(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タイヤ故障部位予測部による予測結果を用いて、ユーザにとって最適なタイヤの種類を判定する、判定部をさらに備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタイヤ故障部位予測システム。
前記タイヤ故障部位予測部による予測結果を用いて、ユーザにとって最適なタイヤの使用条件を判定する、判定部をさらに備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載のタイヤ故障部位予測システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態にかかるタイヤ故障部位予測システム及びタイヤ故障部位予測方法について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0011】
<タイヤ故障部位予測システム>
図1は、本発明の一実施形態にかかるタイヤ故障部位予測システム100の機能ブロックを示す図である。
図1に示すように、本実施形態のタイヤ故障部位予測システム100は、タイヤ走行パラメータ計測部1と、状態特性値計測部2と、疲労度特性値算出部3と、タイヤ故障部位予測部4と、判定部5とを備えている。
【0012】
ここで、タイヤ走行パラメータ計測部1は、タイヤ走行パラメータを計測するものである。タイヤ走行パラメータは、例えば、タイヤの走行時間、走行距離(例えばGPSの記録を用いる)、RTD(残溝深さ)、タイヤ回転数などとすることができる。好ましくは、タイヤ走行パラメータは、タイヤの走行時間又は走行距離とする。タイヤ走行パラメータ計測部1としては、例えば、タイヤの回転を感知することにより、タイヤが走行した時間及び/又は距離等を計測することのできる既知のものを用いることができる。
【0013】
状態特性値計測部2は、タイヤ構成部材の状態を示す状態特性値を計測するものである。タイヤ構成部材としては、ビード、カーカス、ベルト、トレッドゴム等を例示することができる。また、タイヤ構成部材の状態を示す状態特性値は、具体的には、例えばタイヤ構成部材の温度とすることができる。
ここで、
図2は、タイヤの各構成部材での発熱分布を示す模式図である。
図2においては、斜線の密度が大きいほど高温であることを示している。
図2に示すように、一般的に走行後のタイヤの温度は、各構成部材で異なっている。
タイヤ構成部材の温度は、例えば、状態特性値計測部2を、チャンバ(タイヤ内面とリムホイールとの間の空間)内に取り付け、チャンバ内の温度を計測し、そこから各タイヤ構成部材の温度に変換することにより算出することができる。
例えば、所定の計算式を用いて、チャンバ内の温度を各タイヤ構成部材(トレッド、ベルト、ビード等)の温度に変換することができ、計測されたチャンバ内の温度をTchとし、α、β、γ、δを係数とすると、ある構成部材(トレッド、ベルト、ビード等)の温度Tは、一例として、計算式、
【0014】
を用いて算出することができる。
なお、係数であるα、β、γ、δは、予め求めておくものであり、例えば、過去のデータ等に基づいてフィッティングを行うことにより、誤差が最小になるような係数α、β、γ、δを求めておくことができる。もちろん、係数α、β、γ、δは、構成部材によって異なっても良いものである。
あるいは、トレッド、ベルト、ビード等の温度は、計測したチャンバ内の温度に、過去のデータ等に基づく一定の定数を足すことにより算出することもできる。
【0015】
疲労度特性値算出部3は、状態特性値計測部2により計測された状態特性値に基づいて、タイヤ構成部材の疲労度に対応する疲労度特性値を算出するものである。本実施形態では、疲労度特性値算出部3は、疲労度特性値として、状態特性値計測部2により計測された温度をタイヤ走行時間で積分することにより、熱履歴を算出するものである。なお、タイヤ構成部材の疲労度に対応する疲労度特性値として熱履歴を用いているのは、熱履歴がタイヤ構成部材の故障リスクを予測する際の良い指標となるためである。
【0016】
タイヤ故障部位予測部4は、疲労度特性値算出部3によって算出された少なくとも1つのタイヤ構成部材の疲労度特性値(本実施形態では熱履歴)、及び、タイヤ走行パラメータ計測部1によって計測されたタイヤ走行パラメータ(本実施形態では走行時間)に基づき、タイヤの故障部位を予測するものである。
【0017】
図3は、タイヤの走行距離及び熱履歴と、ベルトの故障発生リスクとの関係を示す図である。
図3に示すように、タイヤ走行距離が増大するとともに、ベルトの熱履歴が増大する。そして、タイヤ走行距離及び熱履歴が一定以上となる領域(
図3の斜線で囲った領域)では、ベルトの故障が発生するリスクが高まる。
このように、トレッド、ベルト、ビード等のタイヤ構成部材は、タイヤの走行時間及び熱履歴により、その故障リスクを判定することができる。
このことは、走行距離(例えばGPSの記録を用いる)、RTD(残溝深さ)、タイヤ回転数などの他のタイヤ走行パラメータでも同様であり、また、他の疲労度特性値でも同様である。
【0018】
図4は、走行パラメータ及び熱履歴と、タイヤの故障部位及びタイヤライフとの関係を示す図である。
図4に示すように、本実施形態では、タイヤ故障部位予測部4は、疲労度特性値(熱履歴)とタイヤ走行パラメータ(走行時間)との2つのパラメータを2軸にとる座標系(この例では直交座標系)を用いた、該2つのパラメータとタイヤの故障部位とを関係付けた情報に基づいてタイヤの故障部位を予測する。
すなわち、
図4に示す例では、そのような情報として、タイヤ部位A、B、Cの3つの部位(例えば、ベルト、カーカス、及びビード)の故障リスクが一定の水準に達する条件(領域)を示しており、この情報は、過去の故障に関するデータ等に基づいて予め用意することができる。
本実施形態のタイヤ故障部位予測システムは、記憶部を有し、そのような情報を該記憶部に記憶しておくこともでき、あるいは、外部から取得することもできる。
そして、実際に算出した疲労度特性値(本実施形態では熱履歴)及び実際に計測したタイヤ走行パラメータ(本実施形態では走行時間)と、上記の情報とを用いて、タイヤ故障部位の予測を行うことができる。
【0019】
図4に示す例では、予測時点での実際の使用条件が、使用条件Aの場合には、算出される熱履歴及び計測される走行パラメータが、タイヤ部位A、B、Cの故障のいずれにも該当することがなく、故障のリスクが一定の水準に達していないものと予測されることとなる。一方で、予測時点での実際の使用条件が、使用条件Bの場合は、算出される熱履歴及び計測される走行パラメータに応じて、タイヤ部位Aの故障(故障A)、又は、タイヤ部位Cの故障(故障C)についての故障のリスクが一定の水準に達しているものであると予測されることとなる。
【0020】
各タイヤ構成部材は、疲労度及び走行パラメータにより、また、その各部位によって、その故障のリスクが異なるところ、本実施形態のタイヤ故障部位予測システム100によれば、状態特性値に基づいて算出される疲労度特性値及びタイヤ走行パラメータを用いて予測を行うため、どの部位での故障リスクであるものであるかを予測することができる。
従って、本実施形態のタイヤ故障部位予測システム100によれば、タイヤ故障部位を正確に予測することができる。
【0021】
ここで、本実施形態では、判定部5は、タイヤ故障部位予測部4による予測結果を用いて、ユーザにとって最適なタイヤの種類を判定するものである。すなわち、特定の種類のタイヤにおいて、特定の使用条件において、タイヤ故障部位予測部4によって、例えばビード部の故障の可能性が高いと予測された場合には、判定部5は、この予測結果を用いて、ユーザに次回からビード部の耐久性に優れた種類のタイヤを提供するように判定し、表示部等に該判定結果を示すことができる。ユーザは、その判定結果に基づいて、ビード部の耐久性に優れた新品のタイヤに交換したり、車両間でのタイヤの交換によってビード部の耐久性に優れたタイヤを用いたりすることができる。
あるいは、別の実施形態としては、判定部5は、タイヤ故障部位予測部4による予測結果を用いて、ユーザにとって最適なタイヤの使用条件を判定するものとすることもできる。すなわち、ある特定のタイミングで、例えばベルトの故障の可能性が高いと予測された場合、判定部5は、この予測結果を用いて、そのタイミング以降において、ベルトへの故障のリスクが小さくなるような使用条件を判定し、表示部等に該判定結果を示すことができる。そのような使用条件は、システムの記憶部に予め記憶させても良いし、通信等により外部から取得したものであっても良い。
もちろん、判定部5は、タイヤ故障部位予測部4による予測結果を用いて、ユーザにとって最適なタイヤの種類とタイヤの使用条件との両方を判定するものとすることもできる。
【0022】
また、本発明においては、タイヤ故障部位予測システムは、通信部を有しても良い。そして、通信部により、車内、あるいは、外部のシステムに、予測した故障の情報を送信するようにしてもよい。
この場合、通信部は、疲労度特性値(例えば熱履歴)とタイヤ走行パラメータ(例えば走行時間)との2つのパラメータを2軸にとる座標系を用いた、該2つのパラメータとタイヤの故障部位とを関係付けた情報を外部のシステムから受信するように構成することもできる。
あるいは、タイヤ故障部位予測システムは、記憶部を有し、予測した故障の情報を記憶部に記憶し、該記憶部を取り出し可能なように構成することもできる。
また、タイヤ故障部位予測システムは、表示部を有し、該表示を見ることにより、予測した故障の情報を確認するように構成することもできる。
【0023】
ここで、本発明のタイヤ故障部位予測システムは、上記のように、タイヤ故障部位予測部4が、疲労度特性値とタイヤ走行パラメータとの2つのパラメータを2軸にとる座標系を用いた、該2つのパラメータとタイヤの故障部位とを関係付けた情報を用いることによりタイヤの故障部位を予測するものであることが好ましい。容易にタイヤ故障部位を予測することができるからである。
【0024】
また、本発明のタイヤ故障部位予測システムでは、上記状態特性値は、温度であることが好ましい。タイヤ構成部材の故障の直接的な主要因である温度を基準とすることにより、より正確にタイヤ故障部位を予測することができるからである。
【0025】
さらに、本発明のタイヤ故障部位予測システムでは、上記タイヤ走行パラメータは、走行時間であることが好ましい。タイヤ構成部材の故障の直接的な主要因である走行時間を基準とすることにより、より正確にタイヤ故障部位を予測することができるからである。
【0026】
また、本発明のタイヤ故障部位予測システムでは、疲労度特性値は、タイヤ構成部材の温度を走行時間で積分した熱履歴であることが好ましい。熱履歴は、タイヤ構成部材の故障の良い指標となるため、より正確にタイヤ故障部位を予測することができるからである。
【0027】
さらに、本発明のタイヤ故障部位予測システムでは、状態特性値を計測されるタイヤ構成部材は、少なくともベルト及びビードを含むことが好ましい。ベルトやビードといった故障しやすい部位について、本発明の効果を得ることができるからである。
【0028】
<タイヤ故障部位予測方法>
本発明のタイヤ故障部位予測方法は、上述の本発明のタイヤ故障部位予測システムを用いて好適に行うことができる。
図3は、本発明の一実施形態にかかるタイヤ故障部位予測方法のフロー図である。
図3に示すように、本実施形態のタイヤ故障部位予測方法は、タイヤ走行パラメータ計測部により、タイヤ走行パラメータを計測する工程(ステップS101)と、状態特性値計測部により、タイヤ構成部材の状態を示す状態特性値を計測する工程(ステップS102)と、疲労度特性値算出部により、状態特性値計測部により計測された状態特性値に基づいて、タイヤ構成部材の疲労度特性値を算出する工程(ステップS103)と、タイヤ故障部位予測部により、疲労度特性値算出部によって算出された少なくとも1つのタイヤ構成部材の疲労度特性値、及び、タイヤ走行パラメータ計測部によって計測されたタイヤ走行パラメータに基づき、タイヤの故障部位を予測する工程(ステップS104)と、判定部により、タイヤ故障部位予測部による予測結果を用いて、ユーザにとって最適なタイヤの種類を判定する工程(ステップS105)とを含む。
【0029】
ここで、本実施形態のタイヤ故障部位予測方法は、前述の実施形態にかかるタイヤ故障部位予測システム100を用いて好適に行うことができ、タイヤ走行パラメータ計測部1、状態特性値計測部2、疲労度特性値算出部3、タイヤ故障部位予測部4、及び判定部5は、
図1に示す、上述の機能ブロックとすることができる。
【0030】
各タイヤ構成部材は、疲労度及び走行パラメータにより、また、その各部位によって、その故障のリスクが異なるところ、本実施形態のタイヤ故障部位予測方法によれば、状態特性値に基づいて算出される疲労度特性値及びタイヤ走行パラメータを用いて予測を行うため、どの部位での故障リスクであるものであるかを予測することができる。
従って、本実施形態のタイヤ故障部位予測方法によれば、タイヤ故障部位を正確に予測することができる。
上述したように、判定部5により、タイヤ故障部位予測部による予測結果を用いて、ユーザにとって最適なタイヤの種類を判定することによって、ユーザに次回から特定のタイヤ構成部材の耐久性に優れた種類のタイヤを提供するように判定し、表示部等に該判定結果を示すことができる。あるいは、別の実施形態としては、判定部5により、タイヤ故障部位予測部4による予測結果を用いて、ユーザにとって最適なタイヤの使用条件を判定することにより、特定のタイヤ構成部材の故障のリスクが小さくなるような使用条件を判定し、表示部等に該判定結果を示すことができる。もちろん、ユーザにとって最適なタイヤの種類とタイヤの使用条件との両方を判定することもできる。
【0031】
ここで、本発明のタイヤ故障部位予測方法は、上記のように、タイヤ故障部位予測部4が、疲労度特性値とタイヤ走行パラメータとの2つのパラメータを2軸にとる座標系を用いた、該2つのパラメータとタイヤの故障部位とを関係付けた情報を用いてタイヤの故障部位を予測するものであることが好ましい。容易にタイヤ故障部位を予測することができるからである。
【0032】
また、本発明のタイヤ故障部位予測方法では、上記状態特性値は、温度であることが好ましい。タイヤ構成部材の故障の直接的な主要因である温度を基準とすることにより、より正確にタイヤ故障部位を予測することができるからである。
【0033】
さらに、本発明のタイヤ故障部位予測方法では、上記タイヤ走行パラメータは、走行時間であることが好ましい。タイヤ構成部材の故障の直接的な主要因である走行時間を基準とすることにより、より正確にタイヤ故障部位を予測することができるからである。
【0034】
加えて、本発明のタイヤ故障部位予測方法においては、疲労度特性値は、タイヤ構成部材の温度を走行時間で積分した熱履歴であることが好ましい。熱履歴は、タイヤ構成部材の故障の良い指標となるため、より正確にタイヤ故障部位を予測することができるからである。
【0035】
さらに、本発明のタイヤ故障部位予測方法では、状態特性値を計測されるタイヤ構成部材は、少なくともベルト及びビードを含むことが好ましい。ベルトやビードといった故障しやすい部位について、本発明の効果を得ることができるからである。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明のタイヤ故障部位予測システム及びタイヤ故障部位予測方法は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、
図1に示す実施形態では、タイヤ走行パラメータ計測部1と、状態特性値計測部2とを別の機能部としているが、本発明のタイヤ故障部位予測システムでは、これらを同一の機能部とすることもできる。この場合、例えば、タイヤ故障部位予測システムを、一定の走行時間間隔ごとの温度を計測する機能部を有するものとすることができる。対応して、タイヤ走行パラメータを計測する工程(ステップS101)と、タイヤ構成部材の状態を示す状態特性値を計測する工程(ステップS102)とを同時に行うこともでき、あるいは、タイヤ構成部材の状態を示す状態特性値を計測する工程(ステップS102)を、タイヤ走行パラメータを計測する工程(ステップS101)より先に行うこともできる。その他、様々な変形や変更が可能である。