特許第6594322号(P6594322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594322
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】ディーゼル酸化触媒及び排気系統
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/78 20060101AFI20191010BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20191010BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20191010BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20191010BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   B01J29/78 AZAB
   B01D53/94 223
   F01N3/10 A
   F01N3/28 Q
   F01N3/08 B
【請求項の数】23
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2016-548142(P2016-548142)
(86)(22)【出願日】2015年1月23日
(65)【公表番号】特表2017-505226(P2017-505226A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】GB2015050147
(87)【国際公開番号】WO2015110819
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2017年10月19日
(31)【優先権主張番号】1401115.9
(32)【優先日】2014年1月23日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1405871.3
(32)【優先日】2014年4月1日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チッフィー, アンドリュー フランシス
(72)【発明者】
【氏名】グッドウィン, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】リーランド, ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】モロー, フランソワ
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−501031(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/082367(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/86−53/90
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための酸化触媒であって:
白金(Pt)、マンガン(Mn)及び第1の支持材を含む第1のウオッシュコート領域;
白金族金属(PGM)及び第2の支持材を含む第2のウオッシュコート領域;並びに
入口端及び出口端を有する基材;
を含み、
第2の支持材が、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア及びこれらのうちの二つ以上の混合若しくは複合酸化物からなる群より選択される耐火性金属酸化物であり、
第2のウオッシュコート領域が、基材の出口端において、排気ガスが第1のウオッシュコート領域と接触した後で、排気ガスと接触するように配置されており、
第2のウオッシュコート領域がマンガン(Mn)を含んでいる、酸化触媒。
【請求項2】
第2のウオッシュコート領域が、基材の出口端に配置された第2のウオッシュコートゾーンである、請求項1に記載の酸化触媒。
【請求項3】
第1のウオッシュコート領域が、基材の入口端に配置された第1のウオッシュコートゾーンである、請求項1又は2に記載の酸化触媒。
【請求項4】
第1のウオッシュコート領域が第1のウオッシュコートゾーンであり、第2のウオッシュコート領域が第2のウオッシュコートゾーンであり、第1のウオッシュコートゾーンと第2のウオッシュコートゾーンは単層として基材の上に配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の酸化触媒。
【請求項5】
第1のウオッシュコート領域が第1のウオッシュコート層であり、第2のウオッシュコートゾーンが第1のウオッシュコート層の上に配置されている、請求項2に記載の酸化触媒。
【請求項6】
第1のウオッシュコート領域が第1のウオッシュコート層であり、第2のウオッシュコート領域が第2のウオッシュコート層であり、第2のウオッシュコート層が第1のウオッシュコート層の上に配置されている、請求項1に記載の酸化触媒。
【請求項7】
マンガン(Mn)が第1の支持材の上に配置又は支持されている、請求項1からのいずれか一項に記載の酸化触媒。
【請求項8】
第1のウオッシュコート領域がパラジウムを更に含む、請求項1からのいずれか一項に記載の酸化触媒。
【請求項9】
第1のウオッシュコート領域に含まれる総重量による白金対パラジウムの比が、≧1:1である、請求項に記載の酸化触媒。
【請求項10】
第1の支持材が、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア及びこれらの混合若しくは複合酸化物からなる群より選択される耐火性金属酸化物を含み、耐火性金属酸化物は任意選択的にドーパントでドープされる、請求項1からのいずれか一項に記載の酸化触媒。
【請求項11】
耐火性金属酸化物が、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、シリカーアルミナ、チタニア−アルミナ、ジルコニア−アルミナ、セリア−アルミナ、チタニア−シリカ、ジルコニア−シリカ、ジルコニア−チタニア、セリア−ジルコニア及びアルミナ−酸化マグネシウムからなる群より選択される、請求項10に記載の酸化触媒。
【請求項12】
耐火性金属酸化物が、シリカでドープされたアルミナである、請求項10又は11に記載の酸化触媒。
【請求項13】
白金族金属(PGM)が、白金、パラジウム及び白金とパラジウムの組み合わせからなる群より選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の酸化触媒。
【請求項14】
耐火性金属酸化物は任意選択的にドーパントでドープされる、請求項1から13のいずれか一項に記載の酸化触媒。
【請求項15】
耐火性金属酸化物が、シリカでドープされたアルミナである、請求項1に記載の酸化触媒。
【請求項16】
第2のウオッシュコート領域が、唯一の白金族金属(PGM)として白金(Pt)を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の酸化触媒。
【請求項17】
マンガン(Mn)が、第2の支持材の上に配置又は支持されている、請求項16に記載の酸化触媒。
【請求項18】
第2のウオッシュコート領域がゼオライト触媒を含んでいる、請求項1から17のいずれか一項に記載の酸化触媒。
【請求項19】
基材がフロースルー基材である、請求項1から18のいずれか一項に記載の酸化触媒。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の酸化触媒と、排出制御装置とを備える排気系統。
【請求項21】
排出制御装置が、リーンNOxトラップ(LNT)、アンモニアスリップ触媒(ASC)、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)、選択的触媒還元(SCR)触媒、触媒化スートフィルター(CSF)、選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒、及びこれらのうちの二つ以上の組み合わせからなる群より選択される、請求項20に記載の排気系統。
【請求項22】
ディーゼルエンジンと、請求項1から19のいずれか一項に記載の酸化触媒又は請求項20若しくは21に記載の排気系統とを備える、車両又は装置。
【請求項23】
ディーゼルエンジンの排気ガスの処理方法であって、排気ガスを請求項1から19のいずれか一項に記載の酸化触媒と接触させること、又は排気ガスを、請求項20又は21に記載の排気系統に通過させることを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン用の酸化触媒及びこの酸化触媒を備えるディーゼルエンジンの排気系統に関する。本発明は、ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための方法及び酸化触媒の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンは、世界の政府間機関により規制されている少なくとも四つのクラスの汚染物質、即ち:一酸化炭素(CO)、未燃炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)及びパティキュレートマター(PM)を通常含有する排ガスを生成する。ディーゼルエンジンの排出基準は、固定式又は移動式(例えば、車両ディーゼルエンジン)に関わらず、着実に厳しくなりつつある。これら基準を満たすことのできる、費用効率の高い、改良された触媒及び排気系統を提供する必要がある。
【0003】
ディーゼルエンジンの場合、典型的に、酸化触媒(ディーゼル酸化触媒(DOC)として知られる)が、このようなエンジンにより生成される排気ガスを処理するために使用される。ディーゼル酸化触媒は、通常、(1)一酸化炭素(CO)から二酸化炭素(CO)への酸化、及び(2)HCから二酸化炭素(CO)と水(HO)への酸化を触媒する。特に軽量ディーゼル車の場合、ディーゼルエンジンの排気ガスの温度は比較的低く(例えば約400℃)、したがって一の課題は、低い「着火」温度を有する耐久性の触媒配合組成を開発することである。
【0004】
DOCのような酸化触媒の活性は、多くの場合、触媒が特定の触媒反応を実施する又はそのような反応を特定のレベルまで実施する温度である、その「着火」温度の観点から測定される。通常、「着火」温度は、一酸化炭素の変換といった、反応物質の特定のレベルの変換の観点から与えられる。したがって、T50温度は、触媒が反応物質の変換を50%の効率で触媒する最低温度を表すため、往々にして「着火」温度と呼ばれる。
【0005】
ディーゼルエンジンの排気系統は、複数の排出制御装置を含むことができる。各排出制御装置は、特定の機能を有し、排気ガス中の汚染物質の一又は複数のクラスの処理を担う。上流の排出制御装置の性能は、下流の排出制御装置に影響しうる。これは、上流の排出制御装置の出口からの排気ガスが、下流の排出制御装置の入口に入るためである。排気系統の各排出制御装置間の相互作用は、排気系統全体の効率にとって重要である。
【0006】
ディーゼル酸化触媒(DOC)のような酸化触媒は、典型的には、ディーゼルエンジンによって生成される排気ガス中の一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)を酸化する。ディーゼル酸化触媒はまた、排気ガス中に存在する一酸化窒素(NO)の一部を 二酸化窒素(NO)に酸化することができる。二酸化窒素(NO)自体は汚染物質であるが、NOのNOへの変換は有益である場合がある。生成されるNOは、例えば、下流のディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)又は下流の触媒化スートフィルター(CSF)によって捕捉されたパティキュレートマター(PM)を再生するために使用することができる。通常、酸化触媒によって生成されるNOは、入口における排気ガスと比較して、酸化触媒の出口における排気ガス中のNO:NOの比を増大させる。この比の増大は、下流の選択的触媒還元(SCR)触媒又は選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒を備える排気系統に有利でありうる。ディーゼルエンジンによって直接生成される排気ガス中のNO:NOの比は、最適なSCR又はSCRF触媒の性能にとって低すぎる場合がある。
【0007】
排気系統内において良好なNO生成動作を有するDOCなどの酸化触媒を含むことは通常は有利であるものの、このような酸化触媒の使用は、下流の排出制御装置(例えばSCR又はSCRFTM触媒)から最適な性能を得ようとするとき、問題となる場合がある。所与の排気ガス温度において酸化触媒により生成されるNOの平均量は、その耐用年数にわたって大きく変動しうる。これにより、能動的なSCRを実施するための窒素還元剤の投与の較正が困難となる可能性がある。
【発明の概要】
【0008】
圧縮点火エンジンによって排出される排気ガス中の一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)及び時に窒素酸化物(NO)を酸化するために使用される触媒は、通常、白金又はパラジウムといった少なくとも一つの白金族金属を含む。白金は、圧縮点火エンジンの排気ガス中のCO及びHCの酸化を触媒するうえでパラジウムより活性であり、このような触媒にパラジウムを含めることは、パラジウムが硫黄による毒作用の影響を受け易いために通常回避された。しかしながら、超低硫黄燃料の使用、白金に対するパラジウムの相対的コスト、及びパラジウムを含めることにより得られる触媒耐久性の向上により、パラジウムを含む触媒の配合組成、特にパラジウムと白金の両方を含む配合組成が好まれるようになった。
【0009】
一般に、パラジウムのコストは歴史的に白金より低いものの、パラジウム及び白金は共に高価な金属である。白金及びパラジウムの総量を増加させることなく触媒活性の向上を示す、又は白金及びパラジウムの量を減らしても既存の酸化触媒と同様の触媒活性を示す酸化触媒が望ましい。
【0010】
本発明者らは、驚くべきことに、(i)マンガン及び(ii)白金の組み合わせが触媒の配合組成に含まれるときに、有利な活性を有する酸化触媒を得ることが可能であることを発見した。このような触媒は、優れた低温CO酸化活性を有することが見出された。触媒は、圧縮点火エンジンによって生成される排気ガス中の比較的高いレベルのCOを、特に250℃を下回る温度において変換するうえで特に効果的である。触媒は、HCに対する良好な酸化活性も示しうる。触媒は、その比較的低温の酸化活性により、排気系統において他の排出制御装置と組み合わせて使用することに適している。
【0011】
本発明者らはまた、ディーゼルエンジンの排気ガス中の一酸化窒素(NO)の酸化に対する優れた活性は、この組合せを使用したときに得られることを発見した。白金は、高価であり、とりわけNOに対する酸化活性のために、多くの場合比較的大きな量で含まれる。白金(Pt)との組み合わせでマンガン(Mn)を含めることにより、NOの酸化活性を向上させることができるか、又は所与のレベルのNO酸化を達成するためのPtの使用量を低減させることができる。
【0012】
本発明は、ディーゼルエンジンからの排気ガスを処理するための酸化触媒を提供し、この酸化触媒は、白金(Pt)、マンガン(Mn)及び第1の支持材を含む第1のウオッシュコート領域;白金族金属(PGM)及び第2の支持材を含む第2のウオッシュコート領域;並びに入口端と出口端を有する基材を含む。第2のウオッシュコート領域は、好ましくは、基材の出口端において、排気ガスが第1のウオッシュコート領域と接触した後で、排気ガスと接触するように配置される。
【0013】
一酸化炭素(CO)及び一酸化窒素(NO)に対するPtとMnの組み合わせの酸化活性は、特定のアルミナ基材が支持材として使用されるとき、特に有利となりうる。
【0014】
本発明は更に、ディーゼルエンジンの排気系統を提供する。この排気系統は、本発明の酸化触媒と排出制御装置を備える。
【0015】
排気ガス中のNOの量は、窒素酸化物(NO)の選択的触媒還元のための下流の排出制御装置の性能に影響を与えうる。NO(例えばNO+NO)を処理するための選択的触媒還元(SCR)触媒及び選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒は、最適な触媒性能のために、入口ガス中のNO対NOの比が特定の範囲内であることを必要とすることが多い。NOの最適なNOの割合は、典型的には、SCR又はSCRFTM触媒に使用される組成物の種類に依存するが、ディーゼルエンジンの直接の排気ガス中のNO対NOの比は、通常は触媒の最適性能には低すぎる。
【0016】
本発明の酸化触媒は、NOをNOに変換することにより、触媒の入口における排気ガス中のNOの量と比較して、触媒を出てゆく排気ガス中のNOの量を増大させるために使用できる(即ち、酸化触媒を出てゆく排気ガス中のNO:NO及びNO:NOの比が、酸化触媒の入口における排気ガスの対応する比より大きい)。酸化触媒は、最適なSCR性能のために、排気ガスのNO組成を変えることができる。
【0017】
排気ガスのNO含有量を「増加させる(boost)」ための酸化触媒の使用に関する問題は、酸化触媒のNO酸化活性が通常その耐用年数の間に変動することである。通常、触媒が「老化する(age)」(即ち、触媒が長期にわたって使用される)につれ、触媒のNO酸化活性は低下する。「老化した」酸化触媒を出てゆく排気ガス中のNOの量は、下流の排出制御装置(例えばSCR触媒)の最適性能には十分であるかもしれないが、生成されるNOの量のこのような変動は、能動的なSCRを実施するための窒素還元剤の投与を較正するうえで問題である。
【0018】
本発明の酸化触媒はその耐用年数を通じて安定なNO酸化活性を示すことができることが判明した。したがって、新品の状態(即ち「新しく」、長期にわたる反復使用に供されていない)酸化触媒のNO酸化活性と、老化した状態との差は概して小さい。
【0019】
本発明の更なる態様は、車両又は装置(例えば固定式又は移動式の装置)に関する。この車両又は装置は、ディーゼルエンジンと本発明の酸化触媒又は排気系統を備える。
【0020】
本発明は、複数の使用及び方法にも関する。
【0021】
本発明の第1の方法の態様は、ディーゼルエンジンの排気ガスの処理方法を提供する。この方法は、排気ガスを本発明の酸化触媒に接触させること、又は排気ガスを本発明の排気系統に通過させることを含む。この文脈での「排気ガスの処理」という表現は、ディーゼルエンジンの排気ガス中の一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)及び一酸化窒素(NO)の酸化を指す。
【0022】
第2の方法の態様は、排出制御装置のための、ディーゼルエンジンの排気ガス中のNO含有量を調節する方法を提供する。この方法は:(a)排気ガスを本発明の酸化触媒と接触させることにより、排気ガスのNO含有量を制御して、処理済み排気ガスを生成すること;及び(b)処理済み排気ガスを排出制御装置に通過させることを含む。
【0023】
本発明の第1の使用の態様は、任意選択的に排出制御装置と組み合わせた、ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための酸化触媒の使用に関する。通常酸化触媒は、ディーゼルエンジンの排気ガス中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を処理(例えば酸化)するために使用される。
【0024】
第2の使用の態様では、本発明は、排出制御装置(例えば下流の排出制御装置)のための、ディーゼルエンジンの排気ガス中のNO含有量を調節するための酸化触媒の使用に関する。
【0025】
第3の使用の態様は、濾過基材を有する排出制御装置(例えば濾過基材を有する下流の排出制御装置)の再生における酸化触媒の使用に関する。
【0026】
第4の使用の態様は、好ましくは白金(Pt)と組み合わせた、ディーゼルエンジンの排気ガス中の一酸化窒素(NO)の酸化を増強するための、ディーゼルエンジン用の酸化触媒におけるマンガン(Mn)の使用に関する。
【0027】
第5の使用の態様は、好ましくは白金(Pt)と組み合わせた、耐用年数を通じて酸化触媒のNO酸化活性を安定させるための、ディーゼルエンジン用の酸化触媒におけるマンガン(Mn)の使用に関する。
【0028】
第1から第5の使用の態様において、酸化触媒は本発明による酸化触媒である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1から10は、本発明の酸化触媒の概略図である。図中、酸化触媒の左側は入口端であり、右側は出口端である。
図1】基材(3)の上に配置された第1のウオッシュコート領域(1)及び第2のウオッシュコート領域/ゾーン(2)を含む酸化触媒を示す。
図2】第1のウオッシュコート領域(1)及び第2のウオッシュコート領域/ゾーン(2)を含む酸化触媒を示す。第1のウオッシュコート領域(1)は基材(3)の上に直接配置されている。第2のウオッシュコート領域/ゾーン(2)は、第1のウオッシュコート領域(1)の上に配置されている。
図3】第1のウオッシュコート領域(1)及び第2のウオッシュコート領域/ゾーン(2)を含む酸化触媒を示す。第1のウオッシュコート領域(1)と第2のウオッシュコート領域/ゾーン(2)には重複がある。第1のウオッシュコート領域(1)の一部は第2のウオッシュコート領域/ゾーン(2)の上に配置されている。第1のウオッシュコート領域(1)及び第2のウオッシュコート領域/ゾーン(2)は、共に基材(3)の上に配置されている。
図4】第1のウオッシュコート領域(1)及び第2のウオッシュコート領域/ゾーン(2)を含む酸化触媒を示す。第1のウオッシュコート領域(1)と第2のウオッシュコート領域/ゾーン(2)には重複がある。第2のウオッシュコート領域/ゾーン(2)の一部は、第1のウオッシュコート領域(1)の上に配置されている。第1のウオッシュコート領域(1)及び第2のウオッシュコート領域/ゾーン(2)は、共に基材(3)の上に配置されている。
図5】基材(3)の上に配置された第1のウオッシュコート層(1)及び第2のウオッシュコート層(2)を含む酸化触媒を示す。第2のウオッシュコート層(2)は、第1のウオッシュコート層(1)の上に配置されている。
図6】第1のウオッシュコート領域(1)及び第2のウオッシュコート領域/ゾーン(2)を含む酸化触媒を示す。第1のウオッシュコート領域/ゾーン(1)及び第2のウオッシュコート領域/ゾーン(2)は、共に第3のウオッシュコート領域/層(4)の上に配置されている。第3のウオッシュコート領域/層(4)は、基材(3)の上に配置されている。
図7】第1のウオッシュコートゾーン(1)、第2のウオッシュコートゾーン(2)及び第3のウオッシュコートゾーン(4)を含む酸化触媒を示す。第1のウオッシュコートゾーン(1)及びウオッシュコートゾーン(2)は、共に基材(3)の上に配置されている。第3のウオッシュコートゾーン(4)は、第2のウオッシュコートゾーン(2)の上に配置されている。
図8】第1のウオッシュコートゾーン(1)、第2のウオッシュコートゾーン(2)及び第3のウオッシュコートゾーン(4)を含む酸化触媒を示す。第1のウオッシュコートゾーン(1)及び第3のウオッシュコートゾーン(4)は、共に基材(3)の上に配置されている。第2のウオッシュコートゾーン(2)は、第3のウオッシュコートゾーン(4)の上に配置されている。
図9】第1のウオッシュコートゾーン(1)、第2のウオッシュコートゾーン(2)及び第3のウオッシュコートゾーン(4)を含む酸化触媒を示す。第1のウオッシュコートゾーン(1)及び第2のウオッシュコートゾーン(2)は、共に基材(3)の上に配置されている。第3のウオッシュコートゾーン(4)は、第1のウオッシュコートゾーン(1)の上に配置されている。
図10】第1のウオッシュコートゾーン(1)、第2のウオッシュコートゾーン(2)、第3のウオッシュコートゾーン(4)及び第4のウオッシュコートゾーン(5)を含む酸化触媒を含む。第1のウオッシュコートゾーン(1)及び第3のウオッシュコートゾーン(4)は、共に基材(3)の上に配置されている。第2のウオッシュコートゾーン(2)は、第3のウオッシュコートゾーン(4)の上に配置されている。第4のウオッシュコートゾーン(5)は、第1のウオッシュコートゾーン(1)の上に配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の酸化触媒は、第1のウオッシュコート領域、第2のウオッシュコート領域及び基材を含むか、又はそれらからなりうる。
【0031】
典型的には、第2のウオッシュコート領域は、基材の出口端において、排気ガスが第1のウオッシュコート領域と接触した後で、排気ガスと接触するように配置される。
【0032】
触媒は、排気ガスが触媒に進入してすぐ後、好ましくは第2のウオッシュコート領域と接触する前で、排気ガスがPt及びMnを含有するウオッシュコートと接触することを容易にする配置を有するとき、有利な酸化活性(例えばCO、HC及びNOに対して)を示しうる。酸化触媒がこのように配置されている場合、排気ガスは、触媒に進入すると、まずCO及びHCを酸化するための第1のウオッシュコート領域と接触する。排気ガスは、第1のウオッシュコート領域を通って又は第1のウオッシュコート領域の上を通過した後、最終的に酸化触媒の出口を通過する前に、第2のウオッシュコート領域と接触する。
【0033】
一般に、第2のウオッシュコート領域は、第1のウオッシュコート領域と接触した後の排気ガスと接触するように配置又は配向されている。典型的には、第1のウオッシュコート領域は、第2のウオッシュコート領域の前に排気ガスと接触するように配置又は配向されている。したがって、第1のウオッシュコート領域は、排気ガスが酸化触媒に進入したときに排気ガスと接触するように配置され、第2のウオッシュコート領域は、排気ガスが酸化触媒を出てゆくときに排気ガスと接触するように配置される。このような配置の例を以下に記載する。
【0034】
第1のウオッシュコート領域は、一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)の酸化と、任意選択的に一酸化窒素(NO)の酸化を目的としている。
【0035】
第1のウオッシュコート領域は、白金(Pt)、マンガン(Mn)又はその酸化物、及び第1の支持材を含むか、又は本質的にそれらからなる。
【0036】
白金(Pt)は、典型的には、第1の支持材の上に配置又は支持される。白金は、第1の支持材の上に直接配置されるか、又は第1の支持材によって直接支持されてよい(例えば白金と第1の支持材の間に介在する支持材はない)。例えば、白金を、第1の支持材上において分散させることができる。
【0037】
第1のウオッシュコート領域は、典型的には、5〜300g ft−3の白金の総ローディングを有する。第1のウオッシュコート領域が、10〜250g ft−3(例えば75〜175g ft−3)、好ましくは15〜200g ft−3(例えば50〜150g ft−3)、更に好ましくは20〜150g ft−3の白金の総ローディングを有することが好ましい。
【0038】
第1のウオッシュコート領域は更に、パラジウム、例えば第1の支持材の上に配置又は指示されたパラジウムを含んでもよい。
【0039】
典型的には、第1のウオッシュコート領域に含まれる白金対パラジウムの総重量比は、≧1:1(例えばPt:Pdは1:0〜1:1又は10:1〜1:1)、好ましくは≧2:1(例えばPt:Pdは1:0〜2:1又は10:1〜2:1)、更に好ましくは≧4:1(例えばPt:Pdは1:0〜4:1又は10:1〜4:1)、それよりも更に好ましくは≧10:1(例えばPt:Pdは1:0〜10:1)である。
【0040】
第1のウオッシュコート領域がパラジウム(Pd)を含むとき、好ましくは、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)は唯一の白金族金属である(即ち第1のウオッシュコート領域内において)。
【0041】
第1のウオッシュコート領域は、後述で定義されるゼオライト触媒のようなゼオライト触媒を含んでもよい。第1のウオッシュコート領域がゼオライト触媒を含むとき、第1のウオッシュコート領域に含まれる、第2の支持材の上に支持された白金対パラジウムの総重量比は、≧2:1(例えばPt:Pdは1:0〜2:1)、好ましくは≧4:1(例えばPt:Pdは1:0〜4:1)であってよい。
【0042】
一般に、第1のウオッシュコート領域が実質的にパラジウムを含まないこと、特に第1の支持材上に配置又は支持されたパラジウム(Pd)を実質的に含まないことが好ましい。更に好ましくは、第1のウオッシュコート領域は、パラジウム、特に第1の支持材に配置又は支持されたパラジウムを含まない。特に大きな量でのパラジウムの存在は、HC酸化活性に有害となりうる。
【0043】
通常、第1のウオッシュコート領域は白金(Pt)を唯一の白金族金属として含む。第1のウオッシュコート領域は、好ましくは、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)及び/又はイリジウム(Ir)といった一又は複数の他の白金族金属を含まない。更に好ましくは、第1のウオッシュコート領域は、第1の支持材の上に支持された、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)及び/又はイリジウム(Ir)といった一又は複数の他の白金族金属を含まない。
【0044】
第1のウオッシュコート領域の主な機能が一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)の酸化であることが意図される。しかしながら、酸化触媒のいくつかの実施態様では、第1のウオッシュコート領域は、使用中、特に大量の白金が存在するとき、一部の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO)へと酸化してもよい。
【0045】
第1のウオッシュコート領域は、マンガン(Mn)も含む。マンガンは、元素形態で、又は酸化物として存在することができる。第1のウオッシュコート領域は、典型的には、マンガン又はその酸化物を含む。
【0046】
マンガン(Mn)は、典型的には、第1の支持材上に配置又は支持される。マンガン(Mn)は、第1の支持材の上に直接配置されるか、又は第1の支持材によって直接支持されてよい(例えばMnと第1の支持材の間に介在する支持材はない)。
【0047】
第1のウオッシュコート領域は、典型的には、5〜500g ft−3のマンガン(Mn)の総ローディングを有する。第1のウオッシュコート領域が、10〜250g ft−3(例えば75〜175g ft−3)、好ましくは15〜200g ft−3(例えば50〜150g ft−3)、更に好ましくは20〜150g ft−3のマンガン(Mn)の総ローディングを有することが好ましい。
【0048】
典型的には、第1のウオッシュコート領域は、≦5:1、好ましくは<5:1のMn:Ptの重量比を含む。
【0049】
一般に、第1のウオッシュコート領域は、≧0.2:1(例えば≧0.5:1)、好ましくは>0.2:1(例えば>0.5:1)のMn:Ptの重量比を含みうる。
【0050】
第1のウオッシュコート領域に含まれるマンガン(Mn)対白金の重量比は、5:1〜0.2:1、例えば5:1〜0.5:1(例えば5:1〜2:3又は5:1〜1:2)、好ましくは4.5:1〜1:1(例えば4:1〜1.1:1)、更に好ましくは4:1〜1.5:1であってもよい。Mn:Ptの重量比は、本明細書に記載の活性を得るうえで重要でありうる。
【0051】
典型的には、第1の支持材は、耐火性金属酸化物を含むか、又は本質的に同酸化物からなる。ディーゼルエンジン用の酸化触媒の触媒成分としての使用のために適切な耐火性金属酸化物は、当技術分野において周知である。
【0052】
耐火性金属酸化物は、典型的には、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、及びこれらの混合又は複合酸化物、例えばこれらのうちの二つ以上の混合又は複合酸化物からなる群より選択される。例えば、耐火性金属酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、シリカーアルミナ、チタニア−アルミナ、ジルコニア−アルミナ、セリア−アルミナ、チタニア−シリカ、ジルコニア−シリカ、ジルコニア−チタニア、セリア−ジルコニア及びアルミナ−マグネシウム酸化物からなる群より選択されてよい。
【0053】
第1の支持材、又はその耐火性金属酸化物は、任意選択的にドープ(例えばドーパントで)されてもよい。ドーパントは、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、シリコン(Si)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)、ネオジム(Nd)及びこれらの酸化物からなる群より選択されうる。
【0054】
ドーパントを含めることで、耐火性金属酸化物又は支持材を熱的に安定させることができる。この文脈において「ドープされた」と言うときは、耐火性金属酸化物のバルク又はホスト格子がドーパントで置換ドープ又は格子間ドープされている材料に言及しているものと理解されたい。いくつかの事例では、少量のドーパントが耐火性金属酸化物の表面に存在する。しかしながら、ドーパントの多くは、通常耐火性金属酸化物の本体に存在するであろう。耐火性金属酸化物の化学的及び/又は物理的特性は、多くの場合ドーパントの存在により影響される。
【0055】
第1の支持材、又はその耐火性金属酸化物がドープされているとき、ドーパントの総量は0.25〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%(例えば約1重量%)である。
【0056】
第1の支持材又はその耐火性金属酸化物が、ドーパントでドープされたアルミナを含むか、又はそのようなアルミナから本質的になることが特に好ましい。
【0057】
アルミナは、シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、チタン(Ti)、又はジルコニウム(Zr)又はこれらのうちの二つ以上の組み合わせを含むドーパントでドープすることができる。ドーパントは、シリコンの酸化物、マグネシウムの酸化物、バリウムの酸化物、ランタンの酸化物、セリウムの酸化物、チタンの酸化物又はジルコニウムの酸化物を含むか、又はそれから本質的になってよい。好ましくは、ドーパントは、シリコン、マグネシウム、バリウム、セリウム、又はこれらの酸化物、特にシリコン、又はセリウム、又はその酸化物を含むか、又はそれから本質的になる。更に好ましくは、ドーパントは、シリコン、マグネシウム、バリウム、又はこれらの酸化物、特にシリコン、マグネシウム、又はその酸化物、特にシリコン又はその酸化物を含むか、又はそれから本質的になる。
【0058】
ドーパントでドープされたアルミナの例には、シリカでドープされたアルミナ、酸化マグネシウムでドープされたアルミナ、バリウム若しくは酸化バリウムでドープされたアルミナ、酸化ランタンでドープされたアルミナ、又はセリアでドープされたアルミナ、特にシリカでドープされたアルミナ、酸化ランタンでドープされたアルミナ、又はセリアでドープされたアルミナが含まれる。ドーパントでドープされたアルミナが、シリカでドープされたアルミナ、バリウム若しくは酸化バリウムでドープされたアルミナ、又は酸化マグネシウムでドープされたアルミナであることが好ましい。更に好ましくは、ドーパントでドープされたアルミナは、シリカでドープされたアルミナ、又は酸化マグネシウムでドープされたアルミナである。それよりも更に好ましくは、ドーパントでドープされたアルミナは、シリカでドープされたアルミナである。ドーパントでドープされたアルミナは、当技術分野において既知の方法を用いて、例えば米国特許第5045519号に記載の方法により調製することができる。
【0059】
アルミナがシリカでドープされたアルミナであるとき、このアルミナは、0.5〜45重量%(即ちアルミナの重量%)、好ましくは1〜40重量%、更に好ましくは1.5〜30重量%(例えば1.5〜10重量%)、特に2.5〜25重量%、具体的には3.5〜20重量%(例えば5〜20重量%)、それよりも更に好ましくは4.5〜15重量%の総量のシリカでドープされている。
【0060】
アルミナが酸化マグネシウムでドープされたアルミナであるとき、このアルミナは、上記に規定された量又は1〜30重量%(即ちアルミナの重量%)、好ましくは5〜25重量%の量のマグネシウムでドープされている。
【0061】
第1の支持材、又はその耐火性金属酸化物が、マンガンを含むドーパント又は本質的にマンガンからなるドーパントでドープされていないことが好ましい。したがって、第1の支持材、又はその耐火性金属酸化物は、スズ、マンガン、インジウム、第8族金属(例えばFe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPt、特にIr)及びこれらの組合せからなる群より選択される促進剤のような促進剤で増強されない。
【0062】
これに代えて又は加えて、第1の支持材、又はその耐火性金属酸化物は、アルカリ土類金属アルミネートを含むか、又は同アルミネートから本質的になってよい。用語「アルカリ土類金属アルミネート」は、一般に、式MAl(式中「M」は、Mg、Ca、Sr又はBaといったアルカリ土類金属を表す)の化合物を指す。このような化合物は、通常スピネル型構造を含む。これら化合物は、当技術分野において既知の一般的方法を用いて、又はEP0945165、米国特許第6217837号又は同6517795号に記載の方法を用いることにより、調製することができる。
【0063】
典型的には、アルカリ土類金属アルミネートは、アルミン酸マグネシウム(MgAl)、アルミン酸カルシウム(CaAl)、アルミン酸ストロンチウム(SrAl)、アルミン酸バリウム(BaAl)、又はこれらのうちの二つ以上の混合物である。好ましくは、アルカリ土類金属アルミネートはアルミン酸マグネシウム(MgAl)である。
【0064】
一般に、第1の支持材、又はその耐火性金属酸化物が、アルミナの混合若しくは複合酸化物(例えばシリカ−アルミナ、アルミナ−マグネシウム酸化物又はアルミナとセリアの混合物)を含むか又はそのような混合若しくは複合酸化物から本質的になるとき、好ましくは、アルミナの混合若しくは複合酸化物は、少なくとも50〜99重量%のアルミナ、好ましくは70〜95重量%のアルミナ、更に好ましくは75〜90重量%のアルミナを含む。
【0065】
第1の支持材、又はその耐火性金属酸化物が、セリア−ジルコニアを含むか又はセリア−ジルコニアから本質的になるとき、セリア−ジルコニアは、20〜95重量%のセリア及び5〜80重量%のジルコニア(例えば50〜95重量%のセリア及び5〜50重量%のジルコニア)、好ましくは35〜80重量%のセリア及び20〜65重量%のジルコニア(例えば55〜80重量%のセリア及び20〜45重量%のジルコニア)、更に好ましくは45〜75重量%のセリア及び25〜55重量%のジルコニアから本質的になってよい。
【0066】
第1のウオッシュコート領域は、0.1〜4.5g in−3(例えば0.25〜4.2g in−3)、好ましくは0.3〜3.8g in−3、更に好ましくは0.5〜3.0g in−3(1〜2.75g in−3又は0.75〜1.5g in−3)、及びそれよりも更に好ましくは0.6〜2.5g in−3(例えば0.75〜2.3g in−3)の量の第1の支持材を含みうる。
【0067】
第1のウオッシュコート領域は更に炭化水素吸着材を含みうる。炭化水素吸着材はゼオライトとすることができる。
【0068】
ゼオライトが、中間孔径ゼオライト(例えば10の四面体原子の最大環サイズを有するゼオライト)又は大孔径ゼオライト(例えば12の四面体原子の最大環サイズを有するゼオライト)であることが好ましい。ゼオライトが小孔径ゼオライト(例えば8の四面体原子の最大環サイズを有するゼオライト)でないことが好ましい。
【0069】
適切なゼオライト又はゼオライト種の例には、フージャサイト、クリノプチロライト、モルデナイト、シリカライト、フェリエライト、ゼオライトX、ゼオライトY、超安定なゼオライトY、AEIゼオライト、ZSM−5ゼオライト、ZSM−12ゼオライト、ZSM−20ゼオライト、ZSM−34ゼオライト、CHAゼオライト、SSZ−3ゼオライト、SAPO−5ゼオライト、オフレタイト、ベータゼオライト又は銅CHAゼオライトが含まれる。ゼオライトは、好ましくはZSM−5、ベータゼオライト又はYゼオライトである。
【0070】
第1のウオッシュコート領域が炭化水素吸着剤を含むとき、炭化水素吸着剤の総量は、0.05〜3.00g in−3、好ましくは0.10〜2.00g in−3、更に好ましくは0.2〜1.0g in−3である。例えば、炭化水素吸着剤の総量は、0.8〜1.75g in−3、例えば1.0〜1.5g in−3でよい。
【0071】
しかしながら、第1のウオッシュコート領域が炭化水素吸着材を含まないことが好ましい場合がある。
【0072】
第1のウオッシュコート領域は更に、本明細書において下記に定義されるゼオライト触媒のようなゼオライト触媒を含むことができる。第2のウオッシュコート領域がゼオライト触媒を含むとき、第1のウオッシュコート領域がゼオライト触媒を含むことが好ましい。したがって、第1のウオッシュコート領域及び第2のウオッシュコート領域の各々がゼオライト触媒を含む。
【0073】
別の構成では、第1のウオッシュコート領域は、本明細書において下記に定義されるゼオライト触媒のようなゼオライト触媒を含まない。つまり第1のウオッシュコート領域はゼオライト触媒を含まなくともよい。
【0074】
しかしながら、第1のウオッシュコート領域が、ロジウム、アルカリ金属、及び/又はアルカリ土類金属、特に支持材(例えば第1の支持材、白金支持材及び/又はパラジウム支持材)の上に配置又は支持されたアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含まないことが好ましい。つまり、第1のウオッシュコート領域は、ロジウム、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属、特に支持材の上に配置又は支持されたアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含まなくともよい。
【0075】
第1のウオッシュコート領域は、典型的にはインジウム及び/又はイリジウムを含まない。更に好ましくは、第2のウオッシュコート領域は、インジウム、イリジウム及び/又はマグネシウムを含まない。
【0076】
第1のウオッシュコート領域が、酸化セリウム又はその混合若しくは複合酸化物、例えば(i)酸化セリウム及びアルミナの混合若しくは複合酸化物、及び/又は(ii)酸化セリウム及びジルコニアの混合若しくは複合酸化物を含まないことが好ましい。
【0077】
これに加えて又は代えて、第1のウオッシュコート領域は、ロジウム、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属、特に第1の支持材の上に配置又は支持されたアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を実質的に含まなくともよい。つまり、第1のウオッシュコートは、ロジウム、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属、特に第1の支持材の上に配置又は支持されたアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含まなくともよい。
【0078】
本発明の酸化触媒は、第2のウオッシュコート領域を含む。第2のウオッシュコート領域が、一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO)に酸化するために適していることが好ましい。
【0079】
第2のウオッシュコート領域は白金族金属(PGM)を含む。
【0080】
典型的には、PGMは、白金、パラジウム及び白金とパラジウムの組み合わせからなる群より選択される。PGMは白金であってよい。PGMは本質的に白金からなってよい(例えばPGMは白金のみである)。PGMはパラジウムであってもよい。PGMは本質的にパラジウムからなってもよい(例えばPGMはパラジウムのみである)。PGMは白金とパラジウムの組み合わせであってもよい。PGMは本質的に白金及びパラジウムであってよい(例えばPGMは白金及びパラジウムのみである)。PGMが、白金及び白金とパラジウムの組み合わせからなる群より選択されることが好ましい。
【0081】
第2のウオッシュコート領域は、唯一の白金属金属としてPGMを含みうる。つまり、第2のウオッシュコート領域中に存在する唯一のPGMはPGMによって規定される。
【0082】
PGMが白金とパラジウムの組み合わせであるとき、PGMは合金、好ましくは二種の金属からなる合金の形態とすることができる。つまり、PGMは、白金とパラジウムを含むか、又はそのような合金から本質的になる。
【0083】
PGMがパラジウム又は白金とパラジウムの組み合わせであるとき、第2のウオッシュコート領域は更に金を含むことができる。第2のウオッシュコート領域はパラジウム−金の合金を含んでもよい(例えば第1の白金族金属のパラジウムは金を含む合金として存在してよい)。金(Au)を含む触媒は、国際公開第2012/120292号に記載の方法を使用して調製することができる。
【0084】
第2のウオッシュコート領域がパラジウム−金合金のような金を含むとき、通常第2のウオッシュコート領域に含まれるパラジウム(Pd)の総質量対金(Au)の総質量の比は、9:1〜1:9、好ましくは5:1〜1:5、更に好ましくは2:1〜1:2である。
【0085】
第2のウオッシュコート領域は、典型的には、5〜300g ft−3のPGMの総ローディングを有する。第2のウオッシュコート領域が、10〜250g ft−3(例えば75〜175g ft−3)、好ましくは15〜200g ft−3(例えば50〜150g ft−3)、更に好ましくは20〜150g ft−3のPGMの総ローディングを有することが好ましい。
【0086】
PGMが白金とパラジウムの組み合わせであるとき、典型的には、第2のウオッシュコート領域に含まれる白金対パラジウムの重量比は、20:1〜1:20(例えば15:1〜1:15)、好ましくは10:1〜1:10(例えば7.5:1〜1:7.5)、更に好ましくは5:1〜1:5(例えば3:1〜1:3)、及びそれよりも更に好ましくは2.5:1〜1:1である。
【0087】
PGMが白金とパラジウムの組み合わせであるとき、第2のウオッシュコート領域が、パラジウムの総重量以上の白金の総重量を含むことが好ましい(例えばPt:Pdの重量比は≧1:1である)。更に好ましくは、第2のウオッシュコート領域は、パラジウムの総重量を上回る白金の総重量を含む(例えばPt:Pdの重量比は>1:1である)。有利なNO酸化活性は、第2のウオッシュコート領域が白金リッチであるときに得られる。
【0088】
通常、第2のウオッシュコート領域に含まれる白金対パラジウムの重量比が、20:1〜1:20(例えば15:1〜1:15)、好ましくは10:1〜1.25:1(例えば7.5:1〜1.5:1)、及び更に好ましくは5:1〜2:1であることが好ましい。
【0089】
典型的には、PGMは、第2の支持材上に配置又は支持される。PGMは、第2の支持材の上に直接配置されるか、又は第2の支持材によって直接支持されてよい(例えばPGMと第2の支持材の間に介在する支持材はない)。例えば、白金及び/又はパラジウムを、第2の支持材上において分散させることができる。
【0090】
典型的には、第2の支持材は、耐火性金属酸化物を含むか、又は同酸化物から本質的になる。耐火性金属酸化物は、典型的には、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、及びこれらの混合又は複合酸化物、例えばこれらのうちの二つ以上の混合又は複合酸化物からなる群より選択される。例えば、耐火性金属酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、シリカーアルミナ、チタニア−アルミナ、ジルコニア−アルミナ、セリア−アルミナ、チタニア−シリカ、ジルコニア−シリカ、ジルコニア−チタニア、セリア−ジルコニア及びアルミナ−マグネシウム酸化物からなる群より選択されてよい。
【0091】
第2の支持材、又はその耐火性金属酸化物は、任意選択的にドープ(例えばドーパントで)されてもよい。ドーパントは、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、シリコン(Si)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)、ネオジム(Nd)及びこれらの酸化物からなる群より選択することができる。
【0092】
第2の支持材、又はその耐火性金属酸化物がドープされているとき、ドーパントの総量は0.25〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%(例えば約1重量%)である。
【0093】
第2の支持材又はその耐火性金属酸化物は、ドーパントでドープされたアルミナを含むか、又はそのようなアルミナから本質的になってよい。第2の支持材又はその耐火性金属酸化物が、ドーパントでドープされたアルミナを含むか、又はそのようなアルミナから本質的になることが特に好ましい。マンガン(Mn)、白金(Pt)及びドープされたアルミナ支持材、特にシリカでドープされたアルミナ支持材の組み合わせが、優れたNO酸化活性を提供し、その耐用年数にわたって酸化触媒のNO酸化活性を安定させることが判明した。
【0094】
アルミナは、シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、チタン(Ti)、又はジルコニウム(Zr)又はこれらのうちの二つ以上の組み合わせを含むドーパントでドープすることができる。ドーパントは、シリコンの酸化物、マグネシウムの酸化物、バリウムの酸化物、ランタンの酸化物、セリウムの酸化物、チタンの酸化物又はジルコニウムの酸化物を含むか、又はそれから本質的になってよい。好ましくは、ドーパントは、シリコン、マグネシウム、バリウム、セリウム、又はその酸化物、特にシリコン、セリウム、又はその酸化物を含むか、又はそれから本質的になる。更に好ましくは、ドーパントは、シリコン、マグネシウム、バリウム、又はこれらの酸化物、特にシリコン、マグネシウム、又はその酸化物、特にシリコン又はその酸化物を含むか、又はそれから本質的になる。
【0095】
一般に、第2の支持材、又はその耐火性金属酸化物が、アルミナの混合若しくは複合酸化物(例えばシリカ−アルミナ、アルミナ−マグネシウム酸化物又はアルミナとセリアの混合物)を含むか又はそのような混合若しくは複合酸化物から本質的になるとき、好ましくは、アルミナの混合若しくは複合酸化物は、少なくとも50〜99重量%のアルミナ、好ましくは70〜95重量%のアルミナ、更に好ましくは75〜90重量%のアルミナを含む。
【0096】
ドーパントでドープされたアルミナの例には、シリカでドープされたアルミナ、酸化マグネシウムでドープされたアルミナ、バリウム若しくは酸化バリウムでドープされたアルミナ、酸化ランタンでドープされたアルミナ、又はセリアでドープされたアルミナ、特にシリカでドープされたアルミナ、酸化ランタンでドープされたアルミナ、又はセリアでドープされたアルミナが含まれる。ドーパントでドープされたアルミナが、シリカでドープされたアルミナ、バリウム若しくは酸化バリウムでドープされたアルミナ、又は酸化マグネシウムでドープされたアルミナであることが好ましい。更に好ましくは、ドーパントでドープされたアルミナは、シリカでドープされたアルミナ、又は酸化マグネシウムでドープされたアルミナである。それよりも更に好ましくは、ドーパントでドープされたアルミナは、シリカでドープされたアルミナである。
【0097】
アルミナがシリカでドープされたアルミナであるとき、このアルミナは、総量0.5〜45重量%(即ちアルミナの重量%)、好ましくは1〜40重量%、更に好ましくは1.5〜30重量%(例えば1.5〜10重量%)、特に2.5〜25重量%、具体的には3.5〜20重量%(例えば5〜20重量%)、更にそれよりも好ましくは4.5〜15重量%の量のシリカでドープされている。
【0098】
アルミナが酸化マグネシウムでドープされたアルミナであるとき、このアルミナは、上記に規定された量又は1〜30重量%(即ちアルミナの重量%)、好ましくは5〜25重量%の量のマグネシウムでドープされている。
【0099】
第2の支持材、又はその耐火性金属酸化物が、セリア−ジルコニアを含むか又はセリア−ジルコニアから本質的になるとき、セリア−ジルコニアは、20〜95重量%のセリアと5〜80重量%のジルコニア(例えば50〜95重量%のセリアと5〜50重量%のジルコニア)、好ましくは35〜80重量%のセリアと20〜65重量%のジルコニア(例えば55〜80重量%のセリアと20〜45重量%のジルコニア)、更に好ましくは45〜75重量%のセリアと25〜55重量%のジルコニアから本質的になってよい。
【0100】
これに代えて又は加えて、第2の支持材、又はその耐火性金属酸化物は、スピネル構造を有するアルカリ土類金属アルミネートといったアルカリ土類金属アルミネートを含むか、又は同アルミネートから本質的になっていてよい。
【0101】
典型的には、アルカリ土類金属アルミネートは、アルミン酸マグネシウム(MgAl)、アルミン酸カルシウム(CaAl)、アルミン酸ストロンチウム(SrAl)、又はアルミン酸バリウム(BaAl)、又はこれらのうちの二つ以上の混合物である。好ましくは、アルカリ土類金属アルミネートはアルミン酸マグネシウム(MgAl)である。
【0102】
第2のウオッシュコート領域は、典型的には、0.1〜4.5g in−3(例えば0.25〜4.0g in−3)、好ましくは0.5〜3.0g in−3、更に好ましくは0.6〜2.5g in−3(例えば0.75〜1.5g in−3)の量の第2の支持材を含む。
【0103】
一般に、第1のウオッシュコート領域と第2のウオッシュコート領域は異なる組成(即ち異なる成分及び/又は異なる成分の量)を有する。
【0104】
第2のウオッシュコート領域の第1の実施態様では、第2のウオッシュコート領域はマンガン(Mn)を含む。マンガンは、元素形態で、又は酸化物として存在することができる。第2のウオッシュコート領域は、典型的には、マンガン又はその酸化物を含む。
【0105】
マンガン(Mn)は、典型的には、第2の支持材上に配置又は支持される。マンガン(Mn)は、第2の支持材の上に直接配置されるか、又は第2の支持材によって直接支持されてよい(例えばMnと第2の支持材の間に介在する支持材はない)。
【0106】
第2のウオッシュコート領域は、典型的には、5〜500g ft−3のマンガン(Mn)の総ローディングを有する。第2のウオッシュコート領域が、10〜250g ft−3(例えば75〜175g ft−3)、好ましくは15〜200g ft−3(例えば50〜150g ft−3)、更に好ましくは20〜150g ft−3のマンガン(Mn)の総ローディングを有することが好ましい。
【0107】
第2のウオッシュコート領域がマンガン(Mn)を含むとき、PGMは白金を含む(例えばPGMは、白金及び白金とパラジウムの組み合わせからなる群より選択される)。Mnを含む第2のウオッシュコート領域が、特にCO、HC及び一部のNOを酸化する第1のウオッシュコート領域と組み合わされるとき、良好なNO酸化を提供できることが判明した。
【0108】
典型的には、第2のウオッシュコート領域に含まれるMn:Ptの重量比は、≦5:1、好ましくは<5:1である。
【0109】
一般に、第2のウオッシュコート領域に含まれるMn:Ptの重量比は、≧0.2:1(例えば≧0.5:1)、好ましくは>0.2:1(例えば>0.5:1)である。
【0110】
第2のウオッシュコート領域に含まれるマンガン(Mn)対白金の重量比は、5:1〜0.2:1、例えば5:1〜0.5:1(例えば5:1〜2:3又は5:1〜1:2)、好ましくは4.5:1〜1:1(例えば4:1〜1.1:1)、更に好ましくは4:1〜1.5:1である。Mn:Ptの重量比は、本明細書に記載のNOに対する活性を得るうえで重要でありうる。
【0111】
白金(Pt)は、典型的には、第2の支持材の上に配置又は支持される。白金は、第2の支持材の上に直接配置されるか、又は第2の支持材によって直接支持されてよい(例えば白金と第2の支持材の間に介在する支持材はない)。例えば、白金を、第2の支持材上において分散させることができる。
【0112】
第2のウオッシュコート領域は、典型的には、5〜300g ft−3の白金の総ローディングを有する。第2のウオッシュコート領域が、10〜250g ft−3(例えば75〜175g ft−3)、好ましくは15〜200g ft−3(例えば50〜150g ft−3)、更に好ましくは20〜150g ft−3の白金の総ローディングを有することが好ましい。
【0113】
第2のウオッシュコート領域は、更にパラジウムを含んでもよい(例えばPGMは白金とパラジウムの組み合わせである)。パラジウムは、第2の支持材の上に配置又は支持されてよい。
【0114】
第2のウオッシュコート領域がパラジウムを含むとき、白金対パラジウムの重量比は、通常≧2:1(例えばPt:Pdは1:0〜2:1)、更に好ましくは≧4:1(例えばPt:Pdは1:0〜4:1)である。
【0115】
通常、第2のウオッシュコート領域が実質的にパラジウムを含まないこと、特に第2の支持材上に配置又は支持されたパラジウム(Pd)を実質的に含まないことが好ましい。更に好ましくは、第2のウオッシュコート領域は、パラジウム、特に第2の支持材の上に配置又は支持されたパラジウムを含まない。第2のウオッシュコート領域における、特に大きな量でのパラジウムの存在は、NO酸化活性に有害となりうる。パラジウムのNO酸化活性は、ディーゼル酸化触媒の典型的な使用条件下において通常小さい。また、パラジウムが存在する場合、それは存在する白金の一部と反応して合金を形成しうる。白金−パラジウム合金は、白金自体がそうであるようにNO酸化に対して活性でないため、これも、第2のウオッシュコート領域のNO酸化活性に有害となりうる。
【0116】
通常、第2のウオッシュコート領域は白金(Pt)を唯一の白金族金属として含む。第2のウオッシュコート領域は、好ましくは、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)及び/又はイリジウム(Ir)といった一又は複数の他の白金族金属を含まない。更に好ましくは、第2のウオッシュコート領域は、第2の支持材の上に支持された、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)及び/又はイリジウム(Ir)といった一又は複数の他の白金族金属を含まない。
【0117】
第2のウオッシュコート領域の第2の実施態様では、第2のウオッシュコート領域は、本明細書において下記に定義されるゼオライト触媒のようなゼオライト触媒を含む。
【0118】
第2のウオッシュコート領域がゼオライト触媒を含むとき、第2のウオッシュコート領域に含まれる、第2の支持材の上に支持された白金対パラジウムの総重量比は、≧2:1(例えばPt:Pdは1:0〜2:1)、好ましくは≧4:1(例えばPt:Pdは1:0〜4:1)である。
【0119】
一般に、ゼオライト触媒は、貴金属及びゼオライトを含むか、又はそれらから本質的になる。ゼオライト触媒は、国際公開第2012/166868号に記載の方法により調製することができる。
【0120】
貴金属は、典型的には、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)及びこれらのうちの二つ以上の混合物からなる群より選択される。好ましくは、貴金属は、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、及びこれらのうちの二つ以上の混合物からなる群より選択される。更に好ましくは、貴金属は、パラジウム(Pd)、白金(Pt)及びロジウム(Rh)からなる群より選択される。それよりも更に好ましくは、貴金属はパラジウム(Pd)である。ゼオライト触媒が唯一の貴金属としてパラジウムを含むことが更に好ましい。
【0121】
ゼオライト触媒は、更に卑金属を含んでもよい。つまり、ゼオライト触媒は、貴金属、ゼオライト及び任意選択的な卑金属を含むか、又はそれらから本質的になってよい。
【0122】
卑金属は、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、及びスズ(Sn)、並びにこれらのうちの二つ以上の混合物からなる群より選択することができる。卑金属が、鉄、銅及びコバルトからなる群、更に好ましくは鉄及び銅からなる群より選択されることが好ましい。更に好ましくは、卑金属は鉄である。
【0123】
別の構成では、ゼオライト触媒は卑金属を実質的に含まなくともよい。つまり、ゼオライト触媒は卑金属を含まない。
【0124】
一般に、ゼオライト触媒が卑金属を含まないことが好ましい。
【0125】
ゼオライトは、典型的には、アルミノシリケートゼオライト及びアルミノホスフェートゼオライトから選択される。
【0126】
一般に、ゼオライトは、金属置換ゼオライト(例えば金属置換アルミノシリケートゼオライト又は金属置換アルミノホスフェートゼオライト)でよい。金属置換ゼオライトの金属は貴金属でもよい(例えばゼオライトは貴金属置換ゼオライトである)。ゼオライト触媒が卑金属を含むとき、ゼオライトは貴金属及び卑金属置換ゼオライトである。
【0127】
ゼオライト触媒は通常、ゼオライトの孔の内部に位置する貴金属を、少なくとも1重量%(即ちゼオライト触媒の貴金属の量の)、好ましくは少なくとも5重量%、更に好ましくは少なくとも10重量%、例えば少なくとも25重量%、それよりも更に好ましくは少なくとも50重量%有する。
【0128】
ゼオライトは、小孔径ゼオライト(即ち8の面体原子の最大環サイズを有するゼオライト)、中間孔径ゼオライト(即ち10の四面体原子の最大環サイズを有するゼオライト)及び大孔径ゼオライト(即ち12の四面体原子の最大環サイズを有するゼオライト)から選択することができる。更に好ましくは、ゼオライトは、小孔径ゼオライト及び中間孔径ゼオライトから選択される。
【0129】
典型的には、ゼオライトは、アルミニウム、シリコン,及び/又はリンからなる。ゼオライトは通常、酸素原子の共有により接合されるSiO、AlO,及び/又はPOの三次元配列を有する。ゼオライトはアニオン性フレームワークを有してもよい。アニオン性フレームワークの電荷は、アルカリ及び/又はアルカリ土類元素(例えば、Na、K、Mg、Ca、Sr、及びBa)のカチオン、アンモニウムカチオン及び/又は陽子といったカチオンによって相殺されうる。
【0130】
第1のゼオライト触媒の実施態様では、ゼオライトは小孔径ゼオライトである。小孔径ゼオライトは、好ましくは、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG 及びZON、並びにこれらのうちのいずれか二つ以上の混合物又は連晶からなる群より選択されるフレームワークタイプを有する。連晶は、好ましくは、KFI−SIV、ITE−RTH、AEW−UEI、AEI−CHA、及びAEI−SAVから選択される。更に好ましくは、小孔径ゼオライトは、AEI、CHA又はAEI−CHA連晶であるフレームワークタイプを有する。それよりも更に好ましくは、小孔径ゼオライトは、AEI又はCHAであるフレームワークタイプを有する。
【0131】
第2のゼオライト触媒の実施態様では、ゼオライトは、AEI、MFI、EMT、ERI、MOR、FER、BEA、FAU、CHA、LEV、MWW、CON及びEUO、並びにこれらのいずれか二つ以上の混合物からなる群より選択されるフレームワークタイプを有する。
【0132】
第3のゼオライト触媒の実施態様では、ゼオライトは中間孔径ゼオライトである。中間孔径ゼオライトは、好ましくは、MFI、FER、MWW及びEUOからなる群より選択されるフレームワークタイプを有し、更に好ましくはフレームワークタイプはMFIである。
【0133】
第4のゼオライト触媒の実施態様では、ゼオライトは大孔径ゼオライトである。大孔径ゼオライトは、好ましくは、CON、BEA、FAU、MOR及びEMTからなる群より選択されるフレームワークタイプを有し、更に好ましくはフレームワークタイプはBEAである。
【0134】
ゼオライトは、典型的には、10〜200(例えば10〜40)、更に好ましくは15〜80(例えば15〜30)のシリカ対アルミナモル比(SAR)を有する。
【0135】
第1、第3及び第4のゼオライト触媒の実施態様のゼオライト触媒は(及び第2のゼオライト触媒の実施態様のフレームワークタイプのいくつかについても)、750cm−1〜1050cm−1の範囲に特徴的な吸収ピークを有する赤外スペクトルを有しうる(ゼオライト自体の吸収ピークに加えて)。好ましくは、特徴的な吸収ピークは、800cm−1〜1000cm−1の範囲内、更に好ましくは850cm−1〜975cm−1の範囲内である。
【0136】
第2のウオッシュコート領域の第2の実施態様では、第2のウオッシュコート領域は、マンガン又はその酸化物を実質的に含まない。第2のウオッシュコート領域は、好ましくは、マンガン又はその酸化物を含まない。
【0137】
驚くべきことに、第1のゼオライト触媒の実施態様のゼオライト触媒を含むウオッシュコート領域は、受動的なNO吸着(PNA)活性を有することが判明した。PNA活性を有するウオッシュコート領域は、ディーゼルエンジンのスタートアップの直後など、排気ガスの温度が比較的冷たいとき、NOを貯蔵するために使用することができる。ゼオライト触媒によるNOの貯蔵は、第1のウオッシュコート領域の白金及びマンガン成分によって一酸化窒素(NO)から二酸化窒素(NO)への有意な酸化が起こる温度より低い温度(例えば200℃未満)で起こる。
【0138】
ディーゼルエンジンが温まると、排気ガスの温度は上昇し、ゼオライト触媒(及びPNA活性を有するウオッシュコート領域)の温度も上昇する。ゼオライト触媒は、このような上昇温度(例えば200℃以上)において、吸着したNOを放出する。ゼオライト触媒は、第2のウオッシュコート領域の白金及びマンガン成分が、NOを酸化するためのそれらの実効温度に達したときに、吸着したNOを放出することができるか、又はゼオライト触媒は、この実効温度をわずかに下回る温度で、吸収したNOを放出することができる。ゼオライト触媒は、予想外に、吸着したNOの高い放出温度を有することが判明した。
また、予想外に、第2のゼオライト触媒の実施態様のゼオライト触媒を含むウオッシュコート領域が、コールドスタート触媒(CSCTM)活性を有することが判明した。このような活性は、比較的低い排気ガス温度(例えば200℃未満)においてNO及び炭化水素(HC)を吸着することにより、コールドスタート期間の間の排出を低減することができる。吸着したNO及び/又はHCは、ゼオライト触媒の温度がNO及び/又はHCを酸化するための他の触媒成分の実効温度に近づくか又は同実効温度を上回ると、ウオッシュコート領域により放出される。ゼオライト触媒のコールドスタート触媒活性は、マンガンを含有する第1のウオッシュコート領域と組み合わせたとき、特に有益である。
【0139】
通常、(第2のウオッシュコート領域の第1及び第2の実施態様を含め、)第2の支持材、又はその耐火性金属酸化物が、マンガンを含むか又はマンガンから本質的になるドーパントでトープされていないことが好ましい。したがって、第2の支持材、又はその耐火性金属酸化物は、スズ、マンガン、インジウム、第8族金属(例えばFe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPt、特にIr)及びこれらの組合せからなる群より選択される促進剤のような促進剤で増強されない。
【0140】
いくつかの用途では、一般に、第2のウオッシュコート領域が炭化水素の吸着材、特にゼオライトを実質的に含まないことが好ましい。つまり、第2のウオッシュコート領域は炭化水素の吸着材を含まなくともよい。
【0141】
更に、第2のウオッシュコート領域が上述のゼオライト触媒のようなゼオライト触媒を実質的に含まないことが好ましい。つまり第2のウオッシュコート領域はゼオライト触媒を含まなくともよい。
【0142】
第2のウオッシュコート領域は、典型的にはインジウム及び/又はイリジウムを含まない。更に好ましくは、第2のウオッシュコート領域は、インジウム、イリジウム及び/又はマグネシウムを含まない。
【0143】
第2のウオッシュコート領域が、酸化セリウム又はその混合若しくは複合酸化物、例えば(i)酸化セリウム及びアルミナの混合若しくは複合酸化物、及び/又は(ii)酸化セリウム及びジルコニアの混合若しくは複合酸化物を含まないことが好ましい。
【0144】
これに加えて又は代えて、第2のウオッシュコート領域は、ロジウム、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属、特に第2の支持材の上に配置又は支持されたアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を実質的に含まなくともよい。つまり、第2のウオッシュコートは、ロジウム、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属、特に第2の支持材の上に配置又は支持されたアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含まなくともよい。
【0145】
典型的には、第1のウオッシュコート領域は、>25%の全濃度の白金族金属(即ち酸化触媒の)を含む。第1のウオッシュコート領域が、>30%、更に好ましくは≧40%の全濃度の白金族金属を含むことが好ましい。
【0146】
一般に、第1のウオッシュコート領域における白金の全濃度は、第2のウオッシュコート領域におけるPGMの全濃度より大きい。
【0147】
典型的には、酸化触媒は、0.1〜4.5g in−3(例えば0.25〜4.2g in−3)、好ましくは0.2〜3.8g in−3、例えば0.3〜3.0g in−3、特に0.5〜2.5g in−3(例えば0.75〜2.3g in−3)、また更に好ましくは0.6〜2.0g in−3、及びそれよりも更に好ましくは0.75〜1.75g in−3の全濃度の支持材(例えば第1の支持材及び第2の支持材)を含む。
【0148】
第1のウオッシュコート領域及び/又は第2のウオッシュコート領域は、基材の上に配置又は支持されてもよい。
【0149】
第1のウオッシュコート領域は、基材の上に直接配置されてもよい(即ち、第1のウオッシュコート領域は基材の表面と接する;図1〜5参照)。第2のウオッシュコート領域は:
(a)第1のウオッシュコート領域の上に配置又は支持される(例えば図2、4及び5参照);及び/又は
(b)基材の上に直接配置される[即ち第2のウオッシュコート領域は基材の表面と接する](例えば図1、3、4参照);及び/又は
(c)第1のウオッシュコート領域と接する[即ち第2のウオッシュコート領域は第1のウオッシュコート領域と隣接又は境界を接する]。
【0150】
第2のウオッシュコート領域が基材の上に直接配置されるとき、第2のウオッシュコート領域の一部又は一部分は第1のウオッシュコート領域と接することができるか、又は第1のウオッシュコート領域と第2のウオッシュコート領域は分離されてもよい(例えば空隙により)。
【0151】
第2のウオッシュコート領域が第1のウオッシュコート領域の上に配置又は支持されるとき、第2のウオッシュコート領域の全部又は一部は、好ましくは第1のウオッシュコート領域の上に直接配置される(即ち第2のウオッシュコート領域は第1のウオッシュコート領域の表面と接する)。第2のウオッシュコート領域は第2のウオッシュコート層とすることができ、第1のウオッシュコート領域は第1のウオッシュコート層とすることができる。
【0152】
第2のウオッシュコート領域は基材の上に直接配置されてもよい(即ち第2のウオッシュコート領域は基材の表面と直接接する;図1、3及び4参照)。第1のウオッシュコート領域は:
(i)第2のウオッシュコート領域の上に配置又は支持される(例えば図3及び4参照);及び/又は
(ii)基材の上に直接配置される[即ち第1のウオッシュコート領域は基材の表面と接する](例えば図3及び4参照);及び/又は
(iii)第2のウオッシュコート領域と接する[即ち第1のウオッシュコート領域は第2のウオッシュコート領域と隣接又は境界を接する]。
【0153】
第1のウオッシュコート領域は、第2のウオッシュコート領域の上に直接配置されてもよい(即ち第1のウオッシュコート領域は第2のウオッシュコート領域の表面と接する)。
【0154】
第1のウオッシュコート領域の一部分又は一部のみが第2のウオッシュコート領域上に配置又は支持されることが好ましい。つまり、第1のウオッシュコート領域は第2のウオッシュコート領域と完全に重複することも、又は第2のウオッシュコート領域を覆うこともない。
【0155】
一般に、第1のウオッシュコート領域及び第2のウオッシュコート領域の両方が、基材の上に直接配置されないということもありうる(即ち第1のウオッシュコート領域も第2のウオッシュコート領域も、基材の表面と接しない)。
【0156】
本発明の酸化触媒では、第2のウオッシュコート領域は通常、基材の出口端において排気ガスと接触するように配置される。これは、基材の出口端に第2のウオッシュコート領域/層/ゾーンを配置することにより達成される。
【0157】
第2のウオッシュコート領域は、典型的には、第1のウオッシュコート領域と接触した後の排気ガスと接触するように配置又は配向される。これは、第2のウオッシュコート領域を基材の上において第1のウオッシュコート領域に対して様々に配置することにより達成される。
【0158】
つまり、第2のウオッシュコート領域は:
(a)第2のウオッシュコート領域が基材の出口端に配置された第2のウオッシュコートゾーンであり、且つ任意選択的に第1のウオッシュコート領域が基材の出口端に配置された第1のウオッシュコートゾーンであるとき;
(b)第1のウオッシュコート領域が第1のウオッシュコート層であり、第2のウオッシュコート領域が第2のウオッシュコートゾーンであり、第2のウオッシュコートゾーンが基材の出口端において第1のウオッシュコート層の上に配置されるとき;又は
(c)第1のウオッシュコート領域が第1のウオッシュコート層であり、第2のウオッシュコート領域が第2のウオッシュコート層であり、第2のウオッシュコート層が第1のウオッシュコート層の上に配置されるとき、
第1のウオッシュコート領域と接触した後の排気ガスと接触するように配置又は配向される。
【0159】
典型的には、第1のウオッシュコート領域は、第2のウオッシュコート領域の前に排気ガスと接触するように配置又は配向される。したがって、第1のウオッシュコート領域は、排気ガスが酸化触媒に進入したときに排気ガスと接触するように配置され、第2のウオッシュコート領域は、排気ガスが酸化触媒を出てゆくときに排気ガスと接触するように配置される。図1及び6から10に示す第1及び第2のウオッシュコート領域をゾーンに分ける配置は、この点で特に有利である。
【0160】
後述する第1から第3の酸化触媒構成のいずれか一つにおいて、第2のウオッシュコート領域は、基材の出口端において、排気ガスが第1のウオッシュコート領域と接触した後で、排気ガスと接触するように配置される。
【0161】
第2のウオッシュコート領域は、第2のウオッシュコートゾーンであることが好ましい。更に好ましくは、第2のウオッシュコートゾーンは、基材の出口端に又はその近くに配置される。
【0162】
第2のウオッシュコートゾーンは、典型的には、基材の長さの10〜90%(例えば10〜45%)、好ましくは15〜75%(例えば15〜40%)、更に好ましくは20〜70%(例えば30〜65%、25〜45%など)、それよりも更に好ましくは25〜65%(例えば35〜50%)の長さを有する。
【0163】
第1の酸化触媒構成では、第1のウオッシュコート領域は、第2のウオッシュコートゾーンの上流に配置又は支持される。好ましくは、第1のウオッシュコート領域は第1のウオッシュコートゾーンである。更に好ましくは、第1のウオッシュコートゾーンは、基材の入口端に又はその近くに配置又は支持される。
【0164】
典型的には、第1のウオッシュコートゾーンは、基材の長さの10〜90%(例えば10〜45%)、好ましくは15〜75%(例えば15〜40%)、更に好ましくは20〜70%(例えば30〜65%、25〜45%など)、それよりも更に好ましくは25〜65%(例えば35〜50%)の長さを有する。第1のウオッシュコートゾーンの長さが第2のウオッシュコートゾーンの長さより大きいことが好ましい。
【0165】
第1のウオッシュコートゾーンは、第2のウオッシュコートゾーンに隣接することができる。好ましくは、第1のウオッシュコートゾーンは第2のウオッシュコートゾーンと接する。第1のウオッシュコートゾーンが第2のウオッシュコートゾーンに隣接するか、又は第1のウオッシュコートゾーンが第2のウオッシュコートゾーンと接するとき、第1のウオッシュコートゾーンと第2のウオッシュコートゾーンは、層(例えば単層)として基材の上に配置又は支持されてよい。つまり、層(例えば単一の)は、第1及び第2のウオッシュコートゾーンが互いに隣接する又は接するとき、基材の上に形成されてもよい。このような構成は背圧の問題を回避できる。
【0166】
第1のウオッシュコートゾーンは第2のウオッシュコートゾーンから分離させることもできる。第1のウオッシュコートゾーンと第2のウオッシュコートゾーンの間には空隙(例えば空間)があってもよい。
【0167】
第1のウオッシュコートゾーンは第2のウオッシュコートゾーンと重複してもよい。つまり、第1のウオッシュコートゾーンの端部部分又は端部は第2のウオッシュコートゾーンの上に配置又は支持されてよい。第1のウオッシュコートゾーンは、完全に又は部分的に第2のウオッシュコートゾーンと重複することができる。第1のウオッシュコートゾーンが第2のウオッシュコートゾーンと重複するとき、第1のウオッシュコートゾーンが部分的にのみ第2のウオッシュコートゾーンと重複することが好ましい(即ち第2のウオッシュコートゾーンの上部の最も外側の表面が第1のウオッシュコートゾーンによって完全に覆われることがない)。
【0168】
別の構成では、第2のウオッシュコートゾーンは第1のウオッシュコートゾーンと重複することができる。つまり、第2のウオッシュコートゾーンの端部部分又は端部は第1のウオッシュコートゾーンの上に配置又は支持されてよい。第2のウオッシュコートゾーンは通常、部分的にのみ第1のウオッシュコートゾーンと重複する。
【0169】
第1のウオッシュコートゾーンと第2のウオッシュコートゾーンが実質的に重複しないことが好ましい。
【0170】
第2の酸化触媒構成では、第1のウオッシュコート領域は第1のウオッシュコート層である。第1のウオッシュコート層が基材の全長(即ち実質的全長)、特に基材モノリスのチャネルの全長に延びることが好ましい。
【0171】
第2のウオッシュコートゾーンは、典型的には、第1のウオッシュコート層の上に配置又は支持される。好ましくは、第2のウオッシュコートゾーンは、第1のウオッシュコート層の上に直接配置される(即ち第2のウオッシュコートゾーンは第1のウオッシュコート層の表面と接する)。
【0172】
第2のウオッシュコートゾーンが第1のウオッシュコート層の上に配置又は支持されるとき、第2のウオッシュコートゾーンの全長が第1のウオッシュコート層の上に配置又は支持されたことが好ましい。第2のウオッシュコートゾーンの長さは第1のウオッシュコート層の長さより小さい。
【0173】
第3の酸化触媒構成では、第1のウオッシュコート領域は第1のウオッシュコート層である。第1のウオッシュコート層が基材の全長(即ち実質的全長)、特に基材モノリスのチャネルの全長に延びることが好ましい。
【0174】
第2のウオッシュコート領域は第2のウオッシュコート層である。第2のウオッシュコート層が基材の全長(即ち実質的全長)、特に基材モノリスのチャネルの全長に延びることが好ましい。
【0175】
第2のウオッシュコート層は、第1のウオッシュコート層の上に配置又は支持される。好ましくは、第2のウオッシュコート層は、第1のウオッシュコート層の上に直接配置される(即ち第2のウオッシュコート層は第1のウオッシュコート層の表面と接する)。
【0176】
第2のウオッシュコート層が第1のウオッシュコート層の上に配置されるとき、特に第2のウオッシュコート層がマンガンを含まないとき、Mn含有ウオッシュコート領域は、ディーゼル燃料由来の硫黄による毒作用に驚くほど耐性である。
【0177】
酸化触媒は更に第3のウオッシュコート領域を含むことができる。つまり、第1のウオッシュコート領域及び第2のウオッシュコート領域の少なくとも一つが、第3のウオッシュコート領域の上に配置又は支持されうる。第3のウオッシュコート領域は、白金族金属含んでも含まなくてもよい。
【0178】
第3のウオッシュコート領域は基材の上に直接配置されてもよい(即ち第3のウオッシュコート領域は基材の表面と直接接する;図6、8及び10参照)。第2のウオッシュコート領域は:
(a)第3のウオッシュコート領域の上に配置又は支持されうる(例えば図6、8及び10参照);及び/又は
(b)基材の上に直接配置されうる[即ち第2のウオッシュコート領域は基材の表面と接する];及び/又は
(c)第3のウオッシュコート領域と接しうる[即ち第2のウオッシュコート領域は第3のウオッシュコート領域と隣接又は接触する]。
【0179】
これに加えて又は代えて、第3のウオッシュコート領域は、第1のウオッシュコート領域及び/又は第2のウオッシュコート領域の上に配置又は支持されてもよい(例えば図7及び9参照)。
【0180】
第3のウオッシュコート領域が基材の上に直接配置されるとき、第1のウオッシュコート領域は、第3のウオッシュコート領域の上に配置又は支持されてもよい(例えば図6参照)。第2のウオッシュコート領域も、第3のウオッシュコート領域の上に配置又は支持されてよい。第3のウオッシュコート領域は、第3のウオッシュコート層であってよく、第1のウオッシュコート領域は第1のウオッシュコートゾーンであってよく、第2のウオッシュコート領域は第2のウオッシュコートゾーンであってよい。第2のウオッシュコート領域/ゾーンは、第1のウオッシュコート領域/ゾーンと接してよい[即ち第2のウオッシュコート領域/ゾーンは、第1のウオッシュコート領域/ゾーンと隣接又は接触する]。別の構成では、第1のウオッシュコート領域/ゾーンと第2のウオッシュコート領域/ゾーンは分離していてもよい(例えば空隙によって)。
【0181】
第3のウオッシュコート領域が基材の上に直接配置されるとき、第1のウオッシュコート領域は基材の上に直接配置されてもよい(例えば図8及び10参照)。第2のウオッシュコート領域は、第3のウオッシュコート領域及び/又は第1のウオッシュコート領域の上に配置又は支持されてよく、好ましくは第2のウオッシュコート領域は第3のウオッシュコート領域の上に配置又は支持される。第3のウオッシュコート領域は第3のウオッシュコートゾーンであってもよく、第1のウオッシュコート領域は第1のウオッシュコートゾーンであってもよい。第3のウオッシュコート領域/ゾーンは、第1のウオッシュコート領域/ゾーンと接することができる[即ち第3のウオッシュコート領域/ゾーンは、第1のウオッシュコート領域/ゾーンと隣接又は境界を接する]。別の構成では、第1のウオッシュコート領域/ゾーンと第3のウオッシュコート領域/ゾーンは分離していてもよい(例えば空隙によって)。
【0182】
第2のウオッシュコート領域は第2のウオッシュコート層であってもよく、又は第2のウオッシュコートゾーンは、好ましくは第2のウオッシュコートゾーンである。第2のウオッシュコート領域が第2のウオッシュコートゾーンであるとき、酸化触媒は、更に第4のウオッシュコート領域を含むことができる(例えば図10参照)。第4のウオッシュコート領域は、第1のウオッシュコートゾーンの上に配置又は支持されてよい。第4のウオッシュコート領域は、第2のウオッシュコートゾーンと接することができる[即ち第4のウオッシュコート領域は第2のウオッシュコートゾーンと隣接又は境界を接する]。別の構成では、第4のウオッシュコート領域と第2のウオッシュコート領域は分離していてもよい(例えば空隙によって)。
【0183】
第4のウオッシュコート領域は第4のウオッシュコートゾーンであってもよい。
【0184】
第3のウオッシュコート領域は第2のウオッシュコート領域の上に配置又は支持されうる(例えば図9参照)。第2のウオッシュコート領域は第2のウオッシュコートゾーンであってもよく、第1のウオッシュコート領域は第1のウオッシュコートゾーンであってもよい。第2のウオッシュコート領域/ゾーンは、第1のウオッシュコート領域/ゾーンと接することができる[即ち第2のウオッシュコート領域/ゾーンは、第1のウオッシュコート領域/ゾーンと隣接又は境界を接する]。別の構成では、第1のウオッシュコート領域/ゾーンと第2のウオッシュコート領域/ゾーンは分離していてもよい(例えば空隙によって)。
【0185】
第3のウオッシュコート領域は第3のウオッシュコート層又は第3のウオッシュコートゾーンであってもよい。
【0186】
第3のウオッシュコート領域が第3のウオッシュコートゾーンであるとき、第3のウオッシュコートゾーンは第2のウオッシュコートゾーンの上に配置又は支持されうる(例えば図7参照)。第1のウオッシュコート領域は第1のウオッシュコートゾーンであってもよい。第3のウオッシュコートゾーンは、第1のウオッシュコートゾーンと接することができる[即ち第3のウオッシュコートゾーンは、第1のウオッシュコートゾーンと隣接又は接触する]。別の構成では、第1のウオッシュコートゾーンと第3のウオッシュコートゾーンは分離していてもよい(例えば空隙によって)。
【0187】
第3のウオッシュコート領域が第3のウオッシュコートゾーンであるとき、第3のウオッシュコートゾーンは第1のウオッシュコートゾーンの上に配置又は支持されうる(例えば図9参照)。第2のウオッシュコート領域は第2のウオッシュコートゾーンであってもよい。第3のウオッシュコートゾーンは、第2のウオッシュコートゾーンと接することができる[即ち第3のウオッシュコートゾーンは、第2のウオッシュコートゾーンと隣接又は境界を接する]。別の構成では、第2のウオッシュコートゾーンと第3のウオッシュコートゾーンは分離していてもよく(例えば空隙によって)及び/又は接していなくともよい(例えば第2のウオッシュコートゾーンは第3のウオッシュコートゾーンと物理的に接しない)。
【0188】
第3のウオッシュコート領域が第3のウオッシュコート層であるとき、第3のウオッシュコート層は第1のウオッシュコート領域/ゾーン及び第2のウオッシュコート領域/ゾーンの両方の上に配置又は支持されうる。
【0189】
第3のウオッシュコート領域が第3のウオッシュコートゾーンであるとき、第3のウオッシュコートゾーンは、典型的には、基材の長さの10〜90%(例えば10〜45%)、好ましくは15〜75%(例えば15〜40%)、更に好ましくは20〜70%(例えば30〜65%、25〜45%など)、それよりも更に好ましくは25〜65%(例えば35〜50%)の長さを有する。
【0190】
本発明の酸化触媒はゼオライト触媒を含みうる。第3のウオッシュコート領域及び/又は第4のウオッシュコート領域はゼオライト触媒を含みうる。
【0191】
第3のウオッシュコート領域は、ゼオライト触媒を含むか、又は同触媒から本質的になっていてよい。
【0192】
第4のウオッシュコート領域は、ゼオライト触媒を含むか、又は同触媒から本質的になっていてよい。
第3のウオッシュコート領域及び第4のウオッシュコート領域の各々がゼオライト触媒を含むとき、第3のウオッシュコート領域は、第1のゼオライト触媒を含むか又は同触媒から本質的になることができ、第4のウオッシュコート領域は、第1のゼオライト触媒とは異なる(即ち異なる組成の)第2のゼオライト触媒を含むか又は同触媒から本質的になることができる。第1のゼオライト触媒は、上述のゼオライト触媒とすることができる。第2のゼオライト触媒は、上述のゼオライト触媒とすることができる。
【0193】
第3のウオッシュコート領域がゼオライト触媒を含むか又は同触媒から本質的になるとき、好ましくは、第1のウオッシュコート領域及び/又は第2のウオッシュコート領域はゼオライト触媒を含まない。
【0194】
第3のウオッシュコート領域がゼオライト触媒、特に第1又は第2のゼオライト触媒の実施態様のゼオライト触媒を含むか又は同触媒から本質的になるとき、吸着したNOがゼオライト触媒から放出される温度は、酸化触媒が特定の配置を有するとき、変化しうる(即ち上昇しうる)。ゼオライト触媒の温度の有利な変化(即ち上昇)は、第2のウオッシュコート領域が第3のウオッシュコート領域の上に配置又は支持されるときに得られる(例えば、図6、8及び10参照)。
【0195】
ウオッシュコート領域がゼオライト触媒、特に第3のウオッシュコート領域及び/又は第4のウオッシュコート領域を含むとき、貴金属の総ローディング(即ち各ウオッシュコート領域のゼオライト触媒の)は、典型的には1〜250g ft−3(例えば1〜75g ft−3)、好ましくは5〜150g ft−3(例えば5〜50g ft−3)、更に好ましくは10〜100g ft−3(例えば10〜40g ft−3)である。
【0196】
ディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための支持酸化触媒の基材は、当技術分野において周知である。ウオッシュコートを作製する方法及びウオッシュコートを基材上に塗布する方法も、当技術分野において既知である(例えば、本出願人による国際公開第99/47260号、同第2007/077462号及び同第2011/080525号参照)。
【0197】
基材は、典型的には、複数のチャネルを有する(例えば排気ガスを流すための)。通常、基材はセラミック材料又は金属材料である。
【0198】
基材がコーディエライト(SiO−Al−MgO)、シリコンカーバイド(SiC)、Fe−Cr−A合金、Ni−Cr−Al合金、又はステンレス鋼合金から作製される又はなることが好ましい。
【0199】
典型的には、基材はモノリス(本明細書では基材モノリスとも呼ぶ)である。このようなモノリスは当技術分野において周知である。基材モノリスはフロースルーモノリス又は濾過式モノリスとすることができる。
【0200】
フロースルー式モノリスは、典型的には、両端が開口した、それに沿って延びる複数のチャネル(流路)を有するハニカム型モノリス(例えば、金属製又はセラミック製のハニカム型モノリス)を備える。基材がフロースルーモノリスである場合、本発明の酸化触媒は、典型的にはディーゼル酸化触媒(DOC)であるか又はディーゼル酸化触媒(DOC)としての使用を目的とする。
【0201】
フィルターモノリスは、通常、複数の入口チャネルと複数の出口チャネルを含み、入口チャネルは、上流端(即ち排気ガスの入口側)が開口し、下流端(即ち排気ガスの出口側)が閉塞されるか密封され、出口チャネルは、上流端が閉塞されるか密封され、下流端が開口し、各入口チャネルは、多孔質構造により出口チャネルから分離されている。基材がフィルターモノリスである場合、本発明の酸化触媒は、典型的には触媒化スートフィルター(CSF)であるか又は触媒化スートフィルター(CSF)としての使用を目的とする。
【0202】
モノリスがフィルターモノリスである場合、フィルターモノリスがウォールフロー型フィルターであることが好ましい。ウォールフロー型フィルターでは、各入口チャネルが、多孔質構造の壁により出口チャネルから交互に離間されていて、逆もまた同じである。入口チャネルと出口チャネルがハニカム配置に配置されていることが好ましい。ハニカム配置がある場合、入口チャネルの垂直方向且つ側方に隣接するチャネルが上流端で閉塞され、逆もまた同じであることが好ましい(即ち出口チャネルの垂直方向かつ側方に隣接するチャネルが下流端で閉塞される)。いずれの端部から見ても、交互に閉塞され開口するチャネル端は、チェス盤の外観を呈する。
【0203】
原理上、基材は、いかなる形状又は大きさでもよい。しかしながら、基材の形状と大きさは、通常、触媒中の触媒的に活性な材料の、排気ガスへの曝露を最適化するように選択される。基材は、例えば、管状、繊維状、又は粒子状の形状でありうる。適切な担持基材の例には、モノリスハニカムコーディエライト型の基材、モノリスハニカムSiC型の基材、層状の繊維又は編物型の基材、発泡体型の基材、クロスフロー型の基材、金属ワイヤーメッシュ型の基材、金属多孔体型の基材、及びセラミック粒子型の基材が含まれる。
【0204】
一般に、本発明の酸化触媒は、ディーゼル酸化触媒(DOC)又は触媒化スートフィルター(CSF)としての使用を目的とする。実際には、DOC及びCSFに用いられる触媒の配合組成は類似である。通常、DOCとCSFの根本的な違いは、触媒の配合組成がコーティングされる基材と、基材の上にコーティングされる白金、パラジウム及び他のあらゆる触媒的に活性な材料の総量である。
【0205】
ディーゼル酸化触媒(DOC)としての使用のための本発明の酸化触媒へのあらゆる言及は、受動的NO吸着活性(DOC−PNA)又はコールドスタート触媒活性(DOC−CSC)を含むと理解されたい。
【0206】
本発明は、酸化触媒及び排出制御装置を含む排気系統も提供する。排出制御装置の例には、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)、リーンNOトラップ(LNT)、リーンNO触媒(LNC)、選択的触媒還元(SCR)触媒、ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒化スートフィルター(CSF)、選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒、アンモニアスリップ触媒(ASC)及びこれらのうちの二つ以上の組み合わせが含まれる。このような排出制御装置は当技術分野において周知である。
【0207】
前述の排出制御装置のいくつかは、濾過基材を有する。濾過基材を有する排出制御装置は、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)、触媒化スートフィルター(CSF)、及び選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒からなる群より選択することができる。
【0208】
排気系統が、リーンNOトラップ(LNT)、アンモニアスリップ触媒(ASC)、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)、選択的触媒還元(SCR)触媒、触媒化スートフィルター(CSF)、選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒、及びこれらのうちの二つ以上の組み合わせからなる群より選択される排出制御装置を含むことが好ましい。更に好ましくは、排出制御装置は、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)、選択的触媒還元(SCR)触媒、触媒化スートフィルター(CSF)、選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒、及びこれらのうちの二つ以上の組み合わせからなる群より選択される。それよりも更に好ましくは、排出制御装置は、選択的触媒還元(SCR)触媒又は選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒である。
【0209】
本発明の排気系統がSCR触媒又はSCRFTM触媒を含むとき、排気系統は更に、窒素還元剤、例えばアンモニア、又はアンモニア前駆体、例えば尿素又はギ酸アンモニウム、好ましくは尿素を、酸化触媒の下流且つSCR触媒又はSCRFTM触媒の上流の排気ガス中に注入するためのインジェクターを備えることができる。このようなインジェクターは、窒素還元剤前駆体のソース(例えばタンク)に流体的にリンクさせることができる。排気ガス中への前駆体のバルブ制御による投与は、適切にプログラムされたエンジンマネージメント手段と、排気ガスの組成をモニタリングするセンサによって提供される閉ループ又は開ループフィードバックによって制御することができる。アンモニアはまた、(固体の)カルバミン酸アンモニウムを加熱することによって生成することができ、生成されたアンモニアは排気ガス中に注入することができる。
【0210】
インジェクターに代えて又は加えて、アンモニアをin situで(例えばSCR触媒又はSCRFTM触媒の上流に配置されたLNTのリッチ再生の間に)生成することができる。したがって、排気系統は更に、排気ガスに炭化水素を混入するためのエンジンマネージメント手段を含むことができる。
【0211】
SCR触媒又はSCRFTM触媒は、Cu、Hf、La、Au、In、V、ランタニド及び第8族遷移金属(例えばFe)のうちの少なくとも一つからなる群より選択される金属を含むことができ、この金属は耐火性酸化物又はモレキュラーシーブ上に支持される。金属は、好ましくは、Ce、Fe、Cu及びこれらのうちのいずれか二つ以上の組み合わせから選択され、更に好ましくは金属はFe又はCuである。
【0212】
SCR触媒又はSCRFTM触媒のための耐火性酸化物は、Al、TiO、CeO、SiO、ZrO及びこれらのうちの二つ以上を含有する混合酸化物からなる群より選択することができる。非ゼオライト触媒は、タングステン酸化物(例えばV/WO/TiO、WO/CeZrO、WO/ZrO又はFe/WO/ZrO)も含むことができる。
【0213】
SCR触媒、SCRFTM触媒又はそのウオッシュコートが少なくとも一つのモレキュラーシーブ、例えばアルミノシリケートゼオライト又はSAPOを含むことが特に好ましい。少なくとも一つのモレキュラーシーブは、小孔径、中間孔径、又は大孔径のモレキュラーシーブとすることができる。本明細書において、「小孔径のモレキュラーシーブ」とは、最大環サイズ8を含むモレキュラーシーブ、例えばCHAを意味し;「中間孔径のモレキュラーシーブ」とは、最大環サイズ10を含むモレキュラーシーブ、例えばZSM−5を意味し;「大孔径のモレキュラーシーブ」とは、最大環サイズ12を含むモレキュラーシーブ、例えばベータを意味する。小孔径のモレキュラーシーブは、SCR触媒に使用するために有利である可能性がある。
【0214】
本発明の排気系統において、SCR触媒又はSCRFTM触媒のために好ましいモレキュラーシーブは、AEI、ZSM−5、ZSM−20、ZSM−34を含むERI、モルデナイト、フェリエライト、Betaを含むBEA、Y、CHA、Nu−3を含むLEV、MCM−22及びEU−1からなる群より選択される合成アルミノシリケートゼオライトモレキュラーシーブであり、好ましくはAEI又はCHAであり、約10〜約50、例えば約15〜約40のシリカ対アルミナ比を有する。
【0215】
第1の排気系統の実施態様では、排気系統は、好ましくはDOCとしての本発明の酸化触媒と、触媒化スートフィルター(CSF)を含む。このような配置は、DOC/SCRと呼ぶことができる。酸化触媒の後には、典型的には触媒化スートフィルター(CSF)が続く(例えば、酸化触媒は触媒化スートフィルターの上流にある)。したがって、例えば、酸化触媒の出口は触媒化スートフィルターの入口に接続される。
【0216】
第2の排気系統の実施態様では、排気系統は、ディーゼル酸化触媒と、好ましくは触媒化スートフィルター(CSF)としての本発明の酸化触媒を含む。このような配置は、DOC/CSF配置とも呼ぶことができる。典型的には、ディーゼル酸化触媒(DOC)の後に、本発明の酸化触媒が続く(例えば、DOCが本酸化触媒の上流にある)。したがって、ディーゼル酸化触媒の出口が、本発明の酸化触媒の入口に接続される。
【0217】
第3の排気系統の実施態様は、好ましくはDOCとしての本発明の酸化触媒、触媒化スートフィルター(CSF)及び選択的触媒還元(SCR)触媒を含む排気系統に関する。このような配置は、DOC/CSF/SCRと呼ぶことができ、軽量ディーゼル車に好ましい排気系統である。酸化触媒の後には、典型的には触媒化スートフィルター(CSF)が続く(例えば、酸化触媒は触媒化スートフィルターの上流にある)。触媒化スートフィルターの後には、典型的には選択的接触還元(SCR)触媒が続く(例えば、CSFはSCRの上流にある)。窒素系還元剤のインジェクターは、触媒化スートフィルター(CSF)と選択的接触還元(SCR)触媒の間に配置することができる。したがって、触媒化スートフィルター(CSF)の後に、窒素系還元剤のインジェクターが続いてよく(例えば、触媒化スートフィルターがインジェクターの上流にある)、窒素系還元剤のインジェクターの後に、選択的接触還元(SCR)触媒が続いてよい(例えば、窒素系還元剤のインジェクターがSCRの上流にある)。
【0218】
第4の排気系統の実施態様は、ディーゼル酸化触媒(DOC)、好ましくは触媒化スートフィルター(CSF)としての本発明の酸化触媒、及び選択的触媒還元(SCR)触媒を含む排気系統に関する。これは、DOC/CSF/SCR配置でもある。典型的には、ディーゼル酸化触媒(DOC)の後に本発明の触媒コンバーターが続く(例えば、DOCが本触媒コンバーターの上流にある)。典型的には、本発明の酸化触媒の後に選択的接触還元(SCR)触媒が続く(例えば、本酸化触媒がSCRの上流にある)。窒素系還元剤のインジェクターは、酸化触媒と選択的接触還元(SCR)触媒の間に配置することができる。したがって、酸化触媒の後に窒素系還元剤のインジェクターが続いてよく(例えば、酸化触媒がインジェクターの上流にある)、窒素系還元剤のインジェクターの後に、選択的接触還元(SCR)触媒が続いてよい(例えば、窒素系還元剤のインジェクターが上流にある)。
【0219】
第5の排気系統の実施態様では、排気系統は、好ましくはDOCとしての本発明の酸化触媒、選択的触媒還元(SCR)触媒及び触媒化スートフィルター(CSF)又はディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)を含む。この配置は、DOC/SCR/CSF又はDOC/SCR/DPFである。
【0220】
第5の排気系統の実施態様では、本発明の酸化触媒の後には典型的には選択的触媒還元(SCR)触媒が続く(例えば、本酸化触媒はSCRの上流にある)。窒素系還元剤のインジェクターは、酸化触媒と選択的接触還元(SCR)触媒の間に配置することができる。このように、酸化触媒の後に窒素系還元剤のインジェクターが続いてよく(例えば、酸化触媒がインジェクターの上流にある)、窒素系還元剤のインジェクターの後に、選択的接触還元(SCR)触媒が続いてよい(例えば、窒素系還元剤のインジェクターがSCRの上流にある)。選択的接触還元(SCR)触媒の後に、触媒化スートフィルター(CSF)又はディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)が続く(例えば、SCRがCSF又はDPFの上流にある)。
【0221】
第6の排気系統の実施態様は、好ましくはDOCとしての本発明の酸化触媒、及び選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒を含む。このような配置は、DOC/SCRFTMと呼ぶことができる。本発明の酸化触媒の後には、典型的には選択的接触還元フィルター(SCRF)触媒が続く(例えば、本酸化触媒がSCRFの上流にある)。窒素系還元剤のインジェクターは、酸化触媒と選択的接触還元フィルター(SCRFTM)触媒の間に配置することができる。したがって、酸化触媒の後に、窒素系還元剤のインジェクターが続いてもよく(例えば、酸化触媒がインジェクターの上流にある)、窒素系還元剤のインジェクターの後に、選択的接触還元フィルター(SCRFTM)触媒が続いてもよい(例えば、窒素系還元剤のインジェクターがSCRFの上流にある)。
【0222】
上述した第3から第6の排気系統の実施態様の各々では、ASC触媒をSCR触媒又はSCRFTM触媒の下流に配置することができる(即ち別個の基材モノリスとして)か、又は更に好ましくはSCR触媒を含む基材モノリスの下流又は終端のゾーンをASCの支持体として使用することができる。
【0223】
本発明の別の態様は、車両又は装置に関する。車両又は装置はディーゼルエンジンを備える。ディーゼルエンジンは、予混合圧縮着火(HCCI)エンジン、予混合圧縮自着火燃焼(PCCI)エンジン又は低温燃焼(LTC)エンジンとすることができる。ディーゼルエンジンが従来の(即ち伝統的な)ディーゼルエンジンであることが好ましい。
【0224】
車両は、例えば米国又は欧州の法律に規定されているような軽量ディーゼル車(LDV)とすることができる。軽量ディーゼル車は、典型的には<2840kgの重量、更に好ましくは<2610kgの重量を有する。
【0225】
米国では、軽量ディーゼル車(LDV)は、総重量≦8,500ポンド(USポンド)を有するディーゼル車両を指す。欧州では、軽量ディーゼル車(LDV)は、(i)運転席の他に最大八つの座席を備え、且つ最大質量が5トンを超えない乗用車、及び(ii)最大質量が12トンを超えない貨物輸送のための車両を指す。
【0226】
或いは、車両は、米国の法律で規定されている大型ディーゼル車両(HDV)、例えば>8,500ポンド(USポンド)の総重量を有するディーゼル車両でもよい。
【0227】
本発明は、排出制御装置のためのディーゼルエンジンの排気ガス中のNO含有量を調節する方法も提供する。(b)処理済みの排気ガスを排出制御装置に通過させる工程は、典型的には、処理済み排気ガスを直接排出制御装置に通過させることを伴う。したがって、酸化触媒の出口は、排出制御装置の入口に直接(例えば中継なしで)接続される。
【0228】
典型的には、排出制御装置は、選択的触媒還元(SCR)触媒、選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)、又は触媒化スートフィルター(CSF)である。排出制御装置が選択的触媒還元(SCR)触媒又は選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒であることが好ましい。
【0229】
特に本発明の方法又は使用の態様に関して、本明細書において「NOの含有量を調節する」という場合、NO:NOの比(ppm又は体積%で、典型的には排気ガスの温度及び圧力における)を、特定の排気ガス温度又は温度範囲における所定の比以内に、変更(即ち調整)又は維持、好ましくは変更することを指す。所定の比は、典型的には、17:3未満、好ましくは5:1〜1:5、更に好ましくは2.5:1〜1:2.5、それよりも更に好ましくは2:1〜1:2(例えば1.5:1〜1:1.5又は約1:1)である。
【0230】
本発明は、濾過基材を有する排出制御装置(例えば濾過基材を有する下流の排出制御装置)の再生における酸化触媒の使用にも関する。
【0231】
濾過基材を有する排出制御装置は、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)、触媒化スートフィルター(CSF)、選択的触媒還元フィルター(SCRFTM)触媒及びこれらのうちの二つ以上の組み合わせからなる群より選択することができる。
【0232】
本発明の酸化触媒は、濾過基材を有する排出制御装置の再生に使用されるとき、排出制御装置の能動的又は受動的再生、好ましくは能動的再生に使用されうる。
【0233】
酸化触媒は、濾過基材を有する排出制御装置を、少なくとも220℃、好ましくは少なくとも240℃、更に好ましくは少なくとも260℃、それよりも更に好ましくは少なくとも280℃の温度において、一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO)へと酸化することにより再生するために使用されうる。
【0234】
定義
「ウオッシュコート」という用語は、当技術分野において周知であり、通常酸化触媒の製造の間に、基材に塗布される接着性コーティングを指す。
【0235】
本明細書において使用される「ウオッシュコート領域」という用語は、基材上のウオッシュコートの領域を指す。例えば、「ウオッシュコート領域」は、「層」又は「ゾーン」として基材上に配値又は支持されうる。基材上のウオッシュコートの領域又は配置は、基材にウオッシュコートを塗布する工程の間、通常制御される。「ウオッシュコート領域」は、典型的には明確な境界又は縁を有する(即ち一般的な分析技術を用いて、一のウオッシュコート領域を別のウオッシュコート領域から区別することが可能である)。
【0236】
典型的には、「ウオッシュコート領域」は実質的に均一な長さを有する。この文脈における「実質的に均一な長さ」への言及は、その平均値から10%を上回る偏差、好ましくは5%を上回る偏差、更に好ましくは1%を上回る偏差(例えば最大の長さと最小の長さとの差)を有しない長さを指す。
【0237】
各「ウオッシュコート領域」は、実質的に均一な組成を有する(即ちウオッシュコート領域の一部をウオッシュコート領域の別の一部と比較したときにウオッシュコートの組成に実質的な差がない)ことが好ましい。この文脈における実質的に均一な組成とは、ウオッシュコート領域の一部をウオッシュコート領域の別の一部と比較したときの組成の差が5%以下、通常は2.5%以下、及び最も一般的には1%以下である材料(例えばウオッシュコート領域)を指す。
【0238】
本明細書において使用される用語「ウオッシュコートゾーン」は、基材の全長より短い長さ、例えば基材の全長の≦75%の長さを有するウオッシュコート領域を指す。「ウオッシュコートゾーン」は、典型的には、基材の全長の少なくとも5%(例えば≧5%)の長さ(即ち実質的に均一な長さ)を有する。
【0239】
基材の全長は、その入口端と出口端(例えば基材の両端)の間の距離である。
【0240】
本明細書において使用される「基材の入口端に配置されたウオッシュコートゾーン」への言及は、ウオッシュコートゾーンが基材の出口端より基材の入口端の近くにある、基材の上に配置又は支持されたウオッシュコートゾーンを指す。つまり、ウオッシュコートゾーンの中間点(即ちその長さの半分の地点)は、基材の出口端より基材の入口端に近い。同様に、本明細書において使用される「基材の出口端に配置されたウオッシュコートゾーン」への言及は、ウオッシュコートゾーンが基材の入口端より基材の出口端の近くにある、基材の上に配置又は支持されたウオッシュコートゾーンを指す。つまり、ウオッシュコートゾーンの中間点(即ちその長さの半分の地点)は、基材の入口端より基材の出口端に近い。
【0241】
基材がウォールフロー型フィルターであるとき、通常「基材の入口端に配置されたウオッシュコートゾーン」への言及は、基材の上に配置又は支持されたウオッシュコートゾーンであって:
(a)基材の入口チャネルの閉鎖端(例えば遮蔽又は閉塞された端部)よりも入口チャネルの入口端(例えば開放端)に近いウオッシュコートゾーン、及び/又は
(b)基材の出口チャネルの出口端(例えば開放端)よりも出口チャネルの閉鎖端(例えば遮蔽又は閉塞された端部)に近いウオッシュコートゾーン
を指す。
【0242】
したがって、ウオッシュコートゾーンの中間点(即ちその長さの半分の地点)は、(a)入口チャネルの閉鎖端よりも基材の入口チャネルの入口端に近い、及び/又は(b)出口チャネルの出口端よりも基材の出口チャネルの閉鎖端に近い。
【0243】
同様に、基材がウォールフロー型フィルターであるとき、「基材の出口端に配置されたウオッシュコートゾーン」への言及は、基材の上に配置又は支持されたウオッシュコートゾーンであって:
(a)基材の出口チャネルの閉鎖端(例えば遮蔽又は閉塞された)よりも出口チャネルの出口端(例えば開放端)に近いウオッシュコートゾーン、及び/又は
(b)基材の入口チャネルの入口端(例えば開放端)よりも入口チャネルの閉鎖端(例えば遮蔽又は閉塞された端部)に近いウオッシュコートゾーン
を指す。
【0244】
したがって、ウオッシュコートゾーンの中間点(即ちその長さの半分の地点)は、(a)基材の出口チャネルの閉鎖端よりも出口チャネルの出口端に近い、及び/又は(b)基材の入口チャネルの入口端よりも入口チャネルの閉鎖端に近い。
【0245】
ウオッシュコートゾーンは、ウオッシュコートがウォールフロー型フィルターの壁の中に存在するとき(即ちウオッシュコートゾーンが壁内にあるとき、(a)及び(b)の両方を満たすことができる。
【0246】
本明細書において使用される頭字語「PGM」は、「白金族金属」を指す。用語「白金族金属」は通常、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtからなる群より選択される金属、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir及びPtからなる群より選択される金属を指す。一般に、用語「PGM」は、好ましくは、Rh、Pt及びPdからなる群より選択される金属を指す。
【0247】
本明細書において使用される「混合酸化物」という用語は通常、当技術分野で従来既知のように、単一相の酸化物の混合物を指す。本明細書において使用される「複合酸化物」という用語は、当技術分野で従来既知のように、一相よりも多い相を有する酸化物の組成物を一般的に指す。
【0248】
本明細書において使用される「実質的に重複」しないウオッシュコートゾーンへの言及は、基材の長さの10%未満、好ましくは7.5%未満、更に好ましくは5%未満、特に2.5%未満、それよりも更に好ましくは1%未満の重複(即ち基材上で隣接するゾーンの端部間の)を指し、最も好ましくは重複はない。
【0249】
本明細書において使用される「〜から本質的になる」という表現は、特定された材料と、機構の基本的特徴に著しく影響しない他の材料又は工程、例えば小さな不純物を含むように機構を限定する。「〜から本質的になる」という表現は、「〜からなる」という表現を包含する。
【0250】
本明細書において、典型的にはウオッシュコート領域、ウオッシュコート層又はウオッシュコートゾーンの含有量の文脈で、材料に関して使用される「実質的に〜を含まない」という表現は、この材料がわずかな量、例えば≦5重量%、好ましくは≦2重量%、更に好ましくは≦1重量%であることを意味する。「実質的に〜を含まない」という表現は、「〜を含まない」という表現を包含する。
【0251】
本明細書において使用される、重量%で表されるドーパントの量、特に総量への言及は、支持材又はその耐火性金属酸化物の重量を指す。
【実施例】
【0252】
ここで、本発明を、以下の非限定的な実施例により説明する。
【0253】
実施例1
第1のスラリーを、以下のように調製した:シリカ−アルミナ粉末を水中においてスラリー化し、d90<20ミクロンまで粉砕した。可溶性の白金塩を、次いで硝酸マンガンを加えた。混合物を撹拌して均質にした。
【0254】
スラリーを、確立されたコーティング技術を用いて、一平方インチ当たり400個のセルを有するコーディエライトフロースルーモノリスの出口端に塗布した。次いでそれを乾燥し、500℃でか焼した。この部分へのPtローディングは15g ft−3であった。この部分へのマンガンのローディングは50g ft−3であった。
【0255】
第2のスラリーを、シリカ−アルミナ粉末を取り、d90<20ミクロンに粉砕することにより調製した。酢酸バリウムをスラリーに加え、続いて適量の可溶性白金及びパラジウム塩を加えた。スラリーが質量で77%のシリカ−アルミナと23%のゼオライトを含むように、ベータゼオライトを加えた。次いでスラリーを撹拌して均質にした。得られたウオッシュコートを、確立されたコーティング技術を用いて、フロースルーモノリスの入口チャネルに塗布した。この部分を乾燥し、500℃でか焼した。完成した触媒は、45g ft−3の総Ptローディング及び15g ft−3のPdローディングを有していた。
【0256】
実施例2
第1のスラリーを調製し、実施例1と同じ方法を用いて、一平方当たり400個のセルを有するコーディエライトフロースルーモノリスに塗布した。この部分へのPtローディングは15g ft−3であった。この部分へのマンガンのローディングは50g ft−3であった。
【0257】
第2のスラリーは、シリカ−アルミナ粉末を取り、d90<20ミクロンまで粉砕することにより調製した。可溶性の白金塩を、続いて硝酸マンガンを加えた。スラリーが質量で77%のシリカ−アルミナと23%のゼオライトを含むように、ベータゼオライトを加えた。次いでスラリーを撹拌して均質にした。得られたウオッシュコートを、確立されたコーティング技術を用いて、フロースルーモノリスの入口チャネルに塗布した。この部分を乾燥し、500℃でか焼した。完成した触媒は、54g ft−3の総Ptローディング及び100g ft−3のマンガンローディングを有していた。
【0258】
実験結果
酸化活性の測定
実施例1及び2の触媒の各々からコアの試料を採取した。コアは、750℃のオーブンで15時間にわたり、10%の水を用いて熱水的に「老化」させた。触媒活性を、合成ガス台上試験を用いて決定した。表1の入口ガス混合物を使用して、模擬的な触媒活性試験(SCAT)ガス装置内で、コアを試験した。いずれの場合も、残部は窒素である。CO及びHCの酸化活性は、50%の変換が達成される着火温度(T50)により決定される。NOの酸化活性は、300℃における変換率として決定される。
【0259】
【0260】
結果:
SCATの結果を以下の表2に示す。
【0261】
【0262】
表2の結果は、実施例1と2が、非常に似通ったCO及びHCのT50着火温度を有することを示している。これは、実施例1及び2が非常に似通ったCO及びHC酸化活性を有することを意味する。実施例2は、入口コーティング並びに出口コーティング上に白金とマンガンの両方を含む。実施例1は、出口コーティングにのみ白金とマンガンの両方を含む。実施例2は、300℃において、実施例1より高いNO酸化性能を有する。
【0263】
実施例3
シリカ−アルミナ粉末を、水中においてスラリー化し、d90<20ミクロンまで粉砕した。適量の可溶性白金及びパラジウム塩を加えた。混合物を撹拌して均質にした。ウオッシュコートを、確立されたコーティング技術を用いて、一平方インチ当たり400個のセルを有するコーディエライトフロースルーモノリスに塗布した。次いでそれを乾燥し、500℃でか焼した。この部分の全体のPGMローディングは60g ft−3であった。Pt:Pdの比は質量で4:1であった。
【0264】
実施例4
シリカ−アルミナ粉末を、水中においてスラリー化し、d90<20ミクロンまで粉砕した。適量の可溶性白金及びパラジウム塩を加え、次いで硝酸マンガンを加えた。混合物を撹拌して均質にした。ウオッシュコートを、確立されたコーティング技術を用いて、一平方インチ当たり400個のセルを有するコーディエライトフロースルーモノリスに塗布した。次いでそれを乾燥し、500℃でか焼した。この部分の全体のPGMローディングは60g ft−3であった。Pt:Pdの比は質量で4:1であった。マンガンのローディングは100g ft−3であった。
【0265】
実施例5
シリカ−アルミナ粉末を、水中においてスラリー化し、d90<20ミクロンまで粉砕した。適量の可溶性白金及びパラジウム塩を加えた。混合物を撹拌して均質にした。ウオッシュコートを、確立されたコーティング技術を用いて、一平方インチ当たり400個のセルを有するコーディエライトフロースルーモノリスに塗布した。次いでそれを乾燥し、500℃でか焼した。この部分の全体のPGMローディングは60g ft−3であった。Pt:Pdの比は質量で10:1であった。
【0266】
実施例6
シリカ−アルミナ粉末を、水中においてスラリー化し、d90<20ミクロンまで粉砕した。適量の可溶性白金及びパラジウム塩を加え、続いて硝酸マンガンを加えた。混合物を撹拌して均質にした。ウオッシュコートを、確立されたコーティング技術を用いて、一平方インチ当たり400個のセルを有するコーディエライトフロースルーモノリスに塗布した。次いでそれを乾燥し、500℃でか焼した。この部分の全体のPGMローディングは60g ft−3であった。Pt:Pdの比は質量で10:1であった。マンガンのローディングは100g ft−3であった。
【0267】
実験結果
酸化活性の測定
実施例3、4、5及び6の触媒の各々からコアの試料を採取した。コアは、800℃のオーブンで16時間にわたり、10%の水を用いて熱水的に「老化」させた。触媒活性を、合成ガス台上試験を用いて決定した。表1の入口ガス混合物を使用して、模擬的な触媒活性試験(SCAT)ガス装置内で、コアを試験した。いずれの場合も、残部は窒素である。CO及びHCの酸化活性は、50%の変換が達成される着火温度(T50)により決定される。
【0268】
結果:
SCATの結果を以下の表3に示す。
【0269】
【0270】
表3の結果は、実施例3、4、5及び6のCO及びHC T50着火温度を示す。実施例3及び4は、同じ貴金属ローディングと、4:1のPt:Pd重量比を有する。マンガンを含む実施例4は、マンガンを含まない実施例3より低いCO T50着火温度を有する。実施例3と4のHC T50着火温度は同一である。実施例5及び6は、同じ貴金属ローディングと、10:1のPt:Pd重量比を有する。マンガンを含む実施例6は、マンガンを含まない実施例5より低いCO及びHC T50着火温度を有する。
【0271】
4:1より10:1のPt:Pd重量比において、マンガンを含有する触媒に着火温度の大きな改善が見られる。
【0272】
実施例7
シリカ−アルミナ粉末を、水中においてスラリー化し、d90<20ミクロンまで粉砕した。可溶性の白金塩を加え、混合物を撹拌して均質にした。スラリーを、確立されたコーティング技術を用いて、一平方インチ当たり400個のセルを有するコーディエライトフロースルーモノリスに塗布した。次いでそれを乾燥し、500℃でか焼した。この部分のPtローディングは30g ft−3であった。
【0273】
実施例8
実施例1の方法を繰り返し、但し混合物を撹拌して均質にする前に、可溶性白金塩と、続いて硝酸マンガンを加えた。この部分へのPtローディングは30g ft−3であった。この部分へのマンガンのローディングは40g ft−3であった。Pt対マンガンの重量比は3:4であった。
【0274】
実施例9
実施例2の方法を使用し、但しシリカ−アルミナ粉末の代わりに、アルミナ粉末を水中においてスラリー化し、d90<20ミクロンまで粉砕した。この部分へのPtローディングは30g ft−3であった。この部分へのマンガンのローディングは40g ft−3であった。Pt対マンガンの重量比は3:4であった。
【0275】
実施例10
シリカでドープされたアルミナ粉末を、水中においてスラリー化し、d90<20ミクロンまで粉砕した。酢酸バリウムをスラリーに加え、続いて適量の可溶性白金及びパラジウム塩を加えた。スラリーが、シリカでドープされたアルミナと、ゼオライトとを、質量でそれぞれ78%と22%含むように、ベータゼオライトを加えた。次いでスラリーを撹拌して均質にした。得られたウオッシュコートを、確立されたコーティング技術を用いて、一平方インチ当たり400個のセルを有するコーディエライトフロースルーモノリスの入口チャネルに塗布し、次いで乾燥した。
【0276】
第2のスラリーを、シリカでドープされたアルミナ粉末を取り、d90<20ミクロンまで粉砕することにより調製した。可溶性の白金塩をスラリーに加え、続いて硝酸マンガン溶液を加えた。スラリーを撹拌して均質にした。第2のスラリーを、従来のコーティング技術を用いてフロースルーモノリスの出口チャネルに塗布した。この部分を乾燥し、次いで500℃でか焼した。完成した触媒は、出口コーティング上に75g ft−3の全体のPGMローディング及び100g ft−3のマンガンローディングを有していた。白金対マンガンの重量比は3:5であった。
【0277】
実施例11
シリカでドープされたアルミナ粉末を、水中においてスラリー化し、d90<20ミクロンまで粉砕した。酢酸バリウムをスラリーに加え、続いて適量の可溶性白金及びパラジウム塩を加えた。スラリーが、シリカでドープされたアルミナとゼオライトとを、質量でそれぞれ78%と22%含むように、ベータゼオライトを加えた。次いでスラリーを撹拌して均質にした。得られたウオッシュコートを、確立されたコーティング技術を用いて、一平方インチ当たり400個のセルを有するコーディエライトフロースルーモノリスの入口チャネルに塗布し、次いで乾燥させた。
【0278】
第2のスラリーを、シリカでドープされたアルミナ粉末を取り、d90<20ミクロンまで粉砕することにより調製した。適量の可溶性白金塩をスラリーに加え、撹拌して均質にした。第2のスラリーを、従来のコーティング技術を用いてフロースルーモノリスの出口チャネルに塗布した。この部分を乾燥し、次いで500℃でか焼した。完成した触媒は、75g ft−3の総PGMローディングを有していた。
【0279】
実験結果
NO酸化の測定
実施例1から5の触媒の各々からコアの試料を採取した。すべてのコアは、750℃のオーブンで15時間にわたり熱水的に「老化」させた。実施例4及び5から更にコアを取り、「新品の」状態に保った(即ちオーブンによる熱処理を行わずに)。
【0280】
触媒活性を、合成ガス台上活性試験(SCAT)を用いて決定した。表1の入口ガス混合物を使用して、模擬的な触媒活性試験(SCAT)ガス装置内で、新品のコアと老化させたコアを試験した。いずれの場合も、残部は窒素である。
【0281】
結果:
SCATの結果を表4から6に示す。
【0282】
【0283】
表4の結果は、実施例7、8及び9の250℃におけるNO酸化性能を示す。実施例7(マンガンを含まない)は最も低いNO酸化活性を有している。実施例8(マンガン及びシリカ−アルミナ支持体を含む)は、最も高いNO酸化活性を有している。実施例9(マンガン及びアルミナ支持体を含む)は、その中間のNO酸化活性を有している。マンガンを含めることにより、NO酸化性能が向上する。実施例8の結果は、マンガンと、ドープされたアルミナ(例えばシリカでドープされたアルミナ)を含む支持材との組み合わせが、特に有利であることを示す。
【0284】
実施例10及び11の結果を表5及び6に示す。
【0285】
【0286】
表5の結果は、老化させた状態の実施例10の触媒(Ptゾーンにマンガンを含む)が、200℃において、実施例11の触媒より高いNO酸化性能を有することを示す。
【0287】
【0288】
表6の結果は、老化させた状態の実施例10の触媒が220℃において、実施例11の触媒より良好なNO酸化活性を呈することを示す。
【0289】
表5及び6はまた、新品の状態の触媒と老化させた状態の触媒とのNO酸化活性の差が、実施例11より実施例10で小さいことを示している。したがって、実施例10の触媒は、実施例11よりも安定なNO酸化性能を示す。新品の状態と老化させた状態の間で安定なNO酸化性能は、下流のSCRの用量較正のために有利である。
【0290】
実施例12
Pdナイトレートを、CHA構造を有する小孔径のゼオライトのスラリーに加え、撹拌した。スラリーを、確立されたコーティング技術を用いて、一平方インチ当たり400個のセルの構造を有するコーディエライトフロースルーモノリスに塗布した。コーティングを乾燥し、500℃でか焼した。Pd交換ゼオライトを含有するコーティングが得られた。このコーティングのPdローディングは40g ft−3であった。
【0291】
第2のスラリーを、d90<20ミクロンに粉砕されたシリカ−アルミナ粉末を用いて調製した。可溶性の白金塩を加え、混合物を撹拌して均質にした。スラリーを、確立されたコーティング技術を用いてフロースルーモノリスの出口端に塗布した。次いでコーティングを乾燥した。
【0292】
第3のスラリーを、d90<20ミクロンに粉砕されたシリカ−アルミナ粉末を用いて調製した。スラリーが、シリカでドープされたアルミナとゼオライトとを、質量で75%と25%含むように、適量の可溶性白金及びパラジウム塩を加え、続いてゼオライトを加えた。次いでスラリーを撹拌して均質にした。得られたウオッシュコートを、確立されたコーティング技術を用いて、フロースルーモノリスの入口チャネルに塗布した。次いでこの部分を乾燥し、500℃でか焼した。完成した部分のPtローディングは51g ft−3であり、Pdローディングは47.5g ft−3であった。
【0293】
実施例13
Pdナイトレートを、CHA構造を有する小孔径のゼオライトのスラリーに加え、撹拌した。スラリーを、確立されたコーティング技術を用いて、一平方インチ当たり400個のセルの構造を有するコーディエライトフロースルーモノリスに塗布した。コーティングを乾燥し、500℃でか焼した。Pd交換ゼオライトを含有するコーティングが得られた。このコーティングのPdローディングは40g ft−3であった。
【0294】
第2のスラリーを、d90<20ミクロンに粉砕されたシリカ−アルミナ粉末上に支持された5%のマンガンを用いて調製した。可溶性の白金塩を加え、混合物を撹拌して均質にした。スラリーを、確立されたコーティング技術を用いてフロースルーモノリスの出口端に塗布した。次いでコーティングを乾燥した。
【0295】
第3のスラリーを、d90<20ミクロンに粉砕されたシリカ−アルミナ粉末を用いて調製した。スラリーが、シリカでドープされたアルミナとゼオライトとを、質量で75%と25%含むように、適量の可溶性白金及びパラジウム塩を加え、続いてベータゼオライトを加えた。次いでスラリーを撹拌して均質にした。得られたウオッシュコートを、確立されたコーティング技術を用いて、フロースルーモノリスの入口チャネルに塗布した。次いでこの部分を乾燥し、500℃でか焼した。完成した部分のPtローディングは51g ft−3であり、Pdローディングは47.5g ft−3であった。
【0296】
実験結果
NO酸化の測定
実施例12及び13の触媒からコアの試料を採取した。両方のコアは、800℃のオーブンで16時間にわたり、10%の水中で、熱水的に老化させた。
【0297】
触媒活性を、合成ガス台上活性試験(SCAT)を用いて決定した。表1の入口ガス混合物を使用して、模擬的な触媒活性試験(SCAT)ガス装置内で、老化させたコアを試験した。いずれの場合も、残部は窒素である。
【0298】
結果:
SCATの結果を以下の表7に示す。
【0299】
【0300】
表7の結果は、実施例12及び13の250℃におけるNO酸化性能を示す。実施例13(マンガンを含む)は、実施例12より高い250℃でのNO酸化活性を呈する。
【0301】
あらゆる疑問を回避するために、本明細書において引用されたすべての文献の内容全体が、参照により本願に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10