特許第6593946号(P6593946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6593946
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】装身具の挟着構造
(51)【国際特許分類】
   A44C 7/00 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   A44C7/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-71975(P2019-71975)
(22)【出願日】2019年4月4日
【審査請求日】2019年4月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594031532
【氏名又は名称】株式会社ピアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100080654
【弁理士】
【氏名又は名称】土橋 博司
(72)【発明者】
【氏名】宅間 謙二
【審査官】 村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】 実開平2−147023(JP,U)
【文献】 特開2000−229007(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3139659(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主装飾体と他方の挟着部材とで構成され、前記主装飾体と挟着部材の端部にはそれぞれ一対の取付脚部と、その間に挟み込まれる取付基部とを形成するとともに、前記一対の取付脚部と取付基部との間に1枚もしくは2枚以上の弾性を有する金属板材を介装してこれらを軸着し、前記金属板材とともに該軸部を加締めてなるイヤリングであって、
前記取付基部はその外周に凹溝ないし切欠きが形成されており、一方の主装飾体と他方の挟着部材とにそれぞれ形成された取付脚部と取付基部とが相対的に回動する際、前記金属板材は前記取付基部の凹溝ないし切欠き内に向かって内向きにたわみ、該たわみ部分が前記取付基部の前記凹溝ないし切欠きの端縁に係合するようにしたことを特徴とする装身具の挟着構造。
【請求項2】
前記金属板材は、その厚さを0.1〜0.3mmの範囲のものとしたことを特徴とする請求項1に記載の装身具の挟着構造。
【請求項3】
前記取付基部の外周に形成した凹溝ないし切欠きは、U字ないしV字状の断面に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の装身具の挟着構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は装身具の挟着構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、従来から新規なクリップ式イヤリングを提案してきた。
先ず第1に、特開平10−276810号公報(特許文献1参照)において、図9に示すように一対の取付脚部22,23を備えた主装飾体21と、一対の取付脚部22,23間に納まる取付基部25が形成された挟着部材24とを備え、取付脚部22,23と取付基部25との間にワッシャ26を介在させた上、これらをピン27によって貫通させ、かつ当該部位を加締めることによって両者を閉じた際に挟着力を付与するクリップ式イヤリングを提案した。
【0003】
上述のワッシャ状の板材を介在させたクリップ式イヤリングにおいては、耳たぶに対しては両者の摩擦によってそれ程大きな挟着力を発揮せずに装着することができ、またこの両者の開閉を繰り返すことによって接触し合う取付脚部と取付基部とが接触摩擦により摩耗したり変形することもある程度防ぐことができるものの、使用中に挟着力が低下しやすいという問題はいまだ残されたままである。
【0004】
そこで本発明者は、実用新案登録第3130993号公報(特許文献2)において、図10に示すように一方の主装飾体31と他方の挟着部材34とに一対の取付脚部32,33と取付基部35とを形成するとともに、前記一対の取付脚部32,33と取付基部35との間に少なくとも2枚以上の平滑な金属板材36を介装してこれらをピン37によって軸着するとともに、前記金属板材36とともに該軸部を加締めてなるイヤリングであって、前記取付基部35の板面には前記金属板材36よりも大きい面積の凹部38が形成されているクリップ式イヤリングを提案した。
【0005】
また、前記一対の取付脚部32,33と取付基部35との間にさせる平滑な金属板材36が1枚であってもよいことを見出し、実用新案登録第3139659号公報(特許文献3)も提案している。
【0006】
これらの、実用新案登録第3130993号公報(特許文献2)および実用新案登録第3139659号公報(特許文献3)においては、前記一対の取付脚部と取付基部との間に1枚もしくは2枚以上の平滑な金属板材を介装してこれらを軸着するとともに、前記金属板材とともに該軸部を加締めてなるイヤリングであって、前記取付基部の板面には前記金属板材よりも大きい面積の凹部が形成されている。
しかしながら、平滑な金属板材を1枚以上とすることによって挟着力が極めて長期間にわたって保持されるというメリットはあるものの、製造が煩雑でコストアップを招いてしまうという問題があった。
【0007】
そのため本発明者は、特許第4592116号公報(特許文献4参照)において、一方の主装飾体と他方の挟着部材とに一対の取付脚部と取付基部とを形成するとともに、前記一対の取付脚部と取付基部との間に1枚もしくは2枚以上の弾性を有する平滑な金属板材を介装してこれらを軸着し、前記金属板材とともに該軸部を加締めてなるイヤリングであって、前記取付基部は前記金属板材の直径よりも細い幅に形成されており、一方の主装飾体と他方の挟着部材とにそれぞれ形成された取付脚部と取付基部とが相対的に回動する際、前記金属板材は前記取付基部との当接部分に掛かる負荷で前記取付基部の幅方向の端縁との交差部分が内向きにたわみ、該たわみ部分が前記取付基部の前記端縁との間で係合するようにしたクリップ式イヤリングを提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−276810号公報
【特許文献2】実用新案登録第3130993号公報
【特許文献3】実用新案登録第3139659号公報
【特許文献4】特許第4592116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許第4592116号公報(特許文献4)の発明においては、前記取付基部が前記金属板材の直径よりも細い幅に形成されているため、金属板材が前記取付基部からはみ出して美観を損ねたり、取扱い時に手指を傷つけてしまうおそれがあったのである。
そこで本発明者は鋭意研究を続けていたところ、取付基部(オス)に欠けのあるものが見つかったので、試みに金属板材を組み付けてその効果について検証してみた。
その結果、前記特許第4592116号公報(特許文献4)の発明と同等、あるいはそれ以上の挟着力が極めて長期間にわたって保持されるという効果が得られていることが判明したのである。
【0010】
したがってこの発明の装身具の挟着構造は、前記取付基部がその外周に凹溝ないし切欠きが形成されており、一方の主装飾体と他方の副装飾体(挟着部材)とにそれぞれ形成された取付脚部と取付基部とが相対的に回動する際、前記金属板材は前記取付基部の凹溝ないし切欠き内に向かって内向きにたわみ、該たわみ部分が前記取付基部の前記凹溝ないし切欠きの端縁に係合するため、前記金属板材にかかる負荷が前記取付基部の凹溝ないし切欠きの端縁との交差部分にかかって大きな挟着力が得られ、長い期間の使用に耐えられる装身具の挟着構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわちこの発明の装身具の挟着構造は、一方の主装飾体と他方の副装飾体(挟着部材)とで構成され、前記主装飾体と副装飾体(挟着部材)の端部にはそれぞれ一対の取付脚部と、その間に挟み込まれる取付基部とを形成するとともに、前記一対の取付脚部と取付基部との間に1枚もしくは2枚以上の弾性を有する金属板材を介装してこれらを軸着し、前記金属板材とともに該軸部を加締めてなるイヤリングであって、
前記取付基部はその外周に凹溝ないし切欠きが形成されており、一方の主装飾体と他方の副装飾体(挟着部材)とにそれぞれ形成された取付脚部と取付基部とが相対的に回動する際、前記金属板材は前記取付基部の凹溝ないし切欠き内に向かって内向きにたわみ、該たわみ部分が前記取付基部の前記凹溝ないし切欠きの端縁に係合するようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
この発明の装身具の挟着構造において、前記金属板材は、その厚さを0.1〜0.3mmの範囲のものとしたことをも特徴とするものである。
【0013】
この発明の装身具の挟着構造において、前記取付基部の外周に形成した凹溝ないし切欠きは、U字ないしV字状の断面に形成されていることをも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のようにこの発明においては、前記取付基部はその外周に凹溝ないし切欠きが形成されており、一方の主装飾体と他方の副装飾体(挟着部材)とにそれぞれ形成された取付脚部と取付基部とが相対的に回動する際、前記金属板材は前記取付基部の凹溝ないし切欠き内に向かって内向きにたわみ、該たわみ部分が前記取付基部の前記凹溝ないし切欠きの端縁に係合するようにしたものである。
そうすることによって、意外にも前記引用文献4の発明よりも挟着力が向上し、しかもその挟着力が極めて長期間にわたって保持されるという顕著な効果を奏することが可能となり、この種の製品の弱点であった挟着力の持続に関する問題点を根本的に解消することに成功したのである。
試みに、取付基部の外周にその直径の1/3の深さに形成したU字状断面の切欠きと、0.15mmの厚さの3枚の金属板材をそれぞれ取付基部の両側に配した試作品で実験すると、5千回の開閉操作をした後においても充分使用に耐える保持力を有していた。
また、前記引用文献4の先行技術においては、金属板材を取付基部の幅よりもはみ出させるため、軸ピンの位置を前記取付基部の中心位置よりもずらしてあり、その取付作業が非常に面倒であったのであるが、本発明においてはその点も解消されている。
【0015】
この発明における装身具の挟着構造が、耳たぶへの挟着力が従来に比して飛躍的に高まり、しかもその挟着力が長期間一定に保持されることとなるという機能については、前記金属板材にかかる負荷が前記取付基部の凹溝ないし切欠きの端縁との交差部分に作用して金属板材がたわむことに起因する金属板材の弾性が直接的に作用し、そのような顕著な効果を奏することができるようになったものと考えられる。
また、前記取付基部の凹溝ないし切欠きの端縁との交差部分に金属板材の板面が接触して係合することによる摩擦が、挟着力の向上等に影響していることも考えられる。
ちなみに、従来の単にワッシャを介在させたイヤリングでは、数十回〜百数十回くり返して開閉操作すると挟着力の低下が見られたのに対し、この発明におけるイヤリングでは数千回以上の開閉操作でも挟着力の低下がまったく見られず、挟着力自体も従来のワッシャ型のイヤリングよりも格段に優れていたのである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の装身具の挟着構造の1実施例を示す側面図である。
図2】(a)は両側の装飾体を閉じた状態の斜視図、(b)は両側の装飾体を開いた状態の斜視図である。
図3】(a)は軸着部分の分解状態の透視図、(b)は軸着部分の分解状態の断面図である。
図4】それを組み付けた状態の断面図である。
図5】V字状断面の切欠きを適用した場合の軸着部分の拡大図である。
図6】それを開いた状態の拡大図である。
図7】U字状断面の切欠きを適用した場合の軸着部分の拡大図である。
図8】それを開いた状態の拡大図である。
図9】装身具の挟着構造の従来例を示す概略図である。
図10】装身具の挟着構造の別の従来例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の装身具の挟着構造の実施の形態を図面に基いてより詳しく説明する。
本発明の装身具の挟着構造をクリップ式イヤリングに適用した図1ないし図6に示す実施例において、1は主装飾体であり、2は耳たぶ挟着部材としての副装飾体であって、その全体形状はほぼ同じ円弧状で、組み付けた状態ではリング状をなしている。なお、この例では前面側にダイヤモンド等からなる宝石は取り付けていないが、宝石を装着することは自由であり、もちろん、両者はいずれの側を耳たぶの表側に向けて装着してもよい。また断面形状もほぼ矩形断面であるが、甲丸等を排除するものではない。なお素材としてはともに金(K−18等)やプラチナ、銀等が使用可能である。
前記主装飾体1の連結部分には一対の取付脚部3,4が一体に備えられ、これと対向して副装飾体2の連結部分には前記取付脚部3,4間に嵌り合う取付基部5が一体に形成されている。
【0018】
そして、これらに開けられた貫通孔6,7に軸ピン8を挿通し、この部位を加締めることとなるが、この際、取付脚部3,4と取付基部5との間に、厚さ0.1〜0.3mm、好ましくは厚さ0.15mmのステンレス製等の、弾性のある1枚もしくは2枚以上の平滑な金属板材9を介して加締めたものである。
平滑な金属板材9の厚さを0.1〜0.3mmの範囲のものとした理由は、0.1mm以下の場合にその弾性が生かせなくなってしまうためである。また0.3mm以上の場合には、金属板材9そのものの弾性がなくなってしまうためである。
金属板材9は1枚もしくは2枚以上であってよいが、2枚以上を用いた場合であっても経済性や組み付けの作業性等には問題がなく、挟着力の持続性を勘案すれば2枚以上とすることが望ましい。
なお、符号10,11は主装飾体1および副装飾体2の端面に形成した耳当部である。
【0019】
この実施例においては、前記取付基部5には、図3(a)、(b)ないし図6に示すように、その外周にはV字状断面の凹溝ないし切欠き5aが形成されており、一方の主装飾体1と他方の副装飾体2とにそれぞれ形成された取付脚部3,4と取付基部5とが相対的に回動する際、前記金属板材9は前記取付基部5の凹溝ないし切欠き5a内に向かって内向きにたわみ、該たわみ部分が前記取付基部5の前記凹溝ないし切欠き5aの端縁に係合するようにしたものである。
すなわち、一方の主装飾体1と他方の副装飾体2とにそれぞれ形成された取付脚部3,4と取付基部5とが相対的に回動する際、前記金属板材9にかかる負荷が前記取付基部5の前記凹溝ないし切欠き5aの端縁との交差部分にかかるようにしてあるのである。
【0020】
図7および図8は本発明の他の実施例を示すものであり、前記取付基部5の外周にはU字状断面の凹溝ないし切欠き5bが形成されている。なお、U字状断面の凹溝ないし切欠き5bの場合も、V字状断面の凹溝ないし切欠き5aと同様の作用効果を得ることができた。
【0021】
この実施例におけるクリップ式イヤリングが、耳たぶへの挟着力が従来に比して飛躍的に高まり、しかもその挟着力が長期間一定に保持されることとなるという機能については、軸部を加締めた際に、金属板材9に前記取付基部5の凹溝ないし切欠き5aの軸ピン8からほぼ放射状に延びる端縁との交差部分において、1枚もしくは2枚以上の金属板材9がたわんで係合することに起因する金属板材9の弾性が効果的に作用し、そのような顕著な効果を奏することができるようになったものと考えられる。
また、前記取付基部5の前記凹溝ないし切欠き5aの端縁と金属板材9の板面との摩擦が、挟着力の向上等に影響していることも考えられる。
【0022】
ちなみに、従来の単にワッシャを介在させたイヤリングでは、数十回〜百数十回くり返して開閉操作すると挟着力の低下が見られたのに対し、この実施例におけるイヤリングでは数千回以上の開閉操作でも挟着力の低下がほとんど見られず、挟着力自体も従来のワッシャ型のイヤリングよりも格段に優れていたのである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
この発明は以上の通り、前記取付基部の外周に凹溝ないし切欠きが形成されており、一方の主装飾体と他方の副装飾体とにそれぞれ形成された取付脚部と取付基部とが相対的に回動する際、前記金属板材にかかる負荷が前記取付基部の凹溝ないし切欠きの端縁との交差部分にかかるようにしたものである。
したがって、図示したような円弧状の装飾体を用いた場合のみならず、その他のデザインや、ピアス用のピンを設けたイヤリングにも適用可能であることはいうまでもない。
また、本発明の要旨を変更しない限り、イヤリングのみならず、指輪やブレスレット等の開閉操作を行うことが必要な各種の装身具にも適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0024】
1 主装飾体
2 副装飾体
3,4 取付脚部
5 取付基部
5a V字状断面の凹溝ないし切欠き
5b U字状断面の凹溝ないし切欠き
6,7 貫通孔
8 軸ピン
9 金属板材
10,11 耳当部
21 主装飾体
22,23 取付脚部
24 挟着部材
25 取付基部
26 ワッシャ
27 ピン
31 主装飾体
32,33 取付脚部
34 挟着部材
35 取付基部
36 金属板材
37 ピン
38 凹部
【要約】      (修正有)
【課題】金属板材にかかる負荷が取付基部の凹溝ないし切欠きの端縁との交差部分にかかって大きな挟着力が得られるイヤリングの提供。
【解決手段】主装飾体1と副装飾体2とで構成され、前記主装飾体と副装飾体の端部にはそれぞれ一対の取付脚部3,4と、その間に挟み込まれる取付基部5とを形成するとともに、前記一対の取付脚部と取付基部との間に1枚もしくは2枚以上の弾性を有する金属板材を介装してこれらを軸着し、前記金属板材とともに該軸部を加締めてなるイヤリングであり、前記取付基部はその外周に凹溝ないし切欠き5aが形成されており、一方の主装飾体と他方の副装飾体とにそれぞれ形成された取付脚部と取付基部とが相対的に回動する際、前記金属板材は前記取付基部の凹溝ないし切欠き内に向かってたわみ、該たわみ部分が前記取付基部の前記凹溝ないし切欠きの端縁に係合するようにした装身具の挟着構造。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10