特許第6594263号(P6594263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594263
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】表面処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/08 20060101AFI20191010BHJP
   B29C 71/04 20060101ALI20191010BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   B01J19/08 G
   B29C71/04
   C08J7/00 303
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-108331(P2016-108331)
(22)【出願日】2016年5月31日
(65)【公開番号】特開2017-213502(P2017-213502A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2018年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183738
【氏名又は名称】春日電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076163
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 真二
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 行平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 智
(72)【発明者】
【氏名】吉田 純也
(72)【発明者】
【氏名】杉村 智
(72)【発明者】
【氏名】稲村 達也
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−265567(JP,A)
【文献】 特開2005−76063(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0120782(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/08
B29C 71/04
C08J 7/00
H05H 1/24
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理ローラと、
この処理ローラに対向し、内部に置換ガスを供給してガス置換放電を形成する処理チャンバとが設けられ、
上記処理ローラに接触して移動するフィルム表面を上記ガス置換放電のエネルギーで改質する表面処理装置において、
上記処理チャンバより上記フィルムの移動方向上流側であって、上記処理ローラに接触したフィルムに対向する位置に、上記処理チャンバと別体にした同伴流遮断ローラが設けられ、
上記同伴流遮断ローラは、
表面から置換ガスを放出させる置換ガス放出機構を備えるとともに、
当該同伴流遮断ローラの上流側において上記フィルムに付着した同伴流を遮断し、当該同伴流遮断ローラの下流側において表面から放出された置換ガスを上記フィルムに同伴させる構成にした表面処理装置。
【請求項2】
上記同伴流遮断ローラは、
特定の回転角度範囲に対応した置換ガス放出範囲のみから置換ガスが放出される構成を備えた請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
上記同伴流遮断ローラは、
内部に置換ガスが供給される置換ガス供給体と、
この置換ガス供給体の外側で相対回転可能に支持された筒状の外層とからなり、
上記置換ガス供給体には、上記置換ガス放出範囲に対応する部分のみに置換ガス放出口が形成され、
上記外層には、全周もしくはほぼ全周にわたって置換ガスの流通を可能にする放出孔が形成された請求項2に記載の表面処理装置。
【請求項4】
上記同伴流遮断ローラの置換ガス放出範囲が、上記フィルム表面に対向して固定された請求項2又は3に記載の表面処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理チャンバ内に置換ガスを供給してガス置換放電によってフィルムの表面を改質する表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電電極を備えた処理チャンバ内に窒素などの置換ガスを供給してガス置換放電を形成し、上記処理チャンバと対向して移動するフィルム表面を改質する表面処理装置が知られている。
例えば、特許文献1に示すものは、アースされた処理ローラに対向して処理チャンバが設けられ、この処理チャンバ内には放電電極が設けられるとともに、置換ガスを供給している。
そして、上記処理ローラに接触して搬送されるフィルムの表面を、ガス置換放電のエネルギーによって処理するようにしている。
【0003】
このような表面処理装置において、上記処理チャンバ内で安定したガス置換放電状態を維持するためには、処理チャンバ内のガスの置換度が重要である。
しかし、移動するフィルムの表面には、処理チャンバの外部の大気などが付着して同伴流として処理チャンバ内に流入する可能性がある。処理チャンバ内に同伴流が流入して内部の置換ガスの濃度が低下すると、ガス置換放電状態が不安定になってしまう可能性がある。
【0004】
そのため、同伴流の流入に対応して処理チャンバへの置換ガスの供給量を増やしたり、同伴流の流入を防止したりしなければならない。
上記置換ガスの供給量を増やしてその消費量が多くなれば、その分コストがかかってしまうという問題がある。また、供給量を増やした置換ガスが処理チャンバの外部へ漏れ出て問題を起こすこともある。例えば、窒素などが大量に外部に流出すれば、外部で酸欠状態を起こすことになる。
【0005】
このような問題に対応するため、特許文献1の装置では、同伴流の流入を防止するために、フィルム表面に接触して上記処理ローラの回転力に従動して回転するニップローラを処理チャンバの開口に近接させて設けている。この従来の装置は、処理チャンバの近傍に、フィルムに接触するニップローラを設けた装置で、このニップローラによって、フィルム上の同伴流の層が遮断され、同伴流の処理チャンバへの流入が防止されるというものである。
ところが、様々な条件によって処理チャンバの近傍に、同伴流を遮断するためのニップローラを設けられないことがある。
【0006】
そこで、図6に示す装置が考えられる。
この装置も、フィルムFを接触させた処理ローラ1に処理チャンバ2を対向配置させている。そして、この処理チャンバ2内に放電電極3を設けるとともに、ガス供給管4,5によって上記処理チャンバ2内に置換ガスを供給する。
なお、図中の矢印xは処理ローラの回転方向、矢印aは上記処理ローラ1の回転によって移動するフィルムFの移動方向である。
また、ガス供給管4は放電電極3の先端近傍に置換ガスを導くためのものであり、ガス供給管5は処理チャンバ2内全体に置換ガスを供給するためのものである。
【0007】
そして、フィルムFの移動方向における上記処理チャンバ2の上流側に、大気の同伴流を遮断するためのニップローラ6を設けているが、このニップローラ6を処理チャンバ2と別体にし、上記処理チャンバ2から間隔を保った任意の位置に設けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−076063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記図6に示す従来の装置では、ニップローラ6とフィルムFとの接触部Pにおいて上流からの同伴流bを確実に遮断することができる。
しかし、この接触部Pから処理チャンバ2の上流側開口2aまでの距離が長いと、この間で、フィルムFに大気などを同伴させてしまうことがある。この同伴流の量は、ニップローラ6から処理チャンバ2までの距離やフィルムFの幅、フィルムFの移動速度などによって変わるが、その量が多くなれば処理チャンバ2内の置換度が低下してしまうという問題が発生する。
この発明の目的は、同伴流遮断ローラと処理チャンバとの間に間隔を設けた場合であっても、処理チャンバ内の置換度の低下を防止できる表面処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、処理ローラと、この処理ローラに対向し、内部に置換ガスを供給してガス置換放電を形成する処理チャンバとが設けられ、上記処理ローラに接触して移動するフィルム表面を上記ガス置換放電のエネルギーで改質する表面処理装置を前提とする。
上記装置を前提とし、第1の発明は、上記処理チャンバより上記フィルムの移動方向上流側であって、上記処理ローラに接触したフィルムに対向する位置に、上記処理チャンバと別体にした同伴流遮断ローラが設けられ、上記同伴流遮断ローラは、表面から置換ガスを放出させる置換ガス放出機構を備えるとともに、当該同伴流遮断ローラの上流側において上記フィルムに付着した同伴流を遮断し、当該同伴流遮断ローラの下流側において表面から放出された置換ガスを上記フィルムに同伴させる構成にしたことを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、上記同伴流遮断ローラが、特定の回転角度範囲に対応した置換ガス放出範囲のみから置換ガスが放出される構成を備えたことを特徴とする。
【0012】
第3の発明は、上記同伴流遮断ローラが、内部に置換ガスが供給される置換ガス供給体と、この置換ガス供給体の外側で相対回転可能に支持された筒状の外層とからなり、上記置換ガス供給体には、上記置換ガス放出範囲に対応する部分のみに置換ガス放出口が形成され、上記外層には、全周もしくはほぼ全周にわたって置換ガスの流通を可能にする放出孔が形成されたことを特徴とする。
【0013】
第4の発明は、上記同伴流遮断ローラの置換ガス放出範囲が、上記フィルム表面に対向して固定されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、同伴流遮断ローラと処理チャンバとの間で、同伴流遮断ローラから放出された置換ガスがフィルム表面に付着して置換ガスの同伴層が形成されるため、置換ガス以外の例えば大気などが同伴流として再付着することを防止できる。したがって、同伴流遮断ローラと処理チャンバとの間に間隔を設けたとしても、処理チャンバ内に置換ガス以外の気体が流入することを防止でき、処理チャンバ内の置換度の低下を防止できる。
言い換えれば、この発明の遮断流防止ローラなら、その設置位置が処理チャンバの上流側近傍に限定されず、設置位置の自由度が高くなる。
【0015】
第2〜4の発明によれば、同伴流遮断ローラの表面から放出される置換ガスの放出範囲を限定して、必要個所に必要量の置換ガスを放出することができる。そのため、置換ガスの消費量を抑えることができ、その分、コストを抑えることができる。
また、置換ガスの種類によっては、周囲に放出することによる問題が発生する場合もあるが、この発明によれば、そのような問題も防止できる。
特に、第4の発明によれば、同伴流遮断ローラの上流側では、置換ガスが大気などの同伴流に対向して同伴流の遮断をより確実にしながら、同伴流遮断ローラの下流側では、フィルムに向かって放射される置換ガスをフィルムに同伴させ、置換ガス以外の気体の付着をより効率的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態を示す概略図である。
図2】第1実施形態の同伴流遮断ローラの断面図である。
図3】第2実施形態を示す概略図である。
図4】第2実施形態の同伴流遮断ローラの軸方向断面図である。
図5図4のV-V線断面図である。
図6】従来の表面処理装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1,2に示す第1実施形態は、処理チャンバ2よりフィルムFの移動方向上流側であって、上記処理ローラ1に接触するフィルムFに対向する位置に、処理チャンバ2と別体にした同伴流遮断ローラ7を設けた表面処理装置である。
上記同伴流遮断ローラ7以外の構成は、図6に示す従来の装置と同様である。したがって、従来と同様の構成要素には、図6と同じ符号を用い、個々の説明は省略する。
この第1実施形態の同伴流遮断ローラ7は、図2に示すように、中心のガス供給管8の外周にこの発明の外層である多孔層9を備えている。また、上記ガス供給管8の側壁には複数の放出口8aが形成され、ガス供給管8の端部には、図示しない置換ガス供給源が接続されている。
なお、この実施形態の説明において上流側、下流側とは、特にことわらない限り、フィルムFの移動方向を基準としたものである。
【0018】
上記置換ガス供給源から供給された置換ガスは、上記ガス供給管8の放出口8aから多孔層9を介して上記同伴流遮断ローラ7の外周から外部に向かって放出される。この第1実施形態では、上記置換ガス供給源、ガス供給管8、放出口8a及び多孔層9によって、この発明の置換ガス放出機構を構成している。
なお、上記多孔質の多孔層9は、例えば、焼結セラミックや、連続気泡を備えた発泡樹脂などで形成することができる。
【0019】
上記のような同伴流遮断ローラ7が、処理チャンバ2と間隔を保った位置でフィルムFに接触させて設けられている。
この第1実施形態の装置で、処理ローラ1がx方向に回転すると、上記同伴流遮断ローラ7は、処理ローラ1の回転方向xとは反対のy方向に回転しながら、その外周から矢印で示す置換ガスを外部に向かって放出する。
上記同伴流遮断ローラ7の表面から置換ガスが放出されると、同伴流遮断ローラ7の上流側の同伴流bが、上記置換ガスによって押し退けられるとともにフィルムFとの接触部Pにおいて遮断される。その結果、同伴流遮断ローラ7の上流側の同伴流bは、接触部Pを越えて同伴流遮断ローラ7の下流側まで移動することはほとんどない。
【0020】
そのうえで、同伴流遮断ローラ7の下流側では、多孔層9の表面からフィルムFに向かって放出される置換ガスがフィルムF上に付着して同伴層を形成し、置換ガス以外の気体を付着させにくくする。
したがって、処理チャンバ2には、同伴流遮断ローラ7の下流側においてフィルムFに形成された置換ガスの同伴層が流入するが、大気など、置換ガス以外の気体の同伴流が流入することはない。そのため、上記処理チャンバ2内の置換度が下がってしまうことはない。
なお、上記同伴流遮断ローラ7は、接触したフィルムFの移動によってy方向に回転するように、フリー回転状態を保っておくようにしている。
【0021】
図3〜5に示す第2実施形態は、上記第1実施形態の同伴流遮断ローラ7に替えて図4,5に示す同伴流遮断ローラ10を用いた装置である。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と同様の構成要素には、図1と同じ符号を用い、個々の説明は省略する。
この第2実施形態の同伴流遮断ローラ10は、図4,5に示すように、中空の多孔筒体11内に、この発明の置換ガス供給体である中央筒体12を、ボールベアリング13を介して相対回転可能に組み込んだものである。
【0022】
多孔筒体11は、第1実施形態の多孔層9と同様に形成された多孔質の円筒部材からなり、この発明の外層を構成する。
一方、中央筒体12は上記多孔筒体11の内壁に小さな隙間を介して対向するガスチャンバ12aと、その両端に連結された一対の支持軸12bとからなる。上記支持軸12bは、上記ガスチャンバ12aの内部と連通する筒部材である。
また、上記ガスチャンバ12aには、その周方向における特定の範囲内に複数の小孔12cが形成されている。
上記小孔12cが形成されている範囲は、図5に示すように、多孔筒体11の回転角度α分に対応する範囲である。
【0023】
図示のようなローラ10は、例えば次のようにして組み立てることができる。
先ず、上記多孔筒体11内に上記中央筒体12を挿入し、多孔筒体11の軸方向両端から中央筒体12の支持軸12bを突出させる。次に、上記支持軸12bと上記多孔筒体11との間にボールベアリング13を嵌め込む。このとき、ボールベアリング13の内輪13aに上記支持軸12bが圧入されるとともに、ボールベアリング13の外輪13bが上記多孔筒体11に圧入される寸法関係を備えている。
【0024】
また、上記中央筒体12の支持軸12bには、図示しない置換ガス供給源に接続された置換ガス供給用の配管14を接続して内部に置換ガスを供給可能にしている。
さらに、上記ボールベアリング13はシール付きベアリングで、上記多孔筒体11内の置換ガスがこのボールベアリング13を介して外部へ漏れ出ないようにしている。
この第2実施形態では、上記置換ガス供給源、上記配管14、上記中央筒体12、小孔12c及び多孔筒体11によって、この発明の置換ガス放出機構を構成している。
【0025】
上記のような同伴流遮断ローラ10の外周、すなわち多孔筒体11を処理ローラ1上のフィルムFに接触するように設け、上記中央筒体12の支持軸12bを外部の図示しないベースに固定する。このとき、小孔12cが形成された、ガスチャンバ12aの上記回転角度αの範囲を、フィルムFとの接触部P(図3参照)側に位置するようにしている。
また、上記多孔筒体11は上記中央筒体12を中心にして自由回転可能な状態になっている。したがって、上記処理ローラ1が回転して上記フィルムFが移動すれば、その移動に応じて上記多孔筒体11が処理ローラ1と反対のy方向に回転する(図3参照)。
【0026】
上記したように、この第2実施形態では、ガスチャンバ12aに形成された小孔12cが、フィルムFとの接触部P側に位置するようにして上記中央筒体12が固定されている。
そのため、多孔筒体11がフィルムFとともに回転したとしても、固定された中央筒体12に形成された小孔12cは常時フィルムFに対向する側の位置を保つことになる。
したがって、全体が多孔質で形成されている多孔筒体11においても、上記回転角度αに相当する範囲からのみ置換ガスが放出されることになる。つまり、上記小孔12cがこの発明の置換ガス放出口であり、上記回転角度αの範囲が置換ガス放出範囲に相当する。
【0027】
この第2実施形態では、中央筒体12に置換ガスが供給されれば、同伴流遮断ローラ10の表面である多孔筒体11から放出される置換ガスは、フィルムFの表面に向かって放出されることになる。
ただし、上記中央筒体12と多孔筒体11との間には隙間があるので、この隙間に供給された置換ガスが上記置換ガス放出範囲以外の部分からも多少漏れ出る可能性はある。
上記中央筒体12の外周面であって、回転角度αの両外側に対応する位置に、中央筒体12の軸線方向に連続する線状凸部などを形成して、置換ガスの流通に対する絞り機構を形成すれば、上記回転角度αに相当する置換ガス放出範囲とその他の部分とがより明確に区画され、置換ガスの放出方向の指向性を高めることができる。
【0028】
この第2実施形態の装置においても、フィルムFの移動過程で表面に付着した大気などの同伴流bは、同伴流遮断ローラ10の接触部Pで遮断されるとともに、その下流側では多孔筒体11からフィルムFに向かって放出される置換ガスを同伴させることができる。
このように、この第2実施形態でも、同伴流遮断ローラ10の下流側において置換ガスをフィルムFに積極的に同伴させることによって、処理チャンバ2との間で大気などの置換ガス以外の気体が付着することを防止できる。
【0029】
また、この第2実施形態では、同伴流遮断ローラ10の中央筒体12のガスチャンバ12aに形成された小孔12cの位置が回転角度α内に限定されていることによって、置換ガス放出範囲が限定されている。そのため、フィルムFに向かわずにそのまま大気に放出される置換ガス量を少なくすることができる。つまり、置換ガスを無駄にせず、コストを抑えることができる。
さらに、置換ガスが装置外へ流出することによって、様々な問題を発生するような場合には、処理チャンバ2の外部に放出された置換ガスの排気手段を設けなければならないが、この第2実施形態のように、置換ガス放出範囲を限定すれば、上記排気手段を省略することも可能である。
【0030】
なお、上記置換ガス放出範囲は、目的に応じて設定すればよい。例えば、フィルムの移動速度が速くて置換ガスを付着させる時間が短くなるうえ、同伴流遮断ローラ10と処理チャンバ2との間の間隔が大きい場合には、フィルムFに対して置換ガスを接触させる時間を長くするために置換ガス放出範囲を大きくすることなどが考えられる。
【0031】
以上のように、第1,2実施形態の表面処理装置では、処理チャンバ2と間隔を保った位置に設けた同伴流遮断ローラ7,10によって、その上流側からの同伴流を遮断するとともに、その下流側では、置換ガスをフィルムFに同伴させて、処理チャンバ2内に置換度を低下させる原因となる気体の流入をより確実に防止できる。
しかも、同伴流遮断ローラ7,10の設置位置の自由度を上げられる。
【0032】
なお、第1,2実施形態では、同伴流遮断ローラ7,10の外表面をフィルムFに接触させているが、上記同伴流遮断ローラ7,10をフィルムFに対して非接触にしても構わない。ただし、同伴流遮断ローラ7,10とフィルムF表面との距離は、同伴流に対して遮断効果を発揮できる程度の近さにする必要がある。また、上記同伴流遮断ローラ7,10とフィルムFとを非接触にした場合には、駆動機構によって同伴流遮断ローラ7,10を回転させ、その回転によって同伴流bに対向する気体の流れを形成するようにしてもよい。
【0033】
また、図1,3では、処理ローラ1に対して処理チャンバ2を上方に位置させているが、処理ローラ1と処理チャンバ2との位置関係もこれに限らない。両者は、処理対象であるフィルムFを挟んで対向配置されていればよく、例えば、処理ローラ1の横や下方に、処理チャンバ2を位置させてもよい。
なお、上記実施形態では、処理ローラ1をアースに接続しているが、処理チャンバ2内の放電電極3との間でガス置換放電が形成可能な電位差を保つことができれば、処理ローラ1はアース電位でなくてもよい。
さらに、処理チャンバ2の構成も、内部に置換ガスを導いてガス置換放電を形成できるものであれば、どのような構成でも構わない。上記実施形態に限定されない。
また、処理対象であるフィルムの材質や厚さも、限定されない。例えば、樹脂のほか紙や金属の表面改質にも用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
ガス置換放電によって様々特性のフィルム表面を改質する表面処理装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 処理ローラ
2 処理チャンバ
3 放電電極
4 ガス供給管
5 ガス供給管
7 同伴流遮断ローラ
8 ガス供給管
8a 放出口
9 (外層)多孔層
10 同伴流遮断ローラ
11 (外層)多孔筒体
12 (ガス供給体)中央筒体
12a ガスチャンバ
12b 支持軸
13 ボールベアリング
14 (置換ガス供給用の)配管
F フィルム
α 回転角度(置換ガス放出範囲)
図1
図2
図3
図4
図5
図6