特許第6593931号(P6593931)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6593931ポリ(エチレングリコール)−b−ポリ(ハロメチルスチレン)並びにその誘導体及び製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593931
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】ポリ(エチレングリコール)−b−ポリ(ハロメチルスチレン)並びにその誘導体及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   C08F293/00
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-552038(P2016-552038)
(86)(22)【出願日】2015年9月29日
(86)【国際出願番号】JP2015077432
(87)【国際公開番号】WO2016052463
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2018年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-201992(P2014-201992)
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長崎 幸夫
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−111700(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/133647(WO,A1)
【文献】 特開2014−001159(JP,A)
【文献】 国際公開第98/001478(WO,A1)
【文献】 特開2003−321524(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103819390(CN,A)
【文献】 特表2012−530279(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/111801(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/118993(WO,A1)
【文献】 Macromolecules,2014年 1月14日,Vol.47,No.1,130-136
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F293/00−297/08
C08G 65/00− 65/48
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記反応スキームに基づく式(I)で表されるブロック共重合体または式(I)中の(R)aで置換されていてもよいフェニルジチオカルボニルが水素原子もしくはメルカプトで置換されたブロック共重合体の製造方法であって、
式(6)で表されるポリ(エチレングリコール)誘導体及びラジカル反応開始剤を含む不活性溶媒中に式(7)で表されるスチレン誘導体を加えて重合する工程を含んでなる、製造方法。
【化1】
上記各式中、
Aは、非置換または置換C1−C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基、式R12CH−基を表し、ここで、R1およびR2は独立してC1−C4アル
コキシまたはR1とR2は一緒になって−OCH2CH2O−、−O(CH23O−もしくは−O(CH24O−を表し、或いは、置換されている場合の置換基は、式RB−Ph−基を表し、ここで、RおよびRはヒドロキシまたはRとRは一緒になって−OC(CHC(CHO−を表し、Phはメチルもしくはメトキシで置換されていてもよいo−フェニレン、m−フェニレンもしくはp−フェニレンを表し、
Lは、m−キシリレンもしくはp−キシリレンであり、
Xは塩素、臭素又はヨウ素を表し、
Rは、各、独立してメチルまたはメトキシを表し、aは0〜3の整数であり、
mは3〜500の整数を表し、
nは2〜10,000の整数を表す。
【請求項2】
式(I)
【化3】
式中、
Aは、非置換または置換C1−C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基、式R12CH−基を表し、ここで、
1およびR2は独立してC1−C4アルコキシまたはR1とR2は一緒になって−OCH2CH2O−、−O(CH23O−もしくは−O(CH24O−を表し、或いは、置換されている場合の置換基は、式RB−Ph−基を表し、ここで、RおよびRはヒドロキシまたはRとRは一緒になって−OC(CHC(CHO−を表し、Phはメチルもしくはメトキシで置換されていてもよいo−フェニレン、m−フェニレンもしくはp−フェニレンを表し、
Lは、m−キシリレンもしくはp−キシリレンであり、
Xは塩素、臭素又はヨウ素を表し、
Rは、各、独立してメチルまたはメトキシを表し、aは0〜3の整数であり、
mは3〜500の整数を表し、
nは2〜10,000の整数を表す、
で表されるブロック共重合体または式(I)中の(R)aで置換されていてもよいフェニルジチオカルボニルが水素原子もしくはメルカプトで置換されたブロック共重合体。
【請求項3】
式(I)の(R)aで置換されていてもよいフェニルジチオカルボニルがそのまま存在する、請求項に記載のブロック共重合体。
【請求項4】
式(II)
【化5】
式中、
Aは、非置換または置換C1−C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基、式R12CH−基を表し、ここで、R1およびR2は独立してC1−C4アルコキシまたはR1とR2は一緒になって−OCH2CH2O−、−O(CH23O−もしくは−O(CH24O−を表し、或いは、置換されている場合の置換基は、式RB−Ph−基を表し、ここで、RおよびRはヒドロキシまたはRとRは一緒になって−OC(CHC(CHO−を表し、Phはメチルもしくはメトキシで置換されていてもよいo−フェニレン、m−フェニレンもしくはp−フェニレンを表し、
Lは、m−キシリレンもしくはp−キシリレンであり、
Rは、各、独立してメチルまたはメトキシを表し、aは0〜3の整数であり、
mは3〜500の整数を表し、
nは2〜10,000の整数を表す、
Zは−NH−または−O−を介して共有結合した式
【化7】
で表される基から選ばれるか、または
−P(=O)(OCH2CH32もしくは−P(=O)(OH)2を表し、
これらの基はZの総数の少なくとも60%を含み、存在する場合、残りは塩素、臭素若しくはヨウ素原子又はヒドロキシルである、
で表される共重合体または式(II)における(R)aで置換されていてもよいフェニルジチオカルボニルが水素原子もしくはメルカプトで置換されたブロック共重合体。
【請求項5】
(II)の(R)aで置換されていてもよいフェニルジチオカルボニルがそのまま存在する、請求項に記載のブロック共重合体。
【請求項6】
Zが−NH−または−O−を介して共有結合した式
【化8】
で表される基から選ばれる、請求項に記載のブロック共重合体。
【請求項7】
Zが−P(=O)(OCH2CH32もしくは−P(=O)(OH)2を表す、請求項に記載のブロック共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
種々の生体環境下で広く使用されているポリ(エチレングリコール)(PEG)に様々な機能を付与する目的の下、PEGの末端にSH基を導入し、ラジカル連鎖移動重合により製造できるPEG−b−ポリ(クロロメチルスチレン)(PEG/PCMS)が提案されている(非特許文献1)。このブロック共重合体は、クロロメチル基を介して、アミノ基、ヒドロキシル基等を有する化合物を共有結合することができる。例えば、環状ニトロキシドラジカルを共有結合で担持させた親疎水性セグメントを含有するブロック共重合体は、水中での自己組織化によりナノ粒子を形成し、生体環境下で低分子化合物たる環状ニトロキシドラジカルを安定化でき、医療分野での利用をはじめとする多種多様な用途に向けられることが確認されている(例えば、特許文献1)。
【0002】
しかしながら、上記の製造方法によると、重合中に再結合が起こり、トリブロック共重合体が混入することが避けられず(例えば、特許文献1の製造例1参照)、これが血中滞留性等の性能を低下させる原因になるだけでなく、反応が煩雑でコスト高につながるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】再公表 JP WO 2009/133647公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】吉富徹,両末端に反応性官能基を有するacetal−PEG/PCMS合成とその応用・展開,平成19年度物質科学セミナー要旨,2007年9月27日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、上記PEG/PCMS)から誘導された環状ニトロキシドラジカルを共有結合で担持させた親疎水性セグメントを含有するブロック共重合体であって、該ニトロキシドラジカル部分として2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルを含む共重合体は、脳、心臓、腎臓虚血後の再灌流障害、脳出血、アルツハイマー病、癌、潰瘍性大腸炎障害などの酸化ストレス性疾患に有効であることが示唆されている。そこで、かような機能を付与し得、かつ、商業的に実用化がより容易であり、大量、安定な機能性ブロック共重合体の提供に対するニーズは依然として存在する。本発明の目的は、かようなニーズに答えようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のPEGの末端にSH基を導入し、ラジカル連鎖移動重合によるPEG/PCMSの製造に代え、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合を応用することで、特に医療分野での用途に適する安定、かつ、狭い分子量分布をもつ、PEGにさらなる機能を付与した共重合体を容易に製造できることを確認した。
【0007】
したがって、本発明によれば、下記反応スキームに基づく式(I)で表されるブロック共重合体または式(I)中の(R)aで置換されていてもよいフェニルジチオカルボニルが水素原子もしくはメルカプトで置換されたブロック共重合体の製造方法であって、
式(6)で表されるポリ(エチレングリコール)誘導体及びラジカル反応開始剤を含む不活性溶媒中に式(7)で表されるスチレン誘導体を加えて重合する工程を含んでなり、さらに必要により、接触的還元または加水分解する工程を含む、製造方法が提供される。
【化1】
【0008】
上記各式中、
Aは、非置換または置換C1−C12アルコキシを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基、式R12CH−基を表し、ここで、R1およびR2は独立してC1−C4アルコキシまたはR1とR2は一緒になって−OCH2CH2O−、−O(CH23O−もしくは−O(CH24O−を表し、或いは、置換されている場合の置換基は、式RB−Ph−基を表し、ここで、RおよびRはヒドロキシまたはRとRは一緒になって−OC(CHC(CHO−を表し、Phはメチルもしくはメトキシで置換されていてもよいo−フェニレン、m−フェニレンもしくはp−フェニレンを表し、
Lは、式
【化2】
【0009】
で表される基から選ばれ、好ましくは、最後の2つのいずれかの式で表される基が挙げられ、bは2〜6の整数であり、
Xは塩素、臭素又はヨウ素を表し、
Rは、各、独立してメチルまたはメトキシを表し、aは0〜3の整数であり、
mは3〜500の整数を表し、
nは2〜10,000、の整数を表す。
【0010】
また、本発明によれば、式(I)
【化3】
【0011】
で表され、ここで、A、L、X、R、a、m及びnは上記に定義したとおりである、
のブロック共重合体または式(I)中の(R)aで置換されていてもよいフェニルジチオカルボニルが水素原子もしくはメルカプトで置換されたブロック共重合体も、提供される。
【0012】
さらにまた、本発明によれば、式(II)
【化4】
【0013】
で表され、ここで、A、L、R、a、mおよびnは上記に定義したとおりであり、Zは−NH−または−O−を介して共有結合した式
【化5】
【0014】
で表される基から選ばれるか、または
−P(=O)(OCH2CH32もしくは−P(=O)(OH)2を表し、
これらの基はZの総数の少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%,より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは100%含み、存在する場合、残りはハロゲン、例えば、塩素、臭素若しくはヨウ素原子又はヒドロキシルである、
で表されるか、または式(II)における(R)aで置換されていてもよいフェニルジチオカルボニルが水素原子で置換されたブロック共重合体も、提供される。
【0015】
また、Aが置換C1−C12アルコキシを表し、置換基が、式RB−Ph−基を表し、ここで、RおよびRはヒドロキシまたはRとRは一緒になって−OC(CHC(CHO−を表し、Phはメチルもしくはメトキシで置換されていてもよいo−フェニレン、m−フェニレンもしくはp−フェニレンを表す場合には、次式
【化6】
【0016】
で表されるホモポリマーは、本発明者等の知る限り、従来技術文献未載の式化合物であるのでかような新規ポリマーも提供される。かようなホモポリマーは上記の式(I)または式(II)で表される共重合体の合成前駆体としても使用でき、また、それ自体医療品等の改質に使用できる。
【0017】
上記の式(I)で表されるブロック共重合体の製造方法によれば、特許文献1に記載の方法と異なり、単峰性で、分子量分布の狭いブロック共重合体が効率よく得られる。また、こうして得られる式(I)で表される該ブロック共重合体のハロンゲン化メチル基のハロゲン原子は、アミノ化、ヒドロキシル化、エステル化、エーテル化等に効率よく利用できる。
【0018】
例えば、かようなアミノ化またはエーテル化により得られる式(II)で表される修飾ブロック共重合体は、特許文献1に記載されている一般式(II)で表され、かつ、製造例2に記載された「アセタール−PEG−b−PCMS−N−TEMPO」又は製造例3に記載された「メトキシ−PEG−b−PCMS−O−TEMPO」と実質的に同様の生物学的活性を示す。また、Zが−P(=O)(OCH2CH32または−P(=O)(OH)2で表される修飾ブロック共重合体は金属酸化物、ステンレス、ポリカチオン等の、例えば、表面改質に有用である。
【0019】
<本発明の詳細な記述>
式(I)で表されるブロック共重合体の製造方法において用いる、ラジカル開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル等であることができ、不活性溶媒はトルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、ベンゼン等であることができ、スチレンの重合に通常用いられる条件下で反応を進行させることができる。最適な反応温度は用いる溶媒により変動するが、室温から沸点までの温度であり、反応時間はPEGの使用量に対して式(7)で表されるスチレン誘導体の使用量の割合を選択し、反応温度及び反応時間を選択することにより、スチレン誘導体に由来する分子量をある程度制御できる因子であるが、通常、反応時間は数時間(2、3時間)〜20時間であることができる。生成物の単離、精製は反応混合液を未反応原料等に対しては良溶媒であるが、生成物(1)に対しては貧溶媒に投入し、沈殿を生じさせる操作を、必要により繰り返せばよい。
【0020】
式(6)で表される化合物は、限定されるものでないが、式(4)
【化7】
【0021】
で表される化合物と式(5)
【化8】
【0022】
で表される化合物の反応により効率よく得ることができる。上式中、Yは塩素、臭素又はヨウ素原子であることができ、他のA、L、R、a及びnは上記に定義したとおりである。この反応は、式(4)で表される化合物と式(5)で表される化合物を、モル比で、0.1〜10対10〜0.1の割合でテトラヒドロフラン(THF)やジオキサン等のエーテル溶媒中、5℃〜50℃にて12〜24時間の条件下で完了することができる。式(5)で表される化合物は、二硫化炭素と臭化フェニルマグネシウムを同様な溶媒中、モル比で、0.1〜10対10〜0.1の割合で、室温下で0.1〜5時間反応させることで生成することができる。
【0023】
さらに、式(4)で表される化合物は、式(1)で表される片末端にA基を有するポリ(エチレングリコール)と式(3)Y−L−Y(Yは、独立して上記に定義したとおりである。)で表されるジハロゲン化物を、ブチルリチウムの存在下で反応させることにより得ることができる。典型的な反応条件は、後述する実施例1〜3を参照することができる。
【0024】
したがって、本発明に従えば、式(I)で表されるブロック共重合体は、限定されるものでないが、次の一連の反応スキームに従って、最も効率よく製造できる。
【化9】
【0025】
上記、各工程は、前述した条件下で、また、後述する実施例に記載の方法及びそれらの方法を当該技術分野で周知の方法に準じて改変した方法により実施できる。
【0026】
こうして得られる、式(I)で表されるブロック共重合体の中、好ましいものとしては、式(I−a)
【化10】
【0027】
式中、A、R、a、mおよびnは上記に定義したとおりであり、Xは好ましくは、塩素または臭素原子であり、より好ましくは塩素原子であり、mは好ましくは、3〜250、より好ましく5〜150、特に好ましくは8〜100の整数を表し、nは、一般的には2〜10,000好ましくは、12〜5,000、より好ましくは14〜1,000、特に好ましくは20〜1,000の整数を表し、aは好ましくは0または1であり、存在する場合のRは好ましくはメチル基であり、より好ましくは0である。また、主鎖中のキシリレン部がm−又はp−キシリレンであり、p−キシリレンが好ましい。
【0028】
式(I)又は式(I−a)で表されるブロック共重合体は、そのスチレン誘導体(モノマー)に由来する反復単位中の、ハロメチル基が、前述したとおり、所望のアミノ化反応、エーテル化反応又はエステル化反応に利用でき、このような利用の態様の具体例としては、前述したとおり、式(II)で表される化合物を例示することができる。
【0029】
式(II)で表されるまたは式(II)における(R)aで置換されていてもよいフェニルジチオカルボニルが水素原子で置換されたブロック共重合体の好ましいものとしては、式(II−a)
【化11】
【0030】
式中、A、R、a、mおよびnは、好ましい態様も含めて、上記に定義したとおりであり、Zは−NH−または−O−を介して共有結合した式
【化12】
【0031】
で表される基から選ばれるか、または
−P(=O)(OCH2CH32もしくは−P(=O)(OH)2を表す、
で表される修飾ブロック共重合体を挙げることができる。これらの態様の共重合体は、特に製造が容易であり、一定の安定な性質を有する。
【0032】
かような共重合体は、例えば特許文献1に記載の製造例2又は3に記載の方法にしたがって、式(I)又は(I−a)で表されるブロック共重合体と、対応する、アミノ基又はヒドロキシル基を有する環状ニトロキシドラジカル化合物との反応によるか、また、亜リン酸ジエチル(ホスホン酸ジエチル)のリチウム化物やナトリウム化物との反応により得ることができる。
【0033】
また、式(II)又は式(II−a)で表される修飾ブロック共重合体のω末端に見られるジチオエステル部は、場合により、当該反応行程中自動的に加水分解してメルカプト基に転化され得るが、必要があれば、積極的に加水分解又は接触還元することにより、メルカプト基もしくは水素原子に転化できる。
【0034】
式(I)、式(I−a)、式(II)及び式(II−a)のいずれのブロック共重合体も、水性媒体(水又は必要により水溶解性有機溶媒を含む溶媒系)において、分子が会合して分子集合体又は自己組織化した高分子ミセルを形成する。したがって、かような特性を利用して各種薬剤のDDSの構築に利用できる。
【0035】
式(Pre)で表されるホモポリマーは、前述したとおり新規化合物であると思われるが、都合よくは、実施例27に記載の方法に準じて製造でき、こうして得られるホモポリマーは、前記(1)のポリマーに該当し、以下、前記反応スキームに従い、(1)のポリマーから出発し、順次、ポリマー(4)、ポリマー(6)を経て式(I)のブロック共重合体、さらには式(II)の修飾ブロック共重合体を得ることができる。Aが置換C1−C12アルコキシを表し、置換基が、式RB−Ph−基を表し、ここで、RおよびRがヒドロキシを表すポリマーまたは共重合体は、RとRは一緒になって−OC(CHC(CHO−を表すポリマーまたは共重合体から、それらのピナコール型エステルを、例えば、J.Sun et al., J.Org.Chem.2011,76(9),3571−3575に記載の方法に従い加水分解することにより提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2Cl(1)のサイズ分画クロマトグラム(SEC)
図2】CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2Cl(1)のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)
図3】CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2Cl(1)のマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−TOF−MS)スペクトル
図4】CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2Br(2)のサイズ分画クロマトグラム(SEC)
図5】CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2Br(2)のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)
図6】CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2Br(2)のマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−TOF−MS)スペクトル
図7】(CH3CH2O)2CHCH2CH2O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2Cl(3)のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)
図8】CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2SC(=S)Ph(4)のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)
図9】CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2SC(=S)Ph(4)のマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−TOF−MS)スペクトル
図10】(CH3CH2O)2CHCH2CH2O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2SC(=S)Ph(5)のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)
図11】CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2(CH2CH(PhCH2Cl))mSC(=S)Ph(6)のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)
図12】CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2(CH2CH(PhCH2NH−TEMPO))mSC(=S)Ph(7)のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)(ヒドラジン添加還元後)
図13】CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2(CH2CH(PhCH2O−TEMPO))mSC(=S)Ph(8)のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)(ヒドラジン添加還元後)
図14】newRNPN(m=13)の動的光散乱(DLS)スペクトル
図15】newRNPN(m=13)の電子スピン共鳴スペクトル
図16】newRNPN(m=30)及びnewRNPO(m=30)の経口投与による血中濃度の時間変化
図17】newRNPN(m=13)経口投与に対するプロトロンビン時間
図18】newRNPN(m=13)経口投与に対するスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)産生量
図19】newRNPN(m=13)経口投与に対するアルブミン産生量
図20】newRNPN(m=13)経口投与に対するアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)産生量
図21】newRNPN(m=13)経口投与に対するアラニントランスアミナーゼ(ALT)産生量
図22】newRNPN(m=13)経口投与に対するアルカリフォスファターゼ(ALP)産生量
図23】newRNPN、newRNPOの静脈注射に対する血中濃度変化
図24】CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2(CH2CH(PhCH2P(=O)(OCH2CH32mSC(=S)Ph(9)のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)
図25】CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2(CH2CH(PhCH2P(=O)(OH)2mSC(=S)Ph(10)のプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)
図26】実施例1で得られたブロック共重合体(1)のGPCチャート
図27】4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボラノフェニルメトキシ−(CHCHO)OH(Pre)のサイズ分画クロマトグラム(SEC)
図28】4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボラノフェニルメトキシ−(CHCHO)OH(Pre)のプロトン核磁気共鳴スペックトラム(H−NMR)
図29】4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボラノフェニルメトキシ−(CHCHO)OH(Pre)のカーボン核磁気共鳴スペックトラム(13C−NMR)
【実施例】
【0037】
以下、本発明について、より具体的に説明する。
【0038】
実施例1:CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2Cl(1)の合成
(なお、式中:Phはベンゼン環を表す)
500mLフラスコ中に市販の片末端メトキシ、他末端水酸基を有するポリエチレングリコール(CH3O−(CH2CH2O)nH、分子量5,000、Fluka)を50g、テトラヒドロフラン200mL、市販のブチルリチウムを10mL(1.6M、ヘキサン溶液)加えた後、a,a’−ジクロロ−p−キシリレン(ClCH2PhCH2Cl)を25g加え、60℃、24時間反応させた。反応混合液を500mLの冷2−プロパノールに沈殿させ、遠心分離(4℃、9000rpm、2分)後、減圧乾燥した。得られた(1)のサイズ分画クロマトグラム、NMRおよびMALDI−TOF型質量スペクトルをそれぞれ図1、2、3に示す。収量50g、収率97%。また、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を図26に示す。
【0039】
実施例2:CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2Br(2)の合成
a,a’−ジクロロ−p−キシリレンの代わりにa,a’−ジブロモ−p−キシリレン(BrCH2PhCH2Br)を用いた以外は実施例1と同様に合成した。得られた(2)のサイズ分画クロマトグラム、NMRおよびMALDI−TOF型質量スペクトルをそれぞれ図4、5、6に示す。収量50g、収率97%
【0040】
実施例3:(CH3CH2O)2CHCH2CH2O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2Cl(3)の合成
500mLフラスコ中にTHF100mL、市販の1,1−ジエトキシプロパノールを(0.9g,6mmol)、カリウムナフタレン(12mL,0.5M)を加え、カリウム3,3−ジエトキシプロパノキシドを生成せしめた後、エチレンオキシド20g(0.45mol)を加えて室温、2日間重合させた。重合後、a,a’−ジクロロ−p−キシリレン(ClCH2PhCH2Cl)を25g加え、60℃、24時間反応させた。反応混合液を500mLの冷2−プロパノールに沈殿させ、遠心分離(4℃、9000rpm、2分)後、減圧乾燥した。得られた(3)のNMRを図7に示す。収量20g、収率95%。
【0041】
実施例4:CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2SC(=S)Ph(4)の合成
100mLフラスコにTHF50mL、市販の二硫化炭素5mLおよび臭化フェニルマグネシウム10mL(3M THF溶液)を加え、ジチオ安息香酸ブロモマグネシウム(PhC(=S)SMgBr)を作製させる。別途500mLフラスコ中に実施例1で合成した(1)50g、THF200mLを加え、上で作製したジチオ安息香酸ブロモマグネシウムのTHF溶液を加え、40℃、24時間反応させた。反応混合液を500mLの冷2−プロパノールに沈殿させ、遠心分離(4℃、9000rpm、2分)後、減圧乾燥した。得られた(4)のNMRおよびMALDI−TOF型質量スペクトルをそれぞれ図8、9に示す。収量50g、収率97%。
【0042】
実施例5:(CH3CH2O)2CHCH2CH2O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2SC(=S)Ph(5)の合成
(1)に代えて(3)を20g使った以外実施例4と同様の方法で(5)の合成を行った。得られた(5)のNMRを図10に示す。収量20g、収率97%。
【0043】
実施例6:CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2(CH2CH(PhCH2Cl))mSC(=S)Ph(6)の合成
500mLフラスコに(4)を20g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)120mg、m,p−クロロメチルスチレン(CMS)60mL、トルエン200mLを加え、窒素ガスを3分間フローした後、70℃で12時間重合を行った。反応混合液を500mLの冷2−プロパノールに沈殿させ、遠心分離(4℃、9000rpm、2分)後、減圧乾燥した。得られた(6)のNMRを図11に示す。収量40g。PCMSセグメントの重合度m=30
【0044】
実施例7:CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2(CH2CH(PhCH2Cl))mSC(=S)Ph(6)の合成(その2)
CMSを30mL使用した以外実施例6と同様に方法で合成を行った。収量32g。PCMSセグメントの重合度m=13
【0045】
実施例8:CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2(CH2CH(PhCH2Cl))mSC(=S)Ph(6)の合成(その3)
CMSを120mL使用した以外実施例6と同様に方法で合成を行った。収量50g。PCMSセグメントの重合度m=42
【0046】
実施例9:CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2(CH2CH(PhCH2NH−TEMPO))mSC(=S)Ph(7)の合成(TEMPOは2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルを表す)
500mLフラスコ中、実施例6で合成した(6)を10g、ジメチルフォルムアミド(DMF)を100mL、4−アミン−TEMPOを20g加え、2日間室温で反応させた。反応混合液を500mLの冷2−プロパノールに沈殿させ、遠心分離(4℃、9000rpm、2分)後、減圧乾燥した。得られた(7)のNMRを図12に示す。収量10g。TEMPO置換度80%
【0047】
実施例10:CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2(CH2CH(PhCH2NH−TEMPO))mSC(=S)Ph(7)の合成(その2)
実施例6で合成した(6)の代わりに実施例7で合成した(6)を用いた以外、実施例9と同様の方法で合成した。収量10g。TEMPO置換度80%
【0048】
実施例11:CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2(CH2CH(PhCH2NH−TEMPO))mSC(=S)Ph(7)の合成(その3)
実施例6で合成した(6)の代わりに実施例8で合成した(6)を用いた以外、実施例9と同様の方法で合成した。収量10g。TEMPO置換度80%
【0049】
実施例12:CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2(CH2CH(PhCH2O−TEMPO))mSC(=S)Ph(8)の合成
200mLフラスコに50mLのTHF、4−日ドロキシTEMPOを10gおよびブチルリチウム40mLを加えて攪拌し、LiO−TEMPOを調製した。500mLフラスコ中、実施例6で合成した(6)を10g、ジメチルフォルムアミド(DMF)を100mL、上で調製したLiO−TEMPO溶液を加え、2日間室温で反応させた。反応混合液を500mLの冷2−プロパノールに沈殿させ、遠心分離(4℃、9000rpm、2分)後、減圧乾燥した。得られた(8)のNMRを図13に示す。収量10g。TEMPO置換度80%
【0050】
実施例13:CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2(CH2CH(PhCH2O−TEMPO))mSC(=S)Ph(8)の合成(その2)
実施例6で合成した(6)の代わりに実施例7で合成した(6)を用いた以外、実施例11と同様の方法で合成した。収量10g。TEMPO置換度80%
【0051】
実施例14:CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2(CH2CH(PhCH2O−TEMPO))mSC(=S)Ph(8)の合成(その3)
実施例6で合成した(6)の代わりに実施例11で合成した(6)を用いた以外、実施例11と全く同様の方法で合成した。収量10g。TEMPO置換度80%
【0052】
実施例15:pH低下にしたがって崩壊するレドックスナノ粒子newRNPNの調製(その1)
ガラス容器に実施例9で合成した(7)を10g取り、400mLのメタノールに溶解させ、分画分子量3,000のホローファイバー型透析モジュール(mPES Midikros(登録商標)Modules 3kD IC 0.5mm D06−E003−05−N)で10Lの水に対して透析した(25mg/mL)。得られた粒子溶液の光散乱スペクトルおよび電子スピン共鳴をそれぞれ図14、15に示す。
【0053】
実施例16:pH低下で崩壊するレドックスナノ粒子newRNPNの調製(その2)
実施例9で合成した(7)を用いる代わりに実施例10で合成した(7)を用いる以外実施例15と同様の方法で調製した。(25mg/mL)
【0054】
実施例17:pH低下で崩壊するレドックスナノ粒子newRNPNの調製(その3)
実施例9で合成した(7)を用いる代わりに実施例11で合成した(7)を用いる以外実施例15と同様の方法で調製した。(25mg/mL)
【0055】
実施例18:pH低下で崩壊しないレドックスナノ粒子newRNPOの調製
(その1)
実施例9で合成した(7)を用いる代わりに実施例12で合成した(8)を用いる以外実施例15と同様の方法で調製した。(25mg/mL)
【0056】
実施例19:pH低下で崩壊しないレドックスナノ粒子newRNPOの調製
(その2)
実施例9で合成した(7)を用いる代わりに実施例13で合成した(8)を用いる以外実施例15と同様の方法で調製した。(25mg/mL)
【0057】
実施例20:pH低下で崩壊しないレドックスナノ粒子newRNPOの調製(その3)
実施例9で合成した(7)を用いる代わりに実施例14で合成した(8)を用いる以外実施例15と同様の方法で調製した。(25mg/mL)
【0058】
実施例21:ブランクミセルの調製
実施例6(m=30)で合成したPEG−b−PCMS 1gをメタノール160mLに溶解させ、分画分子量3,000のホローファイバー型透析モジュール(mPES Midikros(登録商標)Modules 3kD IC 0.5mm D06−E003−05−N)で10Lの水に対して透析した(6.25mg/mL)。
【0059】
実施例22:newRNPNの経口投与による血中取り込み評価と安全性
実施例9(m=30)で作製したnewRNPNの経口投与による評価を行った。
【0060】
38g〜41gの10週齢IGSマウスを一群5匹(入荷から本実験終了までの期間中、室温23℃C(±1℃)、湿度50%、12時間明暗サイクルの条件下で飼育を行い、餌および水は自由に摂取させた)で下記のようにnewRNPNを投与した。
群1:自由水投与
群2:newRNPN水溶液を、ゾンデを用いて胃内に1日1回強制投与した(1日目:10mg/mLを1mL投与、2日目以降:20mg/mLを1mL投与)。
群3:水の代わりに5mg/mLのnewRNPN水溶液を摂水瓶にて自由摂取した。
群4:水の代わりに10mg/mLのnewRNPN水溶液を摂水瓶にて自由摂取した。
群5:水の代わりに20mg/mLのnewRNPN水溶液を摂水瓶にて自由摂取した。
群6:水の代わりに20mg/mLのnewRNPO水溶液を摂水瓶にて自由摂取した。
【0061】
群1と群3〜6の摂水量は表1に示すように変わりなかった。
【0062】
【表1】
【0063】
血中への取り込みを電子スピン共鳴スペクトルによって調べたところ、投与群6のnewRNPOは血中に全く取り込まれないことが確認された。一方、ゾンデで強制投与した群3は4日まで血中濃度が増加し、一定に達した。自由摂水群では濃度依存的に血中濃度が増加する傾向が見られ、10mg/mL以上で6日後に強制投与群と同レベルに達した(図16参照)。
【0064】
実施例23:アセトアミノフェン誘起肝毒性に対する効果
実施例16(m=13)で作製したnewRNPNの経口投与による評価を行った。
【0065】
38g〜41gの10週齢IGSマウスを一群6匹(入荷から本実験終了までの期間中、室温23℃(±1℃)、湿度50%、112時間明暗サイクルの条件下で飼育を行い、餌および水は自由に摂取させた)で下記のようにnewRNPNを投与した。
群1:無処理コントロール(この群だけ4匹)
群2:実験開始7日目にアセトアミノフェンを3mg/kg経口投与
群3:実施例21で合成したブランクミセル(6.25mg/mL、160mg/kg)1mLを1日1回ゾンデによる強制投与を行い、7日目にアセトアミノフェンを3mg/kg経口投与した。
群4:実施例16(m=13)で合成したnewRNPN(6.25mg/mL、160mg/kg)1mLを1日1回ゾンデによる強制投与を行い、7日目にアセトアミノフェンを3mg/kg経口投与した。
群5:4−アミノ−TEMPO 170mg/kgを1日1回ゾンデによる強制投与を行い、7日目にアセトアミノフェンを3mg/kg経口投与した。
群6:アセチルシステイン600mg/kgを1日1回ゾンデによる強制投与を行い、7日目にアセトアミノフェンを3mg/kg経口投与した。
【0066】
この実験条件でアセトアミノフェン投与前後のマウス生存数を表2に示す。IGSマウスに対するアセトアミノフェン3mg/kgでは肝障害効果が強すぎるため、2/3が1日以内に死亡した(群2)。ブランクミセル(群3)、4−アミノ−TEMPO(群5)およびアセチルシステイン(群6)でも同様の傾向にある。一方newRNPNではすべてのマウスが生存していた(群4)。
【0067】
【表2】
【0068】
肝機能の指標を示すプロトロンビン時間は4−アミノ−TEMPOおよびアセチルシステインでは延長が認められるものの、newRNPNでは対照群と同一レベルであった(図17)。スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)産生量を定量した結果、アセトアミノフェン投与群および他の押薬物投与群が著しい低下をしているものの、newRNPN投与群では対照群と同一レベルであった(図18)。
【0069】
肝機能指標のアルブミン量、AST、ALT、ALP酵素レベルを測定したところ、低分子4−アミノ−TEMPOは極めて高い毒性を示すのに対し、newRNPNでは極めて低肝毒性を示した(図19〜22)。
【0070】
このように本発明のnewRNPNは肝毒性を示さず、アセトアミノフェン誘起肝障害を抑えることが示された。
【0071】
実施例24:newRNPNおよびnewRNPOの血中滞留性
実施例15〜20で作製したnewRNPNおよびnewRNPOを静脈投与し、血中滞留性評価を行った。38〜41gの10週齢IGSマウスを一群5匹(入荷から本実験終了までの期間中、室温23℃(±1℃)、湿度50%、12示間明暗サイクルの条件下で飼育を行い、餌および水は自由に摂取させた)で下記のようにnewRNPNおよびnewRNPO血中滞留性評価を行った。
群1:4−アミノ−TEMPO(10mg/mLを200μL尾静注投与、50mg/kg)
群2:newRNPN(実施例15(m=30)の試料を25mg/mLを200μL尾静注投与、125mg/kg)
群3:newRNPN(実施例16(m=13)の試料を25mg/mLを200μL尾静注投与、125mg/kg)
群4:newRNPN(実施例17(m=42)の試料を50mg/mLに濃縮後、200μL尾静注投与、250mg/kg)
群5:newRNPO(実施例18(m=30)の試料を50mg/mLに濃縮後、250μL尾静注投与、312.5mg/kg)
群6:newRNPO(実施例19(m=13)の試料を50mg/mLに濃縮後、200μL尾静注投与、250mg/kg)
群7:newRNPO(実施例20(m=42)の試料を50mg/mLに濃縮後、200μL尾静注投与、250mg/kg)
【0072】
投与後5分、15分、30分、1時間、4時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間に血液を採取し、遠心分離後上清にフェリシアン化カリウムを加えてXバンド電子スピン共鳴装置にて定量した。
【0073】
図23にRNPの血中濃度変化を示す。わかりやすくするため、WO2009/133647試験例4のデータを図23に加えて比較データとした。図に示されるように、本発明で調製したnewRNPは旧来型のRNPに比べてABA型のブロック共重合体を含まないため、その血中滞留性が極めて向上していることが確認された。特にnewRNPOでは静脈投与後4日以上も滞留していることが確認された。
【0074】
実施例25:CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2(CH2CH(PhCH2P(=O)(OCH2CH32))mSC(=S)Ph(9)の合成
200mLフラスコに20mLのTHF、亜リン酸ジエチルを1.3gおよびブチルリチウム6.5mL(10mmol)を加えて攪拌し、LiP(=O)(OCH2CH32を調製する。500mLフラスコ中、実施例6で合成した(6)を3g、ジメチルフォルムアミド(DMF)を50mL、上で調製したLiP(=O)(OCH2CH32溶液を加え、2日間室温で反応させた。反応混合液を500mLの冷2−プロパノールに沈殿させ、遠心分離(4℃C、9000rpm、2分)後、減圧乾燥した。得られた(9)のNMRを図24に示す。収量3g。リン酸ジエチル置換度80%
【0075】
実施例26:CH3O−(CH2CH2O)nCH2PhCH2(CH2CH(PhCH2P(=O)(OH)2))mSC(=S)Ph(10)の合成
100mLフラスコに20mLのCHCl3、(9)を2g、臭化トリメチルシリル2mを加え、45℃、2時間反応させた後、クロロホルムを留去し、80mLのメタノールを加えて15時間室温で反応させた。溶液を水に対して透析し、減圧乾燥した。得られた(10)NMRを図25に示す。収量1.5g。リン酸ジエチルの加水分解度90%。
実施例27: 4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボラノフェニルメトキシ−(CH2CH2O)OH(Pre)の合成
100mLフラスコ中にTHF50mL、市販の2−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボランを1.67g(7.1mmol)、カリウムナフタレン(8.0mL,0.9M)を加え、2−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボランのカリウムアルコラートを生成せしめた後、エチレンオキシド31g(0.7mol)を加えて室温下、2日間重合させた。重合後、反応混合液を700mLの冷2−プロパノールに沈殿させ、遠心分離(4℃、9000rpm、2分)後、減圧乾燥した。得られた(Pre)のSEC、1H−NMRおよび13C−NMRを、それぞれ図27図28図29に示す。収量28g、収率90%。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
図17
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