(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ダウンシフト抑制手段は、前記車両姿勢制御手段により前記エンジンの生成トルクを低下方向に変化させるように前記エンジン制御機構が駆動されているときに、前記ダウンシフト制御手段による前記ダウンシフト制御の実行を抑制する、請求項1に記載の車両の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両の制御装置について説明する。
【0021】
まず、
図1及び
図2により、本発明の実施形態による車両の制御装置が適用されたエンジンシステムについて説明する。
図1は、本発明の実施形態による車両の制御装置が適用されたエンジンシステムの概略構成図であり、
図2は、本発明の実施形態による車両の制御装置の電気的構成を示すブロック図である。
【0022】
図1及び
図2に示すように、エンジンシステム100は、主に、外部から導入された吸気(空気)が通過する吸気通路1と、この吸気通路1から供給された吸気と、後述する燃料噴射弁13から供給された燃料との混合気を燃焼させて車両の動力を発生するエンジン10(具体的にはガソリンエンジン)と、このエンジン10内の燃焼により発生した排気ガスを排出する排気通路25と、エンジンシステム100に関する各種の状態を検出するセンサ30〜40と、エンジンシステム100全体を制御するPCM(Power-train Control Module)50と、を有する。
【0023】
吸気通路1には、上流側から順に、外部から導入された吸気を浄化するエアクリーナ3と、通過する吸気の量(吸入空気量)を調整するスロットルバルブ5と、エンジン10に供給する吸気を一時的に蓄えるサージタンク7と、が設けられている。
【0024】
エンジン10は、主に、吸気通路1から供給された吸気を燃焼室11内に導入する吸気バルブ12と、燃焼室11に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁13と、燃焼室11内に供給された吸気と燃料との混合気に点火する点火プラグ14と、燃焼室11内での混合気の燃焼により往復運動するピストン15と、ピストン15の往復運動により回転されるクランクシャフト16と、燃焼室11内での混合気の燃焼により発生した排気ガスを排気通路25へ排出する排気バルブ17と、を有する。
【0025】
また、エンジン10は、吸気バルブ12及び排気バルブ17のそれぞれの動作タイミング(バルブの位相に相当する)を、可変バルブタイミング機構(Variable Valve Timing Mechanism)としての可変吸気バルブ機構18及び可変排気バルブ機構19によって可変に構成されている。可変吸気バルブ機構18及び可変排気バルブ機構19としては、公知の種々の形式を適用可能であるが、例えば電磁式又は油圧式に構成された機構を用いて、吸気バルブ12及び排気バルブ17の動作タイミングを変化させることができる。
【0026】
排気通路25には、主に、例えばNOx触媒や三元触媒や酸化触媒などの、排気ガスの浄化機能を有する排気浄化触媒26a、26bが設けられている。以下では、排気浄化触媒26a、26bを区別しないで用いる場合には、単に「排気浄化触媒26」と表記する。
【0027】
また、エンジンシステム100には、当該エンジンシステム100に関する各種の状態を検出するセンサ30〜40が設けられている。これらセンサ30〜40は、具体的には以下の通りである。アクセル開度センサ30は、アクセルペダルの開度(ドライバがアクセルペダルを踏み込んだ量に相当する)であるアクセル開度を検出する。エアフローセンサ31は、吸気通路1を通過する吸気の流量に相当する吸入空気量を検出する。スロットル開度センサ32は、スロットルバルブ5の開度であるスロットル開度を検出する。圧力センサ33は、エンジン10に供給される吸気の圧力に相当するインマニ圧(インテークマニホールドの圧力)を検出する。クランク角センサ34は、クランクシャフト16におけるクランク角を検出する。水温センサ35は、エンジン10を冷却する冷却水の温度である水温を検出する。温度センサ36は、エンジン10の気筒内の温度である筒内温度を検出する。カム角センサ37、38は、それぞれ、吸気バルブ12及び排気バルブ17の閉弁時期を含む動作タイミングを検出する。車速センサ39は、車両の速度(車速)を検出する。操舵角センサ40は、図示しない操舵装置が有するステアリングホイールの回転角度(操舵角)を検出する。これらの各種センサ30〜40は、それぞれ、検出したパラメータに対応する検出信号S130〜S140をPCM50に出力する。
【0028】
PCM50は、上述した各種センサ30〜40から入力された検出信号S130〜S140に基づいて、エンジンシステム100内の構成要素に対する制御を行う。具体的には、PCM50は、スロットルバルブ5に制御信号S105を供給して、スロットルバルブ5の開閉時期やスロットル開度を制御し、燃料噴射弁13に制御信号S113を供給して、燃料噴射量や燃料噴射タイミングを制御し、点火プラグ14に制御信号S114を供給して、点火時期を制御し、可変吸気バルブ機構18及び可変排気バルブ機構19のそれぞれに制御信号S118、S119を供給して、吸気バルブ12及び排気バルブ17の動作タイミングを制御する。なお、これらスロットルバルブ5、燃料噴射弁13、点火プラグ14、可変吸気バルブ機構18及び可変排気バルブ機構19は、それぞれ、本発明における「エンジン制御機構」の一例に相当する。
【0029】
また、PCM50には、車両に搭載された自動変速機を制御するTCM(Transmission Control Module)210から所定の信号S210が入力される。ここで、
図3を参照して、本発明の実施形態による自動変速機について説明すると共に、
図4を参照して、本発明の実施形態による自動変速機の変速段を決定するための変速マップについて説明する。
【0030】
図3は、本発明の実施形態による自動変速機200のシフトレバー及びシフトゲートの斜視図である。
図3に示すように、シフトレバー201は、自動変速機200の変速レンジを選択するためのレバーであり、車両の運転席と助手席との間のセンターコンソール202に取り付けられたカバー203から上方へ突出するよう設けられている。このカバー203にはジグザグ形状のシフトゲート204が形成され、このシフトゲート204にシフトレバー201が挿通されている。シフトレバー201をシフトゲート204に沿って揺動移動させることで、変速レンジを、Pレンジ、Rレンジン、Nレンジ、Dレンジ、Mレンジのいずれかに択一的に選択可能である。Dレンジ(ドライブレンジ)は、自動変速機200の変速段が所定の変速特性に基づいて自動的に切り替えられる自動変速モードを選択するレンジである。Mレンジ(マニュアルレンジ)は、ドライバが自動変速機200の変速段を手動操作で切り替え可能な手動変速モードを選択するレンジである。Pレンジ及びNレンジは、非走行レンジに相当する。
【0031】
図4は、本発明の実施形態による自動変速機の変速段を決定するための変速マップである。
図4に示すように、変速マップは、車速(横軸)とアクセル開度(縦軸)とに応じて規定されている。上記したTCM210は、変速レンジがDレンジに設定されているときに、このような変速マップに基づき、車速及びアクセル開度に応じて自動変速機200の変速動作を行う。具体的には、TCM210は、車速及び/又はアクセル開度の変化に応じて、
図4において実線で示す変速マップに従って自動変速機200をアップシフトさせ(例えば1速→2速や2速→3速など)、また、
図4において破線で示す変速マップに従って自動変速機200をダウンシフトさせる(例えば2速→1速や3速→2速など)。
【0032】
TCM210は、車速及び/又はアクセル開度から自動変速機200をダウンシフトさせるべき状況であると判断すると、自動変速機200をダウンシフトさせる要求(ダウンシフト要求)に対応する信号S210をPCM50に出力する。具体的には、TCM210は、自動変速機200をダウンシフトさせるときに、自動変速機200のギヤ比を上げるべく自動変速機200の入力回転数(エンジン10側の回転数)を上げるように、エンジン10のトルクを増加させる要求をPCM50に出力する。このトルクを増加させる要求に加えて、TCM210は、ダウンシフト時にトルクを増加させるべき量(以下では適宜「ダウンシフト用トルクアップ要求量」と呼ぶ。)もPCM50に出力する。
【0033】
図2に戻ると、PCM50は、以下のような機能的な構成要素を有する。まず、PCM50は、上記のようなダウンシフト要求が発せられたときに、自動変速機200をダウンシフトさせると共にエンジンEのトルクを増加させるためのダウンシフト制御を実行するダウンシフト制御部51を有する。厳密には、このダウンシフト制御は、PCM50とTCM210との協調制御により実現される(ダウンシフトの変速動作を行うための制御はTCM210が実行し、トルクを増加させるための制御はPCM50が実行する)。また、PCM50は、車両が走行中であり、且つ、ステアリングホイールの操舵角に関連する操舵角関連値(典型的には操舵速度)が増大するという条件が成立したときに、エンジンEのトルクを低下させて車両減速度を生じさせることにより、車両姿勢を制御するための車両姿勢制御を実行する車両姿勢制御部53を有する。更に、PCM50は、車両姿勢制御部53により車両姿勢制御が実行されているときにダウンシフト制御部51によるダウンシフト制御の実行を抑制するダウンシフト抑制部55と、ダウンシフト制御部51によりダウンシフト制御が実行されているときに車両姿勢制御部53による車両姿勢制御の実行を抑制する車両姿勢制御抑制部57と、を有する。これらのダウンシフト抑制部55及び車両姿勢制御抑制部57は、車両姿勢制御の実行期間とダウンシフト制御の実行期間とが重複するのを抑制することから、本発明における「期間重複抑制手段」として機能することとなる。なお、以下では、車両姿勢制御部53による車両姿勢制御を適宜「トルク低減制御」と言い換える。
【0034】
これらのPCM50の各構成要素は、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを記憶するためのROMやRAMの如き内部メモリを備えるコンピュータにより構成される。
【0035】
<第1実施形態による制御>
次に、
図5乃至
図7を参照して、本発明の第1実施形態において車両の制御装置が行う制御について説明する。
【0036】
図5は、本発明の第1実施形態による車両の制御装置がエンジン10を制御するエンジン制御処理のフローチャートであり、
図6は、本発明の第1実施形態による車両の制御装置がトルク低減量を決定するトルク低減量決定処理のフローチャートであり、
図7は、本発明の第1実施形態による車両の制御装置が決定する目標付加減速度と操舵速度との関係を示したマップである。
【0037】
図5のエンジン制御処理は、車両のイグニッションがオンにされ、エンジンの制御装置に電源が投入された場合に起動され、繰り返し実行される。また、このエンジン制御処理は、基本的には、車両の走行中に実行される。
【0038】
エンジン制御処理が開始されると、
図5に示すように、ステップS1において、PCM50は車両の運転状態を取得する。具体的には、PCM50は、アクセル開度センサ30が検出したアクセル開度、車速センサ39が検出した車速、操舵角センサ40が検出した操舵角、車両の自動変速機に現在設定されているギヤ段等を含む、上述した各種センサ30〜40が出力した検出信号S130〜S140を運転状態として取得する。
【0039】
次いで、ステップS2において、PCM50は、ステップS1において取得されたアクセルペダルの操作を含む車両の運転状態に基づき、目標加速度を設定する。具体的には、PCM50は、種々の車速及び種々のギヤ段について規定された加速度特性マップ(予め作成されてメモリなどに記憶されている)の中から、現在の車速及びギヤ段に対応する加速度特性マップを選択し、選択した加速度特性マップを参照して現在のアクセル開度に対応する目標加速度を決定する。
【0040】
次いで、ステップS3において、PCM50は、ステップS2において決定した目標加速度を実現するためのエンジン10の基本目標トルクを決定する。この場合、PCM50は、現在の車速、ギヤ段、路面勾配、路面μなどに基づき、エンジン10が出力可能なトルクの範囲内で、基本目標トルクを決定する。
【0041】
また、ステップS2〜S3の処理と並行して、ステップS4において、PCM50は、操舵角センサ40によって検出されたステアリングホイールの操舵角に基づき、上記したトルク低減制御(車両姿勢制御)においてトルク低減量を決定するためのトルク低減量決定処理を実行する。このトルク低減量決定処理について、
図6を参照して説明する。
【0042】
図6に示すように、トルク低減量決定処理が開始されると、ステップS21において、PCM50は、ステップS1において取得した操舵角の絶対値が増大中か否かを判定する。その結果、操舵角の絶対値が増大中である場合(ステップS21:Yes)、ステップS22に進み、PCM50は、ステップS1において取得した操舵角に基づき操舵速度を算出する。
【0043】
次いで、ステップS23において、PCM50は、操舵速度の絶対値が減少しているか否かを判定する。その結果、操舵速度の絶対値が減少していない場合(ステップS23:No)、即ち操舵速度の絶対値が増大している又は操舵速度の絶対値が変化していない場合、ステップS24に進み、PCM50は、操舵速度に基づき目標付加減速度を取得する。この目標付加減速度は、ドライバの意図した車両挙動を正確に実現するために、ステアリング操作に応じて車両に付加すべき減速度である。
【0044】
具体的には、PCM50は、
図7のマップに示した目標付加減速度と操舵速度との関係に基づき、ステップS22において算出した操舵速度に対応する目標付加減速度を取得する。
図7において、横軸は操舵速度を示し、縦軸は目標付加減速度を示す。
図7に示すように、操舵速度が閾値T
s(例えば10deg/s)未満の場合、対応する目標付加減速度は0である。即ち、操舵速度が閾値T
s未満の場合には、ステアリング操作に応じて車両に減速度を付加する制御が行われない。
一方、操舵速度が閾値T
s以上の場合には、操舵速度が増大するに従って、この操舵速度に対応する目標付加減速度は、所定の上限値(例えば1m/s
2)に漸近する。即ち、操舵速度が増大するほど目標付加減速度は増大し、且つ、その増大量の増加割合は小さくなる。
【0045】
次いで、ステップS25において、PCM50は、付加減速度の増大率が閾値Rmax(例えば0.5m/s
3)以下となる範囲で今回の処理における付加減速度を決定する。
具体的には、PCM50は、前回の処理において決定した付加減速度から今回の処理のステップS24において決定した目標付加減速度への増大率がRmax以下である場合、ステップS24において決定した目標付加減速度を今回の処理における付加減速度として決定する。
一方、前回の処理において決定した付加減速度から今回の処理のステップS24において決定した目標付加減速度への変化率がRmaxより大きい場合、PCM50は、前回の処理において決定した付加減速度から今回の処理時まで増大率Rmaxにより増大させた値を今回の処理における付加減速度として決定する。
【0046】
また、ステップS23において、操舵速度の絶対値が減少している場合(ステップS23:Yes)、ステップS26に進み、PCM50は、前回の処理において決定した付加減速度を今回の処理における付加減速度として決定する。即ち、操舵速度の絶対値が減少している場合、操舵速度の最大時における付加減速度(即ち付加減速度の最大値)が保持される。
【0047】
他方で、ステップS21において、操舵角の絶対値が増大中ではない場合(ステップS21:No)、つまり操舵角が一定又は減少中である場合、ステップS27に進み、PCM50は、前回の処理において決定した付加減速度を今回の処理において減少させる量(減速度減少量)を取得する。この減速度減少量は、例えば、予めメモリ等に記憶されている一定の減少率(例えば0.3m/s
3)に基づき算出される。あるいは、ステップS1において取得された車両の運転状態やステップS22において算出した操舵速度に応じて決定された減少率に基づき算出される。
【0048】
そして、ステップS28において、PCM50は、前回の処理において決定した付加減速度からステップS27において取得した減速度減少量を減算することにより、今回の処理における付加減速度を決定する。
【0049】
ステップS25、S26、又はS28の後、ステップS29において、PCM50は、ステップS25、S26、又はS28において決定した今回の付加減速度に基づき、トルク低減量を決定する。具体的には、PCM50は、今回の付加減速度を実現するために必要となるトルク低減量を、ステップS1において取得された現在の車速、ギヤ段、路面勾配等に基づき決定する。このステップS29の後、PCM50はトルク低減量決定処理を終了し、メインルーチンに戻る。
【0050】
なお、上記したステップS21では、操舵角(絶対値)が増大中か否かを判定していたが、この代わりに、操舵速度(つまり操舵角の変化速度)が所定値以上か否かを判定してもよい。具体的には、他の例では、操舵速度が第1所定値以上となった場合に、トルク低減制御の開始条件が成立したものとして、上記のステップS23〜S26、S29の手順にてトルク低減量を決定し、そして、操舵速度が第2所定値未満となった場合に、トルク低減制御の終了条件が成立したものとして、上記のステップS27〜S29の手順にてトルク低減量を決定すればよい。また、これらの第1及び第2所定値には、
図7に示した操舵速度の閾値T
sに応じた値をそれぞれ適用すればよい。
【0051】
図5に戻ると、ステップS2〜S3の処理及びステップS4のトルク低減量決定処理を行った後、ステップS5において、PCM50は、トルク低減制御を実行中であるか否かを判定する。その結果、トルク低減制御中である場合(ステップS5:Yes)、ステップS6に進み、PCM50は、自動変速機200をダウンシフトさせるためのダウンシフト制御の実行を抑制する。具体的には、PCM50は、TCM210による自動変速機200のダウンシフトの変速動作を禁止すると共に、このダウンシフトに伴ったエンジンEのトルクの増加を禁止する。こうすることで、PCM50は、トルク低減制御の実行期間に対してダウンシフト制御の実行期間が重複するのを抑制するようにする。この後、ステップS9に進み、PCM50は、ステップS3において決定した基本目標トルクから、ステップS4のトルク低減量決定処理において決定したトルク低減量を減算することにより、最終目標トルクを決定する。
【0052】
一方、トルク低減制御中でない場合(ステップS5:No)、ステップS7に進み、PCM50は、ダウンシフト制御を実行中であるか否かを判定する。つまり、TCM210が自動変速機200をダウンシフトさせ、このときにPCM50がエンジンEのトルクを増加させる、ダウンシフト制御が現在実行されているか否かを判定する。その結果、ダウンシフト制御中である場合(ステップS7:Yes)、ステップS8に進み、PCM50は、トルク低減制御の実行を抑制する、具体的にはトルク低減制御の実行を禁止する。こうすることで、PCM50は、ダウンシフト制御の実行期間に対してトルク低減制御の実行期間が重複するのを抑制するようにする。この後、ステップS9に進み、PCM50は、ステップS3において決定した基本目標トルクに対して、自動変速機200をダウンシフトさせるときにエンジン10のトルクを増加させるべき量(ダウンシフト用トルクアップ要求量)を加算することにより、最終目標トルクを決定する。
なお、ダウンシフト用トルクアップ要求量はTCM210によって求められる。例えば、変速直前のエンジントルクとダウンシフト用トルクアップ要求量との関係を規定したマップを事前に作成しておき、TCM210は、ダウンシフトの変速動作が行われる場合に、そのようなマップを参照して、現在のエンジントルクに対応するダウンシフト用トルクアップ要求量を決定する。
【0053】
一方、ダウンシフト制御中でない場合(ステップS7:No)、この場合にはトルク低減制御もダウンシフト制御も実行されていないので、PCM50は、ステップS9に進み、ステップS3において決定した基本目標トルクをそのまま最終目標トルクとして決定する。
【0054】
上記したステップS9の後、ステップS10に進み、PCM50は、ステップS9において決定した最終目標トルクをエンジン10により出力させるための目標空気量及び目標燃料量を決定する。ここで、「空気量」とは、エンジン10の燃焼室11内に導入される空気の量である。なお、この空気量を無次元化した充填効率を用いてもよい。
具体的には、PCM50は、最終目標トルクにフリクションロスやポンピングロスによる損失トルクを加味した目標図示トルクを算出し、この目標図示トルクを発生させるために必要な目標燃料量を算出し、この目標燃料量と目標当量比とに基づき、目標空気量を決定する。
【0055】
次いで、ステップS11において、PCM50は、ステップS10において決定した目標空気量の空気がエンジン10に導入されるように、エアフローセンサ31が検出した空気量を考慮して、スロットルバルブ5の開度と、可変吸気バルブ機構18を介した吸気バルブ12の開閉時期とを決定する。
【0056】
次いで、ステップS12において、PCM50は、ステップS11において設定したスロットル開度及び吸気バルブ12の開閉時期に基づき、スロットルバルブ5及び可変吸気バルブ機構18を制御するとともに、ステップS10において算出した目標燃料量に基づき燃料噴射弁13を制御する。
【0057】
次いで、ステップS13において、PCM50は、ステップS9において決定した最終目標トルクと、ステップS11におけるスロットルバルブ5及び可変吸気バルブ機構18の制御により実際に燃焼室11に導入された実空気量とに基づき、最終目標トルクをエンジン10により出力させるように点火時期を設定し、その点火時期に点火が行われるように点火プラグ14を制御する。ステップS13の後、PCM50は、エンジン制御処理を終了する。
【0058】
次に、
図8を参照して、本発明の第1実施形態による車両の制御装置の作用効果について説明する。
図8は、本発明の第1実施形態による車両の制御装置を搭載した車両がステアリングホイールの操作により旋回を行う場合における、エンジン制御に関するパラメータの時間変化を示したタイムチャートである。
【0059】
図8(a)は、右旋回を行う車両を概略的に示す平面図である。この
図8(a)に示すように、車両は、位置Aから右旋回を開始し、位置Bから位置Cまで操舵角一定で右旋回を継続する。
【0060】
次いで、
図8(b)は、
図8(a)に示したように右旋回を行う車両の操舵角の変化を示す線図である。
図8(b)における横軸は時間を示し、縦軸は操舵角を示す。
この
図8(b)に示すように、位置Aにおいて右向きの操舵が開始され、ステアリングの切り足し操作が行われることにより右向きの操舵角が徐々に増大し、位置Bにおいて右向きの操舵角が最大となる。その後、位置Cまで操舵角が一定に保たれる(操舵保持)。
【0061】
図8(c)は、
図8(b)に示したように右旋回を行う車両の操舵速度の変化を示す線図である。
図8(b)における横軸は時間を示し、縦軸は操舵速度を示す。
車両の操舵速度は、車両の操舵角の時間微分により表される。即ち、
図8(c)に示すように、位置Aにおいて右向きの操舵が開始された場合、右向きの操舵速度が生じ、位置Aと位置Bとの間において操舵速度がほぼ一定に保たれる。その後、右向きの操舵速度は減少し、位置Bにおいて右向きの操舵角が最大になると、操舵速度は0になる。更に、位置Bから位置Cまで右向きの操舵角が保持される間、操舵速度は0のままである。
【0062】
図8(d)は、
図8(c)に示した操舵速度に基づき決定された付加減速度の変化を示す線図である。
図8(d)における横軸は時間を示し、縦軸は付加減速度を示す。
図6を参照して説明したように、PCM50は、操舵角の絶対値が増大し且つ操舵速度の絶対値が減少していない場合(
図6のステップS21:Yes及びステップS23:No)、操舵速度に応じた目標付加減速度を取得して(
図7参照)、
図8(d)に示すように、付加減速度の増大率が閾値Rmax以下となる範囲で付加減速度を決定する(
図6のステップS25)。つまり、PCM50は、増大率≦Rmaxとなるように付加減速度を増大させる。この後、PCM50は、操舵角の絶対値が増大し且つ操舵速度の絶対値が減少している場合(
図6のステップS21:Yes及びステップS23:Yes)、操舵速度の最大時における付加減速度を保持し、そして、操舵角の絶対値が減少中である場合(
図6のステップS21:No)、減速度減少量を取得してその減速度減少量により付加減速度を減少させる(
図6のステップS27、S28)。
【0063】
図8(e)は、
図8(d)に示した付加減速度に基づき決定されたトルク低減量の変化を示す線図である。
図8(e)における横軸は時間を示し、縦軸はトルク低減量を示す。
上述したように、PCM50は、付加減速度を実現するために必要となるトルク低減量を、現在の車速、ギヤ段、路面勾配等のパラメータに基づき決定する。従って、これらのパラメータが一定である場合、トルク低減量は、
図8(d)に示した付加減速度の変化と同様に変化するように決定される。
【0064】
図8(f)は、ダウンシフト用トルクアップ要求量の変化を示す線図である。
図8(f)における横軸は時間を示し、縦軸はダウンシフト用トルクアップ要求量を示す。
この
図8(f)は、位置Aと位置Bとの間においてステアリングの切り込み操作が行われてトルク低減量が設定されている最中、つまりトルク低減制御が行われている最中に、TCM60によって、ダウンシフト要求が発せれ、このダウンシフト要求に応じたダウンシフト用トルクアップ要求量が求められた場合を示している。この場合、特にトルク低減量が低下方向に変化している最中に、ダウンシフト用トルクアップ要求量の設定が開始されている。
【0065】
図8(g)は、最終目標トルクの変化を示す線図である。
図8(g)における横軸は時間を示し、縦軸は最終目標トルクを示す。
図8(g)において、実線は本発明の第1実施形態において適用する最終目標トルクを示し、破線は比較例において適用する最終目標トルクを示している。
比較例では、
図8(e)のトルク低減量及び
図8(f)のダウンシフト用トルクアップ要求量の両方を用いて最終目標トルクが決定される。具体的には、
図8(g)の破線に示すように、最初は、基本目標トルク(
図5のステップS3で決定される)からトルク低減量を減算したトルクが最終目標トルクとして決定され、その後、基本目標トルクからトルク低減量を減算したトルクにダウンシフト用トルクアップ要求量を加算したトルクが最終目標トルクとして決定される。この場合には、ダウンシフト用トルクアップ要求量の適用後に最終目標トルクが増加することとなる。そのため、比較例によれば、車両姿勢を制御するための十分なトルク低下を行えずに所望の車両姿勢を実現することができない、つまり操安性を適切に向上できない。
これに対して、第1実施形態では、PCM50は、
図8(f)のダウンシフト用トルクアップ要求量の設定がトルク低減制御中になされたものと判断して(
図5のステップS5:Yes)、ダウンシフト制御の実行を抑制する(
図5のステップS6)。つまり、PCM50は、トルク低減制御の実行期間に対してダウンシフト制御の実行期間が重複するのを抑制するようにする。この場合、PCM50は、ダウンシフト用トルクアップ要求量を基本目標トルクに適用することを禁止して、
図8(g)の実線に示すように、基本目標トルクから
図8(e)のトルク低減量を減算したトルクを最終目標トルクとして決定する(
図5のステップS9)。これにより、最終目標トルクが基本目標トルクからトルク低減量の分だけ低減され、そのトルク低減に応じた減速度が車両に生じるので、前輪への荷重移動が生じる。その結果、前輪と路面との間の摩擦力が増加し、前輪のコーナリングフォースが増大する。よって、ドライバによるステアリング操作に対して良好な応答性で車両姿勢を制御することができ、ドライバの意図した挙動を正確に実現できる。つまり、操安性を適切に向上させることができる。
そして、第1実施形態では、車両が位置Bを通過した後、PCM50は、トルク低減制御を終了して、ダウンシフト制御の実行を許可する。具体的には、PCM50は、
図8(g)の実線に示すように、基本目標トルクに対して
図8(f)のダウンシフト用トルクアップ要求量を加算したトルクを最終目標トルクとして決定する。これにより、最終目標トルクが基本目標トルクからダウンシフト用トルクアップ要求量の分だけ増加されるので、自動変速機200におけるダウンシフトの変速動作に適したトルク増加を実現することができる。その結果、自動変速機200におけるダウンシフトの変速動作が適切に行われることとなる。
【0066】
図8に示したように、第1実施形態によれば、トルク低減制御(車両姿勢制御)中にはダウンシフト制御の実行を抑制するので、比較例のように、車両姿勢を制御するためにトルクを低下させているときにダウンシフトのためにトルクを増加させることに起因して、車両姿勢を制御するための十分なトルク低下を行えずに操安性を向上できなくなることを確実に抑制することができる。つまり、第1実施形態によれば、車両姿勢制御による操安性の向上を適切に確保することができる。
また、
図8ではトルク低減制御中にダウンシフト制御の実行を抑制する例を示したが、第1実施形態によれば、ダウンシフト制御中にはトルク低減制御の実行を抑制することとなる。これにより、ダウンシフトのためにトルクを増加させているときに車両姿勢を制御するためにトルクを低下させることに起因して、ダウンシフトのための十分なトルク増加を行えずに自動変速機200の変速が長期化してしまうことを確実に抑制することができる。
【0067】
<第2実施形態による制御>
次に、本発明の第2実施形態において車両の制御装置が行う制御について説明する。以下では、第1実施形態と異なる制御についてのみ説明を行い、第1実施形態と同様の制御についてはその説明を省略する(制御だけでなく、作用効果も同様とする)。よって、ここで説明しない内容は第1実施形態と同様であるものとする。
【0068】
上記した第1実施形態では、トルク低減制御(車両姿勢制御)中にダウンシフト制御の実行を抑制すると共に、ダウンシフト制御中にトルク低減制御の実行を抑制して、トルク低減制御の実行期間とダウンシフト制御の実行期間とが重複するのを抑制していた。これに対して、第2実施形態では、トルク低減制御が実行されるような所定の横加速度が車両に発生する状況においてダウンシフト制御を抑制するようにし、結果的に(換言すると必然的に)、トルク低減制御の実行期間に対してダウンシフト制御の実行期間が重複するのを抑制するようにする。
【0069】
図9及び
図10を参照して、本発明の第2実施形態による制御について具体的に説明する。
図9は、本発明の第2実施形態による車両の制御装置が実行する制御処理を示すフローチャートであり、
図10は、本発明の第2実施形態による車両の制御装置がダウンシフト用トルクアップ要求量を決定するダウンシフト用トルクアップ要求量決定処理を示すフローチャートである。
【0070】
図9のステップS31〜S34及びステップS37〜S40の処理は、それぞれ、
図5のステップS1〜S4及びステップS10〜S13の処理と同一であるため、これらの説明を省略する。ここでは、主に、ステップS35、S36の処理のみを説明する。
【0071】
まず、ステップS35においては、TCM210が、ステップS32、S33及びステップS34の処理と並行して、自動変速機200をダウンシフトさせるときにエンジン10のトルクを増加させるべき量(ダウンシフト用トルクアップ要求量)を決定するためのダウンシフト用トルクアップ要求量決定処理を実行する。このダウンシフト用トルクアップ要求量決定処理について、
図10を参照して説明する。
【0072】
図10に示すように、ダウンシフト用トルクアップ要求量決定処理が開始されると、ステップS41において、TCM210は、
図4に示した変速マップを参照して、現在の車速及びアクセル開度に基づき、自動変速機200をダウンシフトさせるべきか否かを判定する。つまり、ダウンシフト要求が有るか否かを判定する。その結果、ダウンシフト要求が無い場合(ステップS41:No)、処理は終了する。この場合には、TCM210は、ダウンシフト用トルクアップ要求量を決定しない。
【0073】
他方で、ダウンシフト要求が有る場合(ステップS41:Yes)、ステップS42に進み、TCM210は、車両に発生する横加速度が所定値未満であるか否かを判定する。ここでは、車両が安定した状態にあるか否かを判定している。本実施形態では、車両が安定した状態において自動変速機200の変速動作を実行すべく、横加速度が所定値未満である場合にのみ自動変速機200の変速を許可し、横加速度が所定値以上である場合には自動変速機200の変速を禁止するようにしている。こうすることで、自動変速機200による安定した変速を実現するようにしている。
そういった観点より、ステップS42において横加速度を判定するための所定値は、自動変速機200による安定した変速を実現可能な横加速度の境界値に応じて設定すればよい。例えば、上述した操舵速度を判定するための閾値T
s(
図7参照)に応じた横加速度を、所定値に適用すればよい。好適な例では、操舵速度T
sにてステアリング操作がなされたときに車両に発生する横加速度よりも若干小さい横加速度を、所定値に適用するのがよい。また、横加速度は、横角速度センサを車両に設けて検出すればよい。なお、ステップS42では、横加速度に基づき判定を行っているが、他の例では、横加速度の代わりに、ヨーレート又は操舵速度などに基づき判定を行ってもよい。
【0074】
ステップS42の判定の結果、横加速度が所定値未満である場合(ステップS42:Yes)、ステップS43に進み、TCM210は、ダウンシフト制御の実行を許可し、ダウンシフト用トルクアップ要求量を決定する。例えば、変速直前のエンジントルクとダウンシフト用トルクアップ要求量との関係を規定したマップを事前に作成しておき、TCM210は、そのようなマップを参照して、現在のエンジントルクに対応するダウンシフト用トルクアップ要求量を決定する。
【0075】
他方で、横加速度が所定値以上である場合(ステップS42:No)、ステップS44に進み、TCM210は、ダウンシフト制御の実行を抑制する。この場合には、TCM210は、ダウンシフト用トルクアップ要求量を決定しない。
【0076】
図9に戻ると、ステップS32〜S35の処理を行った後、ステップS36において、PCM50は、最終目標トルクを決定する。具体的には、PCM50は、以下のようにして最終目標トルクを決定する。
ステップS35のダウンシフト用トルクアップ要求量決定処理でダウンシフト用トルクアップ要求量が決定される状況では、横加速度が所定値未満となり(ステップS42:Yes)、トルク低減制御の実行条件となる所定の操舵角及び操舵速度が生じないので、トルク低減制御は実行されない、つまりステップS34のトルク低減量決定処理でトルク低減量が決定されない。この場合には、PCM50は、ステップS33で決定された基本目標トルクに対して、ステップS35のダウンシフト用トルクアップ要求量決定処理で決定されたダウンシフト用トルクアップ要求量を加算することにより、最終目標トルクを決定する。
これに対して、ステップS34のトルク低減量決定処理でトルク低減量が決定される状況では、トルク低減制御の実行条件となる所定の操舵角及び操舵速度が生じて、横加速度が所定値以上となるので(ステップS42:No)、ダウンシフト制御が抑制される(ステップS44)、つまりステップS35においてダウンシフト用トルクアップ要求量が決定されない。この場合には、PCM50は、ステップS33で決定された基本目標トルクから、ステップS34のトルク低減量決定処理で決定されたトルク低減量を減算することにより、最終目標トルクを決定する。
他方で、ステップS34のトルク低減量決定処理でトルク低減量が決定されず、且つ、ステップS35のダウンシフト用トルクアップ要求量決定処理でダウンシフト用トルクアップ要求量が決定されなかった場合には、PCM50は、ステップS33で決定された基本目標トルクをそのまま最終目標トルクとして決定する。
【0077】
次いで、PCM50は、ステップS37〜S40において、
図5のステップS10〜S13と同様の処理を行い、ステップS36で決定された最終目標トルクをエンジン10から出力させるようにする。
【0078】
以上説明した本発明の第2実施形態によっても、トルク低減制御(車両姿勢制御)の実行期間とダウンシフト制御の実行期間とが重複するのを適切に抑制することができる。よって、第2実施形態によれば、トルク低減制御中にダウンシフト制御が行われることで、車両姿勢を制御するための十分なトルク低下を行えずに操安性を向上できなくなることを確実に抑制することができる。つまり、第2実施形態によれば、車両姿勢制御による操安性の向上を適切に確保することができる。加えて、第2実施形態によれば、ダウンシフト制御中にトルク低減制御が行われることで、ダウンシフトのための十分なトルク増加を行えずに自動変速機200の変速が長期化してしまうことも確実に抑制することができる。
【0079】
<変形例>
以下では、上述した実施形態の変形例について説明する。
【0080】
上記した実施形態では、トルク低減制御中にダウンシフト制御を禁止していた。具体的には、上記した実施形態では、トルク低減制御中には、自動変速機200のダウンシフトの変速動作を禁止すると共に、この変速動作に伴ったトルク増加を禁止していた。しかしながら、一つの変形例では、このようにダウンシフト制御を完全に禁止する代わりに、トルク低減制御中には、自動変速機200のダウンシフトの変速動作を許容する一方、この変速動作に伴ったトルク増加を抑制するようにしてもよい。具体的には、この変形例では、トルク低減制御を実行しているときにダウンシフト要求が発せられた場合に、自動変速機200のダウンシフトの変速動作を緩やかに実行しつつ、この変速動作に伴ってトルクを緩やかに増加させるのがよい、換言すると、変速動作に伴ったトルク増加の変化率(傾き)を、トルク低減制御を実行していないときにダウンシフト要求が発せられた場合に適用する変化率よりも低下させるのがよい。このような変形例によれば、トルク低減制御中に通常のダウンシフト制御を行う場合(つまりトルク低減制御中であることを考慮せずにダウンシフトに適したトルク増加を行う場合)と比較して、車両姿勢を制御するためのトルク低下を確保でき、車両姿勢制御による操安性の向上を確保することが可能となる。
【0081】
また、更なる変形例では、上記した実施形態のようにトルク低減制御が実行されているときにダウンシフト制御を禁止する代わりに、トルク低減制御が実行されているときには、トルク低減制御が実行されていないときよりも、ダウンシフトする変速条件を強化してもよい。この変形例について、
図11を参照して具体的に説明する。
図11は、本発明の実施形態の変形例による自動変速機の変速段を決定するための変速マップである。
図11は、横軸に車速を示し、縦軸にアクセル開度を示して、ダウンシフト時に使用する変速マップを表している。
図11において、破線は、トルク低減制御が実行されていないときに適用する通常の変速マップ(変更前の変速マップであり、
図4に示したものと同様である)を示している。また、実線は、トルク低減制御が実行されているときに適用する変形例に係る変速マップ(変更後の変速マップ)を示している。変形例では、通常の変速マップを低車速側及び大アクセル開度側にシフトさせた変速マップ、つまりダウンシフトされにくくなる方向に変更した変速マップを、トルク低減制御中に使用するようにする。このような変形例によれば、トルク低減制御中にダウンシフト制御が実行されにくくなるので、車両姿勢を制御するためのトルク低下を確保でき、車両姿勢制御による操安性の向上を確保することが可能となる。
【0082】
上記した実施形態では、操舵角及び操舵速度に基づきトルク低減制御(車両姿勢制御)を実行していたが、他の例では、操舵角及び操舵速度の代わりに、ヨーレート又は横加速度に基づきトルク低減制御を実行してもよい。これらの操舵角、操舵速度、ヨーレート及び横加速度は、本発明における「操舵角関連値」の一例に相当する。