(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ光を自車両前方に対して出射し、対象物で反射されたレーザ光を受波することにより、路面および路面より上に位置する対象物との間の距離を検出する技術が知られている。例えば、特許文献1は、電磁波が送信される検知領域の上下方向の位置ずれを確実に判定することのできる電磁波を用いた物体検知装置を開示する。この物体検知装置は、前走車等の障害物を検知すべく車両から電磁波を進行方向前方に送信する検知領域を、路面に対して僅かに上向きの第1検知領域と、路面に対して僅かに下向きの第2検知領域とから構成し、第1、第2検知領域の反射波の受信強度を比較する。両方の受信強度がほぼ一致していれば物体検知装置の上下方向角度が適切であると判定する。上側の第1検知領域の反射波の受信強度が大きい場合にはその角度が下向きであると判定し、また下側の第2検知領域の反射波の受信強度が大きい場合にはその角度が上向きであると判定し、物体検知装置の取付角度を自動的に調整する。
【0003】
また、特許文献2は、高さ方向及び水平方向の所定の範囲に検知波を送信し、検知波の送信範囲を分割した各領域毎に取得した距離データに基づいて、自車両周囲の物体を検知すると共に、自車両と物体との相対位置に応じて警報等を行う車両の制御装置を開示する。この制御装置は、同一の物体を検知した領域をグループ化し、グループ化した領域群から、所定高さ以下の領域を除くデータ除去処理を行うと共に、自車両から物体までの距離を、処理後の領域群の内で自車両との距離が最も短い距離データに基づいて検出する。
【0004】
また、特許文献3は、上下方向の移動にも追従しながら、必要な検知範囲のみを1次元スキャンで対応できるようにすることで、処理負荷、消費電力の増大を招来することなく適切な物体認識を行う物体認識装置を開示する。この物体認識装置は、全検知照射視野を大きくしたままで、横方向の1スキャンあたりの照射視野を全検知照射視野の一部にし、検知窓移動用ミラーを揺動させることにより、検知した先行車が掃引照射エリアのほぼ中央となるように掃引照射エリア自体を上下に移動させる。こうすることで、先行車の上下方向の移動にも追従しながら、必要な検知範囲のみを1次元スキャンで対応でき、先行車を見落とすことがなくなる。
【0005】
また、特許文献4は、安定して前方車両と自車両との車間距離を検出することができるレーザレーダシステムを開示する。このレーザレーダシステムは、レーザ光を自車両前方の車両に向けて出射し、前方車両で反射されたレーザを受波する。レーザレーダシステムは、レーザ光の出射方向を、水平方向に走査する水平走査アクチュエータと、垂直方向に走査する垂直走査アクチュエータと、水平走査アクチュエータと垂直走査アクチュエータを制御し、レーザ光の出射と受波の時間差から車間距離を算出するレーダ信号処理・制御部を備える。レーダ信号処理・制御部は、車間距離が所定距離以上である場合は、レーザ光を水平方向に走査し、車間距離が所定距離未満の場合は、垂直方向に走査するとともに、水平方向に走査することにより確実に近接車両の車体後部を検出する。
【0006】
また、特許文献5は、障害物中の反射物体が高い位置にある場合においても、送信波をその反射物体に照射でき、正確な距離検出を行うことができる車両用物体認識装置を開示する。この車両用物体認識装置は、低速状態もしくは近距離状態であることが検出された場合に、通常走行時の場合と比べて上方にレーザ光が照射されるようにする。例えば、ポリゴンミラーの各側面のうち認識使用範囲に相当するものが面番号4、5、6であったとすると、低速状態もしくは近距離状態のときには、その面番号を1つ減らし、認識使用範囲を面番号3、4、5に切り替える。これにより、トラック等と自車両との距離が近づいたとしても、レーザ光が上方に照射され、高い位置のリフレクタに当たるようにすることが可能となる。したがって、トラック等と自車両との距離が近づいて、レーザ光がリフレクタに当たらなくなり、突然距離検出が正確に行えなくなるという状態を防ぐことができる。
【0007】
また、特許文献6は、コントローラによる制御が不要で、且つ省資源化も可能な物体検知方法を開示する。この物体検知方法は、車両の前部に、発光部と受光部を備えたレーダ装置を左右に配置し、左側のレーダ装置の発光部が発射したレーザ光の反射光を右側のレーダ装置の受光部で受信した後に右側のレーダ装置の発光部がレーザ光を発射し、右側のレーダ装置の発光部が発射したレーザ光の反射波を左側のレーダ装置の受光部で受光した後に左側のレーダ装置の発光部がレーザ光を発射する。
【0008】
また、特許文献7は、道路の状態や車両の姿勢の変化にかかわらず、路面の上方に存在する物標から路面までの距離を求めることができる上方障害物検知装置、衝突防止装置および上方障害物検知方法を開示する。これらの上方障害物検知装置等では、頭上物標検知手段によりレーザ光が出射されてから戻るまでの第1の時間と、当該レーザ光が頭上物標検知手段から出射された際の出射角である仰角を検知し、頭上物標算出手段は、第1の時間および仰角に基づいて頭上物標距離および頭上物標高さを算出する。その一方で、路面検知手段によりレーザ光が路面で反射して路面検知手段に戻るまでの第2の時間と、当該レーザ光が出射された際の出射角である俯角を検知し、路面高さ算出手段は、第2の時間および俯角に基づいて路面高さを算出する。道路高さ幅算出手段は、頭上物標高さ、および、路面高さを足し合わせて道路高さ幅を算出する。
【0009】
また、特許文献8は、レーザ光束の機械的な走査を必要としない新規なレーザレーダ装置を開示する。このレーザレーダ装置は、n(≧2)本の発散性レーザ光束を、相互に離間しないように所定の開き角の扇面状に放射するレーザ光束投射部と、該レーザ光束投射部から放射され、物体により反射された戻りレーザ光を、その物体の方位を特定可能に受光するレーザ光受光部と、レーザ光束投射部およびレーザ光受光部を制御し、レーザ光受光部の受光情報により、戻りレーザ光を反射した物体の方位と、該物体までの距離とを特定して出力する制御演算部と、該制御演算部の出力を表示する表示部とを有する。
【0010】
また、特許文献9は、車両に搭載されレーザレーダ装置を開示する。このレーザレーダ装置は、レーザ源が放射するレーザビームを用いて測定用レーザビームを生成し、進行方向前方の所定範囲を照射する第一レーザ照射部と、レーザ源が放射するレーザビームを用いて測定用レーザビームを生成し、路面上の所定範囲を照射する第二レーザ照射部とを備え、第二レーザ照射部が生成する測定用レーザビームの車両側方から見たビーム拡がり角は、第一レーザ照射部が生成する測定用レーザビームの車両側方から見たビーム拡がり角よりも大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、路面および路面より上に位置する検出対象物をその位置に合わせて適切に検出するレーザレーダ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、車両に設置され、車両の進行方向に対して路面に垂直な方向における所定の視野角を以って走査し、対象物までの距離を検出する走査式レーザレーダ装置であって、路面に垂直な方向における対象物を検出できる検出可能距離は、以下の(A)、(B)および(C)の特徴を有するレーザレーダ装置が提供される。
(A)視野角におけるほぼ水平方向の第1検出可能距離は、最も長く、
(B)視野角におけるほぼ水平方向より下方の第2検出可能距離は、第1検出可能距離より短く、
(C)視野角におけるほぼ水平方向より上方の第3検出可能距離は、第1検出可能距離より短く、第2検出可能距離より短い検出可能距離を少なくとも一部に有する。
これによれば、路面と垂直方向における視野角内での位置に応じて、検出可能距離を変化させることにより、検出対象物をその位置に合わせて適切に検出するレーザレーダ装置を提供することができる。
【0014】
上記課題を解決するために、車両に設置され、車両の進行方向に対して路面に垂直な方向における所定の視野角を以って走査し、対象物までの距離を検出する走査式レーザレーダ装置であって、所定の視野角を規定する受光素子アレイを備え、受光素子アレイを構成する受光素子は、以下の(A)、(B)および(C)の特徴を有するレーザレーダ装置が提供される。
(A)視野角におけるほぼ水平方向からの光を受光する前記受光素子アレイを構成する第1受光素子の単位角度当たりの受光素子数は、最も多く、
(B)視野角におけるほぼ水平方向より下方からの光を受光する受光素子アレイを構成する第2受光素子の単位角度当たりの受光素子数は、第1受光素子より少なく、
(C)視野角におけるほぼ水平方向より上方からの光を受光する受光素子アレイを構成する第3受光素子の単位角度当たりの受光素子数は、第1受光素子より少なく、第2受光素子より少ない受光素子数を少なくとも一部に有する。
これによれば、路面と垂直方向における視野角内での位置に応じて、受光素子アレイを構成する受光素子の単位角度当たりの受光素子数を変化させることにより、検出対象物をその位置に合わせて適切に検出するレーザレーダ装置を提供することができる。
【0015】
上記課題を解決するために、車両に設置され、車両の進行方向に対して路面に垂直な方向における所定の視野角を以って走査し、対象物までの距離を検出する走査式レーザレーダ装置であって、所定の視野角でレーザを投光する投光素子アレイと、所定の視野角から投光素子アレイが投光したレーザの反射光を受光する受光素子アレイと、を備え、投光素子アレイを構成する投光素子と受光素子アレイを構成する受光素子は、以下の(A)、(B)および(C)の特徴を有するレーザレーダ装置が提供される。
(A)視野角におけるほぼ水平方向へ投光する投光素子アレイを構成する第1投光素子の単位角度当たりの投光素子数およびほぼ水平方向からの反射光を受光する受光素子アレイを構成する第1受光素子の単位角度当たりの受光素子数は、最も多く、
(B)視野角におけるほぼ水平方向より下方へ投光する投光素子アレイを構成する第2投光素子の単位角度当たりの投光素子数は、第1投光素子より少なく、および下方からの反射光を受光する受光素子アレイを構成する第2受光素子の単位角度当たりの受光素子数は、第1受光素子より少なく、
(C)視野角におけるほぼ水平方向より上方へ投光する投光素子アレイを構成する第3投光素子の単位角度当たりの投光素子数は、第1投光素子より少なく、第2投光素子より少ない投光素子数を少なくとも一部に有し、上方からの反射光を受光する受光素子アレイを構成する第3受光素子の単位角度当たりの受光素子数は、第1受光素子より少なく、第2受光素子より少ない受光素子数を少なくとも一部に有する。
これによれば、路面と垂直方向における視野角内での位置に応じて、投光素子アレイを構成する投光素子の単位角度当たりの投光素子数および受光素子アレイを構成する受光素子の単位角度当たりの受光素子数を変化させることにより、検出対象物をその位置に合わせて適切に検出するレーザレーダ装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、路面および路面より上に位置する検出対象物をその位置に合わせて適切に検出するレーザレーダ装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第一実施例>
図1乃至
図3を参照し、本実施例における走査式レーザレーダ装置100を説明する。走査式レーザレーダ装置100は、車両の進行方向に対して車両に設置され、対象物OBJまでの距離を検出する。なお、車両とは、自動車、電車、自動二輪車などをいう。走査式レーザレーダ装置100は、車両が走行する路面に垂直な方向における所定の視野角を以って走査する。所定の視野角とは、路面に垂直な方向におけるレーザ光を投光し反射光を受光する範囲であり、車両の進行方向に向けて路面と平行な方向(±0°)を挟んで、路面側の下方の最大角度から路面と反対側の上方の最大角度までの合計角度を言う。
【0019】
走査式レーザレーダ装置100は、レーザ光を発光してから反射光を受光するまでの時間差と、発光したレーザ光の投光方向に基づいて、測定対象物までの距離や方向を測定する。レーザ光は、指向性や収束性に優れた光である。走査方向は、レーザ光を走査する方向である。本実施例では、後述するように発光するレーザダイオードと受光するフォトダイオードが一次元に配列されたレーザダイオードアレイとフォトダイオードアレイを配列方向に対して垂直な方向に投光する方向および受光する方向を一次元方向に変化させることで、1回の走査(スキャン)で面(二次元)の走査を行う。
【0020】
図1に示すように、走査式レーザレーダ装置100は、正面視でアーチ状のレーザレーダカバー90と、後述するレーザダイオードやフォトダイオードなどの構成要素を内に有するほぼ直方体のレーザレーダ筐体91と備える。レーザレーダカバー90は、レーザ光およびその反射光(電磁波)を透過する材質からなり、レーザダイオードから発せられるレーザ光を対象物OBJに投光すると共に、その対象物OBJからの反射光を受光することを可能とする。
【0021】
図2は、レーザレーダカバー90とレーザレーダ筐体91を取り除いて、内部に含まれる主な構成要素のみを表した図である。
図2(A)は、上面図であり、アーチ状のレーザレーダカバー90の方から見た図である。走査式レーザレーダ装置100は、レーザ光を発光するレーザダイオードモジュール(LDモジュール)20と、反射光を受光するフォトダイオードモジュール(PDモジュール)30と、レーザダイオードモジュール20が発光したレーザ光をモータ13により回転されながら投光すると共に反射光をフォトダイオードモジュール30に導光する回転ミラー10とを備える。
【0022】
レーザダイオードモジュール20は、レーザ光を実際に発光するレーザダイオードアレイ21と、発光したレーザ光を平行光線にするコリメートレンズ22から構成される。フォトダイオードモジュール30は、レーザ光の反射光を実際に受光して電気信号に変換するフォトダイオードアレイ31(
図5に示す)と、反射光をフォトダイオードアレイ31に導光する2つの受光板33と、反射光の光路上に位置し反射光をフォトダイオードアレイ31に結像する受光レンズ32から構成される。回転ミラー10は、レーザダイオードモジュール20が発光したレーザ光を回転しながら反射し投光する投光ミラー11と、投光ミラー11と同軸で回転し、回転しながら対象物で反射した反射光をフォトダイオードモジュール30に導光する受光ミラー12と有する。このように、ミラーが回転することによりレーザ光を投光し、反射光を受光することにより走査する方式を回転ミラー方式と呼ぶ。
【0023】
図2(A)の上部にあるレーザダイオードモジュール20は、図視右方向へ発光すると投光ミラー11に当たり、回転ミラー10は図視手前側(レーザレーダカバー90側)へレーザ光を投光する。図視手前側から奥行き方向への反射光は、本図下部にある受光ミラー12に当たり図視左方向へ反射され、受光板33へ導光する。
図2(B)を参照すると、本図中央部にあるレーザダイオードアレイ21から図視右方向へ発光したレーザ光は、コリメートレンズ22で平行化された後、投光ミラー11に反射して、図視上方へ(レーザレーダカバー90方向へ)投光される。
図2(D)を参照すると、図視上方から(レーザレーダカバー90方向から)くる反射光は、受光ミラー12に当たり図視右方向の受光板33の方へ反射され、その後受光レンズ32を通過し、フォトダイオードモジュール30に受光される。
【0024】
図3のブロック図を参照し、走査式レーザレーダ装置100をより詳細に説明する。走査式レーザレーダ装置100は、上述したレーザダイオードモジュール(LDモジュール)20、フォトダイオードモジュール(PDモジュール)30および回転ミラー10に加えて、レーザダイオードモジュール20の発光を駆動するLDドライバ23と、フォトダイオードモジュール30が受光した光信号をデジタル信号に変換するAD変換部34と、回転ミラー10を回転させるモータ13の回転を駆動するモータドライバ14と、回転ミラー10におけるミラーの位置(回転角度)を検出するミラー位置検出部15と、これらを制御する制御部40とを備える。制御部40は、制御プログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)、受光した信号やミラー位置などのデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、これらのデータやプログラムを外部の機構とやり取りするためのネットワークアダプターのEthernet(登録商標)、その他電源監視などの制御を行うマイクロコンピュータである。
【0025】
なお、レーザダイオードモジュール20は、8個のレーザダイオードから構成されるレーザダイオードアレイ21を含む。8つのレーザダイオードは、レーザダイオードアレイ21の中で、走査方向に対して垂直方向に一列に並ぶように配置されている。また、フォトダイオードモジュール30は、32個のフォトダイオードのチャネルから構成されるフォトダイオードアレイ31を含む。32個のフォトダイオードチャネルは、フォトダイオードアレイ31の中で、同様に、走査方向に対して垂直方向に一列に並ぶように配置されている。これにより、一回の走査で二次元の走査を行うことができる。ただし、これに限定されず、一次元方向の走査を多段に繰り返して行くことで、二次元の走査を行ってもよい。
【0026】
レーザダイオードアレイ21は、8個の投光素子のレーザダイオードを有するが、
図4に示すように、それぞれのレーザダイオードLD1〜LD8は、車両の進行方向に向けて路面に垂直な方向においてそれぞれ異なる角度で投光する。また、レーザダイオードアレイ21のレーザダイオードが投光する領域の大きさは、路面に垂直な方向において異なっている。
【0027】
具体的には、レーザダイオードLD1は、路面と平行な方向(±0°)に対して上方の+7.5°〜+20°の範囲に投光する。また、同様に、レーザダイオードLD2は上方の±0°〜+7.5°の範囲に、レーザダイオードLD3は下方の±0°〜−1.25°の範囲に、レーザダイオードLD4は下方の−1.25°〜−2.5°の範囲に、レーザダイオードLD5は下方の−2.5°〜−3.75°の範囲に、レーザダイオードLD6は下方の−3.75°〜−5.0°の範囲に、レーザダイオードLD7は下方の−5.0°〜−7.5°の範囲に、レーザダイオードLD8は下方の−7.5°〜−10.0°の範囲に投光する。なお、本実施例における所定の視野角は、路面に垂直な方向において30°であり、8個のレーザダイオードは、かかる所定の視野角を規定している。
【0028】
すなわち、路面と垂直方向の視野角において、レーザダイオードLD1は、上方の+7.5°〜+20°の範囲、すなわち角度差12.5°を担当し、レーザダイオードLD2は、上方の±0°〜+7.5°の範囲、すなわち角度差7.5°を担当し、レーザダイオードLD3〜6はそれぞれ角度差1.25°を担当し、レーザダイオードLD7〜8はそれぞれ角度差2.5°を担当する。換言すれば、視野角内における単位角度当たりの投光素子の数が、上下の方向により異なっていると言える。それぞれのレーザダイオードが投光を担当する領域は、コリメートレンズ22やポリゴンミラーの回転ミラー10により調整を行う。
【0029】
レーザダイオードLD1〜LD8は、それぞれが異なる領域に投光すると共に、投光する領域の大きさは異なっている。各レーザダイオードLD1〜LD8が同じ光量で発光する場合、同じ距離に位置する対象物OBJにおける照度は、投光する領域が大きいと光束が広がるので小さくなり、投光する領域が小さいと光束があまり広がらないので大きくなる。したがって、投光する領域が小さいレーザダイオードLD3〜LD6は、対象物OBJを明るく照らすことができ、逆に、投光する領域が大きいレーザダイオードLD1は、対象物OBJをあまり明るく照らすことはない。すなわち、路面と平行な方向(±0)から下方−5°の領域は、前方の車両や歩行者など注意を図るべき対象物が多く存在するものと解されるから、明るく照らされることが好ましい。一方、路面と平行な方向(±0)から上方、特に路面と平行な方向(±0°)に対して+7.5°〜+20°上方の領域は、道路に設置された反射率の高い案内表示板などを照らすことになるのであまり明るく照らされる必要はない。
【0030】
フォトダイオードアレイ31は、32個の受光素子であるフォトダイオードのチャネルを有するが、
図4に示すように、それぞれのフォトダイオードチャネルPDCH1〜PDCH32は、車両の進行方向での路面に垂直な方向においてそれぞれ異なる角度から受光する。また、フォトダイオードアレイ31のフォトダイオードチャネルが受光する領域の大きさは、路面に垂直な方向において異なっている。
【0031】
具体的には、フォトダイオードチャネルPDCH1〜PDCH4は、路面と平行な方向(±0°)に対して上方の+7.5°〜+20°の範囲から受光する。また、同様に、フォトダイオードチャネルPDCH5〜PDCH8は上方の±0°〜+7.5°の範囲から、フォトダイオードチャネルPDCH9〜PDCH12は下方の±0°〜−1.25°の範囲から、フォトダイオードチャネルPDCH13〜PDCH16は下方の−1.25°〜−2.5°の範囲から、フォトダイオードチャネルPDCH17〜PDCH20は下方の−2.5°〜−3.75°の範囲から、フォトダイオードチャネルPDCH21〜PDCH24は下方の−3.75°〜−5.0°の範囲から、フォトダイオードチャネルPDCH25〜PDCH28は下方の−5.0°〜−7.5°の範囲から、フォトダイオードチャネルPDCH29〜PDCH32は下方の−7.5°〜−10.0°の範囲から受光する。なお、本実施例における所定の視野角は、路面に垂直な方向において30°であり、32個のフォトダイオードのチャネルを有するフォトダイオードは、レーザダイオードと共に、かかる所定の視野角を規定している。
【0032】
すなわち、路面と垂直方向の視野角において、フォトダイオードチャネルPDCH1〜PDCH4は12.5°を担当し、フォトダイオードチャネルPDCH5〜PDCH8は7.5°を担当し、フォトダイオードチャネルPDCH9〜PDCH12、PDCH13〜PDCH16、PDCH17〜PDCH20、およびPDCH21〜PDCH24はそれぞれ1.25°を担当し、フォトダイオードチャネルPDCH25〜PDCH28およびPDCH29〜PDCH32はそれぞれ2.5°を担当する。換言すれば、視野角内における単位角度当たりの受光素子の数が、上下の方向により異なっていると言える。
【0033】
フォトダイオードチャネルPDCH1〜PDCH32は、それぞれが異なる領域から受光すると共に、受光する領域において受光素子数は異なっている。換言すれば、対象物OBJからの反射光を受光する受光素子であるフォトダイオードの各チャネルの単位角度当たりの受光素子数は、受光する領域により異なっている。路面と平行な方向(±0)から下方−5°の領域は、上述ように注意を図るべき対象物が多く存在するものと解されるから、受光素子の密度を高くして解像度を高めることが好ましい。一方、路面と平行な方向(±0)から上方、特に路面と平行な方向(±0°)に対して+7.5°〜+20°上方の領域は、道路に設置された反射率の高い案内表示板などからの反射光を受光することになるのであまり解像度を高める必要はない。
【0034】
すなわち、対象物OBJからの反射光を受光する受光素子であるフォトダイオードの各チャネルの単位角度当たりの受光素子数は、以下の(A)、(B)および(C)の特徴を有する。
(A)路面と垂直方向の視野角におけるほぼ水平方向からの光を受光する受光素子アレイを構成する受光素子(第1受光素子)の単位角度当たりの受光素子数は、最も多い。
(B)その視野角におけるほぼ水平方向より下方からの光を受光する受光素子アレイを構成する受光素子(第2受光素子)の単位角度当たりの受光素子数は、第1受光素子より少ない。
(C)その視野角におけるほぼ水平方向より上方からの光を受光する受光素子アレイを構成する受光素子(第3受光素子)の単位角度当たりの受光素子数は、第1受光素子より少なく、第2受光素子より少ない受光素子数を少なくとも一部に有する。もちろん、第3受光素子の単位角度当たりの受光素子数は、第2受光素子の単位角度当たりの受光素子数より多い部分があってもよい。
【0035】
このように、路面と垂直方向における視野角内での位置に応じて、受光素子アレイを構成する受光素子の単位角度当たりの受光素子数を変化させることにより、検出対象物OBJをその位置に合わせて適切に検出するレーザレーダ装置を提供することができる。
【0036】
また、換言すれば、路面に垂直な方向における対象物OBJを検出できる検出可能距離は、以下の(A)、(B)および(C)の特徴を有していてもよい。
(A)路面と垂直方向の視野角におけるほぼ水平方向の検出可能距離(第1検出可能距離)は、最も長い。
(B)その視野角におけるほぼ水平方向より下方の検出可能距離(第2検出可能距離)は、第1検出可能距離より短い。
(C)その視野角におけるほぼ水平方向より上方の検出可能距離(第3検出可能距離)は、第1検出可能距離より短く、第2検出可能距離より短い検出可能距離を少なくとも一部に有する。もちろん、第3検出可能距離の検出可能距離は、第2検出可能距離より長い部分があってもよい。
【0037】
このように、路面と垂直方向における視野角内での位置に応じて、検出可能距離を変化させることにより、検出対象物をその位置に合わせて適切に検出するレーザレーダ装置を提供することができる。
【0038】
図5は、走査式レーザレーダ装置100の投光方法および受光方法を示す模式図である。レーザダイオードアレイ21に含まれる投光素子のレーザダイオードが発光したレーザ光は、コリメートレンズ22を介して投光ミラー11に反射して対象物OBJに投光される。また、対象物OBJに反射して戻ってきた反射光は、受光ミラー12に反射して受光レンズ32を介して受光素子であるフォトダイオードアレイ31中のフォトダイオードに受光され結像される。
【0039】
たとえば、投光素子であるレーザダイオードLD1が発光したレーザ光は、対象物OBJでは、路面と平行な方向(±0°)に対して上方+7.5°〜+20°の投光範囲(12.5°の範囲)に拡がって照射される。逆に、レーザダイオードLD3が発光したレーザ光は、路面と平行な方向(±0°)からやや下方の±0°〜−1.25°の投光範囲(1.25°の範囲)に拡がって照射される。また、レーザダイオードLD8が発光したレーザ光は、路面と平行な方向(±0°)から下方の−7.5°〜−10.0°の投光範囲(2.5°の範囲)に拡がって照射される。
【0040】
また、レーザダイオードLD1が照射した投光範囲(12.5°の範囲)からの反射光は、フォトダイオードチャネルPDCH1〜PDCH4により受光され、すなわち1つのフォトダイオードチャネル当たり約3.1°の視野角からの反射光を受光する。逆に、レーザダイオードLD3が照射した投光範囲(1.25°の範囲)からの反射光は、フォトダイオードチャネルPDCH9〜PDCH12により受光され、すなわち1つのフォトダイオードチャネル当たり約0.3°の視野角からの反射光を受光する。また、レーザダイオードLD8が照射した投光範囲(2.5°の範囲)からの反射光は、フォトダイオードチャネルPDCH29〜PDCH32により受光され、すなわち1つのフォトダイオードチャネル当たり約0.6°の視野角からの反射光を受光する。
【0041】
このように、路面に垂直な方向において、高い検出感度を必要とするほぼ水平方向からやや下方の領域には、対象物OBJに対して明るい照度で照射するために投光素子の単位角度当たりの投光素子数を最も多くすると共に、対象物OBJからの反射光を高い解像度で受光するために受光素子の密度を高く(単位角度当たりの受光素子数を多く)する。逆に、高い検出感度を必要としない上方の領域には、対象物OBJに対して暗い照度で照射するために投光素子の単位角度当たりの投光素子数を最も少なくすると共に、対象物OBJからの反射光を低い解像度で受光するために受光素子の密度を低く(単位角度当たりの受光素子数を少なく)する。また、ほぼ水平方向から路面に近い下方の領域には、両者の中間的な単位角度当たりの投光素子数および単位角度当たりの受光素子数とする。
【0042】
すなわち、投光素子アレイを構成する投光素子と受光素子アレイを構成する受光素子は、以下の(A)、(B)および(C)の特徴を有する。
(A)路面と垂直方向の視野角におけるほぼ水平方向へ投光する投光素子アレイを構成する投光素子(第1投光素子)の単位角度当たりの投光素子数およびほぼ水平方向からの反射光を受光する受光素子アレイを構成する受光素子(第1受光素子)の単位角度当たりの受光素子数は、最も多い。
(B)その視野角におけるほぼ水平方向より下方へ投光する投光素子アレイを構成する投光素子(第2投光素子)の単位角度当たりの投光素子数は、第1投光素子より少なく、および下方からの反射光を受光する受光素子アレイを構成する受光素子(第2受光素子)の単位角度当たりの受光素子数は、第1受光素子より少ない。
(C)その視野角におけるほぼ水平方向より上方へ投光する投光素子アレイを構成する投光素子(第3投光素子)の単位角度当たりの投光素子数は、第1投光素子より少なく、第2投光素子より少ない投光素子数を少なくとも一部に有し、上方からの反射光を受光する受光素子アレイを構成する受光素子(第3受光素子)の単位角度当たりの受光素子数は、第1受光素子より少なく、第2受光素子より少ない受光素子数を少なくとも一部に有する。もちろん、第3受光素子の単位角度当たりの受光素子数は、第2受光素子より多い受光素子数を有していてもよい。
【0043】
このように、路面と垂直方向における視野角内での位置に応じて、投光素子アレイを構成する投光素子の単位角度当たりの投光素子数および受光素子アレイを構成する受光素子の単位角度当たりの受光素子数を変化させることにより、検出対象物をその位置に合わせて適切に検出するレーザレーダ装置を提供することができる。
【0044】
図6は、走査式レーザレーダ装置100における垂直方向の検出可能距離を示す。走査式レーザレーダ装置100は、上述した特徴(A)、(B)および(C)を有することで、注意を図るべき対象物が多く存在するほぼ水平方向に対して最も長い検出可能距離を実現し、早く検出することができると共に、あまり長い検出可能距離を必要としない上方には最も短い検出可能距離を実現し、ほぼ水平方向から路面に近い下方には両者の中間的な検出可能距離を実現する。なお、この検出可能距離は、対象物OBJがたとえば照射されたレーザ光に対して10%の反射率を持つ標準対象物であることを前提とする。
図6の例では、水平方向より少し上側の角度範囲に対して、最も長い検出可能距離を実現している。一方で、
図4に示したように、水平方向より少し下側の角度範囲±0°〜−1.25°や−1.25°〜−2.5°の角度範囲に対して、最も長い検出可能距離を実現するようにしてもよい。
【0045】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【0046】
第一実施例の走査式レーザレーダ装置100は、車両の進行方向に向けてレーザ光を照射したが、これに限られず、車両の後方や側方に向けてレーザ光を照射し、車両が走行する路面に垂直な方向における所定の視野角を以って走査してもよい。