特許第6593897号(P6593897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6593897
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】染色処理毛髪用シャンプー
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20191010BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20191010BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20191010BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   A61K8/44
   A61K8/49
   A61K8/42
   A61Q5/02
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-236625(P2018-236625)
(22)【出願日】2018年12月18日
【審査請求日】2019年4月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000180807
【氏名又は名称】資生堂ホネケーキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】仁科 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】梶田 沙織
(72)【発明者】
【氏名】原田 昂輝
(72)【発明者】
【氏名】田村 宇平
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−047165(JP,A)
【文献】 特開2016−210775(JP,A)
【文献】 特開2018−058785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシルメチルアラニン塩7〜12質量%と、
イミダゾリニウムベタイン7〜12質量%と、
コカミドメチルモノエタノールアミン1〜5質量%と、
を含み、
前記アシルメチルアラニン塩、イミダゾリニウムベタイン、コカミドメチルモノエタノールアミンの三種以外の界面活性剤は、組成物中5質量%以下であることを特徴とする染色処理毛髪用シャンプー。
【請求項2】
請求項1記載のシャンプーにおいて、さらにカチオン性ポリマーを0.2〜1.0質量%含むことを特徴とする染色処理毛髪用シャンプー。
【請求項3】
請求項1又は2記載のシャンプーにおいて、シャンプーのpHは6.0±0.5であることを特徴とする染色処理毛髪用シャンプー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のシャンプーにおいて、アルキルエーテルサルフェート、アシルメチルタウリン塩、アシルグルタミン酸塩を実質的に含まないことを特徴とする染色処理毛髪用シャンプー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシャンプー、特に染色落ち防止機能を有した染色処理毛髪用シャンプーの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
頭髪、頭皮の洗浄にはシャンプーが用いられることが多く、過剰な皮脂、汚れなどを除去することができる。
一方、消費者の多様な嗜好に合わせ、各種のヘアカラー、カラーリンス、酸化染毛剤などが用いられるが、通常のシャンプーはこれらの染色をも退色させてしまう。
このため、毛髪の洗浄性を維持しつつ、染色処理毛髪の退色を抑制することのできるシャンプーが要望されている(特許文献1、特許文献2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4130292号
【特許文献2】WO2012/161214
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の染色処理毛髪用シャンプーでは、十分な洗浄性を維持しつつ、退色抑制を行うには不十分であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は染色処理毛髪の退色を抑制することのできるシャンプーを提供することにある。
【0006】
前記目的を達成するために本発明にかかる染色処理毛髪用シャンプーは、
アシルメチルアラニン塩7〜12質量%と、
イミダゾリニウムベタイン7〜12質量%と、
コカミドメチルモノエタノールアミン1〜5質量%と、
を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明において、さらにカチオン性ポリマーを0.2〜1.0質量%含むことが好適である。
【0008】
また、本発明において、シャンプーのpHは6.0±0.5であることが好適である。
【0009】
また、本発明において、アシルメチルアラニン塩、イミダゾリニウムベタイン、コカミドメチルモノエタノールアミンの三種以外の界面活性剤は、組成物中5質量%以下であることが好適である。
【0010】
また、本発明において、アルキルエーテルサルフェート、アシルメチルタウリン塩、アシルグルタミン酸塩を実質的に含まないことが好適である。ここで実質的に含まないとは、組成物中それぞれ1質量%以下であることを意味する。
【0011】
本発明において、アシルメチルアラニン塩はアニオン性界面活性剤であり、ラウロイルメチルアラニンNa、ラウロイルメチルアラニンTEA、ココイルメチルアラニンNaなどが例示され、特にラウロイルメチルアラニンNaが好ましく、そのシャンプー中での配合量は7〜12質量%であることが好ましい。
市販品では、アラニネートLN−30(日本サーファクタント社製)などが挙げられる。
【0012】
また、本発明において、イミダゾリニウムベタインは両性界面活性剤であり、N−ラウロイル−N’−カルボキシメチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどが挙げられ、特にN−ラウロイル−N’−カルボキシメチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウムが好ましく、そのシャンプー中での配合量は7〜12質量%であることが好ましい。
市販品ではソフタゾリンLHL−SF、ソフタゾリンCH(いずれも川研ファイルケミカル製)などが挙げられる。
【0013】
また、本発明において、コカミドメチルモノエタノールアミンは、ノニオン性界面活性剤であり、そのシャンプー中での配合量は1〜5質量%であることが好ましい。
市販品ではアミノーンC−11S(花王株式会社製)などが挙げられる。
【0014】
また、本発明にかかる染色処理毛髪用シャンプーには、さらに感触向上剤としてカチオン性ポリマー、保湿剤としてポリオール、pH調整剤として有機酸、キレート剤としてEDTAなどを配合することが好適である。
【0015】
カチオン性ポリマーとしては、カチオン化セルロースエーテル(ポリクオタニウムー10)、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリルアミドコポリマー(ポリクオタニウムー7)などが好適に用いられ、市販品としてはカチナールPC−100、カチナールCG−100S(いずれも東邦化学工業製)、Merquat2200(ルーブリゾール社)などがある。
【0016】
また、ポリオールとしては、グリセリン、ソルビトール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどが例示される。
【0017】
本発明にかかる染色処理毛髪用シャンプーは、上記成分に加え、本発明の効果を損ねない範囲において、通常化粧品や医薬品に用いられる他の成分を配合し、常法により製造することができる。
【0018】
他の成分としては、例えば、油分、粉末成分、保湿剤、天然高分子、合成高分子、増粘剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等が挙げられる。
【0019】
特に好適な添加成分として、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa、ポリクオタニウム−61等のダメージ補修剤、真珠タンパク抽出液等のツヤ改善剤、疎水性蛋白質、シタビラメコラーゲンなどの髪質改善剤、ダイズ種子エキス、シソ抽出液などの女性ホルモン様薬剤、ホップ抽出液、サンショウ抽出液などの白髪予防剤、サクラエキス、カモミラエキス、ヨクイニンエキスなどの育毛剤、ニンジンエキス、センブリエキスなどの血行促進剤、グリチルリチン酸ジカリウムなどの抗炎症剤などが挙げられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる染色処理毛髪用シャンプーは、アシルメチルアラニン塩、イミダゾリニウムベタイン、コカミドメチルモノエタノールアミンを洗浄成分として含むため、十分な洗浄性を維持しつつ、染色処理毛髪の退色を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0022】
まず、本実施形態において採用した評価試験方法について説明する。
【0023】
[退色評価方法]
白髪染めを施した白髪ストランド(人毛)を、10%シャンプー水溶液(実使用を想定)で28回洗髪処理(1か月を想定)し、洗髪処理前後の毛髪ストランドの色を色差計にて測定した。
ΔE1=(洗髪前測定値)−(白髪(染毛前)測定値)
ΔE2=(洗髪前測定値)−(洗髪後測定値)
色残存率(%)=(1−ΔE2/ΔE1)×100
したがって、色残存率(%)が大きい方が「色落ち防止効果がある」と評価する。
【0024】
[洗浄力評価方法]
本試験法は、起泡・摩擦の影響を排除した条件での液体洗浄料皮脂洗浄力効果の評価である。
人工皮革に人工皮脂を塗布し、試料(液体の洗浄料)の中にいれ、タッチミキサーにて一定条件(2,500rpm・1分)で振動洗浄し、軽く水ですすぎ人工皮革を乾燥させる。
洗浄前後の人工皮革を色差計にて測定し、測定値の変化により皮脂洗浄率を算出する。
皮脂洗浄率(%) = [1−(洗浄処理サンプルの測定値)/(未処理サンプルの測定値)]×100
したがって、皮脂洗浄率(%)が大きい方が「洗浄性が高い」と評価する。
【0025】
[細胞毒性評価方法]
本試験法は、SIRC細胞(ウサギ角膜由来上皮細胞)を用いた細胞毒性に基づく試験法であり、本来眼刺激試験の代替法であるが、安全性評価法として活用する。
96穴プレートを用いて、所定の濃度に調整した細胞を播種し、10段階の濃度に調整した試料を添加する。
培養後、死滅した細胞を洗浄後、クリスタル・バイオレット染色により生細胞を染色する。
マイクロプレートリーダーによりクリスタル・バイオレットの吸収波長595nmの吸光度を測定する。
試料を添加していないコントロール培地での細胞生存率を100%としたときに、
吸光度が半分の値になる濃度(半数致死濃度、LC50 : Lethal Concentration 50)を算出し、比較する。
したがって、LC50が大きい方が「安全性が高い」と評価する。
【0026】
[界面活性剤の選択]
本発明者らは、以下の表1に示す各種界面活性剤について、シャンプー実使用濃度を考慮し、有効分1.8%での色残存率を調査した。
結果を次に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
前記表1より明らかなように、各界面活性剤単独では、アニオン性界面活性剤であるラウレス硫酸Na、ラウロイルメチルアラニンNa、両性界面活性剤であるイミダゾリニウムベタイン、及びノニオン性界面活性剤であるラウリン酸PEG−2の色残存率が高いことが理解される。
【0029】
[界面活性剤の組み合わせ]
次に本発明者らは、各種界面活性剤の相互作用について検討を進めた。
すなわち、界面活性剤実分を20質量%に固定し、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤を組み合わせて、各種特性について検討を行った。
結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
表2より明らかなように、各界面活性剤の組み合わせにより洗浄性、色残存率は変動し、ラウロイルメチルアラニンNaとイミダゾリニウムベタインの組み合わせを基本とし、ラウロイルメチルアラニンNaがやや多い方が色残存率、洗浄性ともに高い傾向にあることが理解される。なお、ノニオン性界面活性剤に関しては、単独ではラウリン酸PEG−2の方がコカミドメチルMEAよりも色残存効果が優れているが、ラウロイルメチルアラニンNa、イミダゾリニウムベタインとの組み合わせでは、むしろコカミドメチルMEAの方が色残存効果が優れていることが理解される。
【0032】
[ノニオン性界面活性剤の添加効果]
次に本発明者らは、ノニオン性界面活性剤の添加効果について検討を行った。ノニオン性界面活性剤は、洗浄力は高いとは言えず、また泡立ち性等の使用感も劣るため、シャンプーの主剤として用いるのには適さない。
しかしながら、次の表3に示す通り、ノニオン性界面活性剤には、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤の刺激性を低下させる機能が確認された。
【0033】
【表3】
【0034】
特に、コカミドMEA(LC50=0.009)は、界面活性剤単独ではラウリン酸PEG−2(LC50=0.017)よりもやや細胞毒性が高い傾向にあるが、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤との組み合わせでは、細胞毒性の低下率が大きく、前述の色残存効果と合わせて、好適なノニオン性界面活性剤ということができる。
【0035】
以上のように、色残存率、洗浄性の観点から、ラウロイルメチルアラニン塩、イミダゾリニウムベタインの選択が好ましく、さらにコカミドメチルMEAの添加により刺激性も低下することが理解される。
【0036】
[他成分の影響]
本発明者らは、前記表1,2の結果より、ラウロリルメチルアラニンNa、イミダゾリニウムベタイン、及びコカミドメチルMEAの組み合わせを基本とし、さらに感触向上剤、保湿剤、pHを調整した際の影響について検討を行った。
結果を表4に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
表4より明らかなように、カチオン性高分子の添加により使用感触の改善のみならず、色落ち抑制効果も顕著に改善される。また、pHは6.0±0.5の範囲が最適である。
【要約】
【課題】
本発明が解決すべき課題は、洗浄性を良好に保ちつつ、染色処理毛髪の退色を抑制することのできるシャンプーを提供することにある。
【解決手段】
アシルアラニンナトリウム7〜12質量%と、
イミダゾリニウムベタイン7〜12質量%と、
コカミドメチルモノエタノールアミン1〜5質量%と、
を含むことを特徴とする染色処理毛髪用シャンプー。
【選択図】 なし