特許第6594239号(P6594239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594239
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】導電性ローラ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   G03G15/00 551
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-57327(P2016-57327)
(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公開番号】特開2017-173439(P2017-173439A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】高梨 寛之
【審査官】 岡▲崎▼ 輝雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−164844(JP,A)
【文献】 特開2005−249851(JP,A)
【文献】 特開2007−304289(JP,A)
【文献】 特開2012−215726(JP,A)
【文献】 特開平04−321082(JP,A)
【文献】 特開2005−178021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、
前記軸体の外周面上にシリコーン系プライマーによって接合されたシリコーン弾性層と、
を備え、
前記軸体は、前記シリコーン弾性層が設けられた領域において、両端部から中央部に向かって外径が漸次減少しており、
前記シリコーン弾性層は、両端部から中央部に向かって外径が漸次減少しており、外周面における両端部間の距離が内周面における両端部間の距離より小さい、
導電性ローラ。
【請求項2】
両端部から中央部に向かって外径が漸次減少している領域を有する軸体の、前記領域をシリコーン系プライマーで表面処理する工程と、
前記軸体を、筒状の成形金型内に設置する工程と、
前記成形金型内に、シリコーンゴム組成物を充填する工程と、
前記シリコーンゴム組成物を硬化して、前記軸体の前記領域上にシリコーン弾性層を形成する工程と、
を備え、
前記シリコーン弾性層は、両端部から中央部に向かって外径が漸次減少しており、外周面における両端部間の距離が内周面における両端部間の距離より小さい、
導電性ローラの製造方法。
【請求項3】
前記シリコーン弾性層の外周面上に設けられた被覆層を更に備える、請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項4】
前記シリコーン弾性層の外周面上に被覆層を形成する工程を更に備える、請求項2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ローラ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンター、複写機、ファクシミリ、これらの複合機等には、例えば電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。また、近年、画像形成装置に用いられる導電性ローラにおいては、その位置によって外径が異なる変形ローラの使用が検討されている。例えば、特許文献1には、外径が両端部から中央部に向かって漸次増大するクラウン形状の芯金を用いて、クラウン形状の帯電ローラを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−242659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のような、加熱された弾性体材料を冷却して芯金の周囲に固着させる方法では、冷却の度合いによって弾性体材料の収縮速度が異なり、弾性層内に応力ひずみが生じて均一な弾性層を得ることが困難となる場合がある。また、芯金との接面において弾性体材料の収縮によって空隙が生じて、絶縁箇所が生じるおそれがある。
【0005】
また、円筒状のローラを研磨して外形差を設けることも考えられるが、この場合、弾性層表面の均一な仕上げが困難であったり、工程数の増加によて製造効率が低下する等の問題がある。
【0006】
本発明の目的の一つは、研磨等の加工によらず外形差を有する導電性ローラを製造する方法であって、軸体と弾性層との間に空隙が生じることを十分に防止し、均質な弾性層を得ることが可能な導電性ローラの製造方法を提供することにある。また、本発明の目的の一つは、上記製造方法によって製造される、高品質な導電性ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、軸体と、軸体の外周面上にシリコーン系プライマーによって接合されたシリコーン弾性層と、を備える導電性ローラに関する。導電性ローラの一態様において、軸体は、シリコーン弾性層が設けられた領域において両端部から中央部に向かって外径が漸次減少している。また、導電性ローラの一態様において、シリコーン弾性層は、両端部から中央部に向かって外径が漸次減少しており、外周面における両端部間の距離が内周面における両端部間の距離より小さい。
【0008】
本発明の他の一側面は、両端部から中央部に向かって外径が漸次減少している領域を有する軸体の、上記領域をシリコーン系プライマーで表面処理する工程(前処理工程)と、軸体を、筒状の成形金型内に設置する工程(設置工程)と、成形金型内に、シリコーンゴム組成物を充填する工程(充填工程)と、シリコーンゴム組成物を硬化して、軸体の上記領域上にシリコーン弾性層を形成する工程(硬化工程)と、を備える、導電性ローラの製造方法に関する。導電性ローラの製造方法の一態様において、シリコーン弾性層は、両端部から中央部に向かって外径が漸次減少しており、外周面における両端部間の距離が内周面における両端部間の距離より小さい。
【0009】
従来の方法では、弾性体材料は、冷却による収縮を経て芯金の周囲に固着される。このとき、冷却度合いが均一でないと、過度に冷却された箇所の弾性体材料が収縮して周囲の弾性体材料を引き寄せてしまい、芯金との間に空隙を生じたり、弾性層の形成位置にずれが生じたりする場合がある。これに対して、上記製造方法では、硬化工程の初期において軸体とゴム材料とが接着するため、シリコーン弾性層が形成される過程で、軸体とゴム材料との界面に空隙が生じることが十分に防止される。また、ゴム材料の収縮応力がかかっても、シリコーン弾性層の位置ずれ等が生じることが避けられ、均質なシリコーン弾性層が得られる。
【0010】
また、上記製造方法で製造された導電性ローラにおいて、シリコーン弾性層は、ゴム材料の軸方向の収縮応力によって、外周面における両端部間の距離が、内周面における両端部間の距離より小さくなっている。シリコーン弾性層の内周面では、シリコーン系プライマーにより軸体と接合されているため、ゴム材料の軸方向の収縮応力がかかっても軸方向に収縮せずに両端部間の距離が維持される。一方、シリコーン弾性層の外周面では、ゴム材料の軸方向の収縮応力によって僅かに収縮し、両端部間の距離が短くなっている。このような導電性ローラでは、印字領域となる外周面中央部が安定し、画質が向上する傾向がある。
【0011】
一態様において、導電性ローラは、シリコーン弾性層の外周面上に設けられた被覆層を更に備えていてよい。
【0012】
また、一態様において、導電性ローラの製造方法は、シリコーン弾性層の外周面上に被覆層を形成する工程を更に備えていてよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、研磨等の加工によらず外形差を有する導電性ローラを製造する方法であって、軸体と弾性層との間に空隙が生じることを十分に防止し、均質な弾性層を得ることが可能な導電性ローラの製造方法が提供される。また、本発明によれば、上記製造方法によって製造される、高品質な導電性ローラが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、導電性ローラの一実施形態を示す正面図である。
図2図2は、図1のII−II線に沿った断面を示す断面図である。
図3図3は、導電性ローラの製造方法の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は理解を容易にするため一部を誇張して描いており、寸法比率等は図面に記載のものに限定されるものではない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る導電性ローラの一態様を示す正面図であり、図2図1のII−II線に沿った断面を示す断面図である。図1及び図2に示した導電性ローラ1は、軸体2と、軸体2の外周面上に設けられたシリコーン弾性層3とを備えている。また、導電性ローラ1においては、シリコーン弾性層3の外周面上に被覆層4が設けられている。導電性ローラ1において、軸体2とシリコーン弾性層3とはシリコーン系プライマーによって接合されている。導電性ローラ1は、軸体2とシリコーン弾性層3との間にシリコーン系プライマー由来の接着層(図示せず)を備えていてもよい。
【0017】
軸体2は、シリコーン弾性層3が設けられた領域において、軸方向の両端部から中央部に向かって外径が漸次減少している。軸体2は導電性を有することが好ましい。軸体2の構成材料は特に限定されず、例えば、軸体2は、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属材料から構成された芯金であってよい。また、軸体2は、例えば、樹脂材料からなる芯体と、芯体上に設けられたメッキ層とを備えるものであってもよい。
【0018】
軸体2の外径及び軸方向の長さは、導電性ローラ1が装着される画像形成装置に応じて調整されてよい。軸体2の、シリコーン弾性層3が設けられた領域における最大外径は、例えば6〜10mmであってよく、7〜10mmであってよい。また、軸体2の、シリコーン弾性層3が設けられた領域における最小外径は、例えば4〜9mmであってよく、5〜8mmであってよい。軸体2の軸方向の長さは、例えば220〜310mmであってよい。
【0019】
シリコーン弾性層3は、両端部から中央部に向かって外径が漸次減少している。シリコーン弾性層3の外径は、導電性ローラ1が装着される画像形成装置に応じて調整されてよい。シリコーン弾性層3の最小外径は、例えば10〜20mmであってよく、10〜16mmであってよい。シリコーン弾性層3の最大外径は、最小外径より大きければよい。例えば、シリコーン弾性層3における最大外径と最小外径との差は、10μm以上であっても20μm以上であってもよく、200μm以下であっても100μm以下であってもよい。
【0020】
シリコーン弾性層3は、シリコーンゴムの軸方向の収縮応力により、外周面における両端部間の距離L1が内周面における両端部間の距離L2より小さくなっている。距離L1と距離L2との差は、例えば10〜150μmであってよく、20〜120μmであってよい。
【0021】
シリコーン弾性層3は、シリコーンゴムを含むゴム材料で構成されていてよい。ゴム材料は、例えば、シリコーンゴム組成物の硬化物であってよい。シリコーンゴム組成物は、例えば、付加硬化型液状シリコーンゴム組成物、付加硬化型ミラブルシリコーンゴム組成物、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物等であってよい。
【0022】
シリコーンゴム組成物は、シリコーン弾性層3に導電性を付与するための導電性付与剤を含んでいてよい。導電性付与剤としては、例えば、導電性カーボン、ゴム用カーボン類、金属、導電性ポリマー粒子等の導電性粉末が挙げられる。また、シリコーンゴム組成物は、各種添加剤をさらに含んでいてよい。添加剤としては、例えば、鎖延長剤及び架橋剤等の助剤、触媒、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。
【0023】
一態様において、シリコーンゴム組成物は付加硬化型液状シリコーンゴム組成物であることが好ましい。付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の好適な一態様としては、一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンと、一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、を含むものが挙げられる。また、本態様において、付加硬化型液状シリコーンゴム組成物は、導電性付与剤を更に含んでいてよく、無機質充填材を更に含んでいてよく、付加反応触媒を更に含んでいてよい。無機充填材の平均粒径は、例えば1〜30μmであってよく、無機充填材の嵩密度は、例えば0.1〜0.5g/cmであってよい。
【0024】
シリコーン弾性層3のJIS A硬度は、例えば20〜60であってよく、25〜50であることが好ましい。本明細書中、ゴム材料のJIS A硬度は、JIS K6301 1995に準拠して測定される値を示す。
【0025】
シリコーン弾性層3の厚さは、軸方向に沿って変化していてよい。例えば、シリコーン弾性層3の厚さは、1〜8mmの範囲であってよく、2〜4mmの範囲であることが好ましい。
【0026】
シリコーン弾性層3は、軸体2とシリコーン系プライマーによって接合されている。導電性ローラ1は、軸体2とシリコーン弾性層3との間にシリコーン系プライマー由来の接着層(図示せず)を備えていてもよい。導電性ローラ1において、シリコーン系プライマーは、ゴム材料と一体になってシリコーン弾性層3を構成していてもよい。
【0027】
導電性ローラ1は、シリコーン弾性層3の外周面上に被覆層4を更に備えている。導電性ローラ1は被覆層4を必ずしも有している必要はなく、被覆層4は、導電性ローラ1が装着される画像形成装置の態様に応じて適宜形成されてよい。
【0028】
被覆層4は、例えばウレタン樹脂を含む層であってよい。このような被覆層4は、例えば、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を含有する塗布液をシリコーン弾性層3上に塗布し、硬化させることで形成できる。
【0029】
被覆層4は、上記のものに限定されず、例えば、ウレタンシリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ブチラール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素ゴム、フッ素樹脂、フッ素ゴムとフッ素樹脂の混合物、シリコーン樹脂、ニトリルゴム、ウレタンゴム等を含む層であってもよく、これらのうち2種以上を含む層であってもよい。
【0030】
また、被覆層4は、ローラ表面の粗面化のために、粗さ形成用粒子を更に含んでいてよい。粗さ形成用粒子としては、無機粒子、樹脂粒子等を用いることができ、樹脂粒子が特に好適である。樹脂粒子は、例えば、ウレタン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子等であってよく、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合せて用いてよい。
【0031】
被覆層4の厚さは、例えば0.1〜50μmであってよく、0.2〜40μmであってよい。
【0032】
導電性ローラ1において、シリコーン弾性層3は、ゴム材料の軸方向の収縮応力によって、外周面における両端部間の距離が、内周面における両端部間の距離より小さくなっている。シリコーン弾性層3の内周面では、シリコーン系プライマーにより軸体2と接合されているため、ゴム材料の軸方向の収縮応力がかかっても軸方向に収縮せずに両端部間の距離が維持される。一方、シリコーン弾性層3の外周面では、ゴム材料の軸方向の収縮応力によって僅かに収縮し、両端部間の距離が短くなっている。このようなシリコーン弾性層3は、内周面側が外周面側より拡がっていることから、軸方向へのせん断応力に対する耐久性が高く、長期使用による劣化が十分に抑制される。
【0033】
以下に、導電性ローラ1の製造方法の好適な一実施形態について説明する。図3は、導電性ローラの製造方法の一実施形態を示す概略図である。
【0034】
本実施形態に係る製造方法は、両端部から中央部に向かって外径が漸次減少している領域を有する軸体2の、前記領域をシリコーン系プライマーで表面処理する工程(前処理工程)と、軸体2を筒状の成形金型6内に設置する工程(設置工程)と、成形金型6内にシリコーンゴム組成物5を充填する工程(充填工程)と、シリコーンゴム組成物5を硬化して、軸体2上にシリコーン弾性層3を形成する工程(硬化工程)と、を備えている。また、本実施形態に係る製造方法は、シリコーン弾性層3の外周面上に被覆層4を形成する工程を更に備えていてもよい。
【0035】
本実施形態に係る製造方法において、前処理工程と設置工程の順番は特に制限されない。例えば、前処理工程を経た軸体2を設置工程に供して、成形金型6内に設置してよい。また、設置工程で成形金型6内に設置された軸体2に対して、前処理工程を実施してもよい。
【0036】
前処理工程では、シリコーン系プライマーによって軸体2を表面処理する。表面処理する領域は、シリコーン弾性層3が形成される領域であってよい。シリコーン系プライマーとしては、例えば、プライマーNo.16、プライマーNo.18B(いずれも信越化学工業株式会社製)等を好適に用いることができる。表面処理は、例えば、シリコーン系プライマーを軸体2上に塗布することによって実施してよい。表面処理によって、軸体2上にはシリコーン系プライマーを含むプライマー層11が形成されていてよい。
【0037】
設置工程では、軸体2を成形金型6内に設置する。成形金型6は、円筒状の金型本体8と、金型本体8の上下で軸体2を保持する第一のフランジ7及び第二のフランジ9とから構成されている。また、成形金型6の第一のフランジ7には、シリコーンゴム組成物を注入するための注入口10が設けられている。成形金型6により、軸体2の外周面に沿った円筒状の成形室が設けられ、ここにシリコーンゴム組成物5が注入されることで、シリコーン弾性層3が形成される。なお、本実施形態に係る製造方法において、成形金型は、軸体2の外周面に沿って円筒状の成形室を形成できるものであってよく、上記態様に限定されない。
【0038】
充填工程では、成形金型6内にシリコーンゴム組成物5が注入され、成形金型6内の円筒状の成形室がシリコーンゴム組成物5で充填される。シリコーンゴム組成物5の注入方法は特に限定されず、例えば注入ポンプ等により加圧して注入してよい。
【0039】
硬化工程では、成形金型6内に充填されたシリコーンゴム組成物5を硬化する。硬化工程は、例えば、シリコーンゴム組成物5を加熱して硬化させる工程であってよい。加熱温度は、シリコーンゴム組成物5の種類に応じて適宜調整してよく、例えば、100〜200℃であってよい。硬化工程において、プライマー層11は、シリコーンゴム組成物5と反応してよく、シリコーンゴム組成物5の硬化物と一体となってシリコーン弾性層3を構成してよい。
【0040】
硬化工程では、シリコーンゴム組成物5の硬化により、シリコーン弾性層3が形成される。硬化工程では、シリコーンゴム組成物5の硬化によって収縮が生じ、成形金型6の成形室の形状より小さいシリコーン弾性層3が形成される。
【0041】
径方向において、軸体2の外径が大きい箇所はシリコーンゴム組成物5の量が相対的に少なく、軸体2の外径が小さい箇所はシリコーンゴム組成物5の量が相対的に多い。このため、軸体2の外径が大きい箇所より、軸体2の外径が小さい箇所でより硬化収縮による収縮量が大きくなる。これにより、上述したシリコーン弾性層3の外径形状が形成される。
【0042】
軸方向においては、外周面側ではゴム材料の収縮応力を受けて軸方向に縮むが、軸体2との接面ではシリコーン系プライマーによってシリコーンゴム組成物5の硬化物が軸体2と接合しているため、収縮応力を受けても殆ど縮まない。これによって、シリコーン弾性層3は、外周面における両端部間の距離L1が内周面における両端部間の距離L2より小さくなっている。
【0043】
本実施形態に係る製造方法によれば、硬化工程において軸体とゴム材料とがシリコーン系プライマーにより接着しているため、シリコーン弾性層が形成される過程で、軸体とゴム材料との界面に空隙が生じることが十分に防止される。また、ゴム材料の収縮応力がかかっても、シリコーン弾性層の位置ずれ等が生じることが避けられ、均質なシリコーン弾性層が得られる。また、上記製造方法で製造された導電性ローラにおいて、シリコーン弾性層は、ゴム材料の軸方向の収縮応力によって、外周面における両端部間の距離が、内周面における両端部間の距離より小さくなっている。シリコーン弾性層の内周面では、シリコーン系プライマーにより軸体と接合されているため、ゴム材料の軸方向の収縮応力がかかっても軸方向に収縮せずに両端部間の距離が維持される。一方、シリコーン弾性層の外周面では、ゴム材料の軸方向の収縮応力によって僅かに収縮し、両端部間の距離が短くなっている。このようなシリコーン弾性層では、内周面側が外周面側より拡がっていることから、軸方向へのせん断応力に対する耐久性が高く、長期使用による劣化が十分に抑制される。
【0044】
[確認試験1]
シリコーン弾性層が形成される領域の両端部の外径が8mm、該領域の中央部の外径が7mm、両端部及び中央部の中間における外径が7.26mmの軸体(ニッケルメッキ処理したSUM22製の軸体、長さ280mm)を用意した。この軸体の表面をトルエンで洗浄し、シリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。この軸体を、ギヤオーブンを用いて150℃の温度にて10分間焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体の表面にプライマー層を形成した。
【0045】
次いで、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度300)100質量部、BET比表面積が110m/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、R−972)1質量部、平均粒径6μm、嵩密度が0.25g/cmである珪藻土(オプライトW−3005S、北秋珪藻土株式会社製)40質量部、及び、アセチレンブラック(デンカブラックHS−100、電気化学工業株式会社製)5質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌した後、3本ロールに1回通した。これを再度プラネタリーミキサーに戻し、架橋剤として、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度17、Si−H量0.0060mol/g)2.1質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1質量部、及び、白金触媒(Pt濃度1%)0.1部を添加し、15分撹拌して混練して、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を調製した。
【0046】
プライマー層を形成した軸体を成形金型内に設置し、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を成形金型内に充填した。その後、10分間、150℃で加熱することにより、シリコーンゴム組成物を硬化した。成形金型を外して、軸体及び軸体上に形成されたシリコーン弾性層を備える導電性ローラを得た。
【0047】
得られた導電性ローラにおいて、シリコーン弾性層は、両端部から中央部に向かって外径が漸次減少していた。また、シリコーン弾性層は、外周面における両端部間の距離は、内周面における両端部間の距離より小さいものであった。導電性ローラは、軸体とシリコーン弾性層とが強固に接合しており、軸体とシリコーン弾性層との界面の空隙による導電不良等は認められなかった。
【0048】
[比較試験1]
軸体上にプライマー層を形成しなかったこと以外は、確認試験1と同様にして導電性ローラを形成した。得られた導電性ローラは、軸体とシリコーン弾性層と接合強度が劣り、軸体とシリコーン弾性層との間の界面には僅かな空隙が生じていた。
【0049】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0050】
1…導電性ローラ、2…軸体、3…シリコーン弾性層、4…被覆層、5…シリコーンゴム組成物、6…成形金型。
図1
図2
図3