(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594012
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】樹脂製燃料タンクのバッフル設置方法及びバッフルが内部に設けられた樹脂製燃料タンク
(51)【国際特許分類】
B60K 15/077 20060101AFI20191010BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20191010BHJP
B65D 25/04 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
B60K15/077 C
F02M37/00 301C
B65D25/04 F
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-71405(P2015-71405)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-190550(P2016-190550A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】松元 正太
【審査官】
結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭56−89715(JP,U)
【文献】
特開2006−207446(JP,A)
【文献】
特開2005−170084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/00−15/10,
B65D 23/00−25/56,
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製燃料タンクのバッフル設置方法において、
帯状のバッフルを前記樹脂製燃料タンクに予め設けられた孔部を介して該樹脂製燃料タンク内に挿入し、該樹脂製燃料タンク内部に設けた複数のバッフル固定部間において張架させて設け、
前記バッフル固定部は、3箇所以上設けられており、
前記バッフルの張架は、該バッフルの基端が固定されるバッフル基端固定部から該バッフルの終端が固定されるバッフル終端固定部までの間に位置するバッフル中間固定部において前記バッフルの伸長方向が変更するようになされ、
前記バッフル基端固定部には、前記基端が該バッフル基端固定部に固定されたバッフルを巻き取り方向に付勢して該バッフルを巻回保持するバッフル巻回保持機構が設けられており、
前記バッフルの張架は、該バッフル巻回保持機構から前記バッフルを付勢力に抗して引き出し、終端を前記バッフル終端固定部に固定してなされることを特徴とする樹脂製燃料タンクのバッフル設置方法。
【請求項2】
前記バッフル巻回保持機構は、前記バッフルの引き出しを規制するロック機構を有し、
前記バッフルの終端を前記バッフル終端固定部に固定した後、前記ロック機構により前記バッフルのさらなる引き出しを規制することを特徴とする請求項1に記載の樹脂製燃料タンクのバッフル設置方法。
【請求項3】
バッフルが内部に設けられた樹脂製燃料タンクにおいて、
前記バッフルは帯状であると共に前記内部に設けられた複数のバッフル固定部間に張架されて設けられ、
前記複数のバッフル固定部は、前記バッフルの基端が固定されるバッフル基端固定部と、前記バッフルの終端が固定されるバッフル終端固定部と、を少なくとも有し、
前記バッフル基端固定部には、前記基端が該バッフル基端固定部に固定されたバッフルを巻き取り方向に付勢して該バッフルを巻回保持するバッフル巻回保持機構が設けられており、
前記バッフルの張架は、該バッフル巻回保持機構から前記バッフルを付勢力に抗して引き出し、終端を前記バッフル終端固定部に固定してなされることを特徴とする樹脂製燃料タンク。
【請求項4】
前記バッフル巻回保持機構は、前記バッフルの引き出しを規制するロック機構を有し、
前記バッフルの終端を前記バッフル終端固定部に固定した後、前記ロック機構により前記バッフルのさらなる引き出しを規制することを特徴とする請求項3に記載の樹脂製燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製燃料タンクのバッフル設置方法に関し、特に、樹脂製燃料タンクに予め設けられた孔部を介して挿入されるバッフルの設置方法及びバッフルが内部に設けられた樹脂製燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の移動手段の燃料タンクや液体燃料を搬送可能な燃料タンクにおいては、車両の走行・停止、あるいは搬送時の燃料タンクの揺れに伴って液体燃料が大きく揺動し、タンク内での液体燃料の揺動音が生じ、しばしば問題となる。
【0003】
従来、上下のタンクシェルを溶接させてなる金属製の燃料タンクにおいては、上側タンクシェル及び下側タンクシェルを溶接結合する前に燃料タンク内部にバッフル板を取付けてタンク内部を仕切ることにより、タンク内部での液体燃料の波消しを行うことが知られる。
【0004】
しかし、金属製ではない樹脂製の燃料タンクも多く流通しており、かかる樹脂製の燃料タンクはブロー成形により一体成形されるため、液体燃料の波消し用のバッフル板を燃料タンクの成形途中に内側から取り付けることは困難である。
【0005】
特許文献1には、このようなブロー成形される樹脂製の燃料タンク内部にバッフルを設ける方法が開示されている。具体的には、
図5に示すように、ブロー成形により製造される燃料タンクにおいて、メインタンク101内に収納される円筒状のサブタンク102の外周面102aに、この外周面102aから径方向外方に突出する可とう性の邪魔板103を設けた燃料タンク100が開示されている。尚、サブタンク102内には、燃料ポンプが設けられている。
【0006】
サブタンク102のメインタンク101への取り付けは、可とう性の邪魔板103を折り曲げてサブタンク102の外周面102aに接触させた状態で開口部101aから挿入することでなされ、その後邪魔板103は元の展開形状に復元するので、メインタンク101の開口部101aの直径寸法をさほど大きくせずに面積の広い邪魔板103、すなわち、バッフルを設けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−240345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、一体成形された樹脂製燃料タンクのバッフルは、樹脂製燃料タンクの燃料ポンプ挿入孔等の開口部から挿入可能な大きさに制限されるところ、特許文献1の樹脂製燃料タンクによれば、邪魔板を可とう性とすることで開口部の直径以上に展開するバッフルを設けることができる。
【0009】
しかしながら、特許文献1によっても、挿入可能なバッフル(邪魔板)の大きさ・形状・位置はかなり制限され、したがって、期待される消音効果を確保できない場合もある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、樹脂製燃料タンク内での設計の自由度の高いバッフルの設置方法及びバッフルが内部に設けられた樹脂製燃料タンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、樹脂製燃料タンクのバッフル設置方法において、帯状のバッフルを前記樹脂製燃料タンクに予め設けられた孔部を介して該樹脂製燃料タンク内に挿入し、該樹脂製燃料タンク内部に設けた複数のバッフル固定部間において張架させて設け
、前記バッフル固定部は、3箇所以上設けられており、前記バッフルの張架は、該バッフルの基端が固定されるバッフル基端固定部から該バッフルの終端が固定されるバッフル終端固定部までの間に位置するバッフル中間固定部において前記バッフルの伸長方向が変更するようになされ、前記バッフル基端固定部には、前記基端が該バッフル基端固定部に固定されたバッフルを巻き取り方向に付勢して該バッフルを巻回保持するバッフル巻回保持機構が設けられており、前記バッフルの張架は、該バッフル巻回保持機構から前記バッフルを付勢力に抗して引き出し、終端を前記バッフル終端固定部に固定してなされることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、帯状のバッフルを予め設けられた孔部を介して樹脂製燃料タンク内に挿入し、樹脂製燃料タンク内部に設けた複数のバッフル固定部間において張架させて設けることでバッフルが設置される。すなわち、必要な幅及び長さを有する帯状のバッフルを折り畳み、あるいは巻回させた状態で孔部から樹脂製燃料タンク内に挿入可能となり、挿入されたバッフルを展開してバッフル固定部間で張架することで、任意の位置に、任意の大きさ・形状のバッフルを設置することができる。したがって、樹脂製燃料タンク内でのバッフルの設計の自由度が向上し、意図する消音効果を発揮させることが可能となる。
また、この構成によれば、基端がバッフル基端固定部に固定され、終端がバッフル終端固定部に固定されるバッフルの伸長方向が中間固定部で変更する。したがって、樹脂製燃料タンク内においてバッフルを上面視略L字状、略コ字状、ジグザグ状等、様々な配置とすることができ、さらにバッフルの設計の自由度を高めることができる。さらに、樹脂製燃料タンク内部におけるバッフル固定部間でのバッフルの張架が、バッフル巻回保持機構からバッフルを付勢力に抗して引き出し、終端をバッフル終端固定部に固定することによりなされるので、バッフルの設置作業が容易となる。
【0017】
請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の樹脂製燃料タンクのバッフル設置方法において、前記バッフル巻回保持機構は、前記バッフルの引き出しを規制するロック機構を有し、前記バッフルの終端を前記バッフル終端固定部に固定した後、前記ロック機構により前記バッフルのさらなる引き出しを規制することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、バッフルの終端がバッフル終端固定部に固定された後、ロック機構によりバッフル巻回保持機構からのバッフルのさらなる引き出しが規制される。したがって、樹脂製燃料タンクの強い揺れによりタンク内で強い波が生じた場合でもバッフルはさらに引き出されることなく張架された配置・形状が維持され、より確実な波消し及び消音効果を発揮することができる。
【0019】
請求項
3に記載の発明は、バッフルが内部に設けられた樹脂製燃料タンクにおいて、前記バッフルは帯状であると共に前記内部に設けられた複数のバッフル固定部間に張架されて設けられ、
前記複数のバッフル固定部は、前記バッフルの基端が固定されるバッフル基端固定部と、前記バッフルの終端が固定されるバッフル終端固定部と、を少なくとも有し、前記バッフル基端固定部には、前記基端が該バッフル基端固定部に固定されたバッフルを巻き取り方向に付勢して該バッフルを巻回保持するバッフル巻回保持機構が設けられており、前記バッフルの張架は、該バッフル巻回保持機構から前記バッフルを付勢力に抗して引き出し、終端を前記バッフル終端固定部に固定してなされることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の樹脂製燃料タンクにおいて、前記バッフル巻回保持機構は、前記バッフルの引き出しを規制するロック機構を有し、前記バッフルの終端を前記バッフル終端固定部に固定した後、前記ロック機構により前記バッフルのさらなる引き出しを規制することを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、バッフルは帯状であるから、必要な幅及び長さを有する帯状のバッフルを折り畳み、あるいは巻回させた状態で例えば燃料ポンプ挿入孔から樹脂製燃料タンク内に挿入可能となる。そして、挿入されたバッフルを展開してバッフル固定部間で張架することで、任意の位置に、任意の大きさ・形状のバッフルを設置することができる。したがって、樹脂製燃料タンク内でのバッフルの設計の自由度が向上し、意図する消音効果を発揮させることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、帯状のバッフルを展開してバッフル固定部間で張架させることで、任意の位置・大きさ・形状のバッフルを設置することができるので、樹脂製燃料タンク内でのバッフルの設計自由度が向上し、意図する消音効果を発揮させることが可能となる。これにより、例えば、樹脂製燃料タンクの形状や大きさいが種々変更され、燃料の揺動音の発生箇所が変動する場合であっても、バッフルの位置・大きさ・形状を変更させてこれらの揺動音を効果的に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施の形態に係るバッフル設置前の樹脂製燃料タンクを示す概略分解斜視図である。
【
図2】バッフル固定部が取り付けられた状態の樹脂製燃料タンクを示す一部破断概略斜視図である。
【
図3】バッフルが張架された状態の樹脂製燃料タンクを示す一部破断概略斜視図である。
【
図4】バッフルが設置された樹脂製燃料タンクの使用状態を示す縦断面図である。
【
図5】従来の、バッフルが設置された樹脂製燃料タンクを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態に係る樹脂製燃料タンクのバッフル設置方法及びこの方法によりバッフルが設置された樹脂製燃料タンクを、
図1〜
図4を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るバッフル設置前の樹脂製燃料タンクを示す概略分解斜視図、
図2はバッフル固定部が取り付けられた状態の樹脂製燃料タンクを示す一部破断概略斜視図、
図3はバッフルが張架された状態の樹脂製燃料タンクを示す一部破断概略斜視図及び
図4はバッフルが設置された樹脂製燃料タンクの使用状態を示す縦断面図である。
【0024】
図1に示すように、樹脂製燃料タンク10は、燃料タンク本体12に、バッフル14の基端が固定されるバッフル基端固定部20、バッフル14の終端が固定されるバッフル終端固定部40及びバッフル基端固定部20とバッフル終端固定部40との間でバッフル14が固定されるバッフル中間固定部30が、それぞれ燃料タンク本体12の上部に予め設けられた孔部45、孔部49及び孔部47に取り付けられると共に、これらのバッフル固定部20、30及び40間においてバッフル14が張架されてなる構成を有する。
【0025】
燃料タンク本体12の上部には、孔部45、孔部47及び孔部49以外に、図示しない燃料ポンプを取り付けるための開口50及びバッフル14の取付け作業を行うための作業孔52が設けられている。開口50の周縁部にはフランジ部50aが延設されており、フランジ50aの外周面には図示しないリング状のガスケットが取り付けられる。尚、作業孔52は、バッフル14の取付け作業終了後に円板状の蓋部材53により閉塞される。
【0026】
バッフル基端固定部20は、棒状部20aと円板状の基部20bとを有し、棒状部20aには該棒状部20aの外周を覆う略中空円筒状のバッフル巻回保持機構22が取り付けられている。
【0027】
バッフル巻回保持機構22は、そのハウジング内に棒状部20aに軸着されてバッフル14を巻回保持する図示しないバッフルリールと、バッフルリールを常時巻き取り方向に付勢する図示しない巻き取りばね機構を有する。したがって、バッフル14は、常時巻き取り方向に付勢されており、常態においてハウジング内に巻き取られた状態にある。
【0028】
バッフルリールは、常態において棒状部20aを軸として回転可能であるが、図示しないロック機構によりロックされた場合にその回転が規制される。ロック機構としては、例えば、外部からの操作により揺動してバッフルリールのリール歯に噛合する爪部材を有する機構が挙げられる。なお、ロック機構はバッフルリールと爪部材に限らず、非ロック状態において軸を中心として回転する方向の何れの方向にもバッフルリールを回転可能とするが、ロック状態では巻き取り方向にしか回転できない状態とするラチェット機構を用いても良い。
【0029】
バッフル14は、基端がバッフルリール(すなわち、バッフル基端固定部20)に固定され、終端には後述するバッフル終端固定部40の係合突起41が挿入される凹溝(図示せず)が設けられた受け金具15を有する帯状体である。バッフル14には、
図1に示すように、所定間隔で孔部14b(本実施の形態では丸孔である)が設けられている。
【0030】
孔部14bは、樹脂製燃料タンク10内でバッフル14が張架された状態において、燃料流れ抵抗による影響を緩和して消音機構(すなわち、バッフル14及びこれを張架状態で固定する各バッフル固定部からなる機構である)の破壊を抑制するとともに、該孔部14bによって燃料の流れを分散し、消音性能を向上させるための構成である。かかる消音機構の破損抑制及び燃料の流れ分散機能を発揮しうる範囲で、必要な個数・大きさ・形状の孔部14bを任意に選択し得る。尚、バッフル14は燃料中での劣化・膨潤による強度低下をしないこと及び難燃性が要求され、例えば、シートベルト等の素材として用いられるアラミド繊維により構成されている。
【0031】
バッフル終端固定部40は、棒状部40aと円板状の基部40bとを有し、棒状部40aには、バッフル14の受け金具15の凹溝に挿入されて受け金具15を挟持固定するための略L字状の上下一対の係合突起41が設けられている。
【0032】
バッフル中間固定部30は、棒状部30aと円板状の基部30bとを有する。
【0033】
各バッフル固定部20、30及び40の基部20b、30b及び40bの下面には、HDPE単層又はHDPE/PA複層が形成されており、これらの基部20b、30b及び40bの下面が孔部45、孔部47及び孔部49の周縁部に熱板溶着によりそれぞれ接着固定されることで、孔部45、孔部47及び孔部49が閉塞される。
【0034】
また、基部20b、30b及び40bの下面のHDPE単層又はHDPE/PA複層と孔部45、孔部47及び孔部49の周縁部との熱板融着を採用することで、樹脂製燃料タンクへの溶着性と所定の燃料透過性を両立し、従来の樹脂製燃料タンクで用いられる補機部品と同じように熱板溶着によるバッフル固定部の樹脂製燃料タンク10への取付けが可能となっている。
【0035】
次に、樹脂製燃料タンクのバッフル設置方法について説明する。まず、バッフル基端固定部20を、棒状部20a側から孔部45内に挿入し、基部20bの下面と孔部45の周縁部とを熱板融着させる。これにより、バッフル14は、バッフル14が巻回保持されたバッフル巻回保持機構22ごと孔部45を介して樹脂製燃料タンク10内に挿入される。
【0036】
同様に、バッフル中間固定部30及びバッフル終端固定部40を、それぞれ孔部47及び孔部49から挿入し、基部30bの下面と孔部47の周縁部、及び、基部40bと孔部49の周縁部を熱板融着させる。これにより、
図2に示すように、バッフル基端固定部20、バッフル中間固定部30及びバッフル終端固定部40が樹脂製燃料タンク内部に設けられることとなる。
【0037】
次に、バッフル14の張架を説明する。バッフル14の設置を行う作業者は、燃料ポンプを取り付ける開孔50から片手を燃料タンク本体12内に挿入し、受け金具15を掴み、バッフル14を付勢力に抗してバッフル巻回保持機構22から引き出す。そして、引き出したバッフル14をバッフル中間固定部30の棒状部30aの
図2に示す背面側を通過させ、作業孔52から挿入したもう片方の手でさらにバッフル14を引き出し、バッフル終端固定部40の係合突起41に受け金具15の凹部を係合させてバッフル終端固定部40にバッフル14の終端を固定させる。
【0038】
これにより、
図3に示すように、バッフル14はバッフル巻回保持機構22の巻き取りばね機構によって巻き取り方向に付勢されてバッフル基端固定部20及びバッフル終端固定部40間において張架される。尚、バッフル14は図示のように、バッフル基端固定部20からバッフル終端固定部40まで間に位置する中間固定部30において折り返されており、この中間固定部30において伸長方向が変更している。
【0039】
最後に、ロック機構によるロックによってバッフルリールの回転を規制することで、バッフル14のさらなる引き出しを規制し、且つ、作業孔52を蓋部材53により閉塞することで、樹脂製燃料タンク10内部へのバッフル14の設置が完了する。尚、蓋部材53の作業孔52への取り付けは、例えば、バッフル固定部20の孔部45への取付けと同様に熱板溶着により行うことができる。
【0040】
したがって、本実施の形態に係る樹脂製燃料タンクのバッフル設置方法及びバッフルが内部に設けられた樹脂製燃料タンクによれば、必要な幅及び長さを有する帯状のバッフル14をバッフル巻回保持機構22に巻回保持させた状態で孔部45から樹脂製タンク本体12内に挿入でき、挿入されたバッフル14を展開してバッフル基端固定部20、バッフル中間固定部30及びバッフル終端固定部40間で張架することで、目的の位置・大きさ・形状のバッフルを設置することができる。したがって、樹脂製燃料タンク内でのバッフル14の設計の自由度が向上し、意図する消音効果を発揮させることが可能となる。
【0041】
具体的には、樹脂製燃料タンク10の内部においては、樹脂製燃料タンク10の気相と液相の境界面において液相が波打ち、壁面に当たることで揺動音が発生していた。特に、樹脂製燃料タンク10の天面に凹凸がある場合、凹部に波が流入し凹部に存在する気相と液相が混じり合って気泡が発生し、この気泡がはじける際に大きな音が生じることが問題となっていたところ、本実施の形態によれば、
図4に示すように、バッフル14を気相Aと液相Lの境界面に必要な長さ領域に亘って張架することができるので、この境界面に生じる液相の波が小さくなり、上記凹部への流入による気泡の発生やその破泡が抑制される。すなわち、問題となる揺動音を効果的に抑制することができる。
【0042】
また、上述のとおり、基端がバッフル基端固定部20に固定され、終端がバッフル終端固定部40に固定されたバッフル14の伸長方向がバッフル中間固定部30で変更する。したがって、
図3に示すように、樹脂製燃料タンク10内においてバッフル14を上面視略L字状に配置することができ、さらにバッフル14の設計の自由度が向上している。
【0043】
さらに、バッフル終端固定部40にバッフル14の終端が固定された状態でバッフル14はバッフル巻回保持機構22の巻き取りばね機構によって巻き戻し方向に付勢されているので、バッフル14の終端をバッフル終端固定部40に固定することによりバッフル14は自動的に張架される。よって、バッフル14の設置作業が容易なものとなっている。
【0044】
そのうえ、バッフル14の終端をバッフル終端固定部40に固定した後(すなわち、バッフル14は上記巻き取りばね機構により張架されている)、ロック機構によりバッフルリールの回転を規制し、バッフル14のさらなる引き出しを規制することができる。
【0045】
したがって、樹脂製燃料タンク10の強い揺れによりタンク内で強い波が生じた場合でもバッフル14はさらに引き出されることなく張架された配置・形状が維持され、より確実な波消し及び消音効果を発揮することができる。
【0046】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本実施の形態においては、樹脂製燃料タンク本体12の上面に作業孔52を設けているが、この作業孔52を設けない構成としてもよい。この場合においても、バッフル14の複数のバッフル固定部間における張架作業は燃料ポンプを取り付けるための開口50を介して行うことが可能である。
【0047】
また、本実施の形態においては、バッフル基端固定部20、バッフル中間固定部30及びバッフル基端固定部40の合計3箇所のバッフル固定部を設けているが、これに限られるものではない。例えば、2箇所、4箇所、5箇所等、要求されるバッフルの配置に応じて任意にバッフル固定部を設ける箇所の数を選択することができる。例えば、4箇所、5箇所のバッフル固定部を選択した場合、上面視略コ字状、上面視ジグザグ状のバッフルの配置をとることが可能となる。
【0048】
さらに、本実施の形態においては、バッフル14を樹脂製燃料タンク内で張架させるために、バッフル巻回保持機構22を用い、且つロック機構によりバッフル14のさらなる引き出しを規制しているが、この構成が必須というものでもない。
【0049】
例えば、帯状のバッフルの長さ方向両端に上記実施の形態の受け金具15同様の金具を設けてバッフル固定部間においてバッフルを架け渡し、架け渡されたバッフルの弛みをクリップ等の治具によって取り除くことによりバッフルを張架させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 樹脂製燃料タンク
14 バッフル
20 バッフル基端固定部(バッフル固定部)
22 バッフル巻回保持機構
30 バッフル中間固定部(バッフル固定部)
40 バッフル終端固定部(バッフル固定部)
45 孔部
47 孔部
49 孔部