【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空調システムの特徴構成は、
室外空間から取り込んだ空気を室内空間へ供給する給気通路と、
当該給気通路へ室外空間から取り込んだ空気を通流させる給気手段と、
室内空間から取り出した空気を室外空間へ排気する排気通路と、
当該排気通路へ室内空間から取り出した空気を通流させる排気手段と、
通過する吸着空気の水分を吸着すると共に通過する再生空気へ水分を脱着する調湿部と、通過する冷却空気にて前記調湿部の吸着に伴う吸着熱を吸収する冷却部とを、前記調湿部にて水分を吸着しているときに前記冷却部にて吸着熱を吸収可能に備えた調湿素子を一対備えた空調システムであって、
室外空間から取り込んだ空気を室外空間へ送り出す作用通路と、
前記作用通路へ室外空間から取り出した空気を通流させる作用空気供給手段と、
二流体の顕熱を熱交換させる顕熱熱交換部と、
排熱を保有する熱媒との熱交換により空気を加熱する加熱部とを備え、
一方側の前記調湿素子への空気の通流状態と、他方側の前記調湿素子の空気の通流状態とを互いに切り換え可能な切換機構を備え、
前記切換機構が、
前記給気通路を、室外空間から取り込んだ空気が、吸着空気として一方側の前記調湿素子の前記調湿部を通流した後に、前記顕熱熱交換部を通流する状態とし、
前記排気通路を、室内空間から取り出した空気が、前記顕熱熱交換部及び前記加熱部を記載の順に通流した後に、再生空気として他方側の前記調湿素子の前記調湿部を通流する状態とし、
前記作用通路を、室外空間から取り込んだ空気が、冷却空気として一方側の前記調湿素子の前記冷却部を通流する状態とする第1通流状態と、
前記給気通路を、室外空間から取り込んだ空気が、吸着空気として他方側の前記調湿素子の前記調湿部を通流した後に、前記顕熱熱交換部を通流する状態とし、
前記排気通路を、室内空間から取り出した空気が、前記顕熱熱交換部及び前記加熱部を記載の順に通流した後に、再生空気として一方側の前記調湿素子の前記調湿部を通流する状態とし、
前記作用通路を、室外空間から取り込んだ空気が、冷却空気として他方側の前記調湿素子の前記冷却部を通流する状態とする第2通流状態とを、切り換えると共に、
前記第1通流状態から前記第2通流状態に切り換える際に、前記第1通流状態と前記第2通流状態との間において、前記作用通路を、室外空間から取り込んだ空気が、前記冷却空気として他方側の前記調湿素子の前記冷却部を通流する状態とする第1遷移状態に切り換え、
前記第2通流状態から前記第1通流状態に切り換える際に、前記第2通流状態と前記第1通流状態との間において、前記作用通路を、室外空間から取り込んだ空気が、前記冷却空気として一方側の前記調湿素子の前記冷却部を通流する状態とする第2遷移状態に切り換える点にある。
【0009】
例えば、1つの調湿素子に着目すると、吸着空気と冷却空気とを通流させる第1通流状態と、再生空気を通流させる第2通流状態とで切り換えが行われた場合、第2通流状態が終了した直後は調湿素子の温度が高いため、当該温度が低下するまでは調湿素子の吸着能力が十分に発揮できず、除湿効果が低下する。しかしながら、上述した特徴構成とすれば、第1通流状態から第2通流状態に切り換える際に、第1通流状態と第2通流状態との間において第1遷移状態を設け、第2通流状態から第1通流状態に切り換える際に、第2通流状態と第1通流状態との間において第2遷移状態を設けることにより、夫々の吸湿素子に対して吸着空気と冷却空気との双方を通流させる前に冷却空気で予備的に冷却することができる。このため、吸着空気の通流開始直後から調湿素子の吸着能力を活かすことができるので、除湿効果の低下を抑制できる。したがって、本空調システムによれば、迅速に温湿度の調整を行うことが可能となる。
【0010】
また、上記特徴構成によれば、空冷式のデシカント素子として一対の調湿素子を備えた構成を採用しており、当該一対の調湿素子で、吸湿側として働く調湿素子では、その調湿部を通過する空気の湿分を吸着するときに冷却部にて吸着熱を吸熱するから、例えば、一対の調湿素子で、被再生側の調湿素子へ供給される再生空気の温度が比較的低い場合であっても、高い除湿能力を発揮できる。
この様な構成に加え、排熱を保有する熱媒との熱交換により空気を加熱する加熱部が、被再生側の調湿素子へ供給される再生空気を加熱するように構成されているから、例えば、当該加熱部へ、排熱として豊富に存在する中温(例えば、50℃以上70℃以下、より詳しくは60℃程度)の熱媒を供給して、被再生側の調湿素子を良好に再生できる。
尚、中温の熱媒(例えば、成層貯湯される貯湯槽の中間部に貯湯される湯水)は、従来有効に使われずに捨てられていた場合が多かった点から考えると、当該構成によれば、加熱部に対する入力熱量を零とみなすことができ、この場合には、実質的な意味でのCOPを向上できているとみなすことができる。
また、除湿側の調湿素子にて除湿された後の空気は、更に、顕熱熱交換部にて、夏場においては室外空気よりも温度が低い場合が多い室内空気と熱交換して冷却されるから、低湿・低温の空気を、空調空気として、室内空間へ供給できる。
このような構成にあっては、消費電力が大きく且つ機械的な耐久性が問題となる場合があるヒートポンプ装置を備えない構成とでき、豊富に存在する中温の排熱を有効に利用できつつ、電力の使用を十分に抑制して、経済性を確保しつつ、実質的な意味でのCOPを向上し得る空調システムを実現できる。
【0011】
また、前記切換機構は、
前記第1遷移状態において、前記給気通路を、室外空間から取り込んだ空気が、前記吸着空気として一方側の前記調湿素子の前記調湿部を通流した後に、前記顕熱熱交換部を通流する状態とし、
前記第2遷移状態において、前記給気通路を、室外空間から取り込んだ空気が、前記吸着空気として他方側の前記調湿素子の前記調湿部を通流した後に、前記顕熱熱交換部を通流する状態とすると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、他方側の吸湿素子を予備的に冷却する第1遷移状態では、一方側の調湿素子に吸着空気を通流させ、一方側の吸湿素子を予備的に冷却する第2遷移状態では、他方側の調湿素子に吸着空気を通流させることができる。したがって、第1遷移状態及び第2遷移状態においても継続して除湿を行って、空調システムの除湿能力をより高めることが可能となる。
【0013】
また、前記第1遷移状態及び前記第2遷移状態は、前記第1通流状態及び前記第2通流状態の期間の半分の期間であると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、第1遷移状態及び第2遷移状態において、吸湿素子を予備的に冷却するにあたり、冷却効果を高めることができる。したがって、吸湿素子に冷却空気を通流させた際に、吸湿素子を十分に冷却することが可能となる。
【0015】
また、前記加熱部は、前記給気通路にて前記顕熱熱交換部へ導かれる空気の温度よりも高く、且つ排熱として有効に利用される排熱利用下限閾値より低い温度の熱媒を、空気と熱交換するように構成されていると好適である。
【0016】
このような構成とすれば、加熱部は、給気通路にて顕熱熱交換部へ導かれる空気の温度よりも高く、且つ排熱として有効に利用される排熱利用下限閾値温度より低い温度の熱媒を、空気と熱交換するように構成されているから、加熱部では、顕熱熱交換部にて給気通路から導かれる空気と熱交換した空気を良好に加熱できる。また、排熱として有効に利用される排熱利用下限閾値(例えば、65℃程度)より低い温度の熱媒を用いて空気を加熱するから、これまで、排熱として有効に利用されない場合が多かった温度の熱媒を用いて空気を加熱し、当該加熱された空気により、被再生側の調湿素子を再生できる。
【0017】
また、前記加熱部は、湯水を成層貯湯する貯湯槽の下方領域と上方領域との間の中間領域から取り出される湯水を熱媒として、空気と熱交換するように構成されていると好適である。
【0018】
このような構成とすれば、加熱部へ熱媒として導かれる湯水を、成層貯湯される貯湯槽の中間領域から取り出す構成を採用するから、従来、排熱として豊富に存在すると共にその利用先が限定されていた中温の湯水を積極的に取り出して、本発明の空調システムの熱源として有効に利用できる。
【0019】
また、前記作用通路は、前記給気通路の最上流部位から分岐した分岐通路であり、当該分岐通路は、前記排気通路で前記排気手段の上流側に接続される通路であり、
前記作用空気供給手段と前記排気手段とを、単一のファンから構成すると好適である。
【0020】
このような構成とすれば、作用通路を、給気通路の最上流部位から分岐した分岐通路として構成し、当該分岐通路を、排気通路で排気手段の上流側に接続される通路として構成することで、排気通路の排気手段を働かせることにより、当該作用通路に空気を通流させることができる。
これにより、作用空気供給手段と排気手段とを単一のファンから構成することができる。
【0021】
また、前記空調システムは、少なくとも、一対の前記調湿素子と、前記加熱部とを第1ユニットとして構成し、
少なくとも、前記顕熱熱交換部を前記第1ユニットとは別の第2ユニットとして構成していると好適である。
【0022】
このような構成とすれば、例えば、第1ユニットと第2ユニットとを各別に配設することができるから、第1ユニットを室外ユニットとして室外に配設し、第2ユニットを室内の床下等に配置するような構成を採用できる。
尚、上記特徴構成にあっては、給気手段、排気手段、及び作用空気供給手段は、第1ユニットと第2ユニットの何れに設けていても構わない。