特許第6594173号(P6594173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日野自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6594173-吸気ダクト 図000002
  • 特許6594173-吸気ダクト 図000003
  • 特許6594173-吸気ダクト 図000004
  • 特許6594173-吸気ダクト 図000005
  • 特許6594173-吸気ダクト 図000006
  • 特許6594173-吸気ダクト 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594173
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】吸気ダクト
(51)【国際特許分類】
   B60K 13/02 20060101AFI20191010BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20191010BHJP
   F02M 35/16 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   B60K13/02 C
   F02M35/10 101E
   F02M35/10 301D
   F02M35/10 301V
   F02M35/16 E
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-226520(P2015-226520)
(22)【出願日】2015年11月19日
(65)【公開番号】特開2017-94794(P2017-94794A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 智之
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 琢也
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕太
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−193166(JP,U)
【文献】 実開平02−115025(JP,U)
【文献】 特開平11−105553(JP,A)
【文献】 特開平08−170567(JP,A)
【文献】 特許第5325764(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0150384(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102011101765(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 13/02
F02M 35/10
F02M 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬車両のキャブ後面に据え付けられて上下方向に延在し且つその上側で開口した空気取入口から外気をエンジン用吸気として取り入れる吸気ダクトであって、前記空気取入口を上側に開口して外殻構造を成すダクト本体と、該ダクト本体の下部に形成されて上端をダクト本体内で開口し且つ下端を外部に開放したサイドブランチ部と、前記空気取入口に張り渡されて雨水を捕集するメッシュと、該メッシュごと前記空気取入口を被覆して外気以外の侵入を阻むルーバーと、前記ダクト本体内における前記メッシュ直下に位置し、該メッシュから下方へ延びる面をなす内壁に設けられ且つ該内壁を流下する雨水を捕らえて前記サイドブランチ部の上端に導くドリップチャンネルとを備えたことを特徴とする吸気ダクト。
【請求項2】
ダクト本体内におけるメッシュ直下の内壁に、外側へ溝形に凹み且つサイドブランチ部の上端に向け下り勾配を成すビードをドリップチャンネルとして形成したことを特徴とする請求項1に記載の吸気ダクト。
【請求項3】
ビードが少なくとも上下に二段以上で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の吸気ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、トラック等の大型の運搬車両は、普通乗用車と比べて未舗装の悪路を走行する機会が多い為、エンジンの吸気としては、塵埃が多く含まれている地面付近の空気ではなく、地面から十分高い部分の清浄な空気を取り入れることが好ましく、また、地面付近では雨水や積雪の跳ね上げを一緒に取り込んでしまう虞れもあるため、地面から十分高い部分で空気だけを確実に取り入れることが好ましい。
【0003】
この為、大型の運搬車両においては、図5に一例を示すように、キャブaの後面に上下方向に長く延在する吸気ダクトbを据え付けるようにしており、この種の吸気ダクトbは、外気をエンジン用吸気として取り入れる空気取入口cを上側に開口して外殻構造を成すダクト本体dと、前記空気取入口cを被覆して外気以外の侵入を阻むルーバーeとを備えて構成されている。
【0004】
ここで、前記吸気ダクトbにおいては、空気取入口cが車両後方へ向けて大きく開口しており、更には、車幅方向外側の右側面まで回り込んで開口するようにもなっているが、これは荷台の幌が吸気ダクトbの後面に被さっても前記空気取入口cが完全に閉塞されてしまわないよう補助的に右側面まで拡張されているだけである。
【0005】
依って、以下の説明における空気取入口cとは、ダクト本体dの後面に形成された主たる開口範囲のみを指すものとし、右側面まで回り込んだ開口範囲は補助取入口c’として区別するものとする。
【0006】
尚、この種の吸気ダクトに関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等が既に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5325764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した如き従来構造にあっては、図6に模式的に示す如く、車両後方へ向け大きく開口した空気取入口cから取り込まれる外気の主流(図6中における矢印A)が、ダクト本体d内における前記空気取入口cとの対向面に衝突して該対向面に沿い下降するように流れ、この外気の流れに随伴して取り込まれてしまった雨水が慣性により外気の流れから離脱して前記対向面に付着し、ここからダクト本体dの内壁に沿い流下していくことになるため、ダクト本体d内における前記空気取入口cとの対向面の直下にドリップチャンネルfを設置しなければならず、このドリップチャンネルfが前記外気の主流と衝突して吸気抵抗の大幅な増加を招いてしまうという問題があった。
【0009】
尚、図6の模式的な図示では、説明の便宜上からドリップチャンネルfを単独で図示しているが、ダクト本体dの内部を複数の流路に区画するよう内蔵される内部仕切り部品や補強用の骨格部材等の一部に一体的に形成して配置するようにしても良いことは勿論である。
【0010】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、空気取入口から取り込まれる外気の主流とドリップチャンネルとの衝突を回避して吸気抵抗の低減化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、運搬車両のキャブ後面に据え付けられて上下方向に延在し且つその上側で開口した空気取入口から外気をエンジン用吸気として取り入れる吸気ダクトであって、前記空気取入口を上側に開口して外殻構造を成すダクト本体と、該ダクト本体の下部に形成されて上端をダクト本体内で開口し且つ下端を外部に開放したサイドブランチ部と、前記空気取入口に張り渡されて雨水を捕集するメッシュと、該メッシュごと前記空気取入口を被覆して外気以外の侵入を阻むルーバーと、前記ダクト本体内における前記メッシュ直下に位置し、該メッシュから下方へ延びる面をなす内壁に設けられ且つ該内壁を流下する雨水を捕らえて前記サイドブランチ部の上端に導くドリップチャンネルとを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
而して、このようにすれば、空気取入口から外気が吸い込まれる際に、ルーバーを擦り抜けて外気の流れに随伴された雨水がメッシュにより捕集され、該メッシュ直下のダクト本体の内壁へと流下してドリップチャンネルにより捕らえられ、該ドリップチャンネルによりサイドブランチ部の上端に導かれて該サイドブランチ部内に流下し、その下端から外部へと排出される。
【0013】
この結果、空気取入口から取り込まれて該空気取入口との対向面に衝突する外気の主流には雨水が含まれなくなり、ダクト本体内における前記空気取入口との対向面の直下にドリップチャンネルを設置しなくて済む一方、前記外気の主流が通らないメッシュ直下の内壁にドリップチャンネルを設けるだけで済むので、空気取入口から取り込まれる外気の主流とドリップチャンネルとの衝突が回避されて吸気抵抗の低減化が図られることになる。
【0014】
また、本発明においては、ダクト本体内におけるメッシュ直下の内壁に、外側へ溝形に凹み且つサイドブランチ部の上端に向け下り勾配を成すビードをドリップチャンネルとして形成することが好ましく、このようにすれば、ダクト本体内におけるメッシュ直下の内壁を伝い雨水が流れ落ちて表面張力によりビードの溝形内に入り込み、該ビードの傾斜によりサイドブランチ部の上端に導かれて該サイドブランチ部内に流れ落ちるので、ドリップチャンネルとしての機能を保ちながらもダクト本体の内側へ張り出しを回避して吸気抵抗の更なる低減化を図ることが可能となり、しかも、ビードの形成をダクト本体の強度向上にも寄与せしめることが可能となる。
【0015】
更に、本発明においては、ビードが少なくとも上下に二段以上で形成されていることが好ましく、このようにすれば、一段目のビードで溝形内に取り込めなかった雨水についても二段目以降のビードにより溝形内に取り込んで一層確実な雨水の回収を図ることが可能となり、しかも、ビードの形成を増やしたことでダクト本体の更なる強度向上を図ることも可能となる。
【発明の効果】
【0016】
上記した本発明の吸気ダクトによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0017】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、ダクト本体内における空気取入口との対向面の直下にドリップチャンネルを設置しなくて済み、前記外気の主流が通らないメッシュ直下の内壁にドリップチャンネルを設けるだけで済むので、空気取入口から取り込まれる外気の主流とドリップチャンネルとの衝突を回避して吸気抵抗の低減化を図ることができ、これによりエンジンの燃費を従来よりも大幅に向上することができる。
【0018】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、ダクト本体内におけるメッシュ直下の内壁にドリップチャンネルを設けるにあたり、ドリップチャンネルとしての機能を保ちながらもダクト本体の内側へ張り出しを回避して吸気抵抗の更なる低減化を図ることができ、しかも、ビードの形成をダクト本体の強度向上にも寄与せしめることができる。
【0019】
(III)本発明の請求項3に記載の発明によれば、一段目のビードで溝形内に取り込めなかった雨水についても二段目以降のビードにより溝形内に取り込んで一層確実な雨水の回収を図ることができると共に、ビードの形成を増やしたことでダクト本体の更なる強度向上を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
図2図1の吸気ダクトの詳細を示す拡大図である。
図3図2の吸気ダクトを車両後方から見た図である。
図4図1の吸気ダクトに取り込まれる外気の流れを示す模式図である。
図5】従来例を示す斜視図である。
図6図5の吸気ダクトに取り込まれる外気の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1図4は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図1図4に示す如く、本形態例における吸気ダクト1は、先に図5で説明した従来の吸気ダクトbの場合と同様に、運搬車両のキャブ2(図1参照)の後面に据え付けられて上下方向に延在し且つその上側で車両後方へ向けて大きく開口した空気取入口3から外気をエンジン用吸気として取り入れるように構成されており、車幅方向外側の右側面に回り込む補助取入口3’も形成されているが、これは荷台の幌が吸気ダクト1の後面に被さっても前記空気取入口3が完全に閉塞されてしまわないよう補助的に右側面まで拡張されているだけのものであり、以下の説明における空気取入口3とは、車両後方へ向けられた主たる開口範囲のみを指すものとする。
【0023】
そして、本形態例においては、前記空気取入口3を上側に開口して外殻構造を成すダクト本体4と、該ダクト本体4の下部に形成されて上端をダクト本体4内で開口し且つ下端を図示しない排水口を介し外部に開放したサイドブランチ部5と、前記空気取入口3に張り渡されて雨水を捕集するメッシュ6と、該メッシュ6ごと前記空気取入口3を被覆して外気以外の侵入を阻むルーバー7と、前記ダクト本体4内における前記メッシュ6直下の内壁に設けられ且つ該内壁を流下する雨水を捕らえて前記サイドブランチ部5の上端に導くドリップチャンネルとを備えたところが特徴となっており、ここに図示している例の場合、ダクト本体4内におけるメッシュ6直下の内壁に、外側へ溝形に凹み且つサイドブランチ部5の上端に向け下り勾配を成すビード8をドリップチャンネルとして上下三段で形成するようにしてある。
【0024】
尚、前記メッシュ6には、金属製又は樹脂製の何れを採用しても良いが、吸気抵抗の増加を極力招かないよう高い空隙率を確保して網目を形成し、しかも、雨水を確実に捕集できるよう過剰に目を粗くしないようにしておくことが重要である。
【0025】
而して、このようにすれば、空気取入口3から外気が吸い込まれる際に、ルーバー7を擦り抜けて外気の流れに随伴された雨水がメッシュ6により捕集され、該メッシュ6直下のダクト本体4の内壁を伝い雨水が流れ落ちて表面張力によりビード8の溝形内に入り込み、該ビード8の傾斜によりサイドブランチ部5の上端に導かれて該サイドブランチ部5内に流れ落ち、その下端から外部へと排出される。
【0026】
この結果、空気取入口3から取り込まれて該空気取入口3との対向面に衝突する外気の主流(図4中における矢印A)には雨水が含まれなくなり、ダクト本体4内における前記空気取入口3との対向面の直下にドリップチャンネルを設置しなくて済む一方、前記外気の主流が通らないメッシュ6直下の内壁にビード8をドリップチャンネルとして設けるだけで済むので、空気取入口3から取り込まれる外気の主流とドリップチャンネルとの衝突が回避されて吸気抵抗の低減化が図られることになる。
【0027】
特に本形態例の場合には、外側へ溝形に凹み且つサイドブランチ部5の上端に向け下り勾配を成すビード8をドリップチャンネルとして形成しているので、ドリップチャンネルとしての機能を保ちながらもダクト本体4の内側へ張り出しを回避して吸気抵抗の更なる低減化を図ることが可能となり、しかも、ビード8の形成をダクト本体4の強度向上にも寄与せしめることが可能となる。
【0028】
しかも、本形態例におけるビード8は上下三段で形成しているので、一段目のビード8で溝形内に取り込めなかった雨水についても二段目以降のビード8により溝形内に取り込んで一層確実な雨水の回収を図ることが可能となり、しかも、ビード8の形成を増やしたことでダクト本体4の更なる強度向上を図ることも可能である。
【0029】
尚、このように外側へ溝形に凹ませて形成したビード8を支障なくドリップチャンネルとして利用できるのは、メッシュ6の新設により雨水を空気取入口3側で捕集してドリップチャンネル(ビード8)の配置を反対にできたからであり、一般的に空気取入口3との対向面側はキャブの後面への据え付け側となるため外側へ張り出させることは難しいが、空気取入口3側ならば、外側へ張り出させることも容易である。
【0030】
以上に述べた通り、上記形態例によれば、ダクト本体4内における空気取入口3との対向面の直下にドリップチャンネルを設置しなくて済み、前記外気の主流が通らないメッシュ6直下の内壁にビード8をドリップチャンネルとして設けるだけで済むので、空気取入口3から取り込まれる外気の主流とドリップチャンネルとの衝突を回避して吸気抵抗の低減化を図ることができ、これによりエンジンの燃費を従来よりも大幅に向上することができる。
【0031】
また、ダクト本体4内におけるメッシュ6直下の内壁にドリップチャンネルを設けるにあたり、ドリップチャンネルとしての機能を保ちながらもダクト本体4の内側へ張り出しを回避して吸気抵抗の更なる低減化を図ることができると共に、ビード8の形成をダクト本体4の強度向上にも寄与せしめることができ、特に本形態例の場合には、一段目のビード8で溝形内に取り込めなかった雨水についても二段目以降のビード8により溝形内に取り込んで一層確実な雨水の回収を図ることができると共に、ビード8の形成を増やしたことでダクト本体4の更なる強度向上を図ることもできる。
【0032】
尚、本発明の吸気ダクトは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、ドリップチャンネルは必ずしもビードで形成されなくても良く、ダクト本体の内部を複数の流路に区画するよう内蔵される内部仕切り部品や補強用の骨格部材等の一部に樋状に形成して配置するようにしても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
1 吸気ダクト
2 キャブ
3 空気取入口
4 ダクト本体
5 サイドブランチ部
6 メッシュ
7 ルーバー
8 ビード(ドリップチャンネル)
図1
図2
図3
図4
図5
図6