特許第6593992号(P6593992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ KDDI株式会社の特許一覧

特許6593992入力支援装置、入力支援システムおよびプログラム
<>
  • 特許6593992-入力支援装置、入力支援システムおよびプログラム 図000005
  • 特許6593992-入力支援装置、入力支援システムおよびプログラム 図000006
  • 特許6593992-入力支援装置、入力支援システムおよびプログラム 図000007
  • 特許6593992-入力支援装置、入力支援システムおよびプログラム 図000008
  • 特許6593992-入力支援装置、入力支援システムおよびプログラム 図000009
  • 特許6593992-入力支援装置、入力支援システムおよびプログラム 図000010
  • 特許6593992-入力支援装置、入力支援システムおよびプログラム 図000011
  • 特許6593992-入力支援装置、入力支援システムおよびプログラム 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593992
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】入力支援装置、入力支援システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/22 20060101AFI20191010BHJP
   G06F 17/27 20060101ALI20191010BHJP
   G06F 3/023 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   G06F17/22 623
   G06F17/27 660
   G06F3/023 460
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-266360(P2014-266360)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-126497(P2016-126497A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 俊幸
【審査官】 成瀬 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−034395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/20−17/28
G06F 3/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の候補単語予測機能を有し、いずれかの前記候補単語予測機能を用いて、文字入力の支援を行なう入力支援装置であって、
ユーザの入力操作により取得される入力中の文字列を含み、かつ、候補単語、候補単語の累計回数、入力時刻または入力中の文字列の表示時間を少なくとも一つ含む情報を保持情報として格納する格納部と、
前記各候補単語予測機能が前記保持情報を用いて予め候補単語予測機能ごとに定義された方法によって予測した候補文字列または候補単語の生起確率をスコアとして算出し、前記算出した各スコアを比較して、複数の候補単語予測機能から少なくとも1つの候補単語予測機能を推定する候補単語予測機能推定部と、
使用される候補単語予測機能が、前記推定された候補単語予測機能となるように、前記推定された候補単語予測機能の状態を有効に切り替える候補単語予測機能切り替え部と、を備えることを特徴とする入力支援装置。
【請求項2】
前記候補単語予測機能推定部は、前記算出されたスコアが最大となる候補単語予測機能を特定し、
前記候補単語予測機能切り替え部は、使用される候補単語予測機能が、前記特定された候補単語予測機能となるように切り替えることを特徴とする請求項1記載の入力支援装置。
【請求項3】
前記候補単語予測機能推定部は、ユーザの入力スキルを示すスキル情報を取得し、前記スキル情報によって入力されるスキルに応じて、候補単語予測機能の推定を実行することを特徴とする請求項1または請求項2記載の入力支援装置。
【請求項4】
前記候補単語予測機能推定部は、ユーザの入力スキルを示すスキル情報を取得し、前記スキル情報によって入力されるスキルが第1の閾値以下である場合に、候補単語予測機能の推定を実行することを特徴とする請求項3記載の入力支援装置。
【請求項5】
前記候補単語予測機能推定部は、現在有効ではない候補単語予測機能が最適だと推定した推定回数をカウントし、前記カウントした推定回数が第2の閾値を超えた場合、
前記候補単語予測機能切り替え部は、使用される候補単語予測機能として、前記推定回数が前記第2の閾値を超えた候補単語予測機能を有効に切り替えることを特徴とする請求項3または請求項4記載の入力支援装置。
【請求項6】
前記推定結果に応じたアドバイスの提示または推奨を行なうアドバイス提示部を更に備えること特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の入力支援装置。
【請求項7】
サーバ装置と端末装置とから構成され、複数の候補単語予測機能を有し、文字入力の支援を行なう入力支援システムであって、
前記端末装置は、
ユーザからの入力を受け付ける入力部と、
少なくとも入力された文字列を画面に表示する表示部と、を備え、
前記サーバ装置は、
前記端末装置からユーザの入力操作により取得される入力中の文字列を含み、かつ、候補単語、候補単語の累計回数、入力時刻または入力中の文字列の表示時間を少なくとも一つ含む情報を取得し、保持情報として格納する格納部と、
前記各候補単語予測機能が前記保持情報を用いて予め候補単語予測機能ごとに定義された方法によって予測した候補文字列または候補単語の生起確率をスコアとして算出し、前記算出した各スコアを比較して、複数の候補単語予測機能から少なくとも1つの候補単語予測機能を推定する候補単語予測機能推定部と、
使用される候補単語予測機能が、前記推定された候補単語予測機能となるように、前記推定された候補単語予測機能の状態を有効に切り替える候補単語予測機能切り替え部と、を備えることを特徴とする入力支援システム。
【請求項8】
複数種類の候補単語予測機能を有し、いずれかの前記候補単語予測機能を用いて、文字入力の支援を行なう入力支援装置のプログラムであって、
格納部において、ユーザの入力操作により取得される入力中の文字列を含み、かつ、候補単語、候補単語の累計回数、入力時刻または入力中の文字列の表示時間を少なくとも一つ含む情報を保持情報として格納する処理と、
候補単語予測機能推定部において、前記各候補単語予測機能が前記保持情報を用いて予め候補単語予測機能ごとに定義された方法によって予測した候補文字列または候補単語の生起確率をスコアとして算出し、前記算出した各スコアを比較して、複数の候補単語予測機能から少なくとも1つの候補単語予測機能を推定する処理と、
候補単語予測機能切り替え部において、使用される候補単語予測機能が、前記推定された候補単語予測機能となるように、前記推定された候補単語予測機能の状態を有効に切り替える処理と、を含む一連の処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な候補単語予測機能を推定し、推定された候補単語予測機能に切り替えることにより文字入力の支援を行なう技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、PCや携帯端末での文字入力装置には、ユーザが現在入力中の文字列に対して、前方一致などにより所望の文字列を補完する「補完(complete)」機能と、形態素解析などにより各形態素などの各要素に分割し、その各要素に対して仮名漢字変換を行なう「仮名漢字変換(convert)」機能と、入力文字列に対して誤入力を修正し、所望の文字列を予測する「文字列修正(correct)」機能に代表されるような、複数の入力支援機能に関する技術が開示されている。
【0003】
これらの機能を用いる際には、どの候補単語予測機能を使用するかユーザが明示的に切り替えて用いる方法、および、使用する全候補単語予測機能もしくはいずれかの候補単語予測機能が予め決められており、その予め決められた候補単語予測機能によって、候補単語をまとめて表示する方法がある。
【0004】
ユーザが明示的に切り替える方法として、特許文献1では、ユーザのタッチ操作に基づいて文字列修正対象文字を選択するという文字入力装置が開示されている。また、製品では、Apple社が提供しているMac(Mackintosh)やオムロン社が提供しているiWnnを搭載したスマートフォンでの入力では、文字の入力に対して、通常は、「補完」が行なわれ、候補単語表示部に「補完」機能により予測された候補単語が表示される(図6A)。そして、スペースキー61や変換キー63が押された時に、「仮名漢字変換」機能により、予測された候補単語が表示される(図6B)。これらの機能は、ユーザが各候補単語予測機能の挙動を把握していることにより、使用する候補単語予測機能をユーザ自身で明示的に切り替えるため、余計な機能が動作しない。その結果、ユーザが所望する文字列を取得しやすいというメリットがある。
【0005】
また、予め決められた候補単語予測機能によって候補単語をまとめて表示する方法として、スマートフォンやタブレットに文字変換技術として搭載されているSwiftKeyなどがある。図7に示すように、尤もらしい「文字列修正」された文字列と、それに基づく「補完」結果が、尤度等のスコア順に並べられ、「文字列修正」および「補完」結果が混在して表示されている。この結果、ユーザが候補単語予測機能を切り替える操作が不必要であるというメリットがある。
【0006】
そして、PCや携帯端末の操作は、一般的に難しいという問題があるため、ユーザの習熟度に従って操作を支援するという技術が存在する。例えば、特許文献2および特許文献3では、文字入力に限らず、操作面を指示したときに操作が受け付けられた場合など、各画面の表示時間や有効キーの割合に応じて、ユーザの操作の習熟度を判断し、習熟度が低い場合には、操作チュートリアルの表示やGUIパターンの変更を行なう装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−102465号公報
【特許文献2】特開2014−197329号公報
【特許文献3】特開2014−016781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、ユーザが仮名漢字変換や仮名漢字変換結果等の挙動を把握していないと、候補単語予測機能の切り替え操作を適切に行なうことはできない。その結果、PCや携帯端末の操作に不慣れなユーザは、同機能を使いこなすことが困難になる傾向がある。
【0009】
また、SwiftKeyで実装されている技術は、スマートフォンやタブレットのように候補単語表示領域が限定された端末においては、候補単語表示領域に全ての候補単語を表示することができないため、可視性、操作性が低下する課題がある。そして、入力中文字列において、途中の文字の入力を誤った場合に、補完機能や仮名漢字変換機能では所望でない候補が表示されうるため、デメリットが顕在化しがちである。
【0010】
また、特許文献2および特許文献3では、オブジェクト操作にのみ言及しており、文字入力について踏み込んだ技術は開示されていない。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、適切な候補単語予測機能を推定し、推定された候補単語予測機能に切り替えを行なうことによって、操作に不慣れなユーザに対し、ユーザが所望する文字列を表示することができる入力支援装置、入力支援システムおよびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、複数種類の候補単語予測機能を有し、いずれかの前記候補単語予測機能を用いて、文字入力の支援を行なう入力支援装置であって、ユーザの入力操作に基づいて定まる情報を保持情報として格納する格納部と、前記保持情報を用いて、各候補単語予測機能の生起確率をスコアとして算出し、前記算出した各スコアを比較して、複数の候補単語予測機能から少なくとも1つの候補単語予測機能を推定する候補単語予測機能推定部と、使用される候補単語予測機能が、前記推定された候補単語予測機能となるように切り替える候補単語予測機能切り替え部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
このように、ユーザの入力操作に基づいて定まる情報を保持情報として格納し、保持情報を用いて、各候補単語予測機能の生起確率をスコアとして算出し、算出した各スコアを比較して、複数の候補単語予測機能から少なくとも1つの候補単語予測機能を推定し、使用される候補単語予測機能が、推定された候補単語予測機能となるように切り替えるので、PCや携帯端末の操作に不慣れなユーザであっても、ユーザは候補単語予測機能を意識することなく、所望する文字列または候補単語を取得することが可能となる。また、機能を適切に切り替えるように限定することにより、表示に際する視認性、操作性低減を防ぐことが可能となる。
【0014】
(2)また、本発明の入力支援装置において、前記候補単語予測機能推定部は、前記算出されたスコアが最大となる候補単語予測機能を特定し、前記候補単語予測機能切り替え部は、使用される候補単語予測機能が、前記特定された候補単語予測機能となるように切り替えることを特徴とする。
【0015】
このように、候補単語予測機能推定部は、算出されたスコアが最大となる候補単語予測機能を特定し、候補単語予測機能切り替え部は、使用される候補単語予測機能が、特定された候補単語予測機能となるように切り替えるので、複数種類ある候補単語予測機能の中から、最も適切な候補単語予測機能を提供することが可能となる。
【0016】
(3)また、本発明の入力支援装置において、前記候補単語予測機能推定部は、ユーザの入力スキルを示すスキル情報を取得し、前記スキル情報によって入力されるスキルに応じて、候補単語予測機能の推定を実行することを特徴とする。
【0017】
このように、候補単語予測機能推定部は、ユーザの入力スキルを示すスキル情報を取得し、スキル情報によって入力されるスキルに応じて、候補単語予測機能の推定を実行するので、ユーザのスキルに応じて候補単語予測機能の推定を行なうか判断することが可能となる。
【0018】
(4)また、本発明の入力支援装置において、前記候補単語予測機能推定部は、ユーザの入力スキルを示すスキル情報を取得し、前記スキル情報によって入力されるスキルが第1の閾値以下である場合に、候補単語予測機能の推定を実行することを特徴とする。
【0019】
このように、候補単語予測機能推定部は、ユーザの入力スキルを示すスキル情報を取得し、スキル情報によって入力されるスキルが第1の閾値以下である場合に、候補単語予測機能の推定を実行するので、ユーザのスキルに応じて候補単語予測機能の推定を行なうか判断することが可能となる。
【0020】
(5)また、本発明の入力支援装置において、前記候補単語予測機能推定部は、各候補単語予測機能の推定回数を記憶し、前記推定回数が第2の閾値を超えた場合、当該候補単語予測機能の推定を実行することを特徴とする。
【0021】
このように、候補単語予測機能推定部は、各候補単語予測機能の推定回数を記憶し、推定回数が第2の閾値を超えた場合、当該候補単語予測機能の推定を実行するので、候補単語予測機能の切り替えの頻度を最小限に押さえつつ、自装置に対し、複数種類ある候補単語予測機能の中からより最適な候補単語予測機能に切り替えを行なうことができる。
【0022】
(6)また、本発明の入力支援装置において、前記推定結果に応じたアドバイスの提示または推奨を行なうアドバイス提示部を更に備えることを特徴とする。
【0023】
このように、推定結果に応じたアドバイスの提示または推奨を行なうので、ユーザ自身の判断で候補単語予測機能を切り替えることが可能となる。
【0024】
(7)また、本発明の入力支援装置において、前記保持情報は、少なくとも、入力中の文字列、候補単語、候補単語の累計回数、入力時刻または入力中の文字列の表示時間のいずれかを含むことを特徴とする。
【0025】
このように、保持情報は、少なくとも、入力中の文字列、候補単語、候補単語の累計回数、入力時刻または入力中の文字列の表示時間のいずれかを含むので、PCや携帯端末を操作するユーザの入力スキルを適切に取得し、ユーザのスキルに応じて、候補単語予測機能の推定の実行および切り替えを行なうことが可能となる。
【0026】
(8)また、本発明の入力支援システムは、サーバ装置と端末装置とから構成され、複数の候補単語予測機能を有し、文字入力の支援を行なう入力支援システムであって、前記端末装置は、ユーザからの入力を受け付ける入力部と、少なくとも入力された文字列を画面に表示する表示部と、を備え、前記サーバ装置は、前記端末装置からユーザの入力操作に基づいて定まる情報を取得し、保持情報として格納する格納部と、前記保持情報を用いて、各候補単語予測機能の生起確率をスコアとして算出し、前記算出した各スコアを比較して、複数の候補単語予測機能からいずれか1つの候補単語予測機能を推定する候補単語予測機能推定部と、使用される候補単語予測機能が、前記推定された候補単語予測機能となるように切り替える候補単語予測機能切り替え部と、を備えることを特徴とする。
【0027】
このように、ユーザの入力操作に基づいて定まる情報を保持情報として格納し、保持情報を用いて、各候補単語予測機能の生起確率をスコアとして算出し、算出した各スコアを比較して、複数の候補単語予測機能から少なくとも1つの候補単語予測機能を推定し、使用される候補単語予測機能が、推定された候補単語予測機能となるように切り替えるので、PCや携帯端末の操作に不慣れなユーザであっても、ユーザは候補単語予測機能を意識することなく、所望する文字列または候補単語を取得することが可能となる。また、機能を適切に切り替えるように限定することにより、表示に際する視認性、操作性低減を防ぐことが可能となる。
【0028】
(9)また、本発明のプログラムは、複数種類の候補単語予測機能を有し、いずれかの前記候補単語予測機能を用いて、文字入力の支援を行なう入力支援装置のプログラムであって、格納部において、ユーザの入力操作に基づいて定まる情報を保持情報として格納する処理と、候補単語予測機能推定部において、前記保持情報を用いて、各候補単語予測機能の生起確率をスコアとして算出し、前記算出した各スコアを比較して、複数の候補単語予測機能から少なくとも1つの候補単語予測機能を推定する処理と、候補単語予測機能切り替え部において、使用される候補単語予測機能が、前記推定された候補単語予測機能となるように切り替える処理と、を含む一連の処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0029】
このように、ユーザの入力操作に基づいて定まる情報を保持情報として格納し、保持情報を用いて、各候補単語予測機能の生起確率をスコアとして算出し、算出した各スコアを比較して、複数の候補単語予測機能から少なくとも1つの候補単語予測機能を推定し、使用される候補単語予測機能が、推定された候補単語予測機能となるように切り替えるので、PCや携帯端末の操作に不慣れなユーザであっても、ユーザは候補単語予測機能を意識することなく、所望する文字列または候補単語を取得することが可能となる。また、機能を適切に切り替えるように限定することにより、表示に際する視認性、操作性低減を防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、PCや携帯端末の操作に不慣れなユーザであっても、ユーザは候補単語予測機能を意識することなく、所望する文字列または候補単語を取得することができるようになる。また、候補単語予測機能を適切に切り替えるように限定するため、表示に際する視認性、操作性低減を防ぐことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本実施形態に係る入力支援装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る入力支援装置の動作例を示すフローチャートである。
図3】端末装置の画面表示例を示す図である。
図4】仮名漢字変換例のモデルを示す図である。
図5】アドバイスを提示した例を示す図である。
図6A】補完機能のよる表示例を示す図である。
図6B】仮名漢字変換機能による表示例を示す図である。
図7】文字訂正機能による表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明者らは、PCや携帯端末の操作に不慣れなユーザが候補単語予測機能を使いこなすことができない、または適切な候補単語予測機能が使われないことによりユーザが所望する候補文字列や候補単語が表示されないことに着目し、適切な候補単語予測機能を推定し、推定された候補単語予測機能に切り替えを行なうことによって、操作に不慣れなユーザであっても、候補単語予測機能を意識することなく、ユーザが所望する候補文字列または候補単語を候補単語表示部に表示することができることを見出し、本発明をするに至った。
【0033】
すなわち、本発明の入力支援装置は、複数種類の候補単語予測機能を有し、いずれかの前記候補単語予測機能を用いて、文字入力の支援を行なう入力支援装置であって、ユーザの入力操作に基づいて定まる情報を保持情報として格納する格納部と、前記保持情報を用いて、各候補単語予測機能の生起確率をスコアとして算出し、前記算出した各スコアを比較して、複数の候補単語予測機能から少なくとも1つの候補単語予測機能を推定する候補単語予測機能推定部と、使用される候補単語予測機能が、前記推定された候補単語予測機能となるように切り替える候補単語予測機能切り替え部と、を備えることを特徴とする。
【0034】
これにより、本発明者らは、適切な候補単語予測機能を推定し、推定された候補単語予測機能に切り替えを行なうことによって、操作に不慣れなユーザに対し、ユーザが所望する文字列を表示することを可能とした。以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0035】
図1は、本実施形態に係る入力支援装置の概略構成を示すブロック図である。この入力支援装置は、複数種類の候補単語予測機能から適切な候補単語予測機能を推定し、推定した候補単語予測機能に切り替えを行なう機能を有する。また更に、推定した候補単語予測機能の切り替えを行なう際に、フィードバックを提示することもできる機能を有する。なお、本実施形態では、スマートフォンにおけるタッチパネル操作を想定しているが、本発明は、スマートフォンにおけるタッチパネル操作に限定されるわけではなく、ハードキーを備えた端末装置に適用することも可能である。図1において、制御部1は、各構成要素の制御を行なう。キーボード3は、座標情報とキーボード上のキー(文字)との対応関係が定義されたキーボードを表示する。入力部5は、ユーザがキーボード上のキーにタッチした入力座標、またはユーザがタッチしてから離すまでの入力座標時系列を取得する。文字列表示部7は、入力中の文字およびユーザの操作により確定した文字を表示する。
【0036】
また、本発明の入力支援装置は、複数の格納部を備えており、各格納部については、以下、順を追って説明する。入力中文字列格納部11は、入力中の文字列を格納する。また、入力中文字列格納部11は、文字の最終入力時刻、文字の入力再開時刻、および入力中文字列に対し削除又はカーソルの移動等を行なった操作の累計回数も取得し、候補単語予測部21へ送信する。
【0037】
候補単語予測部21は、入力中文字列格納部11から受信した入力中文字列、累計回数、時刻、および表示されていた時間を受信し、候補単語予測機能推定部25および候補単語表示部9へ送信すると共に、候補単語を抽出する。候補単語表示部9は、候補単語予測部21で抽出した候補単語列を表示する。
【0038】
候補単語予測機能推定部25は、入力中文字列格納部11、候補単語群格納部、および辞書DBの辞書情報13から最適な候補単語予測機能を推定する。候補単語予測機能推定部25は、候補単語予測機能スコア算出部15および候補単語予測機能スコア比較部19を有する。候補単語予測機能スコア算出部15は、各候補単語予測機能の生起確率をスコアとして算出する。候補単語予測機能スコア比較部19は、候補単語予測機能のスコア算出部で算出された各候補単語予測機能のスコアを、比較できる形に変換、重みづけおよび正規化を行ない、スコアの順に結果を出力する。
【0039】
候補単語予測機能切り替え部27は、候補単語予測機能推定部25での比較結果をもとに、自装置の候補単語予測機能を切り替える。候補単語群格納部は、候補単語予測部21で抽出された候補単語列と、その累計、時刻、表示されていた時間を格納する。また、仮名漢字変換機能や文字列修正機能等の、補完機能以外の候補単語予測機能による候補単語列の抽出結果もバックグラウンドで予測され、格納される。アドバイス提示部23は、候補単語予測機能推定部25の結果をもとに、ユーザにアドバイスを提示する。
【0040】
図2は、本実施形態に係る入力支援装置の動作例を示すフローチャートである。まず、文字の入力があったかどうかを判断し(ステップS1)、入力がない場合は、この判断を繰り返す。一方、ステップS1において、文字入力があった場合は、入力を検知し(ステップS2)、入力中文字列を入力中文字列格納部に格納する(ステップS3)。次に、候補単語予測部は、候補文字列または候補単語を予測し、候補単語表示部へ候補文字列または候補単語を送信する。また、候補単語予測部は、候補文字列または候補単語を候補単語予測機能推定部へ送信する。送信された候補文字列または候補単語は、候補単語群格納部へ格納される(ステップS4)。次に、候補単語予測機能推定部は、受信した候補文字列または候補単語と、その累計、時刻、表示されていた時間をもとに、候補単語予測機能ごとにおけるスコアを算出する(ステップS5)。次に、候補単語予測機能ごとに算出されたスコアを比較する(ステップS6)。各スコアを比較した結果、現在有効となっている候補単語予測機能について最適であるか判断し(ステップS7)、最適であると判断した場合は、ステップS1に戻り、処理を繰り返す。一方、ステップS7において、現在無効となっている候補単語予測機能が最適と判断した場合は、候補単語予測機能の切り替えを行ない(ステップS8)、同時に、アドバイスを提示し(ステップS9)、ステップS1に遷移する。
【実施例1】
【0041】
次に、文字入力について、具体的な例を用いて説明する。図3は、端末装置の画面表示例を示す図である。図3に示したレイアウトは、トグル入力(「お」を入力する場合、「あ」を5回押下)の日本語入力キーボード3で、且つ候補単語予測機能が「補完機能」である場合の一例である。
【0042】
例えば、「漢字(かんじ)」をトグル入力するときに、文字列表示部7と、入力中文字列格納部11に送られる文字は、
「か」→「かわ」→「かを」→「かん」→「かんさ」→「かんし」→「かんじ」
と変化していく。
【0043】
同時に、これらの入力中文字列が、入力中文字列格納部11から候補単語予測部21に送信される。その結果、候補単語予測機能として「補完機能」が設定されている場合は、各入力文字列に対し、以下のような単語がそれぞれ取得され、候補単語表示部9に表示される。
「か」 :彼、彼女、学校、学生、が、かなり、画像
「かわ」 :かわ、為替、可愛い、側、かわいい、川崎
「かを」 :化を、可を、下を、火を、価を、家を
「かん」 :感じ、考え、関係、感覚、簡単、環境
「かんさ」:関西、監査、神崎川、観察
「かんし」:感謝、感心、頑丈、感情
「かんじ」:感じ、感情、幹事、肝心、頑丈
【0044】
この時に、候補単語群格納部は、少なくとも入力中文字列に対し行なった削除またはカーソルの移動等の操作の累計回数、文字の最終入力時刻、文字の入力再開時刻および入力中文字列の表示時間の情報を格納する。また、補完機能以外の、仮名漢字変換機能および文字列修正機能の候補単語予測機能による候補単語列の抽出結果も、バックグラウンドで予測され、候補単語群格納部へ格納される。
【0045】
仮名漢字変換機能および文字列修正機能の抽出結果の一例を、以下に挙げる。文字列「かんじ」が入力された時の仮名漢字変換機能による抽出結果として、
「かんじ」:感じ、漢字、幹事、寛治、監事
といった結果を取得することができる。そして、文字列修正機能による抽出結果として、
「かんじ」:感じ、漢字、何時、三時、監査が
といった結果を取得することができる。
【0046】
以上のように、「補完機能」では、「漢字」という単語が取得されない、もしくは候補単語表示部の領域が狭いため、表示されないことがある。しかし、仮名漢字変換機能や文字列修正機能を用いると、「かんじ」を入力した時に、候補単語表示部の2番目に表示され、選択しやすくなっている。この場合、補完機能ではなく、仮名漢字変換機能または文字列修正機能を用いたほうが有効であることがわかる。
【0047】
候補単語予測機能の推定について、ここでは「既存のデータから推定する方法」と「教師ありの機械学習により推定する方法」の2例を用いて説明する。
【0048】
[既存のデータから推定する方法]
候補単語予測機能スコア算出部は、候補単語予測部と並行して、候補単語予測機能スコアを算出する。ここで、候補単語予測機能の例として、仮名漢字変換機能、補完機能および文字列修正機能を用いるが、これらの機能に限定されない。また、既存のデータから推定する方法として、ここでは、各候補単語予測機能のスコアを求め、比較する例を示すが、直接比較してもよい。
【0049】
スコアの算出法として、各候補単語予測機能内で各々算出される上位N個のスコアを用いる例がある。例えば、1画面に表示されるすべての変換候補の平均、和または積を取る例が挙げられる。それを候補単語予測機能スコア比較部で比較できる形に重みづけや正規化を用いて比較する。以下に、仮名漢字変換機能によるスコア算出例、補完機能によるスコア算出例、および文字列修正機能によるスコア算出例を示す。
【0050】
(仮名漢字変換機能によるスコア算出例)
仮名漢字変換機能の仕組みを、図4に示す。入力中のかな文字列Stringが与えられた場合に、ある変換結果Wconvertを出力する確率Pconvは、文字列Stringに対して「漢字→漢字」の言語モデル確率、および「漢字→かな」の変換モデル確率を、Viterbiサーチで探索することにより、算出される。
【0051】
(補完機能によるスコア算出例)
補完機能による予測変換のスコア算出法の例としては、以下のように確率を算出する例が挙げられる。確定済の単語列Whistoryと入力中のかな文字列Stringが与えられた場合に、変換後の単語Wcompleteを出力する確率Pcompは、
Pcomp=P(Wcomplete|Whistory,String)
を用いて算出することができる。例えば、上の式は、全単語中の集合においてWhistoryの後に、Wcompleteが出力される確率P(Wcomplete|Whistory)と、Stringから始まる単語集合の中でのWcompleteが出力される確率との積で、与えることができる。前者は単語n−gramによる確率モデルで定義することができ、後者は、該当する単語集合の中で均等に確率を割り振ってもよいし、StringやWcompleteの文字列長により重みを変えてもよい。
【0052】
(文字列修正機能によるスコア算出例)
文字列修正機能によるスコア算出法の例としては、以下のような例が挙げられる。確定済の単語列Whistoryおよびタッチパネルの入力を想定して、座標列(x,y)が与えられた場合、修正後の単語Wcorrectを出力する確率P(Wcorrect|Whistory,(x,y))を用いることができる。これは、全単語中の集合において、Whistoryの後にWcompleteが出力される確率P(Wcorrect|Whistory)と、Wcorrectであった時に入力が(x,y)である確率P((x,y)|Wcorrect)の積で表すことができる。前者は単語n−gramによる確率モデルで定義することができ、後者は、文字毎に(x,y)の二次元正規分布で定義された尤度の入力列に対する積で表すことができる。例えば、Wcorrectが文字列長がTで、t文字目の入力の時に文字cの文字列で構成されるとすると、以下の式が成り立つ。
【0053】
【数1】
【数2】
【数3】
ここで、Nは、平均μ、共分散行列Σをもつ文字ごとの正規分布である。
【0054】
候補単語予測機能スコア比較部は、候補単語予測機能スコア算出部で算出されたスコアを用いて、スコアの比較を行なう。また、各候補単語の予測機能のスコア算出方法によっては、尤度や対数尤度などのように異なる種類のスコアを算出することが考えられる。そこで、候補単語予測機能スコア比較部では、候補単語予測機能スコア算出部で算出されたスコアを比較できる形に変換、重みづけおよび正規化を行ない、スコアの順に結果を出力する。
【0055】
例えば、仮名漢字変換機能、補完機能、文字列修正機能の各スコアを、Pconv、Pcomp、Pcorrと表わすとする。次に、αPconv、βPcomp、γPcorrの大小を比較する。ここで、α、β、γは正規化パラメタを示す。正規化としては、各候補単語予測機能が予測したM個のデータのスコアの平均が0、標準偏差が1となるような正規化が挙げられる。その他の正規化として、予め与えられた複数のテンプレート文の入力に対して出力されたスコア群の平均・分散を用いてもよい。また、文字列および候補単語群格納部から取得し、加工してできる値、例えば、文字列長などを用いてもよい。
【0056】
このように、仮名漢字変換機能、補完機能、文字列修正機能の例を記載したが、他の候補単語予測機能として、文字列修正に対する補完機能や他の言語への変換機能や過去の入力履歴からの前方一致による補完などもある。また、文字列修正機能に対する補完機能の例としては、前述の「かんじ」という文字列の文字列修正例において、「さんじ」と修正した後、「三時間」のように補完することもできる。
【0057】
そして、スコアは、入力された系列からある仮名文字列Sを出力(予測)するスコアpcorrと、Sから予測できる補完結果を出力する確率pcompとの積を、その単語を出力するスコアとし、各候補単語予測機能内で各々算出される上位N個スコアを用いることもできる。例えば、1画面に表示されるすべての変換候補の平均や、総和や積を取る算出方法がある。
【0058】
[教師ありの機械学習により推定する方法]
ここでは、SVMのような識別モデルによる推定を例示する。共通の特徴量と、それぞれの候補単語予測機能特有の特徴量からなる特徴ベクトルを用いて、教師データとして、各ベクトルに対して人手でラベル付け、もしくはWizard of Ozのような手法で実験的にラベル付けしたものを用いて学習を行なう。
【0059】
共通の特徴量と、それぞれの候補単語予測機能特有の特徴量には、例えば、以下のような特徴量が挙げられる。
(a)共通の特徴量:入力文字列長、文字列マッチによりマッチした語句のID
(b)候補単語予測機能特有の特徴量(補完機能):上位N個のスコア、一連の入力中の出現候補の重複数、候補数
(c)候補単語予測機能特有の特徴量(仮名漢字変換機能):上位N個のスコア、候補数、単語数(文節数)
【0060】
以上のように、候補単語予測機能スコア比較部でスコア比較が行なわれ、比較結果は、候補単語予測機能切り替え部へ送信される。候補単語予測機能切り替え部では、候補単語予測機能スコア比較部の結果を受け、現在自装置で有効となっていない候補単語予測機能のスコアが高い場合は、スコアが高いとされた候補単語予測機能に切り替える。
【0061】
また、アドバイス提示部では、候補単語予測機能スコア比較部の結果を受け、アクティブではない候補単語予測機能のスコアが高い場合は、自動で候補単語予測機能を切り替えることは行なわずに、候補単語予測機能を切り替えるように、アドバイスを提示することもできる。図5は、アドバイスを提示した例を示す図である。アドバイス方法は、音声であっても、画像の重畳によるものであっても、トーストなどによる文字列などでもよい。
【0062】
候補単語予測機能切り替え部、およびアドバイス提示部の2機能は、いずれか一方が動作すればよいものとする。また、アドバイス提示条件として、ユーザの入力スキルがある一定(第1の閾値)以下の場合に限り、アドバイスを提示してもよい。そして、入力スキルの判定の手法は問わないが、例えば、1文字目の入力開始から最後の文字が入力されるまでの入力速度WPM(Word Per Minute)や誤り率によって、いくつかの段階を定める方法がある。あるi段階の基準となる入力速度をWPMiとし、ユーザ操作により取得した入力速度をwpmとすると、スキルは、
WPMi ≦ wpm < WPMi+1
を満たすi段階のスキルと判別する方法がある。もしくは、入力時系列と入力時系列から算出できる、例えば、オブジェクトの中心からの距離の平均値やその分散、操作の間隔、頻度(キーボードアプリであればキー=オブジェクト)の特徴量から、複数段階のスキルを定義したスキルモデルにより判別することもできる。スキルモデルは、パターンマッチングでも、例えば、マルチクラスSVMなどの機械学習を、用いてもよい。
【0063】
候補単語予測機能切り替え部での切り替えのタイミングや、アドバイス提示部でのアドバイス提示のタイミングは、上記説明した方法において、候補単語予測機能推定部が、現在、有効ではない候補単語予測機能が最適だと推定した回数をカウントして、ある一定の閾値(第2の閾値)を超えた場合に、候補単語予測機能切り替え部やアドバイス提示部で動作するようにしてもよい。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、PCや携帯端末の操作に不慣れなユーザであっても、ユーザは候補単語予測機能を意識することなく、所望する文字列または候補単語を取得することができるようになる。また、候補単語予測機能を適切に切り替えるように限定するため、表示に際する視認性、操作性低減を防ぐことができるようになる。
【符号の説明】
【0065】
1 制御部
3 キーボード
5 入力部
7 文字列表示部
9 候補単語表示部
11 入力中文字列格納部
13 辞書DB
15 候補単語予測機能スコア算出部
19 候補単語予測機能スコア比較部
21 候補単語予測部
23 アドバイス提示部
25 候補単語予測機能推定部
27 候補単語予測機能切り替え部
61 スペースキー
63 変換キー
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7