【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>
実施例1では、シリケートポリマー成形体として実現可能な、骨材とアルミノ珪酸塩とアルカリシリカ溶液との質量割合の比を調べた。
【0060】
(実験例1〜36)
まず、窯業系サイディング廃材からなる骨材を準備した(ステップS1)。実験例1〜36では、粒径の異なる窯業系サイディング廃材を、下記の表1に記載の質量でそれぞれ準備した。骨材の粒径は10μmから5mmであった。なお、骨材の粒径は、レーザー回折法で測定して得られた数値であった。
【0061】
次に、骨材と、アルミノ珪酸塩と、アルカリシリカ溶液とを混合し、混合物を生成した(ステップS2)。
【0062】
具体的には、まず、骨材と、アルミノ珪酸塩としてのメタカオリン(BASF社製の商品名「Satintone SP−33」)とを混練ミキサーに投入し、均一に混ざるまで空練りした。実験例1〜36において、投入したメタカオリンの質量割合の比を下記の表1に記載する。
【0063】
その後、骨材とメタカオリンとの混合物に、アルカリシリカ溶液としての珪酸ナトリウム水溶液(富士化学株式会社製の商品名「1号珪酸ソーダ」)を加えて、混練した。実験例1〜36において投入した珪酸ナトリウム水溶液の質量割合の比を下記の表1に記載する。
【0064】
骨材とメタカオリンと珪酸ナトリウム水溶液とを混合すると、メタカオリンと珪酸ナトリウムとの重合反応がすぐに開始され、各物質が均一に分散し、一体となった時点で、混練を完了とした。
【0065】
次に、混合物を成形した(ステップS3)。具体的には、得られた混練物(混合物)を樹脂性の型枠に入れ、振動台上で加振した。これにより、硬化中の混合物が振動によりゲル状に軟化し、型枠の隅々まで混練物を充填することができた。その後、気温20℃、湿度60%の環境下で一週間養生し、脱型した。本実施例では、ポリマーと離反しやすい樹脂製の型枠を用いたので、離型剤を用いることなく、脱型できた。以上の工程を実施することにより、実験例1〜36のシリケートポリマー成形体を製造した。
【0066】
(評価方法)
実験例16〜18、23〜26、30〜36のシリケートポリマー成形体について、JIS A 1108及びJIS A 1132に基づいて、圧縮強度試験を行った。具体的には、
図2に示すように、実験例16〜18、23〜26、30〜36のシリケートポリマー成形体について、直径50mmで、高さが100mmの円柱状の試験体を作製し、試験体を試験機に載置し、一様な速度(圧縮応力度の増加が毎秒0.6±0.4N/mm
2)で試験体に荷重を加え、試験体が破壊するまでに試験機が示す最大荷重を測定した。この試験を3回実施し、その平均値を実験例16〜18、23〜26、30〜36のシリケートポリマー成形体の圧縮強度とした。この結果を下記の表1に記載する。
【0067】
また、実験例24のシリケートポリマー成形体について、JIS A 1116に基づいて、曲げ強度試験を行った。具体的には、
図3に示すように、幅が40mmで、長さが160mmで、高さが40mmの直方体状の試験体を作製し、試験体を試験機に載置し、中央(端から長さが80mm)の位置に、試験機の上部載荷装置を接触させて、一様な速度(ふち応力度の増加が毎秒0.06±0.04N/mm
2)で荷重を加え、試験体が破壊するまでに試験機が示す最大荷重を測定した。この試験を5回実施し、その平均値を実験例24のシリケートポリマー成形体の曲げ強度とした。
【0068】
【表1】
【0069】
なお、表1において、質量割合(%)の比とは、シリケートポリマー成形体における骨材、メタカオリン及び珪酸ナトリウム水溶液の質量割合(%)を、珪酸ナトリウム水溶液を1.0とした時の骨材及びメタカオリンの比を意味する。例えば、実験例16における質量割合は、骨材60%、メタカオリン20%、珪酸ナトリウム20%である。
【0070】
(評価結果)
表1に示すように、骨材を準備する工程(ステップS1)と、骨材とアルミノ珪酸塩とアルカリシリカ溶液とを混合して、混合物を生成する工程(ステップS2)と、混合物を成形する工程(ステップS3)とを備え、生成する工程(ステップS2)では、骨材:アルミノ珪酸塩:アルカリシリカ溶液=(3.0〜3.8):(1.0〜0.3):1.0、(1.8〜2.8):(1.2〜0.2):1.0、(1.0〜2.2):(1.3〜0.2):1.0及び(0.3〜0.5):(1.3〜1.0):1.0のいずれかの質量割合の比で混合した実験例16〜18、23〜26、30〜36では、シリケートポリマー成形体を製造することができた。具体的には、実験例16〜18の生成する工程(ステップS2)では、骨材:アルミノ珪酸塩:アルカリシリカ溶液=(3.0〜3.8):(1.0〜0.3):1.0、実験例23〜26の生成する工程(ステップS2)では、骨材:アルミノ珪酸塩:アルカリシリカ溶液=(1.8〜2.8):(1.2〜0.2):1.0、実験例30〜34の生成する工程(ステップS2)では、骨材:アルミノ珪酸塩:アルカリシリカ溶液=(1.0〜2.2):(1.3〜0.2):1.0、実験例35及び36の生成する工程(ステップS2)では、(0.3〜0.5):(1.3〜1.0):1.0の質量割合の比で混合したので、2.9N/mm
2以上の圧縮強度を有するシリケートポリマー成形体を製造することができた。
【0071】
なお、表1の圧縮強度において「×」とは、シリケートポリマー成形体として成形できたが、全量を一体化できなかったことを意味する。
【0072】
また、骨材:アルミノ珪酸塩(メタカオリン):アルカリシリカ溶液(珪酸ナトリウム)=(3.0〜3.5):(1.0〜0.5):1.0、(1.8〜2.6):(1.2〜0.4):1.0、(1.0〜1.7):(1.3〜0.7):1.0及び(0.3〜0.5):(1.3〜1.0):1.0のいずれかの質量割合で混合した実験例16、17、23〜25、30〜32、35及び36のシリケートポリマー成形体は、24.0N/mm
2以上の圧縮強度を有していた。具体的には、実験例16及び17の生成する工程(ステップS2)では、骨材:アルミノ珪酸塩:アルカリシリカ溶液=(3.0〜3.5):(1.0〜0.5):1.0、実験例23〜25の生成する工程(ステップS2)では、骨材:アルミノ珪酸塩:アルカリシリカ溶液=(1.8〜2.6):(1.2〜0.4):1.0、実験例30〜32の生成する工程(ステップS2)では、骨材:アルミノ珪酸塩:アルカリシリカ溶液=(1.0〜1.7):(1.3〜0.7):1.0、実験例35及び36の生成する工程(ステップS2)では、(0.3〜0.5):(1.3〜1.0):1.0の質量割合の比で混合したので、圧縮強度が24.0N/mm
2以上であった。JIS A 5371に規定される、コンクリート製のインターロッキングブロックに求められる圧縮強度性能は、歩道使用において17N/mm
2以上であるので、実験例16、17、23〜25、30〜32、35、36のシリケートポリマー成形体の圧縮強度は、非常に高い強度を有していることがわかった。
【0073】
また、本実施例において、骨材を準備する工程(ステップS1)と、骨材と、アルミノ珪酸塩と、アルカリシリカ溶液とを混合して、混合物を生成する工程(ステップS2)と、混合物を成形する工程(ステップS3)とを備え、生成する工程(ステップS2)では、アルカリシリカ溶液の質量割合の比を1.0としたときに、骨材とアルミノ珪酸塩との質量割合の比の合計が1.5以上4.0以下であり、かつアルミノ珪酸塩の質量割合の比が0.2以上1.3以下である混合した実験例16〜18、23〜26、30〜36のシリケートポリマー成形体は、一体化した成形体となり、2.9N/mm
2以上の圧縮強度を有していた。また、本実施例において、アルカリシリカ溶液の質量割合の比を1.0としたときに、骨材とアルミノ珪酸塩との質量割合の比の合計が1.5以上4.0以下であり、かつアルミノ珪酸塩の質量割合の比が0.4以上1.3以下で混合した実験例16、17、23〜25、30〜32、35及び36のシリケートポリマー成形体は、24.0N/mm
2以上の圧縮強度を有していた。
【0074】
また、実験例24について、JIS A 1116に基づいて、曲げ強度試験を行った結果、実験例24のシリケートポリマー成形体は、11.2N/mm
2の曲げ強度を有していた。JIS A 5371に規定されるコンクリート製のインターロッキングブロックに求められる曲げ強度性能は、歩道使用において5N/mm
2であるので、実験例24のシリケートポリマー成形体の曲げ強度は、非常に高い強度を有していることがわかった。
【0075】
また、実験例24のシリケートポリマー成形体の5体の試験体のそれぞれの曲げ強度のバラツキ(最大値−最小値)は1.3N/mm
2であり、バラツキが小さかった。このことから、安定して高い強度を有するシリケートポリマー成形体を実現できることがわかった。
【0076】
ここで、本実施例では、骨材として、窯業系サイディング廃材を用いた。本発明者は、骨材として、窯業系サイディング廃材の代わりに、珪酸カルシウム板廃材、陶器片、瓦廃材、砂、砂利、及び粘土の少なくとも一種を用いても、同様の効果を有するという知見を得ている。また、本発明者は、骨材としての質量割合の比率が同じであれば、その一部を軽量骨材に置換しても、強度は低下するもの、シリケートポリマー成形体としての実現可能性については同様であるという知見を得ている。すなわち、軽量骨材と、軽量骨材よりも真密度の大きい他の骨材とからなる骨材を用いる場合にも、骨材:アルミノ珪酸塩(メタカオリン):アルカリシリカ溶液(珪酸ナトリウム)=(3.0〜3.8):(1.0〜0.3):1.0、(1.8〜2.8):(1.2〜0.2):1.0、(1.0〜2.2):(1.3〜0.2):1.0及び(0.3〜0.5):(1.3〜1.0):1.0のいずれかの質量割合の比で混合されることにより、シリケートポリマー成形体を成形できる。
【0077】
<実施例2>
実施例2では、高い強度を維持しつつ、軽量化を図ることができる、軽量骨材の骨材に対する質量割合の比率を調べた。
【0078】
(実験例37)
実験例37のシリケートポリマー成形体は、基本的には実験例32と同様に製造したが、準備する工程(ステップS1)において、表2に示す軽量骨材を用いた点において異なっていた。
【0079】
具体的には、準備する工程(ステップS1)において、表2に記載しているように、外郭を構成する被膜がガラス質で、被膜の内部に充填された内部層が空気層であり、粒径が20μmの軽量骨材(スリーエム ジャパン社製の「グラスバブルズ iM16K」)を準備した。また、軽量骨材よりも真密度の大きい他の骨材として、窯業系サイディング廃材(真密度が2.18g/cm
3、粒径が20〜640μm、平均粒径が262μm)、キラ(真密度が2.53g/cm
3、粒径が10〜180μm、平均粒径が66μm)、及びシャモット(真密度が2.25g/cm
3、粒径が2000〜7000μm、平均粒径が3000μm)を準備した。なお、キラは細かい珪砂であり、シャモットは鋳造鋳型の粉砕物である。
【0080】
次いで、骨材(軽量骨材と他の骨材との合計)に対する軽量骨材の質量割合の比率、及び、軽量骨材と他の骨材との質量割合の比を、表3及び表4に記載のようにした。これにより、軽量骨材と他の骨材とからなる骨材を準備した。
【0081】
次に、実験例32と同様に、骨材とアルミノ珪酸塩とアルカリシリカ溶液とを混合して、混合物を生成し(ステップS2)、この混合物を成形した(ステップS3)。これにより、実験例37のシリケートポリマー成形体を製造した。
【0082】
(実験例38)
実験例38のシリケートポリマー成形体は、基本的には実験例37と同様に製造したが、準備する工程(ステップS2)において、表2に記載の粒径の異なる軽量骨材(スリーエム ジャパン社製の「グラスバブルズ K37」)を準備し、表3に記載の質量割合、すなわち表4に記載の質量割合の比で、軽量骨材と他の骨材とアルミノ珪酸塩とアルカリシリカ溶液とを混合した点において異なっていた。
【0083】
(実験例39)
実験例39のシリケートポリマー成形体は、基本的には実験例37と同様に製造したが、準備する工程(ステップS2)において、表2に記載のように被膜の材質及び粒径の異なる軽量骨材(松本油脂製薬社製の「マツモトクロスフェアー F−30E」)を準備し、表3に記載の質量割合、すなわち表4に記載の質量割合の比で、軽量骨材と他の骨材とアルミノ珪酸塩とアルカリシリカ溶液とを混合した点において異なっていた。
【0084】
(実験例40)
実験例40のシリケートポリマー成形体は、基本的には実験例39と同様に製造したが、準備する工程(ステップS2)において、表2に記載のように粒径が異なり、内部層がオイルである軽量骨材を作製し、表3に記載の質量割合、すなわち表4に記載の質量割合の比で、軽量骨材と他の骨材とアルミノ珪酸塩とアルカリシリカ溶液とを混合した点において異なっていた。
【0085】
(比較例1)
比較例1のシリケートポリマー成形体は、基本的には実験例37と同様に製造したが、骨材が軽量骨材を含まず他の骨材のみからなる点、及び、表3に記載の質量割合、すなわち表4に記載の質量割合の比で、他の骨材とアルミノ珪酸塩とアルカリシリカ溶液とを混合した点において異なっていた。
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
(評価方法)
実験例37〜40及び比較例1の製造方法にしたがって、それぞれ3体ずつシリケートポリマーの試験体を製造し、それぞれの試験体について、圧縮強度及び比重を測定した。圧縮強度は、実施例1と同様の圧縮強度試験を行った。比重を測定した。比重は、JIS Z 8807の液中ひょう量法に基づいて測定した。これらの結果を下記の表5に示す。
【0090】
【表5】
【0091】
(評価結果)
骨材に対する軽量骨材の質量割合の比率を0.06以上0.6以下とし、かつ、骨材:アルミノ珪酸塩:アルカリシリカ溶液=(3.0〜3.8):(1.0〜0.3):1.0、(1.8〜2.8):(1.2〜0.2):1.0、(1.0〜2.2):(1.3〜0.2):1.0及び(0.3〜0.5):(1.3〜1.0):1.0のいずれかの質量割合の比で混合した実験例37〜40の製造方法によれば、シリケートポリマー成形体を製造することができた。
【0092】
表5、
図4及び
図5に示すように、実験例37〜40は、比較例1に比べて圧縮強度は低下するものの、8N/mm
2以上の圧縮強度を維持でき、かつ、比重を低減することができた。
【0093】
特に、ガラス質の被膜を有する軽量骨材を用いた実験例37及び38は、実験例39及び40と同様の比重であるものの、強度を向上できた。これは、シリケートポリマーは珪素骨格であるため、無機質の材料と相性がよいことに起因していると考えられる。
【0094】
また、軽量骨材の粒径が20μm以上45μm以下の実験例37及び38は、アルミノ珪酸塩とアルカリシリカ溶液とで形成されるポリマーの軽量骨材中の充填バランスが良くなり、骨材自体の耐圧強度も高くなり、シリケートポリマー成形体の強度を向上できることもわかった。
【0095】
なお、実験例37及び38のシリケートポリマー成形体は、24.5N/mm
2以上の圧縮強度と、1.4以下の比重とを有している。一般建築に用いられるコンクリートの圧縮強度が21N/mm
2であるので、実験例37及び38のシリケートポリマー成形体は、一般建築に用いられるコンクリートと同等以上の強度を発揮できた。また、この圧縮強度を有するコンクリートの比重は、2.3であるので、実験例37及び38のシリケートポリマーは、コンクリートに比べて約40%の軽量化ができた。
【0096】
以上より、骨材に対する軽量骨材の質量割合の比率を0.06以上0.6以下にすることによって、高い強度を維持しつつ、軽量化を図ることができるシリケートポリマーを製造できることが確認できた。
【0097】
今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。