特許第6594248号(P6594248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594248
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】電源コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/75 20110101AFI20191010BHJP
   H01R 13/46 20060101ALI20191010BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   H01R12/75
   H01R13/46 301M
   H01R13/639 Z
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-75172(P2016-75172)
(22)【出願日】2016年4月4日
(65)【公開番号】特開2017-188258(P2017-188258A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2018年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】佐当 星太朗
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−128034(JP,A)
【文献】 実開平02−044269(JP,U)
【文献】 特開2013−232372(JP,A)
【文献】 特開2006−269141(JP,A)
【文献】 特開2015−041449(JP,A)
【文献】 特開2010−267604(JP,A)
【文献】 特開2006−128033(JP,A)
【文献】 特開2014−107140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40−13/72
H01R12/00−12/91
H01R24/00−24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一コネクタと第二コネクタを含む電源コネクタ装置であって、
前記第一コネクタは、第一ハウジングと、少なくとも2つの第一端子を含み、
前記第二コネクタは、第二ハウジングと、前記少なくとも2つの第一端子と接触し得る少なくとも2つの第二端子を含み、
前記少なくとも2つの第二端子は、空間を介して、それらの少なくとも一部において互いに対面しており、
前記第一コネクタと前記第二コネクタを嵌合させたときに、前記空間の少なくとも一部に前記第一ハウジングの少なくとも一部が配置されるとともに、前記第一コネクタの外壁の少なくとも一部が前記第二コネクタの内壁の少なくとも一部と突き合わされるように構成されており、
前記外壁の突合せ側に、前記第一コネクタと前記第二コネクタを嵌合させたときに前記外壁と前記内壁との間で弾性変位可能な係止部が設けられ、これに対応して、前記内壁の突合せ側に、前記係止部と係止される対応係止部が設けられており、
前記係止部は、前記第一コネクタと前記第二コネクタを嵌合させたときに前記空間の少なくとも一部に配置される前記第一ハウジングの少なくとも一部を利用して支持されており、
前記第一コネクタと前記第二コネクタを嵌合させたときに、前記少なくとも2つの第二端子は、前記弾性変位方向において前記係止部よりも前記外壁の側に位置付けられることを特徴とする電源コネクタ装置。
【請求項2】
前記係止部は、弾性係止片によって弾性変位可能とされており、前記弾性係止片は、前記第一コネクタと前記第二コネクタを嵌合させたときに前記空間の少なくとも一部に配置される前記第一ハウジングの少なくとも一部を利用して支持されている請求項1に記載の電源コネクタ装置。
【請求項3】
前記少なくとも2つの第二端子は、平板状の端子であり、前記少なくとも2つの第二端子は、互いに実質的に平行に配列されている請求項1又は2に記載の電源コネクタ装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つの第二端子は、前記空間と前記第二ハウジングの少なくとも一部を介して、それらの少なくとも一部において互いに対面している請求項1乃至3のいずれかに記載の電源コネクタ装置。
【請求項5】
前記第二コネクタは、基板に設置される請求項1乃至4のいずれかに記載の電源コネクタ装置。
【請求項6】
前記第一コネクタは、前記基板と実質的に直交する方向にて前記第二コネクタと嵌合される請求項5に記載の電源コネクタ装置。
【請求項7】
前記第一コネクタと前記第二コネクタにそれぞれ、前記第一コネクタを前記第二コネクタに案内する案内部材を設けた、請求項6に記載の電源コネクタ装置。
【請求項8】
前記第一のコネクタに接続される電線ケーブルの延出方向は、実質的に前記基板の面に沿っている請求項5乃至7のいずれかに記載の電源コネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源コネクタ装置、特に、嵌合可能な第一コネクタと第二コネクタを含む電源コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図14図15に、特許文献1に開示された電源接続用のコネクタ装置の一例を示す。電源接続用のコネクタ装置は、信号用のものと異なり、より高電圧の電流を流すことができる。図14は、このコネクタ装置の斜視概略図、図15は、その断面斜視概略図である。コネクタ装置は、コネクタ100とベースハウジング103を含む。コネクタ100は電線ケーブル107に接続され、ベースハウジング103は基板に設置される。コネクタ100はL字接続型コネクタとして形成されており、ベースハウジング103に対して、いわゆる縦嵌合、即ち、回路基板の取付面と直交する方向から装着される。
【0003】
ベースハウジング103には、挿入孔103hが設けられており、更に、この挿入孔103h内には、板状の電源端子150を挟持することができるように上部を窄めた略Uの字形状のバネ端子102が設けられている。
【0004】
一方、コネクタ100を構成するソケットハウジング105には、ベースハウジング103に設けた凹状の挿入孔103hに嵌入される凸状の挿入部105wが設けられており、更に、この挿入部105w内には、板状の電源端子150が設けられている。
【0005】
ソケットハウジング105の前部には、係止部(支持部)105gがソケットハウジング105の本体に対して可動状態で設けられており、コネクタ100とベースハウジング103が嵌合したときに、ソケットハウジング105に設けた電源端子150と、ベースハウジング103に設けたバネ端子102が接触するとともに、ソケットハウジング105の係止部105gに設けた係止部(図示されていない)が、ベースハウジング103に設けた対応係止部110に、ベースハウジング103の外側から係止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−4247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、液晶テレビ等の一部の分野では、装置の大型化が進んでおり、この結果、コネクタ装置に要求される電圧レベルが、例えば、600Vといった大きなものとなっている。このように大きな電圧が電源端子に印加された場合、電源端子間に生じる電位差が大きくなり、この結果、これらの電源端子間が短絡してしまうおそれがある。しかしながら、これを防止するために電源端子間の空間距離を大きくすれば、コネクタ装置も大きくなり、この結果、スペースの有効利用を図ることはできなくなる。電源端子間の空間距離を大きくすることなく、換言すれば、コネクタ装置を大型化することなく、電源端子間の短絡を防止することができる、係止構造を備えたコネクタ装置が所望される。
本願発明は、上記の従来技術における問題点を解決することを課題とするものであり、コネクタ装置を大型化することなく、電源端子間の短絡をより効果的に防止することができる、係止構造を備えたコネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様による電源コネクタ装置は、可能な第一コネクタと第二コネクタを含む電源コネクタ装置であって、前記第一コネクタは、第一ハウジングと、少なくとも2つの第一端子を含み、前記第二コネクタは、前記少なくとも2つの第一端子と接触し得る少なくとも2つの第二端子を含み、前記少なくとも2つの第二端子は、空間を介して、それらの少なくとも一部において互いに対面しており、前記第一コネクタと前記第二コネクタを嵌合させたときに、前記空間の少なくとも一部に前記第一ハウジングの少なくとも一部が配置されるとともに、前記第一コネクタ又は前記第二コネクタの一方の外壁の少なくとも一部が他方の内壁の少なくとも一部と突き合わされるように構成されており、前記外壁の突合せ側に係止部が設けられ、これに対応して、前記内壁の突合せ側に、前記係止部と係止される対応係止部が設けられており、前記係止部は、前記第一コネクタと前記第二コネクタを嵌合させたときに前記空間の少なくとも一部に配置される前記第一ハウジングの少なくとも一部を利用して支持されていることを特徴として有する。
この態様の電源コネクタ装置によれば、第一コネクタと第二コネクタを嵌合させたときに、第一ハウジングの少なくとも一部を第二端子間の空間に配置することによって端子間の短絡をより効果的に防止することができるとともに、第一コネクタと第二コネクタの係止構造をそれらの外壁と内壁の間に配置することによってコネクタ装置の大型化を防ぐことができる。更に、端子間の短絡を防止するための部材を係止構造を支持するために利用することによって、コネクタ装置を大型化することなく、係止構造を付加することができる。
【0009】
上記態様の電源コネクタ装置において、前記係止部は、弾性係止片によって弾性変位可能とされており、前記弾性係止片は、前記第一コネクタと前記第二コネクタを嵌合させたときに前記空間の少なくとも一部に配置される前記第一ハウジングの少なくとも一部を利用して支持されているのが好ましい。
これにより、比較的大きなスペースを要する弾性係止片を、第一コネクタと第二コネクタの外壁と内壁の間に配置して、コネクタ装置が大型化することを防止することができ、また、端子間の短絡を防止するための部材を、弾性係止片を支持するためにも利用することによって、コネクタ装置を大型化することなく、電源端子間の短絡を防止することができる。
【0010】
更に、上記態様の電源コネクタ装置において、前記少なくとも2つの第二端子は、平板状の端子であり、前記少なくとも2つの第二端子は、互いに実質的に平行に配列されているのが好ましい。
これにより、第二端子を平板状とすることにより省スペース化を図ることができ、コネクタ装置の小型化を図ることができ、また、少なくとも2つの端子が実質的に平行に配置されているような状況で短絡をより効果的に防止することができる。
【0011】
また、上記態様の電源コネクタ装置において、前記少なくとも2つの第二端子は、前記空間と前記第二ハウジングの少なくとも一部を介して、それらの少なくとも一部において互いに対面しているのが好ましい。
これにより、第二端子のうち、第二ハウジングに埋め込まれた部分についても、第一ハウジングの少なくとも一部によって端子間の短絡を防止することができる。
【0012】
また、上記態様の電源コネクタ装置において、前記第二コネクタは、基板に設置されるのが好ましい。
【0013】
更に、上記態様の電源コネクタ装置において、前記第一コネクタは、前記基板と実質的に直交する方向にて前記第二コネクタと嵌合されるのが好ましい。尚、前記第一コネクタと前記第二コネクタにそれぞれ、前記第一コネクタを前記第二コネクタに案内する案内部材を設けるのが好ましい。
これにより、嵌合方向を直交方向とすることにより、嵌合操作をより容易なものとすることができる。
【0014】
また、上記態様の電源コネクタ装置において、前記電線ケーブルの延出方向は、実質的に前記基板の面に沿っているのが好ましい。
これにより、電線ケーブルの延出方向と基板の面を沿わせることにより、電線ケーブルの上方及び下方の双方におけるデッドスペースの有効利用を図ることができる。特に、第一コネクタが基板と実質的に直交する方向にて嵌合される場合には、その効果が大きい。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によれば、コネクタ装置を大型化することなく、電源端子間の短絡をより効果的に防止することができる、係止構造を備えたコネクタ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ケーブル側コネクタと基板側コネクタを嵌合させた状態で示す斜視図である。
図2】ケーブル側コネクタと基板側コネクタを嵌合させる前の状態を示す前側斜視図である。
図3図2の後側斜視図である。
図4】基板側コネクタの上面斜視図及び正面図である。
図5】基板側コネクタの平面図及び線断面である。
図6】ケーブル側コネクタの底面斜視図である。
図7】ケーブル側コネクタの平面図及び断面図である。
図8】ケーブルハウジングの底側の一部斜視図である。
図9】電源端子の上面斜視図である。
図10】電源端子の側面図及び底面図である。
図11】電源端子がケーブルハウジング内に配置された状態を示す断面図である。
図12】ケーブル側コネクタと基板側コネクタの嵌合状態を示す平面図である。
図13図12の断面図である。
図14】従来のコネクタ装置の斜視概略図である。
図15】従来のコネクタ装置の断面斜視概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しつつ説明する。尚、便宜上、本発明の好適な実施形態例のみを示すが、これにより本発明を限定するものではない。
【0018】
図1乃至図3は、本発明の好適な一つの実施形態による電源接続用のコネクタ装置(以下、「電源コネクタ装置」という)の斜視図である。本発明はこのように電源コネクタ装置に係り、単なる信号用のコネクタ装置とは異なる。但し、電源コネクタと信号コネクタの双方を含む装置もまた本発明の対象である。
【0019】
電源コネクタ装置1は、コネクタ(第一コネクタ)10とコネクタ(第二コネクタ)60を含む。図1は、コネクタ10とコネクタ60を嵌合させた状態で示したもの、図2図3は、コネクタ10とコネクタ60を嵌合させる前の状態を示したものであって、図2は前側斜視図、図3は後側斜視図である。コネクタ10は、例えば、電線ケーブル2に接続されるケーブル側コネクタであってもよく、コネクタ60は、基板3に設置される基板側コネクタであってもよい。以下、ケーブル側コネクタ10と基板側コネクタ60を一例として説明する。
【0020】
ケーブル側コネクタ10は、側面視略L字状のいわゆるライトアングルコネクタとして形成されている。ケーブル側コネクタ10は、基板側コネクタ60に対しては、基板3の面と実質的に直交する方向、即ち、図示矢印「a」方向に沿って接近、移動させることにより嵌合させることができる。嵌合方向を基板面に対して実質的に直交させることにより、嵌合操作は容易となる。「実質的に」とは、嵌合方向が基板面に対して厳密に直交していることまで必要とする意図ではないことを意味する。
【0021】
電線ケーブル2は、ケーブル側コネクタ10の後方側に設けた取出孔28を通じて取り出される。電線ケーブル2の延出方向は、実質的に基板面3の面に沿っている。「実質的に」とは、延出方向が基板面に厳密に沿っていることまで必要とする意図ではない、という意味である。延出方向を基板面3の面に沿わせることにより、いわゆるストレートタイプのコネクタ、即ち、電線ケーブル等の延出方向を基板3に対して実質的に垂直としたコネクタ等とは異なり、電線ケーブル2の上方及び下方の双方におけるデッドスペースの有効活用を図ることができる。特に本実施形態のようにケーブル側コネクタ10と基板側コネクタ60の嵌合方向を基板と実質的に直交する方向にした場合、その効果はより大きくなる。
【0022】
ケーブル側コネクタ10の前面には、操作部14を有する弾性係止片15が設けられており、更に、操作部14の下側には係止部16が設けられている。弾性係止片15は、図示矢印「a」方向と実質的に直交する方向である「b」方向に沿って変位可能に設けられており、ケーブル側コネクタ10と基板側コネクタ60を嵌合させたとき、係止部16は「b1」及び「b2」方向へ変位することにより、基板側コネクタ60の前面に貫通した状態で設けられた係止孔66に係止され、この結果、ケーブル側コネクタ10を基板側コネクタ60に対してロックされる。このロック状態は、弾性係止片15を基板側コネクタ60の前側内壁61(図1図3等参照)から引き離す方向、即ち、図示矢印「b1」方向に、操作部14を移動させることによって簡単に解除することができる。尚、係止部16は、本実施形態のように、弾性係止片15によって弾性変位可能な状態で設けられていてもよいが、必ずしもそうする必要はない。
【0023】
ケーブル側コネクタ10と基板側コネクタ60を嵌合させたとき、弾性係止片15や係止部16は、ケーブル側コネクタの外壁と基板側コネクタの内壁との間、例えば、ケーブル側コネクタ10の前側外壁13(図2参照)と基板側コネクタ60の前側内壁61(図1図3等参照)との間に配置される、いわゆるインナーロック構造となっている。従って、本実施形態の構成によれば、係止構造を設けたことによってコネクタ装置が大型化することはない。
【0024】
図1乃至図3に加え、図4図5をも参照して、基板側コネクタ60の構成をより詳細に説明する。図4の(a)は、基板側コネクタ60の上面斜視図、(b)は、その正面図、また、図5の(a)は、基板側コネクタ60の平面図、(b)は、(a)におけるB−B線断面である。
【0025】
基板側コネクタ60は、基板ハウジング(第二ハウジング)62と、この基板ハウジング62に取り付けられる複数の板状の電源端子80から成る。
【0026】
基板ハウジング62は、樹脂等の絶縁材料から成り、例えば、垂設させた状態で基板上に設置される。全体として略直方形状を有するが、ケーブル側コネクタ10が接近、嵌合する上面側と、電線ケーブル2の延出側である後方側とにおいて開口されており、内部にケーブル側コネクタ10を嵌合させる凹状の挿入部63を有する。
【0027】
基板ハウジング62の前壁の中央付近は前側に突出しており、これによって段部69を形成している。段部69は、ケーブル側コネクタ10と基板側コネクタ60を嵌合させる際に、それらの向きを決定するのに役立つ。段部69によって突出した前方突出部62aには、ケーブル側コネクタ10に設けた係止部16と係止される対応係止部である係止孔66が設けられている。尚、係止孔66は、係止部16を係止することができれば足り、必ずしも貫通した状態で設けられている必要はなく、例えば、単なる窪みであってもよい。
【0028】
基板ハウジング62の後端には、両側壁から中心側に向かって突状に形成された突状部65が設けられている。同様に、基板ハウジング62の内側壁の略中央位置にも、中心側に向かって突状に形成された凸部64が設けられている。突状部65と凸部64とはそれぞれ図示矢印「a」方向に延びて構成されている。
【0029】
挿入部63には、複数の電源端子80と複数の立設部70、ここでは3個の電源端子と2個の立設部が、ケーブル側コネクタ10の嵌合側、ここでは上方に向かって、垂設されている。これら電源端子80と立設部70は、例えば、電線ケーブル2の延出方向に沿って互いに平行に、且つ、左右方向に沿って交互に配置されていてもよい。電源端子80同士、又は、立設部70同士は、それぞれ、前後方向において略同じ位置に配置されているため少なくとも一部において互いに対面しているが、電源端子80は立設部70よりも前側に寄った位置に配置されているため、電源端子80と立設部70は互いに対面した状態にはなく、従って、電源端子80が対面する空間38に立設部70は存在しない。尚、電源端子80は、少なくとも2個設けられていれば足り、例えば、3個以上設けてもよい。また、立設部70は、必ずしも必要ではなく、省略することもできる。本構成では、立設部70の、電線ケーブル2の延出方向に沿う延長線上に係止孔66を配置している。
【0030】
電源端子80は、互いに同形状であってもよく、例えば、平板状の金属板を板面を維持したまま打ち抜くことによって一度に複数個製造することができる。板面を維持することにより製造が容易となり且つ製造コストを安価にすることができ、また、平板状とすることにより電源端子の設置スペースを減少させることができる。
【0031】
勿論、これに限定されるものではないが、電源端子80は、例えば、側面視略十字状の縦長形状を有していてもよい(後述する図13によく表れている)。例えば、中心付近に配置された幅広の基部82と、この基部82から上方に延びる接触部81、更に、この基部82から下方に延びる実装部82を含む。基部82の大部分と実装部82の上半分は、基板ハウジング62のハウジング内に固定させた状態で設けられ、接触部81は、基板ハウジング62の挿入部63において外部に露出した状態で設けられ、実装部82の下半分は、基板ハウジング62の外部に露出した状態で設けられる。実装部82の下半分は、基板設置時に、基板3に対する半田付け等に使用される部分であって、基板ハウジング62の底板68と基板3とを貫通させた状態で配置される。基板3には、実装部82を貫通させるための貫通穴3aが設けられている。
【0032】
電源端子80は、これら電源端子間に形成された空間38や、基板ハウジング62の少なくとも一部を介して、互いに対面した状態にある。必ずしも、全面で対面している必要はなく、それらの少なくとも一部において対面していれば足りる。露出された実装部82の下半分と接触部81は、空間38のみを介して互いに対面しており、基部82の大部分と実装部82の上半分は、空間38と基板ハウジング62の少なくとも一部の双方を介して互いに対面している。ケーブル側コネクタ10と基板側コネクタ60が嵌合したときに、これらの空間38には、ケーブルハウジング12の少なくとも一部(支持部18)が配置され得る。電源端子80が全面で対面している場合には、取り分け、短絡が発生し易くなるが、このような場合であっても、本実施形態の構成によれば短絡を効果的に防止することができる。
【0033】
図1乃至図3に加え、図6図7をも参照して、ケーブル側コネクタ10の構成をより詳細に説明する。図6は、ケーブル側コネクタ10の底面斜視図、図7の(a)は、その平面図、(b)は、(a)におけるA−A線断面図、(c)は、(a)におけるB−B線断面である。
【0034】
ケーブル側コネクタ10は、ケーブルハウジング(第一ハウジング)12と、このケーブルハウジング12に取り付けられる複数の電源端子40から成る。
【0035】
ケーブルハウジング12は、基板ハウジング62と同様に、樹脂等の絶縁材料から成り、例えば、側面視略L字状であって、全体として略箱形状を有する。
【0036】
操作部14の後面14aとハウジング12本体の前面12aとの間には、操作部14の、弾性係止片15による変位を可能とするための隙間19が形成されている。「b2」方向への操作部14の過剰な変位を防止して、弾性係止片15の破損を防ぐため、ケーブル側コネクタ10の前側に、略L字形状の2本の規制部材17A、17Bが設けられている。これら2本の規制部材17A、17Bは各々、操作部14の側部外周付近を取り囲むように張り出しており、操作部14を「b2」方向へ変位させる過剰な力が働いたときに、中心側に向けて突出した突出部17aが弾性係止片15の前部15aと衝突するようになっている。これら規制部材17A、17Bの突出部17aの間からは、それら規制部材17の前端17bよりも操作部14の前端14bが突出しているため、矢印「b」方向への操作部14の操作が妨げられることはない。尚、規制部材17の前端17bからの、操作部14の前端14aの突出量は、例えば、操作部14aの前端14aと規制部材17の前端17bとが前後方向で同一位置となった状態で、ロックが解除される程度としてもよい。尚、規制部材17には、隙間19にケーブル2が入り込むことを防止する働きもある。
【0037】
ケーブルハウジング12の前側両側面には、基板側コネクタ60の側に延びる腕部22が設けられている。腕部22は図示矢印「a」方向に延びる2本のリブ23によって補強され、これらリブ23の間に凹部24が形成されている。ケーブル側コネクタ10と基板側コネクタ60が嵌合される際、この凹部24に基板側コネクタ60の凸部64が案内されつつ嵌る。同様に、腕部22の後端側には溝部25が設けられており、ケーブル側コネクタ10と基板側コネクタ60を嵌合させる際、この溝部25に基板側コネクタ60の突状部65が案内されつつ嵌る。尚、これらとは逆に、ケーブル側コネクタに凸部を設け、これに対応して、基板側コネクタ60に凹部を設けてもよいし、また、ケーブル側コネクタに突状部を設け、これに対応して、基板側コネクタ60に溝部を設けて、案内部材としても良い。
【0038】
図8は、ケーブルハウジング12の底側の一部斜視図であり、挿入孔30の内部が明らかになる位置においてケーブルコネクタ12を前後方向に沿って切断した切断面を示したものとなっている。ケーブルハウジング12のハウジング本体の底部12bには、ケーブル側コネクタ10と基板側コネクタ60を嵌合させる際に基板側ハウジング62に設けた立設部70が挿入される挿入孔30が設けられている。図8から明らかなように、ケーブルハウジング12の挿入孔30の内壁には凸部31が形成されている。挿入孔30に基板側ハウジング62の立設部70が挿入される際、挿入孔30の内壁に設けた凸部31と立設部70の面に設けた凹部71が適合することにより、ケーブル側コネクタ10と基板側コネクタ60の移動方向を容易に決定することができる。また、ケーブル側コネクタ10がケーブル2の導出方向または上方向に引っ張られた場合に、立設部70と挿入孔30との干渉により引っ張り力に抗することができる。
【0039】
ケーブル側コネクタ10の前側外壁13に設けた弾性係止片15は、片持ち梁状に延びる2本のアーム15A、15Bとして形成されている。これら弾性係止片15は、ケーブルハウジング12の前側の外壁において略前後方向に弾性変位可能である。アーム15A、15Bの上端は、例えば、操作部14によって互いに連結されていてもよい。一方、アーム15A、15Bの下端はそれぞれ、ケーブルハウジング12の一部として形成された各別の支持部18において、該支持部18を利用して、例えば、該支持部18の前壁底部から上方に延出された状態で、支持されている。各支持部18は、挿入孔30よりも前側で且つ弾性係止片15よりも後側に位置付けられており、所定の厚み(前側横方向)、所定の高さ(上下方向)、及び所定の幅(前後方向)を有し、アーム15A、15Bを支持するのに十分な強度を有する。支持部18は、左右方向において端子挿入孔27の間に位置しているとともに、ハウジング本体の底部12bより下方に突出するように構成されている。このように構成された支持部18と連結された弾性係止片15とすることにより、弾性係止片15の上下方向(矢印「a」方向)の長さを長くすることができ、所定の弾性変位のしやすさを確保することができる。係止部16は、例えば、操作部14とアーム部15A、15Bの境目付近に設けられており、アーム部15A、15Bによって弾性変位可能とされている。
【0040】
図9図10を参照して、電源端子40をより詳細に説明する。図9は、電源端子40の上面斜視図、図10の(a)は、その側面図、(b)は、その底面図である。
【0041】
電源端子40は、一枚の金属板を打ち抜き、折り曲げ加工することによって形成されている。後方から前方に向かって、ケーブル保持部42、電線貫通部41、接触部46を順に有し、更に、電線貫通部41と接触部46を連結する傾斜部41Bを有する。電源端子40は少なくとも2個設けられていれば足りるが、基板側コネクタ60に設けた電源端子80に対応して3個とされている。
【0042】
ケーブル保持部42は、電線ケーブル2を保持するため比較的大径に形成されている。ケーブル保持部42は、電線ケーブル2を固定するための小片42A、及び、大片42Bを含み、少なくとも大片42Bは、電線ケーブル2を保持するためにカシメられる。一方、電線貫通部41は、電線ケーブル2内の導電部分である電線を貫通させるだけであるため比較的小径に形成されている。
【0043】
先端に位置する略箱状の接触部46は、後側から前側に向かって、ランス係止部43、接触片44、及び当接面45を含む。ランス係止部43の先端は、例えば、中央に向かって直角に折り曲げられているが、ケーブルハウジング12の一部(ランス29)が係止されるように折り曲げられていれば足りる。接触部44は、板状の電源端子80を挟持することができるように上部を窄めた略Uの字形状とされている。挟持部分に接触部44aが形成されている。当接面45から接触片44側に向けて折曲部45aが形成されており、接触部44の先端側に設けた突出部44bと前後方向でそれらの一部が干渉するようになっている。このような構造により、接触片44の外側への過剰な変形を防止できる。
【0044】
図11の(a)、(b)に、それぞれ、図7の(b)、(c)に対応する断面図を示す。但し、図7の(b)、(c)と異なり、ここでは電源端子40をケーブルハウジング12内に配置した状態を示している。電源端子40は、端子挿入孔27を通じて、ケーブルハウジング12の後側から前方に向かって先端の当接面45が突き当てられるまで挿入される。電源端子40が端子挿入孔27に挿入された所定位置に到達したとき、電源端子40のランス係止部43に、ケーブルハウジング12の底側に設けたランス29が引っ掛かり、端子挿入孔27からの電源端子40の抜けが防止される。ランス29は、図示矢印「b2」方向に沿った方向であって、ケーブルハウジング12の一部として後方から前方に延びるように設けられており、前方側が自由端となっていることにより図示矢印「a」方向に弾性変位可能となっている。
【0045】
図12図13をも参照して、ケーブル側コネクタ10と基板側コネクタ60の嵌合状態を説明する。図12は、ケーブル側コネクタ10と基板側コネクタ60の嵌合状態を示す平面図、図13の(a)、(b)は、それぞれ、図12のA−A線断面図、B−B線断面を示す図である。
【0046】
ケーブル側コネクタ10と基板側コネクタ60を嵌合させたとき、電源端子40の接触部44a間に板状の電源端子80が挿入され、電源端子40と電源端子80が接触する。
【0047】
このとき、ケーブル側コネクタ10の、弾性係止片15を設けた前側外壁13は、基板側コネクタ60の前側内壁61と突き合わされることになるが、例えば、本実施形態のように、ケーブル側コネクタ10の前側外壁13の突合せ側に弾性係止片15等によって弾性変位可能な係止部16を設け、これに対応して、基板側コネクタ60の前側内壁61の突合せ側に対応係止部66を設けることにより、弾性変位を行うために比較的大きなスペースを必要とする弾性係止片15等を、ケーブル側コネクタ10の前側外壁13と基板側コネクタ60の前側内壁61との間に配置することによって、弾性係止片15等を外部に露出させることを防止しつつ、係止部16と対応係止部66とによる係止構造を備えたコネクタ装置を提供することができる。
【0048】
また、ケーブル側コネクタ10と基板側コネクタ60を嵌合させたとき、電源端子80間に形成された空間38の少なくとも一部に、ケーブルハウジング12の一部である支持部18が配置され、この結果、沿面距離を長くすることができ、電源端子間の短絡をより効果的に防ぐことができる。ここでいう端子間には、電源端子80のうち、基板ハウジング62の挿入部63において外部に露出した接触部81だけでなく、基板ハウジング62のハウジング内に固定された、更に言えば、基板ハウジング52によって包囲された状態にある基部82の大部分と実装部82の上半分も含まれる。更に言えば、電源端子80のうち、ケーブルハウジング12に埋め込まれた部分についても、支持部18によって端子間の短絡を防止することができる。更に、図13の(b)によく示されているように、特に、支持部18の形状と空間38の形状を適合させた場合には、電源端子80間の沿面距離を長く形成することもできる。更に言えば、支持部18が存在しない場合には、電源端子80同士の間に、電流が流れる表面が存在してしまうが、空間38の形状に適合した支持部18を挿入してそのような表面を実質的に消滅させることにより、電流が流れる表面、換言すれば、沿面距離を長くすることができる。支持部18の形状は、空間38と必ずしも完全に適合している必要はなく、沿面距離を長くさせる程度に適合していれば十分である。例えば、支持部18と空間38との間に多少の隙間が存在していてもよい。
【0049】
上に記載した2つの効果、即ち、弾性係止片15等をケーブル側コネクタや基板側コネクタの外壁と内壁との間に配置することによってコネクタ装置の大型化を防止すること、及び、電源端子間に形成された空間の少なくとも一部にケーブルハウジングの一部である支持部を配置して電源端子間の短絡をより効果的に防止することは、共に、支持部18に関連する効果である。更に言えば、本実施形態の構成では、支持部18は、弾性係止片15を支持する部材であると同時に、端子間の短絡を防止するための部材としても機能する。支持部にこのような2つの機能を持たせることにより、コネクタ装置が大型化するのを防止しつつ、電源端子間の短絡を防止し、また、係止構造を備えたコネクタ装置を提供することができるようになっている。
【0050】
尚、ケーブル側コネクタ10と基板側コネクタ60の嵌合を解除する場合には、操作部14を矢印「b1」方向に変位させ、係止部16と係止孔66との係止状態を解除すればよい。図13(a)によく示されているように、操作部14の前端14aは、基板側ハウジング52の前端52aより前側に突出しているので、この操作は容易である。この状態で、ケーブル側コネクタ10を上方に引き上げれば、基板側コネクタ60からケーブル側コネクタ10を抜去することができる。
【0051】
本発明の更に別の態様、特徴及び効果は、本発明を実施するよう意図された最良の態様を含めて、多数の特定の実施形態及び実施例を示すだけで、以下の詳細な説明から容易に明らかとなろう。又、本発明は、他の及び異なる実施形態で構成することもでき、そしてその多数の細部は、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、種々の明らかな観点において変更することができる。従って、図面及び説明は、例示に過ぎず、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
1 コネクタ装置
2 電線ケーブル
3 基板
10 ケーブル側コネクタ(第一コネクタ)
12 ケーブルハウジング(第一ハウジング)
15 係止片
16 係止部
30 挿入孔
40 電源端子
60 基板側コネクタ(第二コネクタ)
62 基板ハウジング(第二ハウジング)
66 係止孔
80 電源端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15