特許第6594063号(P6594063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594063
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】掘削バケット
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/40 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   E02F3/40 B
   E02F3/40 Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-130586(P2015-130586)
(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公開番号】特開2017-14751(P2017-14751A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】503267261
【氏名又は名称】盛岡 誠嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】盛岡 誠嗣
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3058178(JP,U)
【文献】 米国特許第05564508(US,A)
【文献】 特開平09−088111(JP,A)
【文献】 特開2013−224523(JP,A)
【文献】 特開2003−261957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背板と左右の側板とからなり前方面が開口されてなるバケット本体を有する掘削バケットにおいて、
上記バケット本体(10)には複数のライナー(20)が上記バケット本体(10)の背板(11)と側板(12)との交差部分を覆って交換可能に取付けられ、上記複数のライナー(20)のバケット本体側板(12)側の上端縁が凸状多角形、凹状多角形、凸状円弧、凹状円弧あるいはこれらを組合せた形状を繰り返した形状となっていることを特徴とする掘削バケット。
【請求項2】
上記複数のライナー(20)のバケット本体背板(11)側の先端縁が凹三角形を繰り返した形状となっている請求項1記載の掘削バケット。
【請求項3】
上記バケット本体(10)の背板(11)外面には帯状の補強板(24)が幅方向に延びて固定され、該補強板(24)の両端縁が上記複数のライナー(20)の背板(11)側先端縁と補完し合う形状をなしている請求項記載の掘削バケット。
【請求項4】
上記バケット本体(10)内の背板(11)には複数の補強リブ(26)が固定されている請求項1記載の掘削バケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は掘削バケットに関し、特にバケット本体の側板のライナーに沿った磨耗を少なくできるようにしたバケットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、油圧ショベルでは操作アームの先端に掘削バケットを取付け、掘削バケットを操作することによって土砂を掘削し、あるいは土砂、砂利あるいは岩石(以下、土砂類という)をすくって運ぶことが行われる。通常、掘削バケットではバケット本体が前方面の開口した函状をなしており、バケット本体の開口下端縁には複数の爪が取付けられており、爪を地盤に突きたてることによって掘削作業を行いやすくなっている。
【0003】
ところで、バケット本体の背板と側板との交差部分及び背板は土砂類をすくうときに土砂類と擦れ合って磨耗しやすく、磨耗が進行すると強度が低下し、使用に耐えなくなる。
【0004】
バケット本体の側板及び背板の磨耗が進んだ場合、磨耗部分を含む領域を切り取り、そこに新しい板材を溶接等によって固定する、という補修が行われていたが(特許文献1、等参照)、補修作業が煩雑であるとともに、作業に熟練を必要とする。
【0005】
そこで、バケット本体の側板と背板との交差部分にこれを覆うように複数のライナーを並べ、ライナーをボルト等によって固定し、ライナーの磨耗が進んだときに磨耗したランナーを交換するようにした掘削バケットが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−294739号公報
【特許文献2】特開平09−88111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2記載の構造ではバケット本体のライナーで覆われた部分は保護されるものの、複数のライナーの側板側の上端縁が直線状又は滑らかな曲線状をなしているので、土砂類をすくうときに、土砂類が並んだ複数のライナーの上端縁に沿って定常的に流れやすく、バケット本体の側板が複数のライナーの上端縁の形状に磨耗してしまうという問題があった。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑み、バケット本体側板のライナーに沿った磨耗を少なくできるようにした掘削バケットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明に係る掘削バケットは、背板と左右の側板とからなり前方面が開口されてなるバケット本体を有する掘削バケットにおいて、上記バケット本体にはライナーが上記バケット本体の背板と側板との交差部分を覆って交換可能に取付けられ、上記ライナーのバケット本体側板側の上端縁が上記バケット本体の開口から離れるに従って直線的に又は曲線的に高く又は低くなりかつ途中から上記バケット本体の開口から離れるに従って直線的に又は曲線的に低く又は高くなるような部分形状を含む全体形状となっていることを特徴とする。
【0010】
本発明の特徴の1つはライナーの側板側上端縁を凹凸形状にした点にある。これにより、ライナーの側板側の上端縁の形状に沿った距離が定常的に流れる形状に比較して長くなるので、土砂類はライナーの側板側の上端縁に沿って流れ難く、他の部位をバラバラにつまり非定常に流れることとなる。その結果、バケット本体の側板が複数のライナーの上端縁の形状に磨耗することは少なくなる。
【0011】
ライナーの上端縁の全体形状はバケット本体の開口から離れるに従って直線的に又は曲線的に高く又は低くなりかつ途中からバケット本体の開口から離れるに従って直線的に又は曲線的に低く又は高くなるような部分形状を少なくとも1つ含んでいればよく、例えば凸状三角形その他の凸状多角形、凹状三角形その他の凹状多角形、凸状円弧あるいは凹状円弧、これらを組合せた形状、等を採用することができる。
【0012】
バケット本体の背板と側板との交差部分を1つのライナーでカバーしてもよいが、製造が煩雑になるおそれがあるので、複数のライナー、好ましくは単一の形態の複数のライナーをバケット本体に取付けるのが好ましい。
【0013】
バケット本体の背板についてもライナーの先端縁に沿って土砂類が流れると、側板と同様にライナーの先端縁の形状に磨耗することが懸念される。
【0014】
そこで、複数のライナーのバケット本体背板側の先端縁もバケット本体の開口から離れるに従って直線的に又は曲線的に高く又は低くなりかつ途中からバケット本体の開口から離れるに従って直線的に又は曲線的に低く又は高くなるような部分形状を少なくとも1つ含む全体形状とするのが好ましい。
【0015】
バケット本体の背板については土砂類をすくうときに土砂類と激しく擦れ合って磨耗しやすい。そこで、バケット本体の背板外面には帯状の補強板を幅方向に延びて固定するのがよい。この場合、補強板のバケット本体幅方向の両端縁を複数のライナーの背板側先端縁と補完し合う形状とすると、バケット本体の背板の寿命をより向上できる。
【0016】
また、バケット本体の背板の肉厚が磨耗によって薄くなると、背板がベコベコしてユーザが不安に感じる。そこで、バケット本体内の背板には複数の補強リブを固定し、背板がベコベコしないようにするのがよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る掘削バケットの好ましい実施形態を示す概略斜視図である。
図2】上記実施形態を示す正面図である。
図3】上記実施形態におけるバケット本体の背板と補強プレート24との関係を示す図である。
図4】上記実施形態におけるライナーを示す斜視図である。
図5】上記実施形態の作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図5は本発明に係る掘削バケットの好ましい実施形態を示す。図において、バケット本体10は背板11及び左右の側板12を溶接等によって相互に固定して、前方面を開口した函状に製作され、バケット本体10の開口の上端縁部分には左右の取付けブラケット13が相互に平行に配置されて溶接等によって固定され、両取付けブラケット13には2つのブッシュ(図示せず)が取付けられるようになっている。
【0019】
これらの取付けブラケット13には油圧ショベル等の操作アーム(図示せず)の先端取
付け部が位置合わせされ、先端取付け部の取付け穴とブッシュには連結ピン(図示せず)が圧入されることによって掘削バケットは操作アームに取付けられるようになっている。
【0020】
バケット本体10の開口の下端縁の部分には複数のアダプタが相互に間隔をあけて配置され、溶接等によってバケット本体10に固定されている。これらのアダプタには爪14が嵌め合わされ、両者の取付け穴に取付けピンを差し込むことによって爪14はバケット本体10の開口の下端縁に交換可能に取付けられている。また、バケット本体10の開口の下端縁の部分には隣接する爪14の間にシュラウド15が取付けられている。
【0021】
バケット本体10には三枚のライナー20が背板11と側板12との交差部分を覆うように並べられ、ボルトによって交換可能に固定されている。このライナー20の取付け部位には段部が形成されてライナー20が丁度嵌まり込むようになっている。
【0022】
ライナー20は側面L字状をなし、ライナー20のバケット本体10の側板12側の上端縁は凸状三角形に形成され、三枚のライナー20の上端縁は相互に並べられることによって図4に示されるように凸状三角形を繰り返した形状となっている。
【0023】
また、ライナー20のバケット本体10の背板11側の先端縁は凹状三角形に形成され、三枚のライナー20の背板11側の先端縁は相互に並べられることによって図4に示せされるように凹状三角形を繰り返した形状となっている。
【0024】
他方、バケット本体10の側板12の内面にはライナー20を固定するためのボルトを取付けるための取付けベース22が溶接等によって固定されている。
【0025】
また、バケット本体10の背板11外面には四枚の帯状の補強プレート(補強板)24が左右のライナー20の間にてバケット本体10の幅方向に延びるように並べられ、溶接によって背板11に固定されている。この補強プレート24の両端はライナー20の背板11側の先端縁と補完し合う凸状三角形に形成されている。
【0026】
さらに、バケット本体10の背板11の内面には複数の補強リブ26が上下方向に延びかつ相互に平行となるように並べられ、溶接等によって固定されている。
【0027】
また、バケット本体10の背板11内面には複数枚の帯状の補強プレート28が幅方向に延びかつ外面側の補強プレート24との間にバケット本体10の素材を挟み込むようにして並べられ、溶接等によって固定されている。
【0028】
掘削バケットで土砂類をすくった場合、バケット本体10の側板12は土砂類と擦れ合い、特に背板11との交差部分の近くが土砂類と激しく擦れ合い、磨耗が激しいが、本例の掘削バケットでは3つのライナー20で側板12と背板11との交差部分をカバーしているので、ライナー20は磨耗するが、バケット本体10は磨耗し難い。また、ライナー20をバケット本体10にボルト締結しているので、ライナー20の磨耗が進行した時にはライナー20を交換すればよい。
【0029】
ところで、掘削バケットで土砂類をすくっている間、ライナー20の側板12側の上端縁及び背板11側の先端縁に沿って土砂類が定常的に流れると、バケット本体10の側板12及び背板11にライナー20の上端縁及び先端縁の形状に磨耗が発生するおそれがある。
【0030】
しかし、本例の掘削バケットではライナー20の側板12側の上端縁及び背板11側の先端縁を三角形にしているので、土砂類が三枚のライナー20の上端縁及び先端縁に沿っ
て流れようとすると、流れる距離(図5の曲線a、参照)が長くなるので、土砂類はバケット本体10の他の部位に分散して流れて定常的な流れは発生しにくく、バケット本体20の側板12及び背板11にライナー20の形状に沿った磨耗が発生しにくくなる。その結果、掘削バケットの寿命を大幅に向上できる。
【0031】
まだ、バケット本体20の背板11内面側に補強リブ26を設けているので、掘削バケットの長期の使用によって背板11の肉厚が多少薄くなってもベコベコすることはなく、ユーザは安心して掘削バケットを使用することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 バケット本体
11 背板
12 側板
20 ライナー
24 補強プレート
26 補強リブ
図1
図2
図3
図4
図5