特許第6593794号(P6593794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6593794光ファイバホルダおよび当該光ファイバホルダが取付可能な光ファイバ切断装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593794
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】光ファイバホルダおよび当該光ファイバホルダが取付可能な光ファイバ切断装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/24 20060101AFI20191010BHJP
   G02B 6/25 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   G02B6/24
   G02B6/25
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-25134(P2016-25134)
(22)【出願日】2016年2月12日
(65)【公開番号】特開2017-142457(P2017-142457A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2018年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】SEIオプティフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗野 伸介
(72)【発明者】
【氏名】高柳 寛
【審査官】 山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3132149(JP,U)
【文献】 国際公開第02/004998(WO,A1)
【文献】 特表2001−520760(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/045663(WO,A1)
【文献】 特開平10−090554(JP,A)
【文献】 特開2011−128544(JP,A)
【文献】 米国特許第8826517(US,B2)
【文献】 中国特許出願公開第102819065(CN,A)
【文献】 中国実用新案第203535258(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
G02B 6/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを保持する光ファイバホルダであって、
ホルダ本体部と、
前記ホルダ本体部の上面に形成され、第一の光ファイバが収容されるV溝と、
前記V溝と同一直線上であって前記V溝よりも前記光ファイバの端末処理部に近い側に形成され、前記第一の光ファイバよりも被覆部分の外径が大きい第二の光ファイバが収容される凹溝と、
前記凹溝の前記V溝側とは反対の端部において、前記凹溝よりも狭い幅を有する開口部を有する突き当て部と、を備え、
前記第二の光ファイバが前記凹溝内に収容される際に、前記第二の光ファイバのファイバ心線が前記開口部から外側へ突出し、前記第二の光ファイバの前記被覆部分の端部が前記突き当て部に突き当てられる、光ファイバホルダ。
【請求項2】
前記突き当て部は、前記ホルダ本体部から上方に突出する突出部を備えている、請求項1に記載の光ファイバホルダ。
【請求項3】
前記ホルダ本体部の上面は、前記凹溝が形成された部分において、前記ホルダ本体部の底面と平行な第一領域と、前記第一領域よりも前記V溝側の領域であって前記V溝に向かうにつれて上方に傾斜する第二領域とを含む、請求項1または請求項2に記載の光ファイバホルダ。
【請求項4】
前記ホルダ本体部の上面は、前記V溝と前記凹溝との境界付近において、前記凹溝側から前記V溝側に向かうにつれて下方に傾斜する下方傾斜部が形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の光ファイバホルダ。
【請求項5】
前記ホルダ本体部の上面には、前記突き当て部とは反対側の端部から所定範囲にわたって前記ホルダ本体部の両側面に向けてそれぞれ切り欠かれた段差部が形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の光ファイバホルダ。
【請求項6】
光ファイバの端部において露出されたガラスファイバ部分を切断する光ファイバ切断装置であって、
請求項1から5のいずれか一項に記載の光ファイバホルダが取り付け可能である、光ファイバ切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを保持する光ファイバホルダおよび当該光ファイバホルダが取付可能な光ファイバ切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの切断装置や接続装置に取り付けられて、光ファイバを保持する光ファイバホルダが知られている。このような光ファイバホルダとして、例えば、特許文献1および2のものがすでに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−51149号公報
【特許文献2】特開2005−249922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の光ファイバ心線ホルダ装置は、保持枠体の収容凹部に、V字形状の溝が形成されたホルダブロックを収容することで構成され、光ファイバ心線の被覆外径の大小により、異なるホルダブロックを保持枠体に収容して使用するものである。すなわち、異なる外径の光ファイバ心線を収容する際にはホルダブロックの交換が必要となる。
また、特許文献2の光ファイバホルダは、ベースプレート上に形成された第1位置決め溝と、第1位置決め溝よりも幅広に形成された第2位置決め溝とを有し、幅の異なる2種類(4芯および8芯)の多芯光ファイバを第1位置決め溝および/または第2位置決め溝によって位置決めするものであるが、光ファイバの長手方向の位置決めを行い得るものではない。
【0005】
本発明の目的は、外径の異なる複数種の光ファイバを保持可能であって、光ファイバの長手方向の位置決めも可能な光ファイバホルダおよび当該光ファイバホルダが取付可能な光ファイバ切断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の光ファイバホルダは、
光ファイバを保持する光ファイバホルダであって、
ホルダ本体部と、
前記ホルダ本体部の上面に形成され、第一の光ファイバが収容されるV溝と、
前記V溝と同一直線上であって前記V溝よりも前記光ファイバの端末処理部に近い側に形成され、前記第一の光ファイバよりも被覆部分の外径が大きい第二の光ファイバが収容される凹溝と、
前記凹溝の前記V溝側とは反対の端部において、前記凹溝よりも狭い幅を有する開口部を有する突き当て部と、を備え、
前記第二の光ファイバが前記凹溝内に収容される際に、前記第二の光ファイバのファイバ心線が前記開口部から外側へ突出し、前記第二の光ファイバの前記被覆部分の端部が前記突き当て部に突き当てられる。
【0007】
また、上記の目的を達成するために、本発明の光ファイバ切断装置は、
光ファイバの端部において露出されたガラスファイバ部分を切断する光ファイバ切断装置であって、
上記に記載の光ファイバホルダが取り付け可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外径の異なる複数種の光ファイバを保持可能であって、光ファイバの長手方向の位置決めも可能な光ファイバホルダおよび当該光ファイバホルダが取付可能な光ファイバ切断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の光ファイバ切断装置とそれに取り付けられるホルダの正面斜視図である。
図2】光ファイバ切断装置の背面斜視図である。
図3】光ファイバ切断装置のクランプカバーを閉じた状態の正面斜視図である。
図4図3に示す状態の右側面図である。
図5】光ファイバ切断装置に取り付けられる光ファイバホルダの斜視図である。
図6図5に示す光ファイバホルダの平面図である。
図7図6に示す光ファイバホルダのA−A線断面図である。
図8図6に示す光ファイバホルダのB−B線断面図である。
図9図6に示す光ファイバホルダのC−C線断面図である。
図10図6に示す光ファイバホルダのD−D線断面図である。
図11】(a)は、細径の光ファイバがV溝に収容された状態の光ファイバホルダの平面図であり、(b)は、(a)の短手方向縦断面図であり、(c)は、(a)の長手方向縦断面図であり、(d)は光ファイバ切断装置の下クランプ部を示す図である。
図12】(a)は、図11の光ファイバよりも太径の光ファイバがV溝に収容された状態の光ファイバホルダの平面図であり、(b)は、(a)の短手方向縦断面図であり、(c)は、(a)の長手方向縦断面図であり、(d)は光ファイバ切断装置の下クランプ部を示す図である。
図13】(a)は、ドロップケーブルが凹溝に収容された状態の光ファイバホルダの平面図であり、(b)は、(a)の短手方向縦断面図であり、(c)は、(a)の長手方向縦断面図であり、(d)は光ファイバ切断装置の下クランプ部を示す図である。
図14】(a)は、光ファイバコードが凹溝に収容された状態の光ファイバホルダの平面図であり、(b)は、(a)の短手方向縦断面図であり、(c)は、(a)の長手方向縦断面図であり、(d)は光ファイバ切断装置の下クランプ部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
本願発明の実施形態に係る光ファイバホルダは、
(1)光ファイバを保持する光ファイバホルダであって、
ホルダ本体部と、
前記ホルダ本体部の上面に形成され、第一の光ファイバが収容されるV溝と、
前記V溝と同一直線上であって前記V溝よりも前記光ファイバの端末処理部に近い側に形成され、前記第一の光ファイバよりも被覆部分の外径が大きい第二の光ファイバが収容される凹溝と、
前記凹溝の前記V溝側とは反対の端部において、前記凹溝よりも狭い幅を有する開口部を有する突き当て部と、を備え、
前記第二の光ファイバが前記凹溝内に収容される際に、前記第二の光ファイバのファイバ心線が前記開口部から外側へ突出し、前記第二の光ファイバの前記被覆部分の端部が前記突き当て部に突き当てられる。
この構成によれば、外径の異なる複数種の光ファイバを保持可能であって、光ファイバの長手方向の位置決めも可能な光ファイバホルダを提供することができる。特に、光ファイバホルダを光ファイバ切断装置等に取り付けて用いる場合に、切断対象の光ファイバの種類が変更されても光ファイバホルダを取り替えたり、光ファイバホルダの取付位置を変更したりする必要がないため、作業効率を格段に向上させることができる。
【0011】
(2)前記突き当て部は、前記ホルダ本体部から上方に突出する突出部を備えていることが好ましい。
この構成によれば、光ファイバの長手方向の位置決めをより確実に行うことができるとともに、光ファイバを押さえる作業者の手指が光ファイバホルダ外に突出することを防ぐことができる。
【0012】
(3)前記凹溝が形成された部分において、前記ホルダ本体部の上面および前記凹溝の上面は、底面と平行な第一領域と、前記第一領域よりも前記V溝側の領域であって前記V溝に向かうにつれて上方に傾斜する第二領域とを含むことが好ましい。
この構成によれば、開口部側の第一領域では光ファイバが平行に保持されるようにしつつ、上方に傾斜した第二領域によりV溝を形成するために十分な深さを担保することができる。
【0013】
(4)前記V溝と前記凹溝との境界付近において、前記ホルダ本体部の上面は、前記凹溝側から前記V溝側に向かうにつれて下方に傾斜する下方傾斜部が形成されていることが好ましい。
(5)前記ホルダ本体部の上面には、前記突き当て部とは反対側の端部から所定範囲にわたって前記ホルダ本体部の両側面に向けてそれぞれ切り欠かれた段差部が形成されていることが好ましい。
これらの構成によれば、V溝に第一の光ファイバを収容する際に、作業者が第一の光ファイバを押さえやすくなる。
【0014】
また、本願発明の実施形態に係る光ファイバ切断装置は、
(6)光ファイバの端部において露出されたガラスファイバ部分を切断する光ファイバ切断装置であって、
(1)から(5)のいずれかに記載の光ファイバホルダが取り付け可能である。
この構成によれば、外径の異なる複数種の光ファイバを切断する際にも、光ファイバホルダを取り替えたり位置を変えたりする必要がなく、切断作業の効率を向上させることができる。
【0015】
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1および図2は、本発明の実施形態に係る光ファイバ切断装置とそれに取り付けられるホルダの正面斜視図および背面斜視図である。図3は、光ファイバ切断装置の右側面図である。
【0017】
光ファイバ切断装置1は、本体部10と、クランプカバー20と、を備えている。本体部10は、ホルダ固定部11、下固定部材12、刃部材14、保持部材15などを有している。クランプカバー20は、アーム部材21、回動部材22、上固定部材23、取付部材24、レバー押さえ部25などを有している。本体部10の下固定部材12と、クランプカバー20の上固定部材23とにより光ファイバ(不図示)のガラスファイバ部分をクランプするクランプ部が構成されている。
【0018】
本体部10は、天板部10Aと、底板部10Bと、天板部10Aと底板部10Bとをつなぐ柱部10Cとから構成されている。天板部10Aの上面10A1には、ホルダ固定部11が設けられている。ホルダ固定部11は、光ファイバをその保護被覆の部分で保持する光ファイバホルダ30(以下、ホルダ30と称する)を固定するために凹状に形成された部位である。ホルダ30は、一例として、その上面に外径の異なる複数種の光ファイバを収容可能なファイバ収容溝31が設けられた構造を有するものである。ホルダ30の構造については後で詳述する。
【0019】
天板部10Aの上面10A1においてクランプカバー20と対向する位置には、下固定部材12が固定されている。下固定部材12は、金属製の台の上面にゴム材がはめ込まれたものであり、ゴム材の上面(以下、クランプ面12Pとする)に、光ファイバのガラスファイバ部分が載せられるように構成されている。
【0020】
一対の下固定部材12間には露出孔16が形成され、露出孔16から刃部材14が上方に突出している。刃部材14は、保持部材15に保持されており、保持部材15は、刃保持部41、回動軸42、回動レバー43などを含んでいる。保持部材15は、回動軸42により本体部10の柱部10Cに取り付けられ、回動レバー43が刃保持部41から側方へ突出するように設けられている。回動レバー43が上下に移動することにより、刃保持部41に取り付けられた刃部材14が回動軸42を中心に円弧移動される。
【0021】
クランプカバー20は、本体部10の天板部10Aにおいて下固定部材12や刃部材14が配置された領域を覆うように設けられた長尺状のアーム部材21を備えている。アーム部材21は、本体部10に回動部材22を介して回動自在に連結されている。アーム部材21の裏面側には、下固定部材12に対向する位置に上固定部材23が配置されている。
【0022】
レバー押さえ部25は、アーム部材21の回動部材22が設けられた部位とは反対側において、アーム部材21を閉じた状態で本体部10側に向けてアーム部材21から略直角に突出するように設けられている。図3および図4に示すように、本体部10に対してクランプカバー20を閉じた際に、レバー押さえ部25が回動レバー43を下方に押圧することで、刃部材14が円弧移動する。これにより、上下の固定部材12,23により固定された光ファイバのガラスファイバ部分に傷をつけることができる。
【0023】
次に、本実施形態に係る光ファイバ切断装置1のホルダ固定部11に取り付けられるホルダ30の構造について、図5〜10に基づいて説明する。図5は、光ファイバ切断装置に取り付けられる光ファイバホルダの斜視図であり、図6は、図5に示す光ファイバホルダの平面図である。また、図7〜10は、図6に示す光ファイバホルダのA−A線〜D−D線断面図である。
【0024】
ホルダ(ホルダ本体部)30の上面30Aにファイバ収容溝31が形成されている。図5および図6に示すように、ファイバ収容溝31は、V溝31Aと、V溝31Aと同一直線上であってV溝31Aよりも幅広な凹溝31Bから構成されている。凹溝31Bは、光ファイバ切断装置1に取り付けられたホルダ30に光ファイバが収容される際に光ファイバのガラスファイバ部分の切断位置(光ファイバの端末処理部)に近い端部側から上面30Aの長手方向中央近傍まで形成されている。一方、V溝31Aは、上面30Aの長手方向中央近傍から光ファイバの端末処理部とは逆の端部まで形成されている。
【0025】
V溝31Aは、図7に示すように、例えば、その切欠き角度θが90度、深さD1Aは0.28mmであり、外径が0.25mmや0.9mmの光ファイバ心線(第一の光ファイバの一例)を収容可能である。また、V溝31Aは、その一端部が凹溝31B内にまで形成されており、図8に示すように、凹溝31Bに形成されたV溝31Aの深さD1Bは0.51mmである。一方、凹溝31Bは、図8に示すように、その幅W2が3.5mm、深さD2が2.0mmであって、例えば、光ファイバ心線よりも被覆部分の外径が大きいドロップケーブルや光ファイバコード(第二の光ファイバの一例)を収容可能である。
【0026】
凹溝31BのV溝31A側とは反対の端部(光ファイバの端末処理部側の端部)には突き当て部32が形成されている。突き当て部32は、凹溝31Bよりも狭い幅を有する開口部32Aを有するとともに、上面30Aから上方に突出している。開口部32Aは、図9に示すように、例えば、その幅W3が2.0mmである。また、開口部32Aの底面は、凹溝31Bの底面から少し上方に位置するように設けられており、凹溝31Bの底面から開口部32Aの底面までの高さD3は、例えば0.5mmである。このように、突き当て部32は、その外縁が凹溝31Bよりも内側に突出する開口部32Aを備えていることで、凹溝31B内に収容されたドロップケーブルや光ファイバコードの被覆部分の端部を突き当て部32に突き当てるように位置決めできるとともに、被覆部分から露出されたファイバ心線を開口部32Aから外方に突出させることができる。
【0027】
図10に示すように、ホルダ30の上面30Aは、凹溝31Bが形成された部分において、底面30Bと平行な第一領域30A1と、第一領域30A1よりもV溝31A側の領域であってV溝31Aに向かうにつれて上方に傾斜する第二領域30A2とを含んでいる。また、凹溝31Bの底面は、上面30Aの第一領域30A1およびホルダ30の底面30Bと平行な第一領域31B1と、第一領域31B1と平行、すなわちV溝31Aに向かうにつれて上方に傾斜する第二領域31B2とを含んでいる。この構成によれば、開口部32A側の第一領域30A1,31B1では光ファイバが平行に保持されるようにしつつ、凹溝31Bの底面において上方に傾斜するようにした第二領域31B2を備えていることにより、V溝31Aと凹溝31Bとを同一直線上に形成可能としながらもV溝31Aを形成するために十分な深さを担保することができる。
【0028】
また、上面30Aには、V溝31Aと凹溝31Bとの境界付近において、第二領域30A2からV溝31A側に向かうにつれて下方に傾斜する下方傾斜部33が形成されている。さらに、上面30Aには、突き当て部32とは反対側の端部から所定範囲にわたってホルダ30の両側面に向けてそれぞれ切り欠かれた段差部34が形成されている。下方傾斜部33や段差部34を設けることで、光ファイバをV溝31Aに収容する際に作業者が光ファイバを押さえやすくなる。なお、下方傾斜部33上には、ホルダ30を光ファイバ切断装置1のホルダ固定部11へネジ等で取り付けるための取付穴35が形成されている。
【0029】
図11〜14には、このように形成されたホルダ30に外径の異なる複数種の光ファイバ(光ファイバ心線、ドロップケーブル、光ファイバコード等)を収容した状態の図を示している。
図11(a)〜(c)は、外径0.25mmの光ファイバ心線100をホルダ30のV溝31Aに収容した状態を示し、図11(d)は、光ファイバ切断装置1が備える下固定部材12のクランプ面12Pを示している。図11(a),(b)に示すように、細径の光ファイバ心線100のガラスファイバ部分を切断する場合には、作業者は、光ファイバ切断装置1のホルダ固定部11に取り付けられたホルダ30のV溝31Aに光ファイバ心線100を収容するように押さえつけ、開口部32Aから光ファイバ心線100の先端を突出させて、当該先端から露出されたガラスファイバ部分を下固定部材12のクランプ面12P上に載置する。このとき、図11(c),(d)に示すように、V溝31Aに収容された光ファイバ心線100は、そのファイバ中心が、下固定部材12のクランプ面12Pよりも僅かに上方に位置する。例えば、ホルダ30の底面30Bから、V溝31Aに収容された光ファイバ心線100のファイバ中心までの高さh100が、底面30Bと同じ位置からクランプ面12Pまでの高さh12Pよりも僅かに高くなるように設定されている。これにより、光ファイバ心線100のガラスファイバ部分をクランプ面12P上に適切に載置することができ、光ファイバ心線100が下固定部材12のクランプ面12P以外の箇所に当接することなどにより起こり得る光ファイバ心線100の曲げを防止することができる。なお、上面30AのV溝31Aと凹溝31Bとの境界付近に形成された下方傾斜部33上に手指を置くことで、V溝31Aに収容された光ファイバ心線100を押さえやすくなる。
【0030】
図12(a)〜(c)は、外径0.9mmの光ファイバ心線200をホルダ30のV溝31Aに収容した状態を示し、図12(d)は、光ファイバ切断装置1が備える下固定部材12のクランプ面12Pを示している。図12(a),(b)に示すように、光ファイバ心線100よりも太径な光ファイバ心線200を切断する場合にも、作業者は、光ファイバ切断装置1のホルダ固定部11に取り付けられたホルダ30のV溝31Aに光ファイバ心線200を収容するように押さえつけ、開口部32Aから光ファイバ心線200の先端を突出させて、当該先端から露出されたガラスファイバ部分を下固定部材12のクランプ面12P上に載置する。このとき、図12(c),(d)に示すように、V溝31Aに収容された光ファイバ心線200は、そのファイバ中心が、下固定部材12のクランプ面12Pよりも僅かに上方に位置する。例えば、ホルダ30の底面30BからV溝31Aに収容された光ファイバ心線200のファイバ中心までの高さh200が、底面30Bと同じ位置からクランプ面12Pまでの高さh12Pよりも僅かに高くなるように設定されている。これにより、光ファイバ心線200のガラスファイバ部分をクランプ面12P上に適切に載置することができ、光ファイバ心線200の予期しない曲げを防止することができる。
【0031】
図13(a)〜(c)は、横幅3mmのドロップケーブル300をホルダ30の凹溝31Bに収容した状態を示し、図13(d)は、光ファイバ切断装置1が備える下固定部材12のクランプ面12Pを示している。図13(a),(b)に示すように、光ファイバ心線100,200よりも被覆部分の外径が大きいドロップケーブル300を切断する場合には、作業者は、光ファイバ切断装置1に取り付けられたホルダ30の凹溝31Bにドロップケーブル300を収容するように押さえつける。そして、作業者は、突き当て部32にドロップケーブル300の被覆部分の端部を突き当てて、ドロップケーブル300の被覆部分から露出した光ファイバ心線301を開口部32Aから外側に突出させて、光ファイバ心線301の端部から露出されたガラスファイバ部分を下固定部材12上に載置する。このように、突き当て部32にドロップケーブル300の被覆部分を突き当てることで、ドロップケーブル300の長手方向の位置決めをより確実に行うことができるとともに、ドロップケーブル300を押さえる作業者の手指が突き当て部32より外側に突出することを防ぐことができる。また、このとき、図13(c),(d)に示すように、凹溝31Bに収容されたドロップケーブル300は、そのファイバ中心が、下固定部材12のクランプ面12Pよりも僅かに上方に位置する。例えば、ホルダ30の底面30Bから凹溝31Bに収容されたドロップケーブル300の中心までの高さh300が、底面30Bと同じ位置からクランプ面12Pまでの高さh12Pよりも僅かに高くなるように設定されている。これにより、ドロップケーブル300から露出した光ファイバ心線301(のガラスファイバ部分)をクランプ面12P上に適切に載置することができ、光ファイバ心線301が下固定部材12のクランプ面12P以外の箇所に当接することなどにより起こり得る光ファイバ心線301の曲げを防止することができる。
【0032】
図14(a)〜(c)は、外径3mmの光ファイバコード400をホルダ30の凹溝31Bに収容した状態を示し、図14(d)は、光ファイバ切断装置1が備える下固定部材12のクランプ面12Pを示している。図14(a),(b)に示すように、光ファイバ100,200よりも被覆部分の外径が大きい光ファイバコード400を切断する場合には、作業者は、光ファイバ切断装置1に取り付けられたホルダ30の凹溝31Bに光ファイバコード400を収容するように押さえつける。そして、作業者は、突き当て部32に光ファイバコード400の被覆部分の端部を突き当てて、光ファイバコード400の被覆部分から露出した光ファイバ心線401を開口部32Aから外側に突出させて、光ファイバ心線401の端部から露出されたガラスファイバ部分を下固定部材12上に載置する。このように、突き当て部32に光ファイバコード400の被覆部分を突き当てることで、光ファイバコード400の長手方向の位置決めをより確実に行うことができるとともに、光ファイバコード400を押さえる作業者の手指が突き当て部32より外側に突出することを防ぐことができる。また、このとき、図14(c),(d)に示すように、凹溝31Bに収容された光ファイバコード400は、そのファイバ中心が、下固定部材12のクランプ面12Pよりも僅かに上方に位置する。例えば、ホルダ30の底面30Bから凹溝31Bに収容された光ファイバコード400の光ファイバ心線401の中心までの高さh400が、底面30Bと同じ位置からクランプ面12Pまでの高さh12Pよりも僅かに高くなるように設定されている。これにより、光ファイバコード400から露出した光ファイバ心線401(のガラスファイバ部分)をクランプ面12P上に適切に載置することができ、ファイバ心線401の予期しない曲げを防止することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係るホルダ30は、ホルダ30の上面30Aに形成され、光ファイバ心線100,200が収容されるV溝31Aと、V溝31Aと同一直線上であってV溝31Aよりも光ファイバの端末処理部に近い側に形成され、光ファイバ100,200よりも被覆部分の外径が大きいドロップケーブル300や光ファイバコード400が収容される凹溝31Bと、凹溝31BのV溝31A側とは反対の端部において、凹溝31Bよりも狭い幅を有する開口部32Aを有する突き当て部32と、を備えており、ドロップケーブル300や光ファイバコード400が凹溝31B内に収容される際に、ドロップケーブル300や光ファイバコード400のファイバ心線301,401が開口部32Aから外側へ突出し、ドロップケーブル300や光ファイバコード400の保護被覆部分の端部が突き当て部32に突き当てられる。この構成により、ホルダ30は、外径の異なる複数種の光ファイバを保持可能であるとともに、ドロップケーブル300や光ファイバコード400の長手方向の位置決めも可能となる。そのため、ホルダ30を光ファイバ切断装置1に取り付けて用いる場合に、切断対象の光ファイバの種類が変更されてもホルダ30を取り替えたり、ホルダ30の取付位置を変更したりする必要がないため、作業効率を格段に向上させることができる。
【0034】
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【0035】
上記の実施形態では、ホルダ30を光ファイバ切断装置1に取り付けて用いる構成を例示しているが、ホルダ30は光ファイバケーブルの端部においてファイバ心線を露出するために被覆を除去する際のジャケットリムーバ等で用いることもできる。
【符号の説明】
【0036】
1:光ファイバ切断装置
10:本体部
10A:天板部
10B:底板部
10C:柱部
11:ホルダ固定部
12:下固定部材
14:刃部材
15:保持部材
16:露出孔
20:クランプカバー
21:アーム部材
22:回動部材
23:上固定部材
24:取付部材
25:レバー押さえ部
30:ホルダ(ホルダ本体部)
31:ファイバ収容溝
31A:V溝
31B:凹溝
32:突き当て部
32A:開口部
33:下方傾斜部
34:段差部
41:刃保持部
42:回動軸
43:回動レバー
100,200,301,401:光ファイバ心線
300:ドロップケーブル
400:光ファイバコード
図1
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