(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記細孔径20μm以上30μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Cが、前記細孔径10μm以上20μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Bよりも、5%以上大きい、請求項1に記載の排ガス浄化装置。
前記細孔径10μm以上20μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Bが、前記細孔径5μm以上10μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Aよりも、5%以上大きい、請求項1または2に記載の排ガス浄化装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えばパティキュレートフィルタの自動車における配置に関するような一般的事項)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0018】
先ず、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化装置の構成について
図1を参照しつつ説明する。ここで開示される排ガス浄化装置1は、該内燃機関の排気系に設けられている。
図1は、内燃機関2と、該内燃機関2の排気系に設けられた排ガス浄化装置1を模式的に示す図である。
【0019】
本実施形態に係る内燃機関(エンジン)には、酸素と燃料ガスとを含む混合気が供給される。内燃機関は、この混合気を燃焼させ、燃焼エネルギーを力学的エネルギーに変換する。このときに燃焼された混合気は排ガスとなって排気系に排出される。
図1に示す構成の内燃機関2は、自動車のガソリンエンジンを主体として構成されている。
【0020】
上記エンジン2の排気系について説明する。上記エンジン2を排気系に連通させる排気ポート(図示せず)には、エキゾーストマニホールド3が接続されている。エキゾーストマニホールド3は、排ガスが流通する排気管4に接続されている。エキゾーストマニホールド3と排気管4とにより本実施形態の排気通路が形成されている。図中の矢印は排ガス流通方向を示している。
【0021】
ここで開示される排ガス浄化装置1は、上記エンジン2の排気系に設けられている。この排ガス浄化装置1は、触媒部5とフィルタ部6とECU7を備え、上記排出される排ガスに含まれる有害成分(例えば、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO
x))を浄化するとともに、排ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集する。
【0022】
触媒部5は、排気ガス中に含まれる三元成分(NOx、HC、CO)を浄化可能なものとして構成されており、上記エンジン2に連通する排気管4に設けられている。具体的には
図1に示すように、排気管4の下流側に設けられている。触媒部5の種類は特に限定されない。触媒部5は、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rd)等の貴金属が担持された触媒であってもよい。なお、フィルタ部6の下流側の排気管4に下流側触媒部をさらに配置してもよい。かかる触媒部5の具体的な構成は本発明を特徴付けるものではないため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0023】
フィルタ部6は、触媒部5の下流側に設けられている。フィルタ部6は、排ガス中に含まれる粒子状物質(以下、単に「PM」と称する)を捕集して除去可能なガソリンパティキュレートフィルタ(GPF)を備えている。以下、本実施形態に係るパティキュレートフィルタを詳細に説明する。
【0024】
図2は、パティキュレートフィルタ100の斜視図である。
図3は、パティキュレートフィルタ100を軸方向に切断した断面の一部を拡大した模式図である。
図2および
図3に示すように、パティキュレートフィルタ100は、ウォールフロー構造の基材10と、触媒層20(
図4)とを備えている。以下、基材10、触媒層20の順に説明する。
【0025】
<基材10>
基材10としては、従来のこの種の用途に用いられる種々の素材及び形態のものが使用可能である。例えば、コージェライト、炭化ケイ素(SiC)等のセラミックスまたは合金(ステンレス等)から形成された基材を好適に採用することができる。一例として外形が円筒形状(本実施形態)である基材が例示される。ただし、基材全体の外形については、円筒形に代えて、楕円筒形、多角筒形を採用してもよい。かかる基材10は、排ガス流入側の端部のみが開口した入側セル12と、該入側セル12に隣接し排ガス流出側の端部のみが開口した出側セル14と、入側セル12と出側セル14とを仕切る多孔質の隔壁16とを有している。
【0026】
<入側セル12および出側セル14>
入側セル12は、排ガス流入側の端部のみが開口しており、出側セル14は、入側セル12に隣接し排ガス流出側の端部のみが開口している。この実施形態では、入側セル12は、排ガス流出側の端部が封止部12aで目封じされており、出側セル14は、排ガス流入側の端部が封止部14aで目封じされている。入側セル12および出側セル14は、フィルタ100に供給される排ガスの流量や成分を考慮して適当な形状および大きさに設定するとよい。例えば入側セル12および出側セル14の形状は、正方形、平行四辺形、長方形、台形などの矩形、三角形、その他の多角形(例えば、六角形、八角形)、円形など種々の幾何学形状であってよい。
【0027】
<隔壁16>
隣接する入側セル12と出側セル14との間には、隔壁16が形成されている。この隔壁16によって入側セル12と出側セル14とが仕切られている。隔壁16は、排ガスが通過可能な多孔質構造である。隔壁16の気孔率としては特に限定されないが、概ね50%〜70%にすることが適当であり、好ましくは55%〜65%である。隔壁16の気孔率が小さすぎると、圧力損失が増大してしまうことがあり、一方、隔壁16の気孔率が大きすぎると、フィルタ100の機械的強度が低下傾向になるため、好ましくない。かかる隔壁16の気孔率は、後述する高粘度スラリーを隔壁16の大細孔に優先的に配置する観点からも好適である。また、隔壁16の平均細孔径としては特に限定されないが、PMの捕集効率および圧損上昇抑制等の観点から、概ね5μm〜30μm、好ましくは10μm〜25μmである。かかる隔壁16の平均細孔径は、後述する高粘度スラリーを隔壁16の大細孔に優先的に配置する観点からも好適である。隔壁16の厚みとしては特に限定されないが、概ね0.2mm〜1.6mm程度であるとよい。このような隔壁の厚みの範囲内であると、PMの捕集効率を損なうことなく圧損の上昇を抑制する効果が得られる。かかる隔壁16の厚みは、後述する高粘度スラリーを隔壁16の大細孔に優先的に配置する観点からも好適である。
【0028】
<触媒層20>
図4は、
図3のIV領域を拡大した拡大模式図である。
図4に示すように、触媒層20は、隔壁16の内部に設けられている。より詳細には、触媒層20は、隔壁16の内部細孔の壁表面に保持されている。
【0029】
ここで開示されるパティキュレートフィルタ100は、隔壁16の内部細孔のうち細孔径5μm以上10μm未満の細孔に保持された触媒層20の平均充填率Aと、細孔径10μm以上20μm未満の細孔に保持された触媒層20の平均充填率Bと、細孔径20μm以上30μm未満の細孔に保持された触媒層20の平均充填率Cとの関係が、次式:A<B<Cを満足する。このように細孔径が相対的大きい大細孔に保持された触媒層の平均充填率を、細孔径が相対的に小さい小細孔に保持された触媒層の平均充填率よりも大きくすることで、排ガスの浄化性能を効果的に向上させることができる。
【0030】
ここに開示される技術を実施するにあたり、かかる効果が得られる理由を明らかにする必要はないが、例えば以下のことが考えられる。すなわち、本発明者の知見によれば、細孔径が相対的に大きい大細孔は、細孔径が相対的に小さい小細孔よりも排ガスの流路が大きく、排ガスの流量が多い。そのような排ガス流量が多い大細孔に触媒層を優先的に配置することで、大細孔および小細孔の双方に触媒層が均等に配置されているような従来の場合に比べて触媒層と排ガスとの接触機会が増え、排ガス浄化性能が効果的に向上し得るものと推測される。したがって、本構成によれば、フィルタ全体で使用する触媒コート量が同じであるにも関わらず、従来に比して浄化性能に優れた、高性能な排ガス浄化装置を提供することができる。
【0031】
細孔径20μm以上30μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Cは、細孔径10μm以上20μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Bよりも大きければよく、特に限定されない。例えば、細孔径20μm以上30μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Cは、細孔径10μm以上20μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Bよりも、5%以上大きいことが好ましく、10%以上大きいことがより好ましい。ここで開示される排ガス浄化装置は、例えば、平均充填率Cが平均充填率Bよりも12%以上大きい態様で好ましく実施され得る。このことによって、より良好な排ガス浄化性能が実現され得る。例えば、平均充填率Cが平均充填率Bよりも20%以上(例えば30%以上、典型的には40%以上)大きくてもよい。また、平均充填率Cから平均充填率Bを減じた値(すなわち、C−B)は、好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下、さらに好ましくは50%以下である。例えば、C−Bが25%以下であってもよく、20%以下であってもよく、15%以下であってもよい。平均充填率Cの具体例としては、平均充填率Cを平均充填率A、Bよりも大きくしたことによる効果(排ガス浄化性能向上効果)をより良く発揮させる等の観点から、好ましくは80%≦C、より好ましくは85%≦C、さらに好ましくは90%≦C(例えば90%<C)、特に好ましくは95%≦Cである。平均充填率Cの上限は特に限定されないが、圧損上昇抑制等の観点から、概ねC≦98%、好ましくはC≦96.5%である。
【0032】
細孔径10μm以上20μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Bは、細孔径5μm以上10μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Aよりも大きければよく、特に限定されない。例えば、細孔径10μm以上20μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Bは、細孔径5μm以上10μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Aよりも、5%以上大きいことが好ましく、8%以上大きいことがより好ましい。
このことによって、より良好な排ガス浄化性能が実現され得る。例えば、平均充填率Bは、平均充填率Aよりも10%以上大きくてもよく、典型的には15%以上大きくてもよい。ここで開示される排ガス浄化装置は、例えば、平均充填率Bが平均充填率Aよりも18%以上大きい態様で実施され得る。また、平均充填率Bから平均充填率Aを減じた値(すなわち、B−A)は、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは25%以下である。例えば、B−Aが20%以下、典型的には10%以下であってもよい。平均充填率Bの具体例としては、平均充填率Bを平均充填率Aよりも大きくしたことによる効果(例えば排ガス浄化性能向上効果)をより良く発揮させる等の観点から、好ましくは45%≦B、より好ましくは50%≦B、例えば65%≦B、典型的には70%≦B(例えば70%<B)である。ここで開示される排ガス浄化装置は、例えば平均充填率Bが75%≦B、典型的には80%≦Bである態様で実施され得る。平均充填率Bの上限は特に限定されないが、圧損上昇抑制等の観点から、概ねB≦90%、好ましくはB≦85%である。
【0033】
細孔径5μm以上10μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Aは、平均充填率B、Cとの間でA<B<Cの関係を満たす限りにおいて特に制限はないが、排ガス浄化性能向上の観点から、好ましくは30%≦A、より好ましくは40%≦A、例えば45%≦A、典型的には50%≦Aである。ここで開示される排ガス浄化装置は、例えば平均充填率Aが55%≦A、典型的には60%≦Aである態様で実施され得る。平均充填率Aの上限は特に限定されないが、圧損上昇抑制等の観点から、概ねA≦80%、好ましくはA≦70%(例えばA<70%)である。
【0034】
ここに開示される技術の好ましい一態様では、隔壁16の触媒層20が保持された内部細孔のうち、細孔径30μm以上の細孔に保持された触媒層20の平均充填率Dが、細孔径20μm以上30μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Cよりも小さい。好ましい一態様では、平均充填率Aと平均充填率Bと平均充填率Cと平均充填率Dとの関係が、次式:A<B<D<Cの関係を満足する。このように細孔径30μm以上の大細孔に保持された触媒層の平均充填率Dを、細孔径20μm以上30μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Cよりも小さくすることで、圧損を過度に上昇させることなく、上述した効果(例えば排ガス浄化性能向上効果)が得られうる。例えば、孔径30μm以上の細孔に保持された触媒層20の平均充填率Dは、細孔径20μm以上30μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Cよりも、5%以上小さいことが好ましく、7%以上小さいことが好ましい。このことによって、圧損の低減と浄化性能の向上とをより高度なレベルで両立させることができる。例えば、平均充填率Dは、平均充填率Cよりも20%以上小さくてもよく、30%以上小さくてもよい。また、平均充填率Cから平均充填率Dを減じた値(すなわち、C−D)は、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下である。C−Dは、20%以下であってもよく、10%以下であってもよい。平均充填率Dの具体例としては、排ガス浄化性能向上の観点から、好ましくは55%≦D、より好ましくは60%≦Dである。ここで開示される排ガス浄化装置は、例えば平均充填率Dが78%≦D、典型的には85%≦D態様で実施され得る。平均充填率Dの上限は特に限定されないが、圧損上昇抑制等の観点から、概ねD≦93%、好ましくはD≦90%である。例えばD≦80%、典型的にはD≦70%であってもよい。
【0035】
なお、この明細書において、隔壁内部に設けられた細孔の細孔径および該細孔に保持された触媒層の充填率は、次のようにして算出するものとする。すなわち、
(1)走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、隔壁の断面SEM画像または断面TEM画像に含まれる細孔であって触媒層が保持された内部細孔を観察し、画像内で最も大きい細孔径を取れる部位から細孔の分離を始める。
(2)細孔が繋がっている場合は、最大孔径の50%まで径が狭くなったところで細孔を仕切り、一つの細孔として分離する(その際、触媒層は細孔として処理する)。
(3)そして、分離した細孔画像から算出された細孔の面積Xと同一の面積を有する理想円(真円)の直径を細孔の細孔径として算出する。
(4)また、分離した細孔画像から該細孔内に保持された触媒層の面積Yを算出し、該触媒層の面積Yを細孔の面積Xで除した値の百分率(すなわち100×Y/X)を触媒層の充填率(%)として算出する。
(5)上記(1)で分離した細孔に次いで大きな細孔径の細孔を分離する。
その後、分離した細孔の細孔径が5μm以下になるまで(2)〜(5)の処理を繰り返すことで、隔壁内部に設けられた細孔の細孔径および該細孔に保持された触媒層の充填率を求めることができる。そして、各細孔径範囲ごとの触媒層の充填率を算術平均することにより、各細孔径範囲ごとの触媒層の平均充填率を導出することができる。なお、各細孔の細孔径および触媒層の充填率は、所定のプログラムに沿って所定の処理を行うコンピュータによる画像解析ソフトウェアを用いて求めることができる。
【0036】
<触媒層のコート量>
触媒層のコート量は、各細孔径範囲ごとの細孔に保持された触媒層の平均充填率A、B、Cが前記A<B<Cの関係を満たす限りにおいて特に制限はないが、基材の体積1L当たりについて、概ね140g/L以下、好ましくは120g/L以下、より好ましくは100g/L未満、さらに好ましくは80g/L以下、特に好ましくは65g/L以下である。本構成によると、細孔径が大きい大細孔に保持された触媒層の平均充填率を、細孔径が小さい小細孔に保持された触媒層の平均充填率よりも大きくすることで、フィルタ全体での触媒層のコート量を減らしつつ(ひいては圧損の低減や低コスト化を図りつつ)、排ガスの浄化性能を効果的に向上させることができる。したがって、例えば基材の体積1L当たりのコート量が140g/L以下(好ましくは100g/L未満、より好ましくは65g/L以下)であるような少量の触媒層であるにもかかわらず、浄化性能に優れた、高性能な(例えば基材を排ガスが通過する際の圧力損失の上昇を招くことがない)排ガス浄化装置を実現することができる。触媒層のコート量の下限は特に限定されないが、浄化性能向上等の観点から、好ましくは30g/L以上、より好ましくは40g/L以上、さらに好ましくは50g/L以上である。ここに開示される技術は、基材の体積1L当たりについて、触媒層のコート量が60g/L以上70g/L以下であるような態様で好ましく実施され得る。
【0037】
なお、本明細書において、「隔壁の内部細孔に触媒層が保持されている」とは、触媒層が隔壁の表面(すなわち外部)ではなく、隔壁の内部(内部細孔の壁表面)に主として存在することをいう。より具体的には、例えば基材の断面を電子顕微鏡で観察し、触媒層のコート量全体を100%とする。このとき、隔壁の内部細孔の壁表面に存在するコート量分が、典型的には90%以上、例えば95%以上、好ましくは98%以上、さらには99%以上、特には実質的に100%である(すなわち隔壁の表面には触媒層が実質的に存在しない)ことをいう。したがって、例えば隔壁の表面に触媒層を配置しようとした際に触媒層の一部が意図せずに隔壁の内部細孔へ浸透するような場合とは明確に区別されるものである。
【0038】
<貴金属>
触媒層20には、貴金属と、該貴金属を担持する担体が含まれている。上記触媒層20に含まれる貴金属は、排ガスに含まれる有害成分に対する触媒機能を有していればよい。貴金属として、例えば、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)等を用いることができる
【0039】
<担体>
上記触媒層20は、貴金属を担体(典型系には粉体状)に担持させることによって形成されている。上記貴金属を担持する担体は、アルミナ(Al
2O
3)、ジルコニア(ZrO
2)、セリア(CeO
2)、シリカ(SiO
2)、マグネシア(MgO)、酸化チタン(チタニア:TiO
2)等の金属酸化物、若しくはこれらの固溶体(例えばセリア−ジルコニア(CeO
2−ZrO
2)複合酸化物)が挙げられる。中でもアルミナおよび/またはセリア−ジルコニア複合酸化物の使用が好ましい。これらの二種以上を併用してもよい。なお、上記担体には、副成分として他の材料(典型的には無機酸化物)が添加されていてもよい。担体に添加し得る物質としては、ランタン(La)、イットリウム(Y)等の希土類元素、カルシウムなどのアルカリ土類元素、その他遷移金属元素などが用いられ得る。上記の中でも、ランタン、イットリウム等の希土類元素は、触媒機能を阻害せずに高温における比表面積を向上できるため、安定化剤として好適に用いられる。
【0040】
上記担体における貴金属の担持量は特に制限されないが、触媒層20の貴金属を担持する担体の全質量に対して0.01質量%〜2質量%の範囲(例えば0.05質量%〜1質量%)とすることが適当である。触媒層20の上記担体に貴金属を担持させる方法としては特に制限されない。例えば、Al
2O
3および/またはCeO
2−ZrO
2複合酸化物を含む担体粉末を、貴金属塩(例えば硝酸塩)や貴金属錯体(例えば、テトラアンミン錯体)を含有する水溶液に含浸させた後、乾燥させ、焼成することにより調製することができる。
【0041】
触媒層20は、上述した貴金属および担体のほか、NOx吸蔵能を有するNOx吸収材を含んでいてもよい。NOx吸収材は、排ガスの空燃比が酸素過剰のリーン状態にある状態では排ガス中のNOxを吸収し、空燃比がリッチ側に切り替えられると、吸収されていたNOxを放出するNOx吸蔵能を有するものであればよい。かかるNOx吸収材としては、NOxに電子を供与し得る金属の一種または二種以上を含む塩基性材料を好ましく用いることができる。例えば、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、セシウム(Cs)のようなアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)のようなアルカリ土類金属、ランタノイドのような希土類および銀(Ag)、銅(Cu)、鉄(Fe)、イリジウム(Ir)等の金属が挙げられる。中でもバリウム化合物(例えば硫酸バリウム)は高いNOx吸蔵能を有しており、ここで開示される排ガス浄化装置に用いられるNOx吸収材として好適である。
【0042】
触媒層20は、基材10の排ガス流入側の端部を含む排ガス流通方向における上流側部分に配置された上流側触媒層と、基材10の排ガス流出側の端部を含む排ガス流通方向における下流側部分に配置された下流側触媒層とから構成されていてもよい。この場合、上流側触媒層は、基材10の排ガス流入側の端部から下流側に向かって基材10の長さの20%〜100%(例えば50%〜80%すなわち基材全体の1/2〜4/5)までに当たる部分に形成されていてもよい。また、下流側触媒層は、基材10の排ガス流出側の端部から上流側に向かって基材10の長さの20%〜100%(例えば50%〜80%すなわち基材全体の1/2〜4/5)までに当たる部分に形成されていてもよい。このように、上流側触媒層と下流側触媒層とから触媒層20が構成されている場合には、基材10(隔壁16)のうちの上流側触媒層および下流側触媒層が形成されている領域(触媒層20が保持されている内部細孔)において、隔壁16の内部細孔に保持された触媒層20が前述した平均充填率A<B<Cの関係を満足すればよい。
【0043】
また、上流側触媒層は、隔壁16の厚み方向において、入側セル12に接し、かつ、出側セル14に接しないように、隔壁16の内部で偏在していてもよい。例えば、上流側触媒層は、隔壁16の厚み方向において、入側セル12に接する隔壁16の表面から出側セル14側に向かって隔壁16の厚さDの30%〜100%(例えば30%〜70%、好ましくは40%〜80%すなわち隔壁の厚みの2/5〜4/5)までに当たる部分に形成されていてもよい。また、下流側触媒層は、隔壁16の厚み方向において、出側セル14に接し、かつ、入側セル12に接しないように、隔壁16の内部で偏在していてもよい。例えば、下流側触媒層は、隔壁16の厚み方向において、出側セル14に接する隔壁16の表面から入側セル12側に向かって隔壁16の厚さDの30%〜100%(例えば30%〜70%、好ましくは40%〜80%すなわち隔壁の厚みの2/5〜4/5)までに当たる部分に形成されていてもよい。このように、触媒層20(上流側触媒層および下流側触媒層)が隔壁16の内部で厚み方向に偏在している場合には、当該隔壁16のうちの触媒層20(上流側触媒層および下流側触媒層)が形成されている領域(触媒層20が保持されている内部細孔)において、隔壁16の内部細孔に保持された触媒層20が前述した平均充填率A<B<Cの関係を満足すればよい。
【0044】
<触媒層20の形成方法>
触媒層20を形成するに際しては、担体に貴金属を担持してなる粉末と、適当な溶媒(例えばイオン交換水)とを含む触媒層形成用スラリーを用意するとよい。
【0045】
ここで、上記スラリーの粘度は、上述した触媒層の平均充填率の大小関係(A<B<C)を実現するという観点から一つの重要なファクターである。すなわち、上記スラリーは、隔壁16の内部細孔のうち大細孔(例えば細孔径20μm以上30μm未満の細孔)に流入しやすく、かつ、小細孔(例えば細孔径5μm以上10μm未満の細孔)には流入しにくいように、粘度が適宜調整されているとよい。好ましくは、上記スラリーは、せん断速度:4s
−1のときの粘度が500mPa・s以上(例えば500mPa・s〜8000mPa・s)、好ましくは1000mPa・s以上、より好ましくは1500mPa・s以上、さらに好ましくは2000mPa・s以上、特に好ましくは2500mPa・s以上(例えば2500mPa・s〜5000mPa・s)であり得る。このような高粘度のスラリーを用いることにより、隔壁16の内部細孔のうち大細孔に優先的にスラリーが配置され、上述した平均充填率の大小関係(A<B<C)を満たす触媒層を形成することができる。かかるスラリー粘度を実現するため、スラリーには増粘剤や分散剤を含有させてもよい。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)等のセルロース系のポリマーが例示される。スラリー中の全固形分に占める増粘剤の含有量としては、スラリーの粘度が上記範囲を満たす限りにおいて特に限定されないが、概ね0.5質量%〜10質量%、好ましくは1質量%〜5質量%、より好ましくは1.1質量%〜3質量%である。なお、上記スラリー粘度は、常温において市販のせん断粘度計により測定され得る粘度である。例えば、当該分野で標準的な動的粘弾性測定装置(レオメータ)を使用することにより、上記のようなせん断速度域の条件で容易に粘度を測定することができる。ここで「常温」とは15〜35℃の温度範囲をいい、典型的には20〜30℃の温度範囲(例えば25℃)をいう。
【0046】
ここで開示される触媒層の平均充填率の大小関係(A<B<C)を実現する他の好適な条件の一つとして、スラリー中の粒子(典型的には貴金属を担持した担体粉末)の平均粒子径を隔壁16の平均細孔径(メジアン値:D50径)の1/50〜1/3程度にすることが挙げられる。スラリー中の粒子の平均粒子径は、隔壁16の平均細孔径の1/40〜1/5程度がより好ましく、1/30〜1/10程度がさらに好ましい。例えば、隔壁16の平均細孔径が15μm〜20μmの場合、スラリー中の粒子の平均粒子径は0.3μm〜3μm(好ましくは0.4μm〜1μm、より好ましくは0.5μm〜0.7μm)とすることができる。このようなスラリー中の粒子の平均粒子径の範囲内であると、隔壁16の内部細孔のうち大細孔に優先的にスラリーが配置されやすい。そのため、前記平均充填率の大小関係(A<B<C)を満たす触媒層をより安定して形成することができる。なお、スラリー中の粒子の平均粒子径(メジアン値:D50径)はレーザ回折・散乱法に基づいて把握することができる。
【0047】
触媒層20を形成するに際しては、上記スラリーを基材10(
図2)の排ガス流入側の端部となる部分に塗工し、他方の端部(すなわち基材10の排ガス流出側の端部となる部分)から吸引する。かかる吸引により、入側セル12(
図3)に接する隔壁16の表面から出側セル14(
図3)側に向かって上記スラリーを隔壁16の細孔内に流入させる。また、上記スラリーを基材10の排ガス流出側の端部となる部分に塗工し、他方の端部(すなわち基材10の排ガス流入側の端部となる部分)から吸引する。かかる吸引により、出側セル14(
図3)に接する隔壁16の表面から入側セル12(
図3)側に向かって上記スラリーを隔壁16の細孔内に流入させる。このようにして上記スラリーを隔壁16の細孔内に流入させたら、次いで乾燥・焼成するとよい。これにより、隔壁16の細孔の壁表面に触媒層20が保持される。
【0048】
スラリーの吸引速度(風速)は、基材の断面径などによって異なり得るが、一例を挙げると、基材の断面径(直径)が80mm〜250mm(典型的には100mm〜160mm)の場合、概ね10m/s〜80m/sにすることが適当である。また、スラリーの吸引時間は特に限定されないが、概ね1秒〜120秒にすることが適当である。ここで開示される技術の好適例として、スラリーの吸引速度が10m/s以上30m/s未満であり、かつ、スラリーの吸引時間が120秒以上であるもの;スラリーの吸引速度が30m/s以上50m/s未満であり、かつ、スラリーの吸引時間が30秒以上であるもの;スラリーの吸引速度が50m/s以上80m/s以下であり、かつ、スラリーの吸引時間が1秒以上であるもの;が挙げられる。このようなスラリーの吸引速度および吸引時間の範囲内であると、隔壁16の内部細孔のうち大細孔に優先的にスラリーが配置され、前記平均充填率の大小関係(A<B<C)を満たす触媒層をより安定して形成することができる。かかるスラリーの吸引条件は、基材の断面径やスラリーの水分量に応じて適宜変更することができる。
【0049】
なお、スラリーを基材10の排ガス流入側の端部となる部分に塗工し、他方の端部(すなわち基材10の排ガス流出側の端部となる部分)から吸引する場合、入側セル12に接する隔壁16の表面から出側セル14側に向かって隔壁16の厚さの少なくとも30%(例えば30%〜100%、好ましくは60%〜80%)までに当たる部分(当該部分における細孔内)にスラリーがコートされるようにスラリーを吸引することが好ましい。また、上記スラリーを基材10の排ガス流出側の端部となる部分に塗工し、他方の端部(すなわち基材10の排ガス流入側の端部となる部分)から吸引する場合、出側セル14に接する隔壁16の表面から入側セル12側に向かって隔壁16の厚さの少なくとも30%(例えば30%〜100%、好ましくは60%〜80%)までに当たる部分(当該部分における細孔内)にスラリーがコートされるようにスラリーを吸引することが好ましい。このように、基材10の排ガス流入側の端部となる部分に塗工したスラリーのコート領域と、基材10の排ガス流出側の端部となる部分に塗工したスラリーのコート領域とを隔壁16の厚み方向に重ならせることで、上述した平均充填率の大小関係(A<B<C)を満たす触媒層をより安定して形成することができる。
【0050】
また、ここに開示される技術によると、上記平均充填率の大小関係(A<B<C)を満たす触媒層を備えるパティキュレートフィルタを製造する方法が提供され得る。
その製造方法は、排ガス流入側の端部のみが開口した入側セルと、該入側セルに隣接し排ガス流出側の端部のみが開口した出側セルと、前記入側セルと前記出側セルとを仕切る多孔質の隔壁とを有するウォールフロー構造の基材を用意(購入、製造等)すること;
前記基材の排ガス流入側の端部となる部分に触媒層形成用スラリーを塗工し、他方の端部(すなわち基材の排ガス流出側の端部となる部分)から吸引すること、および、前記基材の排ガス流出側の端部となる部分に触媒層形成用スラリーを塗工し、他方の端部(すなわち基材の排ガス流入側の端部となる部分)から吸引すること;および、
前記スラリーを吸引した前記基材を乾燥・焼成すること;
を包含する。
ここで、上記触媒層形成用スラリーは、せん断速度:4s
−1のときの粘度が500mPa・s〜8000mPa・sとなるように設定されている。かかる方法により製造されたフィルタは、排ガス浄化装置のパティキュレートフィルタとして好適に使用され得る。
【0051】
このパティキュレートフィルタ100は、
図3に示すように、基材10の入側セル12から排ガスが流入する。入側セル12から流入した排ガスは、多孔質の隔壁16を通過して出側セル14に到達する。
図3においては、入側セル12から流入した排ガスが隔壁16を通過して出側セル14に到達するルートを矢印で示している。このとき、隔壁16は多孔質構造を有しているので、排ガスがこの隔壁16を通過する間に、粒子状物質(PM)が隔壁16の表面や隔壁16の内部の細孔内に捕集される。また、
図4に示すように、隔壁16の細孔内には、触媒層20が設けられているので、排ガスが隔壁16の細孔内を通過する間に、排ガス中の有害成分が浄化される。その際、排ガス流量の多い大細孔に優先的に保持された触媒層20において排ガスが効率よく浄化される。隔壁16を通過して出側セル14に到達した排ガスは、排ガス流出側の開口からフィルタ100の外部へと排出される。
【0052】
以下、本発明に関する試験例を説明するが、本発明を以下の試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0053】
<実施例1>
担体としてのアルミナを用意し、貴金属触媒溶液として硝酸Rh溶液に含浸させた後、蒸発乾固してRhを担持したRh/アルミナ担体粉末を調製した。また、担体としてのセリア−ジルコニア複合酸化物を用意し、貴金属触媒溶液として硝酸Pt溶液に含浸させた後、蒸発乾固してPtを担持したPt/セリア−ジルコニア複合酸化物担体粉末を調製した。このRh/アルミナ担体粉末35質量部と、Pt/セリア−ジルコニア複合酸化物担体粉末30質量部と増粘剤としてのCMC1質量部とイオン交換水100質量部とを混合して触媒層形成用スラリーを調製した。かかるスラリーのせん断速度:4s
−1のときの粘度は2500mPa・s、スラリー中の粒子の平均粒子径は0.7μmであった。次いで、このスラリーをコージェライト基材10(
図2および
図3に示すウォールフロー型基材:直径103mm、全長100mm、平均細孔径17μm)の排ガス流入側の端部となる部分に塗工し、他方の端部(すなわち基材10の排ガス流出側の端部となる部分)から吸引することにより、隔壁16の細孔内にスラリーを流入させた。その際、入側セル12に接する隔壁16の表面から出側セル14側に向かって隔壁16の厚さの70%までに当たる部分(当該部分における細孔内)にスラリーがコートされるよう吸引条件を設定した。また、同様に、上記スラリーを基材10の排ガス流出側の端部となる部分に塗工し、他方の端部(すなわち基材10の排ガス流入側の端部となる部分)から吸引することにより、隔壁16の細孔内にスラリーを流入させた。その際、出側セル14に接する隔壁16の表面から入側セル12側に向かって隔壁16の厚さの70%までに当たる部分(当該部分における細孔内)にスラリーがコートされるよう吸引条件を設定した。次いで乾燥・焼成することにより、隔壁16の細孔内に触媒層20を形成した。吸引速度は60m/s、吸引時間は10秒とした。また、基材の体積1L当たりの触媒層のコート量は100g/Lとした。以上のようにして、触媒層20を備えたパティキュレートフィルタを得た。
【0054】
<実施例2>
本例では、基材の体積1L当たりの触媒層のコート量を65g/Lとしたこと以外は、実施例1と同じ手順でパティキュレートフィルタを作製した。
【0055】
<比較例1>
本例では、増粘剤およびイオン交換水の使用量を変えることにより触媒層形成用スラリーのせん断速度:4s
−1のときの粘度を10mPa・sに変更した。また、当該スラリー中にコージェライト基材を浸漬し、隔壁内にスラリーを流入させ、乾燥・焼成することにより隔壁16全域の内部細孔に触媒層20を形成した。それ以外は実施例1と同じ手順でパティキュレートフィルタを作製した。
【0056】
<比較例2>
本例では、基材の体積1L当たりの触媒層のコート量を65g/Lとしたこと以外は、比較例1と同じ手順でパティキュレートフィルタを作製した。
【0057】
<平均充填率>
各例のパティキュレートフィルタの隔壁の断面SEM像を撮像し、隔壁の触媒層が保持された内部細孔の細孔径および該細孔に保持された触媒層の充填率を測定した。そして、各細孔径範囲ごとの触媒層の充填率を算術平均することにより、細孔径5μm以上10μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Aと、細孔径10μm以上20μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Bと、細孔径20μm以上30μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Cと、細孔径30μm以上の細孔に保持された触媒層の平均充填率Dとを導出した。実施例1、2では、入側セル12に接する隔壁16の表面から出側セル14側に向かって隔壁16の厚さの50%までに当たる部分において、触媒層が保持された細孔の細孔径および触媒層の平均充填率を算出した。結果を表1に示す。また、実施例1の隔壁の断面SEM像を
図5、比較例1の隔壁の断面SEM像を
図6に示す。
【0058】
【表1】
表1および
図5に示されるように、実施例1、2のパティキュレートフィルタでは、細孔径5μm以上10μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Aと、細孔径10μm以上20μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Bと、細孔径20μm以上30μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Cとの関係がA<B<Cとなり、隔壁の内部細孔のうち細孔径の大きい細孔に触媒層が優先的に形成されていることが確認された。一方、表1および
図6に示されるように、比較例1、2のパティキュレートフィルタでは、細孔径5μm以上10μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Aと、細孔径10μm以上20μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Bと、細孔径20μm以上30μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Cとの関係がA>B>Cとなり、隔壁の内部細孔の細孔径にかかわらず触媒層が均等に分布されていることが確認された。
【0059】
<50%浄化温度>
上記各例のパティキュレートフィルタについて、150℃からの昇温時(昇温速度50℃/分)におけるHCガスの浄化率を連続的に測定し、50%浄化温度を測定した。ここで50%浄化温度とは、HCガスの浄化率が50%に達したときの触媒入口のガス温度である。結果を表2および
図7に示す。
図7は、各例について、触媒層のコート量と50%浄化温度との関係を示すグラフである。
【0061】
表1、表2および
図7に示されるように、細孔径5μm以上10μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Aと、細孔径10μm以上20μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Bと、細孔径20μm以上30μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Cとの関係をA>B>Cとした比較例1、2のパティキュレートフィルタは、HC浄化温度がいずれも340℃を超えていた。これに対し、細孔径5μm以上10μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Aと、細孔径10μm以上20μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Bと、細孔径20μm以上30μm未満の細孔に保持された触媒層の平均充填率Cとの関係をA<B<Cとした実施例1、2のパティキュレートフィルタは、HC浄化温度がいずれも300℃を下まわり、HC浄化性能に優れるものとなった。また、触媒層のコート量を減らした比較例2は、比較例1に比べて50%浄化温度が増大していたのに対し、同じく触媒層のコート量を減らした実施例2は、実施例1に比べて50%浄化温度が低下傾向であった。比較例では、触媒層のコート量を減らすことで、排ガスが流れにくい小細孔内に触媒層が優先的に収まるため、浄化性能が悪化したものと考えられる。一方、実施例では、排ガスの流れやすい位置に触媒層が配置されているので、コート量の変化(増減)による性能影響が少ないものと考えられる。換言すれば、本態様の構成は、フィルタ全体での触媒層のコート量を減らしつつ(ひいては圧損の低減や低コスト化を図りつつ)、排ガスの浄化性能を効果的に向上し得る点で、技術的価値が高いといえる。
【0062】
以上、パティキュレートフィルタ100ならびに該パティキュレートフィルタ100を備えた排ガス浄化装置1について種々の改変例を例示したが、パティキュレートフィルタ100ならびに排ガス浄化装置1の構造は、上述した何れの実施形態にも限定されない。
【0063】
例えば、排ガス浄化装置1の各部材、部位の形状や構造は変更してもよい。
図1に示した例では、フィルタ部の上流側に触媒部を設けているが、触媒部は省略しても構わない。この排ガス浄化装置1は、例えば、ガソリンエンジンなど、排気温度が比較的高い排ガス中の有害成分を浄化する装置として特に好適である。ただし、本発明に係る排ガス浄化装置1は、ガソリンエンジンの排ガス中の有害成分を浄化する用途に限らず、他のエンジン(例えばディーゼルエンジン)から排出された排ガス中の有害成分を浄化する種々の用途にて用いることができる。