(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594311
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】発光装置用積層体及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
H05B 33/02 20060101AFI20191010BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20191010BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20191010BHJP
C03C 17/34 20060101ALI20191010BHJP
C03C 17/04 20060101ALI20191010BHJP
C03C 8/04 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
H05B33/02
H05B33/14 A
H05B33/10
C03C17/34 Z
C03C17/04 A
C03C8/04
【請求項の数】30
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-527929(P2016-527929)
(86)(22)【出願日】2014年7月16日
(65)【公表番号】特表2016-531387(P2016-531387A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(86)【国際出願番号】KR2014006436
(87)【国際公開番号】WO2015009054
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2017年5月11日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0084314
(32)【優先日】2013年7月17日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】ハン チン−ウ
(72)【発明者】
【氏名】リ ヨン−ソン
【審査官】
辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/017035(WO,A1)
【文献】
特開2006−193385(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/090695(WO,A1)
【文献】
特開2006−028010(JP,A)
【文献】
特表2013−518361(JP,A)
【文献】
特開2012−069920(JP,A)
【文献】
特開2009−040628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/02
C03C 8/04
C03C 17/04
C03C 17/34
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カリウムを含むガラス基材又はカリウムを含む無機層でコーティングされたガラス基材と、
前記ガラス基材上に1.8〜2.1の屈折率(RI)を有するガラスフリットから形成した内部光抽出層と、
を含み、
前記内部光抽出層が前記ガラス基材又は前記無機層との界面に界面空隙層を含んでおり、
前記界面空隙層は、前記ガラス基材又は無機層でコーティングされたガラス基材と接触した開放気孔を有する層である、
発光装置用積層体。
【請求項2】
前記ガラス基材がソーダ石灰ガラス基材である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記ガラス基材の表面又は最外領域がカリウムで処理されている、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記ガラス基材又は前記無機層の表面がカリウムを1〜15重量%の濃度で含む、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記界面空隙層が1〜5μmの厚さを有し、かつ、前記界面空隙層が40〜90%の空隙面積率を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記ガラスフリットが、当該ガラスフリットの合計重量基準で55〜84重量%のBi2O3、0〜20重量%のBaO、5〜20重量%のZnO、1〜7重量%のAl2O3、5〜15重量%のSiO2、5〜20重量%のB2O3、及び0.05〜3重量%のNa2Oを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
前記内部光抽出層が、前記ガラス基材又は前記無機層との界面に前記界面空隙層を含むガラスフリットの単層を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
前記内部光抽出層が、前記ガラス基材又は前記無機層との界面に前記界面空隙層を含む第1ガラスフリット層と、当該第1ガラスフリット層を覆いこれと接触する第2ガラスフリット層とを有する、請求項1〜6のいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
前記内部光抽出層がガラスフリットの単層又は二重層を含み、最外面に散乱要素を含んでいない、請求項1〜8のいずれかに記載の積層体。
【請求項10】
前記散乱要素が空隙又は粒子であり、前記内部光抽出層が最外面から少なくとも2μmの最外領域に前記散乱要素を含んでいない、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
前記内部光抽出層が6〜30μmの合計厚さを有する、請求項1〜10のいずれかに記載の積層体。
【請求項12】
前記内部光抽出層が1nm未満の最外表面粗さ(Ra)を有する、請求項1〜11のいずれかに記載の積層体。
【請求項13】
カリウムの濃度が、前記ガラス基材と前記内部光抽出層との界面から前記内部光抽出層の最外面へ向かって小さくなっている、請求項1〜12のいずれかに記載の積層体。
【請求項14】
カリウムが前記内部光抽出層の最外面で1重量%未満の濃度を有する、請求項1〜13のいずれかに記載の積層体。
【請求項15】
当該発光装置用積層体上に形成された透明な電極層をさらに含む、請求項1〜14のいずれかに記載の積層体。
【請求項16】
発光装置用積層体を作製する方法であって、
カリウムを含むガラス基材を用意すること、
ガラスフリットペーストを前記ガラス基材上に適用して第1ガラスフリット層を形成すること、
前記第1ガラスフリット層を乾燥させること、及び
乾燥した前記第1ガラスフリット層を焼結させて、1.8〜2.1の屈折率を有する内部光抽出層を形成すること、
を含み、
前記内部光抽出層が前記ガラス基材との界面に界面空隙層を含んでおり、
前記界面空隙層は、前記ガラス基材と接触した開放気孔を有する層である、
発光装置用積層体の作製方法。
【請求項17】
前記ガラスフリットペーストが散乱要素を含まない、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
発光装置用積層体を作製する方法であって、
ガラス基材を用意すること、
カリウムを含むガラスフリットペーストを前記ガラス基材上に適用すること、
前記ガラスフリットペーストでコーティングしたガラス基材を乾燥し焼結させて、カリウムを含むガラスフリットを含む無機層でコーティングしたガラス基材を形成すること、
ガラスフリットペーストを前記無機層でコーティングしたガラス基材上に適用して第1ガラスフリット層を形成すること、
前記第1ガラスフリット層を乾燥すること、及び
乾燥した前記第1ガラスフリット層を所定の第1温度で焼結させて、1.8〜2.1の屈折率を有する内部光抽出層を形成すること、
を含み、
前記内部光抽出層が前記無機層との界面に界面空隙層を含んでおり、
前記界面空隙層は、前記無機層と接触した開放気孔を有する層である、
発光装置用積層体の作製方法。
【請求項19】
前記無機層でコーティングしたガラス基材上に適用するガラスフリットペーストが散乱要素を含まない、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
焼結した前記第1ガラスフリット層上に別のガラスフリットペーストを適用して、第2ガラスフリット層を形成すること、
前記第2ガラスフリット層を乾燥すること、及び
乾燥した前記第2ガラスフリット層を所定の第2温度で焼結させて、1.8〜2.1の屈折率を有する内部光抽出層のための二重フリット層構造体を形成すること、
をさらに含む、請求項16〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記別のガラスフリットペーストが散乱要素を含まず、前記第2ガラスフリット層が突出部のない表面を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
カリウムの濃度が、前記ガラス基材又は前記無機層と前記内部光抽出層との界面から前記内部光抽出層の最外面に向かって小さくなる、請求項16〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記界面空隙層が1〜5μmの厚さを有し、かつ、前記界面空隙層が40〜90%の空隙面積率を有する、請求項16〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記第1又は第2ガラスフリット層の最外面が1重量%未満の濃度でカリウムを含む、請求項16〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記第1ガラスフリット層を500℃と590℃の間の第1焼結温度で焼結させる、請求項16〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記ガラス基材がソーダ石灰ガラス基材である、請求項16〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記ガラス基材の表面又は最外領域をカリウムで処理する、請求項16〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記ガラス基材の表面が1〜15重量%の濃度でカリウムを含む、請求項16〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記第1ガラスフリットが、当該ガラスフリットの総重量基準で、55〜84重量%のBi2O3、0〜20重量%のBaO、5〜20重量%のZnO、1〜7重量%のAl2O3、5〜15重量%のSiO2、5〜20重量%のB2O3、及び0.05〜3重量%のNa2Oを含む、請求項16〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記内部光抽出層が6〜30μmの合計厚さを有する、請求項16〜29のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置のための積層体及びその作製方法に関し、当該積層体は、ガラス基材と内部光抽出層との界面での光損失を最小限に抑えることによって外部光効率を増強するために光の散乱を誘起する界面空隙層を含む。本発明の発光装置用積層体は、光学装置、例えば有機発光ダイオード(OLED)、バックライト、照明産業などの分野に特に好適である。
【背景技術】
【0002】
光学装置、例えばOLEDは、発光構造に応じて、光がガラス基材へ向かって放射される底面発光型構造と、光がガラス基材と反対方向に放射される上面発光型構造とに分類することができる。底面発光型構造では、カソードがアルミニウムなどの金属薄膜を使用することによって反射体としての役割を果たし、そしてアノードが酸化インジウムスズ(ITO)などの透明な酸化物導電性フィルムを使用することによって、光がその中を通って放射される経路としての役割を果たす。上面発光型構造では、カソードは非常に薄い銀薄膜を含む多層薄膜として形成され、光はカソードを通して放射される。照明パネルの分野では、光が両面を通して放射される透明パネルを除いて、底面発光型構造が概ね使用され、上面発光型構造はまれにしか使用されない。
【0003】
OLEDなどの光学装置用に使用される積層体では、放射される光の約20%だけが外部に放射され、放射される光の約80%は失われる。これは、2つの理由のうちの1つ、すなわち、ガラス基材と透明な電極と有機層の屈折率の差による導波効果、及びガラス基材と空気の屈折率の差に起因する全反射効果のうちの1つによって引き起こされる。
【0004】
これは、内部有機層の屈折率は約1.7〜1.8であり、透明電極として一般に使用されるITOの屈折率は約1.9であり、これら2層の厚さは約200nm〜400nmであり(非常に薄い)、そして基材として使用されるガラスの屈折率は約1.5である条件のために、OLEDに平面導波路が自然に形成されるからである。導波効果によって失われる光の量は、放射される光の約45%と算出される。
【0005】
さらに、ガラス基材の屈折率は約1.5であり、外気の屈折率は1.0であるので、光がガラス基材から外側に放射される場合に臨界角又はそれ以上で入射する光は全反射を起こし、ガラス基材の内部に隔離される。隔離される光の量は、放射される光の約35%である。
【0006】
結果として、光学装置のために使用される積層体では、ガラス基材と透明電極と有機層との間の導波効果、及びガラス基材と空気との間での全反射効果のために、放射される光の約20%だけが外部に放射される。OLEDなどの光学装置の発光効率は上述したレベルと同程度に低いため、光学装置の外部光効率も低レベルにとどまる。
【0007】
したがって、光学装置の外部光効率を増強するために、光学装置の内部に隔離された光を抽出するための技術が必要とされている。光抽出に関する技術は、光学装置の効率、輝度、及び耐用年数を増大させる中核技術であるとして次第に大きな注目を集めている。外部光抽出技術及び内部光抽出技術が、光抽出技術の2つのタイプである。外部光抽出技術は、ガラス基材の内部に隔離された光を抽出することに関係し、一方、内部光抽出技術は、有機層とITOとの間に隔離された光を抽出することに関係する。
【0008】
外部光抽出技術では、微小レンズアレイ(MLA)フィルム、光散乱フィルムなどを光学装置の外側に接着させて光効率を増強する技術がある程度まで確立されている。しかしながら、内部光抽出技術はいまだ実用化レベルに達していない。内部光抽出技術は、光学装置の外部光効率を3倍又はそれ以上増強するために有効であると理論的には考えられている。しかしながら、内部光抽出層と透明電極層との間の界面特性は光学装置の耐用年数に有意に影響を及ぼし、そして内部光抽出層として使用される材料の物理的特性は光学装置の熱安定性などの特定の特性に有意に影響を及ぼすので、この技術は充分な光学的効果を提供することに加えて、電気的、機械的、及び化学的特性をあらゆるレベルで満たさなければならない。
【0009】
以前の研究によると、内部光散乱層、基材面の変形、屈折率調節層、フォトニック結晶、ナノ構造形成法などが、内部光を抽出するために有効であることが知られている。内部光抽出技術の主な目的は、導波効果により隔離された光を臨界角以下の入射角を形成するために散乱、回折、又は屈折させ、それによって光導波路を通過した光を抽出することである。
【0010】
特許文献1〜3は、異なる屈折率を有する2つの物質を使用することによって内部から光を抽出する方法を開示する。これらの特許文献は、内部光抽出層として、高い屈折率(第1屈折率)を有する基礎材料及びその基礎材料中に含まれる当該基礎材料の第1屈折率とは異なる第2屈折率を有する複数の散乱材料(例えば、気泡又は析出結晶)を使用する。ガラスフリットを基礎材料として使用し、そして気泡を散乱材料として使用する事例では、ガラスフリットを焼結させる際にガラスの内部の隙間によって、又はガラスが軟化する際にガラス層の表面に付着した有機材料などの材料の分解から生じる二酸化炭素(CO
2)などのガスを生成させることによって、球状気泡が形成される。また、これらの特許文献は、ガラス基材として旭硝子社製の高価なPD200基材を使用する。
【0011】
特許文献4は、複数の散乱材料として無機蛍光体粉末を含む内部光抽出層を開示する。ガラス基材としてアルカリ金属を含むガラス基材を使用する場合、アルカリ金属成分が拡散し、これは散乱層内部の散乱材料の特性に影響を及ぼす。特に、散乱材料が蛍光体である場合、蛍光体はアルカリ成分によって弱められるので、蛍光体はその特性を示すことができない。この理由から、特許文献4もアルカリ金属が拡散するのを防止するためにガラス基材として旭硝子社製の高価なPD200基材を使用する。
【0012】
特許文献5及び6は、複数の散乱材料の例として、気泡、析出結晶、基礎材料とは異なる粒子、及びガラス粉を開示し、そしてガラス基材としてソーダ石灰基材を使用する。
【0013】
上記特許文献に記載された方法は、ガラスフリットの焼結の際の隙間によって生じるか、若しくはガラス基材の表面に付着した材料を酸化することによって生じる気泡、又は追加の異なる材料(結晶、蛍光体など)を散乱材料として使用するので、共通の特徴を開示する。気泡を散乱材料として使用する場合、強い散乱効果を得ることができる。しかしながら、気泡は、ガラス内部の隙間によって生じる場合に上昇するというそれらの特性のために内部光抽出層の上部に自然に集まるので、気泡の密度又は分布を所望のレベルに調節することは困難である。また、気泡をガラスフリットの粒子の隙間によって生じさせる場合も、内部光抽出層の表面にひずみが生じ、電極の短絡を引き起こす。気泡をガラス層の表面に付着した材料を酸化することによって生じさせる場合、ガラス基材の表面を処理するためのさらなる工程が必要である。さらに、これらの特許文献におけるように、散乱粒子が内部光抽出層中にランダムに分布している場合、入射光の多重散乱の結果、光の損失が増大し、可視光の透過率減少の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】韓国特許出願公開第10−2010−0051631号公報
【特許文献2】韓国特許出願公開第10−2010−0101076号公報
【特許文献3】韓国特許出願公開第10−2011−0116142号公報
【特許文献4】韓国特許出願公開第10−2010−0138939号公報
【特許文献5】韓国特許出願公開第10−2011−0113177号公報
【特許文献6】韓国特許出願公開第10−2011−0108373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述の理由から、ガス、特に空気を散乱材料として使用すると、さらなる散乱材料の添加は必要なく、それによって強力な散乱効果を得ることができる簡単な作製方法が得られる。しかしながら、ガスを散乱材料として使用する場合、内部光抽出層とガラス基材との界面に(内部光抽出層の上部にでなく)ガスを集中させる方法が依然として必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、ガラス基材と内部光抽出層との界面に界面空隙層を含む発光装置用積層体を提供するものであり、この積層体では、界面空隙層が(好ましくは単独で)界面空隙層の表面での光の散乱を誘起して、光を外部へ効果的に抽出する。そうすることによって、好ましくは可視光の全波長範囲(380nm〜780nm)内で均一な曇り度を有する、発光装置の光効率を有意に改善することができる。
【0017】
本発明はまた、散乱要素としてさらなる材料を添加する必要がなく、そして光を散乱させる要素が全内部光抽出層上よりもむしろガラス基材と内部光抽出層との界面に形成される、発光装置用積層体も提供する。このように、ひずみ又は気泡が内部光抽出層の上面に形成されるのが防止され、内部光抽出層が平滑な上面を有することが可能になる。
【0018】
本発明はまた、簡単であるため有効かつ経済的な、発光装置用積層体を作製する方法であって、発光装置用積層体の界面空隙層の厚さ及び空隙面積率を効果的に調節できる方法も提供する。
【0019】
本発明はまた、透明な電極がその上に形成され、好ましくは内部抽出層と接触している発光装置用積層体も提供する。
【0020】
本発明の1つの実施形態によれば、カリウムを含むか又はカリウムを含む無機層でコーティングされたガラス基材と、前記ガラス基材上にガラスフリットから形成された、1.8〜2.1の屈折率を有しガラス基材との界面に界面空隙層を含む内部光抽出層とを含む、発光装置用積層体が開示される。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、発光装置用積層体を作製するための方法であって、カリウムを含むか又はカリウムを含む無機層でコーティングされたガラス基材を用意する工程と、ガラスフリットペーストを前記ガラス基材上に適用してガラスフリット層を形成する工程と、前記ガラスフリット層を乾燥する工程と、乾燥した前記ガラスフリット層を焼結させて1.8〜2.1の屈折率を有する内部光抽出層を形成する工程とを含む方法が開示され、形成された内部光抽出層はガラス基材との界面に界面空隙層を含んでいる。ここでは、前記ガラスフリット層を好ましくは500℃と590℃の間の温度で焼結させる。前記界面空隙層を形成するために好適な焼結温度を適用することができ、これは内部光抽出層のフリット組成及び最終的な厚さに依存することができる。
【0022】
前記ガラス基材中のカリウムは前記ガラスフリット層の焼結の間にガラスフリット層の下方部分へ向かって拡散し、それによってガラスフリット層の下方部分の緻密化温度が上昇する。
【0023】
本発明の別の実施形態によれば、発光装置用積層体を作製する方法は、焼結した前記ガラスフリット層(第1ガラスフリット層)上に別のガラスフリット層を適用して第2ガラスフリット層を形成する工程と、前記第2ガラスフリット層を乾燥する工程と、乾燥した前記第2ガラスフリット層を焼結させて1.8〜2.1の屈折率を有する内部光抽出層を形成する工程とをさらに含んでもよい。例えば米国特許第6905991号明細書、同第5780371号明細書、同第5776884号明細書で開示されるような、充分なカリウムを有する任意の好適なカリウム含有ソーダ石灰基材をガラス基材として使用することができる。上記参考文献のうち、3〜7.5重量%のK
2Oを含むガラス組成物が米国特許第6905991号明細書の実施形態1〜12(11及び12欄を参照)に記載されており、カリウムの拡散に対する悪影響を防止するためにその組成物が含む他のアルカリ金属は10%以下が好ましい。
【0024】
さらに、光学装置のために一般的に使用され、カリウムを含まず又はわずかな量(不純物として、例えば1重量%未満)しか含まないガラス基材を、カリウムでの処理(例えば、基材をフリットの焼結前にカリウム源と接触させる)後に使用してもよい。その後、前記ガラスの表面又は最外領域は充分なカリウムをより多く含むようになる。焼結後の前記ガラス基材表面でのカリウム濃度は、1〜15重量%でよく、好ましくは5重量%未満でよい。
【0025】
さらに、光学装置のために一般的に使用されるガラス基材を、カリウムを含むガラス基材の代わりに、カリウム層を含む無機層でコーティングした後に使用してもよい。当該無機層は、例えば、カリウムを含む低屈折率ガラスフリットから形成できる。この場合、低屈折率ガラスフリットの屈折率は、好ましくはガラス基材のそれと類似している。
【0026】
さらに、焼結後の内部光抽出層のカリウム濃度は、ガラス基材と内部光抽出層との界面よりも内部光抽出層の最外面の方向に向かってより小さくなってもよい。前記内部光抽出層の最外面でのカリウム濃度は、好ましくは1重量%未満である。
【0027】
界面空隙層を有する内部抽出層のために使用するガラスフリットは、ガラスフリットの総重量基準で、55〜84重量%のBi
2O
3、0〜20重量%のBaO、5〜20重量%のZnO、1〜7重量%のAl
2O
3、5〜15重量%のSiO
2、5〜20重量%のB
2O
3、及び0.05〜3重量%のNa
2Oを含むことができる。
【0028】
内部光抽出層はガラスフリットの単層からなっていてもよく、ガラス基材はガラスフリットペーストの単一コーティングを有する。この単一ガラスフリット層は、好ましくは平滑な表面を有し、界面空隙層の表面全体においてさえも、表面に突出した散乱要素がない。
【0029】
さらに、内部光抽出層は、ガラスフリットペーストの二重コーティングをコーティングすることから形成されるガラスフリットの二重層からなっていてもよい。コーティングの各々のためのガラスフリットペーストは、ガラスフリット層間の界面が見えないように同じ組成を有していてもよいし、又はガラスフリット層間の界面が見えるように異なる組成を有していてもよい。ガラスフリットペーストの第2コーティングから形成される第2ガラスフリット層は、好ましくは平滑な表面を有し、第1ガラスフリット層との界面で空隙層を形成せず、そして散乱要素がない。
【0030】
内部光抽出層は、単層であろうと二重層であろうと、6〜30μm、好ましくは10μm〜25μmの合計厚さを有し得る。内部光抽出層は550nmで、又は可視光の全範囲内でも、1.8〜2.1、好ましくは少なくとも1.9の屈折率(RI)を有する。前記内部光抽出層の表面粗さ(Ra)は好ましくは1nm未満である。
【0031】
内部光抽出層は、ガラス基材又は無機層との界面に界面空隙層を含むことができる。界面空隙層は1〜5μmの厚さを有することができ、そして界面空隙層は40〜90%の空隙面積率を有することができる。界面空隙層の厚さ及び空隙面積率は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定される。空隙面積率は、空隙面積を界面空隙層の総面積で割ることによって得ることができる。
【0032】
本発明の発光装置用積層体では、ソーダ石灰ガラス基材などの広く使用されるガラス基材を基材として使用できる。さらに、内部光抽出層は、アルカリ金属の拡散を防止するための基材のさらなる表面処理工程なしで、簡単かつ経済的な方法を使用して、又は散乱要素を添加して作製できる。
【0033】
さらに、本発明の発光装置用積層体では、散乱材料である空隙が基材と内部光抽出層との界面に集中するので、内部光抽出層は湾曲のない平滑面を有することができる。このように、内部光抽出層の表面のさらなる処理は必要とされず、電極における短絡などの問題もない。また、界面空隙層中の空隙の形状又は空隙面積率は、焼結温度及び時間によって制御できる。
【0034】
さらに、本発明の発光装置用積層体を使用して、界面で失われる光を外部に効果的に抽出できる。この関連で言えば、発光装置用の気泡を散乱要素として使用し同じ拡散性能を有する従来の散乱型積層体と比較して、吸光度などの他の光学特性を発光装置用の従来の散乱型積層体と同様の又はよりすぐれたレベルで維持しつつ、可視光の総透過率及び垂直方向に対する光透過率は遙かに優れ、且つ可視光波長範囲での曇り度は均一である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の実施形態による内部光抽出層を含む発光装置用積層体を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態による内部光抽出層を含む発光装置用積層体を作製する方法を示すフローチャートである。
【
図3】カリウムを含むソーダ石灰ガラス基材及びカリウムを含まないソーダ石灰ガラス基材を使用した場合の、焼結温度を変えて焼結させたガラスフリット層の断面を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図4】実施例1で説明するようにして作製した内部光抽出層の断面及び底面を示すSEM写真である。
【
図5】実施例1で説明するようにして作製した内部光抽出層の表面を示す原子間力顕微鏡(AFM)写真である。
【
図6】本発明の実施形態による発光装置用積層体の総透過率に対する曇り度を示すグラフである。
【
図7】本発明の実施形態による発光装置用積層体の曇り度を示すグラフである。
【
図8】本発明の実施形態による発光装置用積層体の吸光度を示すグラフである。
【
図9】本発明の実施形態による発光装置用積層体から外部へ放射される光の強度分布を視野角に関して示すグラフである。
【
図10】ガラス基材をイオン交換法によってカリウムイオン処理しそして内部光抽出層を本発明の方法に従ってガラス基材上に形成した後のガラス基材のカリウムイオン濃度分布における変化を示すグラフとSEM写真である。
【
図11】ガラス基材上に大量のカリウムを含む低屈折率ガラスフリットを形成する方法によって作製された発光装置用積層体を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<用語>
以下、本明細書中で使用する用語を説明する。
【0037】
「約」という語を数値と一緒に用いる場合、「約」は、対応する数値の有効数字内の誤差範囲を含むすべての値を意味すると解釈される。
【0038】
「積層体」という語は、2つ又はそれ以上の層が積み重ねられ、そして電子装置で独立して使用することができるか、又は別の層(例えば透明電極など)がその積層体上にさらに積み重ねられた状態で使用することができる構造体を意味する。
【0039】
「ガラスフリット」という語は、内部光抽出層を形成するための原料であり、そしてガラス粉末を意味し、又は溶媒、バインダーなどがガラス粉末と混合されているペースト状態を意味することができる。本書中で使用される「フリット」という語は、ガラスフリットを意味すると理解されるべきである。
【0040】
「ガラスフリット層」という語は、ガラスフリットを含むペーストが基材上に適用されている層を意味する。
【0041】
「内部光抽出層」という語は、ガラスフリット層を焼結(ガラスフリットが融解)後に形成される層を意味する。内部光抽出層がOLEDなどの光学装置のために使用される場合、内部光抽出層は基材と透明電極との間に形成され、発光層(有機層)から放射される光が基材と透明電極層と有機層の屈折率の差のために失われるのを防止し、そして基材と空気の屈折率差のために内部に隔離された光を基材の外部へ効果的に抽出する。ガラスフリットに加えて、添加剤などの別の材料を、(少量の)散乱粒子さえも含めて、内部光抽出層中にさらに含有させてもよい。
【0042】
「界面空隙層」という語は、ガラス基材又は無機層でコーティングされたガラス基材と接触した空隙(開放気孔)に満ちた層である。しかしながら、界面空隙層はガラス基材又はコーティングされたガラス基材から外部衝撃、熱、及び物理的外力によって容易に分離されず、そして光の散乱を誘起する。
図1は、本発明の実施形態による内部光抽出層を含む発光装置用積層体を示す概略図である。「ILE」は、その反射率が1.8〜2.1である内部光抽出層を表し、「G」はガラス基材を表し、そして「V」はその反射率が約1である空隙を表している。
【0043】
「発光装置用積層体」という語は、内部光抽出層が基材上に積み重ねられている構造体を意味する。
【0044】
<基材>
本発明で使用する基材はカリウムを含むか、又はカリウムを含む無機層でコーティングされている。基材は好ましくは、発光装置の支持体としての役割を果たし、150μmから数ミリメートルまでの厚さを有するガラス基材でよい。ガラス基材の厚さは、好ましくは0.3〜2.0mm、又はさらには0.5〜1mmである。本発明においてガラス基材(又はコーティングされたガラス基材)は、ガラス基材の曇り度に関係なく、ソーダ石灰、ホウケイ酸塩など、又はガラスセラミックタイプの基材でよい。
【0045】
ガラス基材の可視光の透過率は、好ましくは少なくとも約70%である。高温焼結工程に耐えることができる任意の基材を本発明で使用することができる。
【0046】
ソーダ石灰ガラス基材をガラス基材として使用してもよく、カリウムを含まないか若しくは不充分な量のカリウムしか含まない(例えば、カリウムが単に不純物として存在する)ガラス基材にカリウムを注入してもよく、又はガラス基材上にコーティングしてもよい。限定されることはないが、スピンコーティング、ディッピング、自己組織化単層(SAM)処理、イオン交換法、ゾル−ゲルコーティングなどをはじめとする、任意の公知の処理方法を使用することができる。
【0047】
<ガラスフリット>
本発明のガラスフリットは、内部光抽出層を形成するために好適な原料であり、粉末であっても又はペーストであってもよい。高い屈折率を獲得するのが容易であるために、ガラスフリットは内部光抽出層を形成するのに非常に有用な原料である。したがって、本書中に記載されるガラスフリットを、ガラス材料を含有するすべての内部光抽出層に適用することができる。ガラスフリットを焼結させることによって内部光抽出層を形成する場合、ガラス材料の組成は、内部光抽出層中に含まれるガラス材料のそれと同じである。したがって、ガラスフリット組成物の以下の特徴は、内部光抽出層中に含まれるガラス材料の組成物の特徴と一致する。
【0048】
内部光抽出層のためのガラスフリットは1.8〜2.1、好ましくは1.85〜2.0の屈折率を有する。屈折率の範囲は、一般的な光学装置、特にOLED装置の光透過性電極層及び有機層の各々の屈折率に相当する値であり、屈折率の差の光抽出効率に対する影響を最小限に抑えるためのものである。
【0049】
熱膨張係数は70〜90×10
-7/℃でよい。熱膨張係数は、ガラス基材(これは内部光抽出層の形成の基礎となる光透過性基材である)がフリットを焼結させる工程で変形又は劣化するのを防止するための範囲として設定される。
【0050】
本発明のガラスフリットは、ガラスフリットの総重量基準で、55〜84重量%のBi
2O
3、0〜20重量%のBaO、好ましくは5〜20重量%のZnO、1〜7重量%のAl
2O
3、5〜15重量%のSiO
2、5〜20重量%のB
2O
3、及び0.05〜3重量%のNa
2Oを含む。
【0051】
Bi
2O
3は、ガラスフリットの緻密化温度を低下させ、そして屈折率を増加させるための必須成分であり、BaOは屈折率を増加させるためにBi
2O
3と組み合わせることができる補助成分である。ガラスフリット中のBi
2O
3含有量は、好ましくは60〜80重量%、さらに好ましくは62〜78重量%、そして最も好ましくは65〜75重量%でよい。BaO含有量は、好ましくは0〜10重量%、さらに好ましくは0〜5重量%、そして最も好ましくは0〜2重量%でよい。一部の実施形態では、BaO含有量はゼロ(0)でよい。Bi
2O
3含有量が上記範囲の下限値よりも少ない場合、低下した屈折率、そしてさらには焼結温度の上昇のために、1.8〜2.1の屈折率範囲を得ることが困難であり、好ましくない。Bi
2O
3含有量が上記範囲の上限値よりも多い場合、ガラスフリットによる青色領域の光の吸収がより強くなり、焼結の際の熱安定性が低下して、内部光抽出層の表面の劣化を引き起こす。BaOはガラスフリットの緻密化温度を低下させる能力が低いので、BaOはBi
2O
3の一部を置換してもよい。しかしながら、BaOの含有量が上記範囲の上限値よりも多い場合、焼結温度は好適な範囲を超える。
【0052】
ZnOは、ガラスフリットの緻密化温度を低下させるための成分である。ガラスフリット中のZnO含有量は、5〜20重量%、好ましくは5〜15重量%、そしてさらに好ましくは5〜13重量%でよい。ZnOの含有量が上記範囲の上限値よりも多い場合、ガラスフリットの相が不安定になり、耐酸性が弱くなり、そしてガラスフリットによる緑色領域の光の吸収が強くなるので、好ましくない。
【0053】
Al
2O
3はガラスフリットの相を安定化させるための成分である。ガラスフリット中のAl
2O
3含有量は、1〜7重量%、好ましくは1.5〜5重量%、そしてさらに好ましくは2〜4重量%でよい。Al
2O
3含有量が上記範囲の下限値よりも少ない場合、ガラスフリットの相が不安定になり、そして耐薬品性が弱くなるので、好ましくない。Al
2O
3含有量が上記範囲の上限値よりも多い場合、ガラスフリットの屈折率が低くなり、そして焼結温度が上昇するので、好ましくない。
【0054】
SiO
2はガラスフリットの相を安定化させるための成分である。ガラスフリット中のSiO
2含有量は、5〜15重量%、好ましくは6〜14重量%、そしてさらに好ましくは7〜12重量%でよい。SiO
2含有量が上記範囲の下限値よりも少ない場合、ガラスフリットの相が不安定になるので好ましくない。SiO
2含有量が上記範囲の上限値よりも多い場合、ガラスフリットの屈折率が低くなり、焼結温度が上昇するので、好ましくない。
【0055】
B
2O
3は、熱膨張係数を低下させ、ガラスフリットの相を安定化させ、そして緻密化温度を低下させるための成分である。ガラスフリット中のB
2O
3含有量は、5〜20重量%、好ましくは6〜15重量%、そしてさらに好ましくは7〜12重量%でよい。B
2O
3含有量が上記範囲の下限値よりも少ない場合、ガラスフリットの相が不安定になるので好ましくない。B
2O
3含有量が上記範囲の上限値よりも多い場合、内部光抽出層の耐水性が弱くなるので、好ましくない。
【0056】
Na
2Oはガラスフリットの緻密化温度を低下させるために添加される成分である。ガラスフリット中のNa
2O含有量は、0.05〜3重量%、好ましくは0.1〜2重量%、そしてさらに好ましくは0.5〜1.5重量%でよい。Na
2O含有量が上記範囲の下限値よりも少ない場合、ガラスフリットの焼結温度が上昇するので好ましくない。Na
2O含有量が上記範囲の上限値よりも多い場合、耐薬品性が弱くなるので好ましくない。
【0057】
ガラスフリットは、不可避の少量のTiO
2又はZrO
2(例えば、0.05重量%以下)を含んでもよいが、それより多く含んではならない。
【0058】
さらに、ガラスフリットは、Nb、P、Pb、Ta、Y、Sn、Gd、La、V、及びMoのいずれも含有しなくてよい。
【0059】
ここで、本発明の実施形態によるガラスフリットの組成は、Fe、V、Cr、Mn、Ni、Co、Cu、Pd、Ag、Au、Pt、Cdなどのいずれの遷移金属も含まないが、場合によって少量のCeを含んでもよい。遷移金属は、Bi
2O
3又は同種のものの高温還元を抑制し、それによって焼結工程の間のフィルムの黄変を防止する。したがって、遷移元素は一般にガラスフリット中にBi
2O
3とともに添加される。しかしながら、すべての遷移金属は特定の光波長範囲内で強力な吸収特性を示し、そして特に、内部光抽出層における散乱のために光経路が増加する場合、遷移元素による光吸収が光の致命的な損失の原因となりかねない。この点で、遷移元素のガラスフリット組成への添加を回避することが不可欠である。しかしながら、ランタノイド元素であるCeの酸化物は光吸収特性が紺青色領域に限定されるので、Ce酸化物は、蛍光体青色光源を有するOLED照明装置に対する光学的影響が弱い。さらに、Ce酸化物は、内部光抽出層の作製の際に有機成分を焼き尽くす工程における完全燃焼の助けとなる。したがって、CeO
2を0.3重量%以下、好ましくは0.1重量%の量で添加してもよい。一方、本発明の特定の実施形態では、CeO
2を添加しなくてもよい。
【0060】
<発光装置用積層体の作製>
図2は、本発明の実施形態による発光装置用積層体を作製するための方法を説明するフローチャートである。「ILE」、「V」及び「G」の意味は、
図1で示されるものと同じである。「F」は焼結前のガラスフリットを表し、「EC」はエチルセルロースを表している。
【0061】
まず、カリウムを含むか若しくはカリウムで表面処理された基材、又はカリウムを含む無機層でコーティングされた基材を用意する(工程(a))。基材に必要な屈折率などの基本的な物理的性質は上述のとおりである。ガラスフリットを含むペースト(好ましくは散乱粒子を含まない)を前記基材上に適用し(工程(b))、次いで乾燥する(工程(c))。ペースト中に含まれるガラスフリットの組成は上述のとおりであり、ペーストはガラスフリットを70〜80重量%の量で含み、ペーストの残りの組成は、バインダー、溶媒などを含む。限定されるものではないが、スクリーン印刷、スリットダイコーティング、バーコーティング、ロールコーティングなどをはじめとする、当該分野で一般的に知られている任意のコーティング法を使用してペーストを適用することができる。
【0062】
乾燥したガラスフリットを500〜590℃の温度で焼結させる(工程(d))。基材中に含まれるカリウムは焼結工程の間にガラスフリット層中に拡散する。
【0063】
ごく少量のカリウムの注入でも、界面空隙層を作ることができるようにガラスフリットの熱的特性を変更することができる(工程(e))。さらに、カリウムの拡散速度は遅いので、界面空隙層の厚さ及び空隙面積率を効果的に制御することができる。
【0064】
図3は、ソーダ石灰基材がカリウムを含むかどうかによって界面空隙層が形成されるかどうかを示しており、また内部光抽出層の断面における変化も示している。カリウムを含まないガラス基材を使用する場合(A列)、界面空隙層は全温度範囲内で形成されず、そして界面光抽出層が545℃で形成される。一方、カリウムを含む基材を使用する場合(B列)、界面空隙層を含む内部光抽出層が545℃で形成され、次いで焼結がガラスフリットの界面でゆっくりと行われるので、界面空隙層を含まない内部光抽出層が595℃で形成される。したがって、カリウムを含むガラス基材上にコーティングされたガラスフリット層の焼結温度を制御することによって界面空隙層を含む内部光抽出層を作製できること、そしてさらに、界面空隙層の厚さ及び空隙面積密度を調節することが可能であることがわかる。
【0065】
基材がカリウムを含むかどうかに関係なく、焼結工程の間に少量の空隙が内部光抽出層の内部で形成されることがある。これはガラスフリット層焼結工程において不可避であり、したがって空隙は、発光装置用積層体の総透過率、吸光度、及び曇り度に影響を及ぼさないように形成できることが好ましい。
【0066】
ガラス基材又は無機層の表面のカリウム濃度は、好ましくは1〜15重量%でよい。カリウムの濃度が15重量%の上限値よりも高い場合、透過率が大幅に減少しかねない。また、界面空隙層の厚さは、好ましくは1〜5μmの範囲内でよい。界面空隙層の厚さが下限値よりも薄い場合、散乱効果は最小となり、そして界面空隙層の厚さが上限値よりも厚い場合、多重散乱が起こり、これによって透過率が減少し、それにより光の損失が起こる。界面空隙層の空隙面積率は、焼結時間及び温度を制御することによって調節することができ、そして光を効率よく外部へ抽出することができるように、好ましくは40〜95%、好ましくは70〜95%でよい。さらに、空隙は基材又は無機層と内部光抽出層との界面だけに形成されるので、内部光抽出層の表面は、気泡を散乱要素として使用する内部光抽出層と異なって、最小量の気泡を有する。したがって、内部光抽出層の表面粗さを好ましくは1nm未満であるように形成することができる。また、ガラスフリット層の表面粗さは、界面空隙層の構造によって影響を受けないために充分な厚さを有する必要があり、そのために多重ガラスフリット層を形成してもよい。ガラスフリット層を単層として形成するかそれとも2以上の多層として形成するかに関係なく、内部光抽出層の合計厚さは6〜30μm、好ましくは10〜20μmの範囲内である。内部光抽出層の厚さが6μm未満である場合、内部光抽出層の表面粗さが1nm以上になりかねず、又は表面で気泡が生じる危険性が増大する。内部光抽出層の厚さが30μmより大きい場合、光抽出効率が減少しかねない。
【0067】
本発明の発光装置用積層体は、(界面で失われる)光を効果的に外部へ抽出することができ、吸光度などの光学特性を、気泡を散乱要素として使用する発光装置用の従来の散乱型積層体と同等又はより良好なレベルで維持することができ、同じ拡散性能を有する発光装置用の従来の散乱型積層体よりも全光透過率及び垂直方向での光透過率がはるかに良好であることができ、そして可視光波長範囲内で従来の散乱型積層体よりもはるかに均一な曇り度を有することができる。本発明の発光装置用積層体は、OLEDなどの光学装置に適用されるように、透明電極層が内部光抽出層上にさらに積み重ねられた状態で使用することができる。透明電極層としては、酸化インジウムスズ(ITO)、透明な導電性酸化物(TOC)、グラフェンなどを使用できる。スパッタリングなどの透明電極層の通常の被着方法を使用することができる。
【0068】
もちろん、酸化ケイ素(SiO
2)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、酸化チタン(TiO
2)、酸化スズ(SnO
2)、酸窒化ケイ素(SiON)などからなり、好ましくは1.8超のRI及び100nm未満の厚さを有するバリヤ層を、内部光抽出層と電極との間に加えてもよい。その一方、厚さが5〜50nmであるバリヤ層を内部光抽出層上に被着させる工程を加えることによって、化学エッチング工程の際に内部光抽出層を保護し、そして光抽出効果を増大させることが可能である。バリヤ層は、例えばSiO
2及びSi
3N
4層が代替的に積み重ねられた単層又は多層として形成してもよい。
【実施例】
【0069】
詳細な実施例は下記のとおりである。しかしながら、これらの実施例は、本発明のより良好な理解のために役に立つだけのものであって、本発明の範囲を多少なりとも限定するものと解釈されるべきではない。
【0070】
実施例1:カリウム含有ガラス基材を有する発光装置用積層体の作製
米国特許第6905991号明細書の実施形態10で説明されているように、0.7mmの厚さを有し、5wt%のNa
2O及び6wt%のK
2Oを含むガラス基材を用意する。ガラスフリットの総重量基準で70wt%のBi
2O
3、3wt%のAl
2O
3、10wt%のZnO、7wt%のSiO
2、9wt%のB
2O
3、及び1wt%のNa
2Oを含むガラスフリットを、ペーストの合計量基準で75wt%含み、バインダーとしてのエチルセルロースを3wt%、及び溶媒を22wt%含むペーストを作製する。屈折率は550nmで1.91である。
【0071】
ガラス基材を洗浄し、次いでガラスフリットを含むペーストをスクリーン印刷法によってガラス基材上に塗布する。コーティングしたペーストを130℃の温度のオーブン中にて約20分間乾燥することによって溶媒を蒸発させる。その後、乾燥したペーストを430℃の温度で約20分間放置することによって、乾燥ペースト中に含まれるエチルセルロースを除去する。
【0072】
作製したガラスフリット層を540℃の温度で約10分間焼結させる。エチルセルロースを除去するための加熱とガラスフリット層の焼結とは、ロールハース炉(RHF)を用いた連続処理によって行ってもよいし、又は別々の炉を使用することによって行ってもよい。
【0073】
図4は、実施例1で説明したようにして作製した内部光抽出層を示すSEM写真である。左の写真(
図4(a))は、内部光抽出層の撮影された断面を示し、右の写真(
図4(b))は、下向き方向で撮影した界面空隙層を示している。ガラスフリットの粒子が焼結されずに残り、それによって粒子間に空隙が生じているのが見られる。これらの粒子の大きさは約1μm〜5μmである。
【0074】
図5は、実施例1で説明したようにして作製した内部光抽出層の表面を示すAFM写真である。表面粗さ(Ra)の平均値が0.25nmであり、1nmよりも小さいことがわかる。
【0075】
実施例2:カリウム含有ガラス基材を有する発光装置用積層体の作製
焼結温度を550℃に設定すること以外は実施例1と同じ方法で、界面空隙層を含む発光装置用積層体を作製する。
【0076】
実施例3:カリウム含有ガラス基材を有する発光装置用積層体の作製
焼結温度を560℃に設定すること以外は実施例1と同じ方法で、界面空隙層を含む発光装置用積層体を作製する。
【0077】
実施例4:カリウムで処理したガラス基材を有する発光装置用積層体の作製
カリウムイオンを含む溶液を厚さ0.7mmのフロート板ガラス又は一般的なソーダ石灰ガラス基材の表面に湿潤法を用いてコーティングする。コーティングしたガラス基材を400℃以上の高温で熱処理して、ナトリウムイオンとカリウムイオンとのイオン交換を起こさせる。イオン交換後、基材の表面残留応力は450MPaであり、応力深さは15μmである。残りの処理を実施例1と同じ方法で行い、それによって界面空隙層を含む発光装置用積層体を作製する。
【0078】
実施例5:カリウムを含む無機層でコーティングしたガラス基材を有する発光装置用積層体の作製
カリウムを含む低屈折率(550nmでn=1.54)のガラスフリットペースト(Phoenix Materials社により供給されるPA−FD4115C(登録商標))を、カリウムを含まないか若しくは不純物量としてのカリウムを含む厚さ0.7mmのフロート板ガラス又は一般的なソーダ石灰ガラス基材の表面に、スクリーン印刷法を用いてコーティングする。低屈折率ガラスフリットペーストを乾燥及び焼結させた後、約6〜12μmの厚さを有する無機層が形成される。実施例1と同じ組成及び処理条件でガラスフリット層を形成後、残りの処理を実施例1のとおりに行い、それによって界面空隙層を含む発光装置用積層体を作製する。
【0079】
実施例6:カリウム含有ガラス基材を有する発光装置用積層体の作製
ガラス基材中に含まれるNa
2OとK
2Oの濃度以外は実施例1と同じ方法で、界面空隙層を含む発光装置用積層体を作製する。Na
2Oの濃度は5重量%であり、K
2Oの濃度は6重量%である。米国特許第6905991号明細書の実施形態(11欄及び12欄のANNEXにおける組成物10を参照)で説明されているように、ガラス基材を用意する。
【0080】
実施例7:二重層内部光抽出層を含む発光装置用積層体の作製
界面空隙層を含むガラス層(第1ガラスフリット層)を実施例1で説明したのと同じ組成及び処理条件で形成した後、約1〜5μmの厚さを有する第2ガラスフリット層を第1ガラスフリット層上に形成して、内部光抽出層の最外面の平坦性を確保し、最外面の平坦性が界面空隙層によって低下することを防止する。第2ガラスフリットペーストの組成は、実施例1で説明したガラスフリットペースト(第1ガラスフリットペースト)のそれと同じである。第2ガラスフリット層は、スクリーン印刷を使用して第1ガラスフリット層上に第2ガラスフリットペーストをコーティングし、そして残りの処理を実施例1と同じ方法で行うことによって形成する。第1ガラスフリット層及び第2ガラスフリット層の合計厚さは25μmであり、そして内部光抽出層(第1ガラスフリット層+第2ガラスフリット層)の最外面の平坦性はΔRa<1nmの条件を満たす。
【0081】
比較例1:発光装置用積層体の作製
表面をカリウムイオンで処理しないこと以外は、実施例4と同じ方法で発光装置用積層体を作製する。
【0082】
比較例2:発光装置用積層体の作製
400nmの直径を有する1.1wt%のTiO
2粒子と、ガラスフリット中に含まれる酸化物から解離した酸素によって生じる気泡とを散乱要素として含む散乱型内部光抽出層を含む発光装置用積層体を、実施例と同じ組成を有するガラスフリットを使用して作製する。散乱型内部光抽出層は10μmの厚さを有する。散乱型内部光抽出層上に、TiO
2を含まずに実施例と同じ組成を有するガラスフリットを使用して第2ガラスフリット層を積み重ね、次いで545℃の温度で焼結させる。
【0083】
比較例3:発光装置用積層体の作製
TiO
2粒子の濃度を2.0wt%まで増加させる以外は、比較例2と同じ方法で発光装置用積層体を作製する。
【0084】
比較例4:発光装置用積層体の作製
TiO
2粒子の濃度を0.9wt%に減少させる以外は、比較例2と同じ方法で発光装置用積層体を作製する。
【0085】
(発光装置用積層体の光学特性の評価)
表1は、実施例1〜4及び比較例1〜4に従って作製した発光装置用の積層体の透過率と曇り度を示している。内部空隙層を形成していない比較例1の積層体と比較して、全透過率が減少し、そして曇り度がかなり増加している。散乱要素を含む比較例2〜4の積層体と比較して、曇り度は優れている。光抽出層の合計厚さはすべての事例で約20〜25μmである。
【0086】
【表1】
【0087】
図6は、実施例1〜4で作製した積層体(●として示す)と比較例2〜4で作製した積層体(◆として示す)の曇り度(Y軸)に関する可視光範囲内の全透過率(X軸)の変化を比較するグラフである。本発明の発光装置用積層体の全透過率は、同じ拡散性能を有する比較例の発光装置用積層体のそれよりも約2%〜7%高い。
【0088】
図7〜9は、実施例1で作製した発光装置用積層体の光学特性(実線として示す)と比較例2で作製した発光装置用積層体のそれら(破線として示す)とを比較するグラフである。
【0089】
図7は曇り度を示すグラフである。X軸は波長(λ)を示し、Y軸は曇り度(HR,%)を示している。本発明による発光装置用積層体の曇り度(実線として示す)は、可視光の全波長範囲内で一貫して均一である。しかしながら、比較例2の発光装置用積層体(波線として示す)では、波長が長くなるほど曇り度は小さくなっている。このように、最大値と最小値との間で30%以上の曇り度の差がある。
【0090】
図8は吸光度を示すグラフである。X軸は波長(λ)を示し、Y軸は吸光度(Ab,%)を示している。本発明による発光装置用積層体の吸光度(実線で示す)は、可視光の全波長範囲内で、比較例2の発光装置用積層体のそれ(破線で示す)とほぼ等しい。
【0091】
図9は、外側に放射される光の強度分布を視野角に関して示すグラフである。X軸は正面から見た角度(°)を示し、Y軸は強度(任意単位)を示している。本発明による発光装置用積層体(実線として示す)は、−80°から80°までの視野角にわたって比較例2の発光装置用積層体(波線として示す)とほぼ等しい光拡散性能を有する。しかしながら、本発明による発光装置用積層体は、−20°から20°までの視野角内で比較例2の発光装置用積層体よりもはるかに優れた光濃度(光透過率)を有する。
【0092】
図10は、実施例4で説明したイオン交換法によってカリウムで処理した基材のカリウム濃度の分布(焼結前、左の図、
図10(a))、及びカリウムで処理した前記基材上にガラスフリット層を適用し、次いで焼結によって内部光抽出層を形成した発光装置用積層体のカリウム濃度の分布(焼結後、右の図、
図10(b))を示している。カリウムで処理した基材のカリウムイオン濃度は表面に向かって高くなっている。しかしながら、前記基材上にガラスフリット層を適用し焼結させることによって内部光抽出層を形成後には、カリウムイオンはガラス基材の表面から内部光抽出層へ拡散し移動している。
【0093】
図11は、実施例5で作製した発光装置用積層体の断面を示すSEM写真である。この写真は、低屈折率ガラスフリット層と内部光抽出層との間に界面空隙層が形成されていることを示している。したがって、発光装置用積層体を、一般的なガラス基材上にカリウムイオンを含有している低屈折率ガラスフリット層をコーティングする方法によって作製することができる。
【0094】
要約すれば、界面空隙層を含んだ本発明の発光装置用積層体は、例えば吸光度などの光学特性を、散乱要素として気泡を使用する発光装置用の既存の散乱型積層体と同等又はそれ以上のレベルで維持することができ、同じ拡散性能を有する従来の発光装置用散乱型積層体よりもはるかに優れた可視光範囲内の全透過率及び垂直方向における光透過率を有することができ、そして可視光の全波長範囲内で従来の散乱型積層体よりもはるかに均一な曇り度を有することができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の発光装置用積層体は、有効な光抽出を必要とする発光装置のために広く使用することができ、そしてそれは優れた光学特性を有するので、光学装置、例えば有機発光ダイオード(OLED)、バックライト、照明産業などの分野に特に適している。
本発明の代表的な態様としては、以下を挙げることができる:
《態様1》
カリウムを含むガラス基材又はカリウムを含む無機層でコーティングされたガラス基材と、
前記ガラス基材上に1.8〜2.1の屈折率(RI)を有するガラスフリットから形成した内部光抽出層と、
を含み、前記内部光抽出層が前記ガラス基材又は前記無機層との界面に界面空隙層を含んでいる、発光装置用積層体。
《態様2》
前記ガラス基材がソーダ石灰ガラス基材である、態様1に記載の積層体。
《態様3》
前記ガラス基材の表面又は最外領域がカリウムで処理されている、態様1又は2に記載の積層体。
《態様4》
前記ガラス基材又は前記無機層の表面がカリウムを1〜15重量%、好ましくは5重量%以下の濃度で含む、態様1〜3のいずれかに記載の積層体。
《態様5》
前記界面空隙層が1〜5μmの厚さを有し、かつ、前記界面空隙層が40〜90%の空隙面積率を有する、態様1〜4のいずれかに記載の積層体。
《態様6》
前記ガラスフリットが、当該ガラスフリットの合計重量基準で55〜84重量%のBi2O3、0〜20重量%のBaO、5〜20重量%のZnO、1〜7重量%のAl2O3、5〜15重量%のSiO2、5〜20重量%のB2O3、及び0.05〜3重量%のNa2Oを含む、態様1〜5のいずれかに記載の積層体。
《態様7》
前記内部光抽出層が、前記ガラス基材又は前記無機層との界面に前記界面空隙層を含むガラスフリットの単層を有する、態様1〜6のいずれかに記載の積層体。
《態様8》
前記内部光抽出層が、前記ガラス基材又は前記無機層との界面に前記界面空隙層を含む第1ガラスフリット層と、当該第1ガラスフリット層を覆いこれと接触する第2ガラスフリット層とを有する、態様1〜6のいずれかに記載の積層体。
《態様9》
前記内部光抽出層がガラスフリットの単層又は二重層を含み、最外面に、好ましくは最外面から少なくとも2μmの最外領域に、空隙及び粒子などの散乱要素を含んでいない、態様1〜8のいずれかに記載の積層体。
《態様10》
前記内部光抽出層が6〜30μmの合計厚さを有する、態様1〜9のいずれかに記載の積層体。
《態様11》
前記内部光抽出層が1nm未満の最外表面粗さ(Ra)を有する、態様1〜10のいずれかに記載の積層体。
《態様12》
カリウムの濃度が、前記ガラス基材と前記内部光抽出層との界面から前記内部光抽出層の最外面へ向かって小さくなっている、態様1〜11のいずれかに記載の積層体。
《態様13》
カリウムが前記内部光抽出層の最外面で1重量%未満の濃度を有する、態様1〜12のいずれかに記載の積層体。
《態様14》
当該発光装置用積層体上に形成された透明な電極層をさらに含む、態様1〜13のいずれかに記載の積層体。
《態様15》
発光装置用積層体を作製する方法であって、
カリウムを含むガラス基材を用意すること、
ガラスフリットペースト(好ましくは散乱要素を含まない)を前記ガラス基材上に適用して第1ガラスフリット層を形成すること、
前記第1ガラスフリット層を乾燥させること、及び
乾燥した前記第1ガラスフリット層を焼結させて、1.8〜2.1の屈折率を有する内部光抽出層を形成すること、
を含み、前記内部光抽出層が前記ガラス基材との界面に界面空隙層を含む、発光装置用積層体の作製方法。
《態様16》
発光装置用積層体を作製する方法であって、
ガラス基材を用意すること、
カリウムを含むガラスフリットペーストを前記ガラス基材上に適用すること、
前記ガラスフリットペーストでコーティングしたガラス基材を乾燥し焼結させて、カリウムを含むガラスフリットを含む無機層でコーティングしたガラス基材を形成すること、
ガラスフリットペースト(好ましくは散乱要素を含まない)を前記無機層でコーティングしたガラス基材上に適用して第1ガラスフリット層を形成すること、
前記第1ガラスフリット層を乾燥すること、及び
乾燥した前記第1ガラスフリット層を所定の第1温度で焼結させて、1.8〜2.1の屈折率を有する内部光抽出層を形成すること、
を含み、前記内部光抽出層が前記無機層との界面に界面空隙層を含む、発光装置用積層体の作製方法。
《態様17》
焼結した前記第1ガラスフリット層上に別のガラスフリットペースト(好ましくは散乱要素を含まない)を適用して、第2ガラスフリット層(好ましくは突出部のない表面を有する)を形成すること、
前記第2ガラスフリット層を乾燥すること、及び
乾燥した前記第2ガラスフリット層を所定の第2温度で焼結させて、1.8〜2.1の屈折率を有する内部光抽出層のための二重フリット層構造体を形成すること、
をさらに含む、態様15又は16に記載の方法。
《態様18》
カリウムの濃度が、前記ガラス基材又は前記無機層と前記内部光抽出層との界面から前記内部光抽出層の最外面に向かって小さくなる、態様15〜17のいずれかに記載の方法。
《態様19》
前記界面空隙層が1〜5μmの厚さを有し、かつ、前記界面空隙層が40〜90%の空隙面積率を有する、態様15〜18のいずれかに記載の方法。
《態様20》
前記第1又は第2ガラスフリット層の最外面が1重量%未満の濃度でカリウムを含む、態様15〜19のいずれかに記載の方法。
《態様21》
前記第1ガラスフリット層を500℃と590℃の間の第1焼結温度で焼結させる、態様15〜20のいずれかに記載の方法。
《態様22》
前記ガラス基材がソーダ石灰ガラス基材である、態様15〜21のいずれかに記載の方法。
《態様23》
前記ガラス基材の表面又は最外領域をカリウムで処理する、態様15〜22のいずれかに記載の方法。
《態様24》
前記ガラス基材の表面が1〜15重量%の濃度でカリウムを含む、態様15〜23のいずれかに記載の方法。
《態様25》
前記第1ガラスフリットが、当該ガラスフリットの総重量基準で、55〜84重量%のBi2O3、0〜20重量%のBaO、5〜20重量%のZnO、1〜7重量%のAl2O3、5〜15重量%のSiO2、5〜20重量%のB2O3、及び0.05〜3重量%のNa2Oを含む、態様15〜24のいずれかに記載の方法。
《態様26》
前記内部光抽出層が6〜30μmの合計厚さを有する、態様15〜25のいずれかに記載の方法。
【符号の説明】
【0096】
ILE: 内部光抽出層(RI:1.8〜2.1)
G: ガラス基材
V: 空隙(RI:約1)
F: ガラスフリット
EC: エチルセルロース
A: 空気