計測装置としては、例えば、アクティブ三角測量方式の非接触3次元スキャナなどを好ましく利用することができる。アクティブ三角測量方式とは、プロジェクタから所定のパターン光を計測対象(人の身体)の表面に投射し、計測対象表面上のパターンをカメラで撮影し、得られた画像からプロジェクタとカメラと計測対象表面上の点の位置関係を推定することにより、計測対象表面の3次元形状を計算する手法である。パターン光の投射の方法により、空間コード化法と時間コード化法があるが、いずれの方法を用いてもよいし、両者を組み合わせてもよい。身体の外形を測定する際には、裸の状態で体表面の形状を測定してもよいし、肌着などの衣服(薄くて身体にフィットする衣服が望ましい)を着用
した状態で測定を行ってもよい。
【0025】
なお、身体形状取得部10が取得する身体形状データは、全身のデータであってもよいし、身体の一部のデータであってもよい。本実施形態では、胴部分(体幹部分)の3次元形状データを利用するため、胴部分のデータを少なくとも含んでいればよい。例えば、胴部分のみのデータでもよいし、上半身のみのデータでもよいし、上肢や下肢の一部又は全部を含むデータであってもよい。
【0026】
投影像生成部11は、身体形状データにより表される身体の3次元形状を所定の投影面に対し(該投影面に垂直な方向に)平行投影した平行投影像を生成する機能を有する。投影面は任意に設定でき、また、複数の投影面のそれぞれに対し複数の平行投影像を生成することもできる。例えば、身体の3次元形状をYZ平面に対し平行投影すれば、身体の側面像を得ることができる。XY平面に対し平行投影すれば、身体の正面像を得ることができる。
【0027】
位置設定部12は、身体形状データに対し、身体情報を取得すべき特定部位のY位置(「特定Y位置」と称す)を設定する機能を有する。特定Y位置は1つでもよいし、複数設定することもできる。また、特定Y位置を設定する部位は固定でもよいし、ユーザが身体情報の種類やその取得目的に応じて適宜変更できるようにしてもよい。例えば、女性の体型に関わる身体情報を取得するのであれば、バスト(トップバスト)、ウエスト、ヒップなどの部位に特定Y位置を設定するとよい。また、腹囲測定が目的であれば、ヘソ部分に特定Y位置を設定するとよい。他にも、アンダーバストの位置、肩の位置、腰骨の位置など、任意の部位を特定Y位置に設定することができる。
【0028】
特定Y位置の設定方法には、位置設定部12が提供するユーザインターフェイスを利用してユーザが手動で設定する方法と、位置設定部12が自動で設定する方法とがあり、いずれの方法を用いてもよい。ユーザが手動で大まかに設定した後に位置設定部12が適切なY位置にフィットさせたり、逆に、位置設定部12が自動で設定した位置をユーザが手動で微調整できるようにしてもよい。
【0029】
手動設定の具体的な方法としては、例えば、対象者の身体形状又は平行投影像を示す画像を表示装置に表示し、マウスやタッチパネルなどの入力装置を用いて画像上の所望のY位置を指定させるようなユーザインターフェイスを利用するとよい。これにより直観的な位置指定が可能となる。
【0030】
一方、自動設定の具体的な方法としては、例えば、対象者の身長に対する比率で各特定Y位置を設定する方法、特定Y位置を設定すべき身体上のランドマーク点(乳首、ヘソなど)が定義されている人体モデルに対し、対象者の身体形状データの点群をフィッティングすることで、身体形状データにおける各ランドマーク点の位置を特定する方法、などがある。前者の方法の場合、対象者の身長は、身体形状データから計算してもよいし、身体形状データに付加された属性情報として与えられてもよい。身長と各特定Y位置(例えば、バスト位置、ウエスト位置、ヒップ位置など)の比率は、ウィトルウィウス的人体図にて定義された比率を利用してもよいし、複数の人の身体形状データのサンプルから統計的に求めた比率を利用してもよい。このとき、対象者の性別や年齢などに応じて比率を変更してもよい。また、後者の方法の例としては、例えば、国際公開公報第WO2012/011068号に記載された方法などが挙げられる。
【0031】
身体情報取得部13は、平行投影像又は身体形状データから、対象者の身体情報を取得する機能を有する。身体情報としては、対象者の身体の外形に関わる指標であれば、どのような情報を取得してもよい。健康管理や美容に有益な情報であれば特に好ましい。情報
出力部14は、身体形状データに基づく対象者の身体の3次元形状、平行投影像、取得した身体情報などの情報を表示装置に出力する機能を有する。身体情報取得部13と情報出力部14の詳細については後述する。
【0032】
身体情報取得装置1は、CPU(中央演算処理装置)、RAM(Random Access Memory)、補助記憶装置(例えば、フラッシュメモリ、ハードディスク)、入力装置(例えば、マウス、タッチパネル)、表示装置などを有するコンピュータにより構成することができる。上述した各機能は、補助記憶装置に格納されたプログラムがRAMにロードされ、CPUにより実行されることで実現されるものである。この種のコンピュータとしては、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話、ゲーム機などを例示できる。なお、上述した機能の一部又は全部をFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などで実現してもよいし、他のコンピュータ(例えばクラウドサーバ)で処理してもよい。
【0033】
<身体情報取得装置の動作>
図3のフローチャートを参照して、身体情報取得装置1による身体情報取得処理の流れを説明する。
【0034】
まず、身体形状取得部10が、対象者の身体形状データを取得する(ステップS30)。
【0035】
次に、投影像生成部11が、ステップS30で取得した身体形状データに基づき、平行投影像を生成する(ステップS31)。本実施形態では、図4(a)、図4(b)に示すように、YZ平面に平行投影した側面像40と、XY平面に平行投影した正面像41の2つが生成されるものとする。
【0036】
次に、位置設定部12が、ステップS30で取得した身体形状データに対し、自動又は手動により特定Y位置を設定する(ステップS32)。本実施形態では、図5に示すように、特定Y位置として、バスト位置50、ウエスト位置51、ヒップ位置52の3つが設定されるものとする。なお、ステップS31とS32の処理の順番は逆でもよい。
【0037】
次に、身体情報取得部13が、ステップS31で生成した平行投影像(側面像40、正面像41)、又は、ステップS30で取得した身体形状データから、所望の身体情報を取得する(ステップS33)。以下、本実施形態の装置で取得可能な身体情報の一例を挙げる。ステップS33では、以下の身体情報のうちの一部又は全部を取得してもよいし、以下に挙げたもの以外の身体情報を取得してもよい。なお、以下の例で、「バスト位置50における側面像40のZ方向長さ」はバストの厚みを意味する。
【0038】
(1)特定Y位置におけるY軸に直交する方向の平行投影像の長さ(具体的には、図5に示す以下の6つの指標)
・バスト位置50における側面像40のZ方向長さ(バストの厚み50Z)
・ウエスト位置51における側面像40のZ方向長さ(ウエストの厚み51Z)
・ヒップ位置52における側面像40のZ方向長さ(ヒップの厚み52Z)
・バスト位置50における正面像41のX方向長さ(バストの幅50X)
・ウエスト位置51における正面像41のX方向長さ(ウエストの幅51X)
・ヒップ位置52における正面像41のX方向長さ(ヒップの幅52X)
【0039】
(2)特定Y位置同士の間隔(具体的には、図5に示す以下の2つの指標)
・バスト位置50とウエスト位置51の間隔53BW
・ウエスト位置51とヒップ位置52の間隔53WH
【0040】
(3)特定Y位置のそれぞれで取得された平行投影像の長さの比(具体的には以下の2つの指標)
・厚みの比=バストの厚み50Z:ウエストの厚み51Z:ヒップの厚み52Z
・幅の比=バストの幅50X:ウエストの幅51X:ヒップの幅52X
【0041】
(4)特定Y位置の高さ(具体的には以下の3つの指標)
・バストの高さ(Y位置)
・ウエストの高さ(Y位置)
・ヒップの高さ(Y位置)
【0042】
(5)特定Y位置におけるZX断面での周囲長(具体的には以下の3つの指標)
・バストの周囲長
・ウエストの周囲長
・ヒップの周囲長
【0043】
最後に、情報出力部14が、身体情報表示画面を生成し、表示装置に表示する(ステップS34)。図6に身体情報表示画面の一例を示す。図6の画面例では、側面像の輪郭の上に、バスト・ウエスト・ヒップそれぞれの厚み、バスト位置とウエスト位置の間隔、ウエスト位置とヒップ位置の間隔がオーバーレイ表示されている。また、バスト・ウエスト・ヒップそれぞれの周囲長、厚みの比、幅の比が別ウィンドウに表示されている。このような表示画面をみることにより、ユーザ(対象者)は自身の身体の外形に関わる特徴を正確かつ定量的に把握することができ、健康管理や美容に役立てることができる。
【0044】
<本実施形態の利点>
上述した本実施形態の身体情報取得装置によれば、身体の外形の3次元形状を表す身体形状データに基づき身体情報の取得(測定)を行うため、従来のカメラ画像では避けがたかったレンズ収差やパースペクティブによる被写体像の歪みの問題が発生しない。また、平行投影像を生成し、その平行投影像の長さを測るため、図7(b)に示すように、従来のカメラ画像のような死角が発生することが無く、身体の外形の寸法を正確に取得することができる。よって、本実施形態の身体情報取得装置によれば、身体の外形に関わる身体情報を正確に且つ定量的に取得することが可能となる。
【0045】
また、上述した本実施形態では、身体情報として、バスト・ウエスト・ヒップの厚み、幅、周囲長などを取得したので、美容やダイエットを意識する人に対し、有益で付加価値の高い情報を提供することができる。さらに、バスト・ウエスト・ヒップの位置の間隔や寸法の比を身体情報として提供することで、体型やそのバランスなどの把握を容易化することができる。
【0046】
<その他の実施形態>
上述した実施形態の構成は本発明の一具体例を示したものにすぎず、本発明の範囲を限定する趣旨のものではない。本発明はその技術思想を逸脱しない範囲において、種々の具体的構成を採り得るものである。
【0047】
図6の画面例はあくまでも一例であって、身体形状データから取得可能な情報であればどのような情報をどのような形式で表示してもよい。例えば、身体の3次元形状を表示したり(点群、ポリゴン、シェーディング、テクスチャマッピングなど、表示形式を選べるとよい)、複数の平行投影像を表示したりしてもよい。また、図8に示すように、身体情報取得装置1が、他の身体形状データ(異なる時期に測定した同じ対象者の身体形状データ、他の人の身体形状データ、理想体型モデルの身体形状データなど)又は他の身体形状
データから取得した3次元形状・平行投影像・身体情報などを記憶する記憶部15と、対象者の身体情報と他の身体情報とを比較する身体情報比較部16とを有してもよい。身体情報比較部16が、例えば、「対象者の身体情報」と「異なる時刻に取得された同じ人の同じ種類の身体情報」との比較、「対象者の身体情報」と「異なる人の同じ種類の身体情報」との比較、あるいは、「対象者の身体情報」と「所定の方法で算出された同じ種類の身体情報(例えば理想的な体型の寸法など)」との比較などを行い、その比較した結果を対象者の身体情報の1つとして出力してもよい。あるいは、身体情報比較部16が、対象者の情報と他の身体形状データから取得した情報とを比較可能な態様で表示したりしてもよい。他の身体形状データから取得した情報との比較ができれば、対象者の身体の特徴(良い点/悪い点、形状が異なる部分、寸法が大きい部分/小さい部分など)を容易に把握することができる。特に、自分自身の過去の身体形状データから取得した情報(例えば、1年前の情報、1月前の情報、1週間前の情報など)との比較ができれば、体型の経年変化の把握、ダイエットや筋トレの効果の確認などが容易にできる。
【符号の説明】
【0048】
1:身体情報取得装置、10:身体形状取得部、11:投影像生成部、12:位置設定部、13:身体情報取得部、14:情報出力部、15:記憶部、16:身体情報比較部
40:側面像、41:正面像
50:バスト位置、50X:バストの幅、50Z:バストの厚み
51:ウエスト位置、51X:ウエストの幅、51Z:ウエストの厚み
52:ヒップ位置、52X:ヒップの幅、52Z:ヒップの厚み
53BW:バストとウエストの間隔、53WH:ウエストとヒップの間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8