【実施例】
【0026】
以下に、実施例及び比較例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されない。
後述する実施例1〜8は参考例である。
各例における、エチレン・1−ブテン共重合体における1−ブテン単位の含有割合、ポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分の極限粘度、ポリプロピレン系樹脂の最高融点、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRは以下のように測定した。
1)エチレン・1−ブテン共重合体の1−ブテン単位の含有割合:
エチレン・1−ブテン共重合体の1−ブテン単位の含有割合は、1,2,4−トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、日本電子株式会社製JNM LA−400(
13C共鳴周波数100MHz)を用い、
13C−NMR法で測定した。
2)ポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分の極限粘度:
ポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分は、以下の方法によって得た。
サンプル2.5gを、o−キシレン(溶媒)を250ml入れたフラスコに入れ、ホットプレートおよび還流装置を用いて、135℃で、窒素パージを行いながら、30分間撹拌し、ポリプロピレン系樹脂を完全溶解させた後、25℃で1時間、冷却した。これにより得られた溶液を、濾紙を用いて濾過した。濾過後の濾液を100ml採取し、アルミニウムカップ等に移し、窒素パージを行いながら、140℃で蒸発乾固を行い、室温で30分間静置して、キシレン可溶分を得た。
得られたキシレン可溶分を試料として用い、テトラヒドロナフタレン中、135℃において毛細管自動粘度測定装置(SS−780−H1、株式会社柴山科学器械製作所製)を用いて、極限粘度を測定した。
3)最高融点
ポリプロピレン系樹脂の最高融点は、以下のようにして求めた。ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットをプレス成形して厚み0.3mmのシートを得た後、そのシートから、5〜7mgの重量の試料片を切り出した。その試料片を、株式会社パーキンエルマー製ダイヤモンドDSCの所定の測定位置に取り付けた。次いで、試料片を、窒素雰囲気下、10℃/分で昇温し、230℃にて5分保持し、その後、10℃/分で30℃まで降温した。30℃で5分間保持した後、引き続き、10℃/分で昇温してセカンドスキャンを行い、最高温側の融点を測定した。
4)MFR:
ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRは、JIS K7210に準拠して、温度230℃、荷重:21.18Nの条件で測定した。
【0027】
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂100質量部と、芳香族リン酸エステル系有機造核剤を含む造核剤(株式会社ADEKA製アデカスタブNA−18)0.2質量部、酸化防止剤(BASF社製B225、イルガノックス1010とイルガフォス168の1:1混合物)0.2質量部、中和剤(淡南化学工業株式会社製カルシウムステアレート)0.05質量部とを、ヘンシェルミキサーで1分間攪拌、混合して混合物を得た。本例では、ポリプロピレン系樹脂として、1段目で、プロピレン単独重合体を形成し、2段目で、プロピレン単独重合体存在下、エチレン・1−ブテン共重合体を形成させた混合樹脂であって、プロピレン単独重合体:79質量%、エチレン・1−ブテン共重合体:21質量%、キシレン可溶分の極限粘度:1.1dl/g、エチレン・1−ブテン共重合体における1−ブテン単位含有割合:19質量%、最高融点:161℃のものを用いた。その際、水素供給量、重合温度、重合圧力、触媒の添加量、1段目と2段目の滞留時間、2段目のエチレン供給量と1−ブテン供給量を調整することによって、該プロピレン系樹脂材料を得た。
次いで、前記混合物を、スクリュー温度を180℃、スクリュー回転数300rpmに設定した同方向二軸押出機(神戸製鋼株式会社製KTX−30)を用いて溶融混練し、ペレット化して、MFRが22g/10分のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0028】
(実施例2)
ポリプロピレン系樹脂及び造核剤に加えて他のゴム(三井化学株式会社製タフマーA4050S)を、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して5質量部混合すると共に、ポリプロピレン系樹脂を、エチレン・1−ブテン共重合体含有割合が24質量%、且つ、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRが16g/10分になるものとした以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0029】
(実施例3)
ポリプロピレン系樹脂及び造核剤に加えて充填剤としてタルクを、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.3質量部混合した以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0030】
(実施例4)
ポリプロピレン系樹脂を、キシレン可溶分の極限粘度が0.9dl/g、且つ、エチレン・1−ブテン共重合体における1−ブテン単位含有割合が25質量%のものに変更した以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0031】
(実施例5)
ポリプロピレン系樹脂を、エチレン・1−ブテン共重合体含有割合が10質量%、且つ、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRが23g/10分になるものに変更した以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0032】
(実施例6)
ポリプロピレン系樹脂を、エチレン・1−ブテン共重合体含有割合が13質量%、且つ、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRが23g/10分になるものに変更した以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0033】
(実施例7)
ポリプロピレン系樹脂を、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRが29g/10分になるものに変更した以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0034】
(比較例1)
ポリプロピレン系樹脂100質量部と、芳香族リン酸エステル系有機造核剤を含む造核剤(株式会社ADEKA製アデカスタブNA−11)0.07質量部、酸化防止剤(BASF社製B225)0.2質量部、中和剤(淡南化学工業株式会社製カルシウムステアレート)0.05質量部と、タルク1.0質量部とを、ヘンシェルミキサーで1分間攪拌、混合して混合物を得た。本例では、ポリプロピレン系樹脂として、1段目で、プロピレン単独重合体を形成し、2段目で、プロピレン単独重合体存在下、エチレン・プロピレン共重合体を形成させた混合樹脂であって、プロピレン単独重合体:87質量%、エチレン・プロピレン共重合体:13質量%、キシレン可溶分の極限粘度:2.8dl/g、エチレン・プロピレン共重合体におけるプロピレン単位含有割合:65質量%、最高融点:161℃のものを用いた。その際、水素供給量、重合温度、重合圧力、触媒の添加量、1段目と2段目の滞留時間、2段目のエチレン供給量とプロピレン供給量を調整することによって、該プロピレン系樹脂材料を得た。
次いで、前記混合物を、スクリュー温度を180℃、スクリュー回転数300rpmに設定した同方向二軸押出機(神戸製鋼株式会社製KTX−30)を用いて溶融混練し、ペレット化して、MFRが20g/分のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0035】
(比較例2)
ポリプロピレン系樹脂100質量部と、芳香族リン酸エステル系有機造核剤を含む造核剤(株式会社ADEKA製アデカスタブNA−11)0.2質量部、酸化防止剤(BASF社製B225)0.2質量部、中和剤(淡南化学工業株式会社製カルシウムステアレート)0.05質量部とを、ヘンシェルミキサーで1分間攪拌、混合して混合物を得た。本例では、ポリプロピレン系樹脂として、1段目で、プロピレン単独重合体を形成し、2段目で、プロピレン単独重合体存在下、エチレン・1−ブテン共重合体を形成させた混合樹脂であって、プロピレン単独重合体:82質量%、エチレン・1−ブテン共重合体:18質量%、キシレン可溶分の極限粘度:1.3dl/g、エチレン・1−ブテン共重合体における1−ブテン単位含有割合:25質量%、最高融点:161℃のものを用いた。その際、水素供給量、重合温度、重合圧力、触媒の添加量、1段目と2段目の滞留時間、2段目のエチレン供給量と1−ブテン供給量を調整することによって、該プロピレン系樹脂材料を得た。
次いで、前記混合物を、スクリュー温度を180℃、スクリュー回転数300rpmに設定した同方向二軸押出機(神戸製鋼株式会社製KTX−30)を用いて溶融混練し、ペレット化して、MFRが5g/10分のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0036】
(比較例3)
キシレン可溶分の極限粘度を0.7dl/gに変更した以外は実施例1と同様のポリプロピレン系樹脂を多段重合により得ようとしたが、重合が困難であり、得られなかった。
【0037】
(比較例4)
エチレン・1−ブテン共重合体における1−ブテン単位含有割合を28質量%に変更した以外は実施例1と同様のポリプロピレン系樹脂を多段重合により得ようとしたが、重合が困難であり、得られなかった。
【0038】
(比較例5)
ポリプロピレン系樹脂を、キシレン可溶分の極限粘度が1.0dl/g、エチレン・1−ブテン共重合体における1−ブテン単位含有割合が12質量%、且つ、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRが20g/10分になるものに変更した以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0039】
(比較例6)
ポリプロピレン系樹脂を、エチレン・1−ブテン共重合体含有割合が8質量%、キシレン可溶分の極限粘度が1.0dl/gのものに変更した以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0040】
(比較例7)
ポリプロピレン系樹脂を、エチレン・1−ブテン共重合体含有割合が27質量%、キシレン可溶分の極限粘度が1.0dl/g、且つ、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRが21g/10分になるものに変更した以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0041】
(比較例8)
ポリプロピレン系樹脂を、エチレン・1−ブテン共重合体含有割合が18質量%、エチレン・1−ブテン共重合体における1−ブテン単位含有割合が22質量%、且つ、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRが4g/10分になるものに変更した以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0042】
(比較例9)
ポリプロピレン系樹脂を、キシレン可溶分の極限粘度が1.0dl/g、且つ、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRが35g/10分になるものに変更した以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0043】
(比較例10)
ポリプロピレン系樹脂を、エチレン・1−ブテン共重合体含有割合が22質量%、キシレン可溶分の極限粘度が1.0dl/g、且つ、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRが2g/10分になるものに変更した以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0044】
(比較例11)
造核剤を含有しなかった以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0045】
(比較例12)
ポリプロピレン系樹脂及び造核剤に加えてタルクを、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して1.0質量部混合し、且つ、ポリプロピレン系樹脂を、キシレン可溶分の極限粘度が1.0dl/gのものに変更した以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0046】
(比較例13)
ポリプロピレン系樹脂を、1段目でエチレンを供給することによりプロピレン・エチレン共重合体を形成させて最高融点が154℃のものに変更した以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0047】
(比較例14)
実施例1におけるポリプロピレン系樹脂の製造において、2段目の重合をせずに、1段目の重合のみで、プロピレン単独重合体を形成した。このプロピレン単独重合体と、プロピレンとエチレン・1−ブテン共重合体(三井化学株式会社製タフマーA4050S)と、実施例1と同様の造核剤、酸化防止剤、中和剤とをブレンドした。得られたブレンド物を、スクリュー温度を180℃、スクリュー回転数300rpmに設定した同方向二軸押出機(神戸製鋼株式会社製KTX−30)を用いて溶融混練し、ペレット化して、MFRが30g/10分のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0048】
<評価>
各例のポリプロピレン系樹脂組成物又は樹脂について、下記方法に光沢度、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強度、面衝撃強度、成形流動性を測定した。測定結果を表1,2,3に示す。
【0049】
[光沢度]
ポリプロピレン系樹脂組成物又はポリプロピレン系樹脂を、射出成形機(ファナック株式会社製FANUC ROBOSHOT α−100C 射出成形機)を、シリンダー温度230℃、金型温度40℃、射出速度35mm/秒、冷却時間25秒の条件で成形し、幅130mm、厚み2mm、長さ130mmの測定用試験片を得た。その測定用試験片を用い、JIS Z8741に準拠し、株式会社村上色彩研究所製光沢計で60°光沢度を測定した。
【0050】
[曲げ弾性率]
ポリプロピレン系樹脂組成物又はポリプロピレン系樹脂を、射出成形機(ファナック株式会社製FANUC ROBOSHOT S2000i 射出成形機)を用い、シリンダー温度200℃、金型温度40℃、平均射出速度200mm/秒、冷却時間20秒の条件で成形し、幅10.0mm、厚み4.0mm、長さ80mmの測定用試験片を得た。
その測定用試験片を用い、JIS K7171に準拠し、島津製作所製全自動試験機(AG−X10KN)を用い、温度23℃、相対湿度50%、スパン間64mm、曲げ速度2.0mm/分の条件で曲げ弾性率を測定した。曲げ弾性率の値が高い程、剛性に優れる。
【0051】
[シャルピー衝撃強度]
ポリプロピレン系樹脂組成物又はポリプロピレン系樹脂を、射出成形機(ファナック株式会社製FANUC ROBOSHOT S2000i 射出成形機)を用い、シリンダー温度200℃、金型温度40℃、平均出速度200mm/秒、冷却時間20秒の条件で成形し、幅10.0mm、厚み4.0mm、長さ80mmの測定用試験片を得た。
その測定用試験片を用い、JIS K7111−1に準拠し、株式会社東洋精機製作所製デジタル衝撃試験機(DG−UB2)を用い、温度23℃、−20℃の各温度条件でシャルピー衝撃強度を測定した。シャルピー衝撃強度の値が高い程、耐衝撃性に優れる。
【0052】
[面衝撃強度]
ポリプロピレン系樹脂組成物又はポリプロピレン系樹脂を、射出成形機(ファナック株式会社製FANUC ROBOSHOT α−100C 射出成形機)を、シリンダー温度230℃、金型温度40℃、射出速度35mm/秒、冷却時間25秒の条件で成形し、幅130mm、厚み2mm、長さ130mmの測定用試験片を得た。
株式会社東洋精機製作所製デュポン式落下衝撃試験機を用い、温度−10℃の温度条件で、1kg、2kg及び3kgの錘を用い、高さを10cm単位で調整し(最大100cm)、2mm厚の測定用試験片が割れる位置を測定し、荷重(kg)×高さ(cm)で表示した。うち抜き型の半径は6.35mmで、受け治具は外形48mm、内径46mmの筒状ものを用いた。面衝撃強度の値が高い程、耐衝撃性に優れる。
【0053】
[成形流動性]
スパイラルフロー測定試験:
スパイラル流動長は、アルキメデススパイラルが形成されたスパイラルフロー金型(流路断面:上辺8mm、下辺10mm×高さ2mmの台形)を取り付けた射出成形機(α−100C(ファナック株式会社製))を用いて測定した。下記成形条件での測定値である。
シリンダー温度:230℃
金型温度:40℃
射出圧力:750kgf/cm
2
射出速度:10mm/秒
保圧:750kgf/cm
2(3秒保持)
冷却時間:8秒
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
実施例1〜7のポリプロピレン系樹脂組成物を成形した成形品は、十分な成形流動性を有し、剛性及び耐衝撃性が高く、しかも高光沢であった。
エチレン・1−ブテン共重合体の代わりにプロピレン単位量が多いエチレン・プロピレン共重合体を含み、タルクを1.0質量部含有する比較例1のポリプロピレン系樹脂組成物を成形した成形品は、光沢が低かった。
MFRが5g/10分の比較例2のポリプロピレン系樹脂組成物は、成形流動性が低かった。また、ポリプロピレン系樹脂の極限粘度が1.3dl/gである比較例2のポリプロピレン系樹脂組成物を成形した成形品は、光沢が低かった。
比較例3では、極限粘度が0.7dl/gのポリプロピレン系樹脂を多段重合により得ようとしたが、重合が困難なため、得られなかった。
比較例4では、エチレン・1−ブテン共重合体における1−ブテン単位含有割合が28質量%のポリプロピレン系樹脂を多段重合により得ようとしたが、重合が困難であり、得られなかった。
エチレン・1−ブテン共重合体における1−ブテン単位含有割合が12質量%のポリプロピレン系樹脂を含む比較例5のポリプロピレン系樹脂組成物を成形した成形品は、耐衝撃性が低かった。
エチレン・1−ブテン共重合体含有割合が8質量%のポリプロピレン系樹脂を含む比較例6のポリプロピレン系樹脂組成物を成形した成形品は、耐衝撃性が低かった。
エチレン・1−ブテン共重合体含有割合が27質量%のポリプロピレン系樹脂を含む比較例7のポリプロピレン系樹脂組成物を成形した成形品は、剛性が低かった。
MFRが4g/10分の比較例8のポリプロピレン系樹脂組成物は、成形流動性が低かった。
MFRが35g/10分の比較例9のポリプロピレン系樹脂組成物を成形した成形品は、耐衝撃性が低かった。
MFRが2g/10分の比較例10のポリプロピレン系樹脂組成物は、成形流動性が低かった。また、MFRが2g/10分の比較例10のポリプロピレン系樹脂組成物を成形した成形品は、光沢及び剛性が低かった。
造核剤を含まない比較例11のポリプロピレン系樹脂組成物を成形した成形品は、剛性が低かった。
タルクを1.0質量部含有する比較例12のポリプロピレン系樹脂組成物を成形した成形品は、光沢が低かった。
最高融点が154℃のポリプロピレン系樹脂を含む比較例13のポリプロピレン系樹脂組成物を成形した成形品は、剛性が低かった。
プロピレン重合体とエチレン・1−ブテン共重合体とが溶融混練により混合された混合樹脂を含む比較例14のポリプロピレン系樹脂組成物を成形した成形品は、剛性と面衝撃強度とのバランスが必ずしも良好ではなかった。
【0058】
(実施例8)
ポリプロピレン系樹脂として、エチレン・1−ブテン共重合体含有割合が10質量%、エチレン・1−ブテン共重合体における1−ブテン単位含有割合が21質量%、キシレン可溶分の極限粘度が1.0dl/gのものに変更した以外は実施例1と同様のポリプロピレン系樹脂を用いた。
前記ポリプロピレン系樹脂100質量部、芳香族リン酸エステル系有機造核剤を含む造核剤(株式会社ADEKA製アデカスタブNA−18)0.1質量部、帯電防止剤(グリセリンモノステアレート)0.2質量部、酸化防止剤(BASF社製B225、イルガノックス1010とイルガフォス168の1:1混合物)0.1質量部を中和剤(淡南化学工業株式会社製カルシウムステアレート)0.05質量部とを、ヘンシェルミキサーで1分間攪拌、混合して混合物を得た。
次いで、前記混合物を、スクリュー温度を180℃、スクリュー回転数300rpmに設定した同方向二軸押出機(神戸製鋼株式会社製KTX−30)を用いて溶融混練し、ペレット化して、MFRが23g/10分のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0059】
(実施例9)
造核剤として、芳香族リン酸エステル系有機造核剤を含む造核剤(株式会社ADEKA製アデカスタブNA−18)0.2質量部と、トリアミノベンゼン誘導体系造核剤(BASF社製イルガクリアXT386)0.01質量部とを用いた以外は実施例8と同様にして、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0060】
(実施例10)
造核剤として、芳香族リン酸エステル系有機造核剤を含む造核剤(株式会社ADEKA製アデカスタブNA−18)0.1質量部と、トリアミノベンゼン誘導体系造核剤(BASF社製イルガクリアXT386)0.01質量部とを用いた以外は実施例8と同様にして、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0061】
(実施例11)
造核剤として、芳香族リン酸エステル系有機造核剤を含む造核剤(株式会社ADEKA製アデカスタブNA−18)0.2質量部と、トリアミノベンゼン誘導体系造核剤(BASF社製イルガクリアXT386)0.02質量部とを用いた以外は実施例8と同様にして、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0062】
(実施例12)
ポリプロピレン系樹脂におけるエチレン・1−ブテン共重合体含有割合を14質量%とし、造核剤として、芳香族リン酸エステル系有機造核剤を含む造核剤(株式会社ADEKA製アデカスタブNA−18)0.2質量部と、トリアミノベンゼン誘導体系造核剤(BASF社製イルガクリアXT386)0.02質量部とを用いた以外は実施例8と同様にして、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0063】
(実施例13)
ポリプロピレン系樹脂におけるエチレン・1−ブテン共重合体含有割合を14質量%とし、造核剤として、芳香族リン酸エステル系有機造核剤を含む造核剤(株式会社ADEKA製アデカスタブNA−18)0.07質量部と、トリアミノベンゼン誘導体系造核剤(BASF社製イルガクリアXT386)0.02質量部とを用いた以外は実施例8と同様にして、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0064】
(実施例14)
ポリプロピレン系樹脂におけるエチレン・1−ブテン共重合体含有割合を22質量%とし、造核剤として、芳香族リン酸エステル系有機造核剤を含む造核剤(株式会社ADEKA製アデカスタブNA−18)0.2質量部と、トリアミノベンゼン誘導体系造核剤(BASF社製イルガクリアXT386)0.02質量部とを用いた以外は実施例8と同様にして、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0065】
(比較例15)
造核剤を添加しなかった以外は実施例8と同様にして、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0066】
<評価>
上記の実施例及び比較例と同様に、光沢、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強度、面衝撃強度、スパイラルフローを測定し、また、成形品の反りを下記の方法により測定した。各測定結果を表4に示す。
【0067】
[成形品の反り測定]
ポリプロピレン系樹脂組成物を、射出成形機(ファナック株式会社製FANUC ROBOSHOT α−100C 射出成形機)を、シリンダー温度230℃、金型温度40℃、射出速度35mm/秒、冷却時間20秒の条件で成形し、直径200mm円盤、厚み2mmの測定用試験片を得た。円盤中央のゲートをカット後、穴加工し、ボルトで台座に固定した。円盤の縁で最も高いところと最も低いところの高さを定規で測定し、その差を反り量とした。その値が大きい程、反りが大きいことを意味する。
【0068】
【表4】
【0069】
実施例8〜14及び比較例15の対比より、芳香族リン酸エステル系有機造核剤を含む造核剤とトリアミノベンゼン誘導体系造核剤とを併用すると、曲げ弾性率(剛性)が高くなることが分かった。
しかし、トリアミノベンゼン誘導体系造核剤を0.02質量部にすると、成形品の反りが大きくなり、好ましくないことがわかった。
【0070】
(実施例15)
ポリプロピレン系樹脂として、エチレン・1−ブテン共重合体含有割合が10質量%、エチレン・1−ブテン共重合体における1−ブテン単位含有割合が21質量%、キシレン可溶分の極限粘度が1.0dl/gのものに変更した以外は実施例1と同様のポリプロピレン系樹脂を用いた。
前記ポリプロピレン系樹脂100質量部、トリアミノベンゼン誘導体系造核剤(BASF社製イルガクリアXT386)0.02質量部、芳香族リン酸エステル系有機造核剤を含む造核剤(株式会社ADEKA製アデカスタブNA−18)0.2質量部、フェノールリン系酸化防止剤(住友化学株式会社製スミライザーGP)0.06質量部と、帯電防止剤(グリセリンモノステアレート)0.3質量部、酸化防止剤(BASF社製B225、イルガノックス1010とイルガフォス168の1:1混合物)0.08質量部を中和剤(淡南化学工業株式会社製カルシウムステアレート)0.05質量部とを、ヘンシェルミキサーで1分間攪拌、混合して混合物を得た。
次いで、前記混合物を、スクリュー温度を180℃、スクリュー回転数300rpmに設定した同方向二軸押出機(神戸製鋼株式会社製KTX−30)を用いて溶融混練し、ペレット化して、MFRが20g/10分のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0071】
(実施例16)
フェノールリン系酸化防止剤を含有させず、帯電防止剤の含有割合を0.15質量部に変更した以外は実施例15同様にして、MFRが23g/10分のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0072】
<評価>
上記の実施例及び比較例と同様に、光沢、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強度、面衝撃強度、スパイラルフローを測定し、また、成形品のウェルド部の曇りを下記の方法により測定した。各測定結果を表5に示す。
【0073】
[ウェルド部の曇り]
ポリプロピレン系樹脂組成物を、射出成形機(ファナック株式会社製FANUC ROBOSHOT α−100C 射出成形機)を、シリンダー温度190℃又は240℃、金型温度40℃、射出速度35mm/秒、冷却時間25秒の条件で成形し、射出成形平板100mm×200mm×3mm両側ピンゲート(直径30mm穴つき)の測定用試験片を得た。その測定用試験片のウェルド部と非ウェルド部について、日本電色工業株式会社製の樹脂成型品評価測定器FW098を用いて測定した。光源を100%とし、照射角度0度で光学ファイバーを通し、直径4mm照射筒を測定部に当て、反射率(%)を測定した。そして、非ウェルド部の光沢とウェルド部の光沢との差を、ウェルド部の曇りとした。その値が大きい程、ウェルド部の光沢が低く、曇っていることを意味する。
【0074】
【表5】
【0075】
実施例15と実施例16との対比より、フェノールリン系酸化防止剤を含有する実施例15のポリプロピレン系樹脂組成物は、ウェルド部の曇りを抑えることがわかった。
なお、実施例15と実施例16とでは帯電防止剤の量が異なっているが、帯電防止剤の含有割合を前記好ましい範囲内で変更しても、ウェルド部の曇りには影響しないことを別の実験にて確認した。