特許第6593803号(P6593803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593803
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/50 20060101AFI20191010BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20191010BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   B60Q1/50 Z
   B60Q1/04 Z
   B60K35/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-46452(P2017-46452)
(22)【出願日】2017年3月10日
(65)【公開番号】特開2018-149875(P2018-149875A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2017年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 男
(72)【発明者】
【氏名】木下 真
(72)【発明者】
【氏名】山住 暢
(72)【発明者】
【氏名】山崎 研太郎
【審査官】 野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−020876(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/039288(WO,A1)
【文献】 特開平11−263145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
B60Q 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内で乗員に対して透過型画像を表示する第1画像表示部を備えた車両に設けられる画像表示装置であって、
路面に画像を表示する第2画像表示部と、
乗員の視線を検出する視線検出部と、
前記透過型画像及び路面に表示される路面画像の少なくともいずれかの画像情報と、前記視線検出部の視線情報と、に基づいて乗員の視線上における画像の重複の有無を判定する判定部と、
前記判定部によって、前記第1画像表示部の前記透過型画像と前記第2画像表示部の前記路面画像とが乗員の視線上で重複していると判定された場合に、前記透過型画像又は前記路面画像の画像表示を停止させる表示制御部と、を備える、
画像表示装置。
【請求項2】
前記透過型画像及び前記路面画像の表示面積、表示量、表示個数及び表示位置の少なくともいずれかを含む前記画像情報を導出する導出部を更に備える、
請求項に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記透過型画像と前記路面画像との前記画像情報を比較する比較部を更に備え、
前記表示制御部は、前記判定部の判定結果と前記比較部の比較結果とに基づいて表示を停止する画像を決定する、
請求項又はに記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記車両の周辺環境に基づいた安全度を評価する評価部を更に備え、
前記表示制御部は、前記安全度が閾値より低い場合に前記画像表示の停止を行う、
請求項1〜のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記第2画像表示部はヘッドランプにより構成される、
請求項1〜のいずれかに記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置、特に車内に表示される透過型画像と車外に表示される路面画像との重複を解消する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転者と警告を受ける他者との両当事者に対して適切な表示を行う車両用表示システムが知られている(特許文献1参照)。特許文献1に開示された車両用表示システムは、運転者に向けた運転者用表示と、他者に向けた他者用表示とを含む異なる複数箇所に画像を表示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−161033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、異なる複数箇所に表示を行ったときに乗員から見て画像が重複すると、画像情報を乗員が正確に理解することが困難となり、乗員に混乱を招く。
【0005】
これに鑑みて、本発明が解決しようとする課題は、車内及び車外にそれぞれ画像を表示して相互に重複状態となった場合に、乗員の混乱を抑制又は低減可能な画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、本発明に係る画像表示装置は、車内で乗員に対して透過型画像を表示する第1画像表示部を備えた車両に設けられる画像表示装置であって、路面に画像を表示する第2画像表示部と、乗員の視線を検出する視線検出部と、透過型画像及び路面に表示される路面画像の少なくともいずれかの画像情報と、視線検出部の視線情報と、に基づいて乗員の視線上における画像の重複の有無を判定する判定部と、判定部によって、第1画像表示部の透過型画像と第2画像表示部の路面画像とが乗員の視線上で重複していると判定された場合に、透過型画像又は路面画像の画像表示を停止させる表示制御部と、を備える。
【0008】
本発明に係る画像表示装置において、透過型画像及び路面画像の表示面積、表示量、表示個数及び表示位置の少なくともいずれかを含む画像情報を導出する導出部を更に備えることが好ましい。
【0009】
本発明に係る画像表示装置において、透過型画像と路面画像との画像情報を比較する比較部を更に備え、表示制御部は、判定部の判定結果及び比較部の比較結果に基づいて表示を停止する画像を決定することが好ましい。
【0011】
本発明に係る画像表示装置において、車両の周辺環境に基づいた安全度を評価する評価部を更に備え、表示制御部は、安全度が閾値より低い場合に画像表示の停止を行うことが好ましい。
【0012】
本発明に係る画像表示装置において、第2画像表示部はヘッドランプにより構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、重複が生じると車内の透過型画像又は車外の路面画像の画像表示を停止することで重複状態が解消するので、残った画像表示における重複していた箇所の情報についても乗員が正確に視認可能となり、視認不能状態に起因する乗員の混乱を抑制又は低減可能な画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態である画像表示装置を備えた車両の一画像表示形態を示す斜視概略図である。
図2図2は、図1の車両を側方視で示す概略図である。
図3図3は、第1画像表示部のみを駆動した乗員の視界について示す概略図である。
図4図4は、第2画像表示部のみを駆動した乗員の視界について示す概略図である。
図5図5は、第1画像表示部及び第2画像表示部を駆動した乗員Pの視界について示す概略図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る画像表示装置を示すブロック図である。
図7図7は、図6に示した各部材を用いて画像表示の停止制御を行う際の制御フローについて示すフローチャート図である。
図8図8は、本発明の他の実施形態に係る画像表示装置を示すブロック図である。
図9図9は、図8に示した部材を用いて画像表示の停止制御を行う際の制御フローについて示すフローチャート図である。
図10図10は、図8に示した部材を用いて画像表示の別の停止制御を行う際の制御フローについて示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(基本実施形態)
本発明に係る画像表示装置の一実施形態について、図1及び図2を参照しつつ説明する。
なお、図1は、本発明の一実施形態である画像表示装置1を備えた車両100の一画像表示形態を示す斜視概略図である。図2は、図1の車両100を側方視で示す概略図である。
【0016】
図1及び2に示すように、車両100は、第1画像表示部10と第2画像表示部20とを備える。
【0017】
第1画像表示部10は、車両100内で乗員Pに対して透過型画像G1を表示する。本実施形態において第1画像表示部10は、インスツルメントパネル101から照射された画像が車両100のフロントウィンドウ102に投影されて透過型画像G1として表示されるヘッドアップディスプレイ装置として設けられている。
なお、本実施形態のフロントウィンドウ102に透過型画像G1を投影する形態に代えて、ステアリングホイールの前方かつインスツルメントパネル101上部に立設される透明板に投影する形態を採用することもできる。
【0018】
本実施形態において乗員Pは車両100のドライバとして図示及び説明するが、本発明において乗員としては第1画像表示部の透過型画像及び第2画像表示部の路面画像を視認可能であれば良い。
【0019】
第2画像表示部20は、路面Rに路面画像G2を表示する。本実施形態において第2画像表示部20は、車両100の前部における配光可変型の多光源ヘッドランプとして設けられている。
本発明において第2画像表示部としては、路面に画像を表示可能であればとくに制限されず、例えばデジタルミラーデバイス又はプロジェクタ等であっても良い。
【0020】
なお、本発明において画像を表示する形態としては、本発明の目的を達成可能な限り様々な形態を採用可能であり、例えば文字及び記号等の照射形態自体に意味を生じるものだけでなく、道路沿いに設置される標識、並びに、規制標示及び指示標示等の道路標示等を強調するための標示の縁取り配光、標示領域に重ねた点滅配光等を挙げることができる。
【0021】
また、特に図2に示すように車両100には視線検出部30が設けられている。視線検出部30は、図2に破線で示す乗員Pの視線を検知する。具体的に視線検出部30は、車内カメラにより乗員Pを監視可能なドライバモニタリングシステムを応用することで、乗員Pによる視線方向等の視線に係る情報を検出する。なお、乗員Pの視線情報を検出可能であればドライバモニタリングシステム以外の監視手段も採用可能である。
視線検出部30の使用形態及び作用効果については後述する。
【0022】
ここで、第1画像表示部10及び第2画像表示部20を駆動した場合の乗員Pの視点について、図3図5を参照しつつ説明する。
図3は、第1画像表示部10のみを駆動した乗員Pの視界について示す概略図である。図4は、第2画像表示部20のみを駆動した乗員Pの視界について示す概略図である。図5は、第1画像表示部10及び第2画像表示部20を駆動した乗員Pの視界について示す概略図である。
【0023】
まず、第1画像表示部10のみを駆動した場合、例えば図4に示すように、フロントウィンドウ102に透過型画像G1が投影表示される。本実施形態における透過型画像G1は、乗員Pが奥行きを視認可能なように画像上部に向かって徐々に縮小する画像として表示されている。これにより、乗員Pは、透過型画像G1を路面R上の道路標示と同様の視覚情報として視認することができる。
【0024】
また、第2画像表示部20のみを駆動した場合、例えば図3に示すように、自車両100の接近に関わらず道路を横断しようとしている歩行者Wに対して、横断禁止を報知する路面画像G2が路面Rに投影表示される。本実施形態における路面画像G2は、歩行者Wが判別及び判読可能な向きで、かつ歩行者Wの進行軌道上に表示されている。これにより、歩行者W及び乗員Pは、路面画像G2を歩行者W近傍の路面R上に表示される警告画像として視認することができる。
【0025】
なお、図4に示した透過型画像G1は、車両100の走行案内情報であり、矢印記号で示される走行ルート案内情報、文字で示される案内先での規制情報及び現在の走行速度情報等を含んでいる。更に、図3に示した路面画像G2は、文字及び記号から成る歩行者Wに対する警告情報を含んでいる。透過型画像G1及び路面画像G2として表示する情報の種類、面積、量、個数、色彩、輝度、位置、及び表示タイミング等については、車両100毎又は乗員P毎に適宜に設定される。
【0026】
第1画像表示部10及び第2画像表示部20を共に駆動した場合、例えば図5に示すように、透過型画像G1と路面画像G2とが車内から、特に乗員Pからの視界では、重複して視えることがある。このとき、歩行者Wにしてみると路面画像G2が進行軌道上に表示されているに過ぎないので、歩行者Wに混乱は生じ難い。しかしながら、乗員Pが特に重複部分する両画像それぞれから正確な情報を得ることは難しいので、乗員Pに混乱を生じ易い。
【0027】
このような乗員Pの混乱を抑制又は低減するために、上記車両100には図6に示す画像表示装置1が設けられている。図6に示すように画像表示装置1は、第2画像表示部20と検出部40と制御部5とを備える。
なお、図6は、本発明の一実施形態に係る画像表示装置1を示すブロック図である。
【0028】
検出部40は、第1画像表示部10の上記透過型画像G1、及び第2画像表示部20の上記路面画像G2の少なくともいずれか、好ましくは両方を検出する。検出部40の画像検出形態としては、例えば上記フロントウィンドウ102及び上記路面Rを車載カメラにより撮像することで画像の有無を直接的に検出する形態を採用することができる。また、他の画像検出形態として、第1画像表示部10及び第2画像表示部20に対して適宜の車載CPUから入力される画像を表示させるための信号、又は、第1画像表示部10及び第2画像表示部20自体の駆動信号を検出することで、画像の有無を間接的に検出する形態等であっても良い。
【0029】
制御部5は、導出部51、判定部52、表示停止部53、及び比較部54を有する。
なお、制御部5は本発明における表示制御部の一例である。本発明においては、後述の判定部52及び比較部54等を含めて表示画像に応じた詳細な制御を行う必要が無ければ表示制御部として画像表示を停止可能であれば良く、例えば後述の表示停止部53のみを設けることとしても良い。また、後述するように本実施形態では検出部40の検出結果に基づいて判定、比較、表示停止等の様々な処理を行う部材として制御部5を採用しているが、本発明においては処理毎に制御部材を分けても良い。
【0030】
導出部51は、上記透過型画像G1及び上記路面画像G2の画像情報を導出する。本実施形態では検出部40により検出された画像に係る信号が導出部51に入力される。導出部51は入力された画像に係る信号を解析することで、画像情報を導出することとなる。
画像情報としては、それぞれの画像の表示面積、表示量、表示個数、表示位置及び表示内容の少なくともいずれかを含む。
【0031】
判定部52は、上記透過型画像G1及び上記路面画像G2の画像情報に基づいて画像の重複の有無を判定する。本実施形態では導出部51により導出された画像情報に係る信号が判定部52に入力される。判定部52は入力された画像情報に係る信号に基づいて、透過型画像G1と路面画像G2とが車内から重複して見えるか否か、又は、重複して見える蓋然性が高いか否かを判定することとなる。
【0032】
表示停止部53は、検出部40の検出結果に基づいて上記透過型画像G1と上記路面画像G2とが重複している場合に、透過型画像G1又は路面画像G2の画像表示を停止させる。本実施形態では判定部52により重複の有無に係る信号が表示停止部53に入力される。表示停止部53は、車内から見て画像の重複状態が生じている場合に、第1画像表示部10又は第2画像表示部20の画像表示を停止させる。
【0033】
表示停止部53による画像表示の停止形態としては、透過型画像G1又は路面画像G2を非表示状態とすることで車内から見た重複状態を解消することができれば良く、様々な停止形態を採用可能である。停止形態として具体的には、例えば画像表示部の駆動信号を停止させる又は遮断することで表示部の駆動を停止する形態、及び、画像表示部の光の照射部を可動式のシャッターで覆うことで表示部自体は駆動していても画像をマスクする形態等が挙げられる。
【0034】
比較部54は、上記透過型画像G1と上記路面画像G2との画像情報を比較する。本実施形態では導出部51により導出された画像情報に係る信号が比較部54に入力される。比較部54は、透過型画像G1又は路面画像G2に対して表示停止制御を行った場合に、車両100の走行状況に対して生じ得る影響の大きさを導出するために、画像情報の比較を行う。
【0035】
画像情報として表示面積、表示量及び表示個数等に応じて車両100の走行状況への影響が生じ得るが、画像情報として画像内容に応じた影響が最も大きいことが多い。非重複化制御による走行状況への影響としては、車両100がそれまでの安全な走行状態を維持することが困難となる要素を挙げることができる。この要素としては、例えば透過型画像G1を停止することで運転者である乗員Pがナビ情報等を視認不能となること、及び、路面画像G2を停止することで歩行者Wが路面画像G2によって中止していた道路の横断を始めてしまうこと等である。
【0036】
好ましくは、比較部54は上記走行状況に対して生じ得る影響の大きさを数値化した画像情報を比較することで、後述の表示停止部53による表示制御対象とする画像の決定が煩雑とならずに容易に行うことができる。なおこれは、種々の画像情報に対応する走行への影響の大小を数値化した換算表を予め設定しておくことで容易に実行可能である。
【0037】
本実施形態では、判定部52による画像重複の有無の判定結果に係る信号と、比較部54による画像情報の比較結果に係る信号とが、表示停止部53に入力される。これらに基づいて、表示停止部53は、画像表示の停止制御と、停止させる画像表示の決定制御とを行う。
【0038】
ここで、図6に示した各部材を用いて画像表示の停止制御を行う際の制御フローについて、フローチャート図として示した図7を参照しつつ説明する。
【0039】
まず、図2及び図6に示した第1画像表示部10及び第2画像表示部20の駆動により表示された図1等に示した透過型画像G1及び路面画像G2を、検出部40が検出する(ステップS1)。
【0040】
次に、検出部40が検出した透過型画像G1及び路面画像G2の少なくともいずれか、好ましくは両方の画像情報を、導出部51が導出する(ステップS2)。このとき、導出する画像情報としては、透過型画像G1と路面画像G2とが車内から重複して見えている又はその蓋然性が高いと判定可能な情報が得ることができれば良い。
【0041】
例えば透過型画像G1の表示面積が大きいことで、表示面積の小さい路面画像G2が表示されていても車内の乗員には重複して見えてしまう蓋然性が高い場合がある。この場合、大きな画像表示をしているという第1画像表示部10の駆動信号を検知した上で、透過型画像G1の表示面積のみを導出して、次工程で用いる判定部52に出力すれば良い。もっとも、画像表示部の駆動信号を検知することなく、透過型画像G1及び路面画像G2の表示面積を導出しても良い。この場合、透過型画像G1の表示面積が予め設定された閾値を超えていれば、透過型画像G1の表示面積に係る画像情報のみを判定部52に出力することができる。
【0042】
表示面積だけでなく、画像が重複して見える蓋然性が高くなる表示量、表示個数及び表示位置等について予め閾値を設定しておいて、該閾値を超えた場合は閾値を超えた画像情報を判定部52に出力することができる。なお、該閾値を設定することなく、又は閾値を超えるものがあっても、両画像の画像情報を判定部52に出力することとしても良い。
【0043】
次いで、車両100内の乗員の視線を視線検出部30が検出する(ステップS3)。なお、この視線検出工程(ステップS3)は、表示停止部53による画像表示の停止制御を行う前であれば、上記ステップS1及び上記ステップS2と順序が逆であっても良い。
【0044】
ステップS2により導出された画像情報及びステップS3により検出された乗員Pの視線情報に基づいて、判定部52が画像の重複の有無を判定する(ステップS4)。ここでは、フロントウィンドウ102及び路面Rにおいて、視線情報に基づいて乗員Pの視線上で画像が重複しているか否かを判定部52が判定する。画像が重複していると判定された場合は、次工程に移る(ステップS4のYes)。画像が重複していないと判定された場合は、乗員Pは透過型画像G1及び路面画像G2のそれぞれから正確な情報を得ることができて混乱が生じ難いので、画像表示を停止する必要は無い。この場合は、別の画像表示がなされるまでそれぞれの画像表示を維持しつつ制御フローを完了状態としておく(ステップS4のNo)。
なお、ステップS2において上述したように、画像重複の蓋然性が高い場合に大きな表示面積等の画像情報を判定部52が入力された際には、視線情報と照合することなく画像重複有りという判定を行うことができる(ステップS4のYes)。
【0045】
続いて、画像の重複有りと判定された場合は、比較部54による画像情報の比較が行われる(ステップS5)。ここでは、次工程において停止する画像を決定するための要素を導出する準備工程として、透過型画像G1の画像情報と路面画像G2の画像情報とを、例えば走行への影響の大小という観点等に基づいて比較する。
【0046】
更に、表示停止部53による停止する画像の決定が行われる(ステップS6)。このとき、表示停止部53に入力された比較部54による比較結果に基づいて、透過型画像G1及び路面画像G2のいずれの画像表示を停止させるかを決定する。表示停止部53は、両画像において画像表示を停止した場合に車両100の走行に影響の小さい画像表示を決定する。逆に、本工程では、いずれかの画像表示を停止した場合に走行に影響の大きい画像表示を維持する画像表示と決定することとしても良い。
【0047】
次に、停止すると決定した画像表示の表示部である第1画像表示部10又は第2画像表示部20に対して表示停止部53が停止制御を行う(ステップS7)。これにより、第1画像表示部10又は第2画像表示部20の画像表示が停止されるので、乗員から視認可能な画像表示は1つとなる。
【0048】
具体的には、図5に示したように車内から見て重複状態にある画像表示が、第1画像表示部10の画像表示を停止した場合は図4に示したように第2画像表示部20の路面画像G2の画像表示が残り、第2画像表示部20の画像表示を停止した場合は、図3に示したように第1画像表示部10の透過型画像G1の画像表示が残ることとなる。なお、図4に示す路面画像G2が残った場合は、乗員Pが路面画像G2を正確に視認可能となるので、乗員Pは車両100の運転を継続する際に歩行者Wに注意を払いつつ安全に走行することが可能となる。図3に示す透過型画像G1が残った場合は、乗員Pが透過型画像G1を正確に視認可能となるので、乗員Pは車両100が提供するナビ情報及び規制情報等に注意を払いつつ交通状況に応じた適正な走行が可能となる。
【0049】
以上のように、乗員Pから見て重複している2種の画像表示のいずれかを停止することで、乗員Pから見える画像を一方のみに絞って簡略化することができるので、車両100の走行について乗員Pに混乱を生じさせない又は生じさせ難くなる。つまり、重複していることで画像が示す情報を乗員Pが正確に読み取ることが困難であった状態を解消することができる。
【0050】
(変形例)
以下に、本発明の変形例について説明する。
図8図10には、本発明に係る画像表示装置の変形例を示した。
なお、図8は、本発明の他の実施形態に係る画像表示装置11を示すブロック図である。図9は、図8に示した部材を用いて画像表示の停止制御を行う際の制御フローについて示すフローチャート図である。図10は、図8に示した部材を用いて画像表示の別の停止制御を行う際の制御フローについて示すフローチャート図である。図8に示す画像表示装置11と図6に示した画像表示装置1とにおいて共通する部材については、共通の参照符号を付すこととし、詳細な説明を省略する。
【0051】
図8に示す画像表示装置11における上記画像表示装置1との相違点は、評価部55の有無である。具体的には、画像表示装置11は、制御部50の一部材として評価部55を備えている。
【0052】
評価部55は、上記車両100の周辺環境に基づいた安全度を評価する。図8に係る実施形態では検知手段60により検知された画像に係る信号が評価部55に入力される。
【0053】
車両100の周辺環境は、例えば歩行者に係る情報、他車両の通行に係る情報、ナビゲーションシステム等による地図及び走行ルートに係る情報、交通規制等の交通に係る情報、並びに、雨雪等の路面状態に係る情報に基づいて認識することができる。この周辺環境を認識するための情報は、各種センサ、カメラ、衛星通信デバイス、車々間通信デバイス及び路車間通信デバイス等の適宜の検知手段60によって得られる。
【0054】
また、車両100の安全度は、車両100の周辺環境が車両100の走行に及ぼす又は及ぼし得る影響の大きさに応じて変化するものとして設定することができる。上記安全度は、例えば歩行者の有無、歩行者の進行方向、他車両の有無、他車両の速度及び進行方向、走行ルート上及びその周辺の交通規制の内容、並びに、乾湿状況及び凍結状況等の路面状態等によって、複合的に変化する。安全度に及ぼす影響の大きさを周辺環境の各要素について例えば数値等で予め登録しておくことで、検知手段60による検知結果に基づいて安全度への複合的な影響を導出し易くなる。
【0055】
図8に係る実施形態では、評価部55による安全度の評価結果に係る信号が表示停止部53に入力される。これにより、表示停止部53は、上述した画像表示の停止制御、及び停止する画像表示の決定制御に加えて、安全度と閾値との比較に基づいた表示停止要否の決定制御を行う。
【0056】
画像表示装置11を用いた制御フローとしては、例えば図9に示すように、ステップS4において画像の重複有りと判定された場合は、評価部55による安全度に係る評価が行われる(ステップS8)。ここでは、車外撮像用カメラ及び各種センサ等の検知手段60によって検知される車両100の周辺環境の情報に基づいた現実の安全度と、予め設定された安全度の閾値との差を評価部55が導出することで評価を行う。ここで設定される閾値は、現実の安全度が下回ると車両100の走行を正常に維持することが困難と成り得る安全度を例えば数値化したものであって良い。
【0057】
現実の安全度が閾値よりも低いと評価部55が評価した場合は、次工程である上記画像情報の比較工程(ステップS5)に移る(ステップS8のYes)。現実の安全度が閾値よりも高いと評価部55が評価した場合は、別の画像表示がなされるまで画像表示を維持しつつ制御フローを完了状態としておく(ステップS8のNo)。評価工程以降(ステップS8のYes以降)は図7を参照しつつ説明した制御と同様であって良い。
【0058】
以上のように、図9に示した実施形態では、画像が重複していると判定がなされても画像表示の停止制御が即時実行されることはない。画像表示装置11において評価部55を設けることで、画像重複に起因して情報の一部を乗員Pが視認しにくい状態となっていても、走行に重大な影響が無い安全度を維持している限りは画像表示の停止制御を行わない。つまり、画像の重複が生じている場合で、かつ現実の安全度が所定の閾値より低い場合に初めて画像表示の停止制御を行う。これにより、車両100として必要性及び緊急性の高い画像表示制御を選択的に実行することができるようになるので、画像表示の停止という画像の経時的変化が少なくなる。画像の経時的変化が少なくなると、乗員Pによる変化した画像表示の注視動作に起因して、他の走行環境の変化に対する乗員Pの対応が遅れるという状況を低減又は抑制することがより一層可能となる。
【0059】
なお、図9に示した制御フローの更なる変形例として、ステップS8のNoの場合にフローを完了状態とせずに、ステップS8がNoである限り、表示している画像が維持されている間は、重複判定工程(ステップS4)と安全度評価工程(ステップS8)とを反復して実行する制御形態を採っても良い。
【0060】
ここで、図8に示した評価部55を用いた別の制御形態を図10に示す。図10に示す制御フローと図9に示した制御フローとの相違点は、画像表示の停止制御を解除する制御を行っている点である。
【0061】
具体的な制御フローとしては、図10に示すように、安全度評価工程において現実の安全度が所定の閾値よりも低いと評価された場合(ステップS8のYes)に、画像表示の停止工程(ステップS7)まで実行した後に、第2安全度評価工程(ステップS80)を実行する。具体的には、実行している停止制御を解除したと仮定した場合、つまり走行している車両100の経時的に変化する周辺環境に必要な画像表示を重複状態となっても実行した場合に、車両100の安全度と所定の閾値との差を上記評価部56が導出し直すことで、第2安全度評価工程(ステップS80)を実行することとする。
【0062】
導出し直した安全度が閾値よりも高い、すなわち画像が重複しても走行に影響が無い又は小さくなったと評価部55が評価した場合は、次工程である画像表示の停止制御の解除工程(ステップS9)に移る(ステップS80のNo)。これに対して、導出し直した安全度が閾値よりも低い、すなわち画像が重複すると走行に影響が生じ得ると評価部55が評価した場合は、画像表示の停止状態を維持しつつ安全度と閾値との差を反復して導出し続ける(ステップS80のYes)。
【0063】
具体的には、現実の安全度が所定の閾値より一旦低くなった(ステップS8のYes)後に、現実の安全度が閾値より高くなった場合(ステップS80のNo)は、停止していた画像表示の停止状態を解除する制御を行う(ステップS9)。これにより、第1画像表示部10又は第2画像表示部20の画像表示の停止が解除されるので、乗員から視認可能な画像表示は2つに戻ると共に、相互に重複した状態となる。本工程で画像が重複して見える状態に戻るとしても、現実の安全度に応じて車両100の走行に問題無い場合を選択しているので、乗員Pに混乱を生じ難い。
【0064】
このように、図10に示した実施形態では、画像の重複判定と安全度の評価結果とに基づいた画像表示停止だけでなく、停止した画像表示の復帰も実行することができるようになる。
【0065】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により、本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【符号の説明】
【0066】
1及び11:画像表示装置、10:第1画像表示部、20:第2画像表示部、30:視線検出部、40:検出部、5及び50:制御部、51:導出部、52:判定部、53:表示停止部、54:比較部、55:評価部、100:車両、101:インスツルメントパネル、102:フロントウィンドウ、G1:透過型画像、G2:路面画像、P:乗員、R:路面、W:歩行者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10