特許第6594208号(P6594208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594208
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20191010BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20191010BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20191010BHJP
   C09J 7/00 20180101ALI20191010BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   C08F2/44 B
   C08F2/50
   C09J4/02
   C09J7/00
   C09J11/06
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-550935(P2015-550935)
(86)(22)【出願日】2014年11月25日
(86)【国際出願番号】JP2014081115
(87)【国際公開番号】WO2015080101
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2017年10月30日
(31)【優先権主張番号】特願2013-245340(P2013-245340)
(32)【優先日】2013年11月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】石田 泰則
(72)【発明者】
【氏名】比舎 佑基
(72)【発明者】
【氏名】深尾 健司
(72)【発明者】
【氏名】後藤 慶次
【審査官】 中根 知大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−181145(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/141314(WO,A1)
【文献】 特開2001−026608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/60
C09J 4/00−4/06
C09J 11/00−11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(P)、(C)〜(F)を含有する組成物であって、
(P)重合性ビニルモノマー;(C)光重合開始剤;(D)酸化防止剤;(E)チオール;(F)ジカルボン酸ジエステル、
前記(F)ジカルボン酸ジエステルが式(1)で表されるジカルボン酸ジエステルであり、
【化1】

前記(F)ジカルボン酸ジエステルの含有量は、前記(P)重合性ビニルモノマー及び(F)ジカルボン酸ジエステルの合計を100質量部とした場合に、5〜50質量部である組成物。
【請求項2】
前記(E)チオールがポリチオールである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(P)重合性ビニルモノマーが、(A)多官能(メタ)アクリレート及び(B)単官能(メタ)アクリレートを含有する請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記(A)多官能(メタ)アクリレートが、ウレタン(メタ)アクリレートである請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記(B)単官能(メタ)アクリレートが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上を含む請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のうちの1項に記載の組成物を含む硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のうちの1項に記載の組成物を含む接着剤組成物。
【請求項8】
請求項7記載の接着剤組成物の硬化体。
【請求項9】
請求項8記載の硬化体により被着体が被覆又は接合された複合体。
【請求項10】
前記被着体は、トリアセチルセルロース、フッ素系ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ガラス、金属からなる群から選ばれる1種以上を含む請求項9に記載の複合体。
【請求項11】
請求項7に記載の接着剤組成物により被着体を貼り合わせたタッチパネル積層体。
【請求項12】
請求項7に記載の接着剤組成物により被着体を貼り合わせた液晶パネル積層体。
【請求項13】
請求項11に記載のタッチパネル積層体を用いたディスプレイ。
【請求項14】
請求項12に記載の液晶パネル積層体を用いたディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
LCD(液晶ディスプレイ)等の表示体の上に搭載するタッチパネルには、抵抗膜式、静電容量式、電磁誘導式、光学式等がある。これらのタッチパネルの表面に、見た目のデザイン性を良くする化粧板や、タッチする位置を指定するアイコンシートを貼り合わせる場合がある。静電容量式タッチパネルは、透明基板の上に透明電極を形成し、その上に透明板を貼り合わせた構造を有している。
【0003】
従来、化粧板とタッチパネルとの貼り合わせ、アイコンシートとタッチパネルとの貼り合わせ、透明基板と透明板の貼り合わせには、接着剤を用いていた。
【0004】
これらのアイコンシートやタッチパネルは、表示体の駆動用ICや配線やLCDの枠シール剤を隠し、表示エリアのみを見えるようにし、デザイン性を向上するために、遮光枠を印刷等で被覆する場合がある。この遮光枠があると、遮光枠の下の光硬化性接着剤組成物は遮光枠により光が遮られ、光が当たらずに硬化しないため、接着が不十分となる。
【0005】
この未硬化による不十分な接着の問題を解決するため、光を斜めや横から照射する等して光の照射角度を調整する方法や、光硬化性接着剤組成物に熱硬化性触媒を添加し、光硬化性に加えて熱硬化性を付与し、光と熱で硬化する方法が実施されていた。
【0006】
しかし、光の照射角度を調整する方法では、遮光枠の幅が広くなると遮光枠の下の光硬化性接着剤組成物の全てを十分に硬化させるのが難しくなり、未硬化部分が残存しやすいという課題があった。光硬化性接着剤組成物に熱硬化性を付与し、光と熱で硬化する方法は、LCD、ELディスプレイ、LEDディスプレイ等の表示パネルを60〜80℃に30〜60分加温する必要があるため、品質の劣化や商品寿命を短くするおそれがあるという課題があった。
【0007】
特許文献1は、(A)ポリイソプレン、ポリブタジエン又はポリウレタンを骨格にもつ(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)柔軟化成分、並びに(C1)フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO付加物(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートから選択した(メタ)アクリレートモノマーを含む光硬化型樹脂組成物が記載されている。
【0008】
近年、LCD等の表示体のガラスが薄くなってきている。ガラスが薄くなると外部応力でLCDが変形しやすくなる。薄いガラスを用いたLCD等の表示体と、アクリル板やポリカーボネート板等の光学機能材料とを、貼り合わせた場合、ガラスとアクリル等の線膨張の違いや、アクリル板やポリカーボネート等のプラスチック成型材の成型時の歪みにより、耐熱試験や耐湿試験において成型歪みの緩和や吸湿/乾燥が起こり、寸法変化や反り等の面精度変化が起きる。特許文献2は、ウレタン系(メタ)アクリレート、ポリブタジエン系(メタ)アクリレート、及びイソプレン系(メタ)アクリレートを成分とする硬化樹脂が記載されている。
【0009】
化粧板とタッチパネルとの貼り合わせ、アイコンシートとタッチパネルとの貼り合わせ、透明基板と透明板との貼り合わせ等といった用途では、使用環境を想定した加温雰囲気での被着体の変形に追随できる程度の柔軟性を有することが望ましいとされている。
【0010】
一方、使用環境を想定した加温雰囲気での被着体の変形に追随できる程度の柔軟性を有する場合、耐熱試験後の着色や変色、耐湿試験後の強度低下といった課題があることも明らかとなっている。上記課題の解決策として、特許文献4は、ポリイソプレン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選ばれた1種以上のオリゴマーとヒンダードアミンとを含有する光硬化型接着組成物が記載されている。
【0011】
特許文献5に(A)特定のイオウ含有(メタ)アクリレート化合物またはこれを含むラジカル反応性組成物、(B)紫外線吸収剤、(C)酸化防止剤、及び(D)重合開始剤を含むことを特徴とする光硬化性組成物が記載されている。
【0012】
特許文献6にアクリルポリマー(E)、不飽和二重結合を有する官能基を2つ以上有するウレタン(メタ)アクリレート(A)、不飽和二重結合を有する官能基を1つ有するモノマー(B)、光重合開始剤(C)、チオール基を2つ以上有するポリチオール化合物(D)を含有する組成物であって、該組成物中におけるウレタン(メタ)アクリレート(A)の重量割合が2重量%〜30重量%である光硬化型透明接着剤組成物が記載されている。
【0013】
特許文献7に、末端にアリル基を有するアリルエステルオリゴマーであって、その構成成分中に、10〜80モル%がイタコン酸から誘導された有機残基を含む脂肪族ジカルボン酸で、残部がイタコン酸以外の不飽和基を含む脂肪族および/または飽和脂肪族および/または芳香族脂肪族ジカルボン酸から誘導された有機残基と、ポリオールから誘導された有機残基を含むアリルエステルオリゴマーを熱硬化性樹脂組成物として使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2010/027041号公報
【特許文献2】特開2004−77887号公報
【特許文献3】特開昭64−85209号公報
【特許文献4】特開2012−46658号公報
【特許文献5】特開2002−097224号公報
【特許文献6】特開2009−001655号公報
【特許文献7】特開平7−324123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
特許文献2の方法は、面精度変化といった変形を抑えようとした場合、接着面が剥がれたり、LCDが割れたり、LCDが表示ムラになったりするという問題があった。
特許文献2の課題の解決策として、特許文献3のUV硬化型樹脂が挙げられる。しかし、特許文献3は、イソボルニル(メタ)アクリレートのような剛直な骨格モノマーをベースとした高弾性樹脂であるが故に、高温信頼性試験(耐湿熱性試験)において被着体の膨張収縮に耐えることができず、剥がれを生じてしまう。
また、いずれの文献の技術においても、例えば、タッチパネル等の表示体に使用される化粧板やアイコンシートを貼り合わせる場合、透明基板と透明基板とを貼り合わせる場合、印刷加工された部分を貼り合わせる場合に、被着体正面からでは印刷等の遮光枠により正面から可視光線若しくは紫外線が当たらない箇所を、側面からの可視光線若しくは紫外線により硬化する場合、遮光枠の下の硬化性樹脂組成物の硬化不良を起こすという課題があった。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、例えば、タッチパネル等の表示体に使用される化粧板やアイコンシートを貼り合わせる場合、透明基板と透明基板とを貼り合わせる場合、表示体と光学機能材料とを貼り合わせる場合に、好適に用いられる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
即ち、本発明によれば、下記(P)、(C)〜(F)を含有する組成物が提供される。
(P)重合性ビニルモノマー
(C)光重合開始剤
(D)酸化防止剤
(E)チオール
(F)ジカルボン酸ジエステル
【0018】
上記(F)が式(1)で表されるジカルボン酸ジエステルである該組成物であることが好ましい。
【0019】
【化2】
【0020】
上記(E)チオールがポリチオールであることが好ましい。
上記(P)重合性ビニルモノマーが、(A)多官能(メタ)アクリレート及び(B)単官能(メタ)アクリレートを含有する該組成物であることが好ましい。
また、上記(A)多官能(メタ)アクリレートが、ウレタン(メタ)アクリレートである該組成物であることが好ましい。
上記(B)単官能(メタ)アクリレートが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上を含む該組成物であることが好ましい。
上記(F)ジカルボン酸ジエステルの含有量は、(P)重合性ビニルモノマー及び(F)ジカルボン酸ジエステルの合計100質量部とした場合に、5〜50質量部である該組成物であることが好ましい。
また、本発明によれば、該組成物を含む硬化性樹脂組成物が提供される。
また、本発明によれば、該組成物を含む接着剤組成物が提供される。
また、本発明によれば、該接着剤組成物の硬化体が提供される。
また、本発明によれば、該硬化体により被着体が被覆又は接合された複合体が提供される。
該被着体は、トリアセチルセルロース、フッ素系ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ガラス、金属からなる群から選ばれる1種以上を含む該複合体であることが好ましい。
また、本発明によれば、該接着剤組成物により被着体を貼り合わせたタッチパネル積層体が提供される。
また、本発明によれば、該接着剤組成物により被着体を貼り合わせた液晶パネル積層体が提供される。
また、本発明によれば、該タッチパネル積層体を用いたディスプレイが提供される。
また、本発明によれば、該液晶パネル積層体を用いたディスプレイが提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、深部硬化性に優れた組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明の組成物は、下記(P)、(C)〜(F)を含有する。
(P)重合性ビニルモノマー
(C)光重合開始剤
(D)酸化防止剤
(E)チオール
(F)ジカルボン酸ジエステル
【0023】
この組成によれば、例えば、タッチパネル等の表示体に使用される化粧板やアイコンシートを貼り合わせる場合、透明基板と透明基板とを貼り合わせる場合、印刷加工された部分を貼り合わせる場合に、被着体正面からでは印刷等の遮光枠により正面から可視光線若しくは紫外線が当たらない箇所を、側面からの可視光線若しくは紫外線により硬化する硬化性樹脂組成物を提供することができる。
また、この組成によれば、深部硬化性に優れた組成物を提供できるので、例えば、遮光枠の下の硬化性樹脂組成物の硬化が可能であり、接着剤の硬化不良を抑制する効果を有することができる。
【0024】
本発明の一実施形態において組成物は、上記のように(P)、(C)〜(F)を含有しているので、イソボルニル(メタ)アクリレートのような剛直な骨格のモノマーを使用しなくても、信頼性試験に耐えることが可能である。
【0025】
<(P)重合性ビニルモノマー>
(P)重合性ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリレートが好ましく、(A)多官能(メタ)アクリレート及び(B)単官能(メタ)アクリレートを含有することがより好ましい。
【0026】
<(A)多官能(メタ)アクリレート>
(A)多官能(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレートをいう。多官能(メタ)アクリレートとしては、オリゴマー/ポリマー末端又は側鎖に2個以上(メタ)アクロイル化された多官能(メタ)アクリレートのオリゴマー/ポリマー等が挙げられる。
【0027】
例えば、多官能(メタ)アクリレートのオリゴマー/ポリマーとしては、
1,2−ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本曹達社製「TEA−1000」)や、1,2−ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレートの水素添加物(例えば、1,2−ポリブタジエン骨格中の炭素−炭素結合に水素が付加した水素化ポリブタジエンの両末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレートをいう。例えば、日本曹達社製「TEAI−1000」、ダイセル・オルネクス社製「KRM−8776」、「KRM−8792」)や、1,4−ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、大阪有機化学社製「BAC−45」)や、ポリイソプレン末端(メタ)アクリレートや、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリート(例えば、日本合成社製「UV−2000B」、「UV−3000B」、「UV−7000B」、根上工業社製「KHP−11」、「KHP−17」)や、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本合成社製「UV−3700B」、「UV−6100B」)や、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、ポリブタジエン末端(メタ)ウレタンアクリレートは、分子構造の末端が(メタ)アクリレートである。
上記記載した多官能(メタ)アクリレートのオリゴマー/ポリマーの中では、効果が大きい点で、ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
また、ウレタン(メタ)アクリレートの中では、ポリブタジエン系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレートの水素添加物、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上が好ましく、ポリブタジエン系ウレタン(メタ)アクリレート及び/又はポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレートの水素添加物がより好ましく、ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレートの水素添加物が最も好ましい。
なお、ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレートの水素添加物の中では、1,2−ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレートの水素添加物が好ましい。ポリブタジエン系ウレタン(メタ)アクリレートの中では、1,4−ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0028】
ここで、ウレタン(メタ)アクリレートとは、ポリオール化合物(以後、Xで表す)と有機ポリイソシアネート化合物(以後、Yで表す)とヒドロキシ(メタ)アクリレート(以後、Zで表す)とを反応(例えば、重縮合反応)させることにより得られる、分子内にウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレートをいう。
【0029】
ポリオール化合物(X)としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ポリブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ブチルエチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、ポリカプロラクトン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、ポリグリセリン、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコールや、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドのブロック又はランダム共重合の少なくとも1種の構造を有するポリエーテルポリオール、該多価アルコール又はポリエーテルポリオールと、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アジピン酸、イソフタル酸等の多塩基酸との縮合物であるポリエステルポリオール、カプロラクトン変性ポリテトラメチレンポリオール等のカプロラクトン変性ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素化ポリブタジエンポリオール、水素化ポリイソプレンポリオール等のポリジエン系ポリオール、ポリジメチルシロキサンポリオール等のシリコーンポリオール等が挙げられる。
これらの中では、ポリオール化合物(X)として、ポリブタジエンポリオール、水素化ポリブタジエンポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールからなる群のうちの1種以上を含むことが好ましく、水素化ポリブタジエンポリオールがより好ましい。水素化ポリブタジエンポリオールの中では、式(3)を表される化合物(nは正数)が好ましい。
【化3】
【0030】
ここで、ポリブタジエン系ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオール化合物(X)がポリブタジエンポリオールである。また、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリートは、例えば、ポリオール化合物(X)がポリエステルポリオールである。また、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオール化合物(X)がポリエーテルポリオールである。
【0031】
有機ポリイソシアネート化合物(Y)としては、格別に限定される必要はないが、例えば芳香族系、脂肪族系、環式脂肪族系、脂環式系等のポリイソシアネートが使用できる。
ポリイソシアネートの中でも、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート(H−MDI)、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(クルードMDI)、変性ジフェニルメタンジイソシアネート(変性MDI)、水添化キシリレンジイソシアネート(H−XDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMXDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(m−TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)等のポリイソシアネートや、これらポリイソシアネートの三量体化合物や、これらポリイソシアネートとポリオールの反応生成物等が好適に用いられる。
以上の中で、有機ポリイソシアネート化合物(Y)としては、水添化キシリレンジイソシアネート(H−XDI)及び/又はイソホロンジイソシアネート(IPDI)が好ましく、イソホロンジイソシアネート(IPDI)がより好ましい。
【0032】
ヒドロキシ(メタ)アクリレート(Z)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピルアクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中で、ヒドロキシ(メタ)アクリレート(Z)としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上を含むことが好ましい。
【0033】
多官能(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、特に限定しないが1000〜60000が好ましく、1500〜40000がより好ましい。重量平均分子量は、下記の条件にて、溶剤としてテトラヒドロフランを用い、GPCシステム(東ソ−社製SC−8010)等を使用し、市販の標準ポリスチレンで検量線を作成して求めた。
【0034】
流速:1.0ml/min
設定温度:40℃
カラム構成:東ソー社製「TSK guardcolumn MP(×L)」6.0mmID×4.0cm1本、及び東ソー社製「TSK−GELMULTIPOREHXL−M」7.8mmID×30.0cm(理論段数16,000段)2本、計3本(全体として理論段数32,000段)、
サンプル注入量:100μl(試料液濃度1mg/ml)
送液圧力:39kg/cm
検出器:RI検出器
【0035】
<(B)単官能(メタ)アクリレート>
(B)単官能(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリロイル基を1個有する(メタ)アクリレートをいう。(B)単官能(メタ)アクリレートの中では、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとアルキル(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上が好ましく、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとアルキル(メタ)アクリレートを併用することがより好ましい。
なお、本発明の一実施形態において、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレートのような剛直な骨格のモノマーを使用しなくてもよい。なぜならば、本発明の一実施形態は、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレートを使用しなくとも、耐湿性試験において良好な結果を示すことができる。
【0036】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの中では、式(2)で表される(メタ)アクリレートが好ましい。
式(2)
Z−O−(R−O−)−H
(Zは(メタ)アクリロイル基、Rはアルキレン基、pは1〜10の整数を表す。)
また、式(2)におけるRのアルキレン基の炭素数は1〜8が好ましく、2〜6がより好ましい。
【0037】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、接着性や耐湿性の点で、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0038】
アルキル(メタ)アクリレートの中では、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アルキルエステル中、アルキル基の炭素数は、1〜16が好ましく、炭素数2〜14がより好ましく、炭素数4〜12が最も好ましく、炭素数6〜10が尚更好ましい。アルキル基は、飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。また、アルキル基は、非置換であることが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノルマルオクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、接着性や耐湿性の点で、オクチル(メタ)アクリレートが好ましく、ノルマルオクチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0039】
(P)重合性ビニルモノマーの含有量は、(P)及び(F)の合計量を100質量部とした場合に、50〜95質量部が好ましく、55〜90質量部がより好ましく、60〜80質量部が最も好ましい。(P)重合性ビニルモノマーの含有量が50質量部以上であれば、より良好な硬化性が得られ、95質量部以下であれば、より接着性の低下を抑制することができる。なお、(P)重合性ビニルモノマーの含有量は、例えば、50、51、54、55、56、59、60、61、65、69、70、71、75、79、80、81、85、89、90、91、94または、95質量部でもあってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であっても良い。
【0040】
(P)重合性ビニルモノマーが、(A)多官能(メタ)アクリレート及び(B)単官能(メタ)アクリレートを含有する場合、(A)多官能(メタ)アクリレート及び(B)単官能(メタ)アクリレートの含有量は、(A)多官能(メタ)アクリレート及び(B)単官能(メタ)アクリレートの合計100質量部中、質量比で、(A):(B)=30〜95:5〜70が好ましく、40〜90:10〜60がより好ましく、50〜70:30〜50が最も好ましい。
【0041】
(B)単官能(メタ)アクリレートが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとアルキル(メタ)アクリレートを併用する場合、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとアルキル(メタ)アクリレートの合計100質量部中、質量比で、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート:アルキル(メタ)アクリレート=5〜70:30〜95が好ましく、10〜50:50〜90がより好ましく、20〜40:60〜80が最も好ましい。
【0042】
<(C)光重合開始剤>
(C)光重合開始剤は、可視光線や紫外線の活性光線により増感させて樹脂組成物の光硬化を促進するために使用するものである。
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン及びその誘導体、ベンジル及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等のアルキルフェノン誘導体、ジエトキシアセトフェノン、4−t−ブチルトリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、p−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジフェニルジスルフィド、チオキサントン及びその誘導体、カンファーキノン、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−ブロモエチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−メチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸クロライド等のカンファーキノン誘導体、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のα−アミノアルキルフェノン誘導体、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシポスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジエトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド誘導体、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル及びオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル等が挙げられる。(C)光重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の中では、効果が大きい点で、(C)光重合開始剤は、アルキルフェノン誘導体とアシルホスフィンオキサイド誘導体からなる群のうちから選ばれる1種以上を含むことが好ましく、アルキルフェノン誘導体とアシルホスフィンオキサイド誘導体を併用することがより好ましい。
アルキルフェノン誘導体とアシルホスフィンオキサイド誘導体を併用した場合、その併用割合は、アシルホスフィンオキサイド誘導体100質量部に対して、アルキルフェノン誘導体50〜400質量部が好ましく、100〜300質量部がより好ましく、150〜250質量部が最も好ましい。
アルキルフェノン誘導体の中では、ベンジルジメチルケタールと1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンからなる群のうちから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。また、アシルホスフィンオキサイド誘導体の中では、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドとビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドからなる群のうちから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0043】
(C)光重合開始剤の含有量は、(P)及び(F)の合計量を100質量部とした場合に、0.01〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましく、0.1〜1質量部が最も好ましい。光重合開始剤の含有量が、0.01質量部以上であれば、より良好な硬化性が得られ、10質量部以下であればより良好な深部硬化性が得られる。なお、(C)光重合開始剤は、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.09、1、1.01、1.5、1.9、2、3、4、4.5、4.9、5、6、7、8、9または、10質量部でもあってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であっても良い。
【0044】
<(D)酸化防止剤>
(D)酸化防止剤は、貯蔵安定性について向上することができる。
酸化防止剤としては、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、6−tert−ブチル−4−[3−[(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]プロピル]−2−メチルフェノール、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ジターシャリーブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジターシャリーブチル−p−ベンゾキノン、ピクリン酸、クエン酸、フェノチアジン、ターシャリーブチルカテコール、2−ブチル−4−ヒドロキシアニソール及び2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール等が挙げられる。
【0045】
(D)酸化防止剤の含有量は、(P)及び(F)の合計量を100質量部とした場合に、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.005〜0.1質量部がより好ましい。酸化防止剤の含有量が、0.001質量部以上であればより硬化性樹脂組成物の熱による着色や変色が小さく、0.5質量部以下であればより良好な深部硬化性が得られる。なお、(D)酸化防止剤は、例えば、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.009、0.010、0.011、 0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.20、0.30、0.40、0.45、0.49または、0.5質量部でもあってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であっても良い。
【0046】
<(E)チオール>
(E)チオールとは、1個以上のチオール基を有する化合物をいう。チオールの中では、深部硬化性の点で、ポリチオールが好ましい。(E)ポリチオールとは、2個以上のチオール基を有する化合物をいう。ポリチオールとしては、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス[(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル]イソシアヌレート、3−メルカプトブチレート誘導体等が挙げられる。これらのポリチオールは、1種以上を使用できる。
【0047】
ポリチオールの中では、3−メルカプトブチレート誘導体が好ましい。3−メルカプトブチレート誘導体としては、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)等が挙げられる。ポリチオールの中では、2級のポリチオールが好ましい。
【0048】
(E)チオールの含有量は、(P)及び(F)の合計量を100質量部とした場合0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。(E)チオールの含有量が、(P)及び(F)の合計100質量部に対して、0.1質量部以上であればより良好な深部硬化性が得られ、10質量部以下であれば硬化性樹脂組成物の熱による着色や変色がより小さくなる。なお、(E)チオールは、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.9、1.0、2.0、3.0、4.0、4.5、4.9、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、9.9または、10質量部でもあってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であっても良い。
【0049】
<(F)ジカルボン酸ジエステル>
(F)ジカルボン酸ジエステルとしては、脂肪族二塩基酸ジエステルが好ましい。脂肪族二塩基酸ジエステルとしては、式(1)で表される化合物が好ましい。
【0050】
【化4】
【0051】
式(1)で表される化合物のR、Rは、飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。また、上記R、Rは、非置換であることが好ましい。上記R、Rは、炭素数2〜12のアルキル基が好ましく、炭素数4〜10のアルキル基がより好ましく、炭素数8のアルキル基が最も好ましい。式(1)で表される化合物のRは、飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。また上記Rは、非置換であることが好ましい。上記Rは、炭素数4〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数7〜8のアルキレン基がより好ましく、炭素数8のアルキレン基が最も好ましい。
(F)ジカルボン酸ジエステルは、例えば、深部硬化性を良好にし、粘度を調整するために使用される化合物である。(F)化学式(1)で表されるジカルボン酸ジエステルとして、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジプロピル、シュウ酸ジイソプロピル、シュウ酸ジブチル、シュウ酸ジヘキシル、シュウ酸ジオクチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジブチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジイソプロピル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジt−ブチル、コハク酸ビス(2−エチルヘキシル)、コハク酸ビス(2−エトキシエチル)、グルタル酸ジエチル、グルタル酸ジブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジt−ブチル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジオクチル、ピメリン酸ジメチル、ピメリン酸ジエチル、ピメリン酸ジイソプロピル、ピメリン酸ジブチル、スベリン酸ジメチル、スベリン酸ジエチル、スベリン酸ジプロピル、スベリン酸ジイソプロピル、アゼライン酸ジメチル、アゼライン酸ジエチル、アゼライン酸ジプロピル、アゼライン酸ジイソプロピル、アゼライン酸ジブチル、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)等が挙げられる。これらのジカルボン酸ジエステルは1種以上を使用できる。(F)ジカルボン酸ジエステルの中では、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)が最も好ましい。
【0052】
(F)ジカルボン酸ジエステルの含有量は、(P)及び(F)の合計量を100質量部とした場合に、5〜50質量部が好ましく、10〜45質量部がより好ましく、20〜40質量部が最も好ましい。(F)ジカルボン酸ジエステルの含有量は、5質量部以上であればより良好な粘度と深部硬化性が得られ、50質量部以下であればより良好な深部硬化性が得られる。なお、(F)ジカルボン酸ジエステルの含有量は、例えば、5、6、7、8、9、10、11、15、20、21、25、29、30、31、35、39、40、41、49または、50質量部でもあってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であっても良い。
【0053】
本発明の一実施形態の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、一般に使用されているアクリルゴム、ウレタンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム等の各種エラストマー、極性有機溶媒等の溶剤、増量材、補強材、可塑剤、増粘剤、染料、顔料、難燃剤、シランカップリング剤及び界面活性剤等の添加剤を使用してもよい。
【0054】
本発明の一実施形態の組成物にて接着した硬化体は、完全硬化させた後にリワーク(再利用)することが可能である。リワークの方法としては特に制限は無いが、貼り合わされた1種又は2種の被着体間に0.01〜100Nの荷重を負荷することにより被着体同士を解体し、解体後の被着体を再利用することが可能となる。
【0055】
本発明の一実施形態の組成物は、例えば、硬化性樹脂組成物であり、また、接着剤組成物として使用できる。本発明の一実施形態の組成物は、例えば、可視光線若しくは紫外線を波長365nmにおいて100mJ/cm照射された際に、3mmより大きく、好ましくは4mm以上の深部硬化が可能な組成物である。本発明の一実施形態の組成物は、例えば、可視光線若しくは紫外線を被着体の正面側より照射した後、可視光線若しくは紫外線が透過しない箇所を被着体の側面側より照射して、被着体を張り合わせることができる接着剤組成物である。
本発明の一実施形態の接着剤組成物は、例えば、可視光線若しくは紫外線を照射することによって、接着剤組成物の硬化体を得ることができる。
本発明の一実施形態の硬化体によって被着体を被覆又は接合された複合体を得えられる。また、被着体は、特に限定しないが、トリアセチルセルロース、フッ素系ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ガラス、金属からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
本発明の一実施形態の接着剤組成物を用いて、公知方法によって、被着体を貼り合わせたタッチパネル積層体を得ることができる。
また、本発明の一実施形態の接着剤組成物を用いて、公知方法によって、被着体を貼り合わせたタッチパネル積層体を得ることができる。また上記タッチパネル積層体を用いてディスプレイを得ることができる。
また、本発明の一実施形態の接着剤組成物を用いて、公知方法によって、被着体を貼り合わせた液晶パネル積層体を得ることができる。また上記液晶パネル積層体を用いてディスプレイを得ることができる。
【実施例】
【0056】
以下に、実験例をあげて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
(実験例)
特記しない限り、23℃で、実験した。表1、表2に示す組成の硬化性樹脂組成物を調製し、評価した。結果を表3、表4に示す。
【0058】
実験例に記載の硬化性樹脂組成物中の各成分としては、以下の化合物を選択した。
【0059】
但し、表のKRM−8776は、ダイセルサイテック製「KRM−8776」中に含有するウレタンアクリレートの量を記載した。表のNOAAは、ダイセルサイテック製「KRM−8776」中に含有するn−オクチルアクリレートの量を記載した。ダイセルサイテック製「KRM−8776」を使用しない場合等は、大阪有機化学社製のn−オクチルアクリレートを使用した。
【0060】
<(P)重合性ビニルモノマーの(A)多官能(メタ)アクリレート>
(A)成分の多官能(メタ)アクリレートとして、以下の化合物を選択した。
【0061】
(A−1)ポリエステル系ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業社製「KHP−11」、構造は以下の通り、ポリオール化合物は、1,4−ブタンジオールとアジピン酸との縮合物であるポリエステルポリオールと、エチレングリコールとアジピン酸との縮合物であるポリエステルポリオールとを有する化合物(1,4−ブタンジオールとアジピン酸との縮合物であるポリエステルポリオール:エチレングリコールとアジピン酸との縮合物であるポリエステルポリオール=2:3(モル比))、有機ポリイソシアネート化合物はイソホロンジイソシアネート、ヒドロキシ(メタ)アクリレートは2−ヒドロキシエチルアクリレート、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量25000)
【0062】
(A−2)ポリエステル系ウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学社製「UV−3000B」、なお構造は以下の通り、ポリオール化合物は、水素化ポリブタジエンポリオールとアジピン酸との縮合物であるポリエステルポリオール、有機ポリイソシアネート化合物はイソホロンジイソシアネート、ヒドロキシ(メタ)アクリレートは4−ヒドロキシブチルアクリレート、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量15000、水素化ポリブタジエンポリオールは式(3)で表される化合物(nは正数))
【0063】
(A−3)ポリブタジエン系ウレタンアクリレート(ダイセルサイテック製「KRM−8776」、水素化ポリブタジエン骨格を有するウレタンアクリレートである。なお、構造は以下の通り、ポリオール化合物は水素化ポリブタジエンポリオール、有機ポリイソシアネート化合物はイソホロンジイソシアネート、ヒドロキシ(メタ)アクリレートは2−ヒドロキシエチルアクリレート、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量19000、水素化ポリブタジエンポリオールは式(3)で表される化合物(nは正数)、但し希釈モノマーとしてn−オクチルアクリレートを30質量%含有)
【0064】
<(P)重合性ビニルモノマーの単官能(メタ)アクリレート>
(B)成分の単官能(メタ)アクリレートとして、以下の化合物を選択した。
(B−1)ラウリルアクリレート(大阪有機化学社製「LA」)
(B−2)2−ヒドロキシブチルアクリレート(共栄社化学社製「HOB−A」)
(B−3)n−オクチルアクリレート(以下「NOAA」と略す)
【0065】
<(C)光重合開始剤>
(C)成分の、光重合開始剤として、以下の化合物を選択した。
(C−1)1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「Irgacure184」、以下「I−184」と略す)
(C−2)2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製「LucirinTPO」、以下「TPO」と略す)
【0066】
<(D)酸化防止剤>
(D)成分の酸化防止剤として、以下の化合物を選択した。
(D−1)6−tert−ブチル−4−[3−[(2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]プロピル]−2−メチルフェノール(住友化学工業社製「スミライザーGP」)(以下「GP」と略す)
【0067】
<(E)チオール>
チオール化合物として、以下の化合物を選択した。
(E−1)ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(昭和電工社製「カレンズMT PE1」)(以下「MT−PE1」と略す)
(E−2)ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(SC有機化学製「PBMP」)
(E−3)1−ドデカンチオール(シグマ・アルドリッチ社製「DDT」)
【0068】
<(F)ジカルボン酸ジエステル>
(F)について式(1)で表されるジカルボン酸ジエステルとして、以下の化合物を選択した。
(F−1)セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)(新日本理化社製「サンソサイザーDOS」)(以下「DOS」と略す)
(F−2)セバシン酸ジブチル(和光純薬社製)(以下「DBS」と略す)
(F−3)アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)(和光純薬社製)(以下「DOZ」と略す)
(F−4)アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)(和光純薬社製)(以下「DOA」と略す)
【0069】
各種物性は、次のように測定した。
【0070】
〔光硬化性〕
温度23℃で測定した。光硬化性に関しては、テンパックスガラス(幅25mm×長さ25mm×厚さ2mm)の表面に硬化性樹脂組成物を厚み0.1mmになるように塗布した。その後、無電極放電ランプを使用したフュージョン社製硬化装置を用い、波長365nmのUV光を積算光量2000mJ/cmの条件にて照射し、硬化させた。
硬化率は、FT−IRを使用し、以下の式により算出した。炭素と炭素の二重結合の吸収スペクトルは、1600cm−1付近のピークを用いた。
【0071】
(硬化率)=100−(硬化後の、炭素と炭素の二重結合の吸収スペクトルの強度)/(硬化前の、炭素と炭素の二重結合の吸収スペクトルの強度)×100(%)
【0072】
〔硬化収縮率〕
比重瓶に硬化性樹脂組成物を充填し、大気中での質量及び純水中での質量を計測し、液比重を算出した。更に硬化性樹脂組成物を〔光硬化性〕に記載の方法で硬化し、幅25mm×長さ25mm×厚さ2mmの硬化物を作製し、大気中での質量及び純水中での質量を計測し、硬化物比重を算出した。液比重及び硬化物比重の比率より硬化収縮率を算出した。
硬化収縮率=((硬化物比重−液比重)/硬化物比重)×100(%)
【0073】
〔深部硬化性〕
直径5mmφの穴の開いた長さ20mm黒チューブに、硬化性樹脂組成物を充填し、上部からブラックライトにて1mW/cm(365nm)の光を100秒間照射した(積算光量は100mJ/cm)。その後、黒チューブから硬化物を取り出し、未硬化部分を取り除き、硬化している部分の厚みをマイクロメーターで測定した。
【0074】
〔ポリエチレンテレフタレート(PET)接着性評価(ポリエチレンテレフタレート試験片間の剥離接着強さ)〕
2軸延伸PETフィルム(ルミラーT60、平均厚さ190μm、東レ社製)の試験片(幅50mm×長さ10mm×厚さ0.19mm)同士を、硬化性樹脂組成物を接着剤組成物として用いて、接着層の厚み30μmで接着面積を縦40mm×横10mmとして接着させた。光照射による硬化後、接着剤組成物で接着した該試験片の、密着されていない2箇所のフィルム端部を引っ張ることで、フィルム同士が密着された部分を剥離させて、初期の180°剥離接着強さを測定した。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。剥離接着強さ(単位:N/cm)は、引張試験器を用いて温度23℃、湿度50%の環境下で引張速度50mm/分で測定した。
【0075】
〔ガラス接着性評価(耐熱ガラス試験片間の引張接着強さ)〕
耐熱ガラス試験片(幅25mm×長さ25mm×厚さ2.0mm)同士を、厚み80μm×幅11.5mm×長さ25mmのテフロン(登録商標)テープをスペーサーとして用い、硬化性樹脂組成物を接着剤組成物として用いて、接着させた(接着面積3cm)。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。上記条件にて接着剤組成物を硬化させた後、更に、試験片の両面に電気化学工業社製接着剤組成物「G−55」を使用し、亜鉛メッキ鋼板(幅100mm×長さ25mm×厚さ2.0mm、エンジニアリングテストサービス社製)を接着させた。硬化後、接着剤組成物で接着した該試験片を用いて、亜鉛メッキ鋼板をチャックして、初期の引張剪断接着強さを測定した。引っ張り剪断接着強さ(単位:MPa)は、引張試験器を用いて温度23℃、湿度50%の環境下で引張速度10mm/分で測定した。
【0076】
〔シクロオレフィンポリマー(COP)接着性評価(シクロオレフィンポリマー試験片間の剥離接着強さ)〕
COPフィルム(ZEONOR、平均厚さ40μm、日本ゼオン社製)の試験片(幅50mm×長さ10mm×厚さ0.04mm)同士を、硬化性樹脂組成物を接着剤組成物として用いて、接着層の厚み10μmで接着面積を縦40mm×横10mmとして接着させた。光照射による硬化後、接着剤で接着した該試験片の、密着されていない2箇所のフィルム端部を引っ張ることで、フィルム同士が密着された部分を剥離させて、初期の180°剥離接着強さを測定した。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。剥離接着強さ(単位:N/cm)は、引張試験器を用いて温度23℃、湿度50%の環境下で引張速度50mm/分で測定した。
【0077】
〔トリアセチルセルロース接着性評価(トリアセチルセルロース試験片間の剥離接着強さ)〕
トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(平均厚さ40μm、富士フィルム社製)の試験片(幅50mm×長さ10mm×厚さ0.04mm)同士を、硬化性樹脂組成物を接着剤組成物として用いて、接着層の厚み10μmで接着面積を縦40mm×横10mmとして接着させた。接着剤組成物で接着した該試験片の、密着されていない2箇所のフィルム端部を引っ張ることで、フィルム同士が密着された部分を剥離させて、初期の180°剥離接着強さを測定した。光照射による硬化後、接着剤組成物で接着した該試験片の、密着されていない2箇所のフィルム端部を引っ張ることで、フィルム同士が密着された部分を剥離させて、初期の180°剥離接着強さを測定した。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。剥離接着強さ(単位:N/cm)は、引張試験器を用いて温度23℃、湿度50%の環境下で引張速度50mm/分で測定した。
【0078】
〔フッ素系ポリマー接着性評価(フッ素ポリマー試験片間の剥離接着強さ)〕
PVDF(Polyvinylidene fluoride)フィルム(平均厚さ40μm、電気化学工業社製「DXフィルム」)の試験片(幅50mm×長さ10mm×厚さ0.04mm)同士を、硬化性樹脂組成物を接着剤組成物として用いて、接着層の厚み10μmで接着面積を縦40mm×横10mmとして接着させた。接着剤組成物で接着した該試験片の、密着されていない2箇所のフィルム端部を引っ張ることで、フィルム同士が密着された部分を剥離させて、初期の180°剥離接着強さを測定した。光照射による硬化後、接着剤組成物で接着した該試験片の、密着されていない2箇所のフィルム端部を引っ張ることで、フィルム同士が密着された部分を剥離させて、初期の180°剥離接着強さを測定した。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。剥離接着強さ(単位:N/cm)は、引張試験器を用いて温度23℃、湿度50%の環境下で引張速度50mm/分で測定した。
【0079】
〔ポリカーボネート接着性評価(ポリカーボネート試験片間の引張接着強さ)〕
ポリカーボネート(帝人社製「パンライト」)試験片(幅25mm×長さ25mm×厚さ2.0mm)同士を、厚み80μm×幅12.5mm×長さ25mmのテフロン(登録商標)テープをスペーサーとして用い、硬化性樹脂組成物を接着剤組成物として用いて、接着させた(接着面積3cm)。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。引っ張り剪断接着強さ(単位:MPa)は、引張試験器を用いて温度23℃、湿度50%の環境下で引張速度10mm/分で測定した。
【0080】
〔耐湿熱性評価(高温高湿暴露後の耐熱ガラス試験片間の引張接着強さ)〕
テンパックス(登録商標)ガラス(幅25mm×長さ25mm×厚さ2mm)同士を、硬化性樹脂組成物を接着剤組成物として用いて、接着層の厚み100μmで接着面積を1.0cmとして接着させ、硬化させた。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。硬化後、接着剤組成物で接着した該試験片を、恒温恒湿槽を用いて、温度85℃、相対湿度85%の環境下に1000時間暴露した。暴露後の試験片を用いて、引っ張り剪断接着強さを測定した。引っ張り剪断接着強さ(単位:MPa)は、引張試験器を用いて温度23℃、湿度50%の環境下で引張速度10mm/分で測定した。
【0081】
〔耐湿熱性評価(外観観察(面精度変化と黄変度))〕
テンパックス(登録商標)ガラス(幅25mm×長さ25mm×厚さ2mm)同士を、硬化性樹脂組成物を接着剤組成物として用いて、接着層の厚み100μmで接着面積を1.0cmとして接着させ、硬化させた。光照射条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。硬化後、接着剤組成物で接着した該試験片を、恒温恒湿槽を用いて、温度85℃、相対湿度85%の環境下に1000時間暴露した。暴露後、接着剤組成物で接着した該試験片のΔb値を、カラー測定装置(SHIMADZU社製「UV−VISIBLE SPECTROPOHOTOMETER」にて測定し、黄変度とした。暴露後、接着部位の外観を目視で観察し、面精度変化として寸法変化や反り等しているか否かと黄変しているか否かを調べた。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
実験例から、以下のことが判る。本発明の実施例に相当する硬化性樹脂組成物は、深部硬化性に優れている。従って、例えば、光を遮光枠の斜め方向や横方向から照射する場合であっても、遮光枠下の硬化性樹脂組成物を深部まで硬化することが可能である。
さらに本発明の実施例に相当する硬化性樹脂組成物は、遮光枠の下でも、微弱な光(例えば、積算光量1000〜3000mJ/cmの光)で深部まで硬化することが可能である。
本発明の実施例に相当する硬化性樹脂組成物の実験例は、硬化収縮率が小さいので、耐湿熱性試験後の寸法変化や反り等の面精度変化が見られなかった。実験例6は、(E)の成分におけるチオール基の数が1個のため、実験例2や実験例3のポリチオールを用いた硬化性樹脂組成物より深部硬化性が小さかった。
本発明の実施例に相当する硬化性樹脂組成物は、耐熱試験後の着色や変色、耐湿試験後の強度低下といった問題が起こらなかった。