特許第6594327号(P6594327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6594327脱着式切削インサートを有するロータリーボーリングツール、及び燃焼機関のシリンダボアのマシニング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594327
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】脱着式切削インサートを有するロータリーボーリングツール、及び燃焼機関のシリンダボアのマシニング方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 41/12 20060101AFI20191010BHJP
   B23B 35/00 20060101ALI20191010BHJP
   B23B 27/14 20060101ALI20191010BHJP
   B23B 27/20 20060101ALI20191010BHJP
   B23B 29/03 20060101ALI20191010BHJP
   F02F 1/00 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   B23B41/12
   B23B35/00
   B23B27/14 B
   B23B27/20
   B23B29/03 Z
   F02F1/00 C
【請求項の数】8
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-551732(P2016-551732)
(86)(22)【出願日】2015年2月4日
(65)【公表番号】特表2017-506588(P2017-506588A)
(43)【公表日】2017年3月9日
(86)【国際出願番号】FR2015050253
(87)【国際公開番号】WO2015121565
(87)【国際公開日】20150820
【審査請求日】2017年12月8日
(31)【優先権主張番号】1451180
(32)【優先日】2014年2月14日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シェロンノー, ジェラード
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 西独国特許第01281803(DE,B)
【文献】 特開2010−094776(JP,A)
【文献】 特開2003−127026(JP,A)
【文献】 米国特許第04244667(US,A)
【文献】 特開2006−026713(JP,A)
【文献】 特開平05−318212(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102009028040(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 41/12,35/00,5/46,
27/02−29/03,27/14,
B23G 1/00−11/00,
F02F 1/00−1/42,7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒シャフト内で軸方向移動して、脱着式インサート(7)により円筒シャフトをマシニングするためのロータリーボーリングツール(1)であって、
複数の脱着式の切削インサート(7、8、9)を保持するカートリッジ(4)が設けられたロータリーインサートホルダ本体(3)を備え、
前記複数の脱着式の切削インサート(7、8、9)が、被削材に溝を荒切削する第1のインサート(7)と、第1のインサートによって荒切削された溝を仕上げる第2のインサート(8)と、第1及び第2のインサートによって形成された材料の盛り上がり部を平坦化する第3のインサート(9)とを備え、
第1、第2及び第3のインサート(7、8、9)が、ロータリーインサートホルダ本体(3)の周りに段差がついて配置されていて、ロータリーボーリングツールの一回のパスの間に、第1のインサート(7)による溝の荒切削、第2のインサート(8)による溝の切削、及び第3のインサート(9)による表面の平坦化が順番に実施される、ロータリーボーリングツール。
【請求項2】
前記第1のインサート(7)が略三角形の形状を有する、請求項1に記載の、ロータリーボーリングツール。
【請求項3】
前記第2のインサート(8)が三角形の切削稜線を有し、前記第2のインサートの先端角が35°から40°の間である、請求項1または2に記載のロータリーボーリングツール。
【請求項4】
前記第3のインサート(9)は平坦な切削稜線(9a)を持つ斜方形を有する、請求項1から3の何れか一項に記載のロータリーボーリングツール。
【請求項5】
前記第1、第2及び第3のインサート(7、8、9)の切削稜線(7a、8a、9a)が金属カーバイドから作られている、請求項1から4の何れか一項に記載のロータリーボーリングツール。
【請求項6】
切削稜線(8a)が、立方晶窒化ホウ素(CBN)から作られている、請求項1から4の何れか一項に記載のロータリーボーリングツール。
【請求項7】
切削稜線(8a)が、多結晶ダイヤモンドから作られている、請求項1から4の何れか一項に記載のロータリーボーリングツール。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のロータリーボーリングツール(1)を使用する、燃焼機関ハウジングのシリンダボアの仕上げマシニング方法であって、前記ロータリーボーリングツールの一回のパスの間に、溝の荒切削、溝の切削、及び表面の平坦化の各工程が、それぞれ専用の各インサート(7、8、9)によって実行されつつ、一回のパスのなかでなされる一連の工程として実施される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部品のボーリングの分野に関し、より具体的には、燃焼機関のシリンダボアの仕上げ工程に関する。
【0002】
本発明の主題は、シャフト内でツールを軸方向移動させることによって、円筒シャフトをマシニングするように設計された、脱着式の切削インサートを保持するカートリッジが設けられたロータリーインサートホルダ本体を備える、脱着式インサートを有するロータリーボーリングツール、及びこのロータリーマシニングツールを用いた燃焼機関ハウジング内のボアの仕上げマシニングのための、新しい方法に関する。
【0003】
本発明の用途は、限定しないが有利には、内燃機関の金属製ハウジングのシリンダといった機械部品におけるシリンダボアのマシニングと仕上げにある。
【0004】
これらの工程は通常、鋳鉄またはアルミニウムのマシニング及び仕上げのボーリング工程を行うように設計された、脱着式の単刃または多刃のインサートを有するツールによって実行される。荒切削工程、及びこれに続く仕上げ工程は、鋳鉄スリーブ上で、あるものは荒切削専用、他のものは仕上げ加工専用であるインサートを伴った、ツールが複数回通過することによって実行される。
【背景技術】
【0005】
独国特許出願公開第1281803号明細書から、被削材をくりぬいてネジ切りできる三角形の歯の形状の第1の切削稜線を有し、続いて伸長した歯の形状の第2の平削稜線を有する、単一の脱着式切削インサートが設けられたタップ加工ツールが知られている。この型のインサートによって、切削稜線によって隆起された材料の先端を、平削稜線によって平坦化することで、ツールが1度通過することによって、タップ加工して雌ネジを作ることが可能になる。しかし、雄ネジと螺合するための雌ネジを製造するように設計された当該ツールは、シリンダの良好な潤滑のために金属に掘られた溝が非常に正確な寸法に適合することを要するエンジンのシリンダシャフトのマシニング用としては、十分に精密ではない。実際、円弧溝の深さを調節するためにコーティングを施すことを可能にする一方で、摩擦を制限するために十分に平坦化された表面が、必要とされている。この表面状態は、当該公開文献に記載の、要求される水準の正確性が確保されない単一のインサートのツールによっては得ることができない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、特に表面状態の品質水準を達成するように、またシリンダシャフトの設計部署によって課された寸法に正確に適合するように構成された脱着可能なインサートが設けられたツールによって、溝を作り出すことである。
【0007】
この目的のため、本発明は、当該ツールが被削材に溝を荒切削することができる第1の切削インサートと、第1のインサートによって荒切削された溝を仕上げ加工するための第2のインサートと、当該2つのインサートによって隆起された材料の先端を平坦化することができる第3の、平削インサートとを備えることを提案する。
【0008】
当該3つのインサートは、材料に次々と貫穿するように、ツールホルダ本体の周りに段階状に配置されていることが好ましい。
【0009】
マシニングのためのこの新しい方法では、ツールが1回通過する間に、各工程専用のインサートによって、溝の荒切削、溝の切削、表面の平坦化、の各工程が同時に実行される。
【0010】
本発明は、添付の図面を参照しつつ下記の非限定的実施形態の説明を読むことにより、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明によるロータリーツールの概略図である。
図2図1を下から見た図である。
図3】当該ツールのインサート(複数)の、放射状の段階的な配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1のロータリーツールは、駆動マシン(図示せず)上に固定するためのショルダ2とインサートホルダ本体3とを有する、標準のインサートホルダ1の形式である。当該ツールは、切削インサート7、8、9の冷却用に、切削インサートに噴霧するための内側孔10を有する。ツールホルダ3は、複数のカートリッジ4またはインサートホルダバー(示されている例では3つ)を支持する。カートリッジまたはバー4は、図2及び図3に示す、いわゆる荒切削用7、仕上げ用8、平削用9の、3つの異なる切削インサートを支持する。カートリッジ4の位置は、図2に示す調整ネジ6によって調整可能である。これによって、各インサートの前縁の切削角度を調整することが可能になっている。各インサートは、締め付けネジ11によって、本体3上の所定の位置に締め付けられている。
【0013】
図3は、荒切削インサート7が、残りの2つのインサートに対して径方向に僅かに引っ込んでいることを示している。3つのインサート7、8、9は、好ましくは、ツールが被削材を貫穿している間、荒切削、切削及び仕上げの順番で連続して貫穿するように、段階状にツールホルダ3の周りに取り付けられている。
【0014】
インサート7、8、9は、カートリッジ4に対して締め付けるためのネジ11用の中央通し孔12を有する。第1のインサート7は、いわゆる「溝形成用」の、三角形の形状を有する荒切削インサートであり、被削材に粗い溝を掘ることが可能である。第2のインサート8もまた、いわゆる「溝形成用」のインサートである。第2のインサート8は、三角形の切削刃8aを有し、その先端角βは、第1のインサートによって切り開かれた溝に対して溝の仕上げを実行するために貫穿するように、第1のインサートの切削角αよりも狭い。最後に、第3のインサート9は、被削金属塊の、先行するインサートによって隆起された材料の先端を、通過の間に平坦化するように設計された、伸長した刃の形状を有するフラットな平削側面9aを有する。
【0015】
本発明の上記の用途に関して、切削インサート8は、三角形の切削稜線を有し、その先端角は35°と40°の間である。一方、平削インサート9は、好ましくは斜方形の形状を有する。
【0016】
インサート7、8、9の稜線7a、8a、9aは、被削材に応じて、異なる材料から作られていてよい。インサートの稜線は、(切削稜線及び平削稜線を含めて)全体が金属炭化物から作られていてよく、鋼をマシニングするため、好ましくは炭化タングステンから作られていてよい。例えばシリンダシャフトスリーブにおいては、鋳鉄をマシニングするため、インサートの稜線は好ましくは立方晶窒化ホウ素(CBN)から作られている。アルミニウムのマシニングには、多結晶ダイヤモンド(PCD)が必要とされる。
【0017】
荒切削用インサート7は、本体3上でインサートを回転することによって次々に使用できる、3つの切削面を有する。切削用インサート8は、2つの面を有する。これらのインサートは、どちらの切削稜線も次々と使用するため、カートリッジ4上で回転され得る。インサート(複数)が段階状に配置されていることによって、被削材に段階的にアタックすることが可能になる。これによって各インサートの切削力を低減することができ、したがって損耗も低減できる。
【0018】
上述のとおり、特にボアが種々の材料から作られている場合には、エンジンのボアのマシニングには複数の工程、即ち少なくとも1つの荒切削工程、及び仕上げステップ、それに続く平削ステップが、必要である。したがって、ツールが単一の型のインサートを有している場合には、当該ツールを複数回通過させることが必要である。一方、本発明によれば、各通過、即ちラフマシニング(荒切削)、仕上げ及び平削、にそれぞれ専用のインサートが用いられ、ツールの通過は1回で十分である。
【0019】
こうしてツールの1回の通過によって溝の荒切削、切削及び平坦化、並びに溝の平面化または「平削」を確保することで、切削によって優れた表面状態を有し、(具体的には鋳鉄またはアルミニウムから作られている)シリンダボア内で平坦化されている、満足できる「溝形成」を確保することが、本発明によって可能である。こうして、提案されたロータリーマシニングツールを使用した燃焼機関ハウジングのシリンダボアの仕上げマシニングの新しい方法によって、溝の荒切削、溝の切削、及び表面の平坦化の各工程が、これらの工程にそれぞれ専用の種々のインサート7、8、9のおかげで、前記ツールの一緒の通過の間に同時に実行される。次いで、円弧溝の深さを調節するように、被削表面にコーティングを施すことが可能になる。提案されたツールを用いて被削表面に当該プロセスを適用することは、要求される規則性を絶対的に達成するための効率的な手段である。
図1
図2
図3