(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、「LNG」のような低温液体を貯蔵する低温タンクでは、その構造や大きさ等によって違いはあるが、とりわけ、「ホットアップ処理」に多くの時間(例えば、一ケ月程度)が割かれるのが一般的である。
【0010】
この点、特許文献1および特許文献2の技術は、「ホットアップ処理」の段階から窒素ガスを使用しているため、その使用量が必然的に増加するものといえる。
【0011】
すなわち、特許文献1および特許文献2の技術では、窒素ガスの使用量の増加に伴って、コスト高になってしまう、といった問題があった。
【0012】
ところで、窒素ガスを大量に使用する場合、液化窒素が積載されたタンクローリー車を手配したうえで作業することが少なくない。
【0013】
一般に、このような作業においては、低温タンクとタンクローリー車とをホース部材で接続する作業のほか、気化器等の装置を用いて「液化窒素」を気化する作業なども発生するため、必然的に大がかりとなってしまいやすい。
【0014】
すなわち、特許文献1および特許文献2の技術では、比較的長期間にわたって、このような作業をおこなわなければならないため、コスト高に加え、作業負担が増大する、といった問題があった。
【0015】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、その目的は、不活性ガスの使用量の低減化および作業負担の軽減化を図りつつ、工期を短縮することが可能な低温タンクの開放方法およびその開放システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題は、本発明にかかる低温タンク開放方法によれば、低温液体を貯蔵する低温タンクの開放方法であって、前記低温タンクに貯蔵された前記低温液体を外部に排出する低温液体排出工程と、前記低温液体から生じた気化ガスの温度を昇温する気化ガス昇温工程と、
前記低温タンク内の温度を計測する温度測定工程と、前記気化ガス昇温工程をおこなうことにより昇温された前記気化ガスを前記低温タンクに供給して前記低温タンク内を昇温する低温タンク昇温工程と、前記低温タンク内の前記気化ガスをパージ用気体でパージする気化ガスパージ工程と、を含
み、
前記気化ガス昇温工程は、前記温度測定工程をおこなうことにより測定された前記低温タンク内の温度に基づいて前記低温タンクに供給する前記気化ガスの温度を変更する工程を含む、ことにより解決される。
【0017】
また、上記課題は、本発明にかかる低温タンク開放システムによれば、低温液体を貯蔵する低温タンクの開放システムであって、前記低温タンクに貯蔵された前記低温液体を外部に排出する低温液体排出弁と、前記低温タンク内で生じた気化ガスを外部に排出する気化ガス排出管路と、前記気化ガス排出管路を介して排出された前記気化ガスを昇温する気化ガス昇温装置と、前記気化ガス昇温装置により昇温された前記気化ガスを前記低温タンクに供給する気化ガス供給装置と、
前記低温タンク内の温度を計測する温度計測装置と、前記低温タンク内の前記気化ガスをパージする気化ガスパージ装置と、を備
え、前記気化ガス昇温装置は、前記温度計測装置によって計測された前記低温タンク内の温度が所定温度となるまでの間、前記気化ガスを第1温度となるように昇温するとともに、前記温度計測装置によって計測された前記低温タンク内の温度が前記所定温度に達すると、前記第1温度よりも高い第2温度となるように昇温する、ことによっても解決される。
【0018】
なお、ここでいう「低温液体」とは、いわゆる極低温または超低温の液体を意味し、例えば、「LNG」、液化石油ガス(Liquefied Petroleum Gas、以下、「LPG」と称す)、液化水素、液化酸素およびアンモニアなどが該当する。
【0019】
また、上記「気化ガス」とは、「低温液体」から蒸発したガスを意味し、例えば、「低温液体」が、「LNG」であればメタンガスやエタンガス、また、「LPG」であればプロパンガスやブタンガスが該当する。
【0020】
、
さらに、上記「気化ガスの温度を調整する」ための装置(「気化ガス温度調整装置」)とは、少なくとも「気化ガス」を昇温することが可能な装置を意味し、例えば、「気化ガス」を直接的に加熱するヒータ(例えば、電気加熱式ヒータや蒸気加熱式ヒータ)のほか、「気化ガス」を圧縮することによって昇温させる圧縮機(コンプレッサー)が該当する。
【0021】
また、上記「パージ用気体」とは、低温タンク内に残存する気化ガスをパージすることが可能な気体(例えば、不活性ガス)であれば、その種類を問わない趣旨であるが、例えば、「パージ処理」後に低温タンク内に作業員等が入る点などを考慮すれば、人体に無害な気体(例えば、窒素ガス(不活性ガス)や空気)であるのが望ましい。
【0022】
上記構成では、
(a)低温タンク内に貯蔵されている「低温液体」(例えば、「LNG」)を排出(液抜き)する、
(b)低温タンク内などで発生した「気化ガス」(例えば、Boil Off Gas、以下、「BOG」と称す)を昇温する、
(c)昇温された「気化ガス」を用いて、低温タンクをホットアップする、
(d)その後、「パージ用気体」(例えば、窒素ガス)を用いて、低温タンク内に残留する「気化ガス」をパージする、
といった手順を踏むことにより低温タンクの開放をおこなうことができるように構成されている。
【0023】
すなわち、上記構成では、低温タンクをホットアップする際に用いられる媒体(気体)が、低温タンク内において、いわば自然に発生する「気化ガス」(最終的に低温タンクから排気されるガス)であるため、「ホットアップ処理」をおこなう際に、それ用の媒体を別途準備する必要がない。
【0024】
このため、上記構成では、「パージ処理」をおこなうときにはじめて、「パージ用気体」を準備すれば足りるため、その使用量を確実に低減することができ、その結果、コストの低減化を図ることが可能である。
【0025】
また、上記構成では、
(a)低温タンクから排出された「気化ガス」を昇温する、
(b)昇温された「気化ガス」を低温タンクに供給する、
といった手順を繰り返しおこなう((a)→(b)→(a)→(b)→・・・)ことで、低温タンクをホットアップすることができるように構成されている。
【0026】
すなわち、上記構成では、「ホットアップ処理」をおこなうのにあたり、
・「気化ガス」を昇温するための昇温設備(例えば、ヒータ)、および、
・「低温タンク」から排出された「気化ガス」を再度「低温タンク」に戻し入れるための配管設備など、
が設けられていない場合、その設備を追加的に準備するための作業(仮設工事)が発生するのみで、既存の設備をほとんどそのまま利用することが可能である。
【0027】
したがって、上記構成では、少なくとも「ホットアップ処理」が完了するまでの間、既存の設備をほとんどそのまま利用することが可能なため、作業負担を確実に軽減することができ、その結果、低温タンクの開放までに要する時間(工期)を短縮することが可能である。
【0028】
これらをまとめると、上記構成を備えた本発明は、「パージ用気体」の使用量の低減化および作業負担の軽減化を図りつつ、低温タンクの開放に要する時間(工期)を短縮することができるものといえる。
【0029】
なお、上記低温タンクの開放方法にかかる発明においては、前記低温タンクの開放方法は
、前記温度測定工程をおこなうことにより計測された前記低温タンクの温度が所定温度に達したか否かを監視する温度監視工程をさらに含み、前記気化ガス昇温工程は、前記温度監視工程をおこなうことによって前記低温タンクの温度が前記所定温度に達していると判断されるまでの間、前記気化ガスを第1温度となるように昇温する第1気化ガス昇温工程と、前記温度監視工程をおこなうことによって前記低温タンクの温度が前記所定温度に達していると判断されると、前記気化ガスを前記第1温度よりも高い第2温度となるように昇温する第2気化ガス昇温工程と、を含み、前記低温タンク昇温工程は、前記第1温度の前記気化ガスを用いて前記低温タンク内を昇温する第1低温タンク昇温工程と、前記第2温度の前記気化ガスを用いて前記低温タンク内を昇温する第2低温タンク昇温工程と、を含む、
と好適である。
【0030】
また、上記低温タンクの開放方法にかかる発明においては、前記気化ガスパージ工程は、前記低温タンク内の前記気化ガスを第1パージ温度のパージ用気体でパージする第1気化ガスパージ工程と、前記第1気化ガスパージ工程をおこなった後、前記低温タンク内の前記気化ガスを前記第1パージ温度よりも高い第2パージ温度のパージ用気体でパージする第2気化ガスパージ工程と、を含む、と好適である。
【0031】
一方、上記低温タンクの開放システムにかかる発明においては
、前記気化ガス昇温装置は、前記気化ガスを前記第1温度となるように昇温する第1昇温装置と、前記気化ガスを前記第2温度となるように昇温する第2昇温装置と、を有する、
と好適である。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明にかかる低温タンクの開放方法およびその開放システムによれば、簡易な構成でありながらも、パージ用気体の使用量の低減化および作業負担の軽減化を図りつつ、工期を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態にかかるLNGタンクの開放システムを説明するための系統図、
図2は本実施形態にかかるLNGタンクの開放方法を説明するためのフロー図、
図3は
図2のLNGタンクの開放方法におけるメタンパージ工程を説明するためのフロー図、
図4はLNGタンクの開放方法におけるLNG排出工程を説明するための説明図、
図5はLNGタンクの開放方法における第1LNGタンク昇温工程を説明するための説明図、
図6はLNGタンクの開放方法における第2LNGタンク昇温工程を説明するための説明図、
図7はLNGタンクの開放方法における第1メタンパージ工程を説明するための説明図、
図8はLNGタンクの開放方法における第2メタンパージ工程を説明するための説明図である。
【0035】
図1は、本実施形態にかかるLNGタンクTの開放システム1(およびその開放方法)が適用される施設(以下、「LNG基地」と称す)の概要を示す配管系統図(設備系統図)である。なお、上記LNGタンクTが特許請求の範囲に記載の「低温タンク」に該当する。
【0036】
図1に示すように、本実施形態にかかる「LNG基地」には、「LNG」(特許請求の範囲に記載の「低温液体」に該当)を貯蔵するためのLNGタンクが複数(図中では、「1基」のLNGタンクTのみ記載)設けられ、これらは、後述する受入ライン10やBOGライン30等を介して相互に接続されている。なお、複数のLNGタンクは、何れも同様な構成を有しているため、図中のLNGタンクTのみについて説明し、必要がある場合を除き、他のLNGタンク(図示省略)についての説明を省略する。また、以下においては、図中のLNGタンクTを開放する場合を例にとって説明するが、他のLNGタンクにおいても、同様な手順で開放することができるのはいうまでもない。
【0037】
LNGタンクTは、例えば、内槽と外槽との間に保冷材(例えば、パーライト)が充填された二重殻タンクである。
【0038】
このLNGタンクTには、その内部の温度を計測するための温度センサが複数設けられている。
具体的に、LNGタンクTには、内槽の上部空間の温度を計測する温度センサTe1と、内槽側板の温度を計測する温度センサTe2(本実施形態では、「4個」)と、内槽底板(以下、単に「底板」と称す)の温度を計測する温度センサTe3(本実施形態では、「2個」)とが、それぞれ、適宜位置に取り付けられている。これら温度センサTe1〜Te3により計測された温度は、例えば、図示省略のコントロールセンター(監視制御室)に送信されるように構成されている。なお、上記温度センサTe1〜Te3が、特許請求の範囲に記載の「温度計測装置」に該当する。
【0039】
次に、LNGタンクTに接続される各種配管(受入ライン10、払出ライン20、BOGライン、ベントライン40およびミニマムライン50)について説明する。
【0040】
まず、受入ライン10について説明する。
受入ライン10は、LNGタンカーなどに積載された「LNG」を、LNGタンクTやその他のLNGタンクに受け入れるための管路であって、LNGタンクTの頂部に接続される上部受入ライン10Aと、その下部に接続される下部受入ライン10Bとを有している。
【0041】
上部受入ライン10Aには、開閉弁11が設けられる一方、下部受入ライン10Bには、排出弁12a、流量制御弁13a(例えば、電動弁)、排出弁12bおよび開閉弁13bが、LNGタンクTに向かって順に設けられている。なお、上記排出弁12bが特許請求の範囲に記載の「低温液体排出弁」に該当する。
【0042】
なお、本実施形態では、LNGタンクTを開放する際、受入ライン10の所定位置(
図1の位置X1)に、閉止板(挿し板)を挿入配置することによって、それよりも上流側への「LNG」の流通が完全に遮断されるように構成されている。
【0043】
次に、払出ライン20について説明する。
払出ライン20は、LNGタンクTに貯蔵された「LNG」を、後述するNG供給ライン60に向けて払い出すための管路である。
具体的に、払出ライン20は、LNGタンクTと、後述する気化器Vとを接続するための管路であって、その管路中には「LNG」を所定の圧力で圧送する複数(本実施形態では、3台)の払出ポンプP1〜P3が設けられている。
なお、以下の説明においては、便宜上、LNGタンクTと払出ポンプP1〜P3の吸込側との間に設けられる管路を吸込側払出ライン20A、また、払出ポンプP1〜P3の吐出側と気化器Vとの間に設けられる管路を吐出側払出ライン20Bと称することとする。
【0044】
吸込側払出ライン20Aは、LNGタンクTの下部に接続されるとともに、その下流側の管端には、排出弁23が設けられている。
この吸込側払出ライン20Aには、開閉弁21a、排出弁22(特許請求の範囲に記載の「低温液体排出弁」に該当)および流量制御弁21b(例えば、電動弁)が、下流側に向かって順に設けられるとともに、各払出ポンプP1〜P3の吸込側から延びる吸込側配管20Aa〜20Acが接続されている。なお、吸込側配管20Aa〜20Acの適宜位置には、通常のポンプ廻りの配管と同様に、開閉弁が設けられている。
【0045】
一方、吐出側払出ライン20Bは、ポンプ側払出ライン20Baと、第1LNG払出ライン61と、気化器側払出ライン20Bbとを有している。
【0046】
ポンプ側払出ライン20Baは、各払出ポンプP1〜P3の吐出側から延びる吐出側配管20Ba1〜20Ba3と、第1LNG払出ライン61とを接続するための管路である。なお、吐出側配管20Ba1〜20Ba3には、それぞれ、通常のポンプ廻りの配管と同様に、逆止弁や開閉弁が設けられている。
【0047】
このポンプ側払出ライン20Baには、排出弁24および開閉弁25が第1LNG払出ライン61(下流側)に向かって順に設けられている。
【0048】
また、このポンプ側払出ライン20Baには、吐出側配管20Ba3と排出弁24との間に、後述する第2LNG払出ライン62と連通可能なバイパスライン63が接続されている。
このバイパスライン63には、開閉弁64a(常閉)、排出弁65(常閉)および開閉弁64b(常閉)が、後述する第2LNG払出ライン62に向かって順に設けられている。
【0049】
第1LNG払出ライン61は、上記ポンプ側払出ライン20Baのほか、他のLNGタンクの払出ライン(例えば、ポンプ側払出ライン20Baに相当する管路や、バイパスライン63(後述するバイパスライン66)に相当する管路、図示省略)が接続された管路である。
このため、本実施形態では、仮に、ポンプ側払出ライン20Baからの「LNG」の供給が停止された場合(例えば、LNGタンクTが開放された場合)であっても、第1LNG払出ライン61への「LNG」の供給を継続的におこなうことが可能となっている。
【0050】
なお、本実施形態にかかる「LNG基地」には、第1LNG払出ライン61のほか、これと同様な構成を有する第2LNG払出ライン62が設けられている。
具体的に、第2LNG払出ライン62には、上記バイパスライン63、後述するバイパスライン66、および、他のLNGタンクのポンプ側払出ライン(ポンプ側払出ライン20Baに相当、図示省略)等が接続されている。
このため、本実施形態では、他のLNGタンクの払出ラインからの「LNG」の供給が停止された場合であっても、バイパスライン63の開閉弁64a,64b(または、後述するバイパスライン66の開閉弁67a,67b)を開放することによって、第2LNG払出ライン62への「LNG」の供給を継続的におこなうことが可能となっている。
【0051】
気化器側払出ライン20Bbは、第1LNG払出ライン61と、気化器Vとを接続するための管路である。
この気化器側払出ライン20Bbには、開閉弁27、調節弁28aおよび流量制御弁28b(例えば、電動弁)が気化器Vに向かって順に設けられている。
【0052】
また、気化器側払出ライン20Bbには、開閉弁27と調節弁28aとの間に、第2LNG払出ライン62と連通可能なバイパスライン66が接続されている。
このバイパスライン66には、開閉弁67a,67b(常閉)が、第2LNG払出ライン62に向かって順に設けられている。
【0053】
気化器Vは、公知の気化器と同様に、気化器側払出ライン20Bbを介して供給された「LNG」を海水等で気化させて、天然ガス(Natural Gas、以下、「NG」と称す)を生成する装置である。
気化器Vによって生成された「NG」は、NG供給ライン60を介して需要先に供給されるようになっている。
【0054】
なお、本実施形態では、LNGタンクTを開放する際、払出ライン20の適宜位置(
図1の位置X2)において、いわゆる閉止板(挿し板)を挿入配置することによって、それよりも上流側への「LNG」の流通が完全に遮断されるように構成されている。
【0055】
次に、BOGライン30について説明する。
BOGライン30は、LNGタンクT内で自然気化した「BOG」(特許請求の範囲の「気化ガス」に該当)を、LNGタンクTの外部に排出するための管路である。なお、本実施形態では、LNGタンクTから排出された「BOG」を、後述する往復式BOG圧縮機34(レシプロ型のBOG圧縮機)や遠心式BOG圧縮機39(ターボ型のBOG圧縮機)で昇圧した後、NG供給ライン60に合流させるように構成されている。
【0056】
BOGライン30は、その一端側がLNGタンクTの頂部に接続され、その管路には、開閉弁31a,31b、他のLNGタンクのBOGラインが接続される合流部32、開閉弁33、往復式BOG圧縮機34、ヒータ35および排出弁36aが、NG供給ライン60に向かって順に設けられている。なお、本実施形態において、排出弁36aには、配管材が接続され、その先端には、排出弁36bが取り付けられている。
【0057】
さらに、BOGライン30は、合流部32と開閉弁33との間から分岐して延び、往復式BOG圧縮機34の上流側で合流される分岐管路を有し、この分岐管路には、クーラ37、開閉弁38および遠心式BOG圧縮機39が、下流側に向かって順に設けられている。なお、上記BOGライン30が、特許請求の範囲に記載の「気化ガス排出管路」に該当する。
【0058】
本実施形態では、LNGタンクTに「LNG」が貯蔵されている状態(以下、「通常の使用状態」と称す)で、
・往復式BOG圧縮機34を、「BOG」の排出量(容量)を調整するための容量調整用の圧縮機として、また、
・遠心式BOG圧縮機39を、大容量の「BOG」を処理するためのベースロード用の圧縮機として、
それぞれ、機能させるように、これらを併用運転している。なお、上記往復式BOG圧縮機34および遠心式BOG圧縮機39が、特許請求の範囲に記載の「第1昇温装置」(「気化ガス昇温装置」)および「気化ガス供給装置」に該当する。
【0059】
ところで、往復式BOG圧縮機34には、公知の往復式BOG圧縮機と同様に、異物の吸入によるロータや軸受の損傷・破損等を防止する観点から、その吸入側に、吸入ストレーナ(図示省略)が設けられている。なお、一般に、このような吸入ストレーナは、目詰まり等によって、その前後の差圧が上昇されると、圧縮効率の低下および消費電力の増加などの問題を引き起こすため、所定の頻度で清掃等をするようにしている。
【0060】
ここで、「BOG」(「LNG」)の成分について説明すると、「BOG」は、軽質成分としてのメタン(成分割合:約90%、沸点:約−162℃)と、エタン(沸点:約−89℃)、プロパン(沸点:約−42℃)およびブタン(沸点:−1℃)等の重質成分とから構成されている。
このため、「通常の使用状態」で往復式BOG圧縮機34を駆動した場合、吸入ストレーナを通過する「BOG」は、そのほとんどがメタン(軽質成分)となっている。
【0061】
詳しくは後述するが、本実施形態では、往復式BOG圧縮機34および遠心式BOG圧縮機39を駆動することによって、LNGタンクTに加温された「BOG」を循環供給させ、これにより、その内部が昇温(ホットアップ)されるように構成されている。
ここで、一般に、「BOG」を加温すると、真っ先に沸点の低いメタン(軽質分)が徐々に蒸発していくため、その他の成分である重質成分(エタン、プロパンおよびブタン)の濃度が上昇していきがちである。
すなわち、LNGタンクTをホットアップするために、往復式BOG圧縮機を駆動すると、重質成分が吸入ストレーナを通過する結果、目詰まりしやすく、場合によっては、その前後の差圧が上昇する、といった問題、すなわち、圧縮効率の低下や消費電力の増加などの問題が生じやすい。
このため、本実施形態では、ホットアップ期間中(LNGタンクTの昇温期間中)、往復式BOG圧縮機34よりも遠心式BOG圧縮機39の駆動を優先するようにして、このような問題が生じないようにしている。
【0062】
なお、遠心式BOG圧縮機においても、ホットアップ期間中、ケーシング(図示省略)内に重質成分が多く流入されるため、場合によっては、これがケーシングから溢れ出てしまい、その結果、自動的に停止(過電流トリップ)するおそれが少なからずともある。
この点、LNGタンクTをホットアップする場合、予め、遠心式BOG圧縮機39(ケーシング内)に溜まっているドレンを排出しておくのが望ましい、といえる。
【0063】
ヒータ35は、往復式BOG圧縮機34や遠心式BOG圧縮機39によって圧縮された「BOG」(すなわち、加温された「BOG」)を、NG供給ライン60の許容温度範囲となるように、さらに加温する装置であって、公知のヒータ(蒸気加熱式または電気加熱式)を用いることが可能なものである。なお、上記ヒータ35が、特許請求の範囲に記載の「第1昇温装置」(「気化ガス昇温装置」)に該当する。
【0064】
一方、クーラ37は、遠心式BOG圧縮機39による高効率運転を実現するため、LNGタンクT内で自然発生した「BOG」を冷却する装置であって、ヒータ35と同様に、公知のもの(例えば、「LNG」を用いて冷却可能なクーラや電気冷却式のクーラ)を用いることが可能なものである。
【0065】
次に、「LNG基地」に設けられるベントライン40およびミニマムライン50についいて説明する。
ベントライン40は、LNGタンクTおよび他のLNGタンクTを連通することによって、これらの内部圧力を一定に保つための管路である。
本実施形態では、ベントライン40の一端が、開閉弁を介して、LNGタンクTの頂部に接続される一方、その他端が、吐出側払出ライン20Bの所定位置に接続されている。
【0066】
ミニマムライン50は、公知のミニマムラインと同様に、払出ポンプP1等に吸い込まれた「LNG」をLNGタンクTに戻すことによって、払出ポンプP1等の吐出量を調節するための管路である。
本実施形態では、ミニマムライン50の一端が、開閉弁を介して、LNGタンクTの頂部に接続される一方、その他端が、開閉弁や逆止弁を介して、吐出側配管20Ba1(逆止弁の上流側)に接続されている。
【0067】
次に、このように構成された「LNG基地」におけるLNGタンクTの開放方法について、
図1〜
図8を参照しつつ説明する。なお、以下においては、説明の便宜上、下部受入ライン10Bの位置X1および吐出側払出ライン20Bの位置X2の各々に、LNGタンクT内への「LNG」の流入を阻止するための閉止板(挿し板)が挿入配置されていることを前提として説明する。
【0068】
図2に示すように、本実施形態にかかるLNGタンクTの開放方法は、LNG排出工程S100と、温度測定工程S200と、第1温度監視工程S300と、第2温度監視工程S400と、第1BOG昇温工程S500と、第1LNGタンク昇温工程S600と、第3温度監視工程S700と、第2BOG昇温工程S800と、第2LNGタンク昇温工程S900と、メタンパージ工程S1000とを備えている。なお、上記LNG排出工程S100と、温度測定工程S200と、第2温度監視工程S400と、第1BOG昇温工程S500と、第1LNGタンク昇温工程S600と、第2BOG昇温工程S800と、第2LNGタンク昇温工程S900と、メタンパージ工程S1000とが、それぞれ、特許範囲に記載の「低温液体排出工程」と、「温度測定工程」と、「温度監視工程」と、「第1気化ガス昇温工程」(「気化ガス昇温工程」)と、「第1低温タンク昇温工程」(「低温タンク昇温工程」)と、「第2気化ガス昇温工程」(「気化ガス昇温工程」)と、「第2低温タンク昇温工程」(「低温タンク昇温工程」)と、「気化ガスパージ工程」とに該当する。
【0069】
(LNG排出工程S100)
図2に示すように、本実施形態にかかるLNGタンクTの開放方法は、LNG排出工程S100をおこなうことから始まる。
具体的に、LNG排出工程S100では、
図1および
図4に示すように、受入ライン10および払出ライン20において以下のような作業をおこなう。
【0070】
すなわち、受入ライン10側においては、
・流量制御弁13a等を閉塞して、他のLNGタンクの配管系統との連通状態を遮断する、
・次に、排出弁12bに排水ホース等のベント71(仮設用配管)を接続する、
・その後、排出弁12bを開放して、ベント71を介してLNGタンクT内の「LNG」を排出する、
等の作業をおこなう。
【0071】
一方、払出ライン20側では、
・開閉弁64a,64bおよび開閉弁25等を閉塞して、他のLNGタンクの配管系統との連通状態を遮断する、
・次に、排出弁22を開放して、ベント71を介してLNGタンクT内の「LNG」を排出する、
等の作業をおこなう。
【0072】
図2に示すように、本実施形態では、このようなLNG排出工程S100をおこなった後、次工程である温度測定工程S200がおこなわれるようになっている。なお、本実施形態では、他のLNGタンクの配管系統を完全に遮断するため、位置X1および位置X2の各々に閉止板(挿し板)を挿入配置するようにしたが、必要に応じて、これを省略することも可能である。
【0073】
(温度測定工程S200)
温度測定工程S200では、LNGタンクT内の温度を計測する作業をおこなう。
具体的に、温度測定工程S200では、温度センサTe3によって計測される温度(LNGタンクTの「底板」温度)をコントロールセンター等で監視する作業をおこなう。
本実施形態では、このような温度測定工程をおこなった後、次工程である第1温度監視工程S300がおこなわれるようになっている。なお、本実施形態では、LNGタンクT内の温度を、「底板」の温度を測定する温度センサTe3を用いておこなう場合を例示するが、例えば、内槽の上部空間の温度を測定する温度センサTe1または内槽側板の温度を測定する温度センサTe2でおこなってもよい。また、1種類の温度センサ(例えば、温度センサTe3)を用いてLNGタンクT内の温度を求める場合に限られず、複数種類の温度センサTe1〜Te3により計測される各温度に基づいてLNGタンクT内の温度を求めることも可能である。
【0074】
(第1温度監視工程S300)
第1温度監視工程S300では、LNGタンクの温度が予め定めた第1温度(以下、「第1ホットアップ温度」と称す)まで「自然昇温」(自然に昇温)されたか否かを確認(監視)する作業をおこなう。なお、上記「第1ホットアップ温度」が特許請求の範囲に記載の「所定温度」に該当する。
例えば、この「第1ホットアップ温度」は、「底板」の温度:「−30℃」(温度センサTe3により計測される温度:「−30℃」)といったように適宜設定することが可能なものである。
本実施形態では、LNGタンクT内の温度が、「第1ホットアップ温度」に達していない場合、第1温度監視工程S300を継続しておこなう一方(待機する一方)、「第1ホットアップ温度」に達している場合、次工程である第2温度監視工程S400がおこなわれるようになっている。なお、本実施形態では、第1温度監視工程S300をおこなう例を示すが、必要に応じて、この作業を省略することも可能である。
【0075】
(第2温度監視工程S400)
第2温度監視工程S400では、LNGタンクT内の温度が予め定めた第2温度(以下、「第2ホットアップ温度」と称す)に達したか否かを確認(監視)する作業をおこなう。
例えば、この「第2ホットアップ温度」は、「底板」の温度:「−10℃」(温度センサTe3によって計測される温度:「−10℃」)といったように適宜設定することが可能なものである。
本実施形態では、LNGタンクT内の温度が、「第2ホットアップ温度」に達していない場合、次工程である第1BOG昇温工程S500がおこなわれる一方、「第2ホットアップ温度」に達している場合、後述する第3温度監視工程S700がおこなわれるように構成されている。
【0076】
(第1BOG昇温工程S500)
第1BOG昇温工程S500では、LNGタンクT内に残存する「BOG」を後述する「第3ホットアップ温度」(例えば、「15℃」)となるように昇温するための作業をおこなう。
【0077】
具体的に、第1BOG昇温工程S500では、
図1および
図5に示すように、
・BOGライン30の排出弁36bと吸込側払出ライン20Aの排出弁23とを、分岐開閉弁81a,流量計82、バイパス弁83および分岐開閉弁81bが設けられた仮設用配管80(例えば、ホース部材)で接続する、
・BOGライン30、仮設用配管80および吸込側払出ライン20Aに設けられた各バルブを開放した状態で、往復式BOG圧縮機34または遠心式BOG圧縮機39を駆動する、
等の作業をおこなう。
【0078】
これにより、LNGタンクT内に残存する低温(例えば、「−30℃」)の「BOG」は、
・BOGライン30、仮設用配管80および吸込側払出ライン20Aを流通することによって、また、
・往復式BOG圧縮機34や遠心式BOG圧縮機39により圧縮されることによって、
「LNG基地」内の雰囲気温度(例えば、「15℃〜25℃」(常温))近くまで昇温されるようになっている。なお、上記常温が特許請求の範囲に記載の「第1温度」に該当する。
【0079】
(第1LNGタンク昇温工程S600)
図1、
図2および
図5に示すように、第1LNGタンク昇温工程S600では、第1BOG昇温工程S500において昇温(常温程度まで加温)された「BOG」をLNGタンクTに「循環供給」する作業をおこなう。
これにより、LNGタンクTは、BOGライン30、仮設用配管80および吸込側払出ライン20Aを介した「BOG」の循環によって徐々に昇温されていくこととなる。
【0080】
上述したが、LNGタンクTを昇温する作業(第1LNGタンク昇温工程S600および後述する第2LNGタンク昇温工程S900)においては、「BOG」の成分中、重質分が多くなりやすく、その結果、往復式BOG圧縮機34の吸入ストレーナが目詰まりする、といった問題が生じやすい。
このため、本実施形態では、LNGタンクTを昇温する作業をおこなっている間、往復式BOG圧縮機34よりも遠心式BOG圧縮機39を優先して運転する制御をおこなうようにしている。
一方、遠心式BOG圧縮機39においても、「BOG」の重質成分がケーシングから溢れ出るおそれがあるため、LNGタンクTを昇温する作業を開始する前(第1LNGタンク昇温工程S600をおこなう前)に、ケーシング内に溜まっているドレンを予め除去しておくのが望ましい。
【0081】
本実施形態では、LNGタンクT内の温度が「第2ホットアップ温度」(例えば、「底板」の温度:「−10℃」)に達するまで、第1LNGタンク昇温工程S600が繰り返しおこなわれるように構成されている(第1LNGタンク昇温工程S600→温度測定工程S200→(第1温度監視工程S300で「Yes」→)第2温度監視工程S400で「No」→第1BOG昇温工程S500→第1LNGタンク昇温工程S600→・・・)。なお、本実施形態では、加温された「BOG」流量を流量計82によって常時監視(例えば、コントロールセンター(図示省略)で監視)することができるため、第1BOG昇温工程S500および第1LNGタンク昇温工程S600を、例えば、24時間連続しておこなうことも可能である。
【0082】
(第3温度監視工程S700)
本実施形態では、第2温度監視工程S400において、LNGタンクT内の温度が「第2ホットアップ温度」(例えば、「底板」の温度:「−10℃」)に達していることが確認されると、第3温度監視工程S700がおこなわれるように構成されている。
第3温度監視工程S700では、LNGタンクT内の温度が予め定めた第3の温度(以下、「第3ホットアップ温度」と称す)に達したか否かを監視(確認)する作業をおこなう。
例えば、この「第3ホットアップ温度」は、「底板」の温度:「15℃」(温度センサTe3によって計測される温度:「15℃」)といったように適宜設定することが可能なものである。
本実施形態では、LNGタンクT内の温度が、「第3ホットアップ温度」に達していない場合、次工程である第2BOG昇温工程S800がおこなわれる一方、「第2ホットアップ温度」に達している場合、後述するメタンパージ工程S1000がおこなわれるように構成されている。
【0083】
(第2BOG昇温工程S800)
第2BOG昇温工程S800では、第1BOG昇温工程S500において昇温されたBOGをさらに昇温するための作業をおこなう。
【0084】
具体的に、第2BOG昇温工程S800では、
図1および
図6に示すように、
・仮設用配管80に設けられた分岐開閉弁81bと分岐開閉弁81cとに、それぞれ、加温ヒータ84(特許請求の範囲に記載の「第2昇温装置」(「気化ガス昇温装置」)に該当)の上流側と下流側とを接続する、
・バイパス弁83を閉塞する、
・遠心式BOG圧縮機39(または往復式BOG圧縮機34)を駆動する、
・加温ヒータ84に加熱媒体(本実施形態では、蒸気)を調整しつつ送り込む、
等の作業をおこなう。なお、加温ヒータ84は、「BOG」を加温することが可能なものであれば、蒸気式のものに限られず、例えば、電気式のものを用いてもよい。
【0085】
これにより、本実施形態では、BOGライン30、仮設用配管80および吸込側払出ライン20A内に存在する「BOG」を、加温ヒータ84によって所定温度(例えば、「40℃」)までさらに加温することが可能となっている。なお、上記所定温度が特許請求の範囲に記載の「第2温度」に該当する。
【0086】
(第2LNGタンク昇温工程S900)
図1、
図2および
図6に示すように、第2LNGタンク昇温工程S900では、第2BOG昇温工程S800において昇温(例えば、加温ヒータ84の吐出側温度が「40℃」となるように加温)された「BOG」をLNGタンクTに「循環供給」する作業をおこなう。
これにより、LNGタンクTは、BOGライン30、仮設用配管80および吸込側払出ライン20Aを介した「BOG」の循環によって次第に昇温されていくこととなる。
【0087】
本実施形態では、LNGタンクT内の温度が「第3ホットアップ温度」(例えば、「底板」の温度:「15℃」)に達するまで、第2LNGタンク昇温工程S900が繰り返しおこなわれるように構成されている(第2LNGタンク昇温工程S900→温度測定工程S200→(第1温度監視工程S300で「Yes」→第2温度監視工程S400で「Yes」→)第3温度監視工程S700で「No」→第2BOG昇温工程S800→第2LNGタンク昇温工程S900→・・・)。なお、本実施形態のように、加温ヒータ84として蒸気式のものを用いた場合、加温媒体(蒸気)の供給量によっては、「BOG」が高温(例えば、「100℃」)となる可能性があるため、安全性を確保等する観点から、第2LNGタンク昇温工程S900を、例えば、日勤時間帯におこなうのが望ましい。
【0088】
(メタンパージ工程S1000)
図2に示すように、本実施形態では、第3温度監視工程S700において、LNGタンクT内の温度が「第3ホットアップ温度」に達したと判断されると、メタンパージ工程S1000がおこなわれる。
このメタンパージ工程S1000では、LNGタンクT内に存在するメタンガス(「BOG」)を窒素ガス(N
2)でパージ(窒素置換)する作業をおこなう。
具体的に、このメタンパージ工程S1000では、
図3に示すように、第1メタンパージ工程S1001をおこなうから始まるように構成されている。なお、上記窒素ガスと、第1メタンパージ工程S1001とが、それぞれ、特許請求の範囲に記載の「パージ用気体」と、「第1気化ガスパージ工程」とに該当する。
【0089】
(第1メタンパージ工程S1001)
第1メタンパージ工程S1001では、「LNG基地」内に一般に常備されている窒素ガス(例えば、容器に貯蔵された液体窒素を気化させたもの、以下、「構内窒素」と称す)を用いて、LNGタンクT内のメタンガスをパージする作業をおこなう。なお、上記「構内窒素」が特許請求の範囲に記載の「気化ガスパージ装置」に該当する。
具体的に、第1メタンパージ工程S1001では、
図1および
図7に示すように、
・吸込側払出ライン20Aに設けられる排出弁22と、「構内窒素」(図示省略)とを、流量計94が設けられた仮設用配管93で接続する、
・吸込側払出ライン20Aに設けられた流量制御弁21bが閉塞されていることを確認する、
・吸込側払出ライン20Aを介して「常温」の窒素ガスを、LNGタンクT内に送り込み、BOGラインの所定位置からメタンガスを排出する、
等の作業をおこなう。なお、この際、窒素ガスの供給量が、例えば、「50m
3N/h」以下となるように、流量計94を確認しながら、おこなうのが望ましい。
これにより、LNGタンクTでは、「常温」の窒素ガスによって、(若干)昇温されつつ、メタンガスがパージされていくこととなる。なお、上記「常温」が特許請求の範囲に記載の「第1パージ温度」に該当する。
【0090】
(第1パージ監視工程S1002)
図2に示すように、本実施形態では、第1メタンパージ工程S1001をおこなった後、第1パージ監視工程S1002がおこなわれるように構成されている。
具体的に、この第1パージ監視工程S1002では、第1メタンパージ工程S1001をおこなうことによって、予め定めた条件、例えば、
・LNGタンクTへの窒素ガスの供給時間が、所定時間(例えば、「50h」)以上となっている、といった条件や、
・LNGタンクT内でメタンガスと窒素ガスとが層状化されている、といった条件、
(以下、「第1パージ条件」と称す)が満たされたか否かを確認する作業をおこなう。なお、メタンガスおよび窒素ガスが層状化されているか否かの確認は、例えば、LNGタンクTの頂部に設けられた開閉弁(図示省略)から、公知の層状化確認治具(例えば、ヘキサプラグ)を挿入することによっておこなうことが可能である。
【0091】
本実施形態では、第1メタンパージ工程S1001をおこなうことによって「第1パージ条件」が満たされた後、次工程である第2メタンパージ工程S1003がおこなわれるように構成されている。なお、上記第2メタンパージ工程S1003が特許請求の範囲に記載の「第2気化ガスパージ工程」に該当する。
【0092】
(第2メタンパージ工程S1003)
図1、
図2および
図8に示すように、第2メタンパージ工程S1003では、液体窒素が積載されたタンクローリー車TTを用いて、LNGタンクT内のメタンガスをパージする作業をおこなう。なお、上記タンクローリー車TTが特許請求の範囲に記載の「気化ガスパージ装置」に該当する。
具体的に、第2メタンパージ工程S1003では、
・複数(本実施形態では「2台」)のタンクローリー車TTと、仮設用配管80とを、仮設用配管95で接続する、
・仮設用配管80に設けられた分岐開閉弁81cと、加温ヒータ84の下流側とを、流量計97が設けられた仮設用配管96で接続する
・タンクローリー車TTから送出された窒素ガスを、加温ヒータ84で所定の温度(例えば、「60℃」)となるように加温する、
・バイパス弁83を閉塞した状態で、加温された窒素ガスを、(例えば、窒素ガスの供給量が「70m
3/h」となるように流量計97で確認しつつ、)LNGタンクT内に送り込み、BOGライン30の所定位置(図示省略)からメタンを排出する、
等の作業をおこなう。なお、上記加温ヒータ84により加温された温度が特許請求の範囲に記載の「第2パージ温度」に該当する。
これにより、LNGタンクT内では、加温された窒素ガスによって、より昇温されつつ、メタンガスがパージされていくこととなる。
なお、本実施形態では、複数のタンクローリー車TTを用いているため、開閉弁98a,98bを順次切り換えることによって、窒素ガスを、途切れることなく、LNGタンクT内に送り込むことが可能となっている。
【0093】
(第2パージ監視工程S1004)
本実施形態では、第2メタンパージ工程S1003をおこなった後、第2パージ監視工程S1004がおこなわれるように構成されている。
具体的に、この第2パージ監視工程S1004では、第2メタンパージ工程S1003をおこなうことによって、予め定めた条件、例えば、
・LNGタンクTの頂部から「10m」付近のメタン濃度が所定の濃度(例えば、「VOL85%」)以下となっている、といった条件、
(以下、「第2パージ条件」と称す)が満たされているか否かを確認する作業をおこなう。なお、LNGタンクT内のガス濃度の計測は、例えば、LNGタンクTの頂部に設けられた開閉弁(図示省略)から、公知の層状化確認治具(例えば、ヘキサプラグ)を挿入することによっておこなうことが可能である。
【0094】
本実施形態では、第2メタンパージ工程S1003をおこなうことによって「第2パージ条件」が満たされた後、次工程である第3メタンパージ工程S1005がおこなわれるように構成されている。
【0095】
(第3メタンパージ工程S1005)
第3メタンパージ工程S1005では、LNGタンクTの頂部に設けられた開閉弁91を開放して、放散管90からメタンガス(「BOG」)を放散する作業をおこなう。
【0096】
(第3パージ監視工程S1006)
本実施形態では、第3メタンパージ工程S1005をおこなった後、第3パージ監視工程S1006がおこなわれるように構成されている。
具体的に、この第3パージ監視工程S1006では、第3メタンパージ工程S1005をおこなうことによって、予め定めた条件、例えば、放散管90から排出(排気)される気体のメタン濃度が所定の濃度(例えば、「LEL25%」)以下となっている、といった条件(以下、「第3パージ条件」と称す)を満たしているか否かを確認する作業をおこなう。
【0097】
本実施形態にかかるLNGタンクTの開放方法は、「第3パージ条件」が満たされた後、加温ヒータ84の稼動を停止するなどの作業をおこなうことで終了するように構成されている。
【0098】
以上のように、本実施形態では、
(a)LNGタンクTに貯蔵される「LNG」を排出(液抜き)する(LNG排出工程S100)、
(b)LNGタンクT内で自然発生した「BOG」をヒータ35や加温ヒータ84等を用いて昇温する(第1BOG昇温工程S500および第2BOG昇温工程S800)、
(c)昇温された「BOG」を用いて、LNGタンクTをホットアップする(第1LNGタンク昇温工程S600および第2LNGタンク昇温工程S900)、
(d)その後、LNGタンクT内に残留する「BOG」(メタンガス)を窒素ガスでパージする(メタンパージ工程S1000)、
といった手順を踏むことによりLNGタンクTの開放をおこなうことができるように構成されている。
【0099】
すなわち、本実施形態では、LNGタンクTをホットアップする際に用いられる媒体が、低温タンク内等において、いわば自然に発生する「BOG」であるため、「ホットアップ処理」をおこなう際に、それ用の媒体を別途準備する必要がない。
【0100】
このため、本実施形態では、メタンパージ工程S1000をおこなうときにはじめて、窒素ガスを準備すれば足りるため、その使用量を確実に低減することができ、その結果、コストの低減化を図ることが可能である。
【0101】
また、本実施形態では、
(a)LNGタンクTから排出された「BOG」を昇温する、
(b)昇温された「BOG」をLNGタンクT内に供給する、
といった手順を繰り返しおこなう((a)→(b)→(a)→(b)→・・・)ことで、LNGタンクT内を昇温(ホットアップ)することができるように構成されている。
【0102】
すなわち、本実施形態では、「ホットアップ処理」(第1LNGタンク昇温工程S600や第2LNGタンク昇温工程S900)をおこなうのにあたって、仮設用配管80や「BOG」を昇温するための加温ヒータ84等を設置するための作業(仮設工事)が発生するのみで、「LNG基地」に設けられる設備をほとんどそのまま利用することが可能である。
【0103】
したがって、本実施形態では、少なくとも「ホットアップ処理」が完了するまでの間、「LNG基地」内の既存の設備をほとんどそのまま利用することが可能なため、作業負担を確実に軽減することができ、その結果、LNGタンクTの開放までに要する時間(工期)を短縮することが可能である。
【0104】
これらをまとめると、本実施形態では、窒素ガスの使用量の低減化および作業負担の軽減化を図りつつ、LNGタンクTの開放までに要する時間(工期)を短縮することができるものといえる。
【0105】
また、本実施形態では、メタンガスを窒素ガスに置換するのにあたって、
(a)まず、「LNG基地」内に常備されている「構内窒素」を用いて、LNGタンクT内に常温の窒素ガスを、「第1パージ条件」(例えば、供給時間:「50h」)が満たされるまで、供給(例えば、供給量:「50m
3N/h」)する(第1メタンパージ工程S1001)、
(b)次に、タンクローリー車TTを用いて、LNGタンク内に所定温度(例えば、「60℃」)まで加温された窒素ガスを、「第2パージ条件」(例えば、LNGタンクT内のメタン濃度が所定の濃度(例えば、「VOL85%」)以下)が満たされるまで、供給(例えば、供給量:「70m
3/h」)する(第2メタンパージ工程S1003)、
(c)その後、LNGタンクTの頂部に設けられた放散管90からメタンガス(「BOG」)を放散して、例えば、メタン濃度を所定の濃度(例えば、「LEL25%」)まで低下させる(第3メタンパージ工程S1005)、
といった作業をおこなうように構成されている。
【0106】
このため、本実施形態では、
・タンクローリー車TTを用いた「パージ処理」を確実に減らすことが可能なため、コストの低減化を図ることができるのはもちろんのこと、
・「ホットアップ処理」で用いたライン(
図5、
図6および
図8等参照)を利用して、「パージ処理」をおこなっているため、作業負担の低減化を図りつつ、LNGタンクT内のメタンガスを効率よく窒素置換することができる。
【0107】
なお、本実施形態では、(「LNG」を貯蔵する)LNGタンクTを開放する場合を例にとって説明したが、本発明は、これに限られず、他の低温液体(例えば、LPGやアンモニア)が貯蔵されるタンクを開放する場合にも適用することが可能である。
【0108】
また、本実施形態では、窒素ガスを用いて「パージ処理」する場合を例にとって説明したが、他の不活性ガス(例えば、空気)を用いて「パージ処理」をおこなってよいことはいうまでもない。
【0109】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述および図面により、本発明は限定されるものではない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実例および運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれることはもちろんであることを付け加えておく。
【解決手段】LNGタンクTの開放システム1は、LNGタンクTに貯蔵された「LNG」を外部に排出する排出弁12b,22と、LNGタンクT内で生じた「BOG」を外部に排出するBOGライン30と、BOGライン30を介して排出された「BOG」を昇温する加温ヒータ84と、加温ヒータ84により昇温された「BOG」をLNGタンクTに供給する遠心式BOG圧縮機等と、LNGタンクT内の「BOG」をパージするタンクローリー車等と、を備えている。