特許第6593844号(P6593844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593844
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】投射光学系およびプロジェクタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 17/08 20060101AFI20191010BHJP
   G02B 13/16 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   G02B17/08 A
   G02B13/16
【請求項の数】13
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-248214(P2016-248214)
(22)【出願日】2016年12月21日
(65)【公開番号】特開2018-101104(P2018-101104A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2019年5月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227364
【氏名又は名称】株式会社nittoh
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】吉田 政史
(72)【発明者】
【氏名】松尾 恭彦
【審査官】 殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/005444(WO,A1)
【文献】 特開2015−215478(JP,A)
【文献】 特開2014−098750(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/103324(WO,A1)
【文献】 特開2015−200829(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/068269(WO,A1)
【文献】 特開2012−108267(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0267687(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0002802(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 − 17/08
G02B 21/02 − 21/04
G02B 25/00 − 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮小側の第1の像面から拡大側の第2の像面へ投射する投射光学系であって、
複数のレンズを含む第1の光学系であって、縮小側から入射した光により当該第1の光学系の内部の光軸の第1の側に結像される第1の中間像を当該第1の光学系よりも拡大側の前記光軸の第2の側に第2の中間像として結像する第1の光学系と、
前記第2の中間像よりも拡大側に位置する正のパワーの第1の反射面を含む第2の光学系とから構成され
前記第1の光学系は、最も拡大側に、縮小側から順番に配置された第1の接合レンズと、両凸の第1の正レンズとから構成された第1のレンズシステムを含み、
当該投射光学系の合成焦点距離faと、前記第1の反射面の曲率半径rmとが以下の条件を満たす、投射光学系。
40<|rm×fa|<80
5.8<|rm/fa|<7.9
ただし合成焦点距離faおよび曲率半径rmの単位はmmである。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の接合レンズは負の屈折力を備えている、投射光学系。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1の接合レンズの拡大側の面は、拡大側に凹の面である、投射光学系。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれかにおいて、
前記第1の反射面の曲率半径が以下の条件を満たす、投射光学系。
15.0<|rm|<21.5
ただし曲率半径rmの単位はmmである。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれかにおいて、
前記第1の光学系は、前記第1の中間像が跨ぐように形成される中間レンズと、
前記中間レンズを含め、前記中間レンズの縮小側に配置された第1のレンズ群と、
前記中間レンズの拡大側に配置された第2のレンズ群とを含む、投射光学系。
【請求項6】
請求項において、
前記第1の中間像は、前記光軸から離れると縮小側に近づくように傾いて形成される、投射光学系。
【請求項7】
請求項において、
前記第1の中間像の前記光軸に近い基端が前記中間レンズの外の拡大側に位置し、前記第1の中間像の前記光軸から離れた先端が前記中間レンズの外の縮小側に位置する、投射光学系。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれかにおいて、
当該投射光学系の合成焦点距離faと、前記第2のレンズ群の合成焦点距離f2とが以下の条件を満たす、投射光学系。
8<f2/fa<20
【請求項9】
縮小側の第1の像面から拡大側の第2の像面へ投射する投射光学系であって、
複数のレンズを含む第1の光学系であって、縮小側から入射した光により当該第1の光学系の内部の光軸の第1の側に結像される第1の中間像を当該第1の光学系よりも拡大側の前記光軸の第2の側に第2の中間像として結像する第1の光学系と、
前記第2の中間像よりも拡大側に位置する正のパワーの第1の反射面を含む第2の光学系とから構成され
前記第1の光学系は、前記第1の中間像が跨ぐように形成される中間レンズと、
前記中間レンズを含め、前記中間レンズの縮小側に配置された第1のレンズ群と、
前記中間レンズの拡大側に配置された第2のレンズ群とから構成され
前記第2のレンズ群は、最も拡大側に、縮小側から順番に配置された第1の接合レンズと、両凸の第1の正レンズとから構成された第1のレンズシステムを含み、
当該投射光学系の合成焦点距離faと、前記第2のレンズ群の合成焦点距離f2とが以下の条件を満たす、投射光学系。
8<f2/fa<20
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれかにおいて、
前記第1のレンズシステムに含まれるレンズの最大有効径は、前記第2のレンズ群に含まれるレンズの最大有効径よりも小さい、投射光学系。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかにおいて、
前記第1の光学系の最も縮小側のレンズの縮小側の面から前記第1の反射面までの前記光軸に沿った全長Laに対する前記第1の光学系の長さLeの比と、スローレシオTRとが以下の条件を満たす、投射光学系。
0.62<Le/La<0.72
0.17<TR<0.19
【請求項12】
請求項1ないし10のいずれかにおいて、
前記第1の光学系の最も縮小側のレンズの縮小側の面から前記第1の反射面までの前記光軸に沿った全長Laに対する前記第1の光学系から前記第1の反射面までの長さLfの比と、スローレシオTRとが以下の条件を満たす、投射光学系。
0.26<Lf/La<0.38
0.17<TR<0.19
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載の投射光学系と、
前記第1の像面に画像を形成する光変調器とを有する、プロジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタの投射光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、より短い距離における被投射面により良好な像を投射することが可能なより小型の投射光学系を提供する技術が開示されている。特許文献1には、物体と共役な第一の像を形成すると共に光軸を有する第一の光学系及び第一の像と共役な第二の像を被投射面に投射する第二の光学系を含む、投射光学系が開示されている。第一の像は、Im×Tr≦1.70の条件を満たす。ただし、Imは、第一の光学系の焦点距離によって規格化された第一の光学系の光軸の方向における第一の像の長さを表すと共に、Trは、投射光学系についてのスローレシオを表す。スローレシオは、水平方向におけるスクリーンに投射された画像の大きさに対する投射光学系の投射距離(第二の光学系の主点からスクリーンまで)の比である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−61604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スローレシオが小さく、より短い距離で投影することができる投射光学系であって、高画質の画像を投影できるとともに、コンパクトな投射光学系が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様の1つは、縮小側の第1の像面から拡大側の第2の像面へ投射する投射光学系であって、複数のレンズを含む第1の光学系を有する投射光学系である。第1の光学系は、縮小側から入射した光により当該第1の光学系の内部の光軸の第1の側に結像される第1の中間像を当該第1の光学系よりも拡大側の光軸の第2の側に第2の中間像として結像する。投射光学系は、さらに、第2の中間像よりも拡大側に位置する正の屈折力の第1の反射面を含む第2の光学系を有する。また、第1の光学系は、最も拡大側に、縮小側から順番に配置された第1の接合レンズと、両凸の第1の正レンズとから構成された第1のレンズシステムを含む。
【0006】
内部に第1の中間像を形成し、その第1の中間像を拡大側、すなわち、第1の反射面の入力側(縮小側)に第2の中間像として形成する第1の光学系を有する投射光学系は、第1の反射面の入力となる第2の中間像の光軸に沿った長さを短くできる。このため、屈折力が大きく、コンパクトな第1の反射面を配置することが可能となり、コンパクトで高倍率であって、スローレシオの小さな投射光学系を提供できる。
【0007】
さらに、光軸の第1の側に結像される第1の中間像を第1の光学系の拡大側に、光軸の第2の側、すなわち第1の中間像と光軸を挟んで反対側に第2の中間像を結像する第1の光学系において、その最も拡大側を、縮小側から順番に配置された第1の接合レンズと、両凸の第1の正レンズとから構成された第1のレンズシステムで構成することにより投射光学系の全長を短くできるとともに、スローレシオを小さくでき、さらに、投影される画質も改善できる。
【0008】
両面が正のパワーを持つ両凸の第1の正レンズを第1の光学系の最も拡大側、すなわち拡大側の端に配置し、それに隣接するように第1の接合レンズを配置することにより、第2の中間像を形成する光束が主に、第1の正レンズおよび第1の接合レンズからなる第1のレンズシステムの内部で光軸と交差するように設計できる。したがって、第2の中間像を第1の光学系の近くに結像でき、さらに、第1の光学系の拡大側の径が小さくなるので、パワーの大きな第1の反射面を第1の光学系の近くに配置できる。また、第2の中間像を形成する光束が、主に第1のレンズシステム内で光軸と交差するので、第2の中間像を形成する光束が第1の接合レンズおよび第1の正レンズを通過する位置が分散し、これらのレンズにより収差を補正しやすい状態となる。このため、第1の接合レンズを含めた第1のレンズシステムにより、色収差だけではなく、像面湾曲、非点収差も含めて補正しやすい。
【0009】
第1の接合レンズは負の屈折力を備えていることが望ましい。光束が第1のレンズシステム内で光軸と集中して交差するので収差補正に適している一方、公差感度(誤差感度、効き量)が高くなる。第1の接合レンズを負の屈折力として、第1の正レンズと異なるパワーを持たせることにより、これらのレンズの組み合わせによる公差感度を低減でき、より安定して画質の高い画像を投影できる。
【0010】
また、第1の接合レンズの拡大側の面は、拡大側に凹の面であってもよい。第1の正レンズの縮小側に凸の面と向き合う第1の接合レンズの拡大側の面を拡大側に凹(縮小側に凸)にすることにより、これらの面の曲率半径(曲率)は同じ方向を向き、面間隔が大きく変わることを抑制できる。したがって、これらのレンズの組み合わせによる公差感度を低減でき、より安定して画質の高い画像を投影できる。
【0011】
投射光学系の合成焦点距離faと、第1の反射面の曲率半径rmとが以下の条件(1)および(2)を満たしてもよい。
40<|rm×fa|<80 ・・・(1)
5.8<|rm/fa|<7.9・・・(2)
ただし合成焦点距離faおよび曲率半径rmの単位はmmである。条件(1)に示すように、第1の反射面のパワーと投射光学系のパワーとが十分に大きく、投射光学系のパワーに占める第1の反射面のパワーが条件(2)に示す範囲であることが、コンパクトで、かつスローレシオの小さな投射光学系を提供するのに適している。条件(1)の下限は45.5であってもよく、また、上限は60.0であってもよく、49.0であってもよい。また、条件(2)の下限は6.25であってもよく、上限は6.65であってもよい。
【0012】
特に、第1の反射面の曲率半径rmは以下の条件(3)を満たすことが望ましい。
15.0<|rm|<21.5・・・(3)
【0013】
第1の光学系は、第1の中間像が跨ぐように形成される中間レンズと、中間レンズを含め、中間レンズの縮小側に配置された第1のレンズ群と、中間レンズの拡大側に配置された第2のレンズ群とを含んでもよい。第1の中間像と重なるようにレンズを配置することにより、さらにコンパクトな投射光学系を提供できる。第1の中間像は、光軸から離れると縮小側に近づくように傾いて形成されてもよく、典型的には、第1の中間像の光軸に近い基端が中間レンズの外の拡大側に位置し、第1の中間像の光軸から離れた先端が中間レンズの外の縮小側に位置するものである。この投射光学系においては、第1の中間像は収差補正途上の像であり、中間レンズを跨ぐことによる影響は小さく、あったとしても補正することは容易である。条件(3)の下限は16.5であってもよく、上限は18.5であってもよい。
【0014】
投射光学系の合成焦点距離faと、第2のレンズ群の合成焦点距離f2とは以下の条件(4)を満たすことが望ましい。
8<f2/fa<20・・・(4)
ただし合成焦点距離faおよび合成焦点距離f2の単位はmmである。条件(4)の下限は10.0であってもよく、13.0であってもよい。また、上限は18.0であってもよく、15.0であってもよい。
【0015】
また、第1の光学系の最も拡大側に位置する第1のレンズシステムにおいては、光軸の周りに光束が集中するので、第1のレンズシステムの有効径は相対的に小さくてよく、コンパクトであるとともに、第1の反射面で反射された光束との干渉も容易に取り除ける。
【0016】
上記の投射光学系により、条件(5)に示すように、第1の光学系の最も縮小側のレンズの縮小側の面から第1の反射面までの光軸に沿った全長Laに対する第1の光学系の長さ(屈折光学系の有効長、最も縮小側のレンズの縮小側の面から最も拡大側のレンズの拡大側の面までの光軸に沿った距離)Leの比が0.6以上、さらには、0.62より大きいというように、全長に対して、収差補正に使用できる空間の割合が大きく、光学系全体を、コンパクトにできるとともに、条件(6)に示すようにスローレシオTRも0.19以下、さらには0.19より小さい光学系を提供できる。
0.62<Le/La<0.72・・・(5)
0.17<TR<0.19・・・(6)
なおスローレシオTRは、第1の反射面からスクリーンまでの距離Lmと、第1の像面の長辺方向(一般的には横方向)をスクリーンに投影した際のサイズLnとの比であり以下の式で定義される。
TR=Lm/Ln・・・(6−1)
【0017】
また、上記の投射光学系により、条件(7)に示すように、第1の光学系の最も縮小側のレンズの縮小側の面から第1の反射面までの光軸に沿った全長Laに対する第1の光学系から第1の反射面までの長さ(第1の光学系の最も拡大側のレンズの面から第1の反射面までの光軸に沿った長さ)Lfの比が0.35以下、さらには0.38より小さい、というように、全長に対して、屈折光学系と反射面との間の、収差補正に用いることができない空間の占める割合が小さく、光学系全体をコンパクトにできるとともに、条件(6)に示すようにスローレシオTRも0.19以下と小さい光学系を提供できる。
0.26<Lf/La<0.38・・・(7)
【0018】
本発明の異なる態様の1つは、上記の投射光学系と、第1の像面に画像を形成する光変調器とを有するプロジェクタである。プロジェクタは、第1の像面を照明する照明光学系を含んでいてもよい。
【0019】
第1の光学系は、第1の中間像が跨ぐように形成される中間レンズと、中間レンズを含め、中間レンズの縮小側に配置された第1のレンズ群と、中間レンズの拡大側に配置された第2のレンズ群とを含んでもよい。第1の中間像と重なるようにレンズを配置することにより、さらにコンパクトな投射光学系を提供できる。第1の中間像は、光軸から離れると縮小側に近づくように傾いて形成されてもよく、典型的には、第1の中間像の光軸に近い基端が中間レンズの外の拡大側に位置し、第1の中間像の光軸から離れた先端が中間レンズの外の縮小側に位置するものである。この投射光学系においては、第1の中間像は収差補正途上の像であり、中間レンズを跨ぐことによる影響は小さく、あったとしても補正することは容易である。
【0020】
中間レンズの焦点距離fmと、投射光学系の合成焦点距離faとが以下の条件(8)を満たしてもよい。中間レンズのパワーが大きすぎるとフォーカシングに対する効き量が大きすぎて調整しにくく、小さすぎるとフォーカシングに適さない。
10<|fm/fa|<30・・・(8)
ただし、焦点距離fmおよび合成焦点距離faの単位はmmである。
【0021】
第1の光学系は、中間レンズの縮小側に隣接して配置された前側のレンズを含み、フォーカシングのために移動する前側フォーカシングレンズ群と、中間レンズの拡大側に隣接して配置された後側のレンズを含み、フォーカシングのために移動する後側フォーカシングレンズ群とを含んでもよい。中間レンズがフォーカシングのために移動できる量が限定されるので、中間レンズの前後のレンズ群をフォーカシングのために移動することによりさらに鮮明な画像を表示できる。
【0022】
第1の光学系は、中間レンズおよび前側フォーカシングレンズ群を含み、中間レンズの縮小側に配置された第1のレンズ群と、後側フォーカシングレンズ群を含み、中間レンズの拡大側に配置された第2のレンズ群とを含んでもよい。第1のレンズ群は、前側フォーカシングレンズ群の縮小側に配置されたレンズを含み、フォーカシングの際に移動しない前側固定レンズ群を含む。第2のレンズ群は、後側フォーカシングレンズ群の拡大側に配置されたレンズを含み、フォーカシングの際に移動しない後側固定レンズ群を含む。
【0023】
中間レンズ、前側フォーカシングレンズ群および後側フォーカシングレンズ群は、それぞれ、標準状態から至近側にフォーカシングのために縮小側に移動し、標準状態から無限側にフォーカシングするために拡大側に移動する。前側フォーカシングレンズ群が、至近側から無限側にフォーカシングするために移動する距離Di1と、中間レンズが、至近側から無限側にフォーカシングするために移動する距離Di2と、後側フォーカシングレンズ群が、至近側から無限側にフォーカシングするために移動する距離Di3とは以下の条件(9)を満足するものであってもよい。
Di2<Di1<Di3・・・(9)
【0024】
また、前側フォーカシングレンズ群の合成焦点距離ffと、中間レンズの焦点距離fmと、後側フォーカシングレンズ群の合成焦点距離frとは以下の条件(10)を満足するものであってもよい。
fr<fm<ff・・・(10)
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】プロジェクタおよび投射光学系の構成の一例を示す図。
図2】レンズデータを示す図。
図3】各レンズおよびレンズ群の焦点距離を示す図。
図4】非球面データを示す図。
図5】フォーカシングの際の各群の位置を示す図。
図6】収差を示す図。
図7】異なるプロジェクタおよび投射光学系の構成の一例を示す図。
図8図7に示す投射光学系のレンズデータを示す図。
図9】各レンズおよびレンズ群の焦点距離を示す図。
図10】非球面データを示す図。
図11】フォーカシングの際の各群の位置を示す図。
図12】収差を示す図。
図13】異なるプロジェクタおよび投射光学系の構成の一例を示す図。
図14図13に示す投射光学系のレンズデータを示す図。
図15】各レンズおよびレンズ群の焦点距離を示す図。
図16】非球面データを示す図。
図17】フォーカシングの際の各群の位置を示す図。
図18】収差を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に、プロジェクタの一例を示している。プロジェクタ1は、縮小側2の光変調器(ライトバルブ)5の像面(第1の像面)5aから拡大側3のスクリーンまたは壁面(第2の像面)6へ投射する投射光学系10を含む。ライトバルブ5は、LCD、デジタルミラーデバイス(DMD)あるいは有機ELなどの画像を形成できるものであればよく、単板式であっても、各色の画像をそれぞれ形成する方式であってもよい。ライトバルブ5は発光タイプであってもよく、照明タイプであってもよい。照明タイプの場合は、プロジェクタ1はさらに照明光学系(不図示)を含む。スクリーン6は、壁面やホワイトボードなどであってもよく、プロジェクタ1はフロントプロジェクタであっても、スクリーンを含むリアプロジェクタであってもよい。
【0027】
投射光学系10は、複数のレンズを含む第1の光学系11と、正の屈折力の第1の反射面M1を含む第2の光学系12とを含む。第2の光学系12の反射面M1は、第1の光学系11から出力された光を反射して投影光19としてスクリーン6に投射する。第1の光学系11は、縮小側2から入射した光により第1の光学系11の内部に結像される第1の中間像IM1を第1の光学系11よりも拡大側3に第2の中間像IM2として結像する屈折光学系(レンズシステム)である。本例においては、第1の中間像IM1は、光軸7の、図面の上側(第1の側)に結像され、第2の中間像IM2は、第1の中間像IM1に対して光軸7の反対側(図面の下側、第2の側)に結像される。
【0028】
第1の光学系11は、縮小側(入力側)2に配置された、全体として正のパワーの第1のレンズ群(第1の屈折光学系)G1と、第1のレンズ群G1の拡大側(出力側)3に配置された、全体として正のパワーの第2のレンズ群(第2の屈折光学系)G2とを含む。第1のレンズ群G1の最も拡大側3のレンズは第1の中間像IM1が跨ぐように形成される中間レンズL9であり、この中間レンズL9と第2のレンズ群G2とにより、第1の中間像IM1を第1の反射面(ミラー)M1の縮小側2に第2の中間像IM2として結像する。正のパワーのミラーM1は、第2の中間像IM2をスクリーン6に拡大投影する。
【0029】
図2図3および図4に、投射光学系10の各エレメントのデータを示している。図2において、Sはエレメントがレンズの場合の面番号、Riは縮小側2から順に並んだ各エレメント(レンズの場合は各レンズ面)の曲率半径(mm)、diは縮小側2から順に並んだ各エレメントの面の間の距離(間隔、mm)、Diは各エレメントの有効径(直径、mm)、屈折率(d線)、アッベ数(d線)を示している。図3は、各レンズおよび複数のレンズの組み合わせの焦点距離(mm)を示している。図4は各エレメントの面の中の、非球面の面番号と、非球面データを示している。非球面は、Xを光軸方向の座標、Yを光軸と垂直方向の座標、光の進行方向を正、Rを近軸曲率半径とすると、図2に示した係数Riと図4に示した係数K、A、B、C、D、およびEを用いて次式で表わされる。なお、「En」は、「10のn乗」を意味する。以下の各実施例においても同様である。
X=(1/Ri)Y/[1+{1−(1+K)(1/Ri)}1/2]
+AY+BY+CY+DY+EY10
【0030】
投射光学系10の第1の光学系(レンズシステム、屈折光学系)11は、縮小側2から、入射側のガラスブロックCGと、第1のレンズ群G1と、第2のレンズ群G2とを含む。
【0031】
第1のレンズ群G1は、縮小側(ライトバルブ側)2より、両凸の正レンズL1と、絞りSと、縮小側2に凸の負のメニスカスレンズL2と、両凹の負レンズL3と、両凸の正レンズL4と、両凸の正レンズL5と、拡大側3に凸の負のメニスカスレンズL6と、縮小側2に凸の正のメニスカスレンズL7と、拡大側3に凸の負のメニスカスレンズL8と、縮小側2に凸の正のメニスカスレンズL9とを含む9枚構成である。レンズL3およびL4は接合され、接合レンズ(バルサムレンズ)B1を構成し、レンズL5およびL6は接合され、接合レンズB2を構成している。接合レンズB1は、軸上色収差の補正に好適であり、接合レンズB2は、倍率色収差の補正に好適である。
【0032】
第2のレンズ群G2は、縮小側2より、縮小側2に凸の正のメニスカスレンズL10と、両凹の負レンズL11と、両凸の正レンズL12と、両凸の正レンズL13と、両凹の負レンズL14と、両凸の正レンズL15とを含む6枚構成である。レンズL13およびL14は接合され、接合レンズB3を構成している。接合レンズB3は、軸上色収差および倍率色収差の補正に好適である。
【0033】
両凸の正レンズL15は、第1の光学系11の最も拡大側3のレンズであり、第1の正レンズL15となる。また、接合レンズB3は、第1の正レンズL15に対して空気間隔のみを隔てて縮小側2に配置された第1の接合レンズB3となる。したがって、第1の光学系11は、最も拡大側3に、第1の接合レンズB3と、第1の正レンズL15とから構成された第1のレンズシステムLS1を含む。
【0034】
投射光学系10はインターフォーカスタイプであり、第1のレンズ群G1のレンズL7およびL8が第1のフォーカシング群LF1として、焦点調整のために一体で移動し、第1のレンズ群G1のレンズL9(中間レンズ)が第2のフォーカシング群LF2として、焦点調整のために移動し、さらに、第2のレンズ群G2のレンズL10、L11およびL12が第3のフォーカシング群LF3として、焦点調整のために一体で移動する。
【0035】
第1のフォーカシング群LF1は、中間レンズL9の縮小側2に隣接して配置された前側のレンズL8を含み、フォーカシングのために移動する前側フォーカシングレンズ群である。第3のフォーカシング群LF3は、中間レンズL9の拡大側3に隣接して配置された後側のレンズL10を含み、フォーカシングのために移動する後側フォーカシングレンズ群である。第1のレンズ群G1は、第2のフォーカシング群LF2と、その前側のフォーカシングレンズ群である第1のフォーカシング群LF1と、その縮小側2に配置されたレンズL1〜L6を含み、フォーカシングの際に移動しない前側固定レンズ群FF1とを含む。第2のレンズ群G2は、後側フォーカシングレンズ群LF3と、その拡大側3に配置されたレンズL13〜L15を含み、フォーカシングの際に移動しない後側固定レンズ群である第1のレンズシステムLS1とを含む。
【0036】
第1の中間像IM1は、光軸7から離れると縮小側2に近づくように傾いて形成される。その第1の中間像IM1が跨ぐように中間レンズL9が設けられている。このように、第1の中間像IM1と中間レンズL9とを重ねて配置することにより、第1の光学系11の全長Laに対して数多くのレンズ、本例においては15枚構成(レンズL1〜L15)を配置できる。このため、投射光学系1の全長を短くできるとともに、スローレシオTRを小さくでき、さらに、投影される画質も改善できる。また、第1の中間像付近のレンズ径が増大することを抑制でき、この点でも小型化に適している。
【0037】
中間レンズL9は、フォーカシングのために、標準状態Pos1、至近側Pos2および無限側Pos3へ移動するレンズである。第1の中間像IM1の前後で光束8は像高(光軸7から離れた方向)に対応して分散する。第1の中間像IM1が跨いで形成される中間レンズL9はフォーカシングに対する効き量が大きく、中間レンズL9を移動することはフォーカシングに適している。
【0038】
この光学系11においては、第1の中間像IM1の光軸7に近い基端IM1−bが中間レンズL9の外の拡大側3、すなわち、レンズL9の拡大側3の面S16の外の拡大側3に位置する。また、第1の中間像IM1の光軸7から離れた先端IM1−tが中間レンズL9の外の縮小側2、すなわち、レンズL9の縮小側2の面S15の縮小側2に位置する。中間レンズL9(第2のフォーカシング群LF2)は、フォーカシングのために先端IM1−tと基端IM1−bとの間で移動する。第1の中間像IM1の基端IM1−bが中間レンズL9に入るほど移動すると、基端IM1−bの側は像が鮮明であり、中間レンズL9の表面にゴミなどが付着している場合にその影響を受けやすくなる。一方、第1の中間像IM1の先端IM1−tが中間レンズL9に入るほど中間レンズL9が移動すると、画像の光軸7から離れた拡大率の大きな周辺部分の収差補正が難しくなる。
【0039】
本例の中間レンズL9は、第1の中間像IM1と逆方向に傾いた、縮小側2に凸の正のメニスカスレンズである。中間レンズL9の縮小側2に隣接して配置されたレンズ(前側のレンズ)L8は、拡大側3に凸の負のメニスカスであり、中間レンズL9と前側のレンズL8とのレンズ間隔は光軸7から離れると広がり、これらのレンズL8およびL9の組み合わせは台形補正に適している。
【0040】
図5に、ミラーM1からスクリーン6までの距離d28が標準状態(Pos1)と、至近側(Pos2)と、無限側(Pos3)とにおける第1のフォーカシング群LF1、第2のフォーカシング群LF2および第3のフォーカシング群LF3の位置関係を示す距離d10、d14、d16およびd22を示している。距離d10はレンズL6の拡大側3の面S10とレンズL7の縮小側2の面S11との距離を示し、距離d14はレンズL8の拡大側3の面S14とレンズL9の縮小側2の面S15との距離を示し、距離d16はレンズL9の拡大側3の面S16とレンズL10の縮小側2の面S17との距離を示し、距離d22はレンズL12の拡大側3の面S22とレンズL13の縮小側2の面S23との距離を示す。以下の各実施例においても同様である。
【0041】
これらのフォーカシング群LF1、LF2およびLF3は、至近側から標準状態をへて無限側に焦点距離、すなわち、ミラーM1とスクリーン6との距離が増加するに連れて、縮小側2から拡大側3に、それぞれ移動し、移動量がそれぞれの群により異なる。前側フォーカシングレンズ群である第1のフォーカシング群LF1は、至近側Pos2から無限側Pos3にフォーカシングする際に拡大側3へ距離Di1だけ単調に移動する。すなわち、第1のフォーカシング群LF1は、標準状態Pos1に対しては、至近側Pos2では縮小側2へ移動し、無限側Pos3では拡大側3へ移動する。
【0042】
中間レンズを含む第2のフォーカシング群LF2も同様であり、フォーカシングするために距離Di2だけ、至近側Pos2から無限側Pos3に、標準状態Pos1を挟んで、縮小側2から拡大側3へ単調に移動する。後側フォーカシングレンズ群である第3のフォーカシング群FL3も同様であり、フォーカシングするために、至近側Pos2から無限側Pos3に、標準状態Pos1を挟んで、縮小側2から拡大側3へ単調に、距離Di3だけ移動する。距離Di1、Di2、Di3はそれぞれ以下のように算出される。
Di1=Pos3−Pos2(面s10)=0.26mm
Di2=Di1+(Pos3−Pos2(面s14))=0.05mm
Di3=Di1+Di2+(Pos3−Pos2(面s16))=0.37mm
・・・(11)
【0043】
最も移動量が小さいのは、第1の中間像IM1が跨ぐように形成され、フォーカシングの際に効き量(公差感度)の大きな中間レンズL9を含む第2のフォーカシング群LF2である。これら3つのフォーカシング群LF1、FL2およびLF3は、第1の中間像IM1の近傍に配置されたレンズからなる群であり、第1の中間像IM1の前後の光束が比較的光軸と平行にあるいは分散して通過する。このため、これらのフォーカシング群LF1、LF2およびLF3に含まれる各レンズを動かし、光線が分散して通過する位置を微調整し、それにより収差補正を微調整しやすい。このため、ミラーM1とスクリーン6との距離による収差の変動を効率よく補正できる。
【0044】
図6(a)に、標準状態における球面収差と非点収差と歪曲収差とを示し、図6(b)に、標準状態における各像高における横収差図(コマ収差)を示している。本図に示すように、コマ収差を含む諸収差が良好に補正されており、鮮明な像をスクリーン6に投影することができる。なお、図6(a)の球面収差および図6(b)コマ収差は、波長650nm(破線)と、波長550nm(実線)と、波長450nm(一点鎖線)とを示し、非点収差およびコマ収差は、タンジェンシャル光線(T)およびサジタル光線(S)をそれぞれ示している。
【0045】
投射光学系10の主なパラメータは以下の通りである。
倍率:136.0
全体の合成焦点距離(fa):2.70mm
F値:2.5
最大画角(半画角):77.66度
イメージサークル(第1の像面、直径):24.05mm
第1の反射面M1の曲率半径(|rm|、条件(3)):17.25mm
第2のレンズ群の合成焦点距離(f2):37.55mm
中間レンズL9の焦点距離(fm):42.00mm
第1のフォーカシング群LF1の焦点距離(ff):222.06
第3のフォーカシング群LF3の焦点距離(fr):22.92
全長(La):195.2mm
第1の光学系の有効長(Le):134.3mm
第1の光学系から第1の反射面までの距離(Lf):60.94mm
第1の反射面からスクリーンまでの距離(Lm):380.00mm
スクリーンに投影した際の横方向の長さ(Ln):2077mm
条件(1)(|rm×fa|):46.6
条件(2)(|rm/fa|):6.39
条件(4)(f2/fa):13.9
条件(5)(Le/La):0.69
条件(6)(TR):0.183
条件(7)(Lf/La):0.31
条件(8)(|fm/fa|):15.6
【0046】
なお、投射光学系10の全長Laは、最も縮小側のレンズL1の縮小側の面S1から第1の反射面M1までの光軸7に沿った距離を示し、第1の光学系11の有効長Leは、最も縮小側2のレンズL1の縮小側2の面S1から最も拡大側3のレンズL15の拡大側3の面S27までの光軸7に沿った距離を示し、第1の光学系11から第1の反射面M1までの距離Lfは、最も拡大側3のレンズL15の拡大側3の面S27から第1の反射面M1までの光軸7に沿った距離を示す。
【0047】
この投射光学系10は、第1の光学系11が、縮小側2から入射した光により第1の光学系11の内部の光軸7の第1の側に結像される第1の中間像IM1を、第1の光学系11よりも拡大側3の光軸7の反対側(第2の側)に第2の中間像IM2として結像し、第2の中間像IM2よりも拡大側3に位置する正の屈折力の第1の反射面M1を含む第2の光学系12よりスクリーン6に拡大投影する。内部に第1の中間像IM1を形成し、その第1の中間像IM1を拡大側3、すなわち、第1の反射面M1の入力側(縮小側)2に第2の中間像IM2として形成する第1の光学系11を有する投射光学系10は、第1の反射面M1の入力となる第2の中間像IM2の光軸7に沿った長さを短くできる。このため、屈折力が大きく、コンパクトな第1の反射面M1を配置することが可能となり、コンパクトで高倍率であって、スローレシオTRの小さな投射光学系10を提供できる。
【0048】
さらに、第1の光学系11は、最も拡大側3に、縮小側2から順番に配置された第1の接合レンズB3と、両凸の第1の正レンズL15とから構成された第1のレンズシステムLS1を含む。両面が正のパワーを持ち、両面で比較的強いパワーを発揮できる両凸の第1の正レンズL15を、第1の光学系11の最も拡大側3、すなわち拡大側3の端に配置することにより、第2の中間像IM2を形成する光束8が主に、第1の正レンズL15および第1の接合レンズB3からなる第1のレンズシステムLS1の内部で光軸7と交差するように設計できる。
【0049】
すなわち、第1の光学系11を、光軸7の第1の側に結像される第1の中間像IM1から、光軸7の反対側に形成される第2の中間像IM2に至る光束8が、第1の光学系11の拡大側3の端に配置された第1のレンズシステムLS1で主に光軸7と交差するように設計できる。このため、光束8は、第1のレンズシステムLS1で光軸7の周りに集まり、中心光のみならず、周辺光も含めて、レンズ径の小さな第1の接合レンズB3と、両凸の第1の正レンズL15とを通過する。したがって、第1のレンズシステムLS1に含まれるレンズL13〜L15により効率良く収差が補正された第2の中間像IM2を第1の光学系11の拡大側3の近傍に、比較的小さいサイズで形成できる。
【0050】
さらに、投射光学系10の全長Laに対して屈折光学系である第1の光学系11が占める割合Le/Laを大きくでき、本例の第1の光学系11においては15枚のレンズL1〜L15を配置できる。このため、投射光学系10の全長Laを短くできるとともに、スローレシオTRを小さくでき、さらに、スクリーン6に投影される画質も改善できる。本例の投射光学系10においては、条件(5)、(6)および(7)、さらに条件(8)〜(10)をそれぞれ満たしており、全長Laが短い投射光学系10でありながら、屈折光学系である第1の光学系11が占める割合を5割、またはそれ以上にすることが可能となっており、収差が良好に補正された画像を、スローレシオTRが0.19以下(0.19より小さい)というように、投射光学系10およびそれを含むプロジェクタ1をスクリーン6の近くに配置して、投影できる。
【0051】
したがって、投射光学系10においては、第2の中間像IM2を第1の光学系11の近くに結像でき、さらに、第1の光学系11の拡大側3の径が小さくなるので、パワーの大きな(曲率半径rmが小さく、焦点距離の絶対値が短い)第1の反射面M1を第1の光学系11の近くに配置できる。本例の投射光学系10においては、第1の反射面M1の曲率半径rmが条件(1)、(2)および(3)を満たしており、投射光学系10の全体のパワーに占める第1の反射面M1のパワーが十分に大きく、さらに、第1の反射面M1自身のパワーも十分に大きな値となっている。
【0052】
第1のレンズシステムLS1のレンズL13〜L15のうち、最大有効径のレンズは、最も縮小側のレンズL13であり、その縮小側の面S23の有効径D23は17mmである。これに対し、第2のレンズ群G2の最大有効径のレンズは、最も縮小側のレンズL10であり、その縮小側の面S17の有効径D17は25.3mmである。したがって、第2のレンズ群G2において、最も拡大側3に配置される第1のレンズシステムLS1の径(有効径)が小さく、第1の反射面M1からスクリーン6に向かって投影される投影光19との干渉を防止でき、コンパクトで大きな画像を投影できるプロジェクタ1を提供できる。
【0053】
また、第2の中間像IM2を形成する光束8が、主に第1のレンズシステムLS1内で光軸7と交差するので、第2の中間像IM2を形成する光束8が第1の接合レンズB3および第1の正レンズL15を通過する位置が光軸7を中心として分散し、これらのレンズL13〜L15により収差を補正しやすい状態となる。このため、第1の接合レンズB3を含めた第1のレンズシステムLS1により、色収差だけではなく、像面湾曲、非点収差も含めて良好に補正できる。
【0054】
さらに、第1の光学系11において、第1の中間像IM1から第2の中間像IM2を形成する第2のレンズ群G2のパワーを、条件(4)を満たすように選択することにより、第1の反射面M1が強いパワーを備えている投射光学系10において、第2のレンズ群G2に収差補正のために十分なパワーを確保するとともに、第1のレンズ群G1にも収差補正のためのパワーを持たせることができる。したがって、第1の光学系11において、バランスのとれた収差補正が可能となり、高画質の画像をスクリーン6に投影可能な投射光学系10およびプロジェクタ1を提供できる。
【0055】
また、第1のレンズシステムLS1の第1の接合レンズB3は負の屈折力を備えている。光束8が第1のレンズシステムLS1内で光軸7と集中して交差するので収差補正に適している一方、各レンズによる収差補正に対する公差感度(誤差感度、効き量)が高くなる。すなわち、この投射光学系10は、第1の光学系11の中で、第1のレンズシステムLS1の各レンズの製造公差および組み立て時の公差により、収差補正能力に差が出やすい設計となる。このため、第1の接合レンズB3を負の屈折力として、第1の正レンズL15と異なるパワーを持たせることにより、第1のレンズシステムLS1の公差感度を低減でき、より安定して画質の高い画像を投影できる投射光学系10を提供できる。
【0056】
また、第1のレンズシステムLS1の両凸の第1の正レンズL15の縮小側2に凸の面S26と向き合う、第1の接合レンズB3の拡大側3の面S25は、拡大側3に凹の面となっている。これらの面S25とS26とは、曲率半径(曲率)が同じ方向であり、これらの面S25と面S26との間隔、すなわち、光軸7に垂直な方向の間隔が大きく変わらない。したがって、第1のレンズシステムLS1を構成するレンズL13〜L15の組み合わせによる公差感度をさらに低減でき、より安定して画質の高い画像を投影する投射光学系10を提供できる。
【0057】
さらに、第1の光学系11は、第1の中間像IM1が跨ぐように形成される中間レンズL9を備えている。第1の中間像IM1と重なるように中間レンズL9を配置することにより、第1の光学系11のスペース(有効長Le)をさらに有効に利用でき、さらにコンパクトな投射光学系10を提供できる。第1の中間像IM1は、光軸7から離れると縮小側2に近づくように傾いて形成されている。すなわち、第1の中間像IM1の光軸7に近い、光束8の中心光となる基端が中間レンズL9の外の拡大側3に位置し、第1の中間像IM1の光軸7から離れた、光束8の周辺光となる先端が中間レンズL9の外の縮小側2に位置する。
【0058】
この投射光学系10においては、第1の中間像IM1は、第2のレンズ群G2によりさらに収差補正される像であり、第1の中間像IM1が中間レンズL9を跨ぎ、中間レンズL9の表面の影響を受けることがあっても、第2のレンズ群G2により補正することが可能である。したがって、第1の中間像IM1が中間レンズL9を跨ぐことで、第1の光学系11の有効長Leに、より多くのレンズを配置し、それによる収差補正能力の向上を優先させることができる。また、第1の中間像IM1が縮小側2に傾いて、投射光学系10からより遠くに、拡大して投影される第1の中間像IM1の周辺光については、第2のレンズ群G2に加えて、中間レンズL9を用いて収差補正を行うことができる。したがって、より高画質の画像をスクリーン6に投影する投射光学系10およびプロジェクタ1を提供できる。
【0059】
なお、条件(1)の下限は45.5であってもよく、上限は49.0であってもよい。条件(2)の下限は6.25であってもよく、上限は6.65であってもよい。レンズL8のサグ量を少なくすることができ、レンズL8を製造し易くなる。また、条件(3)の下限は16.5であってもよく、上限は18.5であってもよい。また、条件(4)の下限は13.0であってもよく、上限は15.0であってもよい。これらの条件によってもレンズL8のサグ量を少なくすることができ、レンズL8を製造し易くなる。条件(1)および条件(2)と、条件(3)と、条件(4)との少なくとも2つの条件の組合せをとることによりレンズL8のサグ量をより少なくすることができ、レンズL8を製造し易くなる。
【0060】
図7に、プロジェクタの他の例を示している。このプロジェクタ1も、縮小側2の光変調器(ライトバルブ)5の像面(第1の像面)5aから拡大側3のスクリーンまたは壁面(第2の像面)へ投射する投射光学系10を含む。投射光学系10は、複数のレンズを含む第1の光学系11と、正の屈折力の第1の反射面M1を含む第2の光学系12とを含み、第1の光学系11は、縮小側2から入射した光により第1の光学系11の内部に結像される第1の中間像IM1を第1の光学系11よりも拡大側3に第2の中間像IM2として結像し、第1の反射面M1が第2の中間像IM2を第2の像面へ映像(最終的な画像)として投影する。
【0061】
第1の光学系11は、上記の例と同様に、縮小側(入力側)2に配置された第1のレンズ群(第1の屈折光学系)G1と、第1のレンズ群G1の拡大側(出力側)3に配置された第2のレンズ群(第2の屈折光学系)G2とを含む。第1のレンズ群G1は、最も拡大側3に、第1の中間像IM1が跨ぐように形成される中間レンズL9を含む。
【0062】
図8図9および図10に、投射光学系10の各エレメントのデータを示している。第1のレンズ群G1はレンズL1〜L9を含み、それぞれのレンズの基本的な構成は、図1に示した投射光学系10と共通する。第2のレンズ群G2はレンズL10〜L15を含み、それぞれのレンズの基本的な構成は、レンズL11が拡大側3に凸の負のメニスカスレンズであり、レンズL12が拡大側3に凸の正のメニスカスレンズであることを除き、共通する。したがって、第1のレンズシステムLS1は、最も拡大側3に、第1の接合レンズB3と、第1の正レンズL15とから構成された第1のレンズシステムLS1を含む。この投射光学系10もインターフォーカスタイプであり、フォーカシング群LF1〜LF3を含む。
【0063】
図11に、標準状態(Pos1)と、至近側(Pos2)と、無限側(Pos3)とにおけるフォーカシング群LF1〜LF3の位置関係を示す距離d10、d14、d16およびd22を示している。フォーカシング群LF1、LF2およびLF3は、至近側から標準状態をへて無限側に焦点距離、すなわち、ミラーM1とスクリーン6との距離が増加するに連れて、縮小側2から拡大側3に、それぞれ移動し、移動量がそれぞれの群により異なる。最も移動量が小さいのは、第1の中間像IM1が跨ぐように形成され、フォーカシングの際に効き量(公差感度)の大きな中間レンズL9を含む第2のフォーカシング群LF2である。
【0064】
図12(a)に、標準状態における球面収差と非点収差と歪曲収差とを示し、図12(b)に、標準状態における各像高における横収差図を示している。本図に示すように、本例の投射光学系10においても、コマ収差を含む諸収差が良好に補正されており、鮮明な像をスクリーン6に投影することができる。
【0065】
この実施例の投射光学系10の主なパラメータは以下の通りである。
倍率:137.4
全体の合成焦点距離(fa):2.70mm
F値:2.5
最大画角(半画角):77.75度
イメージサークル(第1の像面、直径):24.05mm
第1の反射面M1の曲率半径(|rm|、条件(3)):15.8mm
第2のレンズ群の合成焦点距離(f2):47.29mm
中間レンズL9の焦点距離(fm):58.53mm
第1のフォーカシング群LF1の焦点距離(ff):111.12
第3のフォーカシング群LF3の焦点距離(fr):22.25
全長(La):195.4mm
第1の光学系の有効長(Le):134.4mm
第1の光学系から第1の反射面までの距離(Lf):60.94mm
第1の反射面からスクリーンまでの距離(Lm):380.00mm
スクリーンに投影した際の横方向の長さ(Ln):2077mm
移動距離Di1:0.24mm
移動距離Di2:0.08mm
移動距離Di3:0.39mm
条件(1)(|rm×fa|):42.7
条件(2)(|rm/fa|):5.85
条件(4)(f2/fa):17.5
条件(5)(Le/La):0.69
条件(6)(TR):0.183
条件(7)(Lf/La):0.31
条件(8)(|fm/fa|):21.68
第1のレンズシステムLS1の最大有効径:18.10mm(L13の面S23)
第2のレンズ群G2の最大有効径:25.10mm(L10の面S17)
【0066】
この投射光学系10も、第1の光学系11が、内部の光軸7の第1の側に結像される第1の中間像IM1を、第1の光学系11よりも拡大側3の光軸7の反対側(第2の側)に第2の中間像IM2として結像し、第1の反射面M1が第2の中間像IM2をスクリーン6に拡大投影するタイプである。さらに、第1の光学系11は、最も拡大側3に、縮小側2から順番に配置された第1の接合レンズB3と、両凸の第1の正レンズL15とから構成された第1のレンズシステムLS1を含む。したがって、第1のレンズシステムLS1に含まれるレンズL13〜L15により効率良く収差が補正された第2の中間像IM2を第1の光学系11の拡大側3の近傍に、比較的小さいサイズで形成でき、さらに、第1の光学系11の拡大側3の径が小さくなるので、パワーの大きな(曲率半径rmが小さく、焦点距離の絶対値が短い)第1の反射面M1を第1の光学系11の近くに配置できる。
【0067】
本例の投射光学系10においても、第1の反射面M1の曲率半径rmが条件(1)、(2)および(3)を満たしており、投射光学系10の全体のパワーに占める第1の反射面M1のパワーが十分に大きく、さらに、第1の反射面M1自身のパワーも十分に大きな値となっている。また、第2のレンズ群G2において、最も拡大側3に配置される第1のレンズシステムLS1の径(有効径)が小さく、第1の反射面M1からスクリーン6に向かって投影される投影光19との干渉を防止でき、コンパクトで大きな画像を投影できるプロジェクタ1を提供できる。
【0068】
本例の投射光学系10においても、条件(5)、(6)および(7)を満たしており、全長Laが短い投射光学系10でありながら、屈折光学系である第1の光学系11が占める割合を5割、またはそれ以上にすることが可能となっており、収差が良好に補正された画像を、スローレシオTRが0.19以下というように、投射光学系10およびそれを含むプロジェクタ1をスクリーン6の近く配置して、投影できる。さらに、この投射光学系10は条件(8)〜(10)も満たす。
【0069】
また、第1の光学系11において、第2のレンズ群G2のパワーが、条件(4)を満たすように選択されており、第2のレンズ群G2に収差補正のために十分なパワーを確保するとともに、第1のレンズ群G1にも収差補正のためのパワーを持たせることができる。したがって、この第1の光学系11においても、バランスのとれた収差補正が可能となり、高画質の画像をスクリーン6に投影可能な投射光学系10およびプロジェクタ1を提供できる。
【0070】
また、第1のレンズシステムLS1の第1の接合レンズB3は負の屈折力を備え、拡大側3の面S25は、拡大側3に凹の面となっている。したがって、第1のレンズシステムLS1を構成するレンズL13〜L15の組み合わせによる公差感度を低減でき、より安定して画質の高い画像を投影する投射光学系10を提供できる。
【0071】
さらに、第1の光学系11も、第1の中間像IM1が跨ぐように形成される中間レンズL9を備えており、第1の光学系11の有効長Leをさらに有効に利用することにより、より高画質の画像をスクリーン6に投影する、よりコンパクトな投射光学系10およびプロジェクタ1を提供できる。
【0072】
図13に、プロジェクタの他の例を示している。このプロジェクタ1も、縮小側2の光変調器(ライトバルブ)5の像面(第1の像面)5aから拡大側3のスクリーンまたは壁面(第2の像面)へ投射する投射光学系10を含む。投射光学系10は、複数のレンズを含む第1の光学系11と、正の屈折力の第1の反射面M1を含む第2の光学系12とを含み、第1の光学系11は、縮小側2から入射した光により第1の光学系11の内部に結像される第1の中間像IM1を第1の光学系11よりも拡大側3に第2の中間像IM2として結像し、第1の反射面M1が第2の中間像IM2を第2の像面へ映像(最終的な画像)として投影する。
【0073】
第1の光学系11は、上記の各例と同様に、縮小側(入力側)2に配置された第1のレンズ群(第1の屈折光学系)G1と、第1のレンズ群G1の拡大側(出力側)3に配置された第2のレンズ群(第2の屈折光学系)G2とを含む。第1のレンズ群G1は、最も拡大側3に、第1の中間像IM1が跨ぐように形成される中間レンズL9を含む。
【0074】
図14図15および図16に、投射光学系10の各エレメントのデータを示している。第1のレンズ群G1はレンズL1〜L9を含み、それぞれのレンズの基本的な構成は、図1に示した投射光学系10と共通する。第2のレンズ群G2はレンズL10〜L15を含み、それぞれのレンズの基本的な構成は、図1に示した投射光学系10と共通する。この第1のレンズシステム11も、最も拡大側3に、第1の接合レンズB3と、第1の正レンズL15とから構成された第1のレンズシステムLS1を含む。また、この投射光学系10もインターフォーカスタイプであり、フォーカシング群LF1〜LF3を含む。
【0075】
図17に、標準状態(Pos1)と、至近側(Pos2)と、無限側(Pos3)とにおけるフォーカシング群LF1〜LF3の位置関係を示す距離d10、d14、d16およびd22を示している。フォーカシング群LF1、LF2およびLF3は、至近側から標準状態をへて無限側に焦点距離、すなわち、ミラーM1とスクリーン6との距離が増加するに連れて、縮小側2から拡大側3に、それぞれ移動し、移動量がそれぞれの群により異なる。最も移動量が小さいのは、第1の中間像IM1が跨ぐように形成され、フォーカシングの際に効き量(公差感度)の大きな中間レンズL9を含む第2のフォーカシング群LF2である。
【0076】
図18(a)に、標準状態における球面収差と非点収差と歪曲収差とを示し、図18(b)に、標準状態における各像高における横収差図を示している。本図に示すように、本例の投射光学系10においても、コマ収差を含む諸収差が良好に補正されており、鮮明な像をスクリーン6に投影することができる。
【0077】
この実施例の投射光学系10の主なパラメータは以下の通りである。
倍率:136.8
全体の合成焦点距離(fa):2.70mm
F値:2.5
最大画角(半画角):77.73度
イメージサークル(第1の像面、直径):24.05mm
第1の反射面M1の曲率半径(|rm|、条件(3)):21.2mm
第2のレンズ群の合成焦点距離(f2):27.45mm
中間レンズL9の焦点距離(fm):44.11mm
第1のフォーカシング群LF1の焦点距離(ff):273.73
第3のフォーカシング群LF3の焦点距離(fr):22.70
全長(La):195.3mm
第1の光学系の有効長(Le):134.4mm
第1の光学系から第1の反射面までの距離(Lf):60.94mm
第1の反射面からスクリーンまでの距離(Lm):380.00mm
スクリーンに投影した際の横方向の長さ(Ln):2077mm
移動距離Di1:0.44mm
移動距離Di2:−0.03mm
移動距離Di3:0.56mm
条件(1)(|rm×fa|):57.2
条件(2)(|rm/fa|):7.85
条件(4)(f2/fa):10.2
条件(5)(Le/La):0.69
条件(6)(TR):0.183
条件(7)(Lf/La):0.31
第1のレンズシステムLS1の最大有効径:15.50mm(L13の面S23)
第2のレンズ群G2の最大有効径:24.20mm(L10の面S17)
【0078】
この投射光学系10も、第1の光学系11が、内部の光軸7の第1の側に結像される第1の中間像IM1を、第1の光学系11よりも拡大側3の光軸7の反対側(第2の側)に第2の中間像IM2として結像し、第1の反射面M1が第2の中間像IM2をスクリーン6に拡大投影するタイプである。さらに、第1の光学系11は、最も拡大側3に、縮小側2から順番に配置された第1の接合レンズB3と、両凸の第1の正レンズL15とから構成された第1のレンズシステムLS1を含む。さらに、この投射光学系10においても条件(1)〜(10)をそれぞれ満たしており、コンパクトで画質の高い大きな画像を、スクリーン6の近傍から投影できる投射光学系10およびプロジェクタ1を提供できる。
【0079】
さらに、第1の光学系11も、第1の中間像IM1が跨ぐように形成される中間レンズL9を備えており、第1の光学系11の有効長Leをさらに有効に利用することにより、より高画質の画像をスクリーン6に投影する、よりコンパクトな投射光学系10およびプロジェクタ1を提供できる。
【符号の説明】
【0080】
1 プロジェクタ、 10 投射光学系
11 第1の光学系、 12 第2の光学系
LS1 第1のレンズシステム
図1
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