【実施例】
【0014】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。
図1は本発明のワイヤハーネスを示す図であり、(a)は高電圧のワイヤハーネスの配索状態を示す模式図、(b)は(a)とは別の低電圧のワイヤハーネスの配索状態を示す模式図である。また、
図2は本発明のワイヤハーネスの構成を示す斜視図、
図3は
図2の外装部材に導電路を挿通する際の状態を示す斜視図(振動抑制部の反転前)、
図4は外装部材の振動抑制部を反転させる直前の状態を示す斜視図、
図5(a)は振動抑制部を反転させる直前の状態を示す断面図、(b)は振動抑制部を反転させた後の状態を示す断面図である。
【0015】
本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車やエンジンで走行する一般的な自動車等であってもよいものとする)に配索されるワイヤハーネスに対し本発明を採用する。
【0016】
<ハイブリッド自動車1の構成について>
図1(a)において、引用符号1はハイブリッド自動車を示す。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給される。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載される。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載される(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載してもよいものとする)。
【0017】
モータユニット3とインバータユニット4は、高圧のワイヤハーネス8(高電圧用のモーターケーブル)により接続される。また、バッテリー5とインバータユニット4も高圧のワイヤハーネス9により接続される。ワイヤハーネス9は、この中間部10が車両における(車体における)車両床下11に配索される。また、中間部10は、車両床下11に沿って略平行に配索される。車両床下11は、公知のボディ(車体)であるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔が形成される。この貫通孔には、ワイヤハーネス9が水密に挿通される。
【0018】
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられるジャンクションブロック12を介して接続される。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス9の後端側のハーネス端末13に配設されたシールドコネクタ14等の外部接続手段が電気的に接続される。また、ワイヤハーネス9とインバータユニット4は、前端側のハーネス端末13に配設されたシールドコネクタ14等の外部接続手段を介して電気的に接続される。
【0019】
モータユニット3は、モータ及びジェネレータを含んで構成される。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んで構成される。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成される。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成される。バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化することによりなる。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能である。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないのは勿論である。
【0020】
図1(b)において、引用符号15はワイヤハーネスを示す。ワイヤハーネス15は、低圧の(低電圧用の)ものであって、ハイブリッド自動車1における自動車後部7の低圧バッテリー16と、自動車前部17に搭載される補器18(機器)とを電気的に接続するために備えられる。ワイヤハーネス15は、
図1(a)のワイヤハーネス9と同様に、車両床下11を通って配索される(一例であり、車室側を通って配索されてもよいものとする)。
【0021】
図1(a)及び(b)に示す如く、ハイブリッド自動車1には、高圧のワイヤハーネス8、9及び低圧のワイヤハーネス15が配索される。本発明は、いずれのワイヤハーネスであっても適用可能であるが、代表例として低圧のワイヤハーネス15を挙げて以下に説明をする。
【0022】
<ワイヤハーネス15の構成について>
図1(b)において、車両床下11を通って配索される(車両床下11ではストレートに配索される)長尺なワイヤハーネス15は、ハーネス本体19と、このハーネス本体19の両端末にそれぞれ配設されるコネクタ20とを備えて構成される。また、ワイヤハーネス15は、これ自身を所定位置に配索するための固定部材(例えばクランプ等)と、図示しない止水部材(例えばグロメット等)とを備えて構成される。
【0023】
<ハーネス本体19の構成について>
図2において、ハーネス本体19は、一本の導電路21と、この導電路21を収容・保護する外装部材22とを備えて構成される。尚、導電路21の本数に関し、本実施例においては一本であるが、これは一例であるものとする(二本や三本でもよいものとする。複数本の場合、高圧のワイヤハーネス9を一緒にしてもよいものとする)。
【0024】
先ず、ハーネス本体19における導電路21及び外装部材22について説明をし、次に、ワイヤハーネス15の製造方法及び外装部材22における振動抑制部24の作用について説明をする。
【0025】
<導電路21について>
図2において、導電路21は、導電性を有する導体と、この導体の外側に設けられる絶縁性の絶縁体(被覆)とを備えて構成される。導体は、銅や銅合金、或いはアルミニウムやアルミニウム合金により断面円形に形成される。導体に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は円形(丸形)になる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造であり、この場合、電線自体も棒状となる)のもののいずれであってもよいものとする。以上のような導体は、この外面に絶縁性の樹脂材料からなる絶縁体が押出成形される。
【0026】
絶縁体は、熱可塑性樹脂材料を用いて導体の外周面に押出成形される。絶縁体は、断面円形状の被覆として形成される。絶縁体は、所定の厚みを有して形成される。上記熱可塑性樹脂としては、公知の様々な種類のものが使用可能であり、例えばポリ塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの高分子材料から適宜選択される。
【0027】
<外装部材22について>
図2及び
図3において、外装部材22は、樹脂成形にて一本の真っ直ぐな管体形状のものに形成される(使用前は真っ直ぐである。導電路21の挿通後は、図示しない可撓管部を配索先の形状に合わせて曲げればよい)。また、外装部材22は、腹割きなしの形状に形成される。別な言い方をすれば、スリットのない形状に形成される(割チューブでない形状に形成される)。
【0028】
外装部材22は、ワイヤハーネス15をストレートに配索する部分、すなわち車両床下11(
図1参照)のような振れ易い部分の形状が断面円形状になるように形成される(本実施例のような真円形状に限らず、例えば断面長円形状や楕円形状、矩形状等であってもよいものとする)。
【0029】
上記ストレートに配索する部分に対応する外装部材22の構造部分をストレート管部23と呼ぶことにすると、このストレート管部23には、本発明の特徴部分である振動抑制部24が複数形成される。
【0030】
<振動抑制部24について>
図2ないし
図5において、振動抑制部24は、外装部材22の軸方向に所定の間隔で配置形成される(一例であるものとする)。振動抑制部24は、ストレート管部23の内部所定位置での導電路21の遊び率(導電路21の振れが生じてしまうような空間の割合)を減らすような部分に形成される。振動抑制部24は、導電路21の振れを抑制するために必要な位置に配置形成される。尚、振動抑制部24は、複数でなく一つのみでもよいものとする。
【0031】
振動抑制部24は、凹凸反転可能な形状部分に形成される。具体的には、管外面25の側から見て凸の形状に形成されるとともに、管内面26の側から見て凹の形状に形成され、且つ、管外面25の側からの押圧(変形治具27を用いて矢印方向に押圧する)にて管内面26の側が凸になるような反転可能な形状の部分に形成される。
【0032】
<ワイヤハーネス15の製造方法、振動抑制部24の作用について>
図1において、ワイヤハーネス15は、先ずハーネス本体19の部分が製造される。そして、次に端末の加工が施される。
図2において、ハーネス本体19の部分は、
図3に示すように外装部材22の一端開口部から他端開口部に向けて導電路21を挿通することにより製造される。具体的には、導電路21と外装部材22とを準備し、この後に外装部材22に導電路21を挿通する。
【0033】
導電路21の挿通が終わったら、
図4及び
図5(a)に示すように、変形治具27を用いて矢印方向に振動抑制部24を押圧する。これにより振動抑制部24は内側に押し込まれて反転状態になる。すなわち、
図2及び
図5(b)に示すような状態に振動抑制部24が反転する。振動抑制部24が反転すると、これに伴って所定位置での導電路21の遊び率が減少する。
【0034】
<本発明のまとめ及び効果について>
以上、
図1ないし
図5を参照しながら説明してきたように、本発明のワイヤハーネス15は、管体形状の外装部材22と、この外装部材22に挿通・保護される一本の導電路21とを備えて構成される。外装部材22は、複数の振動抑制部24を有する。この振動抑制部24は、外装部材22の内部所定位置での導電路21の遊び率を減らして振れを抑制する部分として形成される。具体的には、管外面25の側から見て凸の形状に形成されるとともに管内面26の側から見て凹の形状に形成され、且つ、管外面25の側からの押圧にて管内面26の側が凸になるような反転可能な形状に形成される。このような振動抑制部24の形成により、導電路21は外装部材22との相対的な振れが抑制される。
【0035】
従って、本発明のワイヤハーネス15によれば、外装部材22内での導電路21の振れを抑制することができる。これにより、導電路21の絶縁体が外装部材22の管内面に強く当たって損傷してしまうのを防止することができる(シールド機能を有する導電路の場合、編組や金属箔へのダメージを防止することができる)。
【0036】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。