【実施例】
【0021】
本発明の実施の形態に係る実施例の石炭灰の埋立方法について、
図1乃至
図6を用いて詳細に説明する。
図1は、実施例に係る石炭灰の埋立方法の工程図である。
図2は、実施例に係る石炭灰の埋立方法が行われる石炭灰処分場の平面図である。
図1及び
図2に示すように、本実施例に係る石炭灰の埋立方法1は、水と、石炭火力発電所(図示せず)から発生する石炭灰の混合物からなるスラリー53を、移送管2を介して石炭灰処分場50に移送して埋め立てる場合の埋立方法である。このスラリー53は、重量比がおよそ99:1の水と石炭灰から構成される。
石炭灰処分場50は、既設堤防51が設置され、かつこの既設堤防51で囲まれた領域52にスラリー53が乾燥した乾燥石炭灰層54が形成されている。
石炭灰の埋立方法1は、領域52の一部に第1の区画P
1を設置するステップS1の第1の区画設置工程と、この第1の区画P
1に対応して移送管2の吐出口2aを設置するステップS2の吐出口設置工程と、第1の区画P
1の内部に形成された乾燥石炭灰層54を掘削するステップS3の掘削工程と、掘削された乾燥石炭灰層54を、第1の区画P
1の内部において、吐出口2aとその両側辺を囲むように積み上げて仮堤防Q
1を形成するステップS4の仮堤防形成工程と、仮堤防Q
1の内部へスラリー53を注入するステップS5の注入工程と、スラリー53に含有される石炭灰を沈降させて、水を分離させるステップS6の水分離工程と、を備える。
このうち、ステップS3の掘削工程では、第1の区画P
1の内部に、吐出口2aを介したスラリー53の吐出方向Xに沿って平面視長尺状の凹部R
1(
図4参照)が形成される。
なお、吐出口2aは、JPP(図示せず)から移送されるスラリー53の吐出口である。
【0022】
次に、各工程の作用についてより詳細に説明する。
まず、ステップS1の第1の区画設置工程では、領域52に、細長い長方形をした第1の区画P
1の位置が決定される。第1の区画P
1をこのような細長い長方形とした理由は、吐出口2aを介して吐出されるスラリー53は、細長い長方形状に分布するためである。
ステップS2の吐出口設置工程では、第1の区画P
1を構成する短辺の一方に、移送管2の吐出口2aが設置される。後述するように、吐出口2aは、仮堤防Q
1を貫通して設置される。
ステップS3の掘削工程では、第1の区画P
1の内部における乾燥石炭灰層54を重機で掘削することで、凹部R
1が形成される。そして、凹部R
1が形成されることに伴い、掘削された乾燥石炭灰層54が第1の区画P
1の短辺の一方及び長辺の付近に積み上げられることとなる。
【0023】
ステップS4の仮堤防形成工程では、積み上げられた乾燥石炭灰層54を仮堤防Q
1の壁面材料として利用する。そして、第1の区画P
1の短辺の一方付近に形成された仮堤防Q
1に、吐出口2aを貫通させて設置する。
ステップS5の注入工程では、スラリー53をまず凹部R
1に向かって吐出する。この吐出は、仮堤防Q
1の内部が満たされるまで継続されるが、仮堤防Q
1の内部が満たされるとスラリー53の吐出が停止される。
ステップS6の水分離工程において、仮堤防Q
1の内部に注入されたスラリー53は、時間の経過に伴い、石炭灰が沈降し、この沈降した石炭灰の上層に水が浮き上がって分離する。
【0024】
次に、実施例に係る石炭灰の埋立方法について、
図1及び
図3を用いながら、より詳細に説明する。
図3は、実施例に係る石炭灰の埋立方法が行われる石炭灰処分場の平面図である。なお、
図1及び
図2で示した構成要素については、
図3においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図1及び
図3に示すように、石炭灰の埋立方法1は、ステップS5の注入工程の後に、第1の区画P
1の側方に隣接する第2の区画P
2を設置するステップS7の第2の区画設置工程を備える。より詳細には、ステップS5の注入工程によって、仮堤防Q
1の内部がスラリー53で満たされた場合に、ステップS7の第2の区画設置工程が行われる。なお、第1の区画P
1では、ステップS7の第2の区画設置工程の実施に関わらず、ステップS6の水分離工程が行われる。
このとき、ステップS2の吐出口設置工程は、第1の区画P
1に対応する代わりに、第2の区画P
2に対応して吐出口2aを設置する。より正確には、第1の区画P
1に設置していた吐出口2aを、第2の区画P
2に移設する。この後、第2の区画P
2において、ステップS3の掘削工程と、ステップS4の仮堤防形成工程と、ステップS5の注入工程と、ステップS6の水分離工程が行われる。このうち、ステップS3の掘削工程では、凹部R
1と同形状の凹部(図示せず)が形成され、ステップS4の仮堤防形成工程では、第2の区画P
2の内部に、仮堤防Q
1と同形状の仮堤防Q
2が形成される。
【0025】
さらに、ステップS5の注入工程によって、仮堤防Q
2の内部がスラリー53で満たされた場合には、ステップS7の第2の区画設置工程からステップS6の水分離工程と同様の工程が繰り返される。すなわち、第2の区画P
2の側方に隣接する第3の区画P
3を設置し、第2の区画P
2に設置していた吐出口2aを、第3の区画P
3に移設する。その後、第3の区画P
3において、凹部R
1と同形状の凹部(図示せず)が形成されるとともに、仮堤防Q
1と同形状の仮堤防Q
3が形成され、スラリー53の注入が行われる。同様に、第2の区画P
2では、ステップS7の第2の区画設置工程の実施に関わらず、ステップS6の水分離工程が行われる。
【0026】
そして、仮堤防Q
3の内部がスラリー53で満たされた場合には、第3の区画P
3の側方又は第1の区画P
1の上方に隣接して新たな区画を設置し、この新たな区画において、ステップS2の吐出口設置工程以降の工程が繰り返される。
【0027】
続いて、仮堤防Q
1について、
図4を用いて、より詳細に説明する。
図4は、実施例に係る石炭灰の埋立方法を構成する掘削工程において形成される仮堤防の拡大図である。なお、
図1乃至
図3で示した構成要素については、
図4においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図4に示すように、仮堤防Q
1は、吐出口2aが貫通する第1の壁面3と、この第1の壁面3の両端にそれぞれ設置される第1の側壁面4及び第2の側壁面5と、からなる平面視コ字状に形成される。したがって、第1の壁面3と対向する部分に壁面は形成されずに、開口端6が形成されている。このような開口端6が形成される理由は、後述する凹部R
1を掘削した後の重機を速やかに退避させるためである。
また、仮堤防Q
1は、第1の側壁面4の上縁4aに、分離した水を排水するための排水口7が設けられる。この排水口7は、円筒を半割にしたような形状である。
【0028】
さらに、仮堤防Q
1では、第1の壁面3と、第1の側壁面4と、この4と同形状をなす第2の側壁面5で囲まれる乾燥石炭灰層54に、スラリー53の吐出方向Xに沿って平面視長尺状の凹部R
1が形成される。なお、具体的な仮堤防Q
1の大きさは、例えば、第1の壁面3の最大長さが約20(m)、第1の側壁面4の最大長さ及び最大高さがそれぞれ約200(m)及び1(m)である。凹部R
1の乾燥石炭灰層54の表層からの深さは、約0.5〜0.6(m)である。
【0029】
次に、仮堤防Q
1について、
図5及び
図6を用いて、さらに説明する。
図5は、
図4におけるA−A線矢視断面図である。
図6は、
図5におけるB線矢視図である。なお、
図1乃至
図4で示した構成要素については、
図5及び
図6においても同一の符号を付して、その説明を省略する。また、
図6では、既設堤防51の図示を省略する。
図5に示すように、移送管2が第1の壁面3に隣接する既設堤防51によって支持されるとともに、吐出口2aが第1の壁面3を貫通し、仮堤防Q
1の内部へスラリー53を吐出可能に構成される。
また、第1の側壁面4は、第1の壁面3から開口端6にかけて、その上縁4aが緩やかに傾斜している。第2の側壁面5においても、これと同様である。
そして、凹部R
1は、吐出口2aのほぼ直下から開口端6を超えるあたりまで、すなわち、第1の側壁面4の最大長さと同等な長さに亘って、均等な深さに形成されている。
さらに、
図6に示すように、凹部R
1は、第1の側壁面4と第2の側壁面5の中間部分に形成されて、吐出口2aから吐出されるスラリー53を確実に受け止める構成となっている。また、第1の側壁面4及び第2の側壁面5の縦断面は、いずれも台形状をなしており、強度の高い構造となっている。
【0030】
以上説明したように、石炭灰の埋立方法1によれば、ステップS1の第1の区画設置工程からステップS6の水分離までの6工程によって、大掛かりな工事が不要でありながら、石炭灰を容易に埋め立てることができる。また、これらの工程にステップS7の第2の区画設置工程を追加することによって、石炭灰の埋立を継続可能である。したがって、石炭灰を長期に亘って、大量に埋め立てることが可能になるものと期待できる。
また、仮堤防Q
1〜Q
3によって、スラリー53の流出を防止できるため、既設堤防51を嵩上げする工事が不要となるとともに、既設堤防51やその周囲の構造物の損傷を防止可能である。したがって、既設堤防51の改造費用や周囲の構造物の修理費用が不要である。さらに、JPPや重機を用いることでスラリー53を埋め立て可能であるので、特殊な機器が不要である。この点も、ランニングコストを低廉に抑制し得る要因である。
【0031】
さらに、石炭灰の埋立方法1のうち、ステップS3の掘削工程と、ステップS4の仮堤防形成工程によれば、掘削された乾燥石炭灰を利用して、経済的に仮堤防Q
1〜Q
3を形成することができる。すなわち、従来技術のように、コンクリートブロックのような型枠が不要であることから、新たに発生するコストを抑制できる。また、凹部R
1が形成されることで、吐出口2aから吐出されるスラリー53が開口端6から流出することを確実に防止できる。
【0032】
また、ステップS6の水分離工程によれば、時間の経過に伴い、仮堤防Q
1〜Q
3の内部に注入された石炭灰が沈降し、その上層に水が浮き上がって分離することから、従来技術のような凝集剤が不要である。加えて、第1の側壁面4の上縁4aに排水口7が設けられるため、石炭灰の上層に浮き上がった水を自然に排水することができる。すなわち、従来技術のような排水ポンプが不要であることで、ランニングコストに加え、導入コストをも抑制可能である。
また、沈降した石炭灰が固形化して形成された乾燥石炭灰層54は、水が分離されているため、乾燥石炭灰層54の上方に新たに仮堤防を形成しても、乾燥石炭灰層54が崩壊しないよう十分な強度を有している。また、一旦固形化したスラリー53は、大雨によって再度スラリー化することはないことから、仮堤防とこの内部に注入されるスラリー53は、その形状が長期間に亘って安定的に維持される。
【0033】
なお、本発明の石炭灰の埋立方法1の構造は実施例に示すものに限定されない。例えば、領域52に設置される区画は、一か所以上であれば特にその設置数は限定されない。また、仮堤防Q
1の形状は、第1の区画P
1の形状やJPPの吐出能力によって適宜調整される。さらに、第1の区画P
1の上方に第2の区画P
2が積層されても良い。この他、排水口7は、第1の壁面3、又は第2の側壁面5に設けられても良く、例えば、第1の側壁面4と第2の側壁面5に設けられても良い。
また、実施例においては、第1の区画P
1、第2の区画P
2…と表現されているが、それぞれの区画同士の関係を一般化して、第nの区画P
n、第(n+1)の区画P
(n+1)…、(ただし、nは1以上の自然数である)と表現することができる。そして、既設堤防51内において、第nの区画P
n並びに仮堤防Q
n等の設置ができなくなるまで、
図1に示す工程を繰り返すことができる。