【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、異種タンパク質と連結したロタウイルス表面タンパク質で構成されるキメラ表面タンパク質を含むロタウイルス粒子を提供する。本発明の一態様では、ロタウイルス表面タンパク質はリンカー配列を介して異種タンパク質と連結している。本発明の別の態様では、ロタウイルス表面タンパク質はアダプター系を介して異種タンパク質と連結している。本発明の好ましい態様では、異種タンパク質は、2つの部分からなるアダプター系によってロタウイルス表面タンパク質と非共有結合で結合しており、アダプター系の一方の部分はロタウイルス表面タンパク質に連結しており、アダプター系の他方の部分は異種タンパク質と連結しており、それにより、アダプター系の両部分が安定な複合体を形成し、したがって、異種タンパク質をロタウイルス表面タンパク質に非共有結合で付着させている。キメラ表面タンパク質は、それにより二層ロタウイルス粒子(DLP)をin vitroにおいて再外被形成することによってロタウイルス粒子の外層の一部になり得る。
【0011】
本発明は、ロタウイルス表面タンパク質、第1のアダプターポリペプチド、および任意選択でリンカー配列を含む改変ロタウイルス表面タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む第1の核酸をさらに提供する。本発明は、異種タンパク質、第2のアダプターポリペプチド、および任意選択でリンカー配列を含む融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む第2の核酸も提供する。第1のアダプターポリペプチドおよび第2のアダプターポリペプチドは、安定な複合体を形成することができる。一般には、本発明の核酸のオープンリーディングフレームはプロモーター配列と作動的に(operationally)連結している。一部の実施形態では、アダプターポリペプチドは、7アミノ酸反復配列を含む。本発明の核酸を含有する細胞も提供される。核酸およびそれを含有する細胞を使用して、本発明のキメラ表面タンパク質を調製することができる。
【0012】
本発明は、さらに、本発明の第1および第2の核酸配列を含むキットに関する。一部の実施形態では、本発明によるキットは、ロタウイルス表面タンパク質および第1のアダプターポリペプチドを含む改変ロタウイルス表面タンパク質をコードする第1の核酸、ならびに第2のアダプターポリペプチドをコードするヌクレオチド配列および多重クローニング部位を含む第2の核酸であって、それにより、異種タンパク質のコード領域を多重クローニング部位に挿入することによって異種タンパク質および第2のアダプターポリペプチドを含む融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームがもたらされる第2の核酸を含んでよく、第1のアダプターポリペプチドと第2のアダプターポリペプチドは、安定な複合体を形成することができる。本発明のキットは、ロタウイルス粒子をさらに含んでよい。ロタウイルス粒子は、ロタウイルス表面タンパク質が由来するものと同じ種のロタウイルスに由来するものであっても異なる種に由来するものであってもよい。例えば、アカゲザルロタウイルスVP7を使用してウシロタウイルスから調製したDLPを再外被形成することができ、逆もまた同じである。
【0013】
キメラ表面タンパク質を含むロタウイルス粒子は、種々の方法によって調製することができる。本発明の好ましい方法は、外層を含むネイティブなロタウイルス粒子を、培養培地中で成長させた細胞において増殖させるステップ、粒子を培養培地から精製するステップ、粒子から外層を取り除いてロタウイルスDLPを得るステップ、およびロタウイルスDLPを1つまたは複数のキメラ表面タンパク質を用いて再外被形成して、キメラ表面タンパク質(複数可)を含むロタウイルス粒子を形成するステップを伴う。ネイティブなロタウイルス粒子は三層粒子であり、最も外側の第3の層がロタウイルス粒子の外側の殻を形成する。
【0014】
特定の態様では、本発明は、三量体形成性ロタウイルス表面タンパク質、7アミノ酸反復配列、および任意選択でリンカー配列を含む第1の融合タンパク質に関する。本発明は、三量体形成性異種タンパク質、7アミノ酸反復配列、および任意選択でリンカー配列を含む第2の融合タンパク質をさらに提供する。第1の融合タンパク質および第2の融合タンパク質は、それらのそれぞれに含まれる7アミノ酸反復配列を介して安定な複合体を形成することができる。一部の実施形態では、本発明は、第1の融合タンパク質および第2の融合タンパク質によって形成されるキメラ表面タンパク質を提供する。キメラ表面タンパク質は、ロタウイルス粒子の表面上に提示され得る。
【0015】
本発明の一態様では、キメラ表面タンパク質を含むロタウイルス粒子を、キメラ表面タンパク質の一部を形成する異種タンパク質の構造を決定するために使用する。例えば、本発明は、キメラ表面タンパク質の3次元モデルを得るための方法であって、(i)ロタウイルスDLPを、異種タンパク質の全部または一部を含むキメラ表面タンパク質を用いて再外被形成して、キメラ表面タンパク質を提示しているロタウイルス粒子の懸濁物をもたらすステップ、(ii)懸濁物を凍結させるステップ、(iii)cryo−EMを使用してロタウイルス粒子を画像化して複数の顕微鏡写真を得るステップ、および(iv)複数の顕微鏡写真を解析してキメラ表面タンパク質の3次元モデルを得るステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、ステップ(i)を2つのステップ、すなわち、(a)ロタウイルスDLPを、第1のアダプターを含むロタウイルス表面タンパク質を用いて再外被形成してロタウイルス粒子を形成する再外被形成ステップ、および(b)再外被形成されたロタウイルスDLPを第2のアダプターを含む異種タンパク質の存在下でインキュベートし、それにより、第1のアダプターと第2のアダプターの間で複合体が形成され、その結果、キメラ表面タンパク質がロタウイルス粒子上に提示される、結合ステップに細分することができる。いくつかの場合には、当該方法を、異種タンパク質に特異的に結合する分子と結合した異種タンパク質の構造が決定されるように改変することができる。改変された方法は、(i)ロタウイルスDLPを、異種タンパク質の全部または一部を含むキメラ表面タンパク質を用いて再外被形成して、キメラ表面タンパク質を提示しているロタウイルス粒子の懸濁物をもたらすステップ、(ii)懸濁物に、異種タンパク質に特異的に結合する分子を添加するステップであって、分子がキメラ表面タンパク質と複合体を形成するステップ、(iii)懸濁物を凍結させるステップ、(iv)cryo−EMを使用してロタウイルス粒子を画像化して複数の顕微鏡写真を得るステップ、および(v)複数の顕微鏡写真を解析して分子と複合体を形成したキメラ表面タンパク質の3次元モデルを得るステップを含む。分子はタンパク質性分子であってよい。例えば、タンパク質性分子は、異種タンパク質に特異的に結合する受容体または抗体の全部または一部であってよい。あるいは、タンパク質性分子は、異種タンパク質に特異的に結合するポリペプチドまたはペプチドであってよい。他の実施形態では、分子は非タンパク質性分子である。例えば、非タンパク質性分子は核酸であってよい。
【0016】
さらなる態様では、本発明に従って調製したロタウイルス粒子を医薬として使用する。一実施形態では、本発明は、本発明のキメラ表面タンパク質を含むロタウイルス粒子を含む免疫原性組成物に関する。本発明は、さらに、それを必要とする患者を治療する方法であって、前記患者に本発明のロタウイルス粒子を、例えば本発明の免疫原性組成物の形態で投与するステップを含む方法に関する。
【0017】
本発明の基礎をなす概念は、本明細書に記載の方法を適合させることによって他の(三量体または非三量体)異種タンパク質および他のウイルス(特にレオウイルス)または集合体(例えば、ウイルス様粒子、フェリチンケージ(ferritin cage)など)に拡張することができる。
【0018】
発明の詳細な説明
ウイルス粒子
ロタウイルスは、5種の公知の型(ロタウイルスA〜E)を含むReoviridae科の中の二本鎖RNAウイルスの属である。ロタウイルスは小児胃腸炎の主要な原因である。ロタウイルスは、エンベロープを有さない三層正二十面体の粒子である。感染性三層粒子(TLP)またはビリオンは、非感染性二層粒子(DLP)から、DLPが殻タンパク質VP7およびスパイクタンパク質VP4で被覆されることによって形成される。VP7は三量体であり、被覆された粒子の外側はそのような三量体260個によって装飾されている。DLPは同心性のVP2およびVP6の正二十面体タンパク質層で構成され、直径が約700Åであり、11本の二本鎖RNAゲノムセグメント、ウイルスポリメラーゼ(VP1)、およびキャップ形成酵素(VP3)をカプシドで包む(encapsidate)。細胞の感染の間に、低カルシウム環境(おそらくエンドソーム区画内)でロタウイルス粒子の外層を形成するVP4およびVP7タンパク質は、DLPから解離し(これは「脱外被」と称されるプロセスである)、ウイルスRNA転写機構を含有するDLPを細胞質に送達する。そこで、DLPは、11本のmRNA種のコピーを合成し、それにキャップを形成し、それを放出する。
【0019】
ロタウイルス粒子からのVP4およびVP7の解離または「脱外被」は、ロタウイルス粒子をEDTAもしくはEGTAなどのカルシウムキレート化剤の存在下でインキュベートすることによって、または熱ショックによってin vitroで実施することができる。生じたDLPを、in vitroにおいて、組換えによって発現させたVP4およびVP7を用いて再外被形成して十分に感染性のロタウイルス粒子を形成することができる。このように再外被形成された粒子は、非常に規則正しく、高分解能のcryo−EM画像および密度マップをもたらす。in vitroにおいて再構成したTLPを使用すると、cryo−EMを使用してロタウイルス集合および脱外被における分子相互作用がX線結晶構造解析の分解能に匹敵する分解能で研究されている(参考文献1および2を参照されたい)。
【0020】
本発明者らは、本明細書において、異種三量体タンパク質(例えば、インフルエンザ赤血球凝集素など)を三量体VP7タンパク質に付着させ、したがって、適切に再外被形成されたロタウイルスDLPの表面から突出し得るキメラ表面タンパク質を形成することができ、したがって、以前にロタウイルスおよびそのサブ粒子(subparticle)のほぼ原子レベルの分解能構造をもたらしたものと同じcryo−EM法を用いて異種タンパク質の構造を決定することを可能にできることを実証する。当該方法により、抗原−抗体複合体の構造決定のためのハイスループットなアッセイを開発することが初めて可能になる。これは、抗原−抗体複合体の構造を決定するための最適な方法であったX線結晶構造解析の制約に起因して以前は不可能であった。
【0021】
原理上は、内層および外層を含むエンベロープを有さない正二十面体ウイルス粒子のいずれをも、本発明の方法を実施するために使用することができる。例えば、異種タンパク質の全部または一部を含むキメラ表面タンパク質を提示することは、ウイルス粒子の産生に関する逆遺伝学系が確立されている任意の正二十面体ウイルスを使用して容易に可能である。哺乳動物レオウイルスに関しては、10種のレオウイルスcDNA構築物からなる、プラスミドに基づく逆遺伝学系が確立されている(参考文献3を参照されたい)。フェリチンケージの八量体対称性も3回対称軸を有し、本発明の実施に適している。3回対称軸を有する粒子状の規則的な構造に集合する他のタンパク質も本発明の実施に適し得る。
【0022】
理想的には、エンベロープを有さない正二十面体ウイルスのウイルス粒子の外層を、例えば、プロテアーゼ処理によってまたは低カルシウム条件下で取り除くまたは剥がして、内層(複数可)のみを含むサブウイルス粒子をもたらすことができ、組換えによって作製された外層タンパク質を用いて再外被形成することができる。キメラ表面タンパク質の存在が、逆遺伝学的手法を使用して細胞培養で増殖させたウイルスの適切な集合に干渉すると思われる場合には、組換えによって発現させた外層タンパク質(複数可)を付加することによる、in vitroにおけるサブウイルス粒子の完全なウイルス粒子への再集合または再外被形成が特に有利である。さらに、外層タンパク質の発現ベクターのみを構築すればよく、効率的なプラスミドに基づく逆遺伝学系を実施する必要性は排除される。ネイティブなウイルスを組織培養細胞において単純に増殖させることができ、ウイルス粒子から外層を剥がし、組換えによって発現させた外層タンパク質を使用してin vitroにおいて再集合させることができる。したがって、in vitroにおけるサブウイルス粒子の完全なウイルス粒子への再外被形成を利用する方法を使用すると、多数のプラスミドをトランスフェクトする必要性が排除され、一般にはプラスミドに基づく逆遺伝学系から多数のウイルス粒子をもたらすために必要である追加的な増殖ステップが除かれ、それにより、そのような方法がハイスループットな適用により好ましいものになる。
【0023】
本発明者らの知見によると、ウイルス粒子の外層を剥がすことができ、サブウイルス粒子を組換えによって発現させた外層タンパク質を用いて再外被形成して感染性ウイルス粒子を形成することができる、公知のエンベロープを有さない正二十面体ウイルスは全てReoviridae科に属する。この科は、2つの亜科、SedoreovirinaeおよびSpinareovirinaeに細分され、これらはそれぞれ6つの属および9つの属を含む。Sedoreovirinae亜科は、Cardoreovirus属、Mimoreovirus属、Orbivirus属、Phytoreovirus属、Rotavirus属、およびSeadornavirus属を含む。Spinareovirinae亜科は、Aquareovirus属、Coltivirus属、Cypovirus属、Dinovernavirus属、Fijivirus属、Idnoreovirus属、Mycoreovirus属、Orthoreovirus属、およびOryzavirus属を含む。
【0024】
ロタウイルスに加えて、哺乳動物オルトレオウイルスが本発明の実施において有用であり得る。これらのウイルスに関しては、外側のカプシドの完全なin vitroにおける集合のための適切な条件およびcryo−EMの使用がよく確立されている(参考文献1、2、4および5を参照されたい)。cryo−EMが使用されており、構造情報がすでに入手可能である他のオルトレオウイルス(例えば、ヒヒまたはトリオルトレオウイルス)、オリザウイルス(例えば、イネラギットスタントウイルス(rice ragged stunt virus))およびアクアレオウイルス(参考文献6、7および8を参照されたい)も本発明の実施に適し得る。
【0025】
サイポウイルスとジノベルナウイルス(dinovernavirus)は内部カプシドのみが等価であり、したがって、一般には本発明の実施に適するとは考えられず、したがって、あまり好ましくないと考えられる。ある特定の実施形態では、本発明において使用するためのエンベロープを有さない正二十面体ウイルスは、サイポウイルスおよびジノベルナウイルスを含まない。好ましい実施形態では、本発明のウイルスは、バイオセーフティレベル2またはそれ未満で操作することができる(参考文献9を参照されたい)。
【0026】
本発明の実施において使用するウイルス粒子は、3つまたはそれ未満の外層タンパク質を有することが好ましい。ウイルス粒子の外層は、キメラ表面タンパク質の調製に使用した外面タンパク質である単一の外層タンパク質によって形成できることがより好ましい。外層タンパク質が少数であることは、剥がす処理後にサブウイルス粒子を再外被形成するために組換えによって発現させる必要があるタンパク質が少なくなるので、有利である。
【0027】
例えば、ロタウイルスは2つの外層タンパク質、VP4およびVP7を有するが、ロタウイルス粒子の外層を形成するために必要な殻タンパク質はVP7のみである。ほとんどの場合、本発明を実施するためには、ロタウイルスDLPを1種の外層タンパク質、VP7を用いて再外被形成するだけで十分である。
【0028】
キメラ表面タンパク質
一態様では、本発明は、共有結合で異種タンパク質と連結したロタウイルス表面タンパク質を含むキメラ表面タンパク質に関する。ロタウイルス表面タンパク質は、リンカー配列を介して異種タンパク質と連結することができる。特定の実施形態では、異種タンパク質を外面に露出した部分であるロタウイルス表面タンパク質の可撓性ループに挿入する。いくつかの場合には、リンカー配列および/または異種タンパク質によりよく適応させるために、ロタウイルス表面タンパク質の部分を欠失させる。例えば、短いN末端およびC末端の短縮(≦10アミノ酸)は、一般にはロタウイルスVP7タンパク質のロタウイルスDLPを再外被形成する能力に影響を及ぼさない。さらに、VP7タンパク質がDLPの再外被形成に使用された場合には、ウイルス粒子から離れて伸長する表面ループを形成するアミノ酸配列は必ずしも必要でない。欠失がVP7タンパク質のDLPを再外被形成する能力に影響を及ぼすかどうかは、組換えによって発現させたVP7タンパク質をDLPの存在下でインキュベートし、再外被形成されたウイルス粒子の形成を観察することによって評価することができる。
【0029】
本発明の別の態様では、ロタウイルス表面タンパク質は、アダプター系を介して異種タンパク質と非共有結合で連結している。本発明の好ましい態様では、異種タンパク質は、2つの部分からなるアダプター系によってロタウイルス表面タンパク質と非共有結合で結合しており、ここで、アダプター系の一方の部分はロタウイルス表面タンパク質に連結しており、アダプター系の他方の部分は異種タンパク質と連結しており、それにより、アダプター系の両部分が安定な複合体を形成し、したがって、異種タンパク質をロタウイルス表面タンパク質に非共有結合で付着させている。アダプター系は、一般には、第1のアダプターポリペプチドおよび第2のアダプターポリペプチドで構成される。第1のアダプターポリペプチドは、任意選択でリンカー配列を介してロタウイルス表面タンパク質と融合している。第2のアダプターポリペプチドは、任意選択でリンカー配列を介して異種タンパク質と融合している。第1および第2のアダプターポリペプチドは互いと相互作用して安定な複合体を形成しており、したがって、ロタウイルス表面タンパク質が異種タンパク質に非共有結合で付着し、したがって、キメラ表面タンパク質が形成される。
【0030】
ウイルス表面タンパク質
本発明の実施に適するウイルス粒子の外層は、一般には、いくつかの異なる外面タンパク質を含む。主要な表面タンパク質は、ウイルス粒子の表面の大部分を覆っているので、異種タンパク質の提示に特に適している。例えば、ロタウイルスの外面(スパイクを除く)は、ホモ三量体を形成する780コピーのVP7タンパク質によって形成される。ホモ三量体を形成する主要な表面タンパク質を用いたウイルス粒子の選択が本発明の実施に特に好ましい。
【0031】
特定の一実施形態では、ウイルス表面タンパク質はロタウイルス表面タンパク質である。別の特定の実施形態では、ウイルス表面タンパク質は糖タンパク質である。
【0032】
本発明の実施に適し得るウイルス表面タンパク質を有する他のウイルスの例としては、オルトレオウイルスが挙げられる。例えば、アクアレオウイルスの外側のウイルスカプシドは、VP5と称されるタンパク質の200個の三量体によって形成される。哺乳動物オルトレオウイルスでは、感染性レオウイルス粒子の外層は、600コピーの三量体膜透過タンパク質μ1を含有し、これにはシャペロンタンパク質σ3が点在し(同様に600コピーで存在する)、したがって、ヘテロ六量体が形成される。
【0033】
異種タンパク質
三量体ロタウイルス表面タンパク質を使用して多くの異種タンパク質を提示することができるが、ただし、三量体の集合の間の単量体間の立体的な障害を回避するために、適切な長さのリンカーおよび/または表面タンパク質内の適切な挿入部位を選択する。異種タンパク質が他のマウントされた異種タンパク質の隣接する体積と重複する体積を形成しない限りは、異種タンパク質のサイズに上限はない。異種タンパク質を三量体ロタウイルス表面タンパク質上に提示するためにアダプター系を使用することが好ましい。高次オリゴマーまたは凝集体を形成する、可溶性ではない異種タンパク質は一般には本発明の実施に適するとは考えられない。
【0034】
立体的な障害に起因するサイズの制約のいずれも、適切なリンカーまたはアダプター系を選択することによって克服することができる。
【0035】
異種タンパク質に関しては、「異種」という用語は、一般には、当該タンパク質がロタウイルスタンパク質ではないことを意味する。一部の実施形態では、「異種タンパク質」という表現は、当該タンパク質がタンパク質を提示するために使用するものと同じロタウイルス株に由来するものではないことを意味する。
【0036】
三量体表面タンパク質は三量体異種タンパク質を提示するために特に適している。三量体異種タンパク質の例としては、三量体ウイルス細胞侵入タンパク質および他の三量体ウイルス表面タンパク質、特に、中和抗体によって標的化されるものが挙げられる。特定の例は、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)gp140、エボラウイルス糖タンパク質、狂犬病ウイルス糖タンパク質(RVG)、ヤギ関節炎脳炎ウイルスのEnvタンパク質、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)のFタンパク質、ヒト単純ヘルペスウイルスおよびヒトサイトメガロウイルス(HCMV)に見いだされるgBタンパク質およびその複合体などである。
【0037】
一部の実施形態では、ロタウイルス表面タンパク質および/または異種タンパク質は、三量体ロタウイルス表面タンパク質と三量体異種タンパク質によって形成されるヘテロ六量体複合体の集合を補助する三量体形成タグを含む。三量体形成タグ、特にコイルドコイルに基づく三量体形成タグ(例えば、GCN4、[10])は、改変ロタウイルスVP7タンパク質を用いて再外被形成されたロタウイルス粒子の表面上に提示される異種タンパク質が利用可能な空間を広げるための構造モジュールとしても機能し得る。別の適切な三量体形成タグは、バクテリオファージT4フィブリチンに由来するものであってよい[11]。
【0038】
ある特定の実施形態では、三量体ではない異種タンパク質がロタウイルス表面タンパク質上に存在する三量体形成タグと相互作用し得る。例として、異種タンパク質が、コイルドコイルに基づく三量体形成タグのα−へリックスと相互作用し得る接近可能なα−へリックスを有する場合、その異種タンパク質は三量体形成タグに結合し得る。立体的な障害が存在しなければ、そのような異種タンパク質が3つまで同時に三量体形成タグに結合し、それにより6−へリックスバンドルが形成され得る。そのような異種タンパク質が3つ未満結合した場合、6−ヘリックスバンドルは不完全になり、ロタウイルスタンパク質上に存在する三量体形成タグが寄与する内側の3つのへリックスを含有するが、バンドルの外側のへリックスは1つまたは2つしか含有しない。非三量体異種タンパク質は、サブユニットの少なくとも1つが、ロタウイルス表面タンパク質上に存在する三量体形成タグと相互作用し得るα−へリックスを有するのであれば、1つ、2つ、4つ、またはそれ超のサブユニットを有し得る(すなわち単量体、二量体、四量体、または他のオリゴマーであり得る)。
【0039】
ある特定の実施形態では、単量体異種タンパク質は、2つ以上のへリックスがロタウイルス表面タンパク質上に存在する三量体形成タグのα−へリックスと相互作用し、完全なまたは部分的な6−ヘリックスバンドルを形成し得るように配置された多数のα−へリックスを含んでよい。ある特定の実施形態では、単量体の少なくとも3つが適切に配置されたα−へリックスを含有する四量体(またはより高次の構造)は、ロタウイルス表面タンパク質に付着した三量体形成タグと会合して6−ヘリックスバンドルを形成し得る。ある特定の実施形態では、単量体の少なくとも2つが適切に配置されたα−へリックスを含有する四量体(またはより高次の構造)は、ロタウイルス表面タンパク質と会合した三量体形成タグと会合して、外側のへリックスのうちの1つが欠けた部分的な6−ヘリックスバンドルを形成し得る。異種タンパク質のサブユニットは同一であってもよく(すなわち、ホモ二量体、ホモ三量体、ホモ四量体など)、同一でなくてもよい(すなわち、ヘテロ二量体、ヘテロ三量体、ヘテロ四量体など)。
【0040】
ロタウイルス表面タンパク質上に存在する三量体形成タグがα−ヘリックスコイルドコイルではない場合、異種タンパク質上の相互作用性構造要素は、三量体形成タグに結合するがα−ヘリックスではない二次構造を有し得る。
【0041】
異種タンパク質はロタウイルス表面タンパク質に特異的に結合する抗体ではないことが好ましい。
【0042】
アダプター系
本発明の一部の実施形態では、アダプター系を使用して異種タンパク質をロタウイルス粒子上に提示する。アダプター系は、一般には2つのアダプター分子で構成される。第1のアダプター分子は、異種タンパク質が提示されるように選択されたロタウイルス表面タンパク質と共有結合で連結している。第2のアダプター分子は、異種タンパク質と共有結合で連結している。第1のアダプター分子および第2のアダプター分子は互いと相互作用して安定な複合体を形成する。
【0043】
アダプター系は、一般には、2つのアダプターポリペプチドで構成される。第1のアダプターポリペプチドは、異種タンパク質が提示されるように選択されたロタウイルス表面タンパク質と融合する。第2のアダプターポリペプチドは、異種タンパク質と融合する。第1のアダプターポリペプチドおよび第2のアダプターポリペプチドは、互いと相互作用して安定な複合体を形成し得る。
【0044】
互いと会合して安定な複合体を形成する多くのポリペプチドが公知である。いくつかの場合には、これらのポリペプチドは、異なるタンパク質、例えば、受容体とリガンドまたは抗体と抗原に由来するものである。他の場合では、これらのポリペプチドは、同じタンパク質、例えば、HIV gp41の2つの7アミノ酸反復配列などに由来するものであってよい。
【0045】
2つのアダプターポリペプチド間の相互作用に依存しない適切なアダプター系も構想することができる。例えば、ロタウイルス表面タンパク質を、特異的なグリコシル化部位を含むように改変することができ、異種タンパク質を、グリコシル化部位においてグリカンを特異的に認識するレクチンドメインを含むように改変することができる。特異的なグリカン構造を認識するレクチンの例は当技術分野で周知である。
【0046】
2つのアダプターポリペプチド間の相互作用に依存しない別の適切なアダプター系は、ストレプトアビジン−ビオチン系である。四量体の形成が妨げられるように、および溶解度が増強されるように変異させた単量体ストレプトアビジンを使用することが好ましい[12]。単量体ストレプトアビジンを、異種タンパク質が提示されるように選択されたロタウイルス表面タンパク質と融合することができる。複合体の形成が起こるように、異種タンパク質をビオチン化する。ビオチン化するタンパク質内に存在するアミノ酸残基にビオチンを特異的に連結することが可能になるので、酵素によるビオチン化が好ましい。例えば、異種タンパク質は、ビオチンおよびATPの存在下でビオチンリガーゼ(例えば、BirA)によって特異的にビオチン化することができる「AviTag」または「アクセプターペプチド」(AP)を挿入することによって改変することができる(詳細に関しては参考文献13を参照されたい)。
【0047】
2つのアダプターポリペプチド間の相互作用に依存しない別のアダプター系としては、ハプテン(例えば、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA))と結合した抗体を挙げることができる。あるいは、キレート化剤DTPAおよびDOTAを金属イオンと配位させて複合体を形成することができる。
【0048】
アダプター系の使用は本発明の実施に必須ではない。しかし、異種タンパク質、特に、ロタウイルス粒子上に提示される他のウイルスの三量体表面タンパク質の構造的特徴を最適に保存するためには、アダプター系の使用が好ましい場合がある。アダプター系の使用は、第1のアダプターを含有するように改変されたロタウイルス表面タンパク質は1回だけ調製する必要があり、その後は、適合する第2のアダプターを含有するように改変された任意の異種タンパク質と一緒に使用することができるので、特に有利である。
【0049】
アダプター系を使用することのさらなる利点は、キメラ表面タンパク質の成分のそれぞれについて別々に発現および精製を最適化できることである。ほとんどの場合、アダプターポリペプチド配列を挿入することによって、ウイルス表面タンパク質または異種タンパク質の、それらの発現または精製に関連する特性は変化しない。したがって、一般には、第1のアダプターポリペプチドおよび第2のアダプターポリペプチドを含む異種タンパク質を含むウイルス表面タンパク質を大量に調製するために改変することなく現存する発現系および精製方法を使用することができる。対照的に、共有結合で異種タンパク質と連結したウイルス表面タンパク質で構成されるキメラ表面タンパク質は、ウイルス表面タンパク質または異種タンパク質それぞれ単独での特性とは実質的に異なる特性を有する可能性がある。
【0050】
ロタウイルス表面タンパク質および多くのレオウイルス表面タンパク質は三量体を形成する。したがって、本発明の一態様では、最適なアダプター系は三量体複合体を形成するものであることが好ましい。第1のアダプターポリペプチドおよび第2のアダプターポリペプチドが7アミノ酸反復配列を含み、6−ヘリックスバンドルの形成を可能にするα−ヘリックス構造を形成するアダプター系が特に好ましい。3コピーの第2のアダプターポリペプチドが内側のコイルドコイル三量体を形成し、3コピーの第1のアダプターポリペプチドがこの三量体の表面上の溝を詰め、6−ヘリックスバンドルが完成することが最も好ましい。しかし、その逆も可能であり得、その場合、3コピーの第1のアダプターポリペプチドが内側のコイルドコイル三量体を形成し、3コピーの第2のアダプターポリペプチドがこの三量体の表面上の溝を詰める。7アミノ酸反復配列を含み、6−ヘリックスバンドルを形成する種々のポリペプチド対が当技術分野で公知である。これらは、一般には、ウイルス融合タンパク質に由来する。ウイルス融合タンパク質は、その6−ヘリックスバンドルの回転性の対称性および安定性に起因してアダプターポリペプチド配列の好ましい供給源である。
【0051】
最も徹底的に研究されているウイルス融合タンパク質のうちの1つは、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)のエンベロープ糖タンパク質である。HIV−1エンベロープ糖タンパク質の外部ドメインは、gp120およびgp41からなる。gp41はウイルスの膜と細胞膜の融合を媒介する。gp41は、ネイティブなタンパク質における6−ヘリックスバンドルを形成し得る2つの7アミノ酸反復配列、「ヘリックス領域1」(HR1)および「ヘリックス領域2」(HR2)を含む[14]。好ましい実施形態では、アダプター系の第1のアダプターポリペプチドおよび第2のアダプターポリペプチドは、それぞれgp41 HR2(配列番号1)およびgp41 HR1(配列番号2)に対応する。さらに好ましい実施形態では、アダプター系の第1のアダプターポリペプチドおよび第2のアダプターポリペプチドは、それぞれニパーウイルスFタンパク質HR2(配列番号3)およびHR1(配列番号4)に対応する。しかし、第1および第2のアダプターポリペプチドを調製するために使用することができる、相互作用性HR1およびHR2ポリペプチドの供給源であり得る種々の他のウイルス融合タンパク質が公知である。これらとしては、インフルエンザ赤血球凝集素2(HA2)、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo−MLV)の膜貫通(TM)サブユニット、例えば呼吸器合胞体ウイルス(RSV)およびニューカッスル病ウイルス(NDV)由来のパラミクソウイルスFタンパク質(トリパラミクソウイルスFタンパク質、例えば、ヘンドラウイルスFタンパク質を含む)、コロナウイルスのスパイクタンパク質(例えば、マウス肝炎ウイルスおよびSARS−CoVのスパイクタンパク質)、エプスタイン・バーウイルスのZEBRAタンパク質、サルウイルス5融合タンパク質などが挙げられる(参考文献14、15、16および17を参照されたい)。
【0052】
異種タンパク質自体が7アミノ酸反復配列を含み、これらの配列が改変ロタウイルス表面タンパク質に含まれる7アミノ酸反復配列に適合する場合、7アミノ酸反復配列を異種タンパク質に付加する必要がない場合がある。そのような場合では、異種タンパク質のネイティブな7アミノ酸反復配列は、改変ロタウイルス表面タンパク質の7アミノ酸反復配列との6−ヘリックスバンドルを形成することができ、異種タンパク質に対して外来である7アミノ酸反復配列を付加することによって異種タンパク質を改変する必要がない場合がある。
【0053】
例えば、上で列挙されているウイルス融合タンパク質はいずれも、相互作用性7アミノ酸反復配列を含有し、これらのネイティブな7アミノ酸反復配列は、7アミノ酸反復配列を含有するように改変されたロタウイルス表面タンパク質内の7アミノ酸反復配列と相互作用することができ得る。一部の実施形態では、特に同じ改変ロタウイルス表面タンパク質を使用して種々の異なる異種タンパク質を提示するモジュラー手法を可能にするために2つの部分からなるアダプター系を選択する場合、ウイルス融合タンパク質に対して異種の7アミノ酸反復配列に依存することが好ましい場合がある。
【0054】
6−ヘリックスバンドルを形成する7アミノ酸反復配列を含む他のタンパク質ドメインが公知である。これらとしては、ヒトApaf−1およびRAIDDのCARDドメイン、FADDのデスエフェクタードメインならびにp75およびFasのデスドメインが挙げられる。6−ヘリックスバンドル形成性ペプチド配列の他の供給源としては、SNAREおよびGCN4−pIIが挙げられる。これらのドメインまたはペプチド配列はいずれも、本発明における使用に同様に適合させることができる。例えば、第1のアダプターポリペプチドおよび第2のアダプターポリペプチドに、それぞれCARDドメインの3つのN末端へリックスおよび3つのC末端へリックスを使用して、単量体または二量体の表面タンパク質に適したアダプター系を形成することができる。
【0055】
他のペプチドに基づくアダプター系も使用することができる。例えば、ウイルス表面上に提示したい異種タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合性部分(例えば、Fab断片、scFv、ドメイン抗体(DAb))をロタウイルス表面タンパク質に挿入することができる。抗体またはその抗原結合性部分は、異種タンパク質(例えば、ペプチドタグの形態で)に挿入することができるまたは異種タンパク質に天然に存在し得る特異的なエピトープを認識し得る。
【0056】
一部の実施形態では、適切な2つの部分からなるアダプター系では、異種タンパク質のみを改変すればよい。例えば、本発明の一実施形態では、ロタウイルス表面タンパク質は糖タンパク質である。そのような場合では、異種タンパク質を、糖タンパク質内のグリカンに特異的に結合するレクチンドメインを含有するように改変することができる。例えば、ロタウイルスVP7タンパク質を、タンパク質の表面に露出した部分への単一のグリコシル化部位の導入によって改変することができ、したがって、改変異種タンパク質のレクチンドメインが改変VP7タンパク質内のグリカンに特異的に結合する。
【0057】
あるいは、異種タンパク質を、ロタウイルス表面抗原上のエピトープに対して特異的な抗体の抗原結合性ドメインを含有するように改変することができる。例えば、異種タンパク質を、ロタウイルス表面抗原に高親和性で結合する抗体のFab断片と融合することができる。
【0058】
リンカー配列
リンカー配列は、異なるタンパク質に由来するドメインを分離し、これらのドメインが適正にフォールディングされることを可能にする。多くのリンカー配列が当技術分野で公知である(参考文献18を参照されたい)。ロタウイルス表面タンパク質および/または異種タンパク質をアダプター配列から分離するためにリンカー配列を含めることができる。あるいは、ロタウイルス表面タンパク質および異種タンパク質が同じタンパク質の2つの部分を形成する場合、リンカー配列によって両方の部分を互いから分離することができる。
【0059】
剛性リンカーおよび可撓性リンカーの両方が公知である。可撓性リンカーの典型的な配列は、アミノ酸GおよびSの反復で構成される。例えば、リンカーは以下の配列:GS、GSG、SGG、GGSGG(配列番号5)またはGSGSGSGT(配列番号6)を有し得る。一部の実施形態では、同じ配列を複数回(例えば、2、3、4、5または6回)繰り返して、より長いリンカーを創出する。他の実施形態では、SまたはGなどの単一のアミノ酸をリンカーとして使用することができる。剛性リンカーは、アミノ酸配列EAAAR(配列番号7)のいくつかの反復で構成され得る。
【0060】
リンカー配列を選択する際には、改変ロタウイルス表面タンパク質または異種タンパク質の凝集を回避するために、親水性リンカーを選択するように注意を払うべきである。
【0061】
一般には、リンカーはプロテアーゼ非感受性であるが、一部の実施形態では、リンカーは、プロテアーゼ切断部位を含有する。プロテアーゼ切断部位は、例えば本発明の改変ロタウイルス表面タンパク質の検出/精製のために含まれるタグを除去するために有用であり得る。プロテアーゼ切断部位は、改変ロタウイルス表面タンパク質に挿入されたアミノ酸配列を露出させ、したがって、部位特異的なプロテアーゼを用いた切断後にそのアミノ酸配列を改変ロタウイルス表面タンパク質の外面上でより接近しやすいものにするためにも有用であり得る。例えば、プロテアーゼ切断部位は、ロタウイルス粒子の表面上に提示させる異種タンパク質と融合した2つの部分からなるアダプター系の対応するアダプターポリペプチドへのアダプターポリペプチドの結合を改善するために、アダプターポリペプチドを露出させるために使用することができる。いくつかの場合には、改変ロタウイルス表面タンパク質の一部を形成するアダプターポリペプチドを露出させるためにプロテアーゼ切断を使用することにより、追加的なリンカー配列が必要なくなり、したがって、異種タンパク質との安定な複合体を形成するために改変ロタウイルス表面タンパク質に挿入する必要がある追加的なアミノ酸配列の数が減少し得る。
【0062】
特異的なプロテアーゼに対するプロテアーゼ切断部位は、いくつかのタンパク質に見いだすことができる。例えば、血液凝固カスケードおよび補完カスケードは、カスケード内のさらに下流のタンパク質の切断部位を認識するいくつかの非常に特異的なプロテアーゼを含有する。通常、カスケードの早期の段階の酵素は後の段階の酵素よりも特異的である。例えば、第X因子はトロンビンよりも特異的である。トロンビンを使用する場合、最も好ましいトロンビン感受性切断部位は、フィブリノーゲン、第XIII因子、およびプロトロンビンに見いだされるものである。血液凝固カスケードのプロテアーゼ、それらの標的タンパク質および特異的な切断部位のさらなる例が以下の表1に列挙されている。表1に示されている配列の下線が引かれている部分は、プロテアーゼによる標的の認識のために含める必要がある最小の切断部位である。
【0063】
【表1-1】
【0064】
融合タンパク質を切断するために使用されてきた他のプロテアーゼとしては、エンテロキナーゼ、コラゲナーゼ、キモシン、ウロキナーゼ、レニン、ライノウイルス3Cプロテアーゼ、タバコエッチ病ウイルス(Tobacco Etch Virus)(TEV)プロテアーゼ、第Xa因子、トロンビン、フューリン、およびある特定のシグナルペプチダーゼが挙げられる(例えば、参考文献19を参照されたい)。
【0065】
切断部位は、最終的な構築物において、ロタウイルス表面タンパク質または異種タンパク質に付加された任意のタグを容易に除去することができるように位置づけられることが好ましい。
【0066】
一部の実施形態では、リンカーは、検出および/または精製のためのタグを含有する。タンパク質の検出を容易にするための多くのタグが当技術分野で公知である。頻繁に使用されるペプチドタグとしては、FLAG−タグ(DYKDDDDK;配列番号12)、HA−タグ(YPYDVPDYA;配列番号13)、His−タグ(例えば、HHHHHH;配列番号14)、Myc−タグ(EQKLISEEDL;配列番号15)、Strep−タグI(AWRHPQFGG;配列番号16)、Strep−タグII(NWSHPQFEK;配列番号17)、およびプロテインC−タグ(EDQVDPRLIDGK;配列番号18)が挙げられる。His−タグは、抗His抗体により容易な検出が可能になり、タグを付けたタンパク質をニッケル−カラムを使用して精製することが可能になるので、好ましい。Strep−タグIIにより、組換えにより発現させたタンパク質をストレプトアビジンカラムを使用して単純かつ容易に精製することが可能になる。いくつかの場合には、タンパク質タグを使用する。例えば、固定化したグルタチオンを含むカラムを使用して本発明のタンパク質を容易に精製することを可能にするために、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ−タグを含めることができる。蛍光顕微鏡法による容易な検出が必要な場合には、緑色蛍光タンパク質−タグを使用することができる。
【0067】
本発明の一部の実施形態では、タグ(例えば、プロテインCタグ)をリンカー配列の一部分として含める。なぜなら、これは、例えば、タンパク質の検出および精製に一般に使用されるタグが、タグを付けたタンパク質の機能およびフォールディングに干渉せず、一般に表面に露出しているからである。したがって、タグは、他の人工的に設計されたリンカー配列に対して有利な性質をもたらし得る。
【0068】
他の実施形態では、リンカー配列はエピトープ配列を含んでよい。エピトープ配列を含めることは、2つの部分からなるアダプター系を介して改変ロタウイルス表面タンパク質および異種タンパク質によって形成される複合体をさらに安定化させるために前記エピトープを認識する抗体断片をパッキングするために有用であり得る。複合体の安定化は、構造研究のための高分解能画像を達成するために特に重要であり得る。
【0069】
シグナルペプチド
本発明の一部の実施形態では、ロタウイルス表面タンパク質および異種タンパク質を、異種シグナルペプチド配列を含むようにさらに改変し、好ましくはネイティブなシグナルペプチド配列を置き換える。異種シグナルペプチドを使用することは、改変ロタウイルス表面タンパク質およびロタウイルスDLPを再外被形成するための異種タンパク質を大量に調製するために使用する発現系においてより高い発現レベルを達成するために有利であり得る。したがって、異種シグナルペプチドは、選択された発現系において高レベルで発現することが公知であるタンパク質に由来する。例えば、HIVコンセンサスシグナル配列またはヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)のシグナルペプチドはヒト細胞における発現に特に適している。昆虫細胞における発現のためには、バキュロウイルスgp64シグナルペプチドまたはミツバチメリチンシグナル配列を使用することができる。一般には、リンカーは、効率的なシグナルペプチド切断を保証するために異種シグナルペプチド配列の後ろに配置する。一般に、シグナルペプチドは選択された発現系に対して内在性であるシグナルペプチダーゼによって除去され、したがって、最終的なタンパク質(すなわち、発現系から回収されるロタウイルス表面タンパク質および異種タンパク質)には存在しない。
【0070】
核酸
本発明は、キメラ表面タンパク質が発現系において大量に発現するようにプロモーター配列と作動的に連結した本発明のキメラ表面タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む核酸にも関する。
【0071】
本発明は、ロタウイルス表面タンパク質の全部または一部、第1のアダプターポリペプチド、および任意選択でリンカー配列を含む改変ロタウイルス表面タンパク質をコードする核酸構築物にも関する。本発明は、さらに、異種タンパク質、第2のアダプターポリペプチド、および任意選択でリンカー配列を含む融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む核酸であって、オープンリーディングフレームが、融合タンパク質が発現系において大量に発現するようにプロモーター配列と作動的に連結している、核酸に関する。一実施形態では、本発明は、第2のアダプターポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、任意選択でリンカー配列および多重クローニング部位を含む核酸構築物であって、異種タンパク質のコード領域を多重クローニング部位に挿入することにより、異種タンパク質および第2のアダプターポリペプチドを含む融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームがもたらされる、核酸構築物に関する。核酸構築物は、発現系における異種タンパク質および第2のアダプターポリペプチドを含む融合タンパク質の発現を駆動することができるプロモーター配列をさらに含む。
【0072】
第1のアダプターポリペプチドおよび第2のアダプターポリペプチドが2つの部分からなるアダプター系の一部を形成し、したがって、異種タンパク質および第2のアダプターポリペプチドを含む融合タンパク質と第1のアダプターポリペプチドを含む改変ロタウイルス表面タンパク質が互いと安定な複合体を形成する。
【0073】
発現系
本発明は、本発明の核酸によりコードされるタンパク質を発現させるための発現系にも関する。
【0074】
一実施形態では、第1の発現系を使用して、ロタウイルス表面タンパク質の全部または一部、第1のアダプターポリペプチド、および任意選択でリンカー配列を含む改変ロタウイルス表面タンパク質を発現させる。第2の発現系を使用して、異種タンパク質、第2のアダプターポリペプチド、および任意選択でリンカー配列を含む融合タンパク質を発現させる。任意選択で、第3の発現系を使用して、ロタウイルス表面タンパク質と一緒にロタウイルス粒子の外層を形成する1つまたは複数のロタウイルスタンパク質を発現させる。第1および第2のアダプターポリペプチドは、互いと相互作用して安定な複合体を形成している。第1の発現系は、改変ロタウイルス表面タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む第1の核酸構築物を含み、オープンリーディングフレームはプロモーター配列と作動的に連結している。第2の発現系は、融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む第2の核酸構築物を含み、オープンリーディングフレームはプロモーター配列と作動的に連結している。第3の発現系は1つまたは複数のロタウイルスタンパク質に対する1つまたは複数の発現ベクターを含む。次いで、改変ロタウイルス表面タンパク質および融合タンパク質、ならびに任意選択で、1つまたは複数のロタウイルスタンパク質を精製する。改変ロタウイルス表面タンパク質および融合タンパク質を適切な比率で混合してキメラ表面タンパク質を形成することができる。次いで、キメラ表面タンパク質および任意選択で1つまたは複数のロタウイルスタンパク質を使用してロタウイルスDLPを再外被形成し、それらの表面上に異種タンパク質を提示するロタウイルス粒子を形成する。あるいは、ロタウイルスDLPを改変ロタウイルス表面タンパク質、および任意選択で1つまたは複数のロタウイルスタンパク質を用いて再外被形成してロタウイルス粒子を形成する。次いで、ロタウイルス粒子を融合タンパク質と混合して第1のアダプターポリペプチドと第2のアダプターポリペプチドの複合体を形成させることができ、それによりキメラ表面タンパク質をもたらし、したがって、異種タンパク質をロタウイルス粒子の表面上に提示させる。
【0075】
別の実施形態では、本発明は、(i)ロタウイルス表面タンパク質の全部または一部、第1のアダプターポリペプチド、および任意選択でリンカー配列を含む改変ロタウイルス表面タンパク質をコードするオープンリーディングフレームであって、プロモーター配列と作動的に連結しているオープンリーディングフレームを含む第1の核酸構築物、および(ii)異種タンパク質、第2のアダプターポリペプチド、および任意選択でリンカー配列を含む融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームであって、プロモーター配列と作動的に連結しているオープンリーディングフレームを含む第2の核酸構築物を含む発現系に関する。いくつかの場合には、発現系は、ロタウイルス表面タンパク質と一緒にロタウイルス粒子の外層を形成する1つまたは複数のロタウイルスタンパク質に対する発現ベクターをさらに含む。
【0076】
発現系は、細菌細胞、酵母細胞、原生動物細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞であってよい。発現系として細菌細胞または酵母細胞を使用することは、特に、発現されたタンパク質の妥当なグリコシル化が望まれる場合にはあまり好ましくない。
【0077】
キット
本発明は、ロタウイルス表面タンパク質の全部または一部および第1のアダプターポリペプチドを含む改変ロタウイルス表面タンパク質をコードする第1の核酸構築物、ならびに第2の核酸構築物を含むキットであって、第2の核酸構築物が、第2のアダプターポリペプチドをコードするヌクレオチド配列および多重クローニング部位を含み、異種タンパク質のコード領域を多重クローニング部位に挿入することにより、異種タンパク質および第2のアダプターポリペプチドを含む融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームがもたらされ、キメラ融合タンパク質の第1のアダプターポリペプチドと融合タンパク質の第2のアダプターポリペプチドが互いと相互作用して安定な複合体を形成する、キットをさらに提供する。
【0078】
本発明は、さらに、ロタウイルス表面タンパク質の全部または一部および第1のアダプターポリペプチドを含む改変ロタウイルス表面タンパク質をコードする第1の核酸構築物、ならびに異種タンパク質の全部または一部および第2のアダプターポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする第2の核酸構築物を含むキットであって、改変ロタウイルス表面タンパク質の第1のアダプターポリペプチドと融合タンパク質の第2のアダプターポリペプチドが互いと相互作用して安定な複合体を形成し、したがって、キメラ表面タンパク質がもたらされる、キットに関する。
【0079】
キットは、ロタウイルス粒子をさらに含んでよい。ロタウイルス粒子は、ロタウイルス表面タンパク質が由来する種と同じ種由来であっても異なる種由来であってもよい。例えば、アカゲザルロタウイルスVP7を使用してウシロタウイルスから調製したDLPを再外被形成することができ、逆もまた同じである。ロタウイルスは脱外被されていても、キメラ表面タンパク質を用いて再外被形成されていてもよい。あるいは、キットは、キメラ表面タンパク質を用いて再外被形成するためのDLPを含んでよい。ロタウイルスDLPは、ネイティブなロタウイルス粒子の脱外被によって、またはロタウイルスの内側の殻タンパク質VP2およびVP6を組換え発現させることによって調製することができる。
【0080】
外層タンパク質の組換え発現
ロタウイルスDLPの再外被形成には、1つまたは2つの組換えウイルスタンパク質、外層タンパク質VP7、または外層スパイクタンパク質VP4と一緒になった外層タンパク質VP7のみが必要である。VP4およびVP7の発現および精製は、それぞれ参考文献20および21に詳しく記載されている。
【0081】
本発明のキメラ表面タンパク質を含む外層タンパク質は、当業者に公知の従来の発現系を使用して作製することができる。正しいフォールディング、およびいくつかの場合には妥当なグリコシル化を保証するためには、原核生物または酵母発現系以外の発現系が好ましい。例えば、CHO細胞または293細胞などの哺乳動物細胞を、ロタウイルスDLPを再外被形成するために必要な外層タンパク質を過剰発現させるために使用することができる。あるいは、原生動物Leishmania tarentolaeを、外層タンパク質を発現させるために使用することができる。昆虫細胞系も外層タンパク質を発現させるのに適している。例えば、昆虫細胞株Sf9、Sf21およびHi−5が、グリコシル化されたタンパク質を過剰発現させるために適している。いくつかの場合には、バキュロウイルスに基づく昆虫細胞系が好ましい。参考文献2、4および5に記載の発現系が本発明の実施に特に適している。
【0082】
過剰発現させた外層タンパク質を回収し精製するための種々のやり方が当技術分野で公知である。一般には、一連のクロマトグラフィーのステップを使用して、発現系として使用した細胞の細胞質抽出物または上清から過剰発現させたタンパク質を精製する。例えば、レクチンアフィニティークロマトグラフィー、免疫アフィニティークロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーを使用することができる。外側の殻タンパク質にペプチドタグまたはタンパク質タグを用いてタグ付けしている場合には、このタグを精製に有利に使用することができる。プロテアーゼ切断部位がタグの前にある配列内に存在すれば、精製後に、プロテアーゼ切断部位を特異的に認識するプロテアーゼを使用してタグを除去することができる。
【0083】
いくつかの場合には、組換えによって発現させた外層タンパク質の粗製調製物を再外被形成反応のために使用することができる。例えば、外層タンパク質を発現させるために使用する細胞の溶解物は、溶解緩衝液および/または細胞の機械的な破壊(例えば、細胞を掻爬することまたは超音波処理することによる)を使用して調製することができる。あらゆる細胞破片を遠心分離によって除去し、組換え外層タンパク質の粗製調製物を含有する上清を再外被形成反応に使用することができる。再外被形成反応に使用する前に、限外濾過を使用して粗製調製物を濃縮することができる。
【0084】
異種タンパク質とロタウイルス表面タンパク質が第1のアダプターポリペプチドおよび第2のアダプターポリペプチドを含む2つの部分からなるアダプター系によって非共有結合で結合している本発明の態様では、第1のアダプターポリペプチドと融合したロタウイルス表面タンパク質および第2のアダプターポリペプチドと融合した異種タンパク質を異なる細胞において別々に発現させる。両方のタンパク質を、タンパク質のそれぞれに対して公知の精製プロトコールを使用して別々に精製することができるので、別々の発現が好ましい場合がある。精製後、タンパク質を、ロタウイルスDLPを再外被形成するために必要な適切な比率で混合することができる。例えば、ロタウイルスの外層におけるVP7とVP4のモル比は13:1である。第1のアダプターポリペプチドを含む改変VP7タンパク質と第2のアダプターポリペプチドを含む異種タンパク質のモル比は、一般には1:1である。あるいは、ロタウイルス外層タンパク質を用いてDLPを再外被形成してロタウイルス粒子を形成する。次いで、ロタウイルス粒子を異種タンパク質と混合して第1のアダプターポリペプチドと第2のアダプターポリペプチドの複合体を形成させ、したがって、異種タンパク質をロタウイルス粒子の表面上に提示させる。
【0085】
あるいは、ロタウイルス表面タンパク質と異種タンパク質の両方を同じ細胞において発現させることができる。同時発現により、2つの部分からなるアダプター系によって媒介されるロタウイルス表面タンパク質と異種タンパク質の安定な複合体が形成される(詳細に関しては上記を参照されたい)。アダプター配列をロタウイルス表面タンパク質または異種タンパク質に接続するリンカー配列がタグを含有する場合には、このタグを、発現系の細胞/細胞の上清から複合体を精製するために使用することができる。
【0086】
レオウイルスコア粒子を異種タンパク質の全部または一部を含むキメラ表面タンパク質を用いて再外被形成できるようにするために、外層を形成するための全てのタンパク質がもたらされる必要はない。例えば、哺乳動物レオウイルスの外層はμ1、σ1およびσ3から形成される。本発明の目的に関してレオウイルスコア粒子を再外被形成するためには、一般には、ウイルス粒子を形成するのにμ1の組換えバージョンを提供すれば十分である。任意選択で、σ1およびσ3の組換えバージョンをもたらすこともできる。組換えタンパク質は、上記の発現系のうちの1つを用いて調製することができ、次いで、公知のプロトコールを使用して精製することができる。
【0087】
ウイルス粒子の増殖
ロタウイルスは、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、マウス、イヌ、ネコ、トリならびにアダックス、サイガ、オジロヌー、ハイイログマ、およびアカカンガルーなどの外来動物種を含めた多数の動物種において見いだされている。したがって、ある特定の細胞型のそれらの増殖に対する適合性は、選択されたウイルスの宿主域に依存する。確立された細胞培養系における高収量の増殖を可能にするウイルスを選択することが好ましい。
【0088】
例えば、アカゲザルロタウイルスを増殖させるために細胞株MA104を使用することができる。ロタウイルスは、感染細胞を溶解させることによって、例えば、感染させたMA104細胞を培地中で凍結融解することによって回収することができる。低速遠心分離によって細胞破片を溶解物から取り除き、超遠心分離を使用してウイルス粒子をペレット化することによってまたは限外濾過によってそれらを濃縮する。ウイルス粒子の濃縮された懸濁物を、CsCl勾配遠心分離を使用してさらに精製することができる[2]。CsCl勾配を調製するために適した緩衝液はTNC(20mMのTris、pH8.0、100mMのNaCl、1mMのCaCl
2)である。
【0089】
ロタウイルスを増殖させるためには、十分に特徴付けられた細胞を使用することが好ましい。ヒト、ウシおよびアカゲザルロタウイルスは、Vero細胞において増殖させることができる。適切なVero細胞株(CCL81)はAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手することができる。
【0090】
同様に、Reoviridae科のメンバーは、広範囲の哺乳動物、鳥類、爬虫類、魚類、甲殻類、昆虫、マダニ、クモ類、植物および真菌から単離されている。Reoviridae科の他のウイルスのための培養系も確立されている。例えば、イネラギットスタントウイルス(RRSV)は、感染させたイネ葉から十分な量で調製することができる[7]。C6/36細胞を使用してBannaウイルス(BAV)を増殖させることができる[22]。マウスL細胞、特に細胞株L929、およびマウス赤白血病(MEL)細胞を使用して、哺乳動物レオウイルス株1型Lang(T1L)および3型Dearing(T3D)を増殖させることができる[5]。ソウギョアクアレオウイルス(GCRV)は、Ctenopharyngodon idellus腎臓(CIK)細胞培養物において増殖させることができる[8]。
【0091】
ウイルス粒子は、一般には、細胞の上清または溶解させた細胞から回収することができる。例えば、あらゆる細胞破片を低速遠心分離によって除去することができ、超遠心分離を使用して上清からウイルス粒子をペレット化する。ペレットは、必要であればさらに精製することができるウイルス粒子を含有する。
【0092】
DLPの調製
ロタウイルスDLPは、精製したロタウイルス粒子から外層タンパク質を取り除くことによって調製する。ロタウイルス粒子は、ウイルス粒子をEDTAまたはEGTAなどのカルシウムキレート化剤の存在下でインキュベートすることによって脱外被させることができる。ロタウイルス粒子の脱外被に適した緩衝液は、20mMのTris、pH8、100mMのNaClおよび1mMのEDTAを含有する[2]。ロタウイルス粒子は、熱ショックによっても脱外被させることができる。生じたDLPは、2つの連続的な前もって形成したCsCl勾配(ρ=1.25〜1.50g/cm
3)でバンド形成させることによって精製することができる。
【0093】
外層タンパク質を取り除くための最適な方法は、選択されたウイルス粒子に依存する。例えば、哺乳動物レオウイルス粒子は、粒子をα−キモトリプシン(CHT)と一緒に37℃で2時間インキュベートすることによってコアにまで剥がすことができる[4]。
【0094】
上記の方法は、Reoviridae科の他のウイルスに対して、それらの外層タンパク質のプロテアーゼ処理または低カルシウム条件に対する感度に応じて適合させることができる。
【0095】
いくつかの場合には、ウイルスを増殖させるために使用した細胞を溶解させることによってサブウイルス粒子を回収することができる。次いで、Bannaウイルスに関して記載されている通り、サブウイルス粒子を、例えばCsCl勾配によって細胞溶解物から回収することができる[22]。
【0096】
あるいは、DLPまたはサブウイルス粒子は、関連するウイルスタンパク質を上記の発現系のうちの1つにおいて組換えにより発現させることによって調製することができる。例えば、ロタウイルスの内側の殻タンパク質VP2およびVP6を組換えによって発現させて、DLPに似たウイルス様粒子を形成することができる。
【0097】
再外被形成
ロタウイルスDLPの再外被形成は、pH4.5および6.5を含むpH範囲で起こるが、pH5から5.5の間(好ましくはpH5.2)が最も効率的である。再外被形成は、4℃および37℃を含む温度で起こるが、37℃よりも4℃から30℃の間の方が効率的である。
【0098】
レオウイルスコア粒子の再外被形成は、一般には、細胞においてウイルス粒子の集合が起こる条件を模倣する条件下で行うことができる。例えば、哺乳動物オルトレオウイルスコア粒子は、37℃で再外被形成させることができる。しかし、精製されたウイルスコアおよび組換えによって発現させた外層タンパク質からウイルス粒子を効率的に再集合させるために、pHおよび温度などの個々のパラメータをさらに最適化することが必要な場合がある。
【0099】
再外被形成されたウイルス粒子は、CsCl勾配遠心分離によって回収することができる。CsCl勾配精製を2回繰り返して、回収されたウイルス粒子の純度を上昇させることができる。
【0100】
再外被形成されたロタウイルス粒子の表面上に異種タンパク質を提示するためにアダプター系を使用する場合、ロタウイルスDLPを、第1のアダプターポリペプチドを含むロタウイルス表面タンパク質を用いて再外被形成させることができる。その後、第1のアダプターポリペプチドと安定な複合体を形成する第2のアダプターポリペプチドを含む異種タンパク質を再外被形成されたウイルス粒子に付加することができる。これは、異種タンパク質およびロタウイルス表面タンパク質によって形成される複合体を用いた再外被形成が、例えば異種タンパク質のサイズに起因してあまり効率的でないと思われる場合に有利であり得る。あるいは、アダプターポリペプチドを介した異種タンパク質とロタウイルス表面タンパク質の複合体をまず形成することができ、再外被形成のためにこの複合体をロタウイルスDLPに付加することができる。
【0101】
複合体の形成
本発明のいくつかの態様では、キメラ表面タンパク質の一部を形成する(例えば、2つの部分からなるアダプター系を介してロタウイルス表面タンパク質と非共有結合で結合することによって)異種タンパク質と異種タンパク質に特異的に結合する分子との間で形成される複合体の構造を研究するために、キメラ表面タンパク質を使用する。
【0102】
本発明の一態様では、分子はタンパク質性分子である。タンパク質性分子は、一般には、異種タンパク質と相互作用する受容体もしくはリガンド、または異種タンパク質の表面上に見いだされるエピトープを認識する抗体もしくは抗体断片などの別のタンパク質である。
【0103】
例えば、ロタウイルス粒子の表面上に提示される三量体ウイルス細胞侵入タンパク質(例えば、HIV gp140またはRSV Fタンパク質)と結合した三量体ロタウイルス表面タンパク質の六量体複合体を、ウイルス細胞侵入タンパク質とその宿主細胞の表面受容体の間の相互作用を研究するために使用することができる。
【0104】
異種タンパク質とタンパク質性分子の間の複合体の形成のための最適な条件は、相互作用の性質に依存する。受容体−リガンド相互作用には、抗体−抗原相互作用とは異なる条件が必要な場合がある。一般には、複合体の形成は、室温で、緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝食塩水)中で実施される。
【0105】
一実施形態では、タンパク質性分子を、キメラ表面タンパク質を提示している再外被形成されたロタウイルス粒子の懸濁物に添加する。緩衝溶液は、追加的な成分、例えば、ロタウイルス粒子の脱外被を防止するためのCa
2+、および任意選択で、タンパク質の分解を遮断するための1種または複数のプロテアーゼ阻害剤などを含有してよい。タンパク質性分子を再外被形成されたロタウイルス粒子の存在下でインキュベートした後、ロタウイルス粒子に結合した、タンパク質性分子の新たに形成された複合体を遠心分離または限外濾過によって結合していないあらゆるタンパク質性分子から分離することができる。しかし、結合していないタンパク質性分子の除去は、再外被形成されたロタウイルス粒子をcryo−EM解析に使用する場合には必要ではない可能性がある。
【0106】
あるいは、タンパク質性分子とキメラ表面タンパク質を一緒にインキュベートして、複合体の形成を起こさせる。まず、異種タンパク質およびロタウイルス表面抗原を一緒にインキュベートしてキメラ表面タンパク質を形成することができる。キメラ表面タンパク質が形成されたら、タンパク質性分子を付加する。次いで、任意選択でロタウイルス表面タンパク質と一緒にネイティブなロタウイルス粒子の外層を形成する任意の追加的なロタウイルスタンパク質の存在下でタンパク質性分子とキメラ表面タンパク質の複合体をロタウイルスDLPに付加してロタウイルス粒子を形成することができる。
【0107】
本発明の特定の態様では、抗原−抗体複合体の構造を決定するために本発明のキメラ表面タンパク質を使用する。本発明のこの態様では、異種タンパク質は、ウイルスまたは細菌などの病原体由来であってよい。例えば、免疫優性抗原を異種タンパク質として選択して、その抗原に対する免疫応答の間にタンパク質のどの部分が抗体によって標的化されるかを研究することができる。異種タンパク質は、インフルエンザウイルス赤血球凝集素、呼吸器合胞体ウイルスF、またはHIV gp140などの三量体ウイルス表面タンパク質であることが好ましい。抗原−抗体複合体の構造を決定するために、隣接するキメラ表面タンパク質間の立体的な障害を回避するため、および異種タンパク質上に見いだされるエピトープの最大の占有率を保証するために、全長抗体の代わりにFab断片を使用することが一般には好ましい。
【0108】
本発明の別の態様では、異種タンパク質と非タンパク質性分子の間の複合体の形成を研究することができる。非タンパク質性分子は核酸(例えば、RNAまたはDNA)、多糖またはオリゴ糖(例えば、グリカン)であってよい。例えば、異種タンパク質は、転写因子または特定のDNA配列と複合体を形成する他のDNA結合性タンパク質であってよい。あるいは、異種タンパク質は、グリカンと複合体を形成するレクチンであってよい。
【0109】
Cryo−EM
構造決定のためにcryo−EMを使用することは、X線結晶構造解析などのより伝統的な手法と比較して、いくつかの利点を有する。具体的には、cryo−EMでは、解析される試料に対して純度、均一性および量に関して課される要件は厳しくはない。重要なことに、cryo−EMは、構造決定に適した結晶を形成しない標的に適用することができる。
【0110】
精製されたまたは精製されていない再外被形成されたロタウイルス粒子の、それ単独、または抗体などのタンパク質性分子もしくは核酸などの非タンパク質性分子との複合体の懸濁物を、cryo−EMによって画像化するためにカーボングリッドに適用することができる。コーティングしたグリッドを、通常は液体エタン中で急速凍結させて、粒子を懸濁物中、凍結湿潤化した(frozen−hydrated)状態で保存する。より大きな粒子は凍結固定によってガラス化することができる。ガラス化した試料をクライオウルトラミクロトームで薄い切片(一般には厚さ40〜200nm)に切断することができ、画像化のために切片を電子顕微鏡グリッドの上に載せることができる。
【0111】
約3.3Åもの高さの分解能を得るために並行した照明およびより良好な顕微鏡アラインメントを使用することにより、画像から得られるデータの品質を改善することができる。そのような高分解能では、完全な原子構造の非経験的モデルの構築が可能である。しかし、選択されたまたは密接に関連するロタウイルス粒子および選択された異種タンパク質または密接な相同体に関する原子レベルの分解能での構造データが制限された比較モデリングのために利用可能である場合には、低分解能画像化で十分である可能性がある(以下を参照されたい)。
【0112】
データの品質をさらに改善するために、顕微鏡を、画像化に使用したものと同じ条件下で記録された炭素膜画像のフーリエ変換において1/3Å
−1を超える可視コントラスト伝達関数(contrast transfer function)(CTF)環が示されるように慎重にアラインメントすることができる。次いで、CTFFINDなどのソフトウェアを使用して、各顕微鏡写真についての焦点はずし値を決定することができる[23]。密度マップの最終的な画素サイズを、例えばタバコモザイクウイルス(TMV)を使用して較正することができる。
【0113】
ロタウイルス粒子の構造研究にcryo−EMを適用することに関する有用な説明は参考文献24および25において見いだされる。
【0114】
画像解析および構造決定
cryo−EMによって得られる画像を解析して、単一粒子の顕微鏡写真を同定する。単一粒子の選択は、SIGNATUREなどのソフトウェアツールを利用して行うことができる[26]。各顕微鏡写真の非点収差焦点はずし(astigmatic defocus)、検体傾斜軸、および傾斜角度を、コンピュータプログラムCTFTILTを使用して決定することができる[23]。各粒子について、元の画像におけるその座標に応じて別々の焦点はずし値を得ることにより、ロタウイルス粒子の単一粒子の顕微鏡写真を平均することによって得られるcryo−EM密度マップのデータの品質が改善される。
【0115】
cryo−EM密度マップ内の既知原子モデルをフィッティングすることは、ウイルス粒子などの複雑な構造のモデルを構築するための一般的な手法である。Situs[27]、Foldhunter[28]およびMod−EM[29]などのタンパク質構造の単純な剛体局在化から、既知の構造を密度マップに変形させるNMFF[30]、Flex−EM[31]、MDFF[32]およびDireX[33、34]のような複雑かつ動的に柔軟なフィッティングアルゴリズムまでにわたる、コンピュータによるいくつかのフィッティングツールが利用可能である。
【0116】
原子モデルが既知でない場合、in silicoで構築される潜在的なモデルのギャラリーからの構造モデルの構築および/または評価においてcryo−EM密度マップを使用することができる(参考文献29、35、36、37および38を参照されたい)。制限された比較モデリングのために、または制限された非経験的モデリングのために、関連する鋳型構造が既知でなければならず、モデリングされるフォールディングは比較的小さなものでなければならない。例えば、IMIRSを使用して最初の構造を得ることができる[39]。FREALIGNを用い、既知のロタウイルス構造および既知構造の異種タンパク質または密接な相同体を鋳型として使用して、さらなるアラインメントおよび再構築を実施することができる[40]。
【0117】
意味のある構造上および機能上の情報は、密度マップ自体から直接得ることができる。例えば、5〜10Åの分解能では、cryo−EM密度マップにおいていくつかの二次構造要素を目で見ることができる:α−へリックスは円柱として現れ、β−シートは薄い曲がった板として現れる。これらの二次構造要素は、タンパク質構造を説明するまたは個々のタンパク質の機能を推測するための特徴認識ツールを使用して確実に同定し、数量化することができる。ほぼ原子レベルの分解能(3〜5Å)では、α−へリックスのピッチ、β−ストランドの分離、ならびにそれらを接続する密度を一義的に可視化することができる(例えば、参考文献41、42、43および44を参照されたい)。
【0118】
cryo−EMにおいて構築される新規モデルは、特徴認識、配列解析、二次構造要素対応、Cαの配置およびモデル最適化を含む。種々のソフトウェアアプリケーション、例えば、密度マップの分割および操作のためのEMAN[45]、二次構造要素を検出するためのSSEHunter[46]、UCSF’s Chimeraでの可視化[47]およびCootでの原子操作[48、49]を使用することができる。
【0119】
SSEHunterのような二次構造同定プログラムは、密度マップにおいて視覚的に観察可能な二次構造要素を検出および提示するための半自動化機構をもたらす[46]。配列および構造における二次構造要素の登録を幾何的および生物物理学的情報と組み合わせて使用して、タンパク質バックボーンを密度マップに固定することができる[41、43]。この配列と構造の対応は、密度において観察される二次構造要素を配列において予測されたものに関連付ける。モデリングツールキットGORGONは、配列に基づく二次構造予測と特徴検出および幾何的モデリング技法を併せて、最初のタンパク質バックボーンモデルを生成する[50]。タンパク質モデルの局所的な構造を構築、改変および精緻化するためには、cryo−EMマップを制約として使用してEM−IMO(電子顕微鏡反復モジュラー最適化(electron microscopy−iterative modular optimization))などの自動モデリング法を使用することができる[51]。
【0120】
二次構造要素を使用して対応を決定したら、Cα原子を、α−へリックスから始まり、その後にβ−ストランドおよびループが続く密度に割り当てることができる。例えば、Cα原子に関する明らかな衝突を利用することにより、結晶学的プログラムO[52]および/またはCoot[48]のBaton_build utilityを使用してCαモデルを構築することができる。Cα位を、妥当な幾何学的配置を維持し、モデル内での衝突を排除しながら密度に最適に適合するように相互作用的に調整することができる。粗い完全原子モデルを、CNSを使用して擬似結晶様式で精緻化することができる[53]。モデルを、Rosettaなどのコンピュータによるモデリングソフトウェアを使用してさらに最適化することができる[36]。完全原子モデルは、REMOなどの他のコンピュータによるツールを利用して構築することもできる[54]。モデルの品質は、モデルを密度マップと視覚的に比較することによって確認することができる。擬似結晶R因子/Rfree解析[55]は、観察された構造因子振幅と計算された構造因子振幅の間の一致の尺度をもたらし、得られた原子モデルがcryo−EM密度マップとの良好な適合をもたらすことを確認するために使用することができる。タンパク質モデルの幾何学的形状はPROCHECKによって確認することができる[56]。
【0121】
免疫原の設計のためのスクリーニング方法
X線結晶構造解析の代わりにcryo−EMを使用することにより、迅速な構造決定が容易になる。X線結晶構造解析と比較して、cryo−EMでは、解析される試料の純度、均一性および量に関して課される要件は厳しくはない。これらの特性により、cryo−EMが、特に抗原ドリフトを受ける病原体に対するワクチン用の免疫原の設計に関して魅力的なものになる。
【0122】
特に同じ病原体の改変体または密接に関連する病原体により共有されるエピトープに関する構造情報をより多く有することにより、同じ病原体の多数の改変体または密接に関連する病原体に対する広範な防御をもたらすワクチンに使用することができる免疫原を合理的に設計することが可能になり得る。そのようないわゆる「普遍的な」ワクチンは、同じ病原体の種々の改変体または密接に関連する病原体を同じワクチン組成物に含める(例えば、現在利用可能なポリオワクチンならびに連鎖球菌および髄膜炎菌コンジュゲートワクチンについての場合のように)、または以前の流行期の病原体集団において生じた抗原ドリフトを考慮して毎年新しいワクチン組成物をもたらす(インフルエンザワクチンの場合のように)必要がなくなるので、伝統的なワクチンよりも対費用効果が大きいと考えられる。
【0123】
多様な病原体に対するワクチン接種のための免疫原の合理的な設計には、同じ病原体の種々の改変体/亜型の中で、または密接に関連する病原体の中で保存されている免疫優性タンパク質の領域を同定することが伴う。キメラロタウイルス表面タンパク質上に異種タンパク質を提示させるためのロタウイルス粒子の使用により、多数の構造を比較的短い時間で迅速に決定することが可能になる。したがって、本発明の方法は、免疫原性タンパク質の保存されたエピトープの同定において特に有用であり得る。
【0124】
同じ病原体のいくつかの改変体/亜型に対しておよび/または密接に関連する病原体に対して惹起されることが見いだされている抗体または対応する抗原結合性断片と複合体を形成した免疫原の構造を決定することにより、この病原体および/または密接に関連する病原体の免疫優性免疫原における保存された領域を同定することができる。したがって、一実施形態では、本発明は、抗体と複合体を形成した免疫原の3次元モデルを得るための方法であって、(i)免疫原を含むキメラ表面タンパク質でロタウイルスDLPを再外被形成させてキメラ表面タンパク質を提示しているロタウイルス粒子の懸濁物をもたらすステップ、(ii)懸濁物に、免疫原に特異的に結合する抗体または抗体断片を添加するステップであって、抗体または断片がキメラ表面タンパク質と複合体を形成するステップ、(iii)懸濁物を凍結させるステップ、(iv)cryo−EMを使用してロタウイルス粒子を画像化して複数の顕微鏡写真を得るステップ、および(vi)複数の顕微鏡写真を解析して抗体と複合体を形成した免疫原の3次元モデルを得るステップを含む方法に関する。免疫原は、一般には、ロタウイルス粒子に対して異種のものである。抗体と複合体を形成した免疫原の3次元モデルを使用して、抗体により認識される免疫原の表面上のエピトープを定義することができる。
【0125】
この方法を使用して、いくつかの関連する病原体または抗原ドリフトに起因して生じる病原体の改変体に対して広範に中和活性を有する抗体によって結合されるエピトープを同定することができる。あるいは、この方法を使用して、例えば、ウイルス細胞侵入タンパク質の機能に干渉し、ウイルス増殖を予防または阻害するために使用することができるエピトープを認識することができる抗体によって結合されるエピトープを同定することができる。特定の3次元立体配置のタンパク質に結合する抗体も、例えば、製造されたタンパク質の、このタンパク質の変性またはミスフォールディングしたコピーを多数含有するロットを排除するためにタンパク質の製造中の品質管理用試薬として有用であり得る。この方法は、さらに、診断用試薬として使用される抗体によって結合される場合に特に有用なエピトープ(例えば、密接に関連する病原体の群の中の特定の病原体に特異的なエピトープ)を同定するために使用することができる。
【0126】
抗体と複合体を形成した免疫原の3次元モデルを得るための方法を、同じ病原体のいくつかの改変体/亜型による感染に応答して、かつ/または密接に関連する病原体に対して惹起されることが見いだされている抗体またはそれらの対応する抗原結合性断片のパネルに対して繰り返すことにより、免疫原の表面上の各抗体に対するエピトープを同定することができる。パネル内の各抗体に対するエピトープが同定されたら、この情報を、免疫原を合理的に設計するために使用することができる。例えば、当該方法は、同じ病原体の多数の改変体/亜型および/または密接に関連する病原体に対して広範な中和活性をもたらす免疫原を設計するための同じ病原体のいくつかの改変体/亜型に対しておよび/または密接に関連する病原体に対して中和活性を有することが見いだされている抗体のパネルに対するエピトープを同定するために使用することができる。
【0127】
あるいは、現存するワクチンを用いた免疫化に応答して惹起される抗体により認識されるエピトープのレパートリーをマッピングするために上記の方法を使用することができる。これらの抗体により最も一般的に認識されるエピトープをマッピングすることにより、免疫優性エピトープを同定することができる。この情報は、現存するワクチンをさらに最適化するために有利に使用することができる。例えば、現存するワクチンが不活化病原体で構成される場合、ワクチンの最適化されたバージョンには、前記病原体の免疫優性部分のみを含めることができる(例えば、同定された免疫優性抗原またはエピトープの組換えバージョンを含むサブユニットワクチンの形態で)。これらの技法を使用して得られる免疫優性抗体エピトープの構造決定因子の理解を最も有用なエピトープ(例えば、広範に中和性のエピトープなど)を免疫優性にするように作出された抗原の調製に適用することができる。
【0128】
免疫原の設計を補助するためのエピトープのマッピングの例は当技術分野で公知であるが、一般に、X線結晶構造解析によって免疫原−抗体複合体の構造データを得ることに伴う労力が原因で、免疫原上の少数のエピトープに限定されている。多くの場合、単一の抗体のみが試験される(参考文献57、58および59を参照されたい)。本発明は、ハイスループットな手法を使用して免疫原−抗体複合体に関する構造情報を得ることを初めて可能にする。本発明は、免疫原と弱くしか会合せず、したがって、結晶化に重要な難題を提示する抗体に対して特に有用である。
【0129】
同じ病原体のいくつかの改変体または密接に関連する病原体に対して広範に防御的である免疫原を設計するための種々の手法が当技術分野で公知である。近年、インフルエンザウイルスおよびHIVに対する「普遍的な」ワクチンを設計するための多くの試みがなされてきた(参考文献60、61および62を参照されたい)。改変された免疫原の合理的な設計は、このプロセスを導く構造データの欠如により妨げられてきた。キメラロタウイルス表面タンパク質上に異種タンパク質を提示させるためのロタウイルス粒子の使用により、タンパク質のアミノ酸配列の改変がどのようにその3次元構造に影響を及ぼすかを迅速に決定することが可能になる。タンパク質の構造を変化させるアミノ酸の改変は、結晶を形成するその能力に影響を及ぼす可能性がある。したがって、これらの改変の影響を評価するための構造情報は、改変されたタンパク質が改変されていないタンパク質と同じ条件で結晶化しない場合があるので、容易には入手可能でない場合がある。cryo−EMの使用は、タンパク質構造の決定に関して結晶の形成に依存せず、さらに、異なる型のタンパク質に対して基本的な実験の設定のいかなる適応も必要としないので、改変されたタンパク質の迅速な構造の特徴付けが可能である。
【0130】
同じ病原体のいくつかの改変体/亜型、および/または多くの密接に関連する病原体に存在する病原体の免疫原性タンパク質上のエピトープが同定されたら、この情報を、普遍的なワクチンを設計するために使用することができる。いくつかの場合、これは、特に、ネイティブなタンパク質において共有されるエピトープを含む保存された領域に抗体が容易に接近可能でない場合には、免疫原の改変を必要とする場合がある。なぜなら、エピトープの接近可能性が乏しいことは通常不十分な免疫原性に変換されるからである。抗体により認識され得るネイティブなエピトープを保持するように免疫原を改変するが、エピトープはより接近可能なものにすることにより、改変された免疫原は、同じ病原体の広範囲の改変体/亜型または広範囲の密接に関連する病原体に対して防御的である抗体応答をもたらし得る。親和性成熟させた抗体に対するエピトープのマッピングに加えて、これらの抗体の変異していない祖先によって認識されるエピトープも、B細胞レパートリークローニング実験から推定されたら、この技法によってマッピングすることができる。この情報は、所望の変異していない祖先抗体を選択的に増幅する免疫原を設計し、次いで、広範かつ強力な中和抗体へのその親和性成熟化を導くことの補助になり得る。
【0131】
ネイティブな免疫原から改変された(普遍的なワクチンを調製するためにまたは他の理由で)候補免疫原を、目的のネイティブなエピトープの存在について本発明の方法を使用して試験することができる。したがって、特定の実施形態では、本発明は、さらに、異種タンパク質の2つの改変体間の構造的な差異を決定するための方法であって、(i)異種タンパク質の第1の改変体を含む第1のキメラ表面タンパク質を用いてロタウイルスDLPを再外被形成させて、第1のキメラ表面タンパク質を提示する第1のロタウイルス粒子の懸濁物をもたらすステップ、(ii)懸濁物を凍結させるステップ、(iii)cryo−EMを使用して第1のロタウイルス粒子を画像化して複数の顕微鏡写真を得るステップ、(iv)複数の顕微鏡写真を解析して第1のキメラ表面タンパク質の3次元モデルを得るステップ、(v)異種タンパク質の第2の改変体を含む第2のキメラ表面タンパク質を用いてステップ(i)〜(iv)を繰り返すステップであって、第1および第2のキメラ表面タンパク質が、第1の改変体と第2の改変体の差異以外は互いと同一であるステップ、および(vi)第1のキメラ表面タンパク質の3次元モデルと第2のキメラ表面タンパク質の3次元モデルを比較して、異種タンパク質の第1の改変体と第2の改変体の間の構造的な差異を決定するステップを含む方法に関する。この方法を同じ異種タンパク質のさらなる改変体に対して繰り返して、ある特定の所望の構造特性を有する改変体を同定するためのスクリーニングアッセイをもたらすことができる。
【0132】
いくつかの場合には、それぞれエピトープを認識する抗体と複合体を形成した、ネイティブな免疫原の構造および複数の改変された免疫原の構造を決定することができる。改変された免疫原の構造とネイティブな免疫原を比較することは、in vivoにおけるさらなる試験のための、ネイティブなエピトープを最もよく保存する候補免疫原の選択に役立つ。
【0133】
免疫原性組成物
さらなる態様では、本発明は、医薬の調製における、本発明のキメラ表面タンパク質を含むロタウイルス粒子の使用に関する。具体的には、本発明のキメラ表面タンパク質を含むロタウイルス粒子をヒトワクチン接種に適した免疫原性組成物に使用することができる。例えば、キメラ表面タンパク質を、患者に投与した際に防御免疫応答を惹起する異種タンパク質が提示されるように設計することができる。
【0134】
病原体由来の抗原に対する免疫応答を惹起するためのキメラウイルスの使用は当技術分野で周知である。伝統的に、この手法には、病原体由来の抗原のベクターとして選択された宿主ウイルスのゲノムの再操作(reengineering)が必要である。そのような手法にはいくつかの限定がある。一般には、ウイルスゲノムを、抗原をコードする病原体由来の遺伝子を含有するように改変する。したがって、選択されたウイルスのゲノムサイズにより、発現させることができる病原体由来の抗原のサイズが限定される可能性がある。同様に、病原体由来の抗原をコードする遺伝子の挿入は、ウイルスの増殖に干渉し、達成することができる収量を限定する可能性がある。したがって、病原体由来の抗原のそれぞれに対してキメラウイルスの調製を最適化する必要がある。
【0135】
病原体由来の抗原のコード領域を挿入することによって宿主ウイルスのゲノムを変更する組換え遺伝学を使用して新しい表面タンパク質を有するキメラウイルスを創出することにより、キメラウイルスの宿主域が潜在的に変化し得、したがって、新しく創出されたウイルスの病原性に対する結果は予測不可能である。したがって、ワクチン接種される被験体において複製することができない十分に弱毒化されたキメラウイルスをもたらすために追加的なステップをとる必要がある。
【0136】
本発明は、ロタウイルスDLPを再外被形成するために使用することができるあらゆる種類のキメラ表面タンパク質の調製を可能にするので、伝統的な手法に付随する問題を克服する。再外被形成されたロタウイルス粒子は、病原体由来の抗原に関するいかなる遺伝情報も含有しない。したがって、再外被形成されたロタウイルス粒子が宿主細胞に最初に感染した後は、病原体由来の抗原を有する後代ウイルスは形成されない。
【0137】
2つの部分からなるアダプター系を使用することにより、最適化ステップの数がさらに減少する。第1のアダプターポリペプチドと融合した改変ロタウイルスタンパク質が調製されたら、任意の既知の病原体由来の抗原を第1のアダプターポリペプチドと安定な複合体を形成する第2のアダプターポリペプチドと融合することができる。これにより、ロタウイルスの遺伝子操作についてあらゆる必要性が排除される。ほとんどの場合、病原体由来の抗原の発現および精製は、病原体由来の抗原における第2のアダプターポリペプチドの存在の影響を受けず、したがって、抗原の現存する発現および精製方法の改変は必要ではない。2つの部分からなるアダプター系を介して病原体由来の抗原と連結した改変ロタウイルスタンパク質を含むキメラ表面タンパク質を用いてロタウイルスDLPを再外被形成するための現存するプロトコールを使用して、キメラ表面タンパク質を含むロタウイルス粒子を調製することができる。次いで、これらのロタウイルス粒子を、病原体由来の抗原に対する免疫応答を惹起するための免疫原性組成物に含めることができる。
【0138】
ロタウイルス粒子が異種三量体ウイルス細胞侵入タンパク質を含有する三量体キメラ表面タンパク質を含む免疫原性組成物の調製にはワクチンプラットフォームが特に有用である。三量体ウイルス細胞侵入タンパク質は多くのウイルスの免疫優性表面抗原である。どちらもウイルス様粒子を形成するB型肝炎表面抗原およびヒトパピローマウイルスL1タンパク質、ならびにロゼットを形成するインフルエンザHAを例外として、免疫優性ウイルス表面抗原に基づくサブユニットワクチンは、一般には、臨床的に有効なワクチンをもたらすことはできない。これらのウイルス表面抗原をそれらのネイティブなコンフォメーションでロタウイルス粒子上に提示させることにより、表面抗原が元々由来するウイルスに対する防御免疫応答を惹起する免疫原性組成物を調製することができる。
【0139】
三量体ウイルス細胞侵入タンパク質の特定の例としては、インフルエンザHA、HIV gp140、エボラウイルス糖タンパク質、狂犬病ウイルス糖タンパク質、ヤギ関節炎脳炎ウイルスのEnvタンパク質、RSV Fタンパク質、gBおよび任意選択でヒト単純ヘルペスウイルスの他のタンパク質およびHCMVの他のタンパク質とのその複合体が挙げられる。
【0140】
ロタウイルス粒子
ロタウイルスは、定義済みの宿主域を有する種々の動物株が存在するので、特に有用である。例えば、いくつかの株はウシに特異的であり、他の株はサルに特異的である。大多数の動物株は、一般には、ヒトに感染する株とは抗原性が異なり、したがって、大部分はヒトでは疾患を引き起こすことができない。したがって、一般には、ヒトは、これらのロタウイルス株に対して、これらの動物株をヒトワクチン接種のための免疫原性組成物のベクターとして使用した際にキメラ表面タンパク質に対する免疫応答に干渉し得るいかなる既存の免疫も有さない。さらに、これらのウイルスはヒトでは自然に弱毒化される。
【0141】
さらに、2種の認可された生の弱毒化ロタウイルスワクチンが現在販売されている:Rotarix(商標)およびRotaTeq(商標)。Rotarix(商標)は、初代ミドリザル腎臓細胞(Primary Green Monkey Kidney cell)(AGMK)において26回継代し、Vero細胞において増殖させた、弱毒化されたヒトロタウイルス株RIX4414を含有する。RotaTeq(商標)は、5種のヒトロタウイルス(HRV)−同じくVero細胞において増殖させた、それぞれG1、G2、G3、G4、およびP1と称されるウシロタウイルス(BRV)リアソータント株の組合せを含有する。リアソータントは全て、ヒトVP7またはVP4タンパク質を発現するBRV株WC3(G6P7[5])ゲノムバックグラウンドで構成される。
【0142】
以前に認可されたアカゲザルロタウイルス(RRV)に基づくワクチンであるRotaShield(商標)は、RRV(G3P5B[3])および3種のRRV−HRVリアソータントロタウイルスからなる。各リアソータントはRRV由来の10種の遺伝子ならびにG血清型1、2、または4特異性(G1P5B[3]、G2P5B[3]、およびG4P5B[3])についてVP7タンパク質をコードする単一のHRV遺伝子を導く。
【0143】
さらに、ワクチンとして使用するための一価ウシ(NCDV RIT4237 G6P6)およびサル(RRV株MMU18006 G3P5B)ロタウイルス株の安全性は確立されている。
【0144】
これらのワクチン株の免疫化、臨床的な安全性および製造の経験を本発明のロタウイルス粒子に直接適用することができる。例えば、認可されたロタウイルスワクチンに含有されるロタウイルスのいずれか1つを、本発明のキメラ表面タンパク質を用いて再外被形成させるためのDLPを調製するために使用することができる。
【0145】
調製
免疫原性組成物に含まれる改変ロタウイルス粒子は、上記の方法のいずれかを使用して調製することができる。ネイティブなロタウイルス粒子を増殖させ、精製することができる。次いで、精製されたロタウイルス粒子を脱外被してDLPを調製することができ、次いでそれを、病原体由来の抗原を含むキメラ表面タンパク質を用いて再外被形成させることができる。
【0146】
一般には、第1のアダプターポリペプチドと融合した改変ロタウイルスタンパク質をDLPに付加してロタウイルス粒子を形成する。ロタウイルス表面タンパク質と一緒にネイティブなロタウイルス粒子の外層を形成するさらなるロタウイルスタンパク質の付加は任意選択である。次いで、ロタウイルス粒子を、第1のアダプターポリペプチドと安定な複合体を形成する第2のアダプターポリペプチドと融合した病原体由来の抗原と一緒にインキュベートして、キメラ表面タンパク質をもたらす。
【0147】
製剤
本発明の免疫原性組成物は、凍結乾燥したロタウイルス粒子を含む第1の容器および凍結乾燥したロタウイルス粒子の即時再懸濁用の溶液を含む第2の容器を含むキットの形態で提供することができる。凍結乾燥したロタウイルス粒子は、凍結乾燥の間ロタウイルス粒子を安定化するために、スクロース、デキストラン、ソルビトールおよびアミノ酸などの1種または複数の凍結乾燥保護剤(lyoprotectant)を含んでよい。
【0148】
あるいは、免疫原性組成物は、懸濁物中ロタウイルス粒子を含む単一の容器中で提供される。免疫原性組成物が注射用である場合には、シリンジ中で提供され得る。
【0149】
各溶液は、1種または複数の賦形剤を含有してよい。
【0150】
溶液は、一般には水に基づくものである。したがって、精製水が主要な賦形剤を形成してよい。例えば、所望の最終濃度をもたらすためのロタウイルス粒子の希釈は、通常、注射用水(WFI)を用いて実施する。
【0151】
一般には、溶液は緩衝液を含有する。したがって、さらなる賦形剤として、緩衝剤およびpH調節剤、例えばクエン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、および水酸化ナトリウムなどが挙げられる。免疫原性組成物を経口的に投与する場合には、胃を通過する間のウイルスの不活化を予防するために炭酸カルシウムなどの制酸薬を添加することができる。アジピン酸二ナトリウムなどの酸性度調節剤(acidity regulator)も、好ましくは制酸薬の代わりに含めることができる。
【0152】
いくつかの場合には、キサンタンなどの増粘剤がさらなる賦形剤として存在してよい。
【0153】
界面活性物質、具体的にはポリソルベート80などの非イオン性界面活性物質も存在してよい。
【0154】
他の賦形剤としては、スクロース、ソルビトール、無機塩、アミノ酸およびビタミンが挙げられる。
【0155】
組成物の質量オスモル濃度は、一般に、200mOsm/kgから400mOsm/kgの間、好ましくは240〜360mOsm/kgであり、280〜320mOsm/kgの範囲内に入ることがより好ましい。
【0156】
本発明の組成物のpHは、最適な安定性のためには、一般に、5.0から7.5の間、より一般には5.0から6.0の間である。
【0157】
本発明の組成物は、用量当たり<1EU(内毒素単位、標準的な尺度;1EUはFDA参照標準内毒素EC2「RSE」0.2ngと同等である)、好ましくは用量当たり<0.1EUを含有することが好ましい。
【0158】
本発明の組成物は、グルテンを含まないことが好ましい。さらに、本発明の組成物は、滅菌されていることが好ましい。
【0159】
投与
免疫原性組成物は、粘膜免疫応答を刺激するために使用することができる。したがって、免疫原性組成物は、経口的にまたは気管内に投与することができる。本発明の免疫原性組成物に含まれる改変ロタウイルス粒子の表面上に提示される病原体由来の抗原に応じて、筋肉内注射などの他の投与経路を選択することができる。
【0160】
一般
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」ならびに「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、Xから排他的になってもよく、追加的な何かを含み、例えばX+Yであってもよい。
【0161】
「実質的に」という単語により、「完全に」は排除されず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物はYを完全に含まなくてもよい。必要であれば、「実質的に」という単語は本発明の定義から省くことができる。
【0162】
数値xと関連した「約」という用語は、例えば、x±10%またはx+その値の2標準偏差を意味する。ある特定の実施形態では、「約」は、特定の技術分野の範囲内で許容される変動および許容差と理解される。文脈から明らかでない限り、本明細書における数値的な用語は全て、約によって修飾されているものと理解される。「抗体」という用語は、例えば抗原結合性断片(Fab)、単鎖可変性断片(scFv)などの抗体断片を包含する。抗体の「抗原結合性部分」(または「抗体部分」)という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の断片を包含する。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片により果たされ得ることが示されている。抗体の「抗原結合性部分」という用語の範囲内に包含される結合性断片の例としては、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結した2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)
2断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片[63];および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、組換え方法を使用して、VLおよびVH領域対が一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖にすることができる合成リンカーによってこれらをつなげることができる(単鎖Fv(scFv)として公知である;例えば、参考文献64および65を参照されたい。そのような単鎖抗体も抗体の「抗原結合性部分」という用語の範囲内に包含されるものとする。
【0163】
本明細書で使用される場合、「または(or)」とは、包含的であり、文脈により特に明示されない限り、「および/または(and/or)」と交換することができると理解される。
【0164】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」および「その(the)」とは、文脈により特に明示されない限り、単数と複数の両方を含むことが理解される。
【0165】
特に明記されていなければ、2つまたはそれ超の成分を混合するステップを含むプロセスでは、いかなる特定の混合の順序も必要ではない。したがって、成分を任意の順序で混合することができる。3つの成分が存在する場合には、2つの成分を互いと組み合わせることができ、次いで、その組合せを第3の成分と組み合わせることができる、などである。
【0166】
動物、特にヒトに投与するための材料を調製するための細胞の培養において動物(特にウシ)材料を使用する場合、当該材料は、伝染性海綿状脳症(TSE)が存在しない、特に牛海綿状脳症(BSE)が存在しない供給源から得るべきである。全体的に、動物、特にヒトに投与するための製品を調製する場合、動物由来材料が全く存在しない状態で細胞を培養することが好ましい。
【0167】
再集合または逆遺伝学の手順に細胞基材を使用する場合、それは、例えば、Ph Eur general5.2.3章にある通り、ヒトワクチンの作製における使用に関して認可されたものであることが好ましい[66]。
【0168】
ポリペプチド配列間の同一性は、MPSRCHプログラム(Oxford Molecular)において実行されるSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムにより、ギャップ開始ペナルティ(gap open penalty)=12およびギャップ伸長ペナルティ(gap extension penalty)=1のパラメータを用いたアフィンギャップ検索を使用して決定することが好ましい。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
異種タンパク質と連結したロタウイルス表面タンパク質を含むキメラ表面タンパク質を含む組成物であって、前記ロタウイルス表面タンパク質が、2つの部分からなるアダプター系によって前記異種タンパク質と非共有結合で連結しており、前記アダプター系の一方の部分が前記ロタウイルス表面タンパク質と連結し、前記アダプターの他方の部分が前記異種タンパク質と連結し、それにより、前記アダプター系の両部分が互いと安定な複合体を形成している、組成物。
(項目2)
前記アダプターの一方の部分が第1のアダプターポリペプチドによって形成され、前記アダプターの他方の部分が第2のアダプターポリペプチドによって形成され、前記第1のアダプターポリペプチドと前記第2のアダプターポリペプチドが互いと相互作用して安定な複合体を形成している、項目1に記載のキメラ表面タンパク質。
(項目3)
前記第1のアダプターポリペプチドが、任意選択でリンカー配列を介して前記ロタウイルス表面タンパク質と融合しており、前記第2のアダプターポリペプチドが、任意選択でリンカー配列を介して前記異種タンパク質と融合している、項目2に記載のキメラ表面タンパク質。
(項目4)
前記第1のアダプターポリペプチドおよび前記第2のアダプターポリペプチドが7アミノ酸反復配列を含む、項目2または3に記載のキメラ表面タンパク質。
(項目5)
項目1から4までのいずれか一項に記載のキメラ表面タンパク質を含むロタウイルス粒子。
(項目6)
医薬として使用するための、項目5に記載のロタウイルス粒子。
(項目7)
(a)ロタウイルス表面タンパク質、第1のアダプターポリペプチド、および任意選択でリンカー配列を含む改変ロタウイルス表面タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム、ならびに
(b)異種タンパク質、第2のアダプターポリペプチド、および任意選択でリンカー配列を含む融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム
を含む、核酸組成物であって、
任意選択で、前記オープンリーディングフレームはプロモーター配列と作動的に連結している、核酸組成物。
(項目8)
前記アダプターポリペプチドが7アミノ酸反復配列を含む、項目7に記載の核酸組成物。
(項目9)
(a)ロタウイルス表面タンパク質および第1のアダプターポリペプチドを含む改変ロタウイルス表面タンパク質をコードする第1の核酸、ならびに第2のアダプターポリペプチドをコードするヌクレオチド配列および多重クローニング部位を含む第2の核酸であって、異種タンパク質のコード領域を前記多重クローニング部位に挿入することにより、前記異種タンパク質および前記第2のアダプターポリペプチドを含む融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームがもたらされる、第2の核酸、あるいは
(b)ロタウイルス表面タンパク質および第1のアダプターポリペプチドを含む改変ロタウイルス表面タンパク質をコードする第1の核酸、ならびに異種タンパク質および第2のアダプターポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする第2の核酸
を含む、キットであって、
前記第1のアダプターポリペプチドと前記第2のアダプターポリペプチドとが安定な複合体を形成することができ、
任意選択で、前記キットは、前記ロタウイルス表面タンパク質と同じ種のロタウイルスに由来するかまたは異なるロタウイルス種に由来するロタウイルス粒子をさらに含む、キット。
(項目10)
項目5に記載のロタウイルス粒子を調製するための方法であって、前記方法は、外層を含むロタウイルス粒子を、培養培地中で成長させた細胞において増殖させるステップ、前記ロタウイルス粒子を前記培養培地から精製するステップ、前記外層を前記ロタウイルス粒子から取り除いてロタウイルス二層粒子(DLP)を得るステップ、および前記ロタウイルスDLPを項目1から4までのいずれか一項に記載のキメラ表面タンパク質を用いて再外被形成して項目5に記載のロタウイルス粒子をもたらすステップを含む、方法。
(項目11)
項目5に記載のロタウイルス粒子を調製するための方法であって、前記方法は、外層を含むロタウイルス粒子を、培養培地中で成長させた細胞において増殖させるステップ、前記ロタウイルス粒子を前記培養培地から精製するステップ、前記外層を前記ロタウイルス粒子から取り除いてロタウイルスDLPを得るステップ、ならびに、前記ロタウイルスDLPを、三量体形成性ロタウイルス表面タンパク質、7アミノ酸反復配列、および任意選択でリンカー配列を含む第1の融合タンパク質を用いて再外被形成するステップ、ならびに、再外被形成された前記ロタウイルスDLPを、三量体形成性異種タンパク質、7アミノ酸反復配列、および任意選択でリンカー配列を含む第2の融合タンパク質と混合して項目5に記載のロタウイルス粒子をもたらすステップを含む、方法。
(項目12)
項目5に記載のロタウイルス粒子を調製するための方法であって、前記方法は、三量体形成性ロタウイルス表面タンパク質、7アミノ酸反復配列、および任意選択でリンカー配列を含む第1の融合タンパク質を含むロタウイルス粒子を、三量体形成性異種タンパク質、7アミノ酸反復配列、および任意選択でリンカー配列を含む第2の融合タンパク質と混合するステップを含む、方法。
(項目13)
異種タンパク質の構造を決定するための方法であって、前記方法は、(i)ロタウイルスDLPを、異種タンパク質の全部または一部を含むキメラ表面タンパク質を用いて再外被形成して、前記キメラ表面タンパク質を提示しているロタウイルス粒子の懸濁物をもたらすステップ、(ii)前記懸濁物を凍結させるステップ、(iii)cryo−EMを使用して前記ロタウイルス粒子を画像化して複数の顕微鏡写真を得るステップ、および(iv)前記複数の顕微鏡写真を解析して前記キメラ表面タンパク質の3次元モデルを得るステップを含む、方法。
(項目14)
分子との複合体中の異種タンパク質の構造を決定するための方法であって、前記方法は、(i)ロタウイルスDLPを、異種タンパク質の全部または一部を含むキメラ表面タンパク質を用いて再外被形成して、前記キメラ表面タンパク質を提示しているロタウイルス粒子の懸濁物をもたらすステップ、(ii)前記懸濁物に、前記異種タンパク質に特異的に結合する分子を添加するステップであって、前記分子が前記キメラ表面タンパク質と複合体を形成するステップ、(iii)前記懸濁物を凍結させるステップ、(iv)cryo−EMを使用して前記ロタウイルス粒子を画像化して複数の顕微鏡写真を得るステップ、および(vi)前記複数の顕微鏡写真を解析して前記分子と複合体を形成した前記キメラ表面タンパク質の3次元モデルを得るステップを含む、方法。
(項目15)
前記分子が、タンパク質性分子、例えば(a)前記異種タンパク質に特異的に結合する抗体もしくはその断片、または(b)細胞表面受容体であって、ここで前記異種タンパク質がウイルス細胞侵入タンパク質であり、かつ前記タンパク質性分子に前記ウイルス細胞侵入タンパク質が結合する、細胞表面受容体である、項目14に記載の方法。