(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
食肉加工品を成形する前の食肉材をケーシング内に充填後に、前記食肉材を充填した前記ケーシングを、多角柱あるいは円柱形状の内部空間を備えるリテーナに収容して該リテーナを施錠するリテーナ収容工程と、
施錠された前記リテーナ内にて、前記ケーシングごと前記食肉材を多角柱あるいは円柱形状に成形する成形工程と、
前記食肉材の成形後に、前記リテーナを解錠する解錠工程と、
前記リテーナの中から、前記ケーシングごと成形された前記食肉加工品を取り出す取り出し工程と、を含む前記食肉材の成形処理において前記リテーナの解錠を実行するリテーナ解錠装置であって、
前記リテーナは、それを構成する複数の面の一部若しくは全部を展開可能に構成されており、前記リテーナの移動方向を中心軸とする筒体の周側面をそれぞれ構成して互いに隣接する第一の面と第二の面とを固定するための1または2以上の第一施錠部と、前記移動方向若しくはその反対方向の第三の面と前記筒体の前記周側面を構成して第三の面に隣接する第四の面とを固定するための1または2以上の第二施錠部とを備え、
前記第一施錠部および前記第二施錠部のいずれか一方の施錠部の一部を解錠する方向にスライドさせるスライダと、
前記いずれか一方の施錠部以外の前記第一施錠部または前記第二施錠部の一部を解錠する方向に回動させる回動体と、
を備えるトンネル型のリテーナ解錠装置であって、
前記リテーナを移動する方向に貫通する貫通路を備え、
その貫通路に、前記リテーナを移動する移動手段としてベルトコンベア若しくはローラコンベアを配置して成り、
前記スライダおよび前記回動体は、前記移動手段によって運ばれてきた前記リテーナの前記第一施錠部および前記第二施錠部の両施錠を解錠する手段であり、
前記第一施錠部および前記第二施錠部の少なくともいずれか1つの施錠部の解錠時に前記リテーナを固定するためのリテーナ固定手段を備え、
前記リテーナ固定手段は、前記リテーナを、その移動方向に対して直角方向から加圧し、連続して駆動される前記移動手段の駆動力に抗して前記リテーナを固定する加圧固定部とするリテーナ解錠装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係るリテーナ解錠装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、本発明を限定するものではなく、また、その実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
1.定義
(1)リテーナ
本願において、「リテーナ」とは、食肉加工品の成形前の段階にある食肉材を充填したケーシングを収容する成形器を意味する。リテーナの形態は、多角柱あるいは円柱の形態を含む。ここで、「多角柱」とは、三角以上の多角形の底面と該底面と同様の形状の天面を有する柱を意味する。また、「多角柱」は、その角および縁が弧状あるいは面取りされた形態であっても、これを含むように広義に解釈される。また、多角柱を構成する「天面」、「底面」あるいは「複数の側面」の少なくとも一つの面は、完全な平面に限定されず、湾曲面であっても良い。一方、「円柱」とは、真円形若しくは楕円形の底面と該底面と同様の形状の天面を有する柱を意味する。また、「円柱」は、その側面と底面若しくは天面との隣接部分が面取りされた形態であっても、これを含むように広義に解釈される。また、円柱を構成する「天面」および「底面」の少なくとも一つの面は、完全な平面に限定されず、湾曲面であっても良い。
【0017】
(2)ケーシング
本願において、「ケーシング」とは、食肉加工品の成形前の食肉材を充填するのに供される両端開放の筒体である。本願において好適に用いられるケーシングは、ポリ塩化ビニリデンあるいはポリプロピレンなどの樹脂から成る非通気ケーシングの他、セルロースあるいは不織布から成る通気ケーシングを含む。
【0018】
(3)食肉材及び食肉加工品
本願において、「食肉材」とは、食肉加工品の成形前の段階にある肉を含む材料を意味する。したがって、食肉材は、肉以外の材料、例えば、つなぎに相当する材料あるいはみじん切りされた野菜などを含んでいても良い。また、本願において、「食肉加工品」とは、上記食肉材に対して少なくとも成形を含む加工を施したものを意味し、その代表例であるハム、ソーセージ、ハンバーガーパティ、サラミ、ベーコンなどを含む。
【0019】
(4)施錠及び解錠
本願において、「施錠」とは、リテーナを構成する複数の面の内の一部あるいは全部を展開した状態から組み立てて、隣り合った少なくとも2つの面を容易に展開できない程度に固定することを意味する。また、本願において、「解錠」とは、上記施錠の状態から、隣り合った少なくとも2つの面を展開できる状態の他、複数の施錠段階における一部を除去しただけで未だ展開できる状態には至っていない状態をも含むように広義に解釈される。
【0020】
2.ハムの製造工程の一部の概要
次に、ハムを例に食肉加工品の製造工程の一部について説明するが、以下に説明する製造工程はハム以外の食肉加工品、例えば、ソーセージ、ハンバーガーパティ、サラミ、ベーコンなどにも適用可能である。また、以後、特に言及の無い限り、成形の形状を多角形状(角型とも称する)とする好適な実施形態について説明する。また、これに伴い、好適な実施形態において、リテーナを「角型リテーナ」と、「成形」を「角型成形」と、それぞれ称する。
【0021】
(1)ケーシング充填工程
半固形状の食肉材は、塊状のハムを製造する場合には、通常、骨から肉を外した後、塩積工程を経て、必要に応じて種々の味付けを行った後、ケーシングに充填される。また、当該食肉材は、プレスハムを製造する場合には、通常、塩漬工程を経て、ケーシングの充填前にミンチ状に挽き、ケーシングに充填される。本発明の実施形態は、上記いずれのハムであっても、その角型成形の工程において適用できる。この工程では、セルロースあるいは不織布などから成る通気ケーシングにハム用の食肉材が充填され、そのケーシングの開口部が結紮される。この工程は、好ましくは、充填用の機械を用いて行われる。なお、ケーシングとして通気ケーシングを用いるのは、後述の成形工程においてくん煙処理を行い、ハムにスモークフレーバーやスモーク色を付与する必要があるからであり、ハムにスモークフレーバーやスモーク色を付与する必要がない場合には、非通気ケーシングが用いられる。
【0022】
(2)リテーナ収容工程
続いて、食肉材を充填したケーシングは、多角柱形状の内部空間を備える角型リテーナに収容され、角型リテーナの施錠が行われる。この工程は、本来、専用の機械を用いて、ハムの食肉材を充填した状態のケーシングを角型リテーナの内部に収容して施錠するのが好ましいが、この実施形態では、作業員の手作業により行われる。
【0023】
(3)成形工程
次に、施錠された角型リテーナは、加熱工程(例えば、くん煙、蒸煮、ボイルなどの工程)に供され、角型リテーナの内部に収容された食肉材はケーシングごと多角柱状に成形される。この実施形態では、ハムの食肉材を充填したケーシングを収容した複数の角型リテーナを台車に載せて、当該台車を、くん煙と蒸煮を行うスモークハウスに入れて、加熱処理を通じて食肉材の角型成形が行われる。なお、台車をスモークハウスに入れる代わりに、ボイルタンクに入れてボイルを行っても良い。ボイルを行う場合には、必ずしも通気ケーシングを用いなくとも良く、非通気ケーシングを用いることもできる。
【0024】
(4)解錠工程
次に、食肉材の成形後、必要に応じて冷却工程を経て、角型リテーナの解錠が行われる。解錠工程の一部または全部は、この実施形態に係るリテーナ解錠装置によって行われる。
【0025】
(5)取り出し工程
最後に、一部あるいは全部の解錠が行われた角型リテーナの中から、ケーシングごと成形された角型のハムが取り出される。かかる取り出し作業は、機械によって行うこともできるが、この実施形態では、作業員の手作業によって行われる。取り出し作業では、角型のケーシングの展開作業のみでも良いが、上記解錠工程で残された一部の解錠作業を伴っていても良い。こうして、角型成形の一連の工程が完了する。
【0026】
3.角型リテーナの解錠工程及びその前後の工程
図1は、角型リテーナを解錠する工程を中心としてその前後の工程を示した平面図である。
図2は、角型リテーナを解錠する工程を示した斜視図である。
【0027】
以後、角型リテーナに関して、施錠部(第一施錠部および第二施錠部)が施錠された状態と、施錠部が解錠された状態とを区別する必要がある場合には、適宜、施錠された角型リテーナを「角型リテーナ20A」と、解錠された角型リテーナを「角型リテーナ20B」として区別することとし、その区別を特に要しない場合には、角型リテーナを「角型リテーナ20」と称する。
【0028】
角型リテーナ20Aは、ハム用の食肉材の角型成形の後、台車に移される。台車に移された複数の角型リテーナ20Aは、リテーナ整列排出装置によって複数列に整列させられる。リテーナ整列排出装置は、その列の長手方向に一致した移動方向のベルトコンベア40(移動手段の一例)に向けて、複数列(この実施形態では、例えば、三列)の角型リテーナ20Aを排出する。
図2に示すように、ベルトコンベア40は、複数の角型リテーナ20Aを、所定の間隔にて連続でトンネル型のリテーナ解錠装置30の貫通路34に送り込む。なお、ベルトコンベア40以外の移動手段、例えば、ローラコンベアを用いても良い。
【0029】
ベルトコンベア40に載せられた角型リテーナ20Aは、リテーナ解錠装置30の中で第一施錠部および第二施錠部が解錠される。その後、解錠された角型リテーナ20Bは、取り出し工程に運ばれる。
図1中、取り出し工程の場所は、リテーナ解錠装置30の下流方向に配置された作業台50である。作業者は、ベルトコンベア40にて運ばれてきた解錠後の角型リテーナ20Bを手作業にて作業台50へ移す。続いて、作業者は、多角柱形状(この実施形態では、略直方体)に成形されたケーシングを、解錠後の角型リテーナ20Bから取り出す。
【0030】
4.角型リテーナの構造
図3は、施錠された角型リテーナを示す斜視図である。
図4は、展開状態となった角型リテーナと、その角型リテーナから取り出されたケーシングとを示す斜視図である。
【0031】
図3中の角型リテーナ20は、その内部空間に、ハム用の食肉材を充填したケーシング10を収容し、施錠された状態にある。
図3および
図4に示すように、この実施形態にて用いられる角型リテーナ20は、概ねの外形が直方体を成す。角型リテーナ20は、長方形の底板21と; 底板21と対向位置にある上板26と; 底板21から略直角に立設される側板22と; 同じく底板21から略直角に立設されて側板22と対向位置にある側板25と; 上板26と側板22,25と底板21とで囲まれる開口部を塞いで角型リテーナ20の移動方向側に位置する前板24と; 同開口部を塞いで前板24と対向位置にある後板23と; を備える。
【0032】
図4に示すように、底板21と側板22と後板23とは、互いに略直角になるように固定されている。底板21と側板25とを接続する部位には、蝶番29Aが備えられている。このため、側板25は、底板21に対して角度可変となっている。後板23は、底板21および側板22以外の如何なる板とも接続されていない。前板24と側板25とを接続する部位には、蝶番29Bが備えられている。このため、前板24は、側板25に対して角度可変となっている。前板24は、側板25以外の如何なる板とも接続されていない。さらに、側板25と上板26とは、略直角をなすように固定されている。なお、底板21、側板22、後板23、前板24、側板25および上板26は、角型リテーナ20を展開して、その中から、ケーシング10ごと角型に成形されたハムを取り出し可能であれば、上記の接続形態以外の如何なる形態で接続されていても良い。
【0033】
成形前において、ハム用の食肉材を充填したケーシング10の開口部は、好適にはアルミワイヤー11にて結紮される。アルミワイヤー11の結紮部位の外方向に余ったケーシング10の部位は、余裕部10Aとなる。なお、結紮に代えて、ケーシング10の開口部を閉じてから縛る方法、あるいは局部的に加熱して溶着させる方法などによって行うこともできる。上記ハム用の食肉材は、成形前には、ケーシング10内で半流動状態にあるが、成形後には、食肉材が固まり、その結果、角型リテーナ20の内部形状に合うように、
図4に示す略直方体に成形される。この実施形態では、後板23および前板24は、好ましくは、その面内略中央部をそれぞれ貫く貫通孔23Aおよび貫通孔24Aを備える。このため、アルミワイヤー11および余裕部10Aは、貫通孔23A,24Aから外に出すこともできる。
【0034】
この実施形態では、角型リテーナ20の施錠は、2個の第一施錠部27および1個の第二施錠部28によって行われている。第一施錠部27は、角型リテーナ20の移動方向を中心軸とする筒体の周側面をそれぞれ構成して互いに隣接する第一の面と第二の面とを固定するための施錠部である。この実施形態では、第一施錠部27は、角型リテーナ20の側板22とその側板22に隣接する上板26とを固定する機能を持つ。側板22は第一の面に相当し、上板26は第二の面に相当する。また、第二施錠部28は、上記移動方向若しくはその反対方向の第三の面と上記筒体の周側面を構成して第三の面に隣接する第四の面とを固定するための施錠部である。この実施形態では、第二施錠部28は、角型リテーナ20の長手方向に位置する前板24とその前板24に隣接する側板22とを固定する機能を持つ。前板24は第三の面に相当し、側板22は第四の面に相当する。なお、第四の面は、側板22(第一の面)若しくは上板26(第二の面)、あるいはそれら以外の面(例えば、側板25)であっても良い。ベルトコンベア40は、上板26を上にし、かつ前板24を移動方向に向け、角型リテーナ20Aをトンネル型のリテーナ解錠装置30の貫通路34を通過させる。角型リテーナ20Aの第一施錠部27および第二施錠部28は、リテーナ解錠装置30の貫通路34を通過する途中で解錠される。
【0035】
第一施錠部27の主要部は、側板22における上板26との隣接辺に設けられており、側板22と上板26との固定およびその固定を解錠可能に構成されている。第二施錠部28の主要部は、側板22における前板24との隣接辺に設けられており、側板22と前板24との固定およびその固定を解錠可能に構成されている。第一施錠部27と第二施錠部28とを共に解錠して角型リテーナ20Bを展開すると、角型リテーナ20Bは、
図4に示す展開状態となり、ケーシング10ごと角型成形されたハムを取り出すことができる。この展開の作業およびハムの取り出し作業は、作業台50上にて作業員による手作業により実施されるが、第一施錠部27および第二施錠部28の解錠は、リテーナ解錠装置30によって行われる。
【0036】
図5は、解錠直後の角型リテーナを示す斜視図であって、(a)は全体図を、(b)は拡大図を、それぞれ示す。
【0037】
第一施錠部27は、角型リテーナ20の長手方向に垂直な断面形状を略L字形状とする可動L字片27Cと; その可動L字片27Cを回転可能に軸支持する軸27Bと; 側板22に固定される2枚の突出板であってその厚さ方向にそれぞれ1個の貫通孔を備える有孔突出板27Gと; 軸27Bの長さ方向略中央にあって軸27Bよりも径の大きな大径軸部27Aと; 可動L字片27Cにおいて軸27Bとは反対側に位置する爪部27Eと; 爪部27Eを可動L字片27Cにおいて支持する爪部ホルダ27Dと; 大径軸部27Aの前板24に近い側の段差部と同じく前板24に近い側の有孔突出板27Gとの間において軸27Bを挿通して配置されるコイルスプリング27Fと; 上板26にあって爪部27Eを着脱可能な形状で配置される爪部26Aと; を備えている。爪部26Aは、上板26の側板22と隣接する隣接辺に設けられている。爪部26A以外の第一施錠部27の構成部は、側板22の上板26と隣接する隣接辺に設けられている。
【0038】
爪部27Eと爪部26Aとは、可動L字片27Cの回転方向にて互いに引っ掛かり合い、爪部27Eが角型リテーナ20の移動方向(以後、単に「移動方向」と称する)にスライドした際に外れる形状をそれぞれ備える。軸27Bの軸方向の長さは、可動L字片27Cの長手方向寸法よりも長い。軸27Bの長さ方向両端は、2枚の有孔突出板27Gの外側にあって、有孔突出板27Gに形成された貫通孔を通らない大きさである。可動L字片27Cは、コイルスプリング27Fを自然長に維持した状態で、わずかに移動方向と反対の方向に移動可能である。また、可動L字片27Cは、コイルスプリング27Fを押し縮めながら、爪部27Eが爪部26Aから外れる位置まで移動可能である。爪部27Eを爪部26Aから外して、可動L字片27Cを側板22側に回動させている状態では、爪部27Eは、爪部26Aよりも移動方向側に少しずれた位置にある。第一施錠部27の施錠は、可動L字片27Cを、移動方向と反対方向に移動させ、続いて爪部26A側へと回動させ、最後に爪部27Eを爪部26Aに引っ掛けることにより行うことができる。
【0039】
かかる施錠動作中、コイルスプリング27Fは自然長のままであり、圧縮も伸長もされていない。かかる施錠状態から第一施錠部27を解錠する際には、可動L字片27Cを移動方向にスライドさせる。この結果、コイルスプリング27Fが縮められ、爪部27Eは爪部26Aから外れる。なお、爪部27Eは、可動L字片27Cを、コイルスプリング27Fを縮めて移動方向にスライドさせない限り、爪部26Aから外れにくくなっている。
【0040】
変形例として、コイルスプリング27Fを、第一施錠部27が解錠されている時点で自然長の状態とし、第一施錠部27の施錠の際にコイルスプリング27Fを伸ばしあるいは縮めて爪部27Eと爪部26Aとを固定するようにしても良い。このような機構を用いても、スライダ31が可動L字片27Cを移動方向にスライドさせると、コイルスプリング27Fが自然長に復活する状況とし、第一施錠部27を解錠することができる。
【0041】
第二施錠部28は、この実施形態では、2つのカンチレバー構造を有する。第一カンチレバー構造は、前板24における側板22側の端部を引っ掛けて側板22に近づけるように押さえ込む角押さえ片28Cと、その角押さえ片28Cを軸支持している被付勢回転軸28Dと、その被付勢回転軸28Dに巻き付くとともに施錠状態の角押さえ片28Cを前板24から引き離す回転方向へ付勢されるねじりコイルスプリング28Eと、を備えている。被付勢回転軸28Dの軸方向は、前板24および側板22の境界線と平行である。また、ねじりコイルスプリング28Eは、角押さえ片28Cが側板22側に位置している場合(
図5(b)参照)に、付勢状態がほぼ開放されるように被付勢回転軸28Dに巻き付けられている。
【0042】
第二カンチレバー構造は、施錠状態となった角押さえ片28Cを覆うとともに前記の被付勢回転軸28Dを貫通させたレバー部材28Aと、そのレバー部材28Aを軸支持しているレバー回転軸28Bと、を備えている。レバー部材28Aの先端部分は、断面がL字形をなしており、後述する解錠動作の際に、回動部35が引っ掛けやすい形状となっている。レバー回転軸28Bの軸方向は、前記の被付勢回転軸28Dの軸方向と略平行であり、被付勢回転軸28Dよりも前板24に近い位置にある。
【0043】
第二施錠部28の施錠の際には、作業者は、角押さえ片28Cをレバー部材28Aとともに、ねじりコイルスプリング28Eの弾性力に抗して回動させ、前板24における側板22側の端部に引っ掛ける。この結果、前板24は、角押さえ片28Cによって側板22に近づけるように押さえ込まれて安定する。レバー部材28Aは、その端部が側板22側に位置する(
図3を参照)。
【0044】
5.リテーナ解錠装置の構成・動作
図6は、リテーナ解錠装置において、角型リテーナの第一施錠部を解錠する手順を説明するための平面図を示す。
図7は、
図6の手順を説明するための側面図を示す。
図8は、リテーナ解錠装置において、角型リテーナの第一施錠部を解錠する手順を説明するための一部断面図であり、
図3中のVIII−VIII線で切断した断面を示す。
図9は、リテーナ解錠装置において、角型リテーナの第二施錠部を解錠する手順を説明するための平面図を示す。
図10は、リテーナ解錠装置において、角型リテーナの第二施錠部を解錠する手順を説明するための一部断面図であり、
図3中のX−X線で切断した断面を示す。
【0045】
(1)リテーナ解錠装置の構成
この実施形態に係るリテーナ解錠装置30は、前述のリテーナ収容工程と、成形工程と、解錠工程と、取り出し工程とを含む角型成形において、角型リテーナ20Aの解錠を実行する装置である。
図7および
図9に示すように、リテーナ解錠装置30は、第一施錠部27の一部(この実施形態では、爪部ホルダ27Dあるいは可動L字片27C)に接して、角型リテーナ20Aとの相対的な移動により爪部ホルダ27Dあるいは可動L字片27Cを解錠方向にスライドさせるスライダ31と、第二施錠部28の一部(この実施形態では、レバー部材28A)に接して、レバー部材28Aを解錠方向に回動させる回動体35と、を備える。回動体35は、回動体駆動部36によって回動される。回動体35により第二施錠部28を解錠するので、一定方向の回転というシンプルな動作だけで解錠を実行できる。この結果、ベルトコンベア40にて運ばれてくる複数の角型リテーナ20Aを、容易に連続解錠することができる。
【0046】
リテーナ解錠装置30は、前述のように、角型リテーナ20を移動する方向に貫通する貫通路34を備えたトンネルの形態を備える。リテーナ解錠装置30は、その貫通路34に、角型リテーナ20を移動するベルトコンベア40を配置して成る。スライダ31および回動体35は、トンネル内に運ばれてきた角型リテーナ20Aの第一施錠部27および第二施錠部28の両施錠を解錠することができる。
【0047】
この実施形態では、
図7に示すように、第一施錠部27を解錠するためにスライダ31をスライドさせるスライダ駆動部60を、さらに備える。スライダ31は、第一施錠部27を解錠するように、角型リテーナ20Aに対して相対的に移動する。この実施形態では、角型リテーナ20Aを停止させ、スライダ31のみを移動させて第一施錠部27を解錠しているが、角型リテーナ20Aを移動しながら、それより大きな速度にて角型リテーナ20Aと同方向にスライダ31を移動させ、第一施錠部27を解錠しても良い。また、スライダ31をリテーナ解錠装置30の貫通路34内に固定しておき、角型リテーナ20Aが貫通路34内を通過する際に第一施錠部27を解錠するようにしても良い。スライダ31をリテーナ解錠装置30に固定する場合には、スライダ駆動部60を必ずしも設けることを要しない。
【0048】
この実施形態において、リテーナ解錠装置30は、好ましくは、第一施錠部27および第二施錠部28の両施錠部の解錠時に角型リテーナ20Aを固定するためのリテーナ固定手段を、さらに備える。より詳細には、この実施形態において、リテーナ固定手段は、
図6に示すように、角型リテーナ20を、その移動方向と異なる方向(ここでは、移動方向と略直角の方向)から加圧し、連続して駆動されるベルトコンベア40の駆動力に抗して角型リテーナ20を固定する加圧固定部37,38である。リテーナ解錠装置30にリテーナ固定手段を備えることによって、第一施錠部27および第二施錠部28の解錠動作を確実に行うことができる。
【0049】
(2)リテーナ解錠装置の動作(第一施錠部の解錠動作)
スライダ31は、平面視にて略U字形状の部材である。スライダ31は、前板24に近い側の第一施錠部27の爪部ホルダ27Dに当接してこれをスライドさせる機能を持つ当接部32と、後板23に近い側の第一施錠部27の爪部ホルダ27Dに当接してこれをスライドさせる機能を持つ当接部33と、を備える。スライダ駆動部60は、第一施錠部27の解錠の動作の際に、スライダ31を解錠位置まで移動させるとともに、第一施錠部27の解錠後にスライダ31を第一施錠部27から離れる方向(好適には、上方向)に退避させることができる。ただし、スライダ駆動部60は、スライダ31を移動方向と反対方向に退避させても良い。また、スライダ駆動部60は、第一施錠部27の解錠の動作のみを行う構成部でも良い。
【0050】
ベルトコンベア40は、第一施錠部27を施錠した状態の角型リテーナ20Aを、リテーナ解錠装置30の貫通路34内に運ぶ。
図6(a)および
図7(a)に示すように、角型リテーナ20Aの2つの第一施錠部27の各後方に当接部32,33を配置する位置にて、加圧固定部37,38は、角型リテーナ20をその移動方向に対して略直角方向から挟み込み、ベルトコンベア40の移動に抗して停止させる。その間、ベルトコンベア40は、角型リテーナ20Aの底板21の下方で動き続ける。
図8(a)に示すように、この状態において、第一施錠部27は、側板22と上板26とを固定している。次に、リテーナ解錠装置30は、スライダ31を角型リテーナ20Aの所定位置に移動させる。その結果、当接部32は、前板24に近い側の可動L字片27Cの後方に当接すると共に、当接部33は、後板23に近い側の可動L字片27Cの後方に当接する。
【0051】
次に、
図6(b)および
図7(b)に示すように、リテーナ解錠装置30は、スライダ31を角型リテーナ20Aの移動方向に移動させる。その結果、爪部27Eは、爪部26Aに固定されていた状態から、開放される。
図6(c)、
図7(c)および
図8(b)に示すように、爪部27Eが爪部26Aから解放されることにより、可動L字片27Cは、側板22側に回動可能となる。なお、可動L字片27Cは、側板22側に容易に回動できるように、コイルバネ等の弾性力を利用した機能が備えられていても良い。
【0052】
(3)リテーナ解錠装置の動作(第二施錠部の解錠動作)
図9に示すように、回動体35は、軸形状の回動駆動部36の回動によって、角型リテーナ20Aの第二施錠部28を解錠することができる。第二施錠部28が施錠されているときには、第二施錠部28を構成するレバー部材28Aは、その先端を側板22の表面から若干浮かせた状態にある。ベルトコンベア40は、第二施錠部28を施錠した状態の角型リテーナ20Aを載せ、回動体35が第二施錠部28を解錠可能な位置まで移動する。この位置は、好ましくは、前述のスライダ31が第一施錠部27を解錠可能な位置でもある。また、この位置において、加圧固定部37,38は、ベルトコンベア40の駆動力に抗して角型リテーナ20Aを固定している。次に、
図9(a)および
図10(a)に示すように、回動駆動部36の回動により、回動体35は、二点鎖線で示す状態から回動して実線で示す状態になる。この結果、回動体35の先端35Aは、レバー部材28Aの先端と側板22との隙間に入ることができる。
【0053】
図9(b)に示すように、回動駆動部36が回動体35をさらに回動すると、レバー部材28Aは側板22から離れる。また、前板24を側板22に引き付けて固定していた角押さえ片28Cは、レバー部材28Aと連動し、ねじりコイルスプリング28Eの弾性力に抗して回動し始める。回動駆動部36が回動体35をさらに回動すると、レバー部材28Aは角押さえ片28Cとともに回動する。続いて、
図9(c)および
図10(b)に示すように、角押さえ片28Cは、前板24と側板22との境界部分から離れ、第二施錠部28の解錠が終了する。
【0054】
リテーナ解錠装置30によって第一施錠部27および第二施錠部28が解錠された角型リテーナ20Bは、加圧固定部37,38による固定が解除され、ベルトコンベア40にて作業台50の近傍まで運ばれる。その後、作業者は、角型リテーナ20Bを作業台50に移し、角型リテーナ20Bからケーシング10を取り出す(
図4を参照)。したがって、作業者は、第一施錠部27および第二施錠部28を解錠する作業を行うことなく、角型リテーナ20Bを展開するだけで、ケーシング10を取り出すことができる。このように、リテーナ解錠装置30を用いることによって、角型リテーナ20Bを解錠する解錠工程を自動化することができ、作業者の安全、作業効率の向上、人件費の削減、さらにはハムの低価格化も実現できる。
【0055】
6.その他の実施形態
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0056】
例えば、スライド式に解錠可能な第一施錠部27に代えて、第二施錠部28と同様の回動式に解錠可能な施錠部(第一施錠部、第二施錠部のいずれの呼称でも良い)を、側板22と上板26とを固定する施錠部として備えても良い。また、回動式に解錠可能な第二施錠部28に代えて、第一施錠部27と同様のスライド式に解錠可能な施錠部(第一施錠部、第二施錠部のいずれの呼称でも良い)を、側板22と前板24とを固定する施錠部として備えても良い。また、これらの施錠部にて施錠する場所は、側板22と後板23との間、上板26と前板24との間、上板26と側板25との間等の他の箇所に変更しても良い。
【0057】
角型リテーナ20の形状は、略直方体に限定されず、略三角柱、あるいは略五角柱以上の多角柱であっても良い。回動体駆動部36は、回動体35の回動の中心を貫く軸体ではなく、回動体35の周囲に形成された凹凸にかみ合ったギアの形状を有する構造体でも良い。
【0058】
また、スライダ31による第一施錠部27の解錠と、回動体35による第二施錠部28の解錠とは、同時に行われずに、それぞれ異なる時期に行われても良い。例えば、先にスライダ31による第一施錠部27の解錠が行われ、角型リテーナ20Aをその移動方向若しくはその反対方向に移動した後に回動体35による第二施錠部28の解錠が行われても良い。また、その逆に、先に回動体35による第二施錠部28の解錠が行われ、角型リテーナ20Aをその移動方向若しくはその反対方向に移動した後にスライダ31による第一施錠部27の解錠が行われても良い。
【0059】
また、リテーナ固定手段を設けず、ベルトコンベア40を停止若しくはその速度を低下させてから、スライダ31および回動体35を駆動し、第一施錠部27および第二施錠部28をそれぞれ解錠しても良い。また、リテーナ固定手段は、第一施錠部27および第二施錠部28のいずれか一方の施錠部の解錠時に角型リテーナ20Aを固定するものでも良い。さらに、リテーナ固定手段として、加圧固定部37,38以外の手段を用いることもできる。例えば、リテーナ固定手段として磁石を用いて、磁石に付くことのできる金属から成る角型リテーナ20Aを停止させるようにしても良い。また、前板24の前方に、リテーナ固定手段としての停止板を突出させて、角型リテーナ20Aを停止させるようにしても良い。
【0060】
また、角型リテーナ20を円柱形のリテーナとし、円柱形の内部空間にて食肉材を成形しても良い。そのような場合、第一施錠部は、リテーナの移動方向を中心軸とする筒体の周側面(円筒側面)を構成し、リテーナの移動方向に沿って分割された互いに隣接する第一の面と第二の面とを固定するために、1または2以上設けられる。ここで、第一の面および第二の面は、好ましくは円筒の略半割体である。また、第二施錠部は、リテーナの移動方向若しくはその反対方向の第三の面(底面若しくは天面)と筒体の円筒側面を構成して第三の面に隣接する第四の面(すなわち、第一の面若しくは第二の面)とを固定するために、1または2以上設けられる。円柱形のリテーナを解錠する際には、第一施錠部および第二施錠部の位置を固定するために、リテーナが回転しないようにリテーナ解錠装置30に運び、これを通過させる必要がある。