(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゴム組成物をトレッド部、サイドウォール部、ビード部、インナーライナーおよびその他の補強ゴム部の少なくとも一つの部材に用いた請求項8記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
【0013】
本発明のゴム用添加剤は、下記式(I)、
(式中、Qは、アミノ基又は下記の官能基(Q
1)を示し、
前記官能基(Q
1)において、R
1及びR
2は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基(但し、フェニル環上にはハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、ニトリル基、炭素数1〜6のアルキル基を有していてもよい)を示し、互いに結合して炭素数2〜7のアルキレン基を形成してもよい。)
で表されるベンゾイミダゾール化合物を含有してなるものである。
【0014】
前記式(I)で表されるベンゾイミダゾール化合物を含有してなるゴム用添加剤をジエン系ゴム成分に添加することによって、得られたゴム組成物について優れた低発熱性と高弾性率とを両立させることができる。
【0015】
即ち、本発明のゴム用添加剤は、低ロス剤として使用することができることから、換言すれば、本発明のゴム用添加剤は、ジエン系ゴム成分に添加され、前記式(I)で表されるベンゾイミダゾール化合物を含有してなる低ロス剤を包含する。
【0016】
本明細書において、示される各基は、次の通りである。
【0017】
炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基等の炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられる。
【0018】
炭素数2〜7のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基等の直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2〜7のアルキレン基を挙げることができる。
【0019】
また、フェニル基は、置換可能な任意の位置に適当な置換基が置換されてもよく、該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、ニトリル基、炭素数1〜6のアルキル基等を挙げることができる。
【0020】
本発明のゴム用添加剤は、前記式(I)で表されるベンゾイミダゾール化合物のうち、Qがアミノ基であるベンゾイミダゾール化合物を含有してなるゴム用添加剤であることが好ましい。
【0021】
本発明のゴム用添加剤は、前記式(I)で表されるベンゾイミダゾール化合物のうち、Qが官能基(Q
1)であって、官能基(Q
1)のR
1及びR
2が、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基である化合物を含有してなるゴム用添加剤であることが好ましく、官能基(Q
1)のR
1がメチル基、R
2がイソブチル基である化合物を含有してなるゴム用添加剤であることがより好ましい。
【0022】
本発明のゴム用添加剤は、前記式(I)で表されるベンゾイミダゾール化合物のうち、Qが官能基(Q
1)であって、官能基(Q
1)のR
1及びR
2が、互いに結合して炭素数2〜7のアルキレン基を形成する化合物を含有してなるゴム用添加剤であることが好ましく、官能基(Q
1)のR
1及びR
2が、互いに結合してヘキサメチレン基を形成する化合物を含有してなるゴム用添加剤であることがより好ましい。
【0023】
本発明のゴム用添加剤は、前記式(I)で表されるベンゾイミダゾール化合物のうち、Qが官能基(Q
1)であって、官能基(Q
1)のR
1又はR
2が、フェニル基である化合物を含有してなるゴム用添加剤であることが好ましく、官能基(Q
1)のR
1が水素原子、R
2がフェニル基である化合物を含有してなるゴム用添加剤であることがより好ましい。
【0024】
本発明のゴム用添加剤をジエン系ゴム成分に添加又は配合することで、優れた低発熱性と高弾性率とを両立させたゴム組成物を提供できる。
【0025】
以下に本発明の好適な具体的化合物を列挙する。
【0026】
前記式(I)で表されるベンゾイミダゾール化合物は、例えば、以下の反応式−1に示す方法により製造することができる。
【0027】
反応式−1
(反応式中、R
1及びR
2は前記に同じ。)
【0028】
反応式−1によれば、前記式(Ia)で表されるベンゾイミダゾール化合物に、前記式(1)で表されるカルボニル化合物を反応させることで、前記式(Ib)で表されるベンゾイミダゾール化合物を製造することができる。
【0029】
本反応は溶媒中で行うことができるが、使用する溶媒としては、反応に対して不活性な溶媒である限り公知の溶媒を広く使用することができる。かかる溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン類、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類を挙げることができる。これらの溶媒は、1種を単独で使用でき、又は必要に応じて2種以上を混合して使用することができる。
【0030】
これらの溶媒は、前記式(Ia)で表されるベンゾイミダゾール化合物1質量部に対して、通常1〜100質量部程度、好ましくは1〜20質量部程度使用すればよい。
【0031】
本反応で使用する前記式(1)のカルボニル化合物は、目的とする前記式(Ib)で表されるベンゾイミダゾール化合物を製造するために適宜選択されるアルデヒド化合物又はケトン化合物である。
【0032】
前記式(1)のカルボニル化合物は、前記式(Ia)で表されるベンゾイミダゾール化合物に対して通常1.0〜20当量、好ましくは1.0〜2.0当量となるような量で使用すればよい。
【0033】
本反応は、0℃から使用する溶媒の沸点温度までの範囲内で行うことができるが、通常25〜100℃程度で行い、使用する溶媒、反応試薬等を考慮して調整すればよい。
【0034】
反応時間は反応温度等により異なり一概には言えないが、通常0.5〜24時間程度で本反応は完結する。
【0035】
なお、前記式(Ia)で表されるベンゾイミダゾール化合物は、従来公知の方法、例えば米国公開公報US2007/0066670に記載の方法により製造することができる。
【0036】
本発明のゴム用添加剤をジエン系ゴム成分に添加する際の添加量は、前記ジエン系ゴム成分100質量部に対して、0.01〜30質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましい。
【0037】
本発明のゴム用添加剤のジエン系ゴム成分への添加は、ミキサー、押出機、混練機または噴霧によって行われることが好ましい。
【0038】
なお、本明細書中において、「含有してなる」との表現については、「含む」、「実質的にのみからなる」および「のみからなる」という概念を含む。
【0039】
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、充填材を10〜160質量部と、本発明のゴム用添加剤を0.01〜30質量部と、を配合してなる。
【0040】
これにより、ゴム組成物中において充填材とゴム成分との化学的相互作用が向上し、充填材の補強効果が向上する。特に、充填材としてのカーボンブラックに対し、より一層の補強効果の向上を実現することができる。また、これに伴い、充填材同士の擦れ合いによるヒステリシスロスが低減し、結果として低いtanδが得られることになる。
【0041】
次に、本発明のゴム組成物に配合される充填材について説明する。
本発明のゴム組成物においては、充填材は、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、10〜160質量部、好ましくは30〜100質量部配合される。充填材としては、カーボンブラックが好ましいが、カーボンブラックと無機充填材とを併用してもよい。無機充填材と併用する場合には、ジエン系ゴム成分100質量部に対して、無機充填材を80質量部以下で併用することが好ましい。カーボンブラックを単独配合すれば、カーボンブラックのより強固な補強効果が得られることになる。
【0042】
本発明のゴム組成物に用いられる充填材としてのカーボンブラックは、特に制限はなく、例えば、高、中又は低ストラクチャーのSAF、ISAF、IISAF、N339、HAF、FEF、GPF、SRFグレードのカーボンブラック、特にSAF、ISAF、IISAF、N339、HAF、FEFグレードのカーボンブラックを用いるのが好ましい。窒素吸着比表面積(N
2SA、JIS K 6217−2:2001に準拠して測定する)が30〜250m
2/gであることが好ましい。このカーボンブラックは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
本発明のゴム組成物に用いられるカーボンブラック以外の無機充填材としては、シリカが好ましい。このシリカとしては、市販のあらゆるものが使用でき、なかでも湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカを用いるのが好ましく、湿式シリカを用いるのが特に好ましい。
【0044】
本発明のゴム組成物に、シリカなどの無機充填材を配合する場合は、シランカップリング剤を配合することが、無機充填材の補強効果を高める観点から好ましく、ゴム加工時の作業性に更に優れると共に、より耐摩耗性の良好な空気入りタイヤを与えることができる。本発明のゴム組成物に用いられるシランカップリング剤は、特に限定されず、一般に広く用いられているものを使用することができる。
【0045】
本発明のゴム組成物に用いられるゴム成分は、ジエン系ゴム50質量%以上からなることを要し、ジエン系ゴム100質量%であることが好ましい。ジエン系ゴムとしては、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種からなることが好ましい。上記の合成ジエン系ゴムとしては、ゴムを構成するモノマーの少なくとも一部としてジエンモノマーを含有するゴムであればよく、それ以外には特に限定されない。具体的には、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム{塩素化ブチルゴム(CI−IIR)、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)等}、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、エチレン−ブタジエン共重合体ゴム(EBR)、プロピレン−ブタジエン共重合体ゴム(PBR)等を用いることができ、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムは、1種単独でも、2種以上のブレンドとして用いてもよい。ジエン系ゴム以外のゴム成分としては、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPM)、アクリルゴム(ACM)、塩素化ポリエチレン(CM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)などが挙げられる。
【0046】
本発明のゴム組成物には、その他任意成分として、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、軟化剤、老化防止剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。本発明のゴム組成物は、各種配合剤を配合して、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー、二軸押出機等による混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0047】
本発明の空気入りタイヤは、本発明のゴム組成物を用いてなるものであり、本発明のゴム組成物を、トレッド部、サイドウォール部、ビード部、インナーライナーおよびその他の補強ゴム部の少なくとも一つの部材に好適に用いることができる。なお、本発明の空気入りタイヤは、上述のゴム組成物を用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。また、該空気入りタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
【0049】
製造例1 (1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)ヒドラジン(化合物a)の製造
2−メルカプトベンゾイミダゾール45gに水225mL、水酸化ナトリウム18g、タングステン酸0.9gを添加した後、5℃に冷却した。35%過酸化水素102gを滴下して加え、室温で1時間撹拌した後、ヒドラジンヒドラート45gを添加して90℃で13時間撹拌した。析出した固体を濾取して水100mLで分散洗浄後、減圧乾燥して目的の(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)ヒドラジン(化合物a)40.9g(収率92%)を得た。
性状:淡黄色固体
融点:218℃
1H−NMR(500MHz,DMSO−D
6,δppm):4.4(br−s,2H),6.9(m,2H),7.1(m,2H),7.8(br−s,1H),11.0(br−s,1H)
【0050】
製造例2 N−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−N’−(4−メチルペンタン−2−イリデン)ヒドラジン(化合物b)の製造
製造例1で製造した(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)ヒドラジン6gにメチルイソブチルケトン50mLを添加し、60℃で6時間撹拌した。反応溶媒を減圧留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で目的物を分取し、減圧乾燥して目的のN−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−N’−(4−メチルペンタン−2−イリデン)ヒドラジン(化合物b)8.6g(収率92%)を得た。
性状:淡黄色固体
融点:70℃
1H−NMR(500MHz,DMSO−D
6,δppm):0.9(m,6H),1.9〜2.3(m,6H),6.9(m,2H),7.2(m,2H),10.1(br−s,1H),11.1(br−s,1H)
【0051】
製造例3 N−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−N’−(シクロヘキサン−1−イリデン)ヒドラジン(化合物c)の製造
製造例1で製造した(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)ヒドラジン6gにメタノール100mL、シクロヘキサノン16gを添加し、60℃で6時間撹拌した。析出した結晶を濾取後、イソプロピルアルコール40mLにて分散洗浄し、減圧乾燥して目的のN−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−N’−(シクロヘキサン−1−イリデン)ヒドラジン(化合物c)6.0g(収率65%)を得た。
性状:淡黄色固体
融点:235℃
1H−NMR(500MHz,DMSO−D
6,δppm):1.6(m,4H),1.7(m,2H),2.3(t,2H),2.5(m,2H),6.9(m,2H),7.2(m,2H),10.2(br−s,1H),11.2(br−s,1H)
【0052】
製造例4 N−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−N’−(2−ヒドロキシベンジリデン)ヒドラジン(化合物d)
製造例1で製造した(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)ヒドラジン4gにメタノール80mL、サリチルアルデヒド13.2gを添加した後、50℃で30分撹拌した。析出した固体を濾取した後、メタノール30mLにて分散洗浄後、減圧乾燥して目的のN−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−N’−(2−ヒドロキシベンジリデン)ヒドラジン(化合物d)6.3g(収率93%)を得た。
性状:淡黄色固体
融点:268℃
1H−NMR(500MHz,DMSO−D
6,δppm):6.9(m,2H),7.0(m,2H),7.2(m,3H),7.8(d,1H),8.3(s,1H),10.3(br−s,1H),11.3(br−s,1H),11.5(br−s,1H)
【0053】
(実施例1〜4、比較例1〜2)
下記の表1に示す配合処方により、各種供試ゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物に対し、動的弾性率E' およびtanδを測定した。測定方法は下記の通りである。
【0054】
(動的弾性率E' およびtanδ)
上島製作所製スペクトロメーター(動的粘弾性測定試験機)を用い、周波数52Hz、初期歪10%、測定温度60℃、動歪1%で測定し、得られた動的弾性率E’又はtanδの数値を、それぞれ比較例1の動的弾性率E’又はtanδの数値を100として下記式にて指数表示した。動的弾性率E’においては、指数値が大きい程、動的弾性率E’が高いことを示す。一方、tanδ指数においては、指数値が小さい程、低発熱性であり、ヒステリシスロスが小さいことを示す。
【0055】
動的弾性率E’指数={(供試加硫ゴム組成物の動的弾性率E’)/(比較例1の加硫ゴム組成物の動的弾性率E’)}×100
【0056】
tanδ指数={(供試加硫ゴム組成物のtanδ)/(比較例1の加硫ゴム組成物のtanδ)}×100
【0057】
【表1】
【0058】
*1 RSS#1
*2 旭カーボン(株)製「♯80」
*3 3−ヒドロキシ−N’−(1,3−ジメチルブチリデン)−2−ナフトエ酸ヒドラジド
*4 N,N’−ジ−(1H−ベンゾイミダゾール−2−イル)−2,2’−ジスルファンジイルエタンアミン
*5 富士興産(株)製「アロマックス#3」
*6 N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック6C」
*7 2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック224」
*8 N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、三新化学工業(株)製「サンセラーCM」
【0059】
表1より明らかなように、本発明のゴム用添加剤を配合した実施例1〜4のゴム組成物は、比較例1および2のゴム組成物と比較して、いずれも弾性率および低発熱性の双方において良好であった。