【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究題目「テラバイト時代に向けたポリマーによる三次元ベクトル波メモリ技術の実用化研究」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記仮想画素を構成する各個別画素に割り当てられる位相値は、位相差がπとなる位相値の組により構成され、各組を構成する前記位相値が各個別画素にそれぞれ割り当てられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光情報記録再生装置。
前記位相付与工程は、位相差がπである位相値の組を構成し、各組を構成する各位相値を、前記仮想画素構成工程で構成された前記仮想画素の各個別画素にそれぞれ割り当てている、請求項6〜8のいずれか1項に記載の光情報記録再生方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、現在、高速で変調することができる空間光変調器は、例えば白と黒といった2階調のみを表示する空間光変調器しか存在しない。そのため、高い情報転送レートを実現するためには、2階調を表示する空間光変調器を用いることが望ましい。
【0008】
他方、情報記録媒体の記録密度を向上させる手段として、空間周波数帯域を狭くすることが知られている。すなわち、空間周波数帯域を狭くすればするほどホログラフィックメモリの小さな面積に多くの情報を記録することができる。しかし、空間周波数帯域を狭くした場合、ページデータの画質は悪くなってしまう。すなわち、ホログラフィックメモリに記録させる情報量とホログラフィックメモリのページデータの画質とは、相互にトレードオフの関係にある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、2階調を表示する空間光変調器を用いて、光に含まれる情報を高い密度で記録再生することが可能な光情報記録再生装置及び光情報記録再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するための本発明に係る光情報記録再生装置は、情報が付与された信号光を生成する信号光生成機構と、前記信号光の空間周波数を予め定めた範囲の帯域に制限する空間周波数フィルタリング機構と、前記信号光と干渉させて干渉縞を形成させる参照光を生成する参照光生成機構と、前記信号光と前記参照光とに基づいて形成された干渉縞に応じた回折格子に関する情報を記録する光情報記録媒体と、を備え、前記信号光生成機構は、入力光に複数の位相値を付与する位相付与部と、前記複数の位相値が個別に割り当てられる複数の個別画素を形成し、該個別画素に所定の2階調の情報のいずれか一方を選択して付与する空間光変調器と、を備え、前記空間光変調器は、任意の前記個別画素に対し空間的又は時間的に一定範囲に存在する複数の個別画素を1画素として擬制することによって1つの仮想画素を構成し、各個別画素に付与された前記位相値を偏角とする複素数値と前記2階調の情報とに基づいて前記複素数値の和に関する情報を前記信号光に付与する。
【0011】
この発明よれば、複数の個別画素を1つの仮想画素として擬制し、各個別画素に付与された位相値を偏角とする複素数値と2階調の情報とに基づいて複素数値の和を求めて信号光に情報を付与するので、信号光に付与する情報量を増大させることができる。また、複素数値の和を求めて信号光に情報を付与するので、求められた複素数値の和の値に基づき、情報を複素数値として保持することができる。そのため、更に多くの情報を信号光に付与することができ、狭い空間周波数帯域に付与することができる情報量を増大させることができる。
【0012】
本発明に係る光情報記録再生装置において、位相付与部は、複数の固定位相を付与する位相マスクであり、前記仮想画素は、任意の前記個別画素に対し空間的に一定範囲に存在する複数の個別画素を1画素として擬制する。
【0013】
この発明によれば、画素間のクロストークを利用して複数の個別画素を1画素の仮想画素として擬制することによって、空間的な広がりのあるデータをまとめて取り扱うことができる。
【0014】
その場合において、前記仮想画素を構成する各個別画素に割り当てられる位相値は、位相差がπとなる位相値の組を構成し、各組を構成する前記位相値を各個別画素にそれぞれ割り当てる。
【0015】
例えば、前記仮想画素は、2行2列の4つの個別画素で構成され、前記位相付与部は、前記仮想画素の縦方向又は横方向に並んだ前記個別画素に、相互に独立した第1位相値と第2位相値とを割り当てると共に、前記第1位相値が割り当てられた前記個別画素と対角をなす位置の前記個別画素に、前記第1位相値との位相差がπとなる第3位相値を割り当て、前記第2位相値が割り当てられた前記個別画素と対角をなす位置の前記個別画素に、前記第2
位相値との位相差がπとなる第4位相値を割り当てるとよい。
【0016】
本発明に係る光情報記録再生装置において、前記位相付与部は、前記入力光の位相を変調する位相変調器であり、前記仮想画素は、任意の前記個別画素に対し時間的に一定範囲に存在すると共に空間的に同一位置に存在する複数の個別画素を1画素として擬制し、前記参照光生成機構は、前記参照光の入射角を所定のタイミングで変化させる入射角制御手段を備え、前記入射角制御手段は、前記位相変調器が位相を変調したときと同じタイミングで入射角をずらしている。
【0017】
この発明によれば、ページ間のクロストークを利用して複数の個別画素を1画素の仮想画素として擬製することによって、時間的な広がりのあるデータをまとめて取り扱うことができる。
【0018】
(2)上記課題を解決するための本発明に係る光情報記録再生方法は、入力光に情報を付与して信号光を生成する信号光生成工程と、生成された前記信号光の空間周波数を予め定めた範囲の帯域に制限する空間周波数フィルタリング工程と、前記信号光と干渉させて干渉縞を形成させる参照光を生成する参照光生成工程と、前記信号光と前記参照光とに基づいて形成された干渉縞に応じた回折格子に関する情報を記録する光情報記録工程と、を備え、前記信号光生成工程は、入力光に複数の位相値を付与する位相付与工程と、複数の前記位相値を複数の個別画素に個別に割り当てる位相値割り当て工程と、任意の前記個別画素に対して空間的又は時間的に一定範囲に存在する複数の個別画素を1画素として擬制することによって1つの仮想画素を構成する仮想画素構成工程と、前記個別画素に所定の2階調の情報のいずれか一方を選択してそれぞれ付与する2階調情報付与工程と、各個別画素に付与された前記
位相値を偏角とする複素数値と前記2階調の情報とに基づいて前記複素数値の和に関する情報を前記信号光に付与する情報付与工程と、を備えている。
【0019】
この発明よれば、複数の個別画素を1つの仮想画素として擬制し、各個別画素に付与された位相値を偏角とする複素数値と2階調の情報とに基づいて複素数値の和を求めて信号光に情報を付与するので、信号光に付与する情報量を増大させることができる。また、複素数値の和を求めて信号光に情報を付与するので、求められた複素数値の和の値に基づき、情報を複素数値として保持することができる。そのため、更に多くの情報を信号光に付与することができ、狭い空間周波数帯域に付与することができる情報量を増大させることができる。
【0020】
本発明に係る光情報記録再生方法において、前記位相付与工程では、位相マスクによって複数の固定位相を前記入力光に付与し、前記仮想画素構成工程では、任意の前記個別画素に対し空間的に一定範囲に存在する複数の個別画素を1画素として擬制する。
【0021】
この発明によれば、画素間のクロストークを利用して複数の個別画素を1画素の仮想画素として擬制することによって、空間的な広がりのあるデータをまとめて取り扱うことができる。換言すると、同一のページに存在する複数の画素を組み合わせて仮想画素を構成することによって、データをまとめて取り扱うことができる。
【0022】
この場合において、前記位相付与工程は、位相差がπである位相値の組を構成し、各組を構成する各位相値を、前記仮想画素構成工程で構成された前記仮想画素の各個別画素にそれぞれ割り当てている。
【0023】
例えば、前記仮想画素構成工程は、2行2列の4つの個別画素で前記仮想画素を構成し、前記位相付与工程は、前記仮想画素の縦方向又は横方向に並んだ前記個別画素に、相互に独立した第1位相値と第2位相値とを割り当てると共に、前記第1位相値が割り当てられた前記個別画素と対角をなす位置の前記個別画素に、前記第1位相値との位相差がπとなる第3位相値を割り当て、前記第2位相値が割り当てられた前記個別画素と対角をなす位置の前記個別画素に、前記第2
位相値との位相差がπとなる第4位相値を割り当てるとよい。
【0024】
本発明に係る光情報記録再生方法において、前記位相付与工程では、位相変調器で前記入力光の位相を変調し、前記仮想画素構成工程では、任意の前記個別画素に対し時間的に一定範囲に存在すると共に空間的に同一位置に存在する複数の個別画素を1画素として擬制し、参照光生成工程では、前記参照光の入射角を所定のタイミングで変化させ、前記入射角を変化させるタイミングが、前記位相変調器が位相を変調したときと同じタイミングである。
【0025】
この発明によれば、ページ間のクロストークを利用して複数の個別画素を1画素の仮想画素として擬製することによって、時間的な広がりのあるデータをまとめて取り扱うことができる。換言すると、隣接するページの画素を複数まとめて仮想画素を構成することによって、データをまとめて取り扱うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、2階調を表示する空間光変調器を用いて、光に含まれる情報を高い密度で記録再生することができる。具体的には、悪い画質から情報を適切に抽出することによって、光に含まれる情報を高い密度で記録再生する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の技術的範囲は、以下の記載や図面のみに限定されるものではない。
【0029】
[第1実施形態]
[基本構成]
光情報記録再生装置1は、信号光生成機構10、空間周波数フィルタリング機構20、参照光生成機構30及び光情報記録媒体50を備えている。信号光生成機構10は、情報が付与された信号光を生成し、空間周波数フィルタリング機構20は、信号光の空間周波数を予め定めた範囲の帯域に制限する。参照光生成機構30は、信号光と干渉させて干渉縞を形成させる参照光を生成する。そして、光情報記録媒体50は、信号光と参照光とに基づいて形成された干渉縞に応じた回折格子に関する情報を記録する。
【0030】
この光情報記録再生装置1において、信号光生成機構10は位相付与部としての位相マスク11と空間光変調器15とを備えている。位相マスク11は、入力光に複数の固定位相を付与する。一方、空間光変調器15は、個別画素に所定の2階調の情報のいずれか一方を選択して付与する。
【0031】
空間光変調器15は、複数の個別画素の一定範囲に存在する個別画素群を1画素として擬制することによって1つの仮想画素を構成している。また、空間光変調器15は、各個別画素に付与された固定位相を偏角とする複素数値と2階調の情報とに基づいて複素数値の和に関する情報を信号光に付与している。
【0032】
この光情報記録再生装置1が実行する光情報記録再生は、入力光に情報を付与して信号光を生成する信号光生成工程と、生成された信号光の空間周波数を予め定めた範囲の帯域に制限する空間周波数フィルタリング工程と、信号光と干渉させて干渉縞を形成させる参照光を生成する参照光生成工程と、信号光と参照光とに基づいて形成された干渉縞に応じた回折格子に関する情報を記録する光情報記録工程と、を備えている。
【0033】
信号光生成工程は、位相付与工程、固定位相割り当て工程、仮想画素構成工程、2階調情報付与工程及び複素振幅情報付与工程を実行する。位相付与工程では、入力光に複数の固定位相を付与している。固定位相割り当て工程では、複数の固定位相を、複数の個別画素に個別に割り当てている。仮想画素構成工程では、複数の個別画素の一定範囲に存在する個別画素群を1画素として擬制することによって1つの仮想画素を構成している。2階調情報付与工程では、個別画素に所定の2階調の情報のいずれか一方を選択してそれぞれ付与している。そして、複素振幅情報付与工程では、各個別画素に付与された固定位相を偏角とする複素数値と2階調の情報とに基づいて複素数値の和を仮想画素の複素振幅情報として信号光に付与している。
【0034】
本発明に係る光情報記録再生装置1及び光情報記録再生方法によれば、2階調を扱う空間光変調器15を用い、光に含まれる情報を高い密度で記録再生することができる。とりわけ、悪い画質においても、光に含まれる情報を高い密度で記録再生することができるという特有の効果を奏する。
【0035】
以下、光情報記録再生装置1の具体的な構成について、図面を適宜に参照して説明する。
【0036】
光情報記録再生装置1は、
図1及び
図2に示すように、信号光生成機構10、空間周波数フィルタリング機構20、参照光生成機構30及び光情報記録媒体50を備えている。なお、図面には特に示していないが、光情報記録再生装置1は、記録用レーザー光を出力するレーザー照射部を有している。信号光生成機構10には、レーザー照射部が照射して一定の処理がなされたレーザー光が入力光として入射される。
【0037】
〈信号光生成機構〉
信号光生成機構10は、位相付与部としての位相マスク11と、空間光変調器15とを備えている。位相マスク11と空間光変調器15との間には、一対のレンズ12,13と、偏光型ビームスプリッタ14とが配置されている。
【0038】
(位相マスク)
位相マスク11は、複数の画素に対応する領域が設けられている。位相マスク11は、隣り合う画素同士の間で、入射された入力光の位相を相互にシフトさせることによって、各画素に固定位相を付与している。具体的に、位相マスクは、位相差がπである位相値の組を構成し、各組を構成する各位相値を、仮想画素の各個別画素にそれぞれ割り当てている。例えば、位相マスク11は、2行2列の4つの画素に対し、0、π/2、π、3π/2と1/2πずつシフト固定位相を付与している。各画素に付与される位相の詳細については、後述する。
【0039】
(一対のレンズ)
一対のレンズ12,13は、位相マスク11と偏光型ビームスプリッタ14との間に配置されている。一対のレンズ12,13は、一定の間隔を空けて相互に対向して配置されている。入力光は、レンズ12とレンズ13との間に位置するS点で一旦集光される。
【0040】
(偏光型ビームスプリッタ)
偏光型ビームスプリッタ14は、その内部に透過面14aを備えている。偏光型ビームスプリッタ14は、入射された入力光を空間光変調15に向けて一旦透過させ、空間光変調器15によって情報の付与された信号光を再び入射させている。そして、偏光型ビームスプリッタ14は、信号光を空間周波数フィルタリング機構20に向けて照射している。
【0041】
(空間光変調器)
空間光変調器15は、偏光型ビームスプリッタ14を間に挟んで、一対のレンズ12,13とは反対側に配置されている。この空間光変調器15は、高速度に変調することが可能なように、2階調のみを表示するように構成されている。空間光変調器15は、例えば、入力光の強度を変調することによって、白黒の2階調のみを表示する。なお、空間光変調器15は、2階調を表示することができれば、変調の対象は強度であることには限定されない。ただし、変調を高速で行うことが目的であるので、空間光変調器15としては、強度を変調し、白黒の2階調を表示するタイプのものを使用することが好ましい。この空間光変調器15と上記の位相マスク11とは、結像関係にある。
【0042】
また、空間光変調器15は、上述したように、任意の個別画素に対し空間的に一定範囲に存在する複数の個別画素を1画素として擬制することによって1つの仮想画素を構成している。そして、空間光変調器15は、各個別画素に付与された位相値を偏角とする複素数値と2階調の情報とに基づいて複素数値の和に関する情報を信号光に付与している。この空間光変調器15が構成する仮想画素は、複数の個別画素が縦横に配列された行列タイプや複数の個別画素が一列に配列された列タイプがある。
【0043】
〈空間周波数フィルタリング機構〉
空間周波数フィルタリング機構20は、一定の間隔を空けて配置された一対のレンズ21,22と、一対のレンズ21,22の間に配置された空間フィルタ23とによって構成されている。一対のレンズ21,22は、偏光型ビームスプリッタ14から出力された信号光を結像すると共に、フーリエ変換するために、フーリエ変換レンズが用いられている。空間フィルタ23は、中央に矩形開口を有している。この空間フィルタ23は、レンズの焦点が矩形開口の位置に一致するように配置されている。
【0044】
この空間周波数フィルタリング機構20は、空間フィルタ23とレンズ22を通過することによって、空間周波数フィルタリングされた信号光を形成する。具体的に、信号光は、空間フィルタ23及びレンズ22を通過することによって、予め定めた範囲の帯域に制限された空間周波数のみにフィルタリングされる。そして、空間周波数フィルタリング機構20は、フィルタリングされた信号光を対物レンズ40に向けてレンズ22から照射させている。
【0045】
〈参照光生成機構〉
参照光生成機構30は、リレーレンズ31とミラー32とを有している。リレーレンズ31には、上述したレーザー照射部が照射して一定の処理がなされたレーザー光が参照光として入射される。リレーレンズ31は、入射された参照光をミラー32に向けて照射させている。ミラー32は、リレーレンズ31から照射される参照光の進行方向に対して斜めに傾けられており、入射された参照光を対物レンズ40に向けて照射させている。
【0046】
この参照光生成機構30が生成する参照光は、情報を持たない光波である。生成された参照光は、光情報記録媒体50に信号光と共に照射され、干渉縞を形成させる。
【0047】
〈光情報記録媒体〉
光情報記録媒体50は、対物レンズ40の下流側で対物レンズ40に対向するようにして配置されている。光情報記録媒体50は、信号光と参照光とが干渉して形成された干渉縞に応じた回折格子に関する情報を記録する。
【0048】
〈光情報再生機構〉
光情報再生機構60は、
図2に示すように、偏光型ビームスプリッタ14の隣に設けられた検光子61と撮像部62とを備えている。また、光情報再生機構60は、光情報記録媒体50の背面側に設けられた1/4波長板63とミラー64とを備えている。
【0049】
検光子61及び撮像部62は、偏光型ビームスプリッタ14を間に挟んで、空間周波数フィルタリング機構20とは反対側に配置されている。検光子61は、偏光型ビームスプリッタ14と一定の間隔を空けて偏光型ビームスプリッタ14に対向して配置されている。また、撮像部62も検光子61とは一定の間隔を空けて検光子61に対向して配置されている。
【0050】
撮像部62は、撮像素子を用いて、再生照明光と位相抽出用参照光とを重ね合わせた状態で撮像するシステムである。この撮像部62は、記録時に用いた参照光と信号光との干渉縞を2次元画像として撮影するように構成されている。撮像素子としては、例えば、CCDやCMOS等を用いることができる。撮像部62は、撮像した再生光に基づいて所望の処理を行うためのコンピュータ装置等に接続されている。この撮像部62と、上記の位相マスク11及び空間光変調器15は、相互に結像関係にある。
【0051】
1/4波長板63とミラー64とは、相互に並行をなしている。1/4波長板63及びミラー64は、参照光の進行方向に対して直角をなして配置されている。この1/4波長板63及びミラー64は、対物レンズ40から照射され、光情報記録媒体50を透過した参照光を1/4波長板63に透過させ、透過した参照光をミラー64で反射させている。また、1/4波長板63及びミラー64は、反射された参照光を再び1/4波長板63に透過させると共に、光情報記録媒体50を透過させ、対物レンズ40に照射させている。参照光は、往路と復路で1/4波長板63を透過それぞれ1回透過するので、進相軸と遅相軸との間の位相差が1/2シフトする。これを利用して、往路と復路の偏光状態を直交させている。
【0052】
〈光情報の再生〉
光情報記録媒体50に記録された光情報を再生する場合、
図2に示すように、再生用参照光を信号光生成機構10の位相マスク11から入射させ、偏光型ビームスプリッタ14に照射させると同時に、参照光を光情報記録媒体50に照射させる。参照光は、ミラー64によって反射され、再び光情報記録媒体50に照射され、光情報記録媒体50に記録された情報の再生光を生成する。再生光は、対物レンズ40、空間周波数フィルタリング機構20、偏光型ビームスプリッタ14及び検光子61を透過して撮像部62に入射される。撮像部62が撮像した画像は、コンピュータ装置等により、所定の処理がなされる。
【0053】
〈開口サイズの効果〉
次に、
図3及び
図4を参照し、任意のページデータから再生パターンを生成するときの空間フィルタ23に形成された矩形開口の開口サイズの効果について説明する。なお任意のページデータを記録再生する場合、
図3及び
図4に示すように、まず、ページデータのフーリエパターンを求める。再生パターンは、フーリエパターンに基づいて生成される。
【0054】
ナイキスト開口の開口サイズを2.0xとした場合、
図3の左上に示したページデータから生成された再生パターンは、
図3の上側中央に示されたパターンのようになる。ただし、xは空間周波数をナイキスト周波数までに制限する開口サイズを意味している。
図3の右側に示した拡大図は、再生パターンの左上の正方形で囲んだ部分を拡大したものである。ナイキスト開口の開口サイズを2.0xとした場合、拡大図に示すように、黒い部分と白い部分とが区別でき、形成される画像の画質が著しく劣化することはない。
【0055】
一方、ナイキスト開口の開口サイズを1.0xとした場合、
図4の左上に示したページデータから生成された再生パターンは、
図4の上側中央に示されたパターンのようになる。ただし、xは空間周波数をナイキスト周波数までに制限する開口サイズを意味している。
図4の右側に示した拡大図は、再生パターンの左上の正方形で囲んだ部分を拡大したものである。ナイキスト開口の開口サイズを1.0xとした場合、拡大図に示すように、黒い部分と白い部分との区別が困難になり、形成される画像の画質が著しく劣化していることが分かる。
【0056】
空間周波数フィルタリング機構20の空間フィルタ23の開口サイズを小さくし、空間週周波数帯域を狭くした場合、光情報記録媒体50の記録密度を向上させることができるが、上記のように、ページデータの画質を劣化させてしまう。そのため、開口サイズを小さくし、空間週周波数帯域を狭くした場合、光情報記録媒体50に記録される情報の正確性及び再生される情報の正確性が、一般には低下する。
【0057】
本発明の光情報記録再生装置1は、空間周波数フィルタリング機構20の空間フィルタ23の開口サイズを小さくし、空間週周波数帯域を狭くした場合でも、記録密度を高く維持しつつ、情報を正確に記録再生することができるようにしている。
【0058】
〈具体的な作用〉
次に、本発明の具体的な作用について説明する。
【0059】
上述したように、空間光変調器15が構成する仮想画素は、複数の個別画素が縦横に配列された行列タイプや複数の個別画素が一列に配列された列タイプがある。そして、仮想画素を構成する各個別画素に割り当てられる位相値は、位相差がπとなる位相値の組により構成され、各組を構成する位相値が各個別画素にそれぞれ割り当てられる。換言すると、独立した位相値の画素が複数あり、それぞれに対応する位相差πついた画素があればよい。以下では、理解を容易にするために、仮想画素が2行2列の個別画素で構成されている場合を例にして説明する。
【0060】
図5は、信号光の情報を記録する考え方を示している。なお、
図5は、複数の個別画素の情報が、1つの仮想画素として複素空間にマッピングされる考え方を説明するための説明図である。
【0061】
上述したように、レーザー照射部から照射された入力光には、位相マスク11によって複数の固定位相が付与され、付与された固定位相は、複数の個別画素にそれぞれ割り当てられる。
図5に示す例では、2行2列の4つの個別画素から構成される仮想画素の各個別画素に0、π/2、π、3π/2の固定位相がそれぞれ割り当てられる。具体的に、1行1列の正の実部の位置には、固定位相として0が割り当てられ、1行2列の正の虚部の位置には固定位相としてπ/2が割り当てられる。また、1行1列の位置と対角をなす2行2列の負の実部の位置には、固定位相としてπが割り当てられ、1行2列の位置と対角をなす2行1列の負の実部の位置には、固定位相として3π/2が割り当てられる。ただし、位相差がπとなる固定位相の組は、仮想画素の対角をなす個別画素に各固定位相を割り当てて構成することには限定されない。
【0062】
また、2行2列の4つの個別画素から構成される仮想画素の各個別画素には、空間光変調器15が強度変調することによって与えられる白色又は黒色のいずれか一方の階調の情報が与えられる。白色は、個別画素に対応する位置の電圧をONとすることにより与えられ、黒色は、個別画素に対応する位置の電圧をOFFとすることにより与えられる。
【0063】
各個別画素に固定位相が付与されると共に、空間光変調器15により2階調の情報が与えられた段階での仮想画素は、
図5に示した16通りのパターンを呈する。本発明では、以下に説明するように、この16通りのパターンを複素数値の空間分布に変換させることを行っている。
【0064】
空間光変調は、位相マスク11及び空間光変調器15により位相の情報と強度の情報とが与えられた仮想画素に対し、4つの個別画素の位相値の総和を求めている。この概念は、求めた位相値の総和を偏角とするベクトル成分を、実軸と虚軸とで表された複素平面上にプロットすることとして説明することができる。具体的に、位相値の総和を偏角とするベクトル成分は、
図5の点P1から点P9の位置にそれぞれプロットされる。複素平面上にプロットされる点は、実部及び虚部が正の値、0又は負の値となる9通りのいずれかの点である。
【0065】
例えば、
図5に示した16通りの仮想画素のうち、最も上側の行でかつ最も右側の列に位置する右上に示した仮想画素の場合、1行1列の位相値が0、階調が白色(ON)であり、1行2列の位相値がπ/2、階調が白色(ON)、2行1列及び2行2列は、階調がいずれも黒色(OFF)である。そのため、位相値の総和は、π/2になる。この位相値を偏角とするベクトル成分は、複素平面において、実部と虚部とが共に正となる点となるので、
図5のP3の位置にプロットされる。
【0066】
このように、16通りの仮想画素の位相値の総和を求めた場合、位相値の総和を偏角とするベクトル成分は、
図5に示したP1からP9のいずれかの点にマッピング、すなわち、写像される。
【0067】
図6及び
図7に基づき、実際のデータを複素平面にプロットする場合について説明する。なお、
図5に示したマッピングの考え方に基づいて記録を行った場合に得られる再生像のシミュレーション結果を示す図であり、
図7は、
図6の内容をわかりやすく説明するための図面である。
【0068】
位相マスク11は、
図6及び
図7の右上側に示すように、2行2列の仮想画素を構成する各個別画素に、0、π/2、π、3π/2の固定位相をそれぞれ割り当てる。具体的に、位相マスク11は、1行1列の位置に位相値が0の固定位相を付与し、1行2列の位置に位相値がπ/2の固定位相を付与する。また、位相マスク11は、2行1列の位置に位相値が3π/2の固定位相を付与し、2行2列の位置に位相値がπの固定位相を付与する。このような固定位相が割り当たれた各個別画素に白色(ON)又は黒色(OFF)の階調を付与する。階調のパターンは、
図5に示したパターンと同じである。
【0069】
各個別画素に固定位相及び階調が上記のように与えられた場合、仮想画素の画像は、
図6及び
図7に示すように複素数値の組み合わせとして現れる。ただし、
図6は、複素数値を可視化するための仮想色として示しており、
図7は、
図6の内容を説明するために各仮想色を文字として表している。
【0070】
図6及び
図7の左上側に示した複素数値とそれを可視化する仮想色と位相との関係を表すグラフに示すように、ピンク、青、緑及びオレンジの色は、0、π/2、π、3π/2の位相値にそれぞれ対応している。また、個別画素の位置と位相値との関係は、
図6及び
図7の右上側に示す図のように、0、π/2、π、3π/2の位相値が、1行1列、1行2列、2行1列及び2行2列の位置にそれぞれ対応している。
【0071】
図6及び
図7の左上側に示した図と右上側に示した図から、各個別画素に割り当てられる色は、
図6及び
図7の左下側に示す図のような配置になる。すなわち、1行1列の個別画素にはピンク、1行2列の個別画素には青、2行1列の個別画素にはオレンジ、2行2列の個別画素には緑が、それぞれ割り当てられる。
【0072】
位相マスク11及び空間光変調器15により位相の情報と強度の情報とが与えられた仮想画素は、
図6及び
図7に示した16通りの画像として表される。例えば、
図5において、最も上側の行でかつ、最も右側の列に位置する右上に位置する仮想画素は、1行1列の位相値が0、階調が白色(ON)であり、1行2列の位相値がπ/2、階調が白色(ON)、2行1列及び2行2列は、階調がいずれも黒色(OFF)である。
図6及び
図7の左下側に示す図を参照すると、この仮想画素の複素数値の組み合わせは、ピンクと青である。したがって、最も上側の行でかつ、最も右側の列に位置する仮想画素の画像は、ピンクと青との組み合わせとして表される。
【0073】
仮想画素の画像の色をかっこ内に示して説明すると、次のようになる。すなわち、最も上側の行の仮想画素の画像は、右側から順に、(ピンク、青)、(青)、(ピンク、青、緑)、(青、緑)である。上から2行目の仮想画素の画像は、右側から順に、(ピンク、青、オレンジ)、(ピンク、青、オレンジ、緑)、(青、オレンジ)(緑)である。上から2行目の仮想画素の画像は、右側から順に、(ピンク)、(ピンク、緑)、仮想色なし、(青、オレンジ、緑)である。そして、最も下の行の仮想画素の画像は、右側から順に、(ピンク、オレンジ)、(ピンク、オレンジ、緑)、(オレンジ)、(オレンジ、緑)である。
【0074】
このように、仮想画素の画像に表される複素数値の組み合わせは、各個別画素に割り当てられた固定位相の位相値と階調の情報とに基づき求められる各個別画素の複素数値によって設定される。
【0075】
空間光変調器15は、上記のように、複素数値の組み合わせとして表された16通りの仮想画素に基づいて位相値の総和を算出する。位相値の層は、上述したように、9通りの値となる。算出された位相値の総和を偏角とするベクトル成分として表したとき、
図6及び
図7の点P1から点P9として表すことができる。
【0076】
以上、本発明の光情報記録再生装置1では、(1)位相マスク11が入力光に複数の固定位相を付与すること、(2)位相マスク11が付与された固定位相を個別画素に割り当てること、(3)空間光変調器15が強度変調を行って固定画素に2階調のいずれか一方の階調をあたえること、(4)複数の個別画素からなる個別画素群を1画素として擬制することによって1つの仮想画素を構成すること、(5)各個別画素に付与された固定位相を偏角とする複素数値と2階調の情報とに基づいて複素数値の和を求めることを、行ってから複素数値の和の情報を入力光に付与して信号光を生成している。
【0077】
そのため、本発明の光情報記録再生装置1では、信号光に付与される情報を複素数値として保持することができるので、空間周波数フィルタリング機構20において、空間フィルタ23の開口サイズを小さくし、空間週周波数帯域を狭くした場合でも、劣化してしまうようなページデータを用い、光情報記録媒体50の記録密度を高く維持することができる。
【0078】
〈縮退の分離〉
次に、縮退の分離の方法、すなわち、記録された情報を再生する際に縮退された情報をもとの情報に戻す方法について、
図8を参照して説明する。
【0079】
上記の
図5から
図7を参照して説明したように、点P2、点P4、点P6及び点P8では、もともとは独立している光学的な状態が2重に縮退している。点P2及び点P8では、虚軸に対して対称な光学的状態が縮退しており、点P4及び点P6では、実軸に対して対称な光学的状態が縮退している。また、点P5では、原点に対して対称な4つの光学的な状態が4重に縮退している。点P2、点P4、点P5、点P6及び点P8に縮退された光学的な状態を個別の光学的状態に分離する場合、次のように行う。
【0080】
2つのデータが縮退された点の合成値をそれぞれI
02、I
13とそれぞれ表す。また、原点における実軸上の合成値と虚軸上の合成値とをそれぞれIr、Iiとそれぞれ表す。各合成値は、次の(式1)から(式4)のように表すことができる。
【0085】
分離されたI
0、I
1、I
2及びI
3は、
図8の右側上段のように割り当てられる。
図8の右側上段のマトリクスのそれぞれの升目は、
図8の右側下段に示した仮想画素を構成する個別画素に対応している。縮退は、この対応関係を利用して分離される。
【0086】
〈数値シミュレーション例〉
以上に説明した光情報記録再生装置1を使用して、0−πランダム位相マスクを用いて位相値が付与されたページデータに対して空間周波数フィルタリングを行って記録したことを想定した場合と、4ステップ位相マスクを用いて4つの固定位相を付与が付与されたページデータに対して空間周波数フィルタリングを行って記録したことを想定した場合のヒストグラムとして表す数値シミュレーションを行った。
【0087】
図9は、数値シミュレーションの結果を表している。ページデータは、
図9の左側に示したものを用いた。
図9の右側上段に示すグラフは、0−πランダム位相マスクを用いた場合の信号とノイズとの割合であるSN比を示し、
図9の右側下段に示すグラフは、4ステップ位相マスクを用いた場合の信号とノイズとの割合であるSN比を示している。
【0088】
0−πランダム位相マスクを用いた場合、SN比は3.1dBであった。一方、4ステップ位相マスクを用いた場合、SN比は、−37dBであった。両者を比較すると、明らかに4ステップ位相マスクのSN比のほうが低い。この4ステップ位相マスクを用いた数値シミュレーションのように、発生したノイズの影響を大きく受けた場合、ONの画素及びOFFの画素の両方が同じように光っていると検出されてしまう。そのため、
図9の右側上段のグラフに示すように、複素空間にマッピングする演算を実行せず2値信号をそのまま2値信号として扱った場合、ヒストグラムを構成する頻度は、一つの山を形成してしまう。
【0089】
これに対し、複素空間へのマッピング処理を実行してからヒストグラムを作成した場合を
図10に示す。
図10は、4ステップ位相マスクを用いた数値シミュレーションについて、複素空間にマッピングする演算を実行した場合の複素平面上のヒストグラムを示している。複素空間にマッピングする演算を実行した場合、この
図10に示すように、データが縮退された点P1から点P9までの各点は、白い点として明確に現れている。
【0090】
この結果について検討する。0−πランダム位相マスクのSN比が3.1dBであり、4ステップ位相マスクのSN比が−37dBであることを考慮すると、4ステップ位相マスクのSN比は低く、良好であるとはいえない。仮に、複素平面に上述したマッピングする演算を実行せず、2値信号をそのまま2値信号として扱って各個別画素のヒストグラムを作成すると、すべての画素がONになってしまうと思料される。これに対し、本実施形態の光情報記録再生装置1では、マッピングする演算を実行しているので、光情報記録再生装置1は、低いSN比の像からでも、
図10に示すように信号を明確に検出できると思料される。すなわち、光情報記録再生装置1は、信号に含まれる情報を正確に再生することができている。
【0091】
次に、縮退を分離したときのシミュレーション結果について、
図11及び
図12を参照して説明する。
【0092】
図11は、点P2、点P4、点P6及び点P8の縮退を分離した後のヒストグラムを示している。この
図11に示すように、各点の縮体を分離した後のヒストグラムは、2つの山をそれぞれ有していることが分かる。すなわち、点P2、点P4、点P5及び点P8は、2つの異なるデータが縮退された点である。ヒストグラムが2つの山をそれぞれ有していることは、縮退された各点のデータが元々のデータに分離されていることを示している。
【0093】
図12は、原点に位置する点P5の縮退を分離した後の複素平面上のヒストグラムを示している。
図12には、4つの白色の点が示されている。点P5は、4つの異なるデータを縮退させた点である。複素平面上に白色の点が4つ現れているということは、縮退された点P5のデータが元々の4つのデータに分離されていることを示している。
【0094】
[第2実施形態]
次に
図13及び
図14を参照して本発明の第2実施形態の光情報記録再生装置1Aについて説明する。なお、第2実施形態の光情報記録再生装置1Aは、位相マスク11に代えて位相変調器16を有する点、参照光生成機構30がガルバノミラー33を有している点が第1実施形態の光情報記録再生装置1とは相違する。第2実施形態の光情報記録再生装置1Aにおけるその他の構成は、第1実施形態の光情報記録再生装置1の構成と同様である。そのため、第2実施形態の光情報記録再生装置1Aの構成と第1実施形態の光情報記録再生装置1の構成とが同じものについては、図面に同じ符号を付して、詳細な説明は省略し、異なる構成についてのみ詳細に説明する。
【0095】
[基本構成]
第2実施形態の光情報記録再生装置1Aは、情報が付与された信号光を生成する信号光生成機構10と、信号光の空間周波数を予め定めた範囲の帯域に制限する空間周波数フィルタリング機構20と、信号光と干渉させて干渉縞を形成させる参照光を生成する参照光生成機構30と、信号光と参照光とに基づいて形成された干渉縞に応じた回折格子に関する情報を記録する光情報記録媒体50と、を備えている。
【0096】
信号光生成機構10は、入力光の位相を変調する位相付与部としての位相変調器16と、個別画素に所定の2階調の情報のいずれか一方を選択して付与する空間光変調器15と、を備えている。空間光変調器15は、任意の個別画素に対し、時間的に一定範囲に存在すると共に空間的同一の位置に存在する複数の個別画素を1画素として擬制することによって1つの仮想画素を構成する。また、空間変調器は各個別画素に付与された位相値を偏角とする複素数値と2階調の情報とに基づいて複素数値の和に関する情報を信号光に付与する。
【0097】
参照光生成機構30は、参照光の入射角を所定のタイミングで変化させる入射角制御手段を備えている。そして、入射角制御手段は、位相変調器16が位相を変調したときと同じタイミングで入射角をずらしている。
【0098】
第2実施形態の光情報記録再生装置1Aは、第1実施形態の光情報記録再生装置1が実行する工程と同様に、信号光生成工程、空間周波数フィルタリング工程、参照光生成工程、及び光情報記録工程を実行する。また、第2実施形態の光情報記録再生装置1Aは、信号光生成工程で、位相付与工程、位相値割り当て工程、仮想画素構成工程、2階調情報付与工程及び情報付与工程を実行する。
【0099】
そして、第2実施形態の光情報記録再生装置1Aは、位相付与工程で、位相変調器16で入力光の位相を変調し、仮想画素構成工程では、任意の個別画素に対し時間的に一定範囲に存在すると共に空間的に同一位置に存在する複数の個別画素を1画素として擬制する。参照光生成工程で、参照光の入射角を所定のタイミングで変化させている。参照光生成工程で入射角を変化させるタイミングは、位相付与工程で位相変調器16が位相を変調したときと同じタイミングである。
【0100】
この第2実施形態の光情報記録再生装置1A及び光情報記録再生方法によっても、2階調を扱う空間光変調器15を用い、光に含まれる情報を高い密度で記録再生することができる。とりわけ、悪い画質においても、光に含まれる情報を高い密度で記録再生することができるという特有の効果を奏する。
【0101】
以下、
図13及び
図14を参照して、第2実施形態の光情報記録再生装置1Aの信号光生成機構10の構成及び作用、並びに参照光生成機構30の構成及び作用を説明する。なお、図面には特に示していないが、光情報記録再生装置1Aは、記録用レーザー光を出力するレーザー照射部を有している。信号光生成機構10には、レーザー照射部が照射して一定の処理がなされたレーザー光が入力光として入射される。
【0102】
〈信号光生成機構〉
信号光生成機構10は、位相変調器16、一対のレンズ12,13、偏光型ビームスプリッタ14、空間光変調器15を備えている。これらのうち、第1実施形態の光情報記録再生装置1とは異なるものについてのみ説明する。
【0103】
(位相変調器)
位相変調器16は、入力光の位相を所定のタイミングで0から2πの範囲で変調させている。位相変調器16は、所定のタイミングで位相を変調し、個別画素に、例えば、0、π/2、π、3π/2の位相値をページ毎に与えている。
【0104】
(空間光変調器)
空間光変調器15は、例えば、入力光の強度を変調することによって、白黒の2階調のみを表現する。そして、位相変調器16によって変調された位相値が付与された個別画素に対し、白又は黒の2階調のうちいずれかの階調の情報をページ毎に付与する。また、複数ページ分の個別画素、例えば、4ページ分の個別画素を、ページ間クロストークを利用して1つの仮想画素として擬制する。そして、仮想画素として擬製された複数ページ分の個別画素に関する位相値と前記2階調の情報とに基づいて、位相値を偏角とする複素数値の和に関する情報を信号光に付与する。
【0105】
〈参照光生成機構〉
参照光生成機構30は、ガルバノミラー33、リレーレンズ31及びミラー32を有している。ガルバノミラー33は、コイルに流す電流で当該ガルバノミラー33の角度を制御しており、ガルバノミラー33から反射された参照光がリレーレンズ31に対して入射する角度を自在に変化させている。なお、リレーレンズ31及びミラー32の構成及び作用は、第1実施形態のリレーレンズ31及びミラー32の構成及び作用と同様である。
【0106】
この参照光生成機構30は、参照光の入射角を変化させることにより、時間信号として機能させている。すなわち、参照光の入射角を変化させるタイミングと位相変調器16が位相を変調するタイミングとを一致させることによって、ページ毎の信号光にタイミングを合わせて異なる干渉縞を形成させて、光情報記録媒体50に情報を記録させている。
【0107】
この第2実施形態の光情報記録再生装置1Aは、上記のように、同一の位置に存在する個別画素の情報を複数ページにわたり、ページ間クロストークを利用して重ね合わせているので、時間的な広がりを利用した光情報記録再生装置である。
【0108】
〈光情報の具体的な処理の手法〉
個別画素の情報を複数ページにわたり、ページ間クロストークを利用して重ね合わせる手法は、位相変調器16によって個別画素に付与された位相値と空間光変調器15によって与えられた階調の情報とに基づいて、第1実施形態の光情報記録再生装置1Aが実行する手法と同様であるので、ここではその説明を省略する。
この第2実施形態の光情報記録再生装置1Aでは、データは、変調した位相及び各入射角に対応するデータは、複数のページに分けて光情報記録媒体50に記録される。
【0109】
〈光情報の再生〉
光情報記録媒体50に記録された光情報を再生する場合、
図14に示すように、再生用参照光を位相変調器16から入射させると共に、参照光をガルバノミラー33に照射させて行う。その際、参照光の入射角を変化させることによって、時間信号として検出する。
【0110】
以上、第1実施形態では、空間合成型の光情報記録再生装置について説明し、第2実施形態では、時間合成型の光情報記録再生装置について説明した。本発明に係る光情報記録再生装置は、さらに、空間合成型と時間合成型と組み合わせて実行する第3実施形態がある。例えば、仮想画素が4つの個別画素で構成されている場合、この第3実施形態の光情報記録再生装置では、空間合成の処理を実行してまず16通りの複素数値パターンを形成する。次いで、各複素数値に対して時間合成の処理を実行し、16通りの各複素数値パターンに対し、16通りの時間変動をそれぞれ行う。そのため、時間と空間で順番に縮退を解くことによって、16×16の256通りのデータに分離することができる。