特許第6593775号(P6593775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TOTO株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6593775-即湯システム 図000002
  • 特許6593775-即湯システム 図000003
  • 特許6593775-即湯システム 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593775
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】即湯システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 17/00 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   F24D17/00 L
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-173493(P2015-173493)
(22)【出願日】2015年9月3日
(65)【公開番号】特開2017-48975(P2017-48975A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉野 俊二
(72)【発明者】
【氏名】大井 正樹
【審査官】 吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−079112(JP,U)
【文献】 特公平03−070137(JP,B2)
【文献】 特開2002−275966(JP,A)
【文献】 実開平03−129826(JP,U)
【文献】 特開平01−083731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓の上流側に配設される即湯システムであって、
給湯機器側から伸びる第1流路と、
前記第1流路から供給される水を加熱するための加熱手段と、
前記加熱手段によって加熱された水を前記加熱手段の下流側に送る第2流路と、
前記第1流路から分岐し、前記加熱手段を経由することなく前記第2流路と合流する第3流路と、
前記第1流路または前記第3流路に設けられ、流路内を通過する湯の温度を検知する温度検知手段と、
前記第2流路と前記第3流路との合流点に、前記第2流路から供給される湯と前記第3流路から供給される湯を混合する混合部と、
を備え、
さらに、前記第1流路と前記第3流路とが分岐する分岐点に、前記加熱手段と前記第3流路とに水を分配するための分配弁を設けるとともに、
前記温度検知手段で検知した温度によって前記分配弁を制御する制御部を設け、
前記制御部は、前記温度検知手段が検知した温度が前記第1流路側から供給される湯の温度が予め使用者によって設定された給湯機器の設定温度に到達すると前記分配弁によって前記加熱手段側への湯の供給を停止し、
前記温度検知手段による検出温度の最高温度を給湯機器の設定温度とみなすことを特徴とする即湯システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記温度検知手段の検知した温度に応じて前記加熱手段側への湯量と前記第3流路側への湯量との比率を変更するよう前記分配弁を制御することを特徴とする請求項1に記載の即湯システム。
【請求項3】
前記温度検知手段は、前記第3流路に設けられるとともに、前記混合部の上流側の近傍
に設けられることを特徴とする請求項1または2の何れか1項に記載の即湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水初期から湯を吐水可能な即湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐水初期から湯を吐水可能とするために、水栓の上流側に加熱手段を有する貯湯タンクを備えた即湯システムが広く普及している。
【0003】
下記特許文献1に、吐水初期から湯を吐水可能な即湯システムが提案されている。
【0004】
下記特許文献1に記載された即湯システムは、給湯機器から供給される湯の温度が予め決められた設定温度以下の場合に、給湯機器から供給される湯の温度に応じて弁の開閉度合いを変化させて、一方の流路は水栓に直接流入させ、他方側の流路は即湯システム内の貯湯タンクへ流入させる即湯システムである。このような構成とすることで、ほぼ一定温度の湯を出すことができるものである。さらには、給湯機器から供給される湯の温度が予め決められた温度を超えた場合に、弁の開閉度合いを変化させて、即湯システム内の貯湯タンクへの流路を閉止することで、貯湯タンクからの無駄な出湯を防ぐものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平3−70137号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された即湯システムは、予め設定された一つの温度に対して貯湯タンクへの湯の流入経路を閉止するものであるのに対して、現状普及している給湯機器は、使用者が使用シーンに合わせて設定温度が変更可能なものである。したがって、給湯機器の設定温度が前記温度以下に変更されている場合は、常に即湯システム内の貯湯タンクに給湯機器からの湯が流入してしまう。その結果、吐水開始初期に即湯システム内の貯湯タンクに流入した温度の低い水が即湯システムの貯湯タンクから出口回路に押し出され、分岐回路の給湯機器からの湯と混合され、その混合された湯が下流側の水栓に到達してしまい、給湯機器の設定温度以下の湯が吐水されてしまう恐れがある。さらに、貯湯タンクへの湯の流入経路を閉止する温度が使用者が設定する給湯機器の設定温度よりも高い場合は、常時、即湯システムを経由することで加熱されることになる。したがって、省エネの観点からも好ましくない。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、即湯システムの設定温度の湯が供給された場合において即湯システムの貯湯タンクに湯が流入することを防止し、吐水開始初期に流入した冷たい水が即湯システムの貯湯タンクよりも下流側に流出し吐水温度が低下することを抑制可能な即湯システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る即湯システムは、水栓の上流側に配設される即湯システムであって、給湯機器側から伸びる第1流路と、前記第1流路から供給される水を加熱するための加熱手段と、前記加熱手段によって加熱された水を前記加熱手段の下流側に送る第2流路と、前記第1流路から分岐し、前記加熱手段を経由することなく前記第2流路と合流する第3流路と、前記第1流路または前記第3流路に設けられ、流路内を通過する湯の温度を検知する温度検知手段と、前記第2流路と前記第3流路との合流点に、前記第2流路から供給される湯と前記第3流路から供給される湯を混合する混合部と、を備え、さらに、前記第1流路と前記第3流路とが分岐する分岐点に、前記加熱手段と前記第3流路とに水を分配するための分配弁を設けるとともに、前記温度検知手段で検知した温度によって前記分配弁を制御する制御部を設け、前記制御部は、前記温度検知手段が検知した温度が前記第1流路側から供給される湯の温度が予め使用者によって設定された給湯機器の設定温度に到達すると前記分配弁によって前記加熱手段側への湯の供給を停止し、前記温度検知手段による検出温度の最高温度を給湯機器の設定温度とみなすことを特徴とする即湯システム。
【0009】
第一の発明の制御部は、給湯機器の設定温度と分配弁による加熱手段への湯の供給を停止する温度を一致させることによって、すなわち、温度検知手段が検知した温度が第1流路側から供給される湯の温度が予め使用者によって設定された給湯機器の設定温度に到達すると分配弁によって加熱手段側への湯の供給を停止することで、吐水開始初期に加熱手段に流入した温度の低い湯が加熱手段の下流側に押し出されることを抑制できる。したがって、吐水中に湯の温度が低下することを抑制できる。さらに、給湯機器側から供給される湯の温度が給湯機器の設定温度に到達すると加熱手段を経由することなく吐水することになるため、常時加熱手段によって加熱する必要がないためエネルギーを削減できる。
また、給湯機器の設定温度と分配弁を制御する温度を一致させるための設定スイッチ等が不要となる。
【0010】
第二の発明の前記制御部は、前記温度検知手段の検知した温度に応じて前記加熱手段側への湯量と前記第3流路側への湯量との比率を変更するよう前記分配弁を制御することを特徴とする。
【0011】
第二の発明の構成とすることで、給湯機器側から供給される湯の温度が高くなると、加熱手段に供給する湯の量を減らすことができる。具体的には、給湯機器側から供給される湯の温度が低ければ低いほど、混合部では第2流路から供給される湯の量を多くしなければならない。逆に、給湯機器側から供給される湯の温度が高ければ高いほど第2流路から供給される湯の量を減らすことができる。このように給湯機器側から供給される湯の温度が変化する中で、湯の温度を検知して加熱手段側への湯量と第3流路側への湯量との比率を変更することで、不必要に加熱手段に湯が流入することがない。
【0012】
第三の発明の前記温度検知手段は、前記第3流路に設けられるとともに、前記混合部の上流側の近傍に設けられることを特徴とする。
【0015】
第四の発明の構成とすることで、給湯機器の設定温度と分配弁を制御する温度を一致させるための設定スイッチ等が不要となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、給湯機器の設定温度にかかわらず、出湯温度の安定した湯を供給することができる即湯システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態を示す構成図である。
図2】本発明の実施形態において制御部が行う制御フローである。
図3】本発明の他の実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施形態を示す構成図である。
【0019】
図1に示すように、給水源(図示なし)からの水は、給水管10を経由して水栓3へ供給されるとともに、その途中でガス給湯機等の給湯機器2へ供給される。給湯機器2へ供給された水は、予め使用者にて設定された所定の設定温度(例えば、50℃)まで給湯機器2内の熱交換器(図示なし)にて加熱され、その湯は給湯管11(第1流路)を経由して即湯システム1へと供給される。
【0020】
本形態にかかる即湯システム1は、貯湯タンク4と、分配弁6と、制御部7と、を備えるとともに、貯湯タンク4の表面にサーミスター8(第1の温度検出手段)を、分配弁6へ接続された給湯管11(第1流路)の分配弁6の上流側の近傍にサーミスター9(第2の温度検出手段)を、備える。
【0021】
貯湯タンク4は、ヒーター5(加熱手段)を有するとともに、貯湯タンク4内に湯または水を導入する入水管12と、貯湯タンク4内の湯を水栓3まで導出する出湯管13(第2流路)とが接続される。
【0022】
入水管12を介して供給された湯または水は、貯湯タンク4内にてヒーター5(加熱手段)により予め決められた温度(例えば、75℃)まで加熱され、出湯管13(第2流路)から導出される。
【0023】
給湯管11(第1流路)を経由して即湯システム1へ供給された湯は、分配弁6にて、入水管12を経由して貯湯タンク4へ供給される経路と、貯湯タンク4を迂回し、出湯管13(第2流路)と混合部15で接続された分岐管14(第3流路)へ供給される経路へと分配される。その分配比は、給湯機器2の設定温度と同じ温度(例えば、50℃)になるように決められ、混合部15で合流した湯は水栓3へと供給される。
【0024】
制御部7は、貯湯タンク4の表面に設けられたサーミスター8(第1の温度検知手段)の測定結果に基づいて貯湯タンク4内の湯の沸き上げを制御するとともに、分配弁6の上流側の給湯管11に設けられたサーミスター9(第2の温度検知手段)の測定結果に基づいて分配弁6の分配比を制御する。
【0025】
すなわち、サーミスター9で検出した給湯管11(第1流路)内の湯又は水の温度に基づいて分配弁6の分配比を変えることにより混合部15での混合比を変え、即湯システム1から所定の温度の湯を水栓3へと供給する。さらに、サーミスター9での測定温度が給湯機器2の設定温度になった場合は、分配弁6により入水管12へ流れる湯の経路を閉止する。すなわち、分配弁6により、給湯管11(第1流路)内の全ての湯を分岐管14(第3流路)側へ配分する。
【0026】
なお、分配弁6による入水管12側の経路の閉止温度と給湯機器2の設定温度を連動させる手段としては即湯システム1への温度設定スイッチの追加等の方法があるが、サーミスター9による検出温度の最高温度を給湯機器の設定温度とみなすことにすると、即湯システム1への温度設定スイッチの追加等は不要となる。その場合、分配弁6による入水管12側の経路の閉止温度を工場出荷時は例えば40℃としておき、最初の湯の使用において検出した最高温度に再設定されることになる。また、給湯機の設定温度を変更するとその都度、再設定されることになる。
【0027】
次に、本発明の実施形態において、制御部7が行う分配弁6の制御フローについて、図2を参照して説明する。
図2は、本発明の実施形態において制御部7が行う制御フローである。このフローは、内蔵するコントローラ(図示なし)によって所定の周期で繰り返し実行される。
【0028】
まず、ステップS1において、制御部7は、給湯管11(第1流路)内の湯の温度(サーミスター9による測定結果)が使用者によって設定された給湯機器の設定温度未満であるか否かを判断する。その結果、給湯管11(第1流路)内の湯の温度(サーミスター9による測定結果)が使用者によって設定された給湯機器の設定温度未満である場合(ステップS1:Yes)、ステップS2へ進み、制御部7は、分配弁6により、入水管12側と分岐管14(第3流路)側との分配比率制御を行う。
【0029】
一方、給湯管11(第1流路)内の湯の温度(サーミスター9による測定結果)が使用者によって設定された給湯機器の設定温度になる(ステップS1:No)と、ステップS3に進む。
【0030】
ステップS3では、制御部7は、分配弁6により、入水管12への流路を閉止する。
【0031】
以上のように、給湯機器2から即湯システム1へ供給される湯の温度に基づいて、分配弁6を制御する。
【0032】
図3は、本発明の他の実施形態を示す構成図である。図3の即湯システム1は、図1の即湯システム1において、サーミスター9を分岐管14(第3流路)に設け、出湯管13との混合部15の上流側の近傍に設けたものである。
【0033】
以上のように、温度検知手段を分岐管14(第3流路)に設け、出湯管13(第2流路)との混合部15の上流側の近傍に設けることで、分岐管14(第3流路)内も給湯機器の設定温度の湯で満たされていることになり、混合部15で混合される際に湯温が低下することを抑制できる。
【符号の説明】
【0034】
1・・・即湯システム
2・・・給湯機器
3・・・水栓
4・・・貯湯タンク
5・・・ヒーター(加熱手段)
6・・・分配弁
7・・・制御部
8・・・サーミスター(第1の温度検知手段)
9・・・サーミスター(第2の温度検知手段)
10・・・給水管
11・・・給湯管(第1流路)
12・・・入水管
13・・・出湯管(第2流路)
14・・・分岐管(第3流路)
15・・・混合部
図1
図2
図3