(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記側壁部は、前記巻回部が並列される方向を並列方向としたとき、一方の前記巻回部における前記並列方向の外側面、または他方の前記巻回部における前記並列方向の外側面を前記ケースの外方に露出させるコイル用切欠き部を備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリアクトル。
前記側壁部は、前記巻回部が並列される方向を並列方向としたとき、一方の前記巻回部における前記並列方向の外側面、および他方の前記巻回部における前記並列方向の外側面をそれぞれ前記ケースの外方に露出させるコイル用切欠き部を備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリアクトル。
【発明を実施するための形態】
【0009】
・本発明の実施形態の説明
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0010】
<1>実施形態に係るリアクトルは、
並列された一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内部に配置される内側コア部、および前記巻回部から露出する外側コア部を有する磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアの組合体を収納するケースと、
を備えるリアクトルであって、
前記ケースは、
前記組合体を載置する底板部と、
前記底板部から立設される側壁部と、を備え、
前記側壁部は、前記外側コア部の少なくとも一部を前記ケースの外方に露出させるコア用切欠き部を備える。
【0011】
リアクトルの作動条件によっては、磁性コアにおける損失が大きくなるような条件でリアクトルを作動させる場合がある。その場合、磁性コアでの発熱がコイルでの発熱を上回ることがあり、ケースによって磁性コアの外周が囲まれていると、リアクトルに熱が籠ってリアクトルの作動が不安定になる恐れがある。これに対して、実施形態に係るリアクトルでは、ケースの側壁部に、外側コア部の一部をケースの外方に露出させるコア用切欠き部が設けられているため、磁性コアの熱がケース外に放出され易くなる。その結果、実施形態に係るリアクトルの放熱性が向上し、リアクトルの作動が安定する。
【0012】
また、実施形態に係るリアクトルでは、リアクトルを設置対象に固定するための応力がケース内の組合体に作用し難くできる。例えば、巻回部の軸方向または並列方向の両側からリアクトルを締め付ける取付金具を取り付けて、その取付金具を介してリアクトルを設置対象に固定する場合、取付金具の締め付け力をケースに受けさせることができる。また、ケースの一部にネジ孔を有する固定部を形成し、固定部を設置対象にネジ止めする場合、ネジの締め付け力をケースに受けさせることができる。いずれにせよ、ケース内の組合体に直接的に応力が作用することがない。
【0013】
<2>実施形態のリアクトルの一形態として、
前記コア用切欠き部は、前記側壁部の内外に連通する貫通孔であり、
前記外側コア部の一部が、前記貫通孔の内部に嵌まり込んだ状態で保持されている形態を挙げることができる。
【0014】
外側コア部の一部が貫通孔の内部に入り込んで貫通孔に係合することで、ケースから組合体が脱落することを効果的に抑制できる。また、外側コア部が貫通孔に入り込む構成とすることで、単に貫通孔の奥に外側コア部が露出し、貫通孔に外側コア部が入り込んでいない構成に比べて、外側コア部とケースの接触面積が大きくなるため、ケースを介した磁性コアの放熱性を向上させることができる。
【0015】
<3>実施形態のリアクトルの一形態として、
前記底板部は、前記外側コア部の少なくとも一部を前記ケースの下方に露出させる底孔部を備える形態を挙げることができる。
【0016】
底板部の位置からも外側コア部を露出させることで、より一層、磁性コアの熱がケース外に放出され易くなり、リアクトルの放熱性が向上する。
【0017】
<4>実施形態のリアクトルの一形態として、
前記外側コア部は、軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料で構成され、
前記外側コア部の少なくとも一部が、前記ケースの内周面に接合している形態を挙げることができる。
【0018】
複合材料は、軟磁性粉末の量を調整することで磁気特性を調整し易いという利点がある。また、複合材料は、ケース内に複合材料を充填することで作製できるため、リアクトルの生産性を向上させることができる。ケース内に複合材料を充填して磁性コアを作製する場合、磁性コアがケースの内周面に接合し、磁性コアからケースに熱が伝播し易くなる。その結果、ケースを介してケースの外部に熱が放出され易くなる。
【0019】
<5>実施形態のリアクトルの一形態として、
前記側壁部は、前記巻回部が並列される方向を並列方向としたとき、一方の前記巻回部における前記並列方向の外側面、または他方の前記巻回部における前記並列方向の外側面を前記ケースの外方に露出させるコイル用切欠き部を備える形態を挙げることができる。
【0020】
外側コア部に加えて、一方の巻回部の外側面がケースから露出される構成とすることで、リアクトルの放熱性をより一層向上させることができる。
【0021】
<6>実施形態のリアクトルの一形態として、
前記側壁部は、前記巻回部が並列される方向を並列方向としたとき、一方の前記巻回部における前記並列方向の外側面、および他方の前記巻回部における前記並列方向の外側面をそれぞれ前記ケースの外方に露出させるコイル用切欠き部を備える形態を挙げることができる。
【0022】
外側コア部に加えて、両巻回部の外側面がケースから露出される構成とすることで、リアクトルの放熱性をより一層向上させることができる。
【0023】
<7>前記コイル用切欠き部を備える実施形態のリアクトルの一形態として、
前記巻回部のうち、前記コイル用切欠き部から前記ケースの外方に露出する部分に、放熱部材を備える形態を挙げることができる。
【0024】
コイル用切欠き部から露出する巻回部の部分に放熱部材を配置することで、コイルからの放熱を促進させることができる。放熱部材としては、放熱グリスや放熱シートを介して取り付けられる放熱フィンや、リアクトルを設置対象に固定するための取付部材などを挙げることができる。もちろん、設置対象の熱伝導性が良い場合、取付部材を用いることなく巻回部の露出部分を設置対象に直付けすることもできる。その場合、巻回部の露出部分と設置対象との間に、放熱部材として放熱グリスや放熱シートを介在させると良い。
【0025】
<8>実施形態のリアクトルの一形態として、
前記外側コア部のうち、前記コア用切欠き部から前記ケースの外方に露出する部分に、放熱部材を備える形態を挙げることができる。
【0026】
コア用切欠き部から露出する外側コア部の部分に放熱部材を配置することで、外側コア部からの放熱を促進させることができる。ここで、軟磁性粉末を加圧成形して作製した圧粉成形体の磁性コアと比較して、軟磁性粉末の複合材料の磁性コアの熱伝導率は一桁程度低く、例えば軟磁性粉末の含有量が70体積%のときで3W/m・K前後である。そのため、特に外側コア部を複合材料で構成する場合、外側コア部の露出箇所に放熱部材を設けることが好ましい。
【0027】
<9>実施形態のリアクトルの一形態として、
前記コイルは、絶縁性樹脂で構成される一体化樹脂を備え、
前記一体化樹脂は、
前記巻回部の各ターンを一体化するターン被覆部と、
前記巻回部の端面と前記外側コア部との間に介在される端面被覆部と、を備える形態を挙げることができる。
【0028】
一体化樹脂のターン被覆部によってコイルの各ターンを一体化することで、リアクトルを製造するにあたり巻回部の内部に複合材料を充填する場合、巻回部のターン間からの複合材料の漏れを抑制できる。また、一体化樹脂の端面被覆部によって巻回部の端面と外側コア部との間の絶縁を確保することができる。
【0029】
・本発明の実施形態の詳細
以下、本発明のリアクトルの実施形態を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、本発明は実施形態に示される構成に限定されるわけではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内の全ての変更が含まれることを意図する。
【0030】
<実施形態1>
実施形態1では、
図1〜
図4に基づいてリアクトル1の構成を説明する。
図1に示すリアクトル1は、コイル2と磁性コア3の組合体10と、組合体10を収納するケース6と、を備える。このリアクトル1の特徴の一つとして、ケース6に設けたコア用切欠き部61Ax,61Bxからケース6の外部に磁性コア3の一部が露出していることを挙げることができる。以下、リアクトル1に備わる各構成を詳細に説明し、次いで、そのリアクトル1の製造方法を説明する。
【0031】
≪コイル≫
本実施形態のコイル2は、
図4に示すように、一対の巻回部2A,2Bと、両巻回部2A,2Bを連結する連結部2R(
図3)と、を備える。本例のコイル2に備わる巻回部2A,2Bは、巻線を螺旋状に巻回した部分で、互いに同一の巻数、同一の巻回方向で中空筒状に形成され、各軸方向が平行になるように並列されている。各巻回部2A,2Bで巻数や巻線の断面積が異なっても良い。また、本例では、一本の巻線でコイル2を製造しているが、別々の巻線により作製した巻回部2A,2Bを連結することでコイル2を製造しても構わない。
【0032】
本実施形態の各巻回部2A,2Bは角筒状に形成されている。角筒状の巻回部2A,2Bとは、その端面形状が四角形状(正方形状を含む)の角を丸めた形状の巻回部のことである。もちろん、巻回部2A,2Bは円筒状に形成しても構わない。円筒状の巻回部とは、その端面形状が閉曲面形状(楕円形状や真円形状、レーストラック形状など)の巻回部のことである。
【0033】
巻回部2A,2Bを含むコイル2は、銅やアルミニウム、マグネシウム、あるいはその合金といった導電性材料からなる平角線や丸線などの導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を備える被覆線によって構成することができる。本実施形態では、導体が銅製の平角線(巻線)からなり、絶縁被覆がエナメル(代表的にはポリイミド系樹脂)からなる被覆平角線をエッジワイズ巻きにすることで、各巻回部2A,2Bを形成している。
【0034】
コイル2の両端部2a,2bは、巻回部2A,2Bから引き延ばされて、図示しない端子部材に接続される。両端部2a,2bではエナメルなどの絶縁被覆は剥がされている。この端子部材を介して、コイル2に電力供給を行なう電源などの外部装置が接続される。
【0035】
[一体化樹脂]
本例のコイル2は、巻回部2A,2Bの各ターンがばらけないように一体化する一体化樹脂5を備えるコイル成形体4の形態で利用される。一体化樹脂5には、巻回部2A,2Bの伸張を抑制する機能や、コイル2と磁性コア3(
図1)との間の絶縁を確保する機能がある。一体化樹脂5としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6やナイロン66といったポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂などの熱可塑性樹脂で構成することができる。その他、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂などで一体化樹脂を形成することができる。上記樹脂にセラミックスフィラーを含有させて、一体化樹脂5の放熱性を向上させても良い。セラミックスフィラーとしては、例えば、アルミナやシリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどの非磁性粉末を利用することができる。
【0036】
本例の一体化樹脂5は、巻回部2A,2Bの各ターンを一体化するターン被覆部50と、巻回部2A,2Bの端面と外側コア部32との間に介在される端面被覆部51とを備える。さらに、一体化樹脂5は、巻回部2A,2Bの連結部2R(
図3)を覆う連結部被覆部52を備える。
【0037】
ターン被覆部50は、巻回部2A,2Bの内周面を覆う内周被覆部50Aと、巻回部2A,2Bの外周面の少なくとも一部を覆う外周被覆部50Bと、で構成されている(
図4)。内周被覆部50Aは、巻回部2A,2Bの内周面全体を覆い、巻回部2A,2Bの伸張を抑制すると共に、巻回部2A,2Bと、その内部に配置される内側コア部31(
図3)と、の間の絶縁を確保する。一方、外周被覆部50Bは、巻回部2A,2Bの外周面のうち、巻線が曲げられることで形成される四つの角部を覆い、巻回部2A,2Bの伸張を抑制する。ここで、巻回部2A,2Bのうち、巻線が曲げられていない平坦部には、外周被覆部50Bが形成されておらず、一体化樹脂5の外部に露出しているため、巻回部2A,2Bの外側面からの放熱が外周被覆部50Bによって阻害されることはない。
【0038】
端面被覆部51は、巻回部2Aのターン被覆部50と巻回部2Bのターン被覆部50を連結するように設けられる。端面被覆部51には、巻回部2A,2Bの内部に連通する一対の貫通孔51h,51hが設けられている。この貫通孔51hを介して、巻回部2A,2Bの内部に内側コア部31(
図3)を配置する。
【0039】
端面被覆部51は、巻回部2A,2Bの軸方向にコイル2から離れる側に向って枠状に突出する枠部510を有する。その枠部510の外側面(巻回部2A,2Bの並列方向の面)は、ケース6のコイル対向壁61C,61Dの段差に当接する(
図1,2参照)。枠部510は、ケース6におけるコイル2の位置決め、およびリアクトル1の作製時の複合材料の漏れを抑制する機能を持っている。
【0040】
一体化樹脂5の別の形態として、例えば巻線の外周(エナメルなどの絶縁被覆のさらに外周)に熱融着性樹脂の被覆層を形成し、その被覆層同士を熱融着させた融着樹脂の形態を挙げることができる。この形態の場合、一体化樹脂5を非常に薄くできる、例えば1mm以下、さらには100μm以下とできるため、コイル2の放熱性を向上させることができる。また、巻回部2A,2Bをそれぞれ個別に一体化できるため、巻回部2A,2Bの間からコイル2の熱を逃がし易くできる。その他、巻回部2A,2Bの間に放熱部材を配置したり、コイル2の温度などを測定する各種センサを配置したりすることができる。
【0041】
融着樹脂で構成される一体化樹脂5は非常に薄いため、巻回部2A,2Bの各ターンが一体化樹脂で5一体化されていても、巻回部2A,2Bのターンの形状や、ターンの境界が外観上から分かる状態になっている。この融着樹脂として、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂を利用することもできる。
【0042】
[磁性コア]
磁性コア3は、圧粉成形体や複合材料などで構成される磁性体である。この磁性コア3は、便宜上
図3に示すように、巻回部2A,2Bの内部に配置される内側コア部31と、巻回部2A,2Bの外側に配置される外側コア部32と、に分けることができる。内側コア部31と外側コア部32はそれぞれ別々の材料で構成されていても良いし、同じ材料で構成されていても良い。前者の例として、内側コア部31を圧粉成形体、外側コア部32を複合材料で構成すること、後者の例として、内側コア部31と外側コア部32を複合材料で一体に構成することが挙げられる。本例では、コア部31,32を複合材料で一体に構成している。
【0043】
複合材料は、軟磁性粉末と樹脂とを含む磁性体である。軟磁性粉末は、鉄などの鉄族金属やその合金(Fe−Si合金、Fe−Si−Al合金、Fe−Ni合金など)などで構成される磁性粒子の集合体である。磁性粒子の表面にはリン酸塩などの絶縁被膜が形成されていても良い。樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂や、PPS樹脂、ナイロン6、ナイロン66といったPA樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂などを利用できる。複合材料にはフィラーなどが含有されていても良い。フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、アラミド繊維、カーボンファイバーやグラスファイバーなどの各種ファイバー、マイカ、ガラスフレークなどが利用できる。一方、圧粉成形体は、軟磁性粉末を含む原料粉末を加圧成形してなる磁性体である。
【0044】
本例とは異なり、外側コア部32を複合材料で構成し、内側コア部31を圧粉成形体で構成しても良い。単独の圧粉成形体で内側コア部31を構成しても良いし、圧粉成形体のコア片とギャップ板とを交互に繋げて内側コア部31を構成しても良い。ギャップ板は、アルミナなどの非磁性材料からなる板材である。
【0045】
ここで、本例の外側コア部32は、後述するリアクトルの製造方法に示すように、ケース6にコイル成形体4を収納した後、ケース6の内部に複合材料を射出成形または充填することで形成される。そのため、磁性コア3の外側コア部32は、ケース6の内周面に接合している。
【0046】
外側コア部32の一部、本例では巻回部2A,2Bの軸方向における端面の一部が、後述するケース6の側壁部61に設けられるコア用切欠き部61Ax,61Bx(
図1,2)からケース6の外部に露出している。ケース6から露出した外側コア部32の外周面は、ケース6の側壁部61の外周面と面一となっている。外側コア部32の露出部分には、放熱フィンなどの放熱部材を設けることができる。放熱フィンと外側コア部32との間に放熱グリスや放熱シートを介在させても良い。
【0047】
≪ケース≫
ケース6は、
図1,2に示すように、底板部60と側壁部61とで構成されている。底板部60と側壁部61とは一体に形成しても良いし、別々に用意した底板部60と側壁部61とを連結しても良い。ケース6の材料としては、例えばアルミニウムやその合金、マグネシウムやその合金などの非磁性金属、あるいは樹脂などを利用することができる。底板部60と側壁部61とを別体とするのであれば、両者60,61の材料を異ならせることもできる。例えば、底板部60を非磁性金属、側壁を樹脂とする、あるいはその逆とすることが挙げられる。
【0048】
本例の側壁部61は、外側コア部32の外周面に対向する一対のコア対向壁61A,61Bと、巻回部2A,2Bの外周面に対向する一対のコイル対向壁61C,61Dと、で構成されている。コア対向壁61A,61Bは、互いに平行で、巻回部2A,2Bの軸方向に離隔している。コイル対向壁61C,61Dは、互いに平行で、巻回部2A,2Bの並列方向に離隔している。
【0049】
本例では、コア対向壁61A,61Bのそれぞれに、外側コア部32の一部をケース6の外方に露出させるコア用切欠き部61Ax,61Bxが設けられている。そのコア用切欠き部61Ax,61Bxの内部に外側コア部32の一部が入り込んでいる(
図1,2の二点鎖線よりも外方側の部分を参照)。コア用切欠き部61Ax,61Bxの形状・大きさは特に限定されないが、
図1に示すように本例のコア用切欠き部61Ax,61Bxは矩形状に形成されている。また、本例のコア用切欠き部61Ax(61Bx)の数は一つであるが、複数であっても良い。本例のコア用切欠き部61Ax,61Bxの矩形の上端はコア対向壁61A,61Bの上端に至り、下端は底板部60よりも若干上方に位置しており、左右端は外側コア部32の左右端面よりも内方に位置している。上記下端は底板部60に至っていても構わないが、本例のように底板部60よりも若干上方に位置することでケース6の剛性を高め易い。このような大きさと形状のコア用切欠き部61Ax,61Bxとすることで、ケース6からの外側コア部32の露出面積を大きくできる。また、コア用切欠き部61Ax,61Bxの左右長が外側コア部32の左右長よりも短いことで、巻回部2A,2Bの軸方向に、ケース6から組合体10が脱落することを抑制できる。
【0050】
本例のケース6はさらに、
図3のIII−III断面図に示すように、底板部60の位置に底孔部60xを備える。外側コア部32は底孔部60xにも入り込んでおり、その底孔部60xに入り込んだ部分は底板部60の底面と面一となっている。そのため、外側コア部32の熱をケース6の底面側からも放出し易くなっている。
【0051】
≪リアクトルの効果≫
本例のリアクトル1では、リアクトル1を設置対象に固定するための応力がケース6内の組合体10に作用し難くできる。例えば、巻回部2A,2Bの軸方向の両側からリアクトル1を締め付ける取付金具を取り付けて、その取付金具を介してリアクトル1を設置対象に固定する場合、取付金具の締め付け力をケース6に受けさせることができる。また、ケース6の一部にネジ孔を有する固定部を形成し、固定部を設置対象にネジ止めする場合、ネジの締め付け力をケース6に受けさせることができる。いずれにせよ、ケース6内の組合体10に直接的に応力が作用することがない。
【0052】
また、外側コア部32の外側面をケース6の側壁部61から露出させることで、外側コア部32からケース6の外部に熱が放出され易くなり、リアクトル1の放熱性をより向上させることができる。
【0053】
≪用途≫
本例のリアクトル1は、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車といった電動車両に搭載される双方向DC−DCコンバータなどの電力変換装置の構成部材に利用することができる。
【0054】
≪リアクトルの製造方法≫
次に、実施形態1に係るリアクトル1を製造するためのリアクトルの製造方法の一例を説明する。
【0055】
まず、
図4に示すコイル成形体4を用意する。そのコイル成形体4をケース6内に配置し、さらにそのケース6を金型内に配置する。金型は、ケース6内に複合材料で磁性コア3を形成する際、複合材料がケース6外に漏れない構成を備えるものであれば特に限定されない。例えば、金型は、ケース6の上端開口部を含めたケース6の外周全体を覆う物であっても良いし、コア用切欠き部61Ax,61Bxや底孔部60xのみを覆う物であっても良い。
【0056】
次に、ケース6内の空間に複合材料を射出成形または充填し、巻回部2A,2Bの内部に内側コア部31を形成すると共に、ケース6の内周面に接合する外側コア部32を形成する。ケース6内の複合材料が固化または硬化したら、金型を取り外すことでリアクトル1を完成させることができる。
【0057】
なお、コア片とギャップ板とを組み合わせて内側コア部31を構成する場合、コイル成形体4の貫通孔51hの内部に内側コア部31を挿入し、そのコイル成形体4と内側コア部31の組物をケース6に収納する。そして、コイル成形体4を収納したケース6を金型に配置し、ケース6内に未硬化の複合材料を射出成形または充填すると良い。その場合、内側コア部31の両端部にギャップ板を配置することで、射出成形時に複合材料が内側コア部31に接触し、内側コア部31が損傷することを抑制できる。
【0058】
<実施形態2>
実施形態2では、ケース6のコア対向壁61A,61Bに、貫通孔状のコア用切欠き部61Axを設けた構成を
図5に基づいて説明する。ここで、コア対向壁61Bに設けたコア用切欠き部は、図面上、見えない位置にあるが、コア用切欠き部61Axと同じ構成を備える。
【0059】
図5に示すように、本例のコア用切欠き部61Axは、側壁部61の内外に連通する貫通孔となっている。その貫通孔状のコア用切欠き部61Axには、外側コア部32の一部が嵌まり込んでおり、そのコア用切欠き部61Axに嵌まり込んだ部分がコア対向壁61Aの外周面と面一となっている。この構成によっても、外側コア部32の一部がケース6の側壁部61から露出しており、外側コア部32の熱を側方に放出し易くできる。
【0060】
コア用切欠き部61Axを貫通孔状とすることで、外側コア部32のうち、コア用切欠き部61Axの内部に嵌まり込んだ部分の上面が、コア用切欠き部61Axの内周面に係合する。そのため、ケース6を横にしても逆さにしても、ケース6から組合体10が脱落することが無くなる。つまり、設置対象に対するリアクトル1の取付け方向の自由度が高くなる。また、この構成によれば、外側コア部32がコア用切欠き部61Axから露出するが、コア用切欠き部61Axに嵌まり込んでいない構成に比べて、ケース6との接触面積が大きくなり、ケース6を介して外側コア部32の熱を放熱し易くなる。
【0061】
<実施形態3>
実施形態3では、外側コア部32に加えて、一方の巻回部2A,2Bの外側面がケース6から露出したリアクトル1を
図6に基づいて説明する。実施形態1と同様の機能を有する構成には、実施形態1と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0062】
図6は、実施形態3のリアクトル1の概略上面図である。
図6に示すように、本例のケース6には、コア用切欠き部61Ax,61Bxに加えて、側壁部61のコイル対向壁61Dにコイル用切欠き部61Dyが形成されている。コイル用切欠き部61Dyからは、巻回部2Bのうち、巻回部2A,2Bの並列方向の外側面がケース6の外方に露出している。
【0063】
コイル用切欠き部61Dyの形状・大きさは特に限定されないが、本例では矩形状に形成されている。また、本例のコイル用切欠き部61Dyは一つであるが、複数であっても良い。本例のコイル用切欠き部61Dyの矩形の上端(紙面手前方向の端部)はコイル対向壁61Dの上端に至り、下端(紙面奥行き方向の端部)は巻回部2A,2Bの下方側の曲げ角部よりも高くなっており、左右端(紙面上下方向の端部)は巻回部2A,2Bの軸方向端面とほぼ面一となっている。このような大きさと形状のコイル用切欠き部61Dyとすることで、ケース6からの巻回部2Bの露出面積を大きくできる。また、コイル用切欠き部61Dyは、巻回部2Bを側面視した面積とほぼ同じであるが、一体化樹脂5を含むコイル成形体4を側面視した面積よりは小さいため、巻回部2A,2Bの並列方向に、ケース6から組合体10が脱落することを抑制できる。
【0064】
実施形態3のリアクトル1では、コイル用切欠き部61Dyから露出する巻回部2Bの外周面に補強部材7を配置している。本例の補強部材7は、巻回部2Bの軸方向におけるケース6の長さと同じ長さを有しており、巻回部2Bの軸方向におけるコイル対向壁61Dの強度を保持する役割を持っている。そのため、例えば、巻回部2Bの軸方向にコイル対向壁61Dを締め付けて、補強部材7を設置対象への取付け面とする側方固定を行なう場合、補強部材7に締め付け力を受圧させることができ、ケース6の変形やそれに伴う組合体10への応力負荷を低減できる。
【0065】
また、本例の補強部材7は、ケース6と同等か、それよりも熱伝導性に優れる材料で構成されており、コイル2の放熱性を向上させる放熱部材としても機能する。巻回部2Bと補強部材(放熱部材)7との間には、放熱グリスや発泡性の放熱シートなどの熱伝導材料を設けて、巻回部2Bから補強部材7への熱伝導を促進しても良い。
【0066】
なお、コイル対向壁61Dを締め付けずに、コイル対向壁61Dを設置対象への取付け面とする側方固定を行なう場合、補強部材7は無くても良い。その場合、コイル対向壁61Dと設置対象との間に、放熱部材として放熱グリスや放熱シートなどを介在させると良い。
【0067】
<実施形態4>
実施形態4では、外側コア部32に加えて、両巻回部2A,2Bの外側面がケース6から露出したリアクトル1を
図7に基づいて説明する。実施形態3と同様の機能を有する構成には、実施形態3と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0068】
図7は、実施形態4のリアクトル1の概略上面図である。
図7に示すように、本例のケース6には、コイル用切欠き部61Dyに加えて、コイル対向壁6Cにもコイル用切欠き部61Cyが形成されている。この構成によれば、組合体10の四方がケース6外に露出するので、リアクトル1の放熱性を高め易い。
【0069】
本例の側壁部61は、四本の離隔した柱のようになっている。そのため、リアクトル1を取付金具などで締め付けてリアクトル1を設置対象に固定する場合、側壁部61に締め付け方向の耐力を持たせることが好ましい。
図7の例では、巻回部2A,2Bの軸方向に締め付け力が作用することを想定し、コイル対向壁61C,61Dの外側にそれぞれ、コイル対向壁61C,61Dと同じ長さの補強部材7,7を配置している。この補強部材7,7も、実施形態3と同様に、ケース6と同等か、それよりも熱伝導性に優れる材料で構成することで、巻回部2A,2Bからの放熱を促すことができる。