【文献】
Am.J.Physiol.Gstrointest.Liver Physiol.,2010年,Vol.299,pp.G1087−G1096
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
発明の背景
適者のみが生存する世界において、細菌は、それらの環境に応じて適応しかつ進化する驚くべき能力を有する。いくつかの微生物は、その宿主との共生関係を通じて、重大な生存上の利点を進化させている。それらのヒト宿主中およびヒト宿主上の好都合な増殖「ニッチ」と引き換えに、これらの細菌は、これらの「友好的な」細菌が繁殖する表面上での病原菌のコロニー形成を直接阻害するなど、ある重要な生存上の利点を与える。通常の状況下において、ヒト免疫システムは、これらの同一の細菌を敵対的侵入物として撃退している。しかしながら、そのヒト宿主に対してある健康上の利益を与えることによって、これらの「プロバイオティクス」細菌は、微生物と人間との間の、有益に相助関係的な、進化的に利点のある、ゆえに進化的に保存された関係を作り出す。
【0003】
プロバイオティクス生物によって与えられる利益の中には、宿主の先天性免疫システムの刺激がある。すべての感染症に対する主要なかつ最初の防御者としての、先天性免疫システム応答の完全性、効率、および迅速性は、宿主生存のために重大である。損なわれていないかつ円滑に機能する先天性免疫システムは、宿主の病原菌コロニー形成を制限することによって、宿主ならびにそのプロバイオティクス生物を保護する。病原菌の増殖を直接阻害することは、これらの同じ表面上での健康に良い有益な生物の増殖を逆に促進もするため、宿主にとって有益であると同時に、そのような保護はプロバイオティクス生物にとって自己の利益にもなる。したがって、これらの利益は、この利点を与える微生物叢を保護するのと同じように重要に、一方で宿主自体を同時に保護する。しかしながら、ほとんどの微生物はプロバイオティクスではなく、よくて非病原性であり、最悪の場合には致死性の可能性がある。
【0004】
感染を与えるには、自由に浮遊する1つの「胚種」または微生物のみが必要とされる−という100年の歴史を有する胚種説(germ theory)は、病原菌およびそれらの結果として生じる感染症についてのその後の調査を直接形作った。感染症を治療する際の主要なツールである抗生物質は、単一細胞として機能し、自由に浮遊する(プランクトン様の)状態での調査された微生物を、微生物によって殺傷する能力に基づいている。抗生物質の有効性の定量化は、伝統的な最小阻害濃度(MIC)アッセイで行われる。しかしながら、伝統的な微生物学は間違っていた。それとは反対に、現在、ほとんどのヒト感染症は、微生物コロニー全体の協調的な集団での挙動によるものであると理解されている。これらのコロニーは、コロニー全体を取り囲みかつ抗生物質および無傷の免疫システムによる攻撃からコロニー全体を保護する、バイオフィルムと称される細胞外マトリックスを分泌するために一緒に働く微生物から構成される。
【0005】
自由に浮遊するプランクトン様の細菌が、医療用留置デバイスなどの生物学的または不活性な表面に固定した場合に、バイオフィルムは開始される。付着した細菌は増加し、単層の状態から微小コロニーへ、次いで細菌のクロストークが生じる臨界質量へ進行し、バイオフィルム表現型につながるクオラムセンシングとして知られる現象を引き起こす。クオラムセンシングは、非固着性細菌において発現していないまたは産生されていないバイオフィルム産生遺伝子をオンにする。細菌は集団的に応答して、バイオフィルム表現型に特異的である因子を発現し、それがバイオフィルムに決定的なエキソポリサッカライド(EPS)マトリックスの分泌につながる。このバイオフィルム表現型は、介在する水路を有する、埋め込まれた生きた細菌の層から構成される細菌タワーの形成によって形態学的に特徴付けされる。適正な環境条件下において、自由に浮遊する細菌がバイオフィルムから放出され、サイクルは他の表面において継続される。
【0006】
世の中の細菌バイオマスのおよそ80%はバイオフィルム状態で存在しており、アメリカ国立衛生研究所は、ヒトの身体で起こる75%を上回る細菌感染症が、バイオフィルムの形成および持続によって支えられていると推定している。そのような感染症には、虫歯、歯周炎、筋骨格感染症、骨髄炎、細菌性前立腺炎、心内膜炎、慢性気管支炎および慢性下気道炎症の他の状態、嚢胞性線維症、肺炎、中耳炎、慢性扁桃炎、咽頭炎、ならびにデバイス感染症が含まれる。
【0007】
バイオフィルムは「単なる別のタイプの感染症」のように思えるかもしれないが、病原性バイオフィルムは、自由に浮遊する、バイオフィルムを産生しない形態のまさに同じ細菌とは、完全に異なって挙動する。完全に異なるゲノム発現のために、バイオフィルム関連感染症は、プランクトン様タイプの感染症とは異なる臨床経過および抗生物質応答を有する。その上、プランクトン様感染症と「同じ」ようにバイオフィルム関連感染症を治療することにより、コロニーによって産出されるEPSマトリックスが、自由に浮遊する形態にある場合にこれらの微生物を通常殺傷するであろう抗生物質に対して1000倍の耐性をコロニーに付するため、抗生物質耐性「スーパーバグ」が創出される。
【0008】
抗生物質はこれらのEPSに保護された微生物群集を根絶することができず、抗生物質によって抗生物質耐性細菌が選択されかつますます永続するため、抗生物質の使用は、実際には問題をこじらせる。これらの「スーパーバグ」には、世界の主要な院内感染症の原因であり、かつ現在地域社会全体に広がった細菌である、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)が含まれる。偶発的な「スーパーバグ」の創出の世界的規模の波及にもかかわらず、現代医学は、バイオフィルム関連感染症に対する治療法をほとんど有していない。さらに、抗生物質耐性「スーパーバグ」の永続化を回避するために、そのような治療は広い観点ならびに抗バイオフィルム活性を有しなければならないため、この問題に対する解決策は、別の新たな抗生物質の開発にはとどまらない。これは、現実の患者において何度となく反映されていることであり、彼らに対する、MIC試験において有効であることが「証明された」抗生物質による連続的で長期間の治療でさえ、しばしば失敗に終わっている。
【0009】
細菌バイオフィルムマトリックスを攻撃する、溶解する、または他の方法で弱めること、細菌群集を維持するクオラム機構を遮断すること、ならびに局所的な宿主の先天性免疫を上方制御することは、さもなければ不治の慢性感染症または慢性バイオフィルム関連炎症性疾患になるであろうものを治癒し得る。細菌バイオフィルムの「よろい」の貫通または分散は、バイオフィルムにより誘導される慢性炎症、特に「スーパーバグ」に伴うものと闘う上で重大である。
【0010】
インビトロの抗生物質有効性試験の結果は、試験されかつ有効だと想定される抗生物質に対してインビボにおいて病原性バイオフィルムによって与えられる保護を著しく過小評価し得る。バイオフィルムの保護特性のため、これらの結果に基づいた抗生物質の選出は、見当違いであり得、誤解を招く恐れがあり得、臨床的に有害でさえあり得る。実際のところ、MIC調査で有効であるとして実証された抗生物質による連続的で長期間の治療でさえ、バイオフィルム関連炎症状態に苦しむ患者においてしばしば失敗に終わっている。
【0011】
バイオフィルム状態の細菌は、抗生物質に対して強固に耐性であるだけでなく、それらは、アルコール、酸、およびヨウ素溶液などの他の抗細菌剤および殺生物剤に対しても耐性である。事実、そのような殺生物剤の使用は、実際には、医療従事者の手など、関与している表面上での病原性バイオフィルムの蔓延を増大させ得るため、一般的な手の「除菌剤」などの今日の「殺菌剤」は、問題の一部であり得る。したがって、バイオフィルムの解離および/またはバイオフィルムの分泌の予防を誘導する抗生物質以外の方法を開発することが、増加しつつある研究の領域である。
【0012】
しかしながら、すべてのバイオフィルムが病原性というわけではない。胃腸プロバイオティクスは、病原性バイオフィルムを形成する生物による腸管感染に対して粘膜表面を保護するバイオフィルムを分泌する。加えて、ある種の乳酸菌(Lactobacillus)および大腸菌(E.coli)などの相助関係的プロバイオティクスは、正常な腸運動、毒素排除、およびビタミンB12などの栄養素の効率的な吸収などの他の利益を宿主に付する。その上、進化の観点から、ヒトの身体は、生存上の利点のためにプロバイオティクス微生物によるコロニー形成を必要とする。この相互依存は、ヒト宿主とその有益な微生物叢との間の相助関係を例示している。
【0013】
ヒト宿主は、病原菌の侵入および付随するバイオフィルム形成に対する正常な応答として、炎症反応を始動する。そのような炎症反応が持続された場合、当初は正常な免疫応答であるこの不適切な過剰刺激は、ヒト宿主自体に対する損傷および疾患をもたらし得る。しかしながら、プロバイオティクス生物は、それらの病原性相当物とは違って、健常でかつバランスのとれた免疫応答を維持する。言い換えれば、プロバイオティクスは、宿主の炎症反応と抗炎症反応との間の恒常性を維持する。
【0014】
炎症は、白血球細胞の動員、毛細血管からの体液の漏出、ならびに侵入微生物を殺傷するのに必要な化学伝達物質および酸化剤の放出を伴う複雑な現象である。宿主により産生された炎症は宿主自体に損傷を引き起こし得るため、免疫恒常性を維持することは重要である。これらのまさに同じ過程は、病原菌の根絶が起こった時点で「スイッチオフ」されなかった場合、局所的な組織損傷、身体的危害、および結果として起こる疾患をもたらす。
【0015】
プロバイオティクス生物は、病原菌に対する身体の免疫監視を上方制御するが、炎症シグナルを下方制御もする。プロバイオティクスによるこの絶え間ない平衡作用は、免疫刺激と免疫過剰刺激との間の精巧であるが重大な恒常性を維持するのに役立つ。この恒常性の破壊は、マイボーム腺機能不全および慢性鼻副鼻腔炎などの慢性炎症状態といった、共通した単一化子(unifier)を有するある共通したヒト疾患をもたらし得る。
【0016】
バイオフィルムは、医学のすべての領域において幅広い臨床的関連性を有する。シュードモナス菌(Pseudomonas)およびブドウ球菌(Staphylococcus)と一般に関連したものなどの細菌バイオフィルムは、難治性感染症ならびに慢性軽度炎症の原因であることが知られている。それらは、細胞外マトリックス材料の保護層を集団的に分泌かつ形成する細菌生物のコロニーからなる。細菌バイオフィルム内の細菌コロニーは、宿主の自然防御ならびに抗生物質治療に対して非常に耐性があると思われる。バイオフィルムは、これらのコロニーが接着し得るヒト身体中またはヒト身体上の事実上任意の表面にコロニー形成する。それらは、尿道カテーテル、経皮的静脈ライン、および人工心臓弁などの生体材料にしばしばコロニー形成する。
【0017】
ドライアイは、米国のみでも1000万人を超える人々に影響を及ぼす医学的状態である。それは、ほぼ間違いなく最も多い眼の状態である。一般眼科診療におけるその頻度は、50%もの高さであり得る。それは、目の涙腺および付属器の分泌腺によって産生される涙の産生および/または組成の欠陥から生じる。目は、涙の絶え間ない流れに依存して目の表面を潤し、視覚および目の全体的快適性を維持している。涙は、水分、油分、粘液、抗体、および他のタンパク質から構成される。これらはすべて、通常、目の周辺に位置する涙腺および眼瞼のマイボーム腺によって分泌される。涙の量の不均衡、ならびに/または涙構成要素の組成および/もしくは量に異常がある場合、人は、視覚のぼやけ、目の炎症、充血、かゆみ、痛み、および眼球の「異物」感という、ドライアイの多くの様々な症状を経験し得る。
【0018】
ドライアイの状態の大多数は、眼の酒さ、眼瞼炎、および眼アレルギーと関連しているマイボーム腺機能不全によるものである。ドライアイ症候群の影響には、生活の質への深刻な悪影響、角膜損傷、進行中の眼球および眼球周囲の炎症および感染症さえも含まれる。ドライアイ症候群の共通した症状には、乾燥した、チクチクする、ザラザラする、もしくはゴロゴロした感覚、異物感、痛みもしくはヒリヒリした痛み、刺すような感じ、焼けるような感じ、目の疲労、かゆみ、まばたきの頻度の増加、羞明、ぼやけた視覚、充血、粘液排出、コンタクトレンズ装着に耐えられない、および涙の分泌過剰さえも含まれる。これらの症状は、狼瘡、関節リウマチ、シェーグレン症候群、通常の老化、コンタクトレンズの使用、レーシックなどの任意の角膜手術、糖尿病、任意の原因のマイボーム腺機能不全、解剖学的異常、長時間のコンピューターの使用、および医薬、ならびにアレルギー性結膜炎などの他の一般的な眼球表面の障害を含む多くの状態によるものであり得る。ドライアイの眼球表面には、進行中の炎症を示す、白血球およびサイトカイン伝達物質の増加が見られる。
【0019】
慢性的な眼球および眼球周囲の炎症に影響を及ぼしていると考えられる局所的刺激物および炎症性化学物質を希釈および除去するために、眼瞼および眼球の衛生法が一般に推奨される。最も一般的な推奨には、他の市販の洗剤だけでなく、希釈したボディーシャンプーによる眼瞼のこすり洗いが含まれる。しかしながら、これらの製品のいずれも、臨床的に関連する曝露時間内に眼瞼の細菌を殺傷するほど十分には抗菌性でない。
【0020】
ドライアイ症候群は多くの原因を有するが、原因にかかわらずドライアイ症候群に共通した病態は、涙の質または量の変動による眼球表面上での異常な変化である。涙液は、3層−親水性の粘液層、ならびに水層および脂質層からなる。角膜に隣接して、粘液層は結膜杯細胞によって産生され、角膜表面の糖タンパク質によって吸収される。潜在的に正常な量の涙が産生されても、ムチン自体の欠陥または機能不全は、角膜表面の湿潤不足および/または糖化、ゆえにドライアイ症候群に共通した乾燥および上皮損傷につながり得る。涙の容量の大部分を形成する水層は、涙腺によって分泌され、粘液層に隣接する。高容量かつ高拡散性の水性の構成成分は、角膜に栄養素および酸素を送達し、その他にはそれ自体は多量の血液および栄養素の流れを受けない。最後の層は、眼瞼のマイボーム腺、ツァイス腺、およびモル腺によって分泌される脂質層である。この層における脂質は、水性体液の表面張力を低下させ、眼球表面にわたった涙液の効率的な分散を可能にし、かつ涙の水層の蒸発を遅らせることによって、界面活性剤および皮膚軟化剤として機能する。涙腺およびマイボーム腺はアンドロゲン受容体を有するため、低アンドロゲン状態は、脂質層の異常をもたらし得、涙の蒸発を加速させてドライアイをもたらす。
【0021】
ドライアイ症候群は、最も影響を受けた涙液の構成成分によってさらに特徴付けされ得る。したがって、ドライアイ症候群を、潤滑欠陥ドライアイ、水性の涙の欠陥ドライアイ、および蒸発性ドライアイに分けることができる。潤滑欠陥ドライアイは、涙のムチン層の異常を伴う。ムチン層は、アレルギー性結膜炎、直接的な化学刺激(点眼薬中の防腐剤など)、揮発性の粘膜刺激物、ウイルス感染、熱損傷、ならびにビタミン欠乏およびタンパク質栄養不良などの栄養障害/代謝障害を含む多数の条件によって破壊され得る。
【0022】
水性の涙の欠陥ドライアイは、涙腺によって分泌される水層の異常な機能または量によるものである。涙の欠陥は、シェーグレン症候群、シェーグレン病、狼瘡、関節リウマチ、および糖尿病、ならびに涙腺萎縮と関連している通常の老化過程などの多くの全身的状態から生じ得る。他の原因には、眼球への化学刺激、涙腺損傷、ウイルス感染、更年期、ならびに利尿薬、抗ヒスタミン剤、経口避妊薬またはホルモン療法、降圧剤、抗鬱剤、および全身性血管収縮剤などの医薬が含まれる。
【0023】
蒸発性ドライアイは、脂質層の異常によるものである。該脂質層は、有効な界面活性剤および皮膚軟化剤として機能することができないため、それは涙液層の過剰な蒸発を引き起こす。最も一般的には、蒸発性ドライアイは、マイボーム腺機能不全、環境条件(空中刺激物、低い周囲湿度、高い周囲温度)、および正常なまばたきの頻度を顕著に低下させて角膜からの涙液のより急速な蒸発を引き起こすコンピューターの使用によるものである。
【0024】
涙液層の異常に加えて、ドライアイの他の原因が存在する。これらには、解剖学的(グレーブス病の目の表面の過剰曝露、通常の老化と関連している眼瞼の反転)および神経性の原因が含まれる。眼球表面の神経刺激は、通常、涙腺への直接的フィードバックをもたらし、次いでそれに応じて涙腺は適切に分泌を調整する。この神経フィードバックは、眼球感覚に影響を及ぼす末梢神経損傷、脳卒中、またはより一般的には、レーシック角膜手術によって阻害される。眼球および眼窩の手術は、器具および手術による外傷での組織への物理的影響により、ドライアイ症候群を簡単に引き起こし得る。さらに、リノール酸などの必須脂肪酸(EFA)の異常な割合および/または量、ならびにオメガ-3およびオメガ-6 EFA間の不均衡は、眼球表面の炎症およびドライアイを引き起こし得る。コンタクトレンズの長時間の使用は、栄養素および酸素の正常な分布への機械的干渉、ならびに典型的にはコンタクトレンズ自体に起こる慢性的な物質の沈着により、ドライアイを引き起こし得る。これらの微小凝固物は、細菌増殖およびシュードモナス菌とブドウ球菌からの病原性バイオフィルム産生の病巣、ならびに角膜上皮への微小外傷の原因になる。
【0025】
眼球表面の乱れの具体的原因にかかわらず、最終結果は、眼球表面における慢性炎症である。先天性免疫システムは、この過程の主な開始因子であると思われる。任意の原因のドライアイ症候群では、結膜のCD4 T細胞および角膜のCD11b+単球などの免疫細胞の眼球表面および眼球周囲への低レベルで進行中の浸潤が発生する。眼球表面の乾燥によって誘導される局部的な組織ストレスは、IL-1、TNF-α、およびIL-6などの炎症性サイトカインの分泌を誘導する。これらの物質は、近くの抗原提示細胞(APC)を活性化し、今度はIL-17を産生するTh17細胞ならびにIFN-γを産生するTh1細胞の増大を引き起こす。生成されたサイトカインのIL-17およびIFN-γは、眼球表面への白血球の移動を増加させることによって炎症応答を永続させる。長い時間をかけて、この低レベルの炎症によって、目は、細菌、ウイルス、および他の感染症に対してより影響を受けやすくなり得る。
【0026】
一般集団における高頻度の慢性ドライアイ症候群は、持続的なニーズを確立しているが、この状態に対する特に有効な治療法は現在のところ存在しない。市販の治療法は、つかの間の症状の軽減を提供するが、眼球炎症の根底にある核心には対処できない。実際に、これらの製品の使用により、しばしばドライアイ自体が深刻化する。人工涙液中の眼球用防腐剤は、これらの化学物質への長期の曝露から生じる角膜損傷により、しばしばドライアイを悪化させる。「赤みを取り除く」局所的血管収縮剤の過剰使用も、角膜炎症を激化させ得る。処方薬の部類において、過去10年間に、米国では人工涙液の部類に勝る1種類の新たな製品−すなわち、Restasis(シクロスポリン)のみがドライアイの治療のために認可されている。局所的シクロスポリンは、非常に費用がかかり、かつ深刻な副作用プロフィール、ならびにたったの15%という乏しい臨床的奏功率を有する。したがって、乾燥した、刺激を受けた、および/または炎症を起こした目の症状を軽減することは、現在のところ、眼球への流体補給(すなわち、人工涙液の使用)、涙液損失を減少させるための鼻涙管内への涙点プラグによる外科治療、有害な可能性のある薬学的薬物の使用、または「加湿器眼鏡」および治療用コンタクトレンズなどの治療用眼球装置の使用に限定されている。しかしながら、これらの方法は、費用がかかり、扱いにくく、眼の病態をさらに永続させ得、その上部分的に有効であるのみである。
【0027】
現在の薬物開発は、いくつかの新たな薬学的製品に重点を置いている。局所的ホルモン療法は、慢性ドライアイを軽減するのに役立ち得るといういくつかの証拠が存在する。また、改良シクロスポリン、局所ステロイドおよび非ステロイド性抗炎症剤、経口a-3アデノシン受容体アゴニスト、レゾルビンとして知られる合成抗炎症分子、抗LFA-1化合物、前炎症性インターロイキンアンタゴニスト、免疫抑制モノクローナル抗体、局所性抗生物質、化学物質分泌促進剤、およびヒアルロン酸含有人工涙液が進行中である。しかしながら、最後のものを除いて、これらのすべては高価な薬学的製品であり、そして、ヒアルロン酸点眼薬は、市場にすでに出回っている人工涙液と同様に機能する。第二の治療様式は、ドライアイと関連したしばしば軽度の感染症に対処するための局所的抗生物質療法を含んでいる。ドライアイの頻度にもかかわらず、この領域における現在の広範囲な研究および進行中の薬物開発によって立証されているように、普遍的に受け入れられている治療様式は不十分である。今日の研究努力は、合成免疫調節医薬品に重点を置いており、新たな市販の眼用抗炎症化合物は現在のところ存在しない、または計画されていることが知られていない。
【0028】
乳酸菌抽出物は、化粧品用途に以前使用されていた(米国特許出願第11/70/810、L'Oreal特許、WO9907332、JP 3112983、JP 2002037739)。しかしながら、乳酸菌は、ドライアイの治療にはこれまで使用されていない。蜂蜜は、慢性皮膚炎症および/または感染症の治療のために化粧品用途にも使用されている。しかしながら、蜂蜜は、ドライアイの治療にはこれまで使用されていない。
【0029】
本発明の前に、慢性副鼻腔炎の治療は、長期(pronged)かつ連続的な、抗生物質、経鼻および全身性の副腎皮質ステロイド、ならびに耳鼻咽喉科手術さえもしばしば伴う。しかしながら、慢性鼻副鼻腔炎がバイオフィルム関係疾患としてますます認識されているとしても、状態自体のバイオフィルム構成成分に向けられた治療法は存在しない。ドライアイ症候群のための本発明において提案される同じ種類の解決策も、慢性鼻副鼻腔炎の治療および慢性鼻副鼻腔炎からの症状軽減に適用することができる。
【0030】
慢性副鼻腔炎と同様に、慢性歯周炎が一般集団において広く普及している。慢性歯周疾患の進行には、遺伝的および環境的な因子とともに、歯垢バイオフィルムが必要である。現時点で因果関係を確証する十分な証拠はないとしても、多くの調査は、口腔疾患と心疾患におけるアテローム発生との間の明確かつ並行な関係性を示している。それにもかかわらず、口腔疾患の治療は、hsCRPなどの炎症マーカーに反映される全身性炎症負荷の低下、および内皮機能の改善の両方につながる。しかしながら、現在のところ、慢性の歯肉疾患および歯周疾患に利用可能な唯一の治療法は、創面切除、および全身に服用されるまたは歯肉縁下に適用される抗生物質である。しかしながら、上述のように、抗生物質は、病原性バイオフィルムに対して一般的に効果が乏しい。
【0031】
他の広く普及している慢性炎症障害は、気道に関する。これらには、アレルギー性鼻結膜炎、慢性気管支炎、および喘息が含まれる。嚢胞性線維症およびアスペルギルス症などのあまり一般的ではない状態は、シュードモナス菌およびアスペルギルス菌(Aspergillus)のバイオフィルムなどのバイオフィルムに関与し、深刻な疾病率および死亡率をもたらすことが明確に確証されている。これらの状態のすべてにおける治療法には、ステロイド、ならびに全身性の抗生物質および抗真菌剤が含まれる。とりわけ、免疫調節特性を有する抗生物質であるマクロライド抗生物質は、一部にはそれらがバイオフィルム形成を減少させ得ることが理由で、慢性炎症と関連した呼吸器疾患を有する患者に有益であり得ることもある。しかしながら、現時点では、抗微生物剤またはステロイド以外に、他の非侵襲的治療の選択肢は存在しない。
【0032】
今日の抗生物質は、バイオフィルム関連感染症を治療することの深刻な失敗を明確にかつ繰り返し実証している。その上、抗バイオフィルム治療それ自体が周知であるまたは証明されているものはない。病原性バイオフィルム形成に続発すると推測される感染症を治療するための試みには、連続的かつ長期の抗生物質療法、バイオフィルムの物理的除去(すなわち、外科手術または創面切除)、および手の洗浄に用いられるアルコールベースの泡またはジェルなどの局所滅菌剤が含まれる。これらの治療法は、正常な生理機能を回復できないだけでなく、それらは先天性免疫の恒常性を乱す−抗生物質は、耐性「スーパーバグ」をますます繁殖させ、外科手術または創面切除は、感染のための別の潜在的部位を創出する解剖学的創傷をもたらし、かつ局所消毒剤は、正常な片利共生生物ならびに病原菌を根絶することによって病原性バイオフィルムの発生および増殖を助長し得る。
【0033】
現在の抗感染薬は、世界中の感染症の多くを治療し得ておらず、なぜならそのような治療はバイオフィルムの構成成分を治療できないからであり、事実、病原性バイオフィルム増殖の増大および感染症の悪化さえもたらし得る可能性がある。その上、バイオフィルム自体の形成および付着は、特定の病原菌が感染を引き起こすのを可能にする絶好の機会を創出し得る。有効であるために、治療は、病原性バイオフィルムの破壊を標的としなければならず、正常な先天性免疫を乱すよりむしろ支援しなければならず、かつ病原性バイオフィルムの維持の原因であるクオラムセンシング機構を遮断すべきである。
【0034】
眼球の分野において、抗生物質、合成免疫調節剤、または全身に送達される化合物よりむしろ安全で高価でなく局部的に投与された化合物を用いることによって、眼球表面に対して抗炎症効果および/または抗バイオフィルム効果を直接引き出すことがもし可能であれば非常に有用であろう。ほとんどの点眼薬に存在する化学防腐剤の使用をさらに制限または回避さえし得ることも、これらの化学物質自体が眼球表面の炎症を悪化させ得るため、非常に有用であろう。
【0035】
現在、ドライアイ症候群、ドライアイ、および/または慢性的に炎症を起こしている、赤い、もしくは刺激を受けた目の症状を有する個体の眼球表面に抗炎症効果および抗バイオフィルム効果を引き出すために利用可能な方法または治療法は存在しない。その上、抗生物質耐性という世界的規模の問題を永続させることなく、抗生物質耐性「スーパーバグ」感染症を潜在的に治癒し得る非抗生物質による非侵襲的な抗バイオフィルム療法の深刻な欠如がある。さらに、抗生物質または外科的介入などの現在の治療法は、深刻な関連する副作用を有し、費用がかかり、かつ治療の失敗ならびに「関与していない」領域を含む身体の残りの部分への波及を有する。
【0036】
ヒト粘膜、ならびに角質化上皮および非角質化上皮などの表面を含む、病原性バイオフィルムによる影響を受けた領域へ治療を直接適用することも望ましいであろう。そのような局所投与技術は、本質的に、局部的(皮膚用医薬、鼻腔用スプレー、経口吸入器または噴霧器、点眼薬、経口トローチ等)送達システムを介して投与されるため、全身毒性を逃れるであろう。例えば、治療法が天然の、一般的に安全だと見なされている(GRAS)誘導体/非薬学的成分から構成され得る場合、治療法が高価でなく安全であることも望ましいであろう。最後に、もし抗バイオフィルム化合物を不活性表面(すなわち、病院設備、飛行機のトレーテーブル、学校の机)に適用して、病院/臨床環境における、ならびに地域社会全体における病原性バイオフィルムの拡張/存在を制限することができたら有用であろう。
【発明の概要】
【0037】
本発明は、容易に入手可能な非毒性の天然物質を用いて、先天性免疫を効果的に支援し、かつ/または病原性バイオフィルムを消散し、一方で正常な微生物の(microbiotic)恒常性の回復を支援する物質および方法を提供する。
【0038】
本発明の組成物は、効率および安全性の両方を有意に増加させる直接適用によって、影響を受けた組織に送達することができる。組成物は、ヒト粘膜、ならびに角質化上皮および非角質化上皮などの表面を含む、病原性バイオフィルムによる影響を受けた領域へ直接適用されるため、それは、非侵襲性の抗バイオフィルム治療に対する現在のニーズに直接対処する。
【0039】
そのような局部に向けられた療法の例には、皮膚用医薬、鼻腔用スプレーおよび洗浄液、点耳薬、経口吸入器および噴霧器、点眼薬、コンタクトレンズ、コンタクトレンズ溶液、経口トローチ、洗口液、歯磨き粉、フロス、歯周治療などの歯磨剤が含まれる。それぞれの場合において、本発明の組成物を、その組成が解剖学的投与の領域に基づき生理学的に適切である媒体によって投与する。
【0040】
罹患部の解剖学的領域にも基づき、本発明は、2つまたはそれを上回る工程を適用する過程、例えば病原性バイオフィルムを減少させるための第一の組成物の局部適用、それに続く、正常な片利共生的細菌の恒常性の回復を促進する第二の組成物の適用を用いてよい。
【0041】
本発明の組成物を、不活性表面(例えば、病院設備、飛行機のトレーテーブル、学校の机)に適用して、環境における、ならびに地域社会全体における病原性バイオフィルムの拡張/存在を制限することもできる。
【0042】
本発明の別の利点は、その構成成分の確証された安全性である。本明細書において記載される組成物は、安全であることがすでに個々に確証されている構成成分から構成される。好ましい態様において、本発明の組成物は、天然の、一般的に安全と認められる(GRAS)成分の混合物を含む。
【0043】
本発明のさらに別の利点は、抗生物質と組み合わせられるその潜在性である。本発明は、抗バイオフィルム効果を有するため、それは、根底にあるバイオフィルム関連感染症を、典型的にバイオフィルム治療設定においては無効である抗生物質に対し感受性にする。本発明は、根底にある病原性微小生物を抗生物質による抗微生物メカニズムに対して「敏感にする」ため、本発明によって、抗生物質はより少量で用いられることも可能となり、それによって、毒性ならびに治療費は減少し得る。
【0044】
本発明の組成物の態様のすべてではないが多くに共通したいくつかの成分には、微生物代謝産物、単独で用いられる、または細菌、真菌、およびアルスロスピラ属(スピルリナ)プラテンシス(Arthrospira(Spirulina)platensis)などのシアノバクテリアを含む、生存能力のあるもしくは生存能力のないプロバイオティクス微生物もしくは他の微生物と組み合わせて用いられる細胞および/または無細胞画分、ならびに薬学的グレードの蜂蜜が含まれる。ある特定の態様において用いられ得る他の成分には、カラマツゴムまたはアカシアゴムなどのプレバイオティクス化合物、ロイヤルゼリーなどの他の蜜蜂製品、蜂パンおよびプロポリス、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)およびL-テアニンなどの緑茶誘導体、イヌラ・ヘレニウム(Inula helenium)、メラロイカ・アルテルニフォリア(Melaleuca alternifolia)、およびギョリュウバイ(Leptospermum scoparium)など由来の他の植物誘導体、ならびに水溶性および不水溶性ビタミンD3が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
好都合なことには、好ましい態様において、本発明の組成物の成分は一緒に働いて、バイオフィルム関連感染症を阻害し、一方で、病原性バイオフィルム消散の増進ならびに正常な局部先天性免疫応答の改善によって、関連する慢性炎症状態を改善する。
【0046】
眼球および付属器の組織適用の領域において、本発明の組成物を、ドライアイ症候群と関連した根底にある炎症過程の治療に用いることができる。眼球表面の上または近くの病原性バイオフィルムの続発症は、ドライアイ症候群を含む慢性眼球軽度炎症状態を引き起こし得る。本発明は、ドライアイ症候群の症状および原因を治療するための組成物を提供する。具体的には、これらの組成物は、病原性バイオフィルムの増殖を阻害し、かつ眼球/付属器の表面に全体的な抗炎症効果をもたらす。
【0047】
眼球表面および近接表面のそのような局所的治療は、眼球−付属器領域の病原性微生物相と有益な微生物相との間の恒常性を改善する。病原性生物対非病原性またはさらに有益な生物のバランスを取り戻すまたは調整することによって、慢性的に乾燥した、刺激を受けた、赤い、または炎症を起こした目の症状が改善される。そのような改善は、生きたもしくは死んだ微小生物、および/またはそれらの抽出物、ならびに抗バイオフィルム効果を保有する薬学的グレードの蜂蜜の局所的に適用される混合物を含む本発明の態様によってもたらされ得る。加えて、L-テアニン、ビタミンD3、プレバイオティクス・ポリサッカライド、および海洋生物のスピルリナなどの他の化合物を、本発明に従って用いて、病原性バイオフィルムに関連した状態を治療することができる。
【0048】
本発明は、慢性眼球炎症状態、具体的にはドライアイ症候群におけるバイオフィルムの役割の認識に部分的に基づく。眼球および付属器の微生物叢の機能は、局部先天性免疫システムを「増強する」およびコロニー形成された表面を保護することである。片利共生的微生物相と眼球粘膜上皮細胞および免疫上皮細胞との間のクロストークは、眼球表面の恒常性および眼球表面の健康を維持するのに役立つ。眼球表面にコロニー形成する片利共生生物には、ブドウ球菌(Staphylococci)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、レンサ球菌(Streptococcus)、およびプロピオニバクテリウム属(Proprionibacterium)のような多様な微小生物が含まれる。この微生物叢は、乱されない限りは比較的安定した状態を保つ。しかしながら、健常な眼球および眼球周囲の微生物叢バランスに影響を及ぼす可能性がある多くの共通した状況−抗生物質および他の医薬、コンタクトレンズ、眼瞼炎、マイボーム腺機能不全、眼球酒さ、または慢性的な目の痛みおよび/もしくはドライアイの他の原因が存在する。正常な眼球および眼球周囲の微小生物集団が任意の数の可能性のある共通した原因によって乱された場合、眼球表面への刺激、炎症、および不快感が生じる。
【0049】
本明細書において記載される局所的に適用される混合物の適用は、眼球表面および周辺領域の炎症の減少をもたらす。ドライアイ疾患の多くの異なる原因は、慢性炎症という同じ免疫病態によってまとめられるため、慢性的に乾燥した、赤い、刺激を受けた、および/または炎症を起こした目の症状の改善のために、本発明は一般市民全体によって使用されてよい。
【0050】
ドライアイの治療にとどまらず、本発明の組成物は、病原性バイオフィルムの予防および/もしくは破壊のために、ならびに/または慢性鼻副鼻腔炎;慢性歯周炎;慢性気管支炎、ならびにアスペルギルス症、嚢胞性線維症、および喘息を含む呼吸器炎症の他の状態;「スイマー耳」、外耳炎、および慢性耳炎などの炎症性の耳の状態;ならびにアトピー性皮膚炎および湿疹などの炎症性の皮膚の状態などの様々な他の慢性炎症状態に存在する、それらと関連している、またはそれらにつながる慢性感染症のために用いることができる。これらの状態の病態生理は、病原性種および病原性バイオフィルム形成による正常な片利共生的細菌集団の破壊を伴う可能性がある。本発明は、これらの状態および根底にある炎症状態と関連した症状を改善する。
[本発明1001]
バイオフィルムからの、バイオフィルムが増殖した培地からの、または患者から抽出し、次いでバイオフィルムとして増殖させた生物学的サンプルからの、単離された生物学的に活性な組成物。
[本発明1002]
バイオフィルムからの、バイオフィルムが増殖した培地からの、または患者から抽出し、次いでバイオフィルムとして増殖させた生物学的サンプルからの、単離された生物学的に活性な組成物であって、生物学的活性とは該組成物が投与される微生物叢を調節する能力である、組成物。
[本発明1003]
抽出によって単離される、本発明1001または1002の組成物。
[本発明1004]
抽出物が物理的または化学的処理によって獲得され得る、本発明1003の組成物。
[本発明1005]
抽出物が泡を用いた処理によって獲得され得る、本発明1004の組成物。
[本発明1006]
無細胞である、本発明1001または1002の組成物。
[本発明1007]
生物系界面活性剤を含む、本発明1001または1002の組成物。
[本発明1008]
生物学的活性とはバイオフィルムに影響を及ぼす活性である、本発明1001または1002の組成物。
[本発明1009]
前記活性が、付着阻害;増殖阻害;バイオフィルムマトリックス破壊;細胞外因子の分泌および/または放出を予防、阻害、および/または破壊すること;ならびに、クオラムセンシング機構を予防、阻害、および/または破壊することからなる群より選択される1つまたは複数の活性を含む、本発明1008の組成物。
[本発明1010]
前記活性が、付着促進;増殖促進;バイオフィルムマトリックスの安定化または凝集;細胞外因子の分泌および/または放出を促進、上方制御、または安定化すること;ならびに、クオラムセンシング機構を促進、上方制御、または安定化することからなる群より選択される1つまたは複数の活性を含む、本発明1008の組成物。
[本発明1011]
バイオフィルムがプロバイオティクス生物に由来する、本発明1001または1002の組成物。
[本発明1012]
動物に投与された場合に、免疫システムおよび/または炎症応答を調節する、本発明1001または1002の組成物。
[本発明1013]
本発明1001または1002の単離された生物学的に活性な組成物および任意の許容可能な担体を含む、動物への投与のために調製された化粧用または薬学的組成物。
[本発明1014]
プロバイオティクス、抗生物質、生物系界面活性剤、植物抽出物、ビタミン、プレバイオティクス、および蜜蜂製品からなる群より選択される1種類または複数種類の成分をさらに含む、本発明1013の組成物。
[本発明1015]
化粧用組成物であって、担体が化粧用途に適している、本発明1013の組成物。
[本発明1016]
薬学的組成物であって、担体が薬学的用途に適している、本発明1013の組成物。
[本発明1017]
局所投与のために調製された、本発明1013の組成物。
[本発明1018]
眼球、眼球周囲、副鼻腔、鼻、歯周、口腔咽頭、耳、角質化したおよび角質化していない皮膚表面、下気道、胃腸、ならびに泌尿生殖器からなる群より選択される位置への投与のために調製された、本発明1017の組成物。
[本発明1019]
内視鏡、舌下点滴器、針もしくはシリンジ技術、直接的もしくは間接的送達、洗浄、罹患部位への直接的もしくは間接的適用、カテーテル向けの適用、または血管内注入によって投与されるために調製された、本発明1013の組成物。
[本発明1020]
本発明1001または1002の単離された生物学的に活性な組成物および任意の許容可能な担体を含む、無生物表面への適用のために調製された組成物。
[本発明1021]
微生物叢、バイオフィルム、ならびに/または微生物叢および/もしくはバイオフィルムの周辺を、本発明1001または1002の組成物に曝露することを含む、微生物叢を操作するための方法。
[本発明1022]
ヒト微生物叢を操作するために用いられる、本発明1021の方法。
[本発明1023]
生物学的に活性な組成物が、操作されるのと同じ微生物叢から得られたバイオフィルムから単離される、本発明1021の方法。
[本発明1024]
動物における病的状態を治療するために用いられる、本発明1021の方法。
[本発明1025]
前記動物がヒトである、本発明1024の方法。
[本発明1026]
前記状態が急性または慢性の炎症である、本発明1024の方法。
[本発明1027]
前記状態が、ドライアイおよび他の慢性もしくは急性の眼球の状態;慢性もしくは急性の鼻副鼻腔炎;慢性もしくは急性の鼻炎;慢性もしくは急性の歯周炎;慢性もしくは急性の気管支炎、嚢胞性線維症、および呼吸器炎症の他の状態;急性および慢性の耳炎および外耳炎を含む炎症性の耳の状態;炎症性の皮膚の状態;胃炎および胃食道逆流を含む炎症性の腸の状態;炎症性の泌尿生殖器の状態;ならびに、炎症性の心血管系の状態からなる群より選択される、本発明1024の方法。
[本発明1028]
前記病的状態が、内視鏡、舌下点滴器、針もしくはシリンジ技術、直接的もしくは間接的送達、洗浄、罹患部位への直接的もしくは間接的適用、カテーテル向けの適用、または血管内注入を介した投与によって治療される、本発明1024の方法。
[本発明1029]
無生物表面上における、バイオフィルムの付着阻害;増殖阻害;バイオフィルムマトリックス破壊;細胞外因子の分泌および/または放出を予防、阻害、および/または破壊すること;ならびに、クオラムセンシング機構を予防、阻害、および/または破壊することに影響を及ぼすために用いられる、本発明1021の方法。
[本発明1030]
そのような調節を必要としている動物に、有効量の本発明1001または1002の組成物を投与することを含む、動物における免疫システムおよび/または炎症応答を調節するための方法。
[本発明1031]
前記動物がヒトである、本発明1030の方法。
[本発明1032]
バイオフィルムを増殖させる工程;
1つまたは複数の抽出物画分を作製するために、バイオフィルムまたはバイオフィルムが増殖している培地を物理的または化学的に処理する工程;
生物学的活性を同定するために、該画分を試験する工程;ならびに、
該画分が生物学的活性を有することが見出された場合にそれを選択する工程
を含む、生物学的に活性な組成物を同定するための方法。
[本発明1033]
バイオフィルムがプロバイオティクスバイオフィルムである、本発明1032の方法。
[本発明1034]
バイオフィルムまたは培地が患者から獲得される、本発明1032の方法。
[本発明1035]
バイオフィルムまたはそれが増殖している培地が、泡、溶解剤、および/またはpH調整剤を用いて処理される、本発明1032の方法。
[本発明1036]
本発明1032の方法によって選択される、画分。
[本発明1037]
選択された前記画分において1種類または複数種類の単離された化合物を同定することをさらに含み、該化合物が生物学的に活性である、本発明1032の方法。
[本発明1038]
本発明1037の方法によって同定される、化合物。
[本発明1039]
本発明1038の化合物、ならびに任意の化粧用および/または薬学的担体を含む、組成物。
[本発明1040]
本発明1001または1002の組成物を含む、吸入デバイス。
[本発明1041]
前記組成物が、生物系界面活性剤を含むように調製されている、本発明1040の吸引デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0051】
発明の詳細な説明
本発明は、容易に入手可能な非毒性の天然物質を用いて、先天性免疫を効果的に支援し、かつ/または病原性バイオフィルムを消散し、一方で正常な微生物の恒常性の回復を支援する物質および方法を提供する。
【0052】
本発明のすべての態様ではないが多くに共通した要素には、マヌカ蜂蜜(Medi-Honey, Comvita, New Zealand、または健康管理食品のための15kGy放射線滅菌用量を検証するISO 11137-2a 2006によって滅菌されたマヌカ蜂蜜、Food Technology Service Incorporated, Mulberry, Florida)などの抗バイオフィルム効果を備えた抗微生物蜂蜜と組み合わせた、好酸性乳酸桿菌(Lactobacillus acidophilus)属、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、もしくは大腸菌(Escherischia coli)、それらの画分、および/またはそれらの代謝産物などの、1種類または複数種類のプロバイオティクス生物の組み合わせが含まれる。
【0053】
必ずしもすべての態様ではないが他の態様に用いられ得る他の要素には、カラマツゴムまたはアカシアゴムなどのプレバイオティクス化合物、ロイヤルゼリーなどの他の蜜蜂製品、蜂パンおよびプロポリス、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)およびL-テアニンなどの緑茶誘導体、イヌラ・ヘレニウムおよびマヌカ低木などからの他の植物誘導体、ならびにビタミンD3が含まれる。
【0054】
その最も一般的な形態において、本発明は、適用する部位に適した任意の媒体に添加され得る活性構成成分の混合物を含む組成物を提供する。
【0055】
本発明のこの特定の態様は、その投与に用いられる媒体または担体とは無関係である。例えば、そのような態様を、他の既存の製品またはまだ開発されていない製品に添加され得る「成分」として用いてよい。本発明のこの「成分」形態のための一つの処方には、薬学的グレードの蜂蜜およびプロバイオティクス生物が含まれる。例えば、
処方1:100B CFUの凍結乾燥した
*S.サーモフィルス菌(S. thermophilus)+100μLの蜂蜜=1B CFU/ml 100%蜂蜜
処方2:250μL 100B CFU/mlの
*S.サーモフィルス菌+500μLの蜂蜜=25B CFU/ml 75%蜂蜜
処方3:500μL 100B CFU/mlの
*S.サーモフィルス菌+500μLの蜂蜜=50B CFU/ml 50%蜂蜜
処方4:750μL 100B CFU/mlの
*S.サーモフィルス菌+250μLの蜂蜜=75B CFU/ml 33%蜂蜜
処方5:900μL 100B CFU/mlの
*S.サーモフィルス菌+100μLの蜂蜜=90B CFU/ml 10%蜂蜜
*特異的株のS.サーモフィルス菌ATCC BAA-250;しかしながら、他の株を代用してもよい。
【0056】
Medi-Honey(Comvita Inc., New Zealand)などのγ線照射された蜂蜜または濾過滅菌された蜂蜜を、希釈なしで用いても、またはプロバイオティクスの添加前に、滅菌した通常の生理食塩水で種々の最終濃度に希釈して用いてもよい。フリーズドライしたS.サーモフィルス菌(NCFB 2393またはLMG 18311またはATCC BAA-250)などの生物を用い、100%蜂蜜もしくは上記のような蜂蜜−生理食塩水に添加して、1000億CFU/mlの最終濃度の混合物を獲得してよい。
【0057】
本発明のこの「成分」形態のための別の処方には、プロバイオティクス生物に由来する1mgまたはそれを上回る生物系界面活性剤の凝縮された供給源が含まれる。収率は、生物の株のタイプおよび培養条件によって変化する。この凝縮された生物系界面活性剤画分を、種々の生物系界面活性剤濃度のために標準的PBS溶液に希釈することができる。例えば、
処方6:1mg/ml希釈のために、1000μL
***PBS中に1000μgの
**S.サーモフィルス菌生物系界面活性剤
処方7:0.5mg/ml希釈のために、1000μL
***PBS中に500μgの
**S.サーモフィルス菌生物系界面活性剤
処方8:2mg/ml希釈のために、250μL
***PBS中に500μgの
**S.サーモフィルス菌生物系界面活性剤
処方9:5mg/ml希釈のために、100μL
***PBS中に500μgの
**S.サーモフィルス菌生物系界面活性剤
処方10:10mg/ml希釈のために、1mL
***PBS中に10mgの
**S.サーモフィルス菌生物系界面活性剤
*生物系界面活性剤の単離方法の態様は下記に記載されている。
**特異的株のS.サーモフィルス菌ATCC BAA-250;しかしながら、他の株で代用してもよい。
***Medi-Honeyなどの蜂蜜または抗バイオフィルムを特徴とする蜂蜜を、滅菌したPBSの標準的溶液に代用してもよい。いずれのそのような溶液を、必要に応じてさらに希釈してよい。
【0058】
本発明の組成物を、ヒト粘膜表面、角質化上皮および非角質化上皮の表面など、関与している領域に直接適用することができる。この技術は、投与が局部的(皮膚用医薬、鼻腔用スプレー、経口吸入器または噴霧器、点眼薬、経口トローチ等)であるため、全身毒性を低減または排除する。
【0059】
加えて、罹患部の解剖学的領域にも基づき、本発明は、2つまたはそれを上回る工程の適用過程、すなわち病原性バイオフィルムを減少させるための第一の製剤の局部適用、それに続く、正常な片利共生的細菌の恒常性の回復を補助する第二の製剤の適用を用いてよい。
【0060】
本発明の種々の態様には、眼球用の点眼薬、ゲル、軟膏、クリーム、または適用の領域に適した活性化合物の送達の他の媒体、眼球周囲用のローション、ゲル、軟膏、クリーム、または適用の領域に適した送達の他の媒体、鼻腔用の水性もしくは非水性スプレー、鼻用生理食塩水リンス液、皮膚用の石鹸、ローション、クリーム、皮膚軟化剤、ならびにコンタクトレンズの洗浄および維持管理に向けられたものなどの溶液、またはスプレーが含まれる。
【0061】
MBEC(最小バイオフィルム撲滅濃度)手順を実施するための、バイオフィルムの接種用のFDAクラスI認可デバイスであるCalgary Biofilm Device(参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6599714号)または抗バイオフィルム効率を査定する他の手段を用いることによって、本発明の構成要素、抽出物、および/または混合物の抗バイオフィルム効率を査定してよい。これは、以下に詳細に記載される方法を含んでよい。採用され得る他の抗微生物試験には、寒天またはディスク拡散技術、Kirby-Bauer試験、および最小阻害濃度(MIC)が含まれる。これらの技術は、最先端の技術に精通している当業者に周知であり、本明細書において詳細には記述されない。プロトコールを、John Lammertによる「Techniques in Microbiology」, Pearson Education, 2007およびGeorge A. Wistreichによる「Microbiology Laboratory Fundamentals and Applications」, Pearson Education, 2003において見出すことができ、それらは参照によりその全体として本明細書に組み入れられる。
【0062】
現在の高性能抗バイオフィルム効率試験は、本質的に1つの試験、つまりMBEC試験(上記参照、米国特許第6,599,714号)に限定されている。この特定の試験は、試験用プレートの非再利用性および費用、ならびにバイオフィルムがその上に増殖すると想定されるそれぞれ個々のペグ周辺の有効なせん断力の欠如を含むいくつかの制限を有する。十分なせん断力なしでは、強力なバイオフィルム形成の発生が刺激されず、本当のインビボバイオフィルム条件は近似されない可能性が高い。
【0063】
しかしながら、微生物バイオフィルムは、回転チューブ反応器システムにおける球体などの比較的非多孔性の媒体上で増殖し得る。この非多孔性媒体は、滅菌した5mmグラス球体によって代表されてよい。反応器の管は、滅菌した50mlチューブのポリスチレンFalconチューブ、または回転シェーカー上に置かれた類似のカラムであってよい。チューブまたはカラムは、機械的回転器上での回転によって管内容物の流出が起こらないように、水密性の蓋を有してよい(すなわち、ねじ蓋、ゴム、またはコルク栓によって内容物を保護する)。目の粗いメッシュのオートクレーブ可能なプラスチック栓によって、球体をチューブまたはカラムの末端に固定化してよい。デバイスが機械的に回転すると、閉鎖システム内の媒体上に真空効果または静的効果を産出せずに、洗浄する動きが生まれて球体表面に接着している細胞性生物にせん断力が提供されるように、各チューブまたはカラムは十分な空間を含有してよい。濾過ポンプを介して循環するチューブ注入口およびチューブ排出口などのデバイスによって、滅菌した鉗子または類似の装置の使用による媒体置換および個々の球体の無菌的除去が可能となる。循環する生物学的増殖培地を、膜濾過によって滅菌してよい。球体上で増殖する十分なバイオフィルム形成の陽性判定を、種々の顕微鏡染色技術によって実施してよい。
【0064】
抗微生物感受性ウェル内に置かれた抗微生物のアレイに対して、球体上で増殖したバイオフィルムを試験してよい。ウェルプレートまたは類似のデバイスを用いて、小型の標準的な寒天菌叢を創出する。この技術は、最先端の技術に十分に精通している当業者に周知であり、本明細書において詳細には記述されない。プロトコールを、John Lammertによる「Techniques in Microbiology」, Pearson Education, 2007およびGeorge A. Wistreichによる「Microbiology Laboratory Fundamentals and Applications」, Pearson Education, 2003において見出すことができ、それらは参照によりその全体として本明細書に組み入れられる。寒天を調製し、オートクレーブし、かつ小型の管内に分割し、種々の濃度の試験抗微生物と混合し、かつ冷却させる。寒天が凝固したら、寒天菌叢から、バイオフィルム球体のサイズと同等のサイズの円形のウェルを押し出す。次いで、球体をウェル内に置く。
【0065】
ウェルとバイオフィルムで被覆された球体とを含有しているプレートを覆い、試験されている特定の生物に適した条件において加湿インキュベーター内でインキュベートする。抗バイオフィルム効率の程度は、特定のウェル周辺の細胞増殖の直接可視化によって表され、すなわち、増殖の径が小さければ小さいほど、その特定化合物の抗バイオフィルム効率は大きい。あるいは、抗バイオフィルム効率の程度は、バイオフィルム増殖の可視化を増進するために寒天培地中に混合したある特定の染色剤の変換によって創出される色の変化によって測定されてもよい。
【0066】
試験されている同じ抗微生物化合物および微小生物について最小阻害濃度(MIC)試験を実施することによって、抗バイオフィルム効率(バイオフィルム阻害濃度、つまりBIC)を、プランクトン様に対する効率と直接比較することができる。加えて、この場合には、測定されるものが、蜂蜜などの化合物の抗微生物物質の殺傷径(「阻害地帯」)ではなく完全なバイオフィルム増殖阻害のサイズ(バイオフィルム阻害濃度、つまりBIC)であるという点を除いて、マヌカファクター(参照により本明細書に組み入れられる、Molan, Peter,「Method for the assay of antibacterial activity of honey」, 2005)に類似した分類システムを用いて、抗バイオフィルム効率を測定することができる。この手順を用いて、様々な細菌に対する蜂蜜を含む個々の化合物のBIC標準物、ならびにグラム陰性細菌、メチシリン感受性およびメチシリン耐性のブドウ球菌等の細菌群に対する化合物を合わせた複合体のBIC標準物を開発する。
【0067】
本発明の別の高性能バリエーションにおいて、上記のバイオフィルムで被覆された球体を96ウェルプレート内に直接置いて、大集団の抗微生物化合物および/または濃度に供することができる。超音波処理によってこれらの球体からバイオフィルムを除去し、結果として生じた上清を、MBEC手順(以前の参考文献を参照されたい)に記載されるものに類似した過程におけるプレーティングおよび光度分析によって解釈してよい。
【0068】
本発明における使用のための任意の生物の培養の間、培養物は、それらが最大のバイオフィルム産生のために回収され得る時点において、最大のプラトー増殖段階まで増殖していてもまたは増殖していなくてもよい。
【0069】
ある特定の態様において、細胞画分もしくは無細胞画分または生物の抽出物、またはバイオフィルム誘導体自体などのそれらの細胞外環境は、画分自体の供給源よりもさらにより有効であり得る特定の抗バイオフィルム効率および/または抗炎症効率を有してよい。
【0070】
本発明のバイオフィルム阻害組成物
本発明の成分を、粉末、懸濁液、および溶液を含むが、これらに限定されない種々の形態で調製することができる。加えて、プロバイオティクスなどの種々の成分を、凍結乾燥した粉末もしくは培養上清として、および/または適切な場合には濃縮した形態で調製することができる。
【0071】
ある特定の態様において、治療用組成物は、少なくとも約0.001B CFU/g、0.005B CFU/g、0.01B CFU/g、0.05B CFU/g、0.1B CFU/g、0.5B CFU/g、1B CFU/g、5B CFU/g、10B CFU/g、50B CFU/g、100B CFU/g、または500B CFU/gの濃度(B CFU/組成物の重量)で少なくとも1種類のプロバイオティクス生物を含む。
【0072】
ある特定の態様において、治療用組成物は、約0.05B CFU/g、0.1B CFU/g、0.5B CFU/g、1B CFU/g、5B CFU/g、10B CFU/g、50B CFU/g、100B CFU/g、500B CFU/g、または1000B CFU/gほどの高さの濃度(B CFU/組成物の重量)で少なくとも1種類のプロバイオティクス生物を含む。
【0073】
ある特定の態様において、治療用組成物は、約0.001B CFU/g〜100B CFU/g、0.1B CFU/g〜90B CFU/g、5B CFU/g〜80B CFU/g、10B CFU/g〜70B CFU/g、または30B CFU/g〜50B CFU/gに及ぶ濃度(B CFU/組成物の重量)でプロバイオティクス微小生物を含む。
【0074】
ある特定の態様において、治療用組成物は、少なくとも約1μg/g、5μg/g、10μg/g、20μg/g、50μg/g、0.1mg/g、0.5mg/g、1mg/g、5mg/g、10mg/g、50mg/g、100mg/g、または500mg/gの濃度(成分の重量/組成物の重量)で成分を含むものであって、該成分は、微小生物の抽出物、化学的置換物、細胞もしくは無細胞構成成分、および/またはプロバイオティクス微小生物の代謝産物、蜂蜜、蜜蜂製品、生物系界面活性剤、プレバイオティクス、植物抽出物、ならびにビタミンDからなる群より選択される。
【0075】
ある特定の態様において、治療用組成物は、約10μg/g、50μg/g、0.1mg/g、0.5mg/g、1mg/g、10mg/g、50mg/g、100mg/g、または500mg/gほどの高さの濃度(成分の重量/組成物の重量)で成分を含むものであって、該成分は、微小生物の抽出物、化学的置換物、細胞もしくは無細胞構成成分、および/またはプロバイオティクス微小生物の代謝産物、蜂蜜、生物系界面活性剤、プレバイオティクス、植物抽出物、ならびにビタミンDからなる群より選択される。
【0076】
ある特定の態様において、成分は、プロバイオティクス微小生物、化学的置換物、細胞もしくは無細胞構成成分、および/またはプロバイオティクス微小生物の代謝産物より選択される。
【0077】
一態様において、治療用組成物は、5.0、5.5、6.0、6.3、6.5、6.7、または7.0より上のpHを有する。一態様において、治療用組成物は、9.0、8.5、8.0、7.7、7.5、7.3、または7.0より下のpHを有する。
【0078】
バイオフィルム阻害活性の同定
好都合なことには、本発明のある特定の組成物は、病原性バイオフィルムの形成を予防または阻害し得る。加えて、本発明のある特定の組成物は、既存の病原性バイオフィルムを低減、制御、または排除し得る。
【0079】
本発明の組成物は、生物学的もしくは非生物学的表面へのバイオフィルムもしくは病原性微小生物の沈着、接着、および/もしくは固定を予防、阻害、および/もしくは破壊すること;エキソポリサッカライド(EPS)マトリックスなどの細胞外因子の分泌および/もしくは放出を予防、阻害、および/もしくは破壊すること;ならびに/またはクオラムセンシング機構を予防、阻害、および/もしくは破壊することを含む多様なメカニズムによって、病原性バイオフィルムの形成を予防もしくは阻害し得、かつ/または既存の病原性バイオフィルムを低減、制御、もしくは排除し得る。
【0080】
一態様において、本発明は、本発明の組成物のための1種類または複数種類の成分を選択するための方法を提供するものであって、該成分は、関心対象の病原性微小生物によるバイオフィルムの形成を予防および/もしくは阻害し、該方法は以下の工程:
a)候補成分もしくは候補成分の混合物を提供する工程であって、該候補成分が、微小生物、微小生物の抽出物、化学的置換物、細胞もしくは無細胞構成成分、微小生物の代謝産物、蜂蜜、蜜蜂製品、生物系界面活性剤、プレバイオティクス、植物抽出物、およびビタミンDからなる群より選択される、工程;
b)前記候補成分を関心対象の病原性微小生物と接触させる工程;ならびに
c)前記成分が関心対象の病原性微小生物によるバイオフィルムの形成を予防もしくは阻害した場合に、該候補成分を選択する工程
を含む。
【0081】
バイオフィルムの予防について試験する一態様において、関心対象の病原性微小生物はプランクトン様の状態にある。
【0082】
さらなる態様において、1種類または複数種類の候補成分を、様々な濃度および/またはpHにおいて関心対象の病原性微小生物とインキュベートして、バイオフィルム形成を予防または阻害する最適な濃度および/またはpHを決定する。
【0083】
さらなる態様において、方法は、選択された成分、成分の選択された混合物、および/または本発明の組成物の最小バイオフィルム阻害濃度を決定する工程を含む。
【0084】
一態様において、候補成分は、プロバイオティクス微小生物、プロバイオティクス微小生物の抽出物、化学的置換物、細胞または無細胞構成成分、およびプロバイオティクス微小生物の代謝産物からなる群より選択される。
【0085】
一態様において、プロバイオティクス微小生物は、アエロコッカス属(Aerococcus)、大腸菌、バシラス属(Bacillus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、リューコノストック属(Leuconostoc)、メリソコッカス属(Melissacoccus)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、オエノコッカス属(Oenococcus)、スポロラクトバチルス属(Sporolactobacillus)、レンサ球菌、ブドウ球菌、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)、プロピオニバクテリウム属(Proprionebacterium)、およびワイセラ属(Weissella)からなる群より選択される。別の態様において、微小生物は表1より選択される。
【0086】
好ましい態様において、病原性微小生物またはバイオフィルムは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス菌、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、コリネバクテリウム属、カンジダ菌(Candida)、またはアスペルギルス菌より選択される。
【0087】
バイオフィルム感染と関連した疾患の診断および治療
一態様において、本発明は、バイオフィルムによって引き起こされる、またはそれと関連した疾患の予防および/または治療のための方法を提供する。一態様において、方法は、そのような治療を必要としている対象に、有効量の本発明の組成物を投与する工程を含む。
【0088】
本明細書において使用するとき、「治療」という用語またはその任意の文法的変化形(例えば、治療する、治療すること、および治療等)は、疾患または状態の症状を改善することまたは緩和すること、状態の進行、重症度、および/または範囲を低減すること、抑制すること、阻害すること、低下させること、または影響を及ぼすことを含むが、これらに限定されない。
【0089】
本明細書において使用するとき、「予防」という用語またはその任意の文法的変化形(例えば、予防する、予防すること、および予防等)は、症状の発症を遅らせること、疾患の再発を予防すること、症状出現の間の待ち時間を増加させること、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。本明細書において使用するとき、予防は、症状の完全な非存在を必要としない。
【0090】
本明細書において使用される「有効量」という用語は、バイオフィルムと関連した病的状態を予防し、向上させ、かつ/または治療し得る量を表す。
【0091】
一態様において、「そのような治療を必要としている対象」は、バイオフィルムと関連した病的状態を有すると診断された対象を表す。特定の態様において、本発明は、対象がバイオフィルム感染症を有するかどうかを診断することを含み、バイオフィルム感染症を有すると診断された対象に、次いで本発明の組成物を投与する。
【0092】
バイオフィルム感染症の診断は、例えば米国特許出願公報第2010/0285496号に記載される臨床技術によって遂行され得る。例えばX線およびCTスキャンなどのイメージング技術によって、病原性バイオフィルム感染の位置を判定することができる。
【0093】
一態様において、バイオフィルム感染症を:
a)対象から生物学的サンプルを入手すること;および
b)自由に浮遊する(プランクトン様の)状態ではなく、バイオフィルム状態にある微小生物によって選択的に発現される1つまたは複数のバイオマーカー(例えば、タンパク質、mRNA)の存在を測定すること
によって検出することができる。
【0094】
加えて、バイオフィルム感染症を、自由に浮遊する(プランクトン様の)状態でのレベルと比較して、バイオフィルム状態にある微小生物によって上昇したレベルで発現される1つまたは複数のバイオマーカーの存在を測定することによって検出することができる。別の態様において、バイオフィルム感染症を、細菌の細胞外ポリサッカライド(EPS)マトリックス、またはEPS中に含有される化学物質の存在によって検出することができる。
【0095】
さらに、バイオフィルムを形成する病原性微小生物の種を、例えば病原性微小生物によって放出される抗原もしくはペプチドを認識する抗体を用いることによって、または病原性微小生物の核酸分子を認識するプローブを用いることによって判定することができる。
【0096】
本明細書において使用するとき、「生物学的サンプル」という用語は、組織、細胞、および/または対象から単離された生物学的流体を含有しているサンプルを含むが、これらに限定されない。生物学的サンプルの例には、組織、細胞、生検、血液、リンパ液、血清、血漿、尿、唾液、および涙が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の具体的な態様において、生物学的サンプルには、涙、鼻からの体液、および唾液が含まれる。
【0097】
本発明に従って有用なバイオマーカーの存在および/またはレベルを、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、ノーザンブロット、免疫学的アッセイ、免疫蛍光、および核酸ハイブリダイゼーション技術などの当技術分野において公知の技術によって判定することができる。
【0098】
バイオフィルム感染と関連した疾患
ある特定の態様において、本発明を用いて、皮膚炎、座瘡、慢性気管支炎、嚢胞性線維症、慢性歯肉炎、慢性炎症性腸疾患、慢性湿疹、慢性の治癒しない創傷、慢性膀胱炎、およびコンタクトレンズなどの医療用デバイスに関係する炎症を含むが、これらに限定されないバイオフィルム感染によって引き起こされる、またはそれらと関連した疾患を予防する、治療する、または改善することができる。本発明者らは、バイオフィルム感染が、例えば慢性眼瞼炎、ならびにドライアイ症候群、マイボーム腺炎、および酒さなどの眼球、眼球周囲、および皮膚上皮の他の慢性炎症状態などの疾患を引き起こす、またはそれらと関連していることも発見した。
【0099】
一態様において、本発明を用いて、中耳炎、慢性副鼻腔炎、慢性扁桃炎、咽頭炎、ならびに蝸牛および中耳のインプラントデバイスの失敗を含むバイオフィルムが関係した耳鼻咽喉学の実践における状態を予防する、治療する、または改善することができる。治療方法の改善の必要性にもかかわらず、機械的破壊(すなわち、影響を受けた物質の除去または外科的切除)または長期の抗生物質治療などの先行技術の方法は、バイオフィルムによる慢性炎症状態の主力治療のままである。
【0100】
本発明者らは、ある特定の眼球および眼球周囲の感染症が、バイオフィルム関連慢性炎症状態から生じることを発見した。例えば、眼科分野において、白内障の手術後の眼内炎に関して、網膜剥離の手術後の強膜バックル、涙点プラグ、人工鼻涙管用の管に関して、および角膜炎と関連したソフトコンタクトレンズに関して、バイオフィルムの存在が報告されている。事実、殺生物剤の使用にもかかわらず、すべてのコンタクトレンズ症例の最大81%にまで、コンタクトレンズの50%に、およびすべてのタイプのコンタクトレンズ用溶液の30%に、微生物汚染が起こる。細菌バイオフィルム形成と関連した感染症は持続性である傾向があり、バイオフィルムから最も高頻度に単離される生物は、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、および緑膿菌である。ドライアイの眼球表面、ならびに慢性眼瞼炎およびコンタクトレンズ装着者の眼瞼縁は、正常な目に見出される典型的にはグラム陽性の片利共生的細菌よりも、はるかに多くの細菌、そしてはるかによりグラム陰性タイプの細菌によってコロニー形成される。
【0101】
一態様において、本発明を用いて、病原性バイオフィルム形成と関連した慢性炎症状態の別の例である慢性鼻副鼻腔炎を予防する、治療する、または改善することができる。慢性鼻副鼻腔炎の病態生理は、病原菌による正常な片利共生的細菌集団の破壊、それに続く病原性バイオフィルム形成を伴う可能性が高い。結果として生じる典型的な症状には、鼻漏、副鼻腔の圧迫感、再発性頭痛、後鼻漏、および咳が含まれる。
【0102】
ある特定の態様において、本発明を用いて、喘息、アスペルギルス症、「スイマー耳」、外耳炎、慢性耳炎、アトピー性皮膚炎、慢性鼻副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、慢性気管支炎、慢性歯肉炎、慢性副鼻腔炎、および慢性歯周炎を含むが、これらに限定されないバイオフィルム感染によって引き起こされる、またはそれらと関連した疾患を予防する、治療する、または改善することができる。
【0103】
治療用組成物および製剤
本発明は、薬学的に許容可能な担体と組み合わせることができる形態の本発明の成分を含む、治療用または薬学的組成物も提供する。一態様において、本発明の組成物は、眼球、眼球周囲、鼻、歯、または肺への投与用に調製されている。
【0104】
「担体」という用語は、化合物とともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または媒体を表す。そのような薬学的担体は、水、ならびに鉱油などの石油、ピーナッツ油、大豆油、およびゴマ油などの植物油、動物油、または合成起源の油を含む油などの滅菌した液体であってよい。
【0105】
適切な薬学的賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが含まれる。所望の場合、治療用組成物は、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含有してよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、クリーム、ローション、点滴剤、スプレー、ゲル、オイル、エアロゾル、粉末、軟膏、持続放出性製剤などの形態をとることができる。伝統的な結合剤およびトリグリセリドなどの担体とともに組成物を調製してもよい。適切な薬学的担体の例は、E. W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。そのような組成物は、患者への適正な投与のための形態を提供するように適切な量の担体とともに、治療上有効量の治療用組成物を含有している。製剤は、投与の様式に合うものでなければならない。
【0106】
ある特定の態様において、本発明の組成物は、1種類または複数種類の抗微生物剤、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、または抗酵母剤を含む。
【0107】
本発明の治療用または薬学的組成物を、中性または塩の形態として調製することができる。薬学的に許容可能な塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、および酒石酸;ならびにナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、および二酸化第二鉄などとともに形成される塩が含まれる。
【0108】
本発明は、対象に投与されるとそれがより安定であるような、すなわち投与されると、それは修飾されていない形態と比較してより長い期間の効果を有するような、成分の修飾も提供する。そのような修飾は、例えばマイクロカプセル化など、当業者に周知である。
【0109】
投与の様式
一態様において、本発明の組成物を、局部投与によって、目、歯、歯茎、耳、および皮膚を含むが、これらに限定されない生物学的表面;ならびにカテーテル、整形外科用デバイス、インプラント、人工心臓弁、人工関節、整形外科用インプラント、シャント、ペースメーカーと除細動器、気管内チューブ、血液透析/腹膜透析デバイス、歯科用インプラント、および血管内カテーテルを含むが、これらに限定されない医療用デバイスなどの非生物学的表面に送達する。
【0110】
特定の疾患、状態、または障害の治療に有効である、本発明の治療用または薬学的組成物の量は、投与の経路、および疾患、状態、または障害の重篤度によって決まり、かつ施術者の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。一般的に、投薬量は約0.001mg/kg〜約3g/kgに及ぶ。そのような単位用量を、1日に1回を上回って、例えば1日に2回または3回投与してよい。
【0111】
担体材料と組み合わせて単回投薬量をもたらし得る活性成分の量は、治療される状態および対象のタイプに依存して変化する。一般的に、治療用組成物は、約5%〜約95%の活性成分(w/w)を含有している。より具体的には、治療用組成物は、約20%(w/w)〜約80%、または約30%〜約70%の活性成分(w/w)を含有している。
【0112】
以下は、本発明の種々の構成成分の詳細な説明である。
【0113】
プロバイオティクス
プロバイオティクスは、あるやり方でヒトの身体に利益を提供する微小生物である。2001年の世界保健機関によるプロバイオティクス微小生物に関するシンポジウムは、これらの生物を「適切な量で消費された場合、その宿主の健康にプラス効果を有する生きた微小生物」として定義した(世界保健機関、生きた乳酸菌を有する粉末ミルクを含む食品におけるプロバイオティクスの健康および栄養特性の評価に関するFAO/WHO合同専門家会議、2001年10月)。しかしながら、注目すべきことには、本発明における使用に採用され得るプロバイオティクス生物は生きていなくてもよく、その上、それらは、事実、ヒト宿主に片利共生的であるまたは病原性でさえあると通常見なされる微小生物またはその画分を含んでよい。
【0114】
本発明における使用のために、1種類のプロバイオティクスを単独で用いてもよく、または複数種類のプロバイオティクスを組み合わせることもできる。本発明において、生存能力のあるまたは生存能力のない形態で、微小生物の1つの画分または複数の画分として、微小生物の代謝産物、不活性化されたもの、半不活性化されたもの、またはそれらの組み合わせとして用いることができる。バイオフィルムの細胞外高分子物質(EPS)またはバイオフィルムの「粘液」の画分を用いてもよい。これらの種々の抽出物(画分、代謝産物)は、細胞または無細胞であってよく、かつ細胞内または細胞外供給源に由来してよい。例えば、生物系界面活性剤などの代謝産物を単離および精製してよく、かつ/または微小生物の培養上清に利用可能なものとしておよび含有されるものとして用いてよい。生物系界面活性剤活性を示す無細胞画分から構成される抽出物を用いてよい。そのような抽出物を、10mcg/ml〜10g/mlに及ぶ濃度で用いてよい。
【0115】
別の例として、これらの抽出物は、プロバイオティクスをコロニー状で培養した場合に創出されるバイオフィルムの画分を含んでよい。そのような画分は、単離され、濃縮され、凝縮されてよく、かつ/または使用済み培地からなってよい。それらは、プランクトン様培養物および/またはバイオフィルム反応器から回収されてよい。それらは、生物の増殖曲線における任意の時点で回収されてよい。あるいは、それらは、ある特定の酵素、最終産物などの最大または最小の活性段階において採取されてよい。
【0116】
細流/乾湿反応器、高流反応器、固定床反応器、拡大床反応器、流動床反応器、膜反応器、および回転盤反応器を含むが、これらに限定されない方法によって、プロバイオティクスおよび他の微生物/生物をコロニー状で培養することができることは十分に確立されている。例えば、参照によりその全体として組み入れられる、Cheng K et al,「Advances in biofilm reactors for production of value-added products」, Appl Microbiol Biotechnol, 2010, 87:445-456を参照されたい。そうすることの特定の方法は、当業者に周知であり、文献において容易に見出される。例えば、すべての参考文献は参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられる、Cotter, J et al,「Characterization of a modified rotating disk reactor for the cultivation of Staphylococcus epidermis biofilm」, Journal of Applied Microbiology, 2010, 109, 2105-2117;Jackson G et al,「Growing reproducible biofilm with respect to structure and cell counts」, Journal of Microbiological Methods, 2001, 10月, 47(1): 1-10;O'Toole, G et al,「Initiation of biofilm formation in Pseudomonas fluoroscens WCS365 proceeds via multiple, convergent signalling pathways: a genetic analysis」, Molecular Microbiology, 1998, 28(3), 449-446;およびWu, J et al,「Evaluation of Different Methods for Extracting Extracellular DNA from the Biofilm Matrix」, Applied and Environmental Microbiology, 8月, 2009, p. 5390-5395を参照されたい。
【0117】
遠心分離、濾過、加熱、混和、超音波処理、錯化剤を用いた処理、イオン(陽イオン)交換樹脂および水酸化ナトリウムを用いた処理の技術を含むが、これらに限定されない多くの様々な方法によって、バイオフィルムを分画することができることも周知である(Nielsen, PHおよびJahn, A, Microbial Extracellular Polymeric Substances (Wingender, J., Neu, T., Hemming, H.C. 編), p. 49-72, Springer-Heidelberg, 1999;Thomas DP et al,「Proteomics for the analysis of the Candida albicans biofilm lifestyle」, Proteomics, 2006, 6(21), 5795-804;Flemming, H et al,「The biofilm matrix」, Nature Reviews in Microbiology, 2010, 8(9): 623-633;すべての参考文献は参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられる)。
【0118】
エキソポリサッカライドなどのバイオフィルムの画分を、エタノールまたはアセトンなどのアルコールを用いた沈殿によって濃縮することができる(Kanmani, P et al,「Production and purification of a novel exopolysaccharide from lactic acid bacterium Streptococcus phocae P180 and its functional characteristics activity in vitro」, Bioresource Technology, 2011, 近刊;Aguilera, A et al,「Extraction of extracellular polymeric substances from extreme acidic microbial biofilms」, Appl Microbiol Biotechnol, 2008, 78(6): 1079-1088;すべての参考文献は参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられる)。そのような抽出物も、1mg/ml〜1000mg/mlに及ぶ濃度で表6に記載されるように用いることができる。
【0119】
本発明における使用に適したプロバイオティクスの具体的な例には、乳酸を産生しない細菌ならびに乳酸を産生する細菌(LAB)が含まれる。これらには、バクテロイデス種(Bacteroide)、ビフィズス菌(Bifidobacterium)、および乳酸菌;そして、アエロコッカス属、大腸菌、バシラス属、エンテロコッカス属、フソバクテリウム属、ラクトコッカス属、リューコノストック属、メリソコッカス属、ミクロコッカス属、オエノコッカス属、スポロラクトバチルス属、レンサ球菌、ブドウ球菌、サッカロミセス属、ペディオコッカス属、ペプトストレプトコッカス属、プロピオニバクテリウム属、およびワイセラ属のある特定の株が含まれる。本発明における使用に適した微小生物の例は、他の箇所により広範囲に列挙されかつ記載されている(表1を参照されたい)。一例として、例えば、好酸性乳酸桿菌(ATCC 4356)の抽出物、ならびに/または大腸菌K12(ATCC 10798)および/もしくはストレプトコッカス・サーモフィルス菌(Streptococcus thermophilus)4022(ATCC 19258など)株の抽出物を用いてよい。
【0120】
本発明の抗炎症活性は、1ミリリットル(mL)あたり1000万〜100億コロニー形成単位(CFU)に及ぶ細胞濃度(および/またはこれらの細菌数によって産生される代謝産物の量)において最も顕著である。
【0121】
(表1)
例示的なプロバイオティクス生物および商業的供給源
【0122】
微小生物の培養および分画に関係する例示的な物質および方法
すでに論じられているように、本発明は、細菌性および非細菌性の微小生物およびバイオフィルムの増殖および回収に関する種々の物質および方法を用いる。例えば、酵母サッカロミセス属由来の濾過液を、Krasowska Aらによって記載されるもの「The antagonistic effect of Saccharomyces boulardii on Candida albicans fi lamentation, adhesion and biofilm formation」, FEMS Yeast Res (2009) 1312-1321などのプロトコールを用いて獲得してよい。次いで、以前に参照された技術のいずれかを用いて、プランクトン様およびバイオフィルムの細菌性および非細菌性培養物の、核、核内、細胞質、溶解物、上清、使用済み培地、細胞膜、生物系界面活性剤、細胞外DNA、細胞外RNAなどの種々の亜区画への分画が生じてよい。
【0123】
とりわけ、微小生物から産生または生産される生物系界面活性剤は、多数の方法を用いて獲得され、単離され、かつ凝縮され得る。これらは、Baker SC et al,「Enrichment and purification of lipopeptide biosurfactants」, Adv Exp Med Biol 2010, 672:281-288;Rivardo, F et al,「Anti-adhesion activity of two biosurfactants produced by Bacillus spp. prevents biofilm formation of human bacterial pathogens」, Appl Microbiol Biotechnol (2009) 83 :541-553;Gudina, E et al,「Isolation and functional characterization of a biosurfactant produced by Lactobacillus paracasei」, Colloids and Surfaces B: Biointerfaces 76 (2010) 298-304;Gudina E et al,「Antimicrobial and antiadhesive properties of a biosurfactant isolated from Lactobacillus paracasei ssp. Paracasei A20」, Letters in Applied Microbiology, 50 (2010) 419-424;Sarachat. T et al,「Purification and concentration of a rhamnolipid biosurfactant produced by Pseudomonas aeruginosa SP4 using foam fractionation」, Bioresource Technology 101 (2010) 324-330;およびRivardo F et al,「Synergistic effect of lipopeptide biosurfactant with antibiotics against Escherischia coli CFT073 biofilm」, International Journal of Antimicrobial Journal, (2011), 近刊、などの科学的文献に記載されている。すべての刊行物は、参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられる。
【0124】
加えて、スクリーニング法を用いて、生物系界面活性剤を産生する微小生物を同定および査定することができる。これらの技術は、Burch A et al,「Novel High- Throughput Detection Method To Assess Bacterial Surfactant Production」, Applied and Environmental Microbiology, 8月, 2010, p. 5363-5372およびWalter V et al,「Screening concepts for the isolation of biosurfactant producing micro-organisms」, Adv Exp Med Biol 2010; 672: 1-13に記載されるものなど、文献において容易に見出される。これらの刊行物は、参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられる。
【0125】
蜂蜜および他の蜜蜂製品
感染症を含む種々の病気の治療において何世紀にもわたって用いられ、蜂蜜は、抗微生物効果ならびに抗炎症効果を有することが示されている(Viuda-Martos, M,「Functional Properties of honey, propolis and royal jelly」, J Food Sci 2008 Nov; 73(9):R117-24)。これらの効果の理由には、メチルグリオキサール、MGOと称されるポリサッカライド(Adams, C,「The origin of methylglyoxal in New Zealand manuka (Leptospermum scoparium) honey」, Carbohydrate Research, 2009年5月26日; 344(8): 1050-1053)、過酸化水素活性、低pH、高浸透圧、および抗微生物ペプチド活性(Kwakman, P,「How honey kills bacteria」, FASEB J, 2010, 7月;24(7):2576-82)が含まれる。ある特定の蜂蜜は、いくつかの病原菌に対する抗バイオフィルム効果を有することが示されているが、疾患に関係したバイオフィルムの治療、除去、または予防を示された市販の蜂蜜ベースの製品は存在しない。
【0126】
本発明は、標準化された薬学的グレードの蜂蜜の製造および特徴付け、ならびに臨床用途の方法も提供する。現時点で本発明の非常に一般的な成分には、創傷に対する使用のために滅菌されている、Medi-Honey(Comvita Inc., New Zealand)などの医療グレードの蜂蜜が含まれる。蜂蜜の殺菌品質は、時期、集められた花粉および花蜜、ロット、季節などに基づいて変化するため、マヌカ蜂蜜の各バッチは、「ユニーク・マヌカ・ファクター」と称されるその殺菌能について測定を行われている。以前に論じられているように、UMF(登録商標)の数値は、標準的参照の殺菌剤であるフェノールに対して比較されている蜂蜜に関する、抗細菌活性についての実験室試験から来ている。例えば、UMF(登録商標)20+は、殺菌能についてフェノールの20%溶液と同等である。今日まで、このように測定された抗細菌品質を有する蜂蜜は他にない。
【0127】
しかしながら、殺菌についてのこの特徴付けの方法は、2つの重大な不利な点−処理される微小生物に対する抗細菌活性が不明であること、およびこの測定方法はマヌカ蜂蜜にのみ適用可能であるが他の蜂蜜にはそうではないこと、を有する。すべての蜂蜜は、タイプごとに変化し得る可能性が非常に高い抗細菌品質を有する。蜂蜜が薬学的抗細菌用品の一部として含まれ得る場合、抗生物質と同様に、標準化され検証された試験によって特徴付けされる必要がある。今日の抗生物質に対して、これらには、臨床標準に関する全国委員会(NCCLS)の参照マニュアル(参照により本明細書に組み入れられる)において文書化された細菌および真菌阻害濃度(MIC)試験が含まれる。参照として本明細書に組み入れられる、Sudo Kによって記載されるもの「YM-53403, a unique anti-respiratory syncytial virus agent with a novel mechanism of action」, J of Antiviral Research, 2005 (65): 125-131などのある特定の手順によって、呼吸器多核体ウイルス(RSV)などの特定のウイルスに対して、蜂蜜の抗ウイルス活性を判定してもよい。使用され得る市販の十分に受け入れられている抗ウイルス活性についての他の試験には、Oxoid M.I.C.Evaluators(Oxoid Ltd., United Kingdon)、Etest(BioMerieux, France)、および他の類似したものが含まれる。
【0128】
とりわけ、蜂蜜の抗バイオフィルム活性は、例えば最小バイオフィルム撲滅濃度(MBEC)試験の手順(参照により本明細書に組み入れられる、Ceriらによる米国特許第6,051,423号を参照されたい)にサンプルを供することによってなされ得る、バイオフィルム阻害濃度(BIC)試験によって標準化される必要がある。
【0129】
標準的NCCLSプロトコールを通じたMIC試験において抗生物質に関してなされるように、蜂蜜のBIC試験は、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、シュードモナス菌、メチシリン耐性およびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、コリネバクテリウム属、カンジダ菌、アスペルギルス菌などの一般的なヒト病原菌に対して実施されるべきである。特徴付けされたバイオフィルム球体を用いた抗バイオフィルム効率試験の代替的手段も、本明細書において記載される。固有の変動性のために、蜜蜂による採餌に利用される種々の単一花供給源(マヌカ、マツ、オレンジなど)由来の各ロットを、結果として得られる蜂蜜の抗微生物/抗バイオフィルム活性に従って特徴付けする。
【0130】
次いで、単一花蜂蜜からの特異的抗微生物/抗バイオフィルム活性を、種々の抗生物質と、すなわち、黄色ブドウ球菌に対する活性の観点から、オレンジの花の蜂蜜対アンピシリンを比較する。これは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の場合において特に重要である。あるいは、1種類の受粉する植物種が育てられ、かつ蜜蜂が飼われている閉鎖的温室の使用によって、単一花蜂蜜を産出してよい。次いで、蜂蜜をこれらの蜜蜂の巣から回収し、それらの単一花の性質および一貫した性質を保証する。
【0131】
医療用途に向けられた蜂蜜を、次いで低線量のγ線照射または精密濾過によって滅菌して、本発明において以前に記載されている抗微生物目的のための局所的同等物として用いる。蜂蜜を、10〜90%容量/容量(蜜蜂製品/本発明)の間で用いてよい。種々の単一花蜂蜜を組み合わせて、より良好な、より広範囲の適用範囲を提供することもできる。
【0132】
蜂蜜または蜜蜂製品に関して、サンプルを、0.001%〜100%に変化する濃度を試験するために滅菌した中性pHの通常の生理食塩溶液に希釈し、上記で参照したプロトコールにおいて挙げられた抗生物質の代わりに用いる。
【0133】
蜂蜜以外の蜜蜂製品も用いてよい。例えば、下記に記載される方法によって調製された、1mcg/ml〜10mg/mlに及ぶプロポリスおよびロイヤルゼリーを用いてよい。
【0134】
本発明の調製中、プロバイオティクス抽出物および蜂蜜(例えば、乳酸菌およびマヌカ蜂蜜)から構成される種々のサンプルを、種々の方法を用いて加工してよく、かつ/または加工しないままであってもよい。加工には、細胞分画、熱処理、超音波処理、濾過、酵素処理、γ線照射、または抗バイオフィルムおよび抗炎症活性を示す抽出物サンプルの滅菌、微粉化、生物系界面活性剤単離、結晶化、および/もしくは凍結乾燥という他の手段が含まれてよい。
【0135】
蜂蜜および他の蜜蜂製品に関係する例示的な物質および方法
滅菌した蜜蜂製品の種々の抽出物の調製
本発明の調製中、蜂蜜、プロポリス、ロイヤルゼリー、蜂パン、または蜂の花粉などの蜜蜂製品から構成される種々のサンプルを、種々の方法を用いて加工してよく、かつ/または加工しないままであってもよい。加工には、化学的手段によるタンパク質、糖類、花粉、ポリフェノール、もしくは他の構成要素の分画、高速液体クロマトグラフィー、物理的(フィルター)限外濾過、ゲル電気泳動、熱処理、酵素処理、微粉化、超音波処理、結晶化、脱水、または凍結乾燥が含まれてよい。
【0136】
例えば、Salazar-Olivo, L.A. et al,「Screening of biological activities present in honeybee (Apis mellifera) royal jelly」, Toxicology in Vitro 19 (2005) 645-651;Mishima S et al,「Effects of propolis on cell growth and gene expression in HL-60 cells」, J Ethnopharmacol 2005, 99:5-11;Nakajima Y et al,「Comparison of bee products based on assays of antioxidant capacities」, BMC Complementary and Alternative Medicine 2009, 9:4;Santos, F. et al,「Antibacterial activity of Brazilian propolis and fractions against oral anaerobe bacteria」, J Ethnopharmacol 2002, 80: 1-7;およびMarayama, H et al,「Anti-inflammatory effect of bee pollen ethanol extract from Cistus sp. of Spanish origin on carrageenan-induced rat hind paw edema」, BMC Complementary and Alternative Medicine 2010, 10:30;Yu, F et al,「Royal Jelly Proteome Comparison Between A. mellifera ligustica and A. cerana cerana」, Journal of Proteome Research 2010, 9, 2207-2215;ならびにScarselli, R et al,「Towards royal jelly proteome」, Proteomics 2005, 5, 769-776に記載されるように分画を実施してよい。
【0137】
生物系界面活性剤
生物系界面活性剤とは、微小生物によって放出される化合物であり、一般に非毒性かつ生分解性である。一態様において、本発明による有用な生物系界面活性剤は、乳酸を産生しない細菌および乳酸を産生する細菌(LAB)を含むプロバイオティクスによって放出される。一態様において、本発明による有用な生物系界面活性剤は、バクテロイデス菌、ビフィズス菌、および乳酸菌を含むが、これらに限定されないプロバイオティクスによって放出される。
【0138】
追加的な態様において、生物系界面活性剤は、アエロコッカス属、大腸菌、バシラス属、エンテロコッカス属、フソバクテリウム属、ラクトコッカス属、リューコノストック属、メリソコッカス属、ミクロコッカス属、オエノコッカス属、スポロラクトバチルス属、レンサ球菌、ブドウ球菌、サッカロミセス属、ペディオコッカス属、ペプトストレプトコッカス属、プロピオニバクテリウム属、またはワイセラ属のある特定の株によって放出され得る。別の態様において、生物系界面活性剤は、表1に列挙された1種類または複数種類の生物によって放出され得る。
【0139】
本発明による有用な生物系界面活性剤は、糖脂質またはリポタンパク質であってよい。一態様において、生物系界面活性剤は、糖脂質、リポペプチド、デプシペプチド、リン脂質、置換された脂肪酸、リポ多糖、サーラクチン(surlactin)、サーファクチン、ヴィスコンシン(visconsin)、スピクリスポール酸、またはラムノ脂質であってよい。
【0140】
プレバイオティクス
プレバイオティクスとは、多くの植物に見出される、大腸によって代謝されてブチラートなどの短鎖脂肪酸を形成する、消化されない繊維状のフラクトオリゴ糖またはガラクトオリゴ糖(FOSまたはGOS)である。これらの脂肪酸は、腸内のプロバイオティクスコロニーを代謝的に支援し、ならびに有効な局部先天性免疫応答を引き起こすのを手助けする。その結果として、プレバイオティクス添加は、プロバイオティクス添加の効率を上昇させ得る。この組み合わせは、シンバイオティクス療法として知られている。
【0141】
ある特定の態様において、本発明は、10mcg/ml〜100mg/mlの間の濃度で、ローカストビーン(イナゴマメ)ガムなどのある特定のプレバイオティクスを活用して、抗バイオフィルム効率を高め得る。これらには、フラクトオリゴ糖(FOS)、マンノオリゴ糖(manno-ologosaccharide)(MOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、アラビノガラクタン、および他の食物繊維、イヌリン、ラクチュロース、耐性デンプン、イソマルト、オートブラン、およびペクチンが含まれる。カラマツアラビノガラクタンを用いてもよく、それは、AG、Ara-6、アラビノガラクタン、アラビノガラクチン、食物繊維、カラマツ、カラマツゴム、カラマツの木、カラマツ属(larix)、モンゴルカラマツ、モンゴルカラマツ材、水溶性繊維、ストラクタン(Stractan)、西洋カラマツ、西洋カラマツアラビノガラクタン、木質ゴム、木糖、オウシュウカラマツ(Larix decidua)、ヨーロッパカラマツ(Larix europaea)、マツカラマツ(Pinus Larix)、オクシデンタリスカラマツ(Larix occidentalis)、グイマツ(Larix gmelinii var. gmerlinii)、ダフリカカラマツ(Larix dahurica)、およびアビエス・グメリニー(Abies gmelinii)としても知られる。コンニャクゴム、加水分解されたコンニャク、加水分解されたグルコマンナン、加水分解されていないコンニャク、加水分解されたグルコマンナン、マナ、コンニャク、コンニャク繊維、ヘビイモ(Devil's Tongue)、および象蒟蒻(Elephant-Foot Yam)としても知られるコンニャクグルコマンナンを用いてもよい。穀物のふすま、植物セルロース、真菌構成成分、キノコ構成成分、海藻構成成分、カードラン、ラミナラン、クリソラミナラン、レンチナン、ポリサッカライドK、リケニン、プロイラン(pleuran)、キサンタン、およびザイモサンとしても知られる可溶性または不溶性βグルカンも用いてよい。
【0142】
植物抽出物
植物抽出物は、抗炎症および抗微生物特性を有することが知られている。本発明のいくつかの態様において用いられる植物抽出物には、オオグルマ(イヌラ・ヘレニウム L.、キク科(Asteraceae)、エレキャンペーン)、バラ(ロサ・ダマスケナ L.(Rosa damascena L.)、バラ科(Rosaceae))、ラベンダー(ラヴァンデュラ・アングスティフォリア L.(Lavandula angustifolia L.)、シソ科(Labiatae))、カモミール(マトリカリア・レクティカ L.(Matricaria recutica L.)、キク科)、オレンジ(ミカン科(Rutaceae))、ユーカリ(ユーカリプタス・グロブラス L.(Eucalyptus globulus L.)、フトモモ科(Myrtaceae))、ゼラニウム(ヒメフロウ(Geranium robertianum L.)、フロウソウ科(Geraniaceae))、ジュニパー(セイヨウネズ(Juniperus communis L.)、ヒノキ科(Cupressaceae))、柑橘類(オレンジ(Citrus sinensis L.)、ミカン科)、ティーツリー(メラロイカ・アルテルニフォリア(Melaceuca alternifolia))、マヌカ低木(ギョリュウバイ)、ニーム・ツリー(インドセンダン(Azadirachta indica, A. Juss))、茶樹(チャノキ(Camellia sinensis))、およびローズマリー油(ロスマリヌス・オフィキナリス L.(Rosmarinus officinalis L.)、シソ科(Lamiaceae))が含まれる。上記の植物のエッセンシャルオイルまたは水蒸留物を用いてよい。例えば、マヌカオイルを1〜10%容量/容量(植物抽出物/本発明)の間の濃度で用いてよい。薬学的グレード品質の植物材料、蒸留物、および植物油を供給業者から直接購入してよく、または1〜10%容量/容量(植物抽出物/本発明)の間の濃度で用いられてもよい、下記に記載される方法を通じて、水蒸気蒸留エッセンスを産出してもよい。
【0143】
植物抽出物に関係する例示的な物質および方法
Clevengerタイプの装置または類似の技術を用いた植物抽出物の調製方法
本発明の調製中、植物抽出物を、特にそれらのエッセンシャルオイルの精製に関して種々の方法で調製してよい。参照によりその全体として本明細書に組み入れられる、Clevenger, JF,「Apparatus for the determination of volatile oil」, 1928; J Am Pharm Assoc, 17; 346を参照されたい。Vian, M et al,「Microwave hydrodiffusion and gravity, a new technique for extraction of essential oils」, Journal of Chromatography A, 1190 (2008), 14-17またはFarhat, A et al,「Eco-friendly and cleaner process for isolation of essential oil using microwave energy - experimental and theoretical study」, Journal of Chromatography A, 1216 (2009), 5077-5085に記載されるものなどの他の技術を用いてもよい。
【0144】
他の植物抽出物−チャノキ抽出物
本発明は、茶(チャノキ)誘導体も活用する。より具体的には、L-テアニンおよび/または没食子酸エピガロカテキン(EGCG)などの緑茶ポリフェノールを、それぞれ10mcg/ml〜10mg/mlの量で用いてよい。
【0145】
アルキルアミン抗原は、先天性免疫応答を刺激することが知られている。アルキルアミン抗原の最も濃縮された植物供給源は、L-テアニンとして知られる緑茶中のアミノ酸である(Bukowski, J et al,「Human gamma delta T cells recognize alkylamines derived from microbes, edible plants and tea:implications for innate immunity」, 1999, Immunity, Vol. 11, 57-65)。L-テアニンは、化学式C2H5NHCOCH2CH2CH(NH2)COOH、D-テアニンおよび/もしくはL,D-テアニン、2-アミノ-4-(エチルカルバモイル)酪酸、N-エチル-L-グルタミン、γ-グルタミルエチルアミド、N-γ-エチル-L-グルタミン、γ-エチルアミノ-L-グルタミニン酸、サンテアニン、5-N-エチルグルタミン、緑茶もしくは他の茶の抽出物、生茶葉もしくは精製茶葉、チャノキもしくはある特定の他のカメリア種(すなわち、ツバキ(C. japonica)、サザンカ(C. sasanqua))の根もしくは他の構成成分、またはキノコの特定の種(すなわち、ニセイロガワリ(Xerocomus badius))によって表される。
【0146】
いくつかの茶ポリフェノールは、抗酸化および抗微生物効果を有することが知られている。没食子酸エピガロカテキン(EGCG)は、緑茶の主要なポリフェノール構成成分である。他のポリフェノールには、エピガロカテキン、没食子酸エピカテキン、およびエピカテキンが含まれる。
【0147】
ビタミンD
ビタミンDは、骨代謝に対するその周知の効果に加えて、先天性免疫システムに対する近年発見された効果を有する。ビタミンD3は、皮膚および目などの身体表面上でのカテリシジン(LL37)などの抗微生物ペプチド(AMP)の産生を誘導する。
【0148】
ビタミンD3を、追加的な活性成分として本製剤に加えてよい。より具体的には、ビタミンDの活性形態を、1mcg〜1mg/mlに及ぶ量で用いてよい。さらにより具体的には、現在特許権保護下にある水溶性形態のビタミンDを用いてよい。
【0149】
他の生存能力のあるおよび生存能力のない生物
用いられ得る他の生存能力のあるまたは生存能力のない微小生物には、ヒト片利共生生物、環境中に見出される海洋生物などのある特定の生物、または地熱口もしくは温泉に見出される生物などの極限環境生物、および/あるいはそれらの抽出物または代謝産物を含む、ヒトに安全に投与することができるものが含まれる。ヒト片利共生生物は、通常ヒト身体にコロニー形成するが疾患を引き起こさない非病原性生物である。これらには、子嚢菌門(phylum Ascomycota)を含む、モネラ(Monera)界および菌(Fungi)界の特定のメンバーが含まれる。
【0150】
酵母のカンジダ菌、サッカロミセス属、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)、デバロミセス属(Debaromyces)、ジゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)およびシゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)、ならびにヤロウイア属(Yarrowia)、トルラスポラ属(Torulaspora)、ピキア(Pichea)、およびアスペルギルス属とペニシリウム属(Penicillium)の菌も用いてよい。パン用酵母の細胞壁もしくはザイモサンなどの細胞壁構成成分(出芽酵母)、または他の酵母、真菌構成成分、またはキノコ構成成分も用いてよい。10mcg〜100mg重量/容量(抽出物/本発明)に及ぶ藻類、真菌、および細菌の抽出物、ならびに/または1ミリリットル(mL)あたり1000万〜100億の間のコロニー形成単位(CFU)に及ぶ生存能力のあるまたは生存能力のない生物(および/もしくはこれらの生物の数によって産生される代謝産物の量)も用いてよい。
【0151】
他の生存能力のあるおよび生存能力のない微小生物に関係する例示的な物質および方法
スピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis)からのポリサッカライド抽出物の調製
本発明の調製中、特定の抽出物を、藍藻類のスピルリナ・プラテンシスを含む他の非細菌性生物から調製してよい。とりわけ、Yang, L et al,「Inhibitory effects of polysaccharhide extract from Spirulina platensis on corneal neovascularization」, Molecular Vision 2009; 15: 1951-1961またはPugh, N et al,「Isolation of three high molecular weight polysaccharide preparations with potent immuno stimulatory activity from Spirulina platensis, Aphanizomenon flos-aqae and Chlorella pyrenoidosa」, Planta Med 67 (2001) 737-742に記載される方法を用いてよい。
【0152】
以下は、本発明を実践するための手順を例証する実施例である。これらの実施例は、限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0153】
実施例1−眼球、眼球周囲、および鼻腔(sinonasal)用途のための具体的態様
本発明の組成物の具体的な投与の部位には、眼球、鼻、口、および皮膚が含まれるが、これらに限定されない。本発明による有用な担体には、スプレー、クリーム、軟膏、ローション、ゲル、点滴剤、石鹸、または投与の部位に適した他の任意の形態が含まれるが、これらに限定されない。当業者に公知の標準的方法を用いて、これらの組成物を調製することができる。
【0154】
本発明の態様を、例えば、エアロゾルおよび非エアロゾルのスプレー、洗浄液、石鹸など、洗浄剤のような不活性対象物に適用してもよい。態様を、単回使用として投与してもよく、または24時間の期間内に1回または複数回投与してもよい。
【0155】
例証のために以下の製剤を用いるが、他のタイプの製剤を用いてもよい。製剤は、好ましくは、最大限の滅菌性のための殺菌技術を用いて、生物学的封じ込めフードの下で調製される。製剤1〜10は、活性構成成分として上記の処方1〜10を用いてよい。しかしながら、それぞれ個々の構成成分を、下記に記載されるように個々に添加してもよい。上記の処方にあるように、種々の生物をプロバイオティクスS.サーモフィルス菌の任意の株に代用してもよい。
【0156】
製剤1−乾燥した、刺激を受けた目の症状軽減のための点眼溶液
2mlのS.サーモフィルス菌1000億 CFU/1ml 滅菌PBS
5mlの希釈していないマヌカ蜂蜜
3mlの滅菌した通常生理食塩溶液
10mlの20B CFU/ml 50%蜂蜜溶液
【0157】
当業者に周知の技術において、製剤を、滅菌した点眼用ボトル内に分割し、中性pHに調整する。点眼溶液の各ボトルは、選択された容量の製剤を、例えば15mlの点眼用ボトル内に10mlで含有してよい。点眼用ボトルを、その使用の有効期限を通じて4℃で保存してよい。
【0158】
製剤2−ドライアイおよび刺激を受けた眼瞼の症状軽減のためのアイクリーム
500B CFUのフリーズドライしたS.サーモフィルス菌
5mlの希釈していない蜂蜜
45mlの冷却クリーム基剤
冷却クリーム基剤中に50mlの10B CFU/ml 10%蜂蜜
【0159】
上記の成分を、当業者に周知の標準的な冷却クリーム、すなわち、セチルエステルワックスの基剤、白ろう、鉱油、ホウ酸ナトリウム、および精製水から構成されたものに混合してよい。製剤を、20mlの本発明を含有している滅菌した瓶内で保存してよい。冷却クリーム混合物を、その使用の有効期限を通じて4℃で保存してよい。
【0160】
製剤3−慢性鼻腔詰まりの症状軽減のための鼻用溶液
10mlの滅菌していないまたは滅菌したマヌカ蜂蜜(Medi-Honey, Comvita Inc., New Zealand)
39mlの最終濃度20% v/vまでの滅菌した通常生理食塩溶液
1mlの50B CFU/ml PBSのフリーズドライした不活性化S.サーモフィルス菌(ATCC BAA-250)
通常の生理食塩基剤中に50mlの1B CFU/ml 20%蜂蜜
【0161】
防腐剤および/または抗酸化剤および/または粘度増進剤を含んで、または含まずに、溶液を調製することができる。溶液を、0.2ミクロンフィルター(Millipore)を通して、15、20、または30mlの滅菌した鼻用スプレーボトル内に濾過することができる。鼻用スプレーボトルを、その使用の有効期限を通じて4℃で保存し続けた。あるいは最大30日まで室温で保管してよい。
【0162】
製剤4−慢性副鼻腔詰まりの症状軽減のための鼻洗浄用パック
500mgの脱水したマヌカ蜂蜜(手順については上記を参照されたい)
250mlの水に再構成した場合に1000億CFU/ml(必要な場合には、適切な賦形剤を用いて)のフリーズドライした不活性化S.サーモフィルス菌(ATCC BAA-250)
【0163】
250mlの水に再構成した場合に等張かつ中性pHの溶液を産生する、塩化ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムのUSPグレードの粉末混和物。消費者によって250mlの水に再構成された場合の1袋の鼻リンス用パックの内容物は、4mg/mlの蜂蜜溶液中375M CFU/mlをもたらす。
【0164】
この形態の本発明を、250mlの容量を有する鼻リンス用ボトルで包装してよい。あるいは、パック自体を単独で包装してよい。
【0165】
製剤5−慢性鼻腔詰まりの症状軽減のための濃縮した液体形態の鼻洗浄液
2.5mlのマヌカ蜂蜜(Medi-Honey, Comvita Inc., New Zealand)
2.0mlの中性pHの滅菌した通常生理食塩溶液
0.5mlの滅菌PBS中100B CFU/mlのフリーズドライした不活性化S.サーモフィルス菌(ATCC BAA-250)
5mlの2B CFU/ml 1%蜂蜜溶液(消費者による最終的な再構成)
【0166】
防腐剤および/または抗酸化剤および/または粘度増進剤を含んで、または含まずに、溶液を調製してよい。溶液を、0.2ミクロンフィルター(Millipore)を通して、滅菌した10mlの使い捨て容器内に濾過してよい。250mlの水と混合した場合に最終溶液が等張であるような適切な張度に達するために、溶液を適切な容量の鼻リンス用ボトルで包装しても、または包装しなくてもよい。
【0167】
実施例2−皮膚用途のための具体的態様
製剤6−慢性的に刺激を受けた乾燥した皮膚および/または通常の皮膚の洗浄のためのゲル
50mlのマヌカ蜂蜜、滅菌したまたは滅菌していない
5%メチルセルロース 1500cP、10% v/vを含有している40mlの中性pHの通常生理食塩溶液
10mlの滅菌PBS中100B CFU/mlのフリーズドライした不活性化S.サーモフィルス菌(ATCC BAA-250)
100mlの10B CFU/ml 50%蜂蜜溶液
【0168】
最終産物を、それぞれが1回のポンプサイクルにつき5mlの本発明を分配するポンプを有する滅菌した手押しポンプ式容器内に包装してよい。この特定の形態を、適用される領域にそのままにしてよく、洗浄する必要はない。
【0169】
製剤7−慢性的に刺激を受けた乾燥した皮膚および/または通常の皮膚の洗浄のための液体石鹸
50mlのグリセリン液体石鹸基剤
50mlの本発明の濃縮した液体形態(すなわち、上記の製剤5)
100mlの1B CFU/ml 0.5%蜂蜜溶液
【0170】
上記の構成要素を、穏やかな加熱および撹拌により合わせてよく、100mlの手押しポンプ式容器内に注ぎ、冷却し、かつ包装してよい。
【0171】
製剤8−慢性的に刺激を受けた乾燥した皮膚および/または通常の皮膚の洗浄のための入浴剤
10gのクエン酸ナトリウム
20gの重炭酸ナトリウム
10gの結晶化したまたは脱水したマヌカ蜂蜜(上記を参照されたい)
100B CFUのフリーズドライした不活性化S.サーモフィルス菌(ATCC BAA-250)
5mlのラベンダーのエッセンシャルオイル
5mlのマヌカのエッセンシャルオイル
50gmの2B CFU/gm 20%蜂蜜混合物
【0172】
マンサク(witch hazel)を用いて保存処理し(cure)、50mlのドーム状の型に入れ、気密性の使い捨て包装物内に包装してよい。
【0173】
実施例3−環境用途のための具体的態様
製剤9−病原性バイオフィルムによるコロニー形成に曝露され得る無生物表面の洗浄のための環境用抗バイオフィルムスプレー
希釈アルコールまたは酢の基剤中の80mlの洗浄用スプレー媒体
10mlの滅菌していないマヌカ蜂蜜
10mlの100B CFU/ml PBSのフリーズドライした不活性化S.サーモフィルス菌ATCC BAA-250
100mlの100億 CFU/ml 10%蜂蜜溶液
【0174】
手押しポンプ式部屋用スプレー容器内に包装してよく、各ポンプは1mlの溶液と同等のエアロゾル容量を分配し得る。この特定の形態は、適用した領域にそのままにしてよく、洗浄する必要はない。
【0175】
実施例4−耳用途のための具体的態様
製剤10−慢性的に刺激を受けた、炎症を起こした耳の症状軽減のための点耳薬
3mlのγ線照射した滅菌マヌカ蜂蜜(Medi-Honey, Comvita Inc., New Zealand)
6mlの滅菌したグリセリン
1mlのS.サーモフィルス菌1000億 CFU/1ml 滅菌PBS
10mlの100億 CFU/ml 3%蜂蜜溶液
【0176】
実施例5−呼吸器用途のための具体的態様
製剤11−吸入用溶液
50mgのクエン酸、無水
2mlのγ線照射した滅菌マヌカ蜂蜜(Medi-Honey, Comvita Inc., New Zealand)
1mlの500億 CFU/mlのS.サーモフィルス菌CFU/ml 滅菌PBS
97mlの滅菌した通常生理食塩水
100mlの5億CFU/mlのS.サーモフィルス菌CFU/ml 2%蜂蜜溶液
【0177】
実施例6−歯用途のための具体的態様
製剤12−歯磨き粉
15mlのキシリトール
3mgのNaCl
38grのグリセリン
2mlのチモール蒸留物(すなわち、モナルダ(Monarda)属)
20grのマヌカ蜂蜜
1mlのS.サーモフィルス菌1000億 CFU/1ml 滅菌PBS
80mlのS.サーモフィルス菌1.25B CFU/1ml
【0178】
実施例7−歯周用途のための具体的態様
製剤13−歯周炎の治療のための掻爬剤
凍結乾燥したS.サーモフィルス菌、10B CFU/g媒体の最終濃度
マヌカ蜂蜜、120Fで脱水され、粉末に破砕された;50gr/媒体の最終濃度
ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、または他の生分解性共重合体上のポリ(エステル)を、歯周ポケット内への歯肉縁下投与を意図した本製剤のための送達媒体として用いてよい。
【0179】
上記の製剤を、それが、歯科用フロスのコーティングとして用いられ得るように、または、洗口液、ガム、もしくはトローチ内に組み入れられ得るように改変してよい。
【0180】
スピルリナ、ビタミンD3、L-テアニン、およびEGCGを含むがこれらに限定されない他の有機物など、成分についての詳細な説明において参照されるプレバイオティクス、植物油、および他の構成成分を、所望の場合には成分の製剤のいずれかに添加してよい。
【0181】
本明細書において記載される実施例および態様は、例証のみを目的とするものであること、およびそれを踏まえた種々の改変または変更は、当業者に示唆され、かつ本出願の精神および権限内に、ならびに添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれ得ることを理解するべきである。