特許第6594272号(P6594272)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594272
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20191010BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20191010BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20191010BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20191010BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   H01L29/80 H
   H01L29/78 301B
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-171415(P2016-171415)
(22)【出願日】2016年9月2日
(65)【公開番号】特開2018-37600(P2018-37600A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2018年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100088487
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 允之
(72)【発明者】
【氏名】犬宮 誠治
【審査官】 棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0053921(US,A1)
【文献】 特開2016−143842(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0144955(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/172753(WO,A1)
【文献】 特開2005−183597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 21/336
H01L 29/778
H01L 29/78
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層の上に設けられ、前記第1の窒化物半導体層よりも電子親和力の小さい第2の窒化物半導体層と、
ゲート電極と、
前記ゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に設けられた酸窒化アルミニウム層と、
前記第1の窒化物半導体層に電気的に接続された第1の電極と、
前記第1の電極との間に前記ゲート電極が設けられ、前記第1の窒化物半導体層に電気的に接続された第2の電極と、
前記第1の電極と前記酸窒化アルミニウム層との間の、前記第2の窒化物半導体層の上に設けられた第1の窒化アルミニウム層と、
前記酸窒化アルミニウム層と前記第2の電極との間の、前記第2の窒化物半導体層の上に設けられた第2の窒化アルミニウム層と、
を備え、
前記第1の窒化アルミニウム層が前記第2の窒化物半導体層に接し、前記第2の窒化アルミニウム層が前記第2の窒化物半導体層に接し、
前記酸窒化アルミニウム層が前記第2の窒化物半導体層に接し、
前記酸窒化アルミニウム層と前記第1の窒化物半導体層との距離をd1、前記第1の窒化アルミニウム層と前記第1の窒化物半導体層との距離をd2とした場合に、d1とd2との差が−1nm以上1nm以下である半導体装置。
【請求項2】
前記第1の窒化アルミニウム層が結晶質であり、前記第2の窒化アルミニウム層が結晶質である請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の電極が前記第2の窒化物半導体層に接し、前記第2の電極が前記第2の窒化物半導体層に接する請求項1又は請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記酸窒化アルミニウム層中の酸素と窒素の和に対する窒素の原子比が、0.001以上0.1以下である請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ゲート電極と前記酸窒化アルミニウム層との間に設けられた絶縁層を、更に備える請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項6】
第1の窒化物半導体層の上に前記第1の窒化物半導体層よりも電子親和力の小さい第2の窒化物半導体層を形成し、
前記第2の窒化物半導体層の上に窒化アルミニウム層を形成し、
前記窒化アルミニウム層の一部を選択的に酸化して、前記第2の窒化物半導体層に接する酸窒化アルミニウム層を形成し、
前記酸窒化アルミニウム層の上にゲート電極を形成する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
III−V族半導体を用いた高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)は、チャネル層に形成される2次元電子ガス(2 Dimensional Electron Gas:2DEG)により、デバイス動作中の低いオン抵抗と速いスイッチング速度を実現する。しかし、通常のHEMTでは、ゲート電極下のチャネル層に2DEGが存在する。このため、ゲート電極に電圧を印加しない状態でソース・ドレイン間に電流が流れるノーマリー・オン特性を備える。
【0003】
HEMTが組み込まれた機器の起動時に、HEMTのソース・ドレイン間に電流が流れてしまう構成は、多くのアプリケーションにとって好ましい構成ではない。したがって、ゲート電極に電圧を印加しない状態では、ソース・ドレイン間に電流が流れないノーマリー・オフ特性をHEMTが備えることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−72358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ノーマリー・オフ特性の実現が可能な半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の半導体装置は、第1の窒化物半導体層と、前記第1の窒化物半導体層の上に設けられ、前記第1の窒化物半導体層よりも電子親和力の小さい第2の窒化物半導体層と、ゲート電極と、前記ゲート電極と前記第2の窒化物半導体層との間に設けられた酸窒化アルミニウム層と、前記第1の窒化物半導体層に電気的に接続された第1の電極と、前記第1の電極との間に前記ゲート電極が設けられ、前記第1の窒化物半導体層に電気的に接続された第2の電極と、前記第1の電極と前記酸窒化アルミニウム層との間の、前記第2の窒化物半導体層の上に設けられた第1の窒化アルミニウム層と、前記酸窒化アルミニウム層と前記第2の電極との間の、前記第2の窒化物半導体層の上に設けられた第2の窒化アルミニウム層と、を備え、前記第1の窒化アルミニウム層が前記第2の窒化物半導体層に接し、前記第2の窒化アルミニウム層が前記第2の窒化物半導体層に接し、前記酸窒化アルミニウム層が前記第2の窒化物半導体層に接し、前記酸窒化アルミニウム層と前記第1の窒化物半導体層との距離をd1、前記第1の窒化アルミニウム層と前記第1の窒化物半導体層との距離をd2とした場合に、d1とd2との差が−1nm以上1nm以下である
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図2】第1の実施形態の製造途中の半導体装置の模式断面図。
図3】第1の実施形態の製造途中の半導体装置の模式断面図。
図4】第1の実施形態の製造途中の半導体装置の模式断面図。
図5】第1の実施形態の製造途中の半導体装置の模式断面図。
図6】第1の実施形態の製造途中の半導体装置の模式断面図。
図7】第1の実施形態の製造途中の半導体装置の模式断面図。
図8】第1の実施形態の製造途中の半導体装置の模式断面図。
図9】第2の実施形態の半導体装置の模式断面図。
図10】第2の実施形態の製造途中の半導体装置の模式断面図。
図11】第2の実施形態の製造途中の半導体装置の模式断面図。
図12】第2の実施形態の製造途中の半導体装置の模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書中、同一又は類似する部材については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0009】
本明細書中、「アンドープ」とは、不純物濃度が1×1015cm−3以下であることを意味する。
【0010】
本明細書中、部品等の位置関係を示すために、図面の上方向を「上」、図面の下方向を「下」と記述する。本明細書中、「上」、「下」の概念は、必ずしも重力の向きとの関係を示す用語ではない。
【0011】
(第1の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1の窒化物半導体層と、第1の窒化物半導体層の上に設けられ、第1の窒化物半導体層よりも電子親和力の小さい第2の窒化物半導体層と、ゲート電極と、ゲート電極と第2の窒化物半導体層との間に設けられた酸窒化アルミニウム層と、第1の窒化物半導体層に電気的に接続された第1の電極と、第1の電極との間にゲート電極が設けられ、第1の窒化物半導体層に電気的に接続された第2の電極と、第1の電極と酸窒化アルミニウム層との間の、第2の窒化物半導体層の上に設けられた第1の窒化アルミニウム層と、酸窒化アルミニウム層と第2の電極との間の、第2の窒化物半導体層の上に設けられた第2の窒化アルミニウム層と、を備える。
【0012】
図1は、本実施形態の半導体装置の模式断面図である。本実施形態の半導体装置は、III−V族半導体を用いたHEMTである。
【0013】
図1に示すように、HEMT100(半導体装置)は、基板10、バッファ層12、チャネル層14(第1の窒化物半導体層)、バリア層16(第2の窒化物半導体層)、第1の窒化アルミニウム層18a、第2の窒化アルミニウム層18b、第1のキャップ層20a、第2のキャップ層20b、酸窒化アルミニウム層22、ゲート電極24、ソース電極26(第1の電極)、及び、ドレイン電極28(第2の電極)を備える。
【0014】
基板10は、例えば、表面の面方位が(111)のシリコンである。シリコン以外にも、例えば、サファイアや炭化珪素を適用することも可能である。
【0015】
バッファ層12は、基板10上に設けられる。バッファ層12は、基板10とチャネル層14との間の格子不整合を緩和する機能を備える。バッファ層12は、例えば、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウムで形成される。
【0016】
チャネル層14は、バッファ層12上に設けられる。チャネル層14は電子走行層とも称される。
【0017】
チャネル層14は、例えば、アンドープのAlGa1−XN(0≦X<1)である。より具体的には、例えば、アンドープの窒化ガリウム(GaN)である。チャネル層14の厚さは、例えば、0.1μm以上10μm以下である。
【0018】
バリア層16は、チャネル層14上に設けられる。バリア層16は電子供給層とも称される。バリア層16の電子親和力は、チャネル層14の電子親和力よりも小さい。
【0019】
電子親和力は、伝導体の下端と真空準位のエネルギー差である。バリア層16の電子親和力がチャネル層14の電子親和力よりも小さいことで、チャネル層14に2DEGが形成される。バリア層16のバンドギャップは、チャネル層14のバンドギャップよりも大きい。
【0020】
バリア層16は、例えば、アンドープのAlGa1−YN(0<Y≦1、X<Y)である。バリア層16は、例えば、アンドープの窒化アルミニウムガリウムである。より具体的には、例えば、アンドープのAl0.2Ga0.8Nである。バリア層16の厚さは、例えば、2nm以上10nm以下である。
【0021】
チャネル層14とバリア層16との間は、ヘテロ接合界面となる。チャネル層14とバリア層16との間の界面は、実質的に平坦である。言い換えれば、チャネル層14の表面は、実質的に平坦である。
【0022】
チャネル層14には、ヘテロ接合界面の分極電荷によって、2DEGが形成される。2DEGは高い電子移動度を有し、デバイス動作中の低オン抵抗と高速スイッチングを可能にする。
【0023】
ソース電極26とドレイン電極28は、バリア層16上に設けられる。ソース電極26とドレイン電極28は、例えば、金属電極である。ソース電極26とドレイン電極28は、例えば、チタン(Ti)/アルミニウム(Al)/ニッケル(Ni)/金(Au)の積層構造である。チタン(Ti)/アルミニウム(Al)/ニッケル(Ni)/金(Au)の厚さは、例えば、25nm/300nm/50nm/50nmである。
【0024】
ソース電極26及びドレイン電極28は、例えば、バリア層16に接する。ソース電極26及びドレイン電極28とバリア層16との間は、オーミックコンタクトであることが望ましい。ソース電極26及びドレイン電極28は、バリア層16を介してチャネル層14に電気的に接続される。ソース電極26及びドレイン電極28が、チャネル層14に接する構造とすることも可能である。
【0025】
ソース電極26とドレイン電極28との距離は、例えば、5μm以上30μm以下である。
【0026】
酸窒化アルミニウム層22は、ソース電極26とドレイン電極28の間のバリア層16上に設けられる。酸窒化アルミニウム層22は、バリア層16とゲート電極24との間に設けられる。酸窒化アルミニウム層22は、バリア層16に接して設けられる。酸窒化アルミニウム層22は、HEMT100のゲート絶縁膜として機能する。
【0027】
酸窒化アルミニウム層22は、非晶質である。酸窒化アルミニウム層22中の酸素と窒素の和に対する窒素の原子比(N/(O+N))は、例えば、0.001以上0.1以下である。酸窒化アルミニウム層22中の原子比は、例えば、電子エネルギー損失分光法(EELS)により測定することが可能である。
【0028】
酸窒化アルミニウム層22は、酸窒化アルミニウムを主成分とする材料であり、副成分としてその他の材料を含んでいても構わない。酸窒化アルミニウム層22の厚さは、例えば、4nm以上20nm以下である。
【0029】
ゲート電極24は、ソース電極26とドレイン電極28との間に設けられる。ゲート電極24とバリア層16との間に酸窒化アルミニウム層22が設けられる。
【0030】
ゲート電極24は、例えば、金属電極である。ゲート電極24は、例えば、白金(Pt)/金(Au)の積層構造である。白金(Pt)/金(Au)の厚さは、例えば、50nm/500nmである。
【0031】
第1の窒化アルミニウム層18aは、バリア層16上に設けられる。第1の窒化アルミニウム層18aは、バリア層16に接する。第1の窒化アルミニウム層18aは、ソース電極26と酸窒化アルミニウム層22との間に設けられる。第1の窒化アルミニウム層18aは、ソース電極26とゲート電極24との間に設けられる。第1の窒化アルミニウム層18aは、第1の窒化アルミニウム層18aの下のチャネル層14表面の2DEG密度を増大させる。
【0032】
第1の窒化アルミニウム層18aは、結晶質である。第1の窒化アルミニウム層18aは、例えば、単結晶層である。第1の窒化アルミニウム層18aは、窒化アルミニウムを主成分とする材料であり、副成分としてその他の材料を含んでいても構わない。第1の窒化アルミニウム層18aの厚さは、例えば、5nm以上20nm以下である。
【0033】
第2の窒化アルミニウム層18bは、バリア層16上に設けられる。第2の窒化アルミニウム層18bは、酸窒化アルミニウム層22とドレイン電極28との間に設けられる。第2の窒化アルミニウム層18bは、バリア層16に接する。第2の窒化アルミニウム層18bは、ゲート電極24とドレイン電極28との間に設けられる。第2の窒化アルミニウム層18bは、第2の窒化アルミニウム層18bの下のチャネル層14表面の2DEG密度を増大させる。
【0034】
第2の窒化アルミニウム層18bは、結晶質である。第2の窒化アルミニウム層18bは、例えば、単結晶層である。第2の窒化アルミニウム層18bは、窒化アルミニウムを主成分とする材料であり、副成分としてその他の材料を含んでいても構わない。第2の窒化アルミニウム層18bの厚さは、例えば、5nm以上20nm以下である。
【0035】
酸窒化アルミニウム層22とバリア層16との距離をd1、第1の窒化アルミニウム層18aとバリア層16との距離をd2、第2の窒化アルミニウム層18bとバリア層16との距離をd3とした場合に、例えば、d1とd2との差が−1nm以上1nm以下であり、d1とd3との差が−1nm以上1nm以下である。バリア層16の表面は、例えば、実質的に平坦である。
【0036】
第1のキャップ層20aは、第1の窒化アルミニウム層18a上に設けられる。第1のキャップ層20aは、絶縁層である。第1の窒化アルミニウム層18aは、第1の窒化アルミニウム層18aの酸化を防止する。
【0037】
第1のキャップ層20aは、例えば、非晶質の酸化アルミニウムである。第1のキャップ層20aの厚さは、例えば、5nm以上20nm以下である。
【0038】
第2のキャップ層20bは、第2の窒化アルミニウム層18b上に設けられる。第2のキャップ層20bは、絶縁層である。第2の窒化アルミニウム層18bは、第2の窒化アルミニウム層18bの酸化を防止する。
【0039】
第2のキャップ層20bは、例えば、非晶質の酸化アルミニウムである。第2のキャップ層20bの厚さは、例えば、5nm以上20nm以下である。
【0040】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法の一例について説明する。図2図8は、本実施形態の製造途中の半導体装置の模式断面図である。
【0041】
本実施形態の半導体装置の製造方法は、第1の窒化物半導体層上に第1の窒化物半導体層よりも電子親和力の小さい第2の窒化物半導体層を形成し、第2の窒化物半導体層上に窒化アルミニウム層を形成し、窒化アルミニウム層の一部を選択的に酸化して酸窒化アルミニウム層を形成し、酸窒化アルミニウム層上にゲート電極を形成する。
【0042】
最初に、基板10、例えば、表面の面方位が(111)のシリコン基板を準備する(図2)。次に、例えば、シリコン基板上にエピタキシャル成長により、バッファ層12を成長させる。バッファ層12は、例えば、窒化アルミニウムである。例えば、有機金属化学気相成長(MOCVD)法によりバッファ層12を成長させる。
【0043】
次に、バッファ層12上に、例えば、チャネル層14となるアンドープのGaN、バリア層16となるアンドープのAl0.2Ga0.8Nをエピタキシャル成長により形成する。例えば、MOCVD法により、チャネル層14、バリア層16を成長させる(図3)。バリア層16の厚さは、例えば、5nmである。
【0044】
次に、バリア層16上に、窒化アルミニウム層18及びキャップ層20となる酸化アルミニウムを、例えば、プラズマ原子層成長(PE−ALD)法により、大気中に曝露することなく連続堆積する(図4)。窒化アルミニウム層18の堆積にはトリメチルアルミニウムとアンモニアガスを原料ガスとして用いる。酸化アルミニウムの堆積にはトリメチルアルミニウムと水蒸気を原料ガスとして用いる。
【0045】
窒化アルミニウム層18は結晶質であり、キャップ層20となる酸化アルミニウムは非晶質である。窒化アルミニウム層18の厚さは、例えば、10nmである。キャップ層20となる酸化アルミニウムの厚さは、例えば、10nmである。
【0046】
PE−ALD法により成長させる窒化アルミニウム層18は大気中で酸化されやすい。キャップ層20は、窒化アルミニウム層18の酸化を防止する。
【0047】
窒化アルミニウム層18は、成長初期に下地の窒化アルミニウムガリウムの結晶性を引き継いでエピタキシャル成長する。窒化アルミニウム層18を、MOCVD法によりエピタキシャル成長させても構わない。
【0048】
次に、キャップ層20の一部を除去する(図5)。後にゲート電極24が形成される領域のキャップ層20を選択的に除去する。キャップ層20は、例えば、リソグラフィ法とウェットエッチング法により選択的に除去する。ウェットエッチング法には、例えば、緩衝弗酸水溶液を用いる。
【0049】
次に、窒化アルミニウム層18の一部を選択的に酸化して、酸窒化アルミニウム層22を形成する(図6)。キャップ層20の開口部に露出した窒化アルミニウム層18を、例えば、プラズマ酸化法を用いて酸化する。例えば、酸窒化アルミニウム層22がバリア層16に接するように酸化する。
【0050】
次に、例えば、リソグラフィ法とウェットエッチング法を用いて、キャップ層20及び窒化アルミニウム層18の一部を除去する。後にソース電極26とドレイン電極28が形成される領域のキャップ層20及び窒化アルミニウム層18を除去する。
【0051】
次に、例えば、電子ビーム蒸着法とリフトオフ法を用いて、バリア層16上に、ソース電極26及びドレイン電極28を形成する(図7)。ソース電極26及びドレイン電極28は、例えば、チタン(Ti)/アルミニウム(Al)/ニッケル(Ni)/金(Au)の積層構造であり、厚さは25nm/300nm/50nm/50nmである。
【0052】
例えば、675℃、10分間の窒素雰囲気アニールを行うことにより、ソース電極26及びドレイン電極28とチャネル層14の表面の2DEGとの間にオーミックコンタクトが形成される。
【0053】
次に、例えば、電子ビーム蒸着法とリフトオフ法を用いて、酸窒化アルミニウム層22上にゲート電極24を形成する(図8)。ゲート電極24は、例えば、白金(Pt)/金(Au)の積層構造であり、厚さは50nm/500nmである。
【0054】
その後、図示しないパッシベーション層形成工程、ビア開口工程、フィールドプレート形成工程、ビア開口工程、パッドメタル形成工程などを経て、図1のHEMT100が製造される。
【0055】
次に、本実施形態の半導体装置の作用及び効果について説明する。
【0056】
本実施形態のHEMT100は、ゲート電極24の下のバリア層16の厚さを薄くすることにより、ゲート電極24の下のチャネル層14の表面を、ゲート電極24に電圧を印加しない状態で空乏化させることが可能である。したがって、ゲート電極24に電圧を印加しない状態でHEMT100をオフ状態にすることが可能である。
【0057】
一方、ゲート電極24に閾値電圧よりも高い電圧を印加すると、ゲート電極24の下のチャネル層14の表面に2DEGが誘起される。したがって、ソース電極26とドレイン電極28間に電流が流れ、HEMT100はオン状態となる。
【0058】
よって、HEMT100はノーマリー・オフ特性を備えることになる。
【0059】
更に、本実施形態のHEMT100では、酸窒化アルミニウム層22をゲート絶縁膜として備える。窒素を含む酸窒化アルミニウム層22は負の固定電荷を備える。酸窒化アルミニウム層22中の負の固定電荷により、HEMT100の閾値電圧が正の方向にシフトする。言い換えれば、酸窒化アルミニウム層22中の負の固定電荷により、HEMT100の閾値電圧が上昇する。したがって、HEMT100のノーマリー・オフ特性が安定する。
【0060】
一般に、酸窒化アルミニウムは酸化ガリウムよりもリーク電流が小さい。本実施形態のHEMT100は、酸窒化アルミニウム層22をゲート絶縁膜として用いることで、低いゲートリーク電流の実現が可能である。
【0061】
また、本実施形態のHEMT100のチャネル層14の表面及びバリア層16の表面は、ソース電極26からドレイン電極28に至るまでの間で、実質的に平坦である。したがって、ソース電極26からドレイン電極28に向けて、チャネル層14の表面を流れる電子の散乱が抑制される。よって、オン抵抗の低い高性能なHEMT100が実現する。
【0062】
また、本実施形態のHEMT100は、ソース電極26とゲート電極24との間に第1の窒化アルミニウム層18a、ゲート電極24とドレイン電極28との間に第2の窒化アルミニウム層18bを備える。第1の窒化アルミニウム層18aにより、第1の窒化アルミニウム層18aの下のチャネル層14表面に誘起される分極電荷の量が増大する。よって、第1の窒化アルミニウム層18aの下のチャネル層14表面の2DEG密度が増大する。
【0063】
同様に、第2の窒化アルミニウム層18bの下のチャネル層14表面の2DEG密度が増大する。したがって、ノーマリー・オフ特性の実現のために、バリア層16の厚さを薄くした場合であっても、全体として低いオン抵抗を維持することが可能となる。
【0064】
本実施形態の製造方法では、ゲート絶縁膜である酸窒化アルミニウム層22を窒化アルミニウム層18の酸化により形成する。酸窒化アルミニウム層22を酸化により形成することで、バリア層16と酸窒化アルミニウム層22との界面の界面準位密度が低下する。また、酸化により形成される膜は、堆積膜よりも膜中のトラップ密度が低い。したがって、デバイス動作中の閾値変動が抑制され、信頼性の高いHEMT100が製造される。
【0065】
また、本実施形態の製造方法では、酸窒化アルミニウム層22を窒化アルミニウム層18の酸化により形成する際に、酸化される窒化アルミニウム層18から窒素ラジカルがバリア層16に供給される。したがって、バリア層16内の窒素欠損密度が低減される。よって、デバイス動作中の窒素欠損による電子の散乱が抑制され、オン抵抗が低い高性能なHEMT100が製造される。
【0066】
また、本実施形態の製造方法では、酸窒化アルミニウム層22を窒化アルミニウム層18の酸化により形成する。このため、ゲート電極24の下のバリア層16の厚さのばらつきは、酸窒化アルミニウム層22の酸化量のばらつきに依存する。ゲート電極24の下のバリア層16の厚さのばらつきは、HEMT100の閾値電圧のばらつきにつながる。
【0067】
例えば、バリア層をドライエッチングしてゲート電極下のバリア層の膜厚を制御し、ノーマリー・オフ特性を実現する方法がある。いわゆるゲート・リセス構造のHEMTである。
【0068】
一般に、酸化量のウェハ間ばらつき、ウェハ面内ばらつきは、ドライエッチング量のウェハ間ばらつき、ウェハ面内ばらつきと比較して小さい。したがって、本実施形態によれば、閾値電圧のばらつきの小さい安定したHEMT100が製造される。
【0069】
本実施形態のHEMT100は、上記の構造を備えることにより、本実施形態の製造方法により製造することが可能である、したがって、本実施形態のHEMT100によれば、高信頼性、高性能、且つ、閾値電圧の安定が実現できる。
【0070】
ノーマリー・オフ特性を実現する観点から、バリア層16の厚さは、10nm以下であることが望ましく、5nm以下であることがより望ましい。
【0071】
また、チャネル層14の表面を流れる電子の散乱を抑制する観点から、酸窒化アルミニウム層22とバリア層16との距離をd1、第1の窒化アルミニウム層18aとバリア層16との距離をd2、第2の窒化アルミニウム層18bとバリア層16との距離をd3とした場合に、例えば、d1とd2との差が−1nm以上1nm以下であり、d1とd3との差が−1nm以上1nm以下であることが望ましい。
【0072】
また、酸窒化アルミニウム層22中の酸素と窒素の和に対する窒素の原子比(N/(O+N))は、0.001以上0.1以下であることが望ましく、0.01以上0.1以下であることがより望ましい。上記範囲を下回ると、閾値電圧が低くなりすぎるおそれがある。上記範囲を上回るとリーク電流が過大になるおそれがある。
【0073】
以上、本実施形態によれば、高信頼性、高性能、且つ、閾値電圧の安定したノーマリー・オフ特性のHEMT及びその製造方法が提供される。
【0074】
(第2の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、ゲート電極と酸窒化アルミニウム層との間に設けられた絶縁層を、更に備える以外は第1の実施形態と同様である。以下、第1の実施形態と共通する内容については、記述を省略する場合がある。
【0075】
図9は、本実施形態の半導体装置の模式断面図である。本実施形態の半導体装置は、III−V族半導体を用いたHEMTである。
【0076】
図9に示すように、HEMT200(半導体装置)は、基板10、バッファ層12、チャネル層14(第1の窒化物半導体層)、バリア層16(第2の窒化物半導体層)、第1の窒化アルミニウム層18a、第2の窒化アルミニウム層18b、第1のキャップ層20a、第2のキャップ層20b、酸窒化アルミニウム層22、ゲート電極24、ソース電極26(第1の電極)、及び、ドレイン電極28(第2の電極)、絶縁層30を備える。
【0077】
絶縁層30は、ゲート電極24と酸窒化アルミニウム層22との間に設けられる。酸窒化アルミニウム層22と絶縁層30とが、HEMT200のゲート絶縁膜として機能する。
【0078】
絶縁層30は、非晶質である。絶縁層30は、酸窒化アルミニウムとは異なる材質である。絶縁層30は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸窒化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸窒化ハフニウム、酸化ランタン、酸窒化ランタン、酸化プラセオジニウム、酸窒化プラセオジニウムである。絶縁層30は、上記材料の積層又は混合物であっても構わない。
【0079】
絶縁層30の厚さは、例えば、10nm以上30nm以下である。
【0080】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法の一例について説明する。図10図12は、本実施形態の製造途中の半導体装置の模式断面図である。
【0081】
まず、基板10上にバッファ層12、チャネル層14、バリア層16、窒化アルミニウム層18、キャップ層20を堆積し、酸窒化アルミニウム層22を形成するまでは、第1の実施形態の製造方法と同様である。
【0082】
次に、酸窒化アルミニウム層22及びキャップ層20上に絶縁層30を形成する(図10)。絶縁層30は、例えば、厚さ20nmの酸化シリコンである。
【0083】
次に、例えば、リソグラフィ法とウェットエッチング法を用いて、絶縁層30、キャップ層20及び窒化アルミニウム層18の一部を除去する。後にソース電極26とドレイン電極28が形成される領域の絶縁層30、キャップ層20及び窒化アルミニウム層18を除去する。
【0084】
次に、例えば、電子ビーム蒸着法とリフトオフ法を用いて、バリア層16上に、ソース電極26及びドレイン電極28を形成する(図11)。ソース電極26及びドレイン電極28は、例えば、チタン(Ti)/アルミニウム(Al)/ニッケル(Ni)/金(Au)の積層構造であり、厚さは25nm/300nm/50nm/50nmである。
【0085】
例えば、675℃、10分間の窒素雰囲気アニールを行うことにより、ソース電極26及びドレイン電極28とチャネル層14の表面の2DEGとの間にオーミックコンタクトが形成される。
【0086】
次に、例えば、電子ビーム蒸着法とリフトオフ法を用いて、絶縁層30上にゲート電極24を形成する(図12)。ゲート電極24は、例えば、白金(Pt)/金(Au)の積層構造であり、厚さは50nm/500nmである。
【0087】
その後、図示しないパッシベーション層形成工程、ビア開口工程、フィールドプレート形成工程、ビア開口工程、パッドメタル形成工程などを経て、図9のHEMT200が製造される。
【0088】
本実施形態のHEMT200は、ゲート絶縁膜として絶縁層30を備えることで、ゲート絶縁膜が厚くなる。したがって、ゲート絶縁膜に印加される電界強度が低減される。よって、ゲート絶縁膜の耐圧が向上し、信頼性の高いHEMT200が実現される。
【0089】
以上、本実施形態によれば、第1の実施形態同様、高信頼性、高性能、且つ、閾値電圧の安定したノーマリー・オフ特性のHEMT及びその製造方法が提供される。また、ゲート絶縁膜の耐圧が向上することにより、第1の実施形態よりも更に信頼性の高いHEMT及びその製造方法が提供される。
【0090】
実施形態では、窒化物半導体層の材料として窒化ガリウムや窒化アルミニウムガリウムを例に説明したが、例えば、インジウム(In)を含有する窒化インジウムガリウム、窒化インジウムアルミニウム、窒化インジウムアルミニウムガリウムを適用することも可能である。また、窒化物半導体層の材料として窒化アルミニウムを適用することも可能である。
【0091】
また、実施形態では、バリア層16として、アンドープの窒化アルミニウムガリウムを例に説明したが、例えば、n型の窒化アルミニウムガリウムを適用することも可能である。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
14 チャネル層(第1の窒化物半導体層)
16 バリア層(第2の窒化物半導体層)
18a 第1の窒化アルミニウム層
18b 第2の窒化アルミニウム層
22 酸窒化アルミニウム層
24 ゲート電極
26 ソース電極
28 ドレイン電極
30 絶縁層
100 HEMT(半導体装置)
200 HEMT(半導体装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12