(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6593729
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】液体中の混合物分離装置
(51)【国際特許分類】
B01D 3/00 20060101AFI20191010BHJP
B01D 5/00 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
B01D3/00 Z
B01D5/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-187577(P2018-187577)
(22)【出願日】2018年10月2日
【審査請求日】2019年6月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517271935
【氏名又は名称】前田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】前田 和幸
【審査官】
関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−028726(JP,A)
【文献】
特開2004−337657(JP,A)
【文献】
特開平04−022480(JP,A)
【文献】
特開2002−282844(JP,A)
【文献】
特開平06−031103(JP,A)
【文献】
特開平06−269603(JP,A)
【文献】
特開平09−313803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 1/00−5/00
C02F 1/04
C07B 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合物を含む液体中の混合物が沸点の違いにより分離される蒸発器(1)に流入する配管(7a,7b,7c)の途中に設置された流量制御弁である制御弁(2)であって、前記混合物を含む液体が蒸発器(1)に流入してその量が設定値以上になると絞られ、前記混合物を含む液体の蒸発量に応じた量が蒸発器(1)内に流入するようにある開度を保つ前記制御弁(2)と、この制御弁(2)に配管(7b)を介して接続される熱交換器(3)と、この熱交換器(3)に配管(7c)を介して接続される蒸発器(1)と、この蒸発器(1)に設置されたレベルセンサー(4)と、この蒸発器(1)に配管(8a)を介して接続される熱交換器(3)と、この熱交換器(3)に配管(8b)を介して接続される真空ポンプ(5)と、この真空ポンプ(5)に配管(8c)を介して接続される凝縮器(6)とから構成されることを特徴とする液体中の混合物分離装置。
【請求項2】
蒸発器内を負圧にするとともに、蒸発器に設置されたレベルセンサーと混合物を含む液体が蒸発器に流入する配管の途中に設置された流量制御弁である制御弁(2)を連動させることにより、蒸発器内に留まる混合物を含む液体の量を保持する機能を持たせるとともに、混合物を含む液体を蒸発器内に流入させる際に動力を必要としない構造と機能を有することを特徴とする、請求項1に記載された流体中の混合物分離装置。
【請求項3】
液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置であって、蒸発器(1)内の圧力を任意の真空度に設定できる真空ポンプ(5)と、蒸発器(1)内の温度を任意に設定できる蒸発器(1)に設置された加熱装置とを備え、蒸発器(1)内の混合物を含む液体の圧力と温度をその液体が気化するのに最適な値に設定できることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載された液体中の混合物分離装置。
【請求項4】
液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置であって、蒸発器(1)と真空ポンプ(5)の間に熱交換器(3)を設置して、この熱交換器に、気化された成分が保有する熱量(潜熱と顕熱)を蒸発器に流入する混合物を含む液体に供給するという機能を持たせることにより、蒸発器に設置された加熱装置が混合物を含む液体に供給する熱量を低減するという効果(省エネルギー効果)を得ることができることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載された液体中の混合物分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧蒸留により、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置に係わり、加熱装置を備える蒸発器と真空ポンプの間に熱交換器を配置することにより、気化された物質が保有する熱量及びその一部が凝縮する際の凝縮熱によって蒸発器に流入する混合物を含む液体を加熱することにより、蒸発器に設置された加熱装置が混合物を含む液体に供給する熱量を低減でき(省エネルギー効果)、蒸発器に設置されたレベルセンサーと混合物を含む液体が蒸発器に流入する配管の途中に設置された制御弁(2)とを連動させることにより、蒸発器内に留まる液体の量を制御できるとともに、混合物を含む液体を蒸発器内に流入させる際に動力を必要としない構造と機能を有する、構造が簡単で保守・整備が容易という特性を有する装置の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
地球上においては液体中に様々な混合物が混在している状態が多く存在する。しかし、科学技術分野においては、汚水中の汚泥除去、油分に含まれる水分の除去など、源流体に含まれる混合物を除去して、出来るだけ原流体の純度を高める技術が求められている。そこで、近年では、遠心力を利用した遠心分離機による分離方法、慣性力を利用した分離方法、沈殿作用を利用した分離方法及びこれらの組み合わせによる方法や、さらに純度を高めるために液体を加熱することにより気化させてこれを凝縮させるという、液体中に含まれる混合物の沸点の違いにより分離する方法が用いられている。
【0003】
これらの方法のうち、例えば、特許文献1、2に記載されているように、遠心力、慣性力、重力、圧力差などの物理的手法のみを用いて混合物を分離・除去できるとの報告もあるが、源流体中に含まれる混合物を効果的に分離・除去する装置を実用化するためには、構造が簡単(加工が容易でかつ耐久性に優れている)で、保守・整備が容易(メインテナンスフリーに近い)という特性を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09-248404
【特許文献2】特開2017-205713
【0005】
これに対し、例えば特許文献3、4に記載されているように、液体を減圧された容器内に入れこれを加熱して気化・凝縮して液体中の混合物から分離する方法がある。
【0006】
【特許文献3】特開2008−237943
【特許文献4】特開2009−028726
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般に、遠心力、慣性力、重力、圧力差などの物理的手法のみを用いて源流体中に含まれる混合物を分離・除去できる装置に、構造が簡単で保守・整備が容易という特性をもたせると、分離能力が低下するとともに、装置が大型化する可能性がある。
また、液体を減圧された容器内に入れこれを加熱して気化・凝縮して液体中の混合物から分離する方法を用いる場合、一般に、液体を蒸発器内に移送する際のポンプと蒸発器内を減圧するための真空ポンプを必要とするとともに、蒸発器内の液体をその沸点まで加熱するために供給する熱量と、蒸発器において気化された成分の温度を凝縮器内において凝固点まで下げるために熱量を放出させる装置を必要とする。また、蒸発器内に流入する液体の量を制御する装置を必要とする。
【0008】
そこで本発明は、流体中に含まれる混合物を加熱するために蒸発器に設置された加熱装置が混合物を含む液体に供給する熱量を低減し(省エネルギー化)、蒸発器に流入する混合物を含む液体が蒸発器に流入する配管の途中に制御弁(2)を設置することにより、蒸発器内に留まる混合物を含む液体の量の制御をレベルセンサーと制御弁(2)の連動という構造が簡単で信頼性・耐久性がある構造と機能を持つ装置のみで行わせるとともに、混合物を含む液体を蒸発器内に移送する際の動力(例えば移送ポンプ)を必要としない構造と機能を有する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、混合物を含む液体中の混合物が沸点の違いにより分離される蒸発器(1)に流入する配管(7a,7b,7c)の途中に設置された
流量制御弁である制御弁(2)であって、前記混合物を含む液体が蒸発器(1)に流入してその量が設定値以上になると絞られ、前記混合物を含む液体の蒸発量に応じた量が蒸発器(1)内に流入するようにある開度を保つ前記制御弁(2)と、この制御弁(2)に配管(7b)を介して接続される熱交換器(3)と、この熱交換器(3)に配管(7c)を介して接続される蒸発器(1)と、この蒸発器(1)に設置されたレベルセンサー(4)と、この蒸発器(1)に配管(8a)を介して接続される熱交換器(3)と、この熱交換器(3)に配管(8b)を介して接続される真空ポンプ(5)と、この真空ポンプ(5)に配管(8c)を介して接続される凝縮器(6)とから構成されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、蒸発器内を負圧にするとともに、蒸発器に設置されたレベルセンサーと混合物を含む液体が蒸発器に流入する配管の途中に設置された
流量制御弁である制御弁
(2)を連動させることにより、蒸発器内に留まる混合物を含む液体の量を
保持する機能を持たせるとともに、混合物を含む液体を蒸発器内に流入させる際に動力を必要としない構造と機能を有することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置であって、蒸発器(1)内の圧力を任意の真空度に設定できる真空ポンプ(5)と、蒸発器(1)内の温度を任意に設定できる蒸発器(1)に設置された加熱装置とを備え、蒸発器(1)内の混合物を含む液体の圧力と温度をその液体が気化するのに最適な値に設定できることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、液体中に含まれる混合物を沸点の違いにより分離する装置であって、蒸発器(1)と真空ポンプ(5)の間に熱交換器(3)を設置して、この熱交換器に、気化された成分が保有する熱量(潜熱と顕熱)を蒸発器に流入する混合物を含む液体に供給するという機能を持たせ、蒸発器に設置された加熱装置が混合物を含む液体に供給する熱量を低減するという効果(省エネルギー効果)を得ることができることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、液体中の混入物を沸点の差により分離する蔵置で、熱交換器を蒸発器と真空ポンプの間に設置することにより、気化した成分が保有する熱量を効果的に活用できる(省エネルギー効果)とともに、蒸発器に設置したレベルセンサーと液体が蒸発器に流入するための配管の途中に設置された制御弁(2)を連動させることにより、混合物を含む液体を蒸発器内に移送するための動力を必要としないという構造が簡単で、保守・整備が容易(メインテナンスフリーに近い)な液体中の混
合物除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る流体に含まれる混合物の分離・除去装置の工程の一例を示したフローチャートである。
【
図2】本発明の実施の形態に係る流体に含まれる混合物の分離・除去装置の構成の一例を示したブロック線図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る流体に含まれる混合物の分離・除去装置の蒸発装置の構造の一例を示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る流体に含まれる混合物の分離・除去装置の工程の一例を示したフローチャートである。
蒸発器内の混合物を含む液体は蒸発器に設置されたレベルセンサーにより検出される。
レベルセンサーにより蒸発器内の液体の量が設定値以下であることが検知されると、混合物を含む液体が蒸発器内に流入する配管の途中に設置された
流量制御弁である制御弁(2)が開き、混合物を含む液体が蒸発器内に流入する。この時、蒸発器内は真空ポンプにより減圧され負圧になっているため、流体は圧力差により自然流入する。
制御弁を経た混合物を含む液体は熱交換器において加熱される。
加熱された混合物を含む液体は蒸発器に流入し、その量が設定値以上になると制御弁が絞られる。
これにより、混合物を含む液体の蒸発量に応じた量が蒸発器内に流入し、
制御弁はある開度を保つことになる。
蒸発器内に流入した混合物を含む液体は、蒸発器に設置された加熱装置により加熱されて、真空ポンプによる負圧と加熱装置による高温に対応した沸点において気化し、混紡物を含む液体は気体となって混合物と分離する。
気体となった成分は、熱交換器において蒸発器に供給される混合物を含む液体と熱交換を行い、温度が低下するとともに一部は凝縮して凝縮熱を放出することにより、比較的低温の混合物を含む液体に熱を供給して温度を上昇させる。
熱交換器を経た気体となった成分は真空ポンプを経て凝縮器に至り、冷却されることにより液化する。
一方、蒸発器において沸点に至らなかった成分(混合物)は蒸発器に留まり続けるため、これを蒸発器の外に排出する必要がある。その方法として、蒸発器に設置された加熱装置と真空ポンプの作動を停止することにより蒸発器内の圧力を正圧にした状態で、蒸発器の下部に設置された流出口を開くことにより、分離された成分は蒸発器の外に排出される。
【0016】
図2は、本発明の実施の形態に係る流体に含まれる混合物の分離・除去装置の構成の一例を示したブロック線図である。液体の混合物除去装置は、混合物を含む液体中の混合物が沸点の違いにより分離される蒸発器(1)に流入する配管(7a,7b,7c)の途中に設置された
流量制御弁である制御弁(2)と、この制御弁(2)に配管(7b)を介して接続される熱交換器(3)と、この熱交換器(3)に配管(7c)を介して接続される蒸発器(1)と、この蒸発器(1)に設置されたレベルセンサー(4)と、この蒸発器(1)に配管(8a)を介して接続される熱交換器(3)と、この熱交換器(3)に配管(8b)を介して接続される真空ポンプ(5)と、この真空ポンプ(5)に配管(8c)を介して接続される凝縮器(6)とから構成されている。
【0017】
図3は、本発明の実施の形態に係る液体に含まれる液体中の混合物分離装置の主要部である蒸発器の一例を示した概念図である。
流量制御弁である制御弁(2)により蒸発器に至る配管に流入した混合物を含む液体は、熱交換器により加熱された後、蒸発器下部に設置された流入口から蒸発器内に流入する。
【0018】
蒸発器に流入した混合物を含む液体は、蒸発器に設置された加熱装置により加熱されて、真空ポンプによって設定された蒸発器内の圧力(負圧)に応じた温度において気化し、液体中に含まれる混合物と分離される。
【0019】
気化した成分は、真空ポンプにより吸引され、流出口1から流出し、熱交換器を経て凝縮器に至る。
【0020】
沸点の差により分離され、蒸発器内に留まった成分(混合物)は蒸発器内に留まり続けるため、適時排出する必要がある。この方法の一つとして、真空ポンプと加熱器の作動を停止して蒸発器内が正圧に転じた後に、蒸発器の底部に設置された流出口2を開放することにより、蒸発器内に留まっていた成分(混合物)は容器外へ流出する。
【0021】
比較的密度差の小さな流体(混合物)は分離容器の上部に滞留するが、循環ポンプにより吸入されることにより容器外へ流出する。
【0022】
これらの作用を連続的に行うことにより、混合物を含む流体は沸点の差により蒸発器において気化し、凝縮器において液化することにより、連続的に混合物と分離される。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、液体中に含まれる混合物を効果的に分離する場合に適用可能である。
【符号の説明】
【0024】
(1)蒸発器
(2)制御弁
(3)熱交換器
(4)レベルゲージ
(5)真空ポンプ
(6)凝縮器
(7a)外部から制御弁に至る配管
(7b)制御弁から熱交換器に至る配管
(7c)熱交換器から蒸発器に至る配管
(8a)蒸発器から熱交換器に至る配管
(8b)熱交換器から真空ポンプに至る配管
(8c)真空ポンプから凝縮器に至る配管
【要約】
【課題】液体中に含まれる混合物を効果的に分離・除去するための、構造が簡単で保守・整備が容易という特性を持つ、液体中の混合物分離装置を提供する。
【解決手段】混合物を含む液体中の混合物が沸点の違いにより分離される蒸発器(1)に流入する配管(7a,7b,7c)の途中に設置された
流量制御弁である制御弁(2)と、この制御弁(2)に配管(7b)を介して接続される熱交換器(3)と、この熱交換器(3)に配管(7c)を介して接続される蒸発器(1)と、この蒸発器(1)に設置されたレベルセンサー(4)と、この蒸発器(1)に配管(8a)を介して接続される熱交換器(3)と、この熱交換器(3)に配管(8b)を介して接続される真空ポンプ(5)と、この真空ポンプ(5)に配管(8c)を介して接続される凝縮器(6)とから構成されることを特徴とする液体中の混合物分離装置。
【選択図】
図2