特許第6594114号(P6594114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594114
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】多剤式毛髪処理剤、及び毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20191010BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20191010BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   A61K8/60
   A61K8/64
   A61Q5/12
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-170201(P2015-170201)
(22)【出願日】2015年8月31日
(65)【公開番号】特開2017-14182(P2017-14182A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年8月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-129526(P2015-129526)
(32)【優先日】2015年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 紘介
(72)【発明者】
【氏名】山中 良介
【審査官】 星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−155823(JP,A)
【文献】 特開昭58−049308(JP,A)
【文献】 特開昭59−101413(JP,A)
【文献】 特開2002−068991(JP,A)
【文献】 特開平06−321740(JP,A)
【文献】 特開昭57−130911(JP,A)
【文献】 特開昭61−178913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンニン酸が配合された前処理剤と、
加水分解ケラチン又は加水分解ケラチン誘導体が配合された後処理剤と、を備えることを特徴とする多剤式毛髪処理剤。
【請求項2】
前記前処理剤におけるタンニン酸として、加水分解性タンニンが配合された請求項1に記載の多剤式毛髪処理剤。
【請求項3】
前記後処理剤における加水分解ケラチン誘導体として、下記式(I)〜(III)で表される構造及びこれらの構造の塩から選ばれた単位を有する側鎖基を一種又は二種以上備えるものが配合された請求項1又は2に記載の多剤式毛髪処理剤。
−S−S−(CH)n−COOH (I)
(式(I)中、nは1又は2である。)
−S−S−CH(CH)−COOH (II)
−S−S−CH(COOH)−CH−COOH (III)
【請求項4】
タンニン酸が配合された前処理剤を毛髪に塗布する前処理工程と、
前記前処理工程後に、加水分解ケラチン又は加水分解ケラチン誘導体が配合された後処理剤を毛髪に塗布する後処理工程と、
を備えることを特徴とする毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多剤式毛髪処理剤、及びこの多剤式毛髪処理剤を使用する毛髪処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加水分解タンパクなどのタンパク質誘導体は、毛髪の保護、補修成分として知られており、その誘導体を使用した様々な処理が提案されている。特許文献1には、アニオン界面活性剤を添加した可溶性ケラチンを含む毛髪化粧料を第1剤とし、ノニオン界面活性剤を含む毛髪化粧料を第2剤とする毛髪改質剤を使用し、その可溶性ケラチンを毛髪表面及び内部に固定することが開示されている。特許文献2には、加水分解ケラチンと共に特定のジエステルを含有させることで、加水分解ケラチンの毛髪への浸透を促進させることが開示されている。また、特許文献3には、ロイシンを配合することで、特定のタンパク質誘導体による毛髪補修を向上させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−109114号公報
【特許文献2】特開2013−53171号公報
【特許文献3】特開2015−81245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の通り、タンパク質誘導体を利用した毛髪処理提案がある。そして、タンパク質誘導体であるケラチン誘導体として加水分解ケラチンや加水分解ケラチン誘導体が知られており、これらの毛髪への浸透性を制御できれば、毛髪の感触を調整可能になると期待される。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、加水分解ケラチンやその誘導体の毛髪への浸透性を制御できる多剤式毛髪処理剤、及び毛髪処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が鋭意検討を行った結果、加水分解ケラチン又はその誘導体を配合した処理剤を毛髪に適用する前に、タンニン酸を配合した処理剤を毛髪に適用すれば、加水分解ケラチン及びその誘導体の毛髪への浸透性を抑える制御が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る多剤式毛髪処理剤は、タンニン酸が配合された前処理剤と、加水分解ケラチン又は加水分解ケラチン誘導体が配合された後処理剤と、を備えることを特徴とする。
【0008】
前記前処理剤におけるタンニン酸として、加水分解性タンニンが配合されていると良い。
【0009】
前記後処理剤における加水分解ケラチン誘導体として、下記式(I)〜(III)で表される構造及びこれらの構造の塩から選ばれた単位を有する側鎖基を一種又は二種以上備えるものが配合されていると良い。
−S−S−(CH)n−COOH (I)
(式(I)中、nは1又は2である。)
−S−S−CH(CH)−COOH (II)
−S−S−CH(COOH)−CH−COOH (III)
【0010】
本発明に係る毛髪処理方法は、タンニン酸が配合された前処理剤を毛髪に塗布する前処理工程と、前記前処理工程後に、加水分解ケラチン又は加水分解ケラチン誘導体が配合された後処理剤を毛髪に塗布する後処理工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タンニン酸が配合された前処理剤を毛髪に塗布後、加水分解ケラチン又はその誘導体が配合された後処理剤を毛髪に塗布するから、加水分解ケラチン及びその誘導体の毛髪への浸透性が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例の毛髪処理を行った毛髪の切断面を蛍光顕微鏡観察した撮影画像である。
図2】比較例の毛髪処理を行った毛髪の切断面を蛍光顕微鏡観察した撮影画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態の多剤式毛髪処理剤は、前処理剤と、この前処理剤の後に使用される後処理剤を備えるものである。
【0014】
(前処理剤)
本実施形態に係る前処理剤は、タンニン酸が水に配合されたものである(水の配合量は、例えば25質量%以上)。また、本実施形態の前処理剤には、用途に応じた任意原料として、公知の毛髪処理剤用の原料が配合されていても良い。
【0015】
タンニン酸
本実施形態の前処理剤には、市販のタンニン酸又はタンニン酸を含む植物抽出物を配合すると良い。
【0016】
上記タンニン酸として、加水分解性タンニンが配合されていると良い。ここで、加水分解性タンニンは、ブドウ糖と没食子酸とのエステル結合物、及び、そのエステル結合物と没食子酸とのデプシド結合物である。この加水分解性タンニンは、例えば下記一般式(A)で表される。
【0017】
【化1】
[上記一般式(A)において、Gはエステル結合又はデプシド結合後の没食子酸残基を表し、k、l、m、及びnは、夫々、0又は正の整数を表す。]
【0018】
本実施形態の前処理剤におけるタンニン酸の配合量は、この前処理剤を安価にするために、0.1質量%以下が良く、0.05質量%以下が好ましく、0.02質量%以下がより好ましい。また、タンニン酸の配合量が微量であっても良く、その配合量は、例えば0.005質量%であり、0.008質量%以上が良く、0.01質量%以上が好ましい。
【0019】
任意原料
本実施形態の前処理剤に配合される任意原料は、公知の毛髪処理剤用の原料から適宜に選定される。この任意原料は、界面活性剤、高級アルコール、多価アルコール、糖類、エステル油、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤などである。なお、前処理剤には、加水分解ケラチン及び/又は加水分解ケラチン誘導体が配合されていても良い。
【0020】
剤型
本実施形態の前処理剤は、毛髪に馴染み易くするため、外相が水相である水性のものが好ましい。そして、当該前処理剤の使用時の剤型は、特に限定されず、例えば、液状、クリーム状、ゲル状、フォーム状(泡状)、霧状が挙げられる。
【0021】
pH
本実施形態の前処理剤のpHは、例えば4以上7以下であり、5以上が良い。
【0022】
(後処理剤)
本実施形態に係る後処理剤は、加水分解ケラチン、加水分解ケラチン誘導体、又は、加水分解ケラチン及び加水分解ケラチン誘導体が水に配合されたものである(水の配合量は、例えば25質量%以上)。また、本実施形態の後処理剤には、用途に応じた任意原料として、公知の毛髪処理剤用の原料が配合されていても良い。
【0023】
加水分解ケラチン、加水分解ケラチン誘導体
本実施形態における「加水分解ケラチン」とは、化粧品原料の国際命名法(International Nomenclature Cosmetic Ingredient)に従って作成された国際的表示名称に基づき、日本化粧品工業連合会が「加水分解ケラチン」との表示名称を付与した成分が該当する。また、「加水分解ケラチン誘導体」とは、加水分解ケラチンに該当しないものであり、ケラチンの主鎖の切断を伴って製造されるケラチン誘導体である。これら加水分解ケラチン及び加水分解ケラチン誘導体は、安定入手し易い羊毛に由来するものであると良い。
【0024】
加水分解ケラチン誘導体としては、例えば、特開2012−224573号公報に開示されている下記式(I)〜(III)で表される構造及びこれらの構造の塩から選ばれた単位を有する側鎖基を一種又は二種以上備えるものが挙げられる。
−S−S−(CH)n−COOH (I)
(式(I)中、nは1又は2である。)
−S−S−CH(CH)−COOH (II)
−S−S−CH(COOH)−CH−COOH (III)
【0025】
加水分解ケラチン及び加水分解ケラチン誘導体は、その分子量が小さなほど毛髪に浸透しやすい上に、後処理剤のpHを低く設定した際の溶解性への影響が小さい。そのため、加水分解ケラチン及び加水分解ケラチン誘導体は、分子量20000以下のものが含まれていると良く、分子量10000以下のものが含まれていると好ましく、分子量5000以下のものが含まれていると好ましい。一方で、毛髪への浸透性を抑えるには、加水分解ケラチン及び加水分解ケラチン誘導体は、分子量500以上のものが含まれていると良く、分子量1000以上のものが含まれていると好ましく、分子量2000以上のものが含まれているとより好ましい。ここで、前記の分子量については、Sodium Dodecyl Sulfate−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE法)による加水分解ケラチン等のバンドと分子量マーカーのバンドとの相対距離から算出した分子量を、加水分解ケラチン等の分子量とみなして採用する。
【0026】
本実施形態の後処理剤には、加水分解ケラチン及びその誘導体から選ばれた一種又は二種以上が配合される。この後処理剤における加水分解ケラチン及びその誘導体の配合量は、例えば0.0005質量%以上であり、0.001質量%以上が良く、0.01質量%以上が好ましい。一方、配合量の上限は、後処理剤を安価にする観点から、1質量%が良く、0.1質量%が好ましい。
【0027】
任意原料
本実施形態の後処理剤に配合される任意原料は、公知の毛髪処理剤用の原料から適宜に選定される。この任意原料は、界面活性剤、高級アルコール、多価アルコール、糖類、エステル油、油脂、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤などである。なお、本実施形態の後処理剤にタンニン酸を配合しても良いが、その配合量は、前処理剤の配合量よりも少なくすると良い(例えば、前処理剤の配合量の1/100以下)。
【0028】
剤型
本実施形態の後処理剤は、毛髪に馴染み易くするため、外相が水相である水性のものが好ましい。そして、当該後処理剤の使用時の剤型は、特に限定されず、例えば、液状、クリーム状、ゲル状、フォーム状(泡状)、霧状が挙げられる。
【0029】
pH
本実施形態の後処理剤のpHは、例えば4以上7以下である。pHを低く設定した場合に加水分解ケラチン及び/又は加水分解ケラチン誘導体の分散性が低い場合には、pH5以上が良く、6以上が好ましい。
【0030】
(使用方法)
本実施形態の多剤式毛髪処理剤は、前処理剤を毛髪に塗布する前処理工程の後に、この前処理剤を洗い流し又は前処理剤を洗い流さずに、後処理剤を塗布する後処理工程で使用される。後処理剤は、塗布後に洗い流しても良いし、洗い流さなくても良い。
【0031】
本実施形態の多剤式毛髪処理剤は、前処理剤及び後処理剤に加えて、1以上の他の処理剤を備えるものであっても良い。例えば3剤式の毛髪処理後の場合の他の処理剤の使用順序は、前処理剤のタンニン酸が毛髪内に存在する状態で後処理剤を使用するのであれば限定されず、前処理剤の前に使用しても良く、前処理剤及び後処理剤の間に使用しても良く、後処理剤の後に使用しても良い。
【0032】
本実施形態の多剤式毛髪処理剤は、ヘアケア剤などとして使用可能なものである。「ヘアケア剤」とは、毛髪の手入れ、手当て等を行うために用いられる毛髪処理剤である。ヘアケア剤としては、例えばシャンプー後に使用するトリートメント、パーマの前処理のためのトリートメント、パーマの後処理のためのトリートメント、カラーリングの前処理のためのトリートメント、カラーリングの後処理のためのトリートメント、ブリーチの前処理のためのトリートメント、ブリーチの後処理のためのトリートメントが挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0034】
前処理剤と後処理剤を製造し、実施例及び比較例の毛髪処理を行った。その詳細は、以下の通りである。
【0035】
(前処理剤)
加水分解性タンニン(DSP五協フード&ケミカル社製「Gタンニン酸)の1質量%水溶液を前処理剤として製造した。
【0036】
(後処理剤)
ケラチン誘導体
以下の通り、還元工程及び酸化剤混合工程に従って−S−S−CH−COOH又はその塩を側鎖基に備えるケラチン誘導体を製造し、固液分離工程及び回収工程に従ってそのケラチン誘導体を回収し、加熱工程におけるケラチン誘導体の処理により、前記側鎖基を備える加水分解ケラチン誘導体の溶液を製造した。
【0037】
還元工程
中性洗剤で洗浄、乾燥させたメリノ種羊毛を、約5mmに切断した。この羊毛5質量部、30質量%チオグリコール酸ナトリウム水溶液15.4質量部及び6mol/L水酸化ナトリウム水溶液8.5質量部を混合し、さらに水を混合して全量150質量部、pH11の被処理液を調製した。この被処理液を、45℃、1時間の条件で攪拌した。次いで、さらに水を混合して全量を200質量部とし、45℃、2時間の条件で放置し、その後、液温が常温になるまで自然冷却した。
【0038】
酸化剤混合工程
還元工程後の被処理液を攪拌しながら、当該液に、35質量%過酸化水素水を15.26質量部配合した水溶液178質量部を、約30分かけて攪拌しながら混合した(過酸化水素水の混合に伴って被処理液のpHは上昇することになるが、約20質量%酢酸水溶液を混合することで、pH範囲を10以上11以下に調整した。)。その後、約20質量%酢酸水溶液を徐々に混合し、被処理液のpHが漸次11から7になるように調整した。以上によりケラチン誘導体溶液を得た。
【0039】
固液分離工程及び回収工程
ケラチン誘導体溶液をろ過することにより、その溶液の不溶物を除去した。その後、回収した液体部(ろ液)に36質量%塩酸水溶液97.2質量部を配合した水溶液160質量部を添加した。この添加で、ケラチン誘導体溶液のpHを7から4にすることにより、ケラチン誘導体の沈殿を生じさせた。この沈殿を回収、水洗し、固形状のケラチン誘導体を得た。
【0040】
加熱工程
回収工程で得た固形状ケラチン誘導体が1質量%、かつ、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールでpH8とした水溶液を、85℃で5時間加熱した。その液を室温に冷却した後に、ろ過し、加水分解ケラチン誘導体の水溶液を得た。
【0041】
後処理剤の調製は、上記加熱工程で得られた加水分解ケラチン誘導体1質量%、1,3−ブチレングリコール3質量%、フェノキシエタノール1質量%、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン3質量%及び水(残部)を配合することにより行った。そして、後述の加水分解ケラチン誘導体の毛髪への浸透性の確認のために、後処理剤にFTSC−MESを添加し、ゲルろ過カラムにより未反応のFTSCを除去した。そのFTSC−MESは、1.065質量部の2−(N−Morpholino)ethanesulfonic Acid(MES)を40質量部の水に溶解させた液に、0.2M−NaOH水溶液を滴下することにより、pH5.5のMES水溶液を調製し、MES水溶液中に、0.00042質量部の蛍光色素Fluorescein−5−thiosemicarbazide(FTSC)を溶解させ、水を加えて全量約50質量部とすることで調製したものである。
【0042】
(実施例)
酸化染毛剤による染毛履歴がある毛先を含む毛髪を日本人女性から採取し、これに対して、市販のシャンプーによる洗浄処理、エタノール洗浄、水洗、乾燥を順次行い、この毛髪を実施例の毛髪処理対象として準備した。実施例の毛髪処理では、その毛髪を上記の製造した前処理剤に5分間浸漬し、次に、上記FTSC−MESを添加した後処理剤に30分間浸漬した。その後、毛髪を水洗し、乾燥させた。
【0043】
(比較例)
前処理剤を水に変更した以外は、実施例と同様にして毛髪処理を行った。
【0044】
(浸透性の評価)
実施例及び比較例の毛髪の毛先辺りをミクロトームで切断し、この切断面の蛍光顕微鏡観察(励起光波長:340nm)を行った。図1は、実施例の切断面の蛍光顕微鏡観察結果を示す撮影画像であり、図2は、比較例の切断面の蛍光顕微鏡観察結果を示す撮影画像である。図1及び図2に示す通り、比較例の撮影画像では切断面全体に均一性ある蛍光を確認できる一方で(図2参照)、実施例では中心部に向けて蛍光が弱まっている(図1参照)。つまり、前処理剤を使用した実施例の毛髪処理では、加水分解ケラチン誘導体の毛髪内部への浸透が抑えられていた。
図1
図2