(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593856
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】抗肺癌細胞転移用組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/07 20060101AFI20191010BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20191010BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20191010BHJP
A61K 31/09 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
A61K36/07
A61P35/04
A61P43/00 111
A61K31/09
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-178998(P2014-178998)
(22)【出願日】2014年9月3日
(65)【公開番号】特開2016-53002(P2016-53002A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】514147608
【氏名又は名称】台灣利得生物科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100080252
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 征四郎
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】林進忠
(72)【発明者】
【氏名】郭鐘達
(72)【発明者】
【氏名】陳▲静▼君
(72)【発明者】
【氏名】李政暾
(72)【発明者】
【氏名】林宇▲彦▼
【審査官】
原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0089627(US,A1)
【文献】
登録実用新案第3188254(JP,U)
【文献】
特開2013−170168(JP,A)
【文献】
特開平05−148175(JP,A)
【文献】
特開2011−111457(JP,A)
【文献】
特表2014−504256(JP,A)
【文献】
特開2014−058496(JP,A)
【文献】
Phytomedicine,2012年,Vol. 19,pp.768-778
【文献】
Molecular Biology of the Cell,2010年,Vol. 21, No. 24,Abstract Number 2664/B1317
【文献】
FASEB Journal,2012年 4月,Vol. 26, No. 1 supplement
【文献】
Food and Chemical Toxicology,2011年,Vol. 49,pp. 290-298
【文献】
Chemical Research Toxicology,2011年,Vol. 24,pp. 238-245
【文献】
Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine,2012年,Article ID 378415
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/07
A61K 31/09
A61P 35/04
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物1,2,4−Trimethoxy−6−methylbenzene−3−olを含む樟芝固態培養菌糸体からの抽出物を含有する抗肺癌細胞転移用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の抗肺癌細胞転移用組成物において、
前記抽出物が、肺癌細胞の転移作用を抑制して抗肺癌細胞転移できる
ことを特徴とする抗肺癌細胞転移用組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の抗肺癌細胞転移用組成物において、
前記抽出物が、肺癌細胞の侵襲作用を抑制して抗肺癌細胞転移できる
ことを特徴とする抗肺癌細胞転移用組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の抗肺癌細胞転移用組成物において、
前記抽出物が、プロテインキナーゼB(p−Akt或いはprotein kinase B)やマトリックスメタロプロテアーゼ中のゼラチナーゼ(MMP−2、MMP−9)を低減でき、また、カドヘリンE(E−cadherin)を増加でき、メタロプロテイナーゼ抑制蛋白(TIMP−1)の発現を増加することにより、前記肺癌細胞の転移作用や侵襲作用を抑制する
ことを特徴とする抗肺癌細胞転移用組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の抗肺癌細胞転移用組成物において、
前記化合物1,2,4−Trimethoxy−6−methylbenzene−3−olが、下記の
【化2】
である構造式を有する
ことを特徴とす
る抗肺癌細胞転移用組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の抗肺癌細胞転移用組成物において、
前記化合物1,2,4−Trimethoxy−6−methylbenzene−3−olが、プロテインキナーゼB(p−Akt或いはprotein kinase B)やマトリックスメタロプロテアーゼ中のゼラチナーゼ(MMP−2、MMP−9)を低減でき、また、カドヘリンE(E−cadherin)やメタロプロテイナーゼ抑制蛋白(TIMP−1)の発現を増加できる
ことを特徴とする抗肺癌細胞転移用組成物。
【請求項7】
乾燥した樟芝固態培養菌糸体を用意するステップ(A1)と、前記乾燥した樟芝固態培養菌糸体を、所定の温度において、エタノールで抽出するステップ(B1)と、が含有され、化合物1,2,4−Trimethoxy−6−methylbenzene−3−olを含む樟芝固態培養菌糸体からの抽出物を含有する抗肺癌細胞転移用組成物を製造する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の抗肺癌細胞転移用組成物を製造する方法において、
前記乾燥方式は、冷風乾燥である
ことを特徴とする抗肺癌細胞転移用組成物を製造する方法。
【請求項9】
請求項7に記載の抗肺癌細胞転移用組成物を製造する方法において、
前記温度が、25〜40℃の範囲にある
ことを特徴とする抗肺癌細胞転移用組成物を製造する方法。
【請求項10】
請求項7に記載の抗肺癌細胞転移用組成物を製造する方法において、
前記エタノールの濃度が、95%体積百分率(v/v)である
ことを特徴とする抗肺癌細胞転移用組成物を製造する方法。
【請求項11】
乾燥した樟芝固態培養菌糸体を用意するステップ(A2)と、前記乾燥した樟芝固態培養菌糸体を、所定の温度において、エタノールで抽出してエタノール抽出物を得るステップ(B2)と、前記エタノール抽出物を濃縮して濃縮生成物を得るステップ(C2)と、酢酸エチルと水で、前記濃縮生成物を仕切り(partition)させて酢酸エチル抽出物を得るステップ(D2)と、が含有され、化合物1,2,4−Trimethoxy−6−methylbenzene−3−olを含む樟芝固態培養菌糸体からの抽出物を含有する抗肺癌細胞転移用組成物を製造する方法。
【請求項12】
請求項11に記載の抗肺癌細胞転移用組成物を製造する方法において、
前記乾燥方式が、冷風乾燥である
ことを特徴とする抗肺癌細胞転移用組成物を製造する方法。
【請求項13】
請求項11に記載の抗肺癌細胞転移用組成物を製造する方法において、
前記濃縮方式が、真空濃縮である
ことを特徴とする抗肺癌細胞転移用組成物を製造する方法。
【請求項14】
請求項11に記載の抗肺癌細胞転移用組成物を製造する方法において、
前記温度が、25〜40℃の範囲にある
ことを特徴とする抗肺癌細胞転移用組成物を製造する方法。
【請求項15】
請求項11に記載の抗肺癌細胞転移用組成物を製造する方法において、
前記エタノールの濃度が、95%体積百分率(v/v)である
ことを特徴とする抗肺癌細胞転移用組成物を製造する方法。
【請求項16】
請求項11に記載の抗肺癌細胞転移用組成物を製造する方法において、
前記酢酸エチルの濃度が、100%体積百分率(v/v)である
ことを特徴とする抗肺癌細胞転移用組成物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樟芝固態培養菌糸体からの抽出
物を含有する抗肺癌細胞転移用組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍は、個人の行為や年齢、飲食、生活慣習、遺伝及び環境によって生成し、中華民国衛生署のデータによれば、がん腫は、依然として、十大死因の一番目であり、一般として、癌病者の致死原因は、殆ど、腫瘍の転移によるから、如何に、有効的に、腫瘍細胞とその転移を抑制することは、癌を治療するには、非常に重要な対策の一つである。
【0003】
樟芝(Antrodia cinnamomea)は、真菌であり、非常に珍奇な薬用真菌と認められる。多い科学研究によって、樟芝菌糸体のカルビノール抽出物や熱水抽出物、子実体のカルビノール抽出物、エタノール抽出物および酢酸エチル抽出物に、優れた抗炎症活性を有することが明らかになり、また、一部の研究によれば、樟芝の菌糸体と子実体に含有された一些シクロアルカン類の化合物に、抗癌の能力を持ち、しかし、樟芝とそれに含有されたシクロアルカン類化合物が、抗癌転移の作用メカニズムや生理活性について、また、不明である。そのため、一般の、従来のものは、実用的と言えない。
【0004】
本発明者らは、上記欠点を解消するため、慎重に研究し、また、学理を活用して、有効に上記欠点を解消でき、設計が合理である本発明を提案する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、従来の上記問題点を解消するために、肺癌腫瘍転移を抑制し、抗癌転移に良い効果が得られる樟芝固態培養菌糸体の抽出
物を含有する抗肺癌細胞転移用組成物およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するための樟芝固態培養菌糸体の抽出物であり、上記抽出物は、乾燥した樟芝固態培養菌糸体を用意するステップと、上記乾燥した樟芝固態培養菌糸体を、所定の温度において、エタノールで抽出するステップと、が含有される。
【0007】
本発明は、更に、樟芝固態培養菌糸体の抽出物を提供し、上記抽出物は、乾燥した樟芝固態培養菌糸体を用意するステップと、上記乾燥した樟芝固態培養菌糸体を、所定の温度において、エタノールで抽出してエタノール抽出物を得るステップと、上記エタノール抽出物を濃縮して濃縮生成物を得るステップと、酢酸エチルと水で、上記濃縮生成物を仕切り(partition)させて酢酸エチル抽出物を得るステップと、が含有される。
【0008】
本発明の上記実施例によれば、上記乾燥方式は、冷風乾燥である。
【0009】
本発明の上記実施例によれば、上記濃縮方式は、真空濃縮である。
【0010】
本発明の上記実施例によれば、上記温度は、25〜40°Cの範囲にある。
【0011】
本発明の上記実施例によれば、上記エタノールの濃度は、95%体積百分率(v/v)である。
【0012】
本発明の上記実施例によれば、上記酢酸エチルの濃度は、100%体積百分率(v/v)である。
【0013】
本発明は、また、他に、抗肺癌細胞転移に適用できる抽出
物を含有する抗肺癌細胞転移用組成物およびその製造方法を提供する。
【0014】
本発明の上記実施例によれば、上記抽出物は、肺癌細胞に対して、細胞を毒殺することがない。
【0015】
本発明の上記実施例によれば、上記抽出物は、肺癌細胞の転移作用を抑制することで、抗肺癌細胞転移の効果が得られる。
【0016】
本発明の上記実施例によれば、上記抽出物は、肺癌細胞の侵襲作用を抑制することで、抗肺癌細胞転移の効果が得られる。
【0017】
本発明の上記実施例によれば、上記抽出物は、肺癌細胞に関連するプロテアーゼの表現能を抑制できる。
【0018】
本発明の上記実施例によれば、上記抽出物は、肺癌細胞を促進する関連蛋白の表現能を抑制する。
【0019】
以上のように、本発明に係る樟芝固態培養菌糸体の抽出物は、抗肺癌細胞転移に対して、効果が得られ、具体的に、本発明に係る樟芝固態培養菌糸体の抽出物は、抗肺癌細胞転移に対する生理活性や作用のメカニズムが明らかになる。
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の特徴や技術内容について、詳しく説明するが、それらの図面等は、参考や説明のためであり、本発明は、それによって制限されることが無い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1の概念図である。
【
図2】本発明の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1の肺癌細胞の細胞残存性に影響する概念図である。
【
図3】本発明の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1の肺癌細胞の細胞傷口癒合能に影響する概念図である。
【
図4A】本発明の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1の肺癌細胞の細胞転移能に影響する概念図である。
【
図4B】本発明の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1の肺癌細胞の細胞転移能に影響する概念図である。
【
図5】本発明の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1の肺癌細胞の細胞侵襲能に影響する概念図である。
【
図6A】本発明の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1の肺癌細胞のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-2、MMP-9)に影響する概念図である。
【
図6B】本発明の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1の肺癌細胞のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-2、MMP-9)に影響する概念図である。
【
図7】本発明の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1の肺癌細胞のプラスミノゲン活性化因子能に影響する概念図である。
【
図8A】本発明の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1の肺癌細胞転移に関連するプロテアーゼや蛋白表現能に影響する概念図である。
【
図8B】本発明の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1の肺癌細胞転移に関連するプロテアーゼや蛋白表現能に影響する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、樟芝固態培養菌糸体の抽出
物を含有する抗肺癌細胞転移用組成物およびその製造方法に関し、肺癌細胞転移を抑制でき、優れた抗癌転移機能が実現される。
上記樟芝固態培養菌糸体の抽出物は、1,2,4−Trimethoxy−6−methylbenzene−3−olであり、また、利得1号(Leader 1)とも称される。
【0023】
癌細胞転移の過程において、細胞の着生(adhesion)や侵入(invasion)及び移染(migration)がある。癌細胞の転移に、細胞外基質(Extracellutar Matrix, ECM)を分解するマトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinases, MMP)が必要とし、また、細胞上皮間葉転換(Epithelial-Mesenchymal Transition, EMT)が発生し、同時に、癌細胞転移に関連する蛋白が、活動して、癌細胞転移を促進する。
【0024】
腫瘍壊死因子(Tumor necrosis factor, TNF)は、マクロファージから分泌したサイトカイン(cytokine)である。その中、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)は、主として、単核-マクロファージから分泌される。多くの、先前研究によれば、TNF-αが、肺癌細胞の浸潤と転移を促進することを、指摘している。そのため、適用する時、本発明は、TNF-α誘導A549肺癌細胞を、モデルとして、本発明に係る樟芝固態培養菌糸体が、抗肺癌細胞転移に対する役目を検討する。
【0025】
以下、実施例を挙げて、本発明について、詳細に説明するが、本発明は、それによって、制限されることない。
【0026】
実施例一:実験設計
[材料]
本発明に利用された樟芝固態培養菌糸体は、台湾利得生物科技会社が、培養した菌糸体である。牛胎児血清(Fetal Bovine Serum, FBS)が、Gibco BRL(Invitrogen, Grand Island, NY)から購入する。ジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide, DMSO)やペニシリン(penicillin)、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニル テトラゾリウム臭化物(3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium bromide, MTT)、ギムザ(Gimsa)及びカゼイン(Casein)は、ともに、Sigma-Aldrich(St Louis, MO)から購入した。本発明に適用されたすべての化学薬品や溶媒は、ともに、試薬や高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography, HPLC)のレベルである。
[細胞培養]
本発明は、人類肺癌腫瘍A549細胞を選択して、腫瘍細胞転移の実験を行う。A549細胞の培養には、まず、培養フラスコ(75T Flask)に成長しているA549細胞を、2×10
5 cells/cm
2の接種密度で、10cm
2 培養ディッシュ(dish)に移入し、また、37°C、5% CO
2培養器(incubator)において、培養する。使用した培養液は、BCRC(Bioresources Collection and Research Center)とATCC(American Type Culture Collection)の建言に基づいて、Ham’s F12培養液を選択し、それに、10%の牛胎児血清が添加される。
【0027】
実施例二:本発明の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1の用意
まず、樟芝固態培養菌糸体を、冷風乾燥で乾燥させ、25℃下で、2000グラムの前記冷風乾燥された樟芝固態培養菌糸体を、95%体積百分率(v/v)のエタノールで抽出し、本発明のエタノール抽出物(ACME)が得られる。前記乾燥方式は、所属領域の従来の任意の乾燥方式を選択でき、制限されることない。
また、上記エタノール抽出物を真空下(in vaccum)で、濃縮させて、323.6グラムの濃縮生成物が得られる。上記の濃縮生成物を、100%(v/v)の酢酸エチルと水で、酢酸エチル分離部と水溶性層に分層され、上記水溶性層が、水溶性分離部(ACME-water)として、マークされ、上記酢酸エチル分離部が、本発明の酢酸エチル抽出物(ACME-EA)になる。
【0028】
実施例三:Leader 1の分離
上記実施例二の酢酸エチル抽出物(ACME-EA)を、カラムクロマトグラフィー(column chromatography)で、流動相の濃度勾配により、九個の次分離部に区別される。その中、上記カラムクロマトグラフィーに使用される固定相が、シリカゲル(230〜400mesh)であり、流動相が、n‐ヘキサン/酢酸エチル混合液であり、上記濃度勾配が、順に、n‐ヘキサンと酢酸エチルの体積百分濃度比が、100:0や90:10、80:20、70:30、60:40、50:50、30:70及び0:100であるn‐ヘキサン/酢酸エチル混合液を、流動相とする時、上記クロマトグラフィーによって得たものである。
また、前記第4分離部を、高速液体クロマトグラフィー器で、純化や分離をさせ、シリカゲル管柱を固定相とし、体積比が、77:23のn‐ヘキサン/酢酸エチル混合液を流動相として、流速5ミリリットル/分とUV 254 nm波長条件で、更に、分離純化させて、その組成成分が得られ、また、その含量が最も高い成分を、質量分析により、その分子量が198.09であり、また、分子式がC
10H
14O
4であることを推定できる。上記成分を、更に、核磁気共鳴水素スペクトルと炭素スペクトルにより、その構造式が、
【0029】
【化1】
である。
図1を参照しながら、上記化合物が、1,2,4-Trimethoxy-6-methylbenzene-3-ol(Leader 1)であると確認される。
【0030】
実施例四:実施例二の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1に関する肺癌細胞(肺癌細胞株A549)の残存性抑制テスト
まず、A549肺癌細胞は、上記実施例一に述べた細胞培養方法によって、培養され、トリプシンで洗って落した後、細胞を、2x10
5 cells/cm
2の接種密度で、24多孔質円板に移入し、24時間に放置して、細胞を付着させ、表一のように、含有濃度が0、5、10、20、40μMであるLeader 1化合物(薬添加0μMの組別は、DMSOを制御組とする)の培養基を置換して、24時間に培養した後、除去し、5 mg/mlのMTTを添加して2時間に置いて、MTTが、水溶性のテトラゾリウム塩(tetrazolium salt)であり、リン酸緩衝塩類溶液(Phosphate Buffered Saline, PBS)に溶解された後、淡黄色になり、細胞糸粒体内のデヒドロゲナーゼによって還元された後、MTTのリング状構造が、水に溶けない青紫色結晶物に置換され、更に、DMSOで、細胞膜と青紫色結晶物を溶出して、波長570nmで、その吸光値を測定し、sigma plot 10.0で、統計図を作成する。
【0031】
【表1】
図2は、本発明の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1が、肺癌細胞の細胞残存性に対する影響の概念図である。図のように、実施例二によって得られた樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1が、肺癌細胞残存能に影響しなく、0〜40μMの濃度で、差異性がなく、肺癌細胞に対して、細胞毒殺の効果を有しない。
【0032】
実施例五:実施例二の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1に関する肺癌細胞(肺癌細胞株A549)の傷口癒合の抑制テスト
まず、A549肺癌細胞は、上記実施例一に述べた細胞培養方法培養によって、培養され、トリプシンで洗って落した後、細胞を、2x10
7 cells/cm
2の接種密度で、12多孔質円板に移入し、24時間に放置して、細胞を付着させ、また、各多孔質円板に、傷口のラインを描き、PBSで、軽く浮遊している細胞を洗い落とし、また、含有濃度が0、5、10、20、40μMであるLeader 1(薬添加0μMの組別は、DMSOを制御組とする)の培養基を添加し、薬添加後の0、12、24、48時間に、それぞれ、観察し、撮影して記録する。
図3は、本発明の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1が、肺癌細胞の細胞傷口癒合能に対する影響の概念図である。図のように、実施例二によって得られた樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1が、肺癌細胞傷口癒合促進能を抑制でき、特に、40μMの濃度下では、より優れた効果が得られる。
【0033】
実施例六:実施例二の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1に関する肺癌細胞(肺癌細胞株A549)の転移能の抑制テスト
24多孔質円板キッド(24-well transwell kit,Millipore)で、肺癌細胞転移能を分析する。
まず、A549肺癌細胞は、上記実施例一に述べた細胞培養方法によって、培養され、トリプシンで洗って落した後、細胞を、2x10
5 cells/cm
2の接種密度で、6多孔質円板に移入し、24時間に放置して、細胞を付着させ、また、含有濃度が0、5、10、20、40μMであるLeader 1(薬添加0μMの組別は、DMSOを制御組とする)の培養基を添加し、24時間後、細胞を、PBSで、リンスし、トリプシン(tripsin)で、細胞を落させ、遠心管を利用して、1280rpmで、三分間、遠心させ、上清液を除去し、PBSで、ゆっくり、細胞に残存した血清を洗い取って、更に、1280rpm、三分間、遠心させ、細胞を、2x10
5 cells/cm
2の密度で、僅か0.1%の牛胎児血清を有する培養基に添加し、200μlを取って、貫通穴の上層に注入し、下層に、20%の牛胎児血清(TNF-α誘導を添加してもよいし、添加しなくてもよい)を有する培養基が使用され、培養器に移入して、12や24時間に観察する。
貫通穴を取り出して、超純水(ddH
2O)で、ゆっくり、貫通穴を浸潤し、上層にある穴隙間を通していない細胞を、綿棒で除去してから、貫通穴を、カルビノールに浸入し、20分間、放置した後、乾燥させて、Gimsaに、浸入して、20分間、染色させ、貫通穴を、超純水に、数分間、浸入した後、乾燥させて、顕微鏡で、細胞転移を観察し、撮影して記録し、また、sigma plot 10.0で、統計図を作製する。
図4Aと
図4Bは、本発明の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1が肺癌細胞の細胞転移能に影響する概念図である。図のように、実施例二によって得られた樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1は、肺癌細胞の転移能を抑制でき、特に、40μMの濃度下では、より優れた効果が得られる。
【0034】
実施例七:実施例二の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1に関する肺癌細胞(肺癌細胞株A549)の侵襲能の抑制テスト
24多孔質円板キッドで、肺癌細胞侵襲能を分析する。まず、貫通穴の上層に、マトリゲル(Matrigel,3 mg/ml-well,BD science)を注入して、培養器に移入し、24時間において、凝固させる。
まず、A549肺癌細胞は、上記実施例一に述べた細胞培養方法によって、培養され、トリプシンで洗って落した後、細胞を、2x10
5 cells/cm
2の接種密度で、6多孔質円板に移入し、24時間に放置して、細胞を付着させ、また、含有濃度が0、5、10、20、40μMであるLeader 1の培養基を添加し、24時間後、細胞を、PBSで、リンスし、トリプシンで、細胞を落させ、遠心管を利用して、1280rpmで、三分間、遠心させ。上清液を除去し、PBSで、ゆっくり、細胞に残存した血清を洗い取って、更に、1280rpm、三分間、遠心させ、細胞を、2x10
5 cells/cm
2の密度で、僅か0.1%牛胎児血清を有する培養基に添加し、200μlを取って、貫通穴の上層に注入し、下層に、20%牛胎児血清を有する培養基が使用され、培養器に移入して、12や24時間に観察する。
貫通穴を取り出して、超純水で、ゆっくり、貫通穴を浸潤し、上層にある穴隙間を通していない細胞を、綿棒で、除去してから、貫通穴を、カルビノールに浸入し、20分間、放置した後。乾燥させて、Gimsaに、進入して、20分間、染色させ、貫通穴を、超純水に、数分間、浸入した後、乾燥させて、顕微鏡で、細胞侵襲を観察し、撮影して記録し、また、sigma plot 10.0で、統計図を作成する。
図5は、本発明の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1が肺癌細胞の細胞侵襲能に影響する概念図である。図のように、実施例二によって得られた樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1は、肺癌細胞の侵襲能を抑制でき、特に、40μMの濃度下では、より優れた効果が得られる。
【0035】
実施例八:実施例二の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1に関する肺癌細胞(肺癌細胞株A549)のマトリックスメタロプロテアーゼ能の抑制テスト
電気泳動で、ヒドロラーゼを測定し、ゼラチンザイモグラフィ(gelatin-zymography)で、肺癌細胞のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)にあるゼラチナーゼ(gelatinases;MMP-2、MMP-9)の酵素活性を分析すう。
まず、A549肺癌細胞は、上記実施例一に述べた細胞培養方法によって、培養され、トリプシンで洗って落した後、細胞を、2x10
5 cells/cm
2の接種密度で、12多孔質円板に移入し、24時間に放置して、細胞を付着させ、また、PBSで、2回リンスを行い、含有濃度がそれぞれ0、5、10、20、及40μMであるLeader 1の培養基を添加し、24時間後、1%牛胎児血清を有する培養基に置換し、24時間に置いて、細胞培養の培養液(culture medium)を取得して、微量遠心管に移入し、1250rpm、10分間、遠心させ、上清液を−20℃に保存する。
等量の上清液混合物を、6倍のマトリックスメタロプロテアーゼピグメント(6x MMP dye)と、8%グラデーション電気泳動コロフォーム孔内(SDS-PAGE、1mg/mlのゼラチンが含有される)に注入し、ランニングバッファー(running buffer)を添加して、80V、300mAで、45 kDのマトリックスメタロプロテアーゼマーク(MMP marker)がコロイドの中央まで来ると、中止する。
コロイドを外して、ザイモグラフィリネーチャーバッファー(zymography renaturing buffer)に移入し、35 rpmで作用させ、また、室温下で、一回30分間で、2回作用させ、その中のSDSが除去された後、ザイモグラフィ現像バッファー(zymography developing buffer)を利用して、35 rpm、37℃下、20〜24時間、で作用させた後、除去し、クマシーブルー(coomassie blue R-250)で、30分間、染色し、超純水で、翌日まで、漬け、その後、コロイドを、デジタルビデオアナライザ(Chemi-smart 3000)の受験物板にロードして、撮影分析を行い、sigma plot 10.0で、統計図を作成する。
図6Aと
図6Bは、本発明の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1に関する肺癌細胞のマトリックスメタロプロテアーゼに対する影響の概念図である。図のように、実施例二によって得られた樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1が、肺癌細胞のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-2、MMP-9)を抑制でき、特に、40μMの濃度下では、より優れた効果が得られる。
【0036】
実施例九:実施例二の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1に関する肺癌細胞(肺癌細胞株A549)のプラスミノゲン活性化因子能の抑制テスト
電気泳動で、ヒドロラーゼを測定し、カゼインザイモグラフィ(Casein-zymography)を利用して、含有したプラスミノゲン(plasminogen)で、肺癌細胞のウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(urokinase-type plasminogen activator, uPA)の酵素活性を分析し、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子により、プラスミノゲンが、プラスミン(plasmin)に分解される。
まず、A549肺癌細胞は、上記実施例一に述べた細胞培養方法によって、培養され、トリプシンで洗って落した後、細胞を、2x10
5 cells/cm
2の接種密度で、12多孔質円板に移入し、24時間に放置して、細胞を付着させ、また、PBSで、2回リンスを行い、含有濃度がそれぞれ0、5、10、20、40μMであるLeader 1の培養基を添加し、24時間後、1%牛胎児血清を有する培養基に置換し、24時間に置いて、細胞培養の培養液を取得して、微量遠心管に移入し、1250rpm、10分間、遠心させ、上清液を−20℃に保存する。
等量の上清液混合物を、6倍のマトリックスメタロプロテアーゼピグメントと、8%グラデーション電気泳動コロフォーム孔内(プラスミノゲン15 μl/mlとカゼイン 1 mg/mlが含有される)に注入し、ランニングバッファーを添加して、80V、300mAで、45 kDのマトリックスメタロプロテアーゼマークがコロイドの中央まで分離させると、中止する。
コロイドを外して、ザイモグラフィリネーチャーバッファーに移入し、35 rpmで作用させ、また、室温下で、一回30分間で、2回作用させ、その中のSDSが除去された後、ザイモグラフィ現像バッファーを利用して、35 rpm、37℃、20〜24時間、作用させた後、除去し、クマシーブルーで、30分間、染色し、超純水で、翌日まで、漬け、その後、コロイドを、デジタルビデオアナライザの受験物板にロードして、撮影分析を行い、sigma plot 10.0で、統計図を作成する。
図7は、本発明の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1に関する肺癌細胞のプラスミノゲン活性化因子能に対する影響の概念図である。図のように、実施例二に述べた樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1は、肺癌細胞のプラスミノゲン活性化因子能を抑制でき、特に、40μMの濃度下では、より優れた効果が得られる。
【0037】
実施例十:実施例二の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1に関する肺癌細胞(肺癌細胞株A549)の転移関連蛋白の調整テスト
細胞の全蛋白(total protein)を取得した後、等量の蛋白質を、8〜10%グラデーション電気泳動コロフォーム孔内に添加し、80V、300mA、240分間で、分離させ、大きさに基づいて分離された蛋白質を、100V、2時間を条件として、フッ化ポリビニリデン膜(polyvinylidene difluoride, PVDF)に移転した後、ジフルオロエチレン膜に対して、ブロッキングバッファー(blocking buffer)で、1時間作用させる。その中、上記ブロッキングバッファーは、10% w/v脱脂粉乳が含有されたTBS-Tバッファーであり、また上記TBS-Tバッファーは、0.1%のTween 20が含有されるTBSバッファーである。
また、ジフルオロエチレン膜を、アクチンの抗体溶液(actin;Cell signaling)やプロテインキナーゼBの抗体溶液(p-Akt或いはprotein kinase B;1:1000,Cell signaling)、カドヘリンE(E-cadherin;1:1000, Cell signaling)、マトリックスメタロプロテアーゼのゼラチナーゼの抗体溶液(MMP-2,9;1:1000,Santa Cruz)或いはメタロプロテイナーゼ抑制剤の抗体溶液(TIMP-1;1:1000,Cell signaling)に漬け、4℃で、12〜24時間に反応させた後、抗体溶液を回収して−20℃のアイスボックスに移入し、更に、0.1%のTBS-T バッファーで、3回洗って、非特異性(non-specific)結合された抗原抗体を洗って除去する。
また、ジフルオロエチレン膜を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)を有する抗マウス二次抗体溶液(anti-mouse secondary antibodies)や抗ウサギ二次抗体溶液(anti-rabbit secondary antibodies)に漬け、室温で、1〜2時間、反応させた後、抗体溶液を回収して、0.1%のTBS-T バッファーで、3回洗って、化学発光試薬(Enhanced chemiluminescene regents, ECL)で、各組の蛍光強度を検知し、β-アクチン(β-actin)の表現量を、蛋白の制御対照組とし、sigma plot 10.0で、統計図を作成する。
図8Aと
図8Bは、本発明の樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1が肺癌細胞転移に関連するプロテアーゼや蛋白に影響する概念図である。図のように、実施例二によって得られた樟芝固態培養菌糸体の抽出物Leader 1は、肺癌細胞転移に関連するプロテアーゼの表現能を抑制でき、また、肺癌細胞転移を抑制する関連の蛋白表現能を促進でき、明白に、差異性が現れる。
【0038】
以上のように、本発明によれば、樟芝固態培養菌糸体の抽出物とその用途を提供でき、上記樟芝固態培養菌糸体の抽出物は、1,2,4-Trimethoxy-6-methylbenzene-3-olであり、Leader 1とも称され、上記Leader 1は、有効的に肺癌腫瘍細胞の運動能や遷移能及び侵襲能を抑制でき、抗肺癌細胞転移の効果が得られ、優れた抗肺癌細胞転移の生理活性と作用メカニズムが実現される。
【0039】
以上のように、本発明に係る樟芝固態培養菌糸体の抽出物とその抗肺癌細胞転移の用途は、有効に、従来の諸欠点が解消され、上記樟芝固態培養菌糸体の抽出物は、1,2,4-Trimethoxy-6-methylbenzene-3-olであり、利得1号(Leader 1)とも、称され、有効的に、肺癌腫瘍細胞の運動能や遷移能及び侵襲能を抑制でき、抗肺癌細胞転移の効果が得られ、優れた抗肺癌細胞転移の生理活性と作用メカニズムが実現され、そのため、本発明は、より進歩的かつより実用的で、法に従って特許請求を出願する。
【0040】
以上は、ただ、本発明のより良い実施例であり、本発明は、それによって制限されることが無く、本発明に係わる特許請求の範囲や明細書の内容に基づいて行った等価の変更や修正は、全てが、本発明の特許請求の範囲内に含まれる。