(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
支持ガラス基板の板厚が2.0mm未満であり、支持ガラス基板の全体板厚偏差が30μm以下であり、且つ支持ガラス基板の反り量が60μm以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の積層体。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
fan out型のWLPでは、複数の半導体チップを樹脂の封止材でモールドして、加工基板を形成した後に、加工基板の一方の表面に配線する工程、半田バンプを形成する工程等を有する。
【0006】
これらの工程は、約200℃の熱処理を伴うため、封止材が変形して、加工基板が寸法変化する虞がある。加工基板が寸法変化すると、加工基板の一方の表面に対して、高密度に配線することが困難になり、また半田バンプを正確に形成することも困難になる。
【0007】
加工基板の寸法変化を抑制するために、加工基板を支持するための支持基板を用いることが有効である。しかし、支持基板を用いた場合であっても、加工基板の寸法変化が生じる場合があった。特に、加工基板内で半導体チップの割合が少なく、封止材の割合が多い場合に、加工基板の寸法変化が生じ易かった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その技術的課題は、加工基板内で半導体チップの割合が少なく、封止材の割合が多い場合に、加工基板の寸法変化を生じさせ難い支持基板及びこれを用いた積層体を創案することにより、半導体パッケージの高密度実装に寄与することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、種々の実験を繰り返した結果、支持基板としてガラス基板を採択すると共に、このガラス基板の熱膨張係数とヤング率を厳密に規制することにより、上記技術的課題を解決し得ることを見出し、本発明として、提案するものである。すなわち、本発明の支持ガラス基板は、30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数が60×10
−7〜90×10
−7/℃であり、ヤング率が78MPa以上であることを特徴とする。ここで、「30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数」は、ディラトメーターで測定可能である。「ヤング率」は、曲げ共振法により測定した値を指す。
【0010】
本発明の支持ガラス基板では、30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数が60×10
−7〜90×10
−7/℃に規制されている。このようにすれば、加工基板内で半導体チップの割合が少なく、封止材の割合が多い場合に、加工基板と支持ガラス基板の熱膨張係数が整合し易くなる。そして、両者の熱膨張係数が整合すると、加工処理時に加工基板の寸法変化(特に、反り変形)を抑制し易くなる。結果として、加工基板の一方の表面に対して、高密度に配線することが可能になり、また半田バンプを正確に形成することも可能になる。
【0011】
また、本発明の支持ガラス基板では、ヤング率が78MPa以上に規制されている。加工基板内で半導体チップの割合が少なく、封止材の割合が多い場合、積層体全体の剛性が低下して、加工処理時に加工基板が反り易くなる。そこで、支持ガラス基板のヤング率を高めると、加工基板の反り変形を抑制し易くなり、加工基板を強固、且つ正確に支持することが可能になる。
【0012】
第二に、本発明の支持ガラス基板は、ヤング率が82MPa以上であることが好ましい。
【0013】
第三に、本発明の支持ガラス基板は、半導体パッケージの製造工程で加工基板の支持に用いることが好ましい。
【0014】
第四に、本発明の支持ガラス基板は、オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。
【0015】
第五に、本発明の支持ガラス基板は、ガラス組成中にTiO
2+ZrO
2を1質量%以上含むことが好ましい。このようにすれば、支持ガラス基板のヤング率を高め易くなる。ここで、「TiO
2+ZrO
2」は、TiO
2とZrO
2の合量を指す。
【0016】
第六に、本発明の支持ガラス基板は、ガラス組成として、モル%で、SiO
2 35〜65%、Al
2O
3 0〜12%、B
2O
3 0〜15%、Li
2O+Na
2O+K
2O 0〜5%、MgO 0〜10%、CaO 0〜15%、SrO 0〜15%、BaO 3〜25%、ZnO 0〜10%、TiO
2+ZrO
2 1〜20%、La
2O
3 0〜10%を含有することが好ましい。ここで、「Li
2O+Na
2O+K
2O」は、Li
2O、Na
2O及びK
2Oの合量を指す。
【0017】
第七に、本発明の支持ガラス基板は、板厚が2.0mm未満であり、全体板厚偏差が30μm以下であり、且つ反り量が60μm以下であることが好ましい。ここで、「反り量」は、支持ガラス基板全体における最高位点と最小二乗焦点面との間の最大距離の絶対値と、最低位点と最小二乗焦点面との絶対値との合計を指し、例えばコベルコ科研社製のSBW−331ML/dにより測定可能である。
【0018】
第八に、本発明の積層体は、少なくとも加工基板と加工基板を支持するための支持ガラス基板とを備える積層体であって、支持ガラス基板が上記の支持ガラス基板であることを特徴とする。
【0019】
第九に、本発明の積層体は、加工基板が、少なくとも封止材でモールドされた半導体チップを備えることが好ましい。
【0020】
第十に、本発明の半導体パッケージの製造方法は、少なくとも加工基板と加工基板を支持するための支持ガラス基板とを備える積層体を用意する工程と、加工基板に対して、加工処理を行う工程と、を有すると共に、支持ガラス基板が上記の支持ガラス基板であることが好ましい。
【0021】
第十一に、本発明の半導体パッケージの製造方法は、加工処理が、加工基板の一方の表面に配線する工程を含むことが好ましい。
【0022】
第十二に、本発明の半導体パッケージの製造方法は、加工処理が、加工基板の一方の表面に半田バンプを形成する工程を含むことが好ましい。
【0023】
第十三に、本発明の半導体パッケージは、上記の半導体パッケージの製造方法により作製されたことが好ましい。
【0024】
第十四に、本発明の電子機器は、半導体パッケージを備える電子機器であって、半導体パッケージが、上記の半導体パッケージであることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の支持ガラス基板において、30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数は60×10
−7〜90×10
−7/℃であり、好ましくは70×10
−7〜85×10
−7/℃、特に75×10
−7〜80×10
−7/℃である。30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数が上記範囲外になると、加工基板内で半導体チップの割合が少なく、封止材の割合が多い場合に、加工基板と支持ガラス基板の熱膨張係数が整合し難くなる。そして、両者の熱膨張係数が不整合になると、加工処理時に加工基板の寸法変化(特に、反り変形)が生じ易くなる。
【0027】
本発明の支持ガラス基板において、ヤング率は、好ましくは78GPa以上、80GPa以上、82GPa以上、84GPa以上、86GPa以上、88GPa以上、特に90〜130GPaである。ヤング率が低過ぎると、積層体の剛性を維持し難くなり、加工基板の反り変形が発生し易くなる。
【0028】
本発明の支持ガラス基板は、ガラス組成として、モル%で、SiO
2 35〜65%、Al
2O
3 0〜12%、B
2O
3 0〜15%、Li
2O+Na
2O+K
2O 0〜5%、MgO 0〜10%、CaO 0〜15%、SrO 0〜15%、BaO 3〜25%、ZnO 0〜10%、TiO
2+ZrO
2 1〜20%、La
2O
3 0〜10%を含有することが好ましい。上記のように各成分の含有量を限定した理由を以下に示す。なお、各成分の含有量の説明において、%表示は、特に断りがある場合を除き、モル%を表す。
【0029】
SiO
2は、ガラスの骨格を形成する主成分である。SiO
2の含有量は、好ましくは35〜65%、40〜60%、43〜55%、特に45〜52%である。SiO
2の含有量が少な過ぎると、ヤング率、耐酸性が低下し易くなる。一方、SiO
2の含有量が多過ぎると、高温粘度が高くなり、溶融性が低下し易くなることに加えて、クリストバライト等の失透結晶が析出し易くなって、液相温度が上昇し易くなる。
【0030】
Al
2O
3は、ヤング率を高める成分であると共に、分相、失透を抑制する成分である。Al
2O
3の含有量は、好ましくは0〜12%、0.1〜10%、0.2〜7%、0.5〜5%、特に1〜4%である。Al
2O
3の含有量が少な過ぎると、ヤング率が低下し易くなり、またガラスが分相、失透し易くなる。一方、Al
2O
3の含有量が多過ぎると、高温粘度が高くなり、溶融性、成形性が低下し易くなる。
【0031】
B
2O
3の含有量は0〜15%が好ましい。B
2O
3の含有量が多くなると、ヤング率が低下し易くなる。よって、B
2O
3の含有量は、好ましくは15%以下、12%以下、特に10%以下である。なお、B
2O
3の含有量が少なくなると、液相温度が低下し易くなる。よって、B
2O
3の含有量は、好ましくは0.1%以上、1%以上、3%以上、5%以上、7%以上、特に9%以上である。
【0032】
アルカリ金属酸化物は、ガラスの粘性を低下させる成分であり、また熱膨張係数を調整する成分であるが、多量に導入すると、ヤング率が低下し易くなり、またガラスの粘性が低下し過ぎて、高い液相粘度を確保し難くなる。よって、Li
2O+Na
2O+K
2Oの含有量は、好ましくは5%以下、2%以下、1%以下、特に0.5%以下であり、実質的に含有しないこと、つまり0.1%未満が望ましい。なお、Li
2O、Na
2O、K
2Oの含有量は、それぞれ5%以下、2%以下、1%以下、特に0.5%以下が好ましく、実質的に含有しないこと、つまり0.1%未満が望ましい。
【0033】
MgOは、高温粘性を下げて、溶融性を高める成分であり、アルカリ土類金属酸化物の中では、ヤング率を有効に高める成分である。MgOの含有量は、好ましくは0〜10%、0〜8%、0〜5%、0.1〜3%、特に0.5〜2%である。MgOの含有量が多過ぎると、耐失透性が低下し易くなる。
【0034】
CaOは、高温粘性を下げて、溶融性を顕著に高める成分である。またアルカリ土類金属酸化物の中では、導入原料が比較的安価であるため、原料コストを低廉化する成分である。CaOの含有量は、好ましくは0〜15%、0.1〜15%、1〜12%、3〜10%、特に4〜10%である。CaOの含有量が多過ぎると、ガラスが失透し易くなる。なお、CaOの含有量が少な過ぎると、上記効果を享受し難くなる。
【0035】
SrOは、耐失透性を高める成分であるが、SrOの含有量が過剰になると、ガラス組成のバランスを欠いて、逆に耐失透性が低下し易くなる。よって、SrOの含有量は、好ましくは15%以下、12%以下、8%以下、6%以下、特に5%以下である。なお、SrOの含有量が少なくなると、溶融性が低下し易くなる。よって、SrOの含有量は、好ましくは0.1%以上、1%以上、2%以上、特に3%以上である。
【0036】
BaOは、耐失透性を高める成分であるが、BaOの含有量が過剰になると、ガラス組成のバランスを欠いて、逆に耐失透性が低下し易くなる。よって、BaOの含有量は、好ましくは25%以下、20%以下、18%以下、特に16%以下である。一方、BaOの含有量が少なくなると、溶融性が低下し易くなる。よって、BaOの含有量は、好ましくは3%以上、5%以上、8%以上、10%以上、12%以上、特に15%以上である。
【0037】
ZnOは、高温粘性を下げて、溶融性を顕著に高める成分である。ZnOの含有量は、好ましくは0〜10%、0.1〜8%、特に1〜5%である。ZnOの含有量が少な過ぎると、上記効果を享受し難くなる。なお、ZnOの含有量が多過ぎると、ガラスが失透し易くなる。
【0038】
TiO
2とZrO
2は、バッチコストを高騰させずに、ヤング率を顕著に高める成分である。しかし、TiO
2+ZrO
2の含有量が多くなると、Zr含有失透ブツが発生し易くなる。よって、TiO
2+ZrO
2の含有量は、好ましくは1〜20%であり、3〜20%、5〜18%、6〜15%、8〜13%、特に10〜12%である。なお、TiO
2の含有量は、好ましくは1〜20%であり、2〜20%、4〜17%、5〜14%、7〜12%、特に9〜11%である。ZrO
2の含有量は、好ましくは0〜10%、0.01〜5%、0.1〜2%、0.2〜1%、特に0.3〜0.5%である。
【0039】
La
2O
3はヤング率を効果的に高める成分である。しかし、La
2O
3の含有量が多過ぎると、バッチコストが高騰し易くなる。La
2O
3の含有量は、好ましくは0〜10%、0.1〜8%、0.5〜5%、1〜4%、特に2〜3%である。
【0040】
上記成分以外にも、任意成分として、他の成分を導入してもよい。なお、上記成分以外の他の成分の含有量は、本発明の効果を的確に享受する観点から、合量で10%以下、特に5%以下が好ましい。
【0041】
清澄剤として、As
2O
3、Sb
2O
3、CeO
2、SnO
2、F、Cl、SO
3の群から選択された一種又は二種以上を0〜3%添加することができる。但し、As
2O
3及びFは、環境的観点から、実質的に含有しないこと、つまり0.1%未満が好ましい。特に、清澄剤として、SnO
2が好ましい。SnO
2の含有量は、好ましくは0〜1%、0.01〜0.5%、特に0.05〜0.4%である。
【0042】
PbOとBi
2O
3は、高温粘性を低下させる成分であるが、環境的観点から、実質的に含有しないこと、つまり0.1%未満が好ましい。
【0043】
Y
2O
3、Nb
2O
5、Gd
2O
3、Ta
2O
5、WO
3には、ヤング率等を高める働きがある。しかし、これらの成分の含有量が各々5%、特に1%より多いと、原料コスト、製品コストが高騰する虞がある。
【0044】
本発明の支持ガラス基板は、以下の特性を有することが好ましい。
【0045】
液相温度は、好ましくは1150℃未満、1120℃以下、1100℃以下、1080℃以下、1050℃以下、1010℃以下、980℃以下、960℃以下、950℃以下、特に940℃以下である。このようにすれば、ダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法でガラス基板を成形し易くなるため、板厚が小さいガラス基板を作製し易くなると共に、表面を研磨しなくても、全体板厚偏差を低減することができる。或いは、少量の研磨によって、全体板厚偏差を2.0μm未満、特に1.0μm未満まで低減することができる。結果として、ガラス基板の製造コストを低廉化することもできる。更に、ガラス基板の製造工程時に、失透結晶が発生して、ガラス基板の生産性が低下する事態を防止し易くなる。ここで、「液相温度」は、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れた後、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶が析出する温度を測定することにより算出可能である。
【0046】
液相温度における粘度は、好ましくは10
4.6dPa・s以上、10
4.8dPa・s以上、10
5.0dPa・s以上、10
5.2dPa・s以上、特に10
5.3dPa・s以上である。このようにすれば、ダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法でガラス基板を成形し易くなるため、板厚が小さいガラス基板を作製し易くなると共に、表面を研磨しなくても、全体板厚偏差を高めることができる。或いは、少量の研磨によって、全体板厚偏差を2.0μm未満、特に1.0μm未満まで低減することができる。結果として、ガラス基板の製造コストを低廉化することができる。更に、ガラス基板の製造工程時に、失透結晶が発生して、ガラス基板の生産性が低下する事態を防止し易くなる。ここで、「液相温度における粘度」は、白金球引き上げ法で測定可能である。なお、液相温度における粘度は、成形性の指標であり、液相温度における粘度が高い程、成形性が向上する。
【0047】
10
2.5dPa・sにおける温度は、好ましくは1380℃以下、1300℃以下、1250℃以下、特に1000〜1200℃である。10
2.5dPa・sにおける温度が高くなると、溶融性が低下して、ガラス基板の製造コストが高騰する。ここで、「10
2.5dPa・sにおける温度」は、白金球引き上げ法で測定可能である。なお、10
2.5dPa・sにおける温度は、溶融温度に相当し、この温度が低い程、溶融性が向上する。
【0048】
本発明の支持ガラス基板は、ダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。オーバーフローダウンドロー法は、耐熱性の樋状構造物の両側から溶融ガラスを溢れさせて、溢れた溶融ガラスを樋状構造物の下頂端で合流させながら、下方に延伸成形してガラス基板を製造する方法である。オーバーフローダウンドロー法では、ガラス基板の表面となるべき面は樋状耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形される。このため、板厚が小さいガラス基板を作製し易くなると共に、表面を研磨しなくても、全体板厚偏差を低減することができる。或いは、少量の研磨によって、全体板厚偏差を2.0μm未満、特に1.0μm未満まで低減することができる。結果として、ガラス基板の製造コストを低廉化することができる。
【0049】
ガラス基板の成形方法として、オーバーフローダウンドロー法以外にも、例えば、スロットダウン法、リドロー法、フロート法等を採択することもできる。
【0050】
本発明の支持ガラス基板は、略円板状又はウェハ状が好ましく、その直径は100mm以上500mm以下、特に150mm以上450mm以下が好ましい。このようにすれば、半導体パッケージの製造工程に適用し易くなる。必要に応じて、それ以外の形状、例えば矩形等の形状に加工してもよい。
【0051】
本発明の支持ガラス基板において、真円度は、1mm以下、0.1mm以下、0.05mm以下、特に0.03mm以下が好ましい。真円度が小さい程、半導体パッケージの製造工程に適用し易くなる。なお、真円度の定義は、ウェハの外形の最大値から最小値を減じた値である。
【0052】
本発明の支持ガラス基板において、板厚は、好ましくは2.0mm未満、1.5mm以下、1.2mm以下、1.1mm以下、1.0mm以下、特に0.9mm以下である。板厚が薄くなる程、積層体の質量が軽くなるため、ハンドリング性が向上する。一方、板厚が薄過ぎると、支持ガラス基板自体の強度が低下して、支持基板としての機能を果たし難くなる。よって、板厚は、好ましくは0.1mm以上、0.2mm以上、0.3mm以上、0.4mm以上、0.5mm以上、0.6mm以上、特に0.7mm超である。
【0053】
本発明の支持ガラス基板において、全体板厚偏差は、好ましくは30μm以下、20μm以下、10μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下、特に0.1〜1μm未満である。また算術平均粗さRaは、好ましくは100nm以下、50nm以下、20nm以下、10nm以下、5nm以下、2nm以下、1nm以下、特に0.5nm以下である。表面精度が高い程、加工処理の精度を高め易くなる。特に配線精度を高めることができるため、高密度の配線が可能になる。また支持ガラス基板の強度が向上して、支持ガラス基板及び積層体が破損し難くなる。更に支持ガラス基板の再利用回数を増やすことができる。なお、「算術平均粗さRa」は、触針式表面粗さ計又は原子間力顕微鏡(AFM)により測定可能である。
【0054】
本発明の支持ガラス基板は、オーバーフローダウンドロー法で成形した後に、表面を研磨されてなることが好ましい。このようにすれば、全体板厚偏差を2μm以下、1μm以下、特に1μm未満に規制し易くなる。
【0055】
本発明の支持ガラス基板において、反り量は、好ましくは60μm以下、55μm以下、50μm以下、1〜45μm、特に5〜40μmである。反り量が小さい程、加工処理の精度を高め易くなる。特に配線精度を高めることができるため、高密度の配線が可能になる。
【0056】
本発明の支持ガラス基板は、イオン交換処理が行われていないことが好ましく、表面に圧縮応力層を有しないことが好ましい。イオン交換処理を行うと、支持ガラス基板の製造コストが高騰する。更に、イオン交換処理を行うと、支持ガラス基板の全体板厚偏差を低減し難くなる。なお、本発明の支持ガラス基板は、イオン交換処理を行い、表面に圧縮応力層を形成する態様を排除するものではない。機械的強度を高める観点から言えば、イオン交換処理を行い、表面に圧縮応力層を形成することが好ましい。
【0057】
本発明の積層体は、少なくとも加工基板と加工基板を支持するための支持ガラス基板とを備える積層体であって、支持ガラス基板が上記の支持ガラス基板であることを特徴とする。ここで、本発明の積層体の技術的特徴(好適な構成、効果)は、本発明の支持ガラス基板の技術的特徴と重複する。よって、本明細書では、その重複部分について、詳細な記載を省略する。
【0058】
本発明の積層体は、加工基板と支持ガラス基板の間に、接着層を有することが好ましい。接着層は、樹脂であることが好ましく、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂(特に紫外線硬化樹脂)等が好ましい。また半導体パッケージの製造工程における熱処理に耐える耐熱性を有するものが好ましい。これにより、半導体パッケージの製造工程で接着層が融解し難くなり、加工処理の精度を高めることができる。なお、加工基板と支持ガラス基板を容易に固定するため、紫外線硬化型テープを接着層として使用することもできる。
【0059】
本発明の積層体は、更に加工基板と支持ガラス基板の間に、より具体的には加工基板と接着層の間に、剥離層を有することが好ましい。このようにすれば、加工基板に対して、所定の加工処理を行った後に、加工基板を支持ガラス基板から剥離し易くなる。加工基板の剥離は、生産性の観点から、レーザー光等の照射光により行うことが好ましい。レーザー光源として、YAGレーザー(波長1064nm)、半導体レーザー(波長780〜1300nm)等の赤外光レーザー光源を用いることができる。また、剥離層には赤外線レーザーを照射することで分解する樹脂を使用することができる。また、赤外線を効率よく吸収し、熱に変換する物質を樹脂に添加することもできる。例えば、カーボンブラック、グラファイト粉、微粒子金属粉末、染料、顔料等を樹脂に添加することもできる。
【0060】
剥離層は、レーザー光等の照射光により「層内剥離」又は「界面剥離」が生じる材料で構成される。つまり一定の強度の光を照射すると、原子又は分子における原子間又は分子間の結合力が消失又は減少して、アブレーション(ablation)等を生じ、剥離を生じさせる材料で構成される。なお、照射光の照射により、剥離層に含まれる成分が気体となって放出されて分離に至る場合と、剥離層が光を吸収して気体になり、その蒸気が放出されて分離に至る場合とがある。
【0061】
本発明の積層体において、支持ガラス基板は、加工基板よりも大きいことが好ましい。これにより、加工基板と支持ガラス基板を支持する際に、両者の中心位置が僅かに離間した場合でも、支持ガラス基板から加工基板の縁部が食み出し難くなる。
【0062】
本発明の半導体パッケージの製造方法は、少なくとも加工基板と加工基板を支持するための支持ガラス基板とを備える積層体を用意する工程を有する。少なくとも加工基板と加工基板を支持するための支持ガラス基板とを備える積層体は、上記の材料構成を有している。なお、ガラス基板の成形方法として、上記成形方法を採択することができる。
【0063】
本発明の半導体パッケージの製造方法は、更に積層体を搬送する工程を有することが好ましい。これにより、加工処理の処理効率を高めることができる。なお、「積層体を搬送する工程」と「加工基板に対して、加工処理を行う工程」とは、別途に行う必要はなく、同時であってもよい。
【0064】
本発明の半導体パッケージの製造方法において、加工処理は、加工基板の一方の表面に配線する処理、或いは加工基板の一方の表面に半田バンプを形成する処理が好ましい。本発明の半導体パッケージの製造方法では、これらの処理時に加工基板が寸法変化し難いため、これらの工程を適正に行うことができる。
【0065】
加工処理として、上記以外にも、加工基板の一方の表面(通常、支持ガラス基板とは反対側の表面)を機械的に研磨する処理、加工基板の一方の表面(通常、支持ガラス基板とは反対側の表面)をドライエッチングする処理、加工基板の一方の表面(通常、支持ガラス基板とは反対側の表面)をウェットエッチングする処理の何れかであってもよい。なお、本発明の半導体パッケージの製造方法では、加工基板に反りが発生し難いと共に、積層体の剛性を維持することができる。結果として、上記加工処理を適正に行うことができる。
【0066】
本発明の半導体パッケージは、上記の半導体パッケージの製造方法により作製されたことを特徴とする。ここで、本発明の半導体パッケージの技術的特徴(好適な構成、効果)は、本発明の支持ガラス基板、積層体及び半導体パッケージの製造方法の技術的特徴と重複する。よって、本明細書では、その重複部分について、詳細な記載を省略する。
【0067】
本発明の電子機器は、半導体パッケージを備える電子機器であって、半導体パッケージが、上記の半導体パッケージであることを特徴とする。ここで、本発明の電子機器の技術的特徴(好適な構成、効果)は、本発明の支持ガラス基板、積層体、半導体パッケージの製造方法、半導体パッケージの技術的特徴と重複する。よって、本明細書では、その重複部分について、詳細な記載を省略する。
【0068】
図面を参酌しながら、本発明を更に説明する。
【0069】
図1は、本発明の積層体1の一例を示す概念斜視図である。
図1では、積層体1は、支持ガラス基板10と加工基板11とを備えている。支持ガラス基板10は、加工基板11の寸法変化を防止するために、加工基板11に貼着されている。支持ガラス基板10と加工基板11との間には、剥離層12と接着層13が配置されている。剥離層12は、支持ガラス基板10と接触しており、接着層13は、加工基板11と接触している。
【0070】
図1から分かるように、積層体1は、支持ガラス基板10、剥離層12、接着層13、加工基板11の順に積層配置されている。支持ガラス基板10の形状は、加工基板11に応じて決定されるが、
図1では、支持ガラス基板10及び加工基板11の形状は、何れも略円板形状である。剥離層12は、例えばレーザーを照射することで分解する樹脂を使用することができる。また、レーザー光を効率よく吸収し、熱に変換する物質を樹脂に添加することもできる。たとえば、カーボンブラック、グラファイト粉、微粒子金属粉末、染料、顔料などである。剥離層12は、プラズマCVDや、ゾル−ゲル法によるスピンコート等により形成される。接着層13は、樹脂で構成されており、例えば、各種印刷法、インクジェット法、スピンコート法、ロールコート法等により塗布形成される。また、紫外線硬化型テープも使用可能である。接着層13は、剥離層12により加工基板11から支持ガラス基板10が剥離された後、溶剤等により溶解除去される。紫外線硬化型テープは、紫外線を照射した後、剥離用テープにより除去可能である。
【0071】
図2は、fan out型のWLPの製造工程を示す概念断面図である。
図2(a)は、支持部材20の一方の表面上に接着層21を形成した状態を示している。必要に応じて、支持部材20と接着層21の間に剥離層を形成してもよい。次に、
図2(b)に示すように、接着層21の上に複数の半導体チップ22を貼付する。その際、半導体チップ22のアクティブ側の面を接着層21に接触させる。次に、
図2(c)に示すように、半導体チップ22を樹脂の封止材23でモールドする。封止材23は、圧縮成形後の寸法変化、配線を成形する際の寸法変化が少ない材料が使用される。続いて、
図2(d)、(e)に示すように、支持部材20から半導体チップ22がモールドされた加工基板24を分離した後、接着層25を介して、支持ガラス基板26と接着固定させる。その際、加工基板24の表面の内、半導体チップ22が埋め込まれた側の表面とは反対側の表面が支持ガラス基板26側に配置される。このようにして、積層体27を得ることができる。なお、必要に応じて、接着層25と支持ガラス基板26の間に剥離層を形成してもよい。更に、得られた積層体27を搬送した後に、
図2(f)に示すように、加工基板24の半導体チップ22が埋め込まれた側の表面に配線28を形成した後、複数の半田バンプ29を形成する。最後に、支持ガラス基板26から加工基板24を分離した後に、加工基板24を半導体チップ22毎に切断し、後のパッケージング工程に供される(
図2(g))。
【実施例1】
【0072】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、以下の実施例は単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0073】
表1は、本発明の実施例(試料No.1〜10)を示している。
【0074】
【表1】
【0075】
まず表中のガラス組成になるように、ガラス原料を調合したガラスバッチを白金坩堝に入れ、1400〜1500℃で4時間溶融した。ガラスバッチの溶解に際しては、白金スターラーを用いて攪拌し、均質化を行った。次いで、溶融ガラスをカーボン板上に流し出し、板状に成形した後、徐冷点より20℃程度高い温度から、3℃/分で常温まで徐冷した。得られた各試料について、30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数α
30〜380、密度ρ、歪点Ps、徐冷点Ta、軟化点Ts、高温粘度10
4.0dPa・sにおける温度、高温粘度10
3.0dPa・sにおける温度、高温粘度10
2.5dPa・sにおける温度、高温粘度10
2.0dPa・sにおける温度、液相温度TL、液相温度TLにおける粘度η及びヤング率Eを評価した。
【0076】
30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数α
30〜380は、ディラトメーターで測定した値である。
【0077】
密度ρは、周知のアルキメデス法によって測定した値である。
【0078】
歪点Ps、徐冷点Ta、軟化点Tsは、ASTM C336の方法に基づいて測定した値である。
【0079】
高温粘度10
4.0dPa・s、10
3.0dPa・s、10
2.5dPa・sにおける温度は、白金球引き上げ法で測定した値である。
【0080】
液相温度TLは、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れて、温度勾配炉中に24時間保持した後、結晶が析出する温度を顕微鏡観察にて測定した値である。液相温度TLにおける粘度ηは、液相温度TLにおけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値である。
【0081】
ヤング率Eは、共振法により測定した値を指す。
【0082】
表1から明らかなように、試料No.1〜10は、20〜200℃の温度範囲における平均線熱膨張係数α
30〜380が72.4×10
−7/℃〜79.6×10
−7/℃、ヤング率が83〜92GPaであった。よって、試料No.1〜10は、半導体製造装置の製造工程で加工基板の支持に用いる支持ガラス基板として好適であると考えられる。
【実施例2】
【0083】
次のようにして、[実施例2]の各試料を作製した。まず、表1に記載の試料No.1〜10のガラス組成になるように、ガラス原料を調合した後、ガラス溶融炉に供給して1400〜1500℃で溶融し、次いで溶融ガラスをオーバーフローダウンドロー成形装置に供給し、板厚が0.7mmになるようにそれぞれ成形した。得られたガラス基板(全体板厚偏差約4.0μm)をφ300mm×0.7mm厚に加工した後、その両表面を研磨装置により研磨処理した。具体的には、ガラス基板の両表面を外径が相違する一対の研磨パットで挟み込み、ガラス基板と一対の研磨パッドを共に回転させながらガラス基板の両表面を研磨処理した。研磨処理の際、時折、ガラス基板の一部が研磨パッドから食み出すように制御した。なお、研磨パッドはウレタン製、研磨処理の際に使用した研磨スラリーの平均粒径は2.5μm、研磨速度は15m/分であった。得られた各研磨処理済みガラス基板について、コベルコ科研社製のSBW−331ML/dにより全体板厚偏差と反り量を測定した。その結果、全体板厚偏差がそれぞれ1.0μm未満であり、反り量がそれぞれ35μm以下であった。