(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594346
(24)【登録日】2019年10月4日
    
      
        (45)【発行日】2019年10月23日
      
    (54)【発明の名称】周期運動の磁気共鳴断層撮影画像を生成する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B   5/055       20060101AFI20191010BHJP        
【FI】
   A61B5/055 376
   A61B5/055ZDM
【請求項の数】4
【全頁数】9
      (21)【出願番号】特願2016-568424(P2016-568424)
(86)(22)【出願日】2015年5月19日
    
      (65)【公表番号】特表2017-515604(P2017-515604A)
(43)【公表日】2017年6月15日
    
      (86)【国際出願番号】EP2015060956
    
      (87)【国際公開番号】WO2015177117
(87)【国際公開日】20151126
    【審査請求日】2018年1月25日
      (31)【優先権主張番号】102014209437.2
(32)【優先日】2014年5月19日
(33)【優先権主張国】DE
    
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】500058187
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
          (74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡  亮一
          (74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田  直
          (74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀  明代
          (74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋  香元
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】ラスチェ,フォルカー
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】ウンドラク,ステファン
              
            
        
      
    
      【審査官】
        伊藤  昭治
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          国際公開第2012/176114(WO,A1)    
        
        【文献】
          特開2010−142285(JP,A)      
        
        【文献】
          特表2010−524622(JP,A)      
        
        【文献】
          国際公開第2008/132659(WO,A2)    
        
        【文献】
          米国特許出願公開第2014/0133716(US,A1)    
        
        【文献】
          米国特許出願公開第2005/207538(US,A1)    
        
        【文献】
          特表2005−521501(JP,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B      5/055
G01R      33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  周期運動の少なくとも1つのフェーズの磁気共鳴断層撮影画像を生成する方法であり、
  a.k空間部分軌道(k1...kx)を使って撮影時間(T)の間に周期運動のローデータセット(r1...rx)を生成する工程と、
  b.少なくとも2つの中間画像(z1...zy)のシリーズを復元する工程であって、少なくとも前記ローデータセット(r1...rx)のそれぞれの領域(関心領域、ROI)について、それぞれ少なくとも1つのローデータセット(r1...rx)から前記中間画像のいずれかが生成されるという工程と、
  c.前記中間画像(z1...zy)のシリーズから距離行列Dを計算する工程であって、各行列要素Dが、前記シリーズの1つの中間画像(z1...zy)とそれ自体との距離ならびに前記シリーズの少なくとも1つの別の中間画像(z1...zy)との距離に相当するという工程と、
  d.前記距離行列Dの中に形成されている構造に関数(v1...vz)を適合させる行程と、
  e.前記関数(v1...vz)と、中間画像ziに割り当てられた前記距離行列Dのそれぞれ1つの行との共通集合Sに対応するローデータセット(r1...rx)から、少なくとも1つの画像Biを復元する工程と、を有している方法。
【請求項2】
  前記距離行列(D)が二次元のユークリッド距離行列であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
  前記k空間部分軌道(k1...kx)のそれぞれ関連するサブグループに対し、前記k空間にできる限り均等に配分される配置を保証する順序付けスキームによって、前記k空間をサンプリングすることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
  時間的に連続するk空間部分軌道(k1...kx)が、黄金角に相当する角度を含んでいることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、周期運動の少なくとも1つのフェーズの磁気共鳴断層撮影画像を生成する方法に関する。
 
【背景技術】
【0002】
  例えば顎の咀嚼運動など、物体の運動のさまざまなフェーズの磁気共鳴断層撮影画像を生成するために、多くの場合は、その運動の個々の位置が記録される。このために、例えば顎などの物体をさまざまな位置で固定する装置が必要となる。そのように固定することで、個々のあらゆる位置について、画像用の磁気共鳴断層撮影の十分なデータを生成することが可能になる。しかしながら、この記録方式は非常に経費がかかり、実際の運動プロセスでしか発生しない動的効果を撮像することができない。
【0003】
  運動の速度が十分に遅い場合、例えば咀嚼運動が十分にゆっくりと実施される場合は、1回の運動周期の間に、それぞれの運動フェーズについての磁気共鳴断層撮影の十分なデータを生成することも可能である。このことは、例えば“Real−Time  Magnetic  Resonance  Imaging  of  Temporomandibular  Joint  Dynamics”(S.Zhang他、The  Open  Medical  Imaging  Journal,5,1〜7頁,2011年)に説明されている。
【0004】
  しかしながら、例えば、咀嚼運動をゆっくりと実施することは患者にとって非常に困難であり、訓練やサポートが必要である。さらに、この方式では通常の運動速度でのみ発生する動的効果を撮像することができない。
【0005】
  さらに周期運動の場合、複数の運動周期にわたってデータセットを生成し、次に、それらのデータセットに運動のフェーズをそれぞれ1つずつ割り当てることが可能である。これにより、そのフェーズに対応する全てのデータセットが、対応する運動フェーズの画像の基礎となり得る。
【0006】
  この割当てを可能にするために、例えば装置を用いて運動の位置を記録することが可能である。しかしながら、この場合、追加の装置によって生じるコストが欠点となる。
【0007】
  “Adaptive  Averaging  Applied  to  Dynamic  Imaging  of  the  soft  Palate”(A.D.Scott他、Magnetic  Resonance  in  Medicine、第70巻、865〜874頁、2013年9月)から、個々のリアルタイム画像間の相関係数を特定する、運動画像生成法が知られている。この相関係数に基づいて、リアルタイム画像が同一の運動フェーズに同定され、この運動フェーズの全体像の基礎にされる。
【0008】
  すなわち、説明したこの方式は、周期運動が存在しなくても信号対雑音比(SNR)の少ない画像を関連付ける。SNRを上昇させるために、高い相関係数を有する画像が平均化される。しかし、この方式には、アーチファクトのない画像を得るため、k空間を高密度でサンプリングする必要があることから、時空間分解能が制限されるという欠点がある。空間分解能は、例えば1.6×1.6〜2.0×2.0mm
2の範囲にある。時間分解能は、例えば複数のコイルを使用するパラレルイメージングにより、50〜111msの範囲にすることが可能である。1つのコイルで測定する場合、時間分解能は150〜300msにしかならないであろう。TMJ撮影(顎関節機能不全)に求められる空間分解能及び時間分解能は、最大で0.75×0.75mm
2及び100msである。さらに、対相関の最大値が間違っているか、又は曖昧であることから、間違った結果がもたらされるおそれがあるため、この方式は安定性が低いという欠点もある。
【0009】
  本発明の課題は、高い時空間分解能を備える、周期運動の個々の運動フェーズの画像を生成するための簡単かつ信頼性の高い方法を提供することである。
 
【発明の概要】
【0010】
  この課題は、周期運動の少なくとも1つのフェーズの磁気共鳴断層撮影画像を生成する方法によって解決され、この方法は、k空間部分軌道を使って撮影時間Tの間に周期運動のローデータセットを生成する工程と、少なくともローデータセットのそれぞれの領域(関心領域、ROI)について、それぞれ少なくとも1つのローデータセットから少なくとも2つの中間画像のシリーズを復元する工程と、中間画像のシリーズから距離行列を計算する工程であって、各行列要素Dが、そのシリーズの1つの中間画像とそれ自体との距離又はそのシリーズの別の中間画像との距離に相当するという工程と、距離行列の中に形成されている構造に曲線又は関数を適合又はフィッティング又は近似させる行程と、近似曲線又は近似関数と、中間画像に属する距離行列の要素との共通集合に対応するローデータセットから、少なくとも1つの画像を復元する工程と、を有している。
 
【0011】
  この場合、k空間部分軌道は放射状又はほぼ放射状であってよい。
 
【0012】
  中間画像の復元は、高い時間分解能によって行うことができる。
 
【0013】
  距離行列は、二次元、三次元又は多次元の距離行列であってよい。
 
【0014】
  二次元の距離行列では、構造が線であってよい。
 
【0015】
  共通集合は、複数の交点を有していてよい。
 
【0016】
  距離行列Dの中に形成されている線への曲線又は関数の適合は、例えば線積分の最大化によって行うことができる。線積分の最大化には、例えば動的輪郭法又は「カーブフィッティング」法などが使用できる。
 
【0017】
  この代替として、いわゆる力まかせ法又はしらみつぶし法も使用可能である。問題のアルゴリズム解法に関するこの方式では、正しい解が見つかるまで可能性のある全ての解が試される。
 
【0018】
  本発明に基づく方法により、実施する運動又はデータ収集の速度に対して高い要求を行うことなく、繰返し運動の個々のフェーズにおける物体の磁気共鳴断層撮影画像を生成することが可能になる。例えば、複数の周期にわたって運動を測定することにより、通常の速度で連続して実施される咀嚼運動又は繰り返される言語運動のさまざまなフェーズにおいて、顎関節を撮像することができる。
 
【0019】
  磁気共鳴断層撮影による測定のため、測定シーケンスと呼ばれる、傾斜磁場、高周波パルス及び信号受信時間から成る組み合わせの時間的順序が使用され、この信号受信時間は撮影時間中に1回又は数回進行する。この場合、測定シーケンスは、例えば周波数の時間的変化及び傾斜磁場の磁界強度及び周波数パルスなどを規定する。
 
【0020】
  選択された測定周波数から、k空間軌道、すなわちk空間における測定点のシーケンスが生じる。このとき、k空間に関しては、位置空間でフーリエ変換した線形ベクトル空間であって二次元又は三次元の複素の波数ベクトルの線形ベクトル空間をkと呼ぶ。そのため、k空間はまた波数ベクトル空間とも呼ばれる。
 
【0021】
  本発明に基づき、放射状又はほぼ放射状のk空間部分軌道から構成されるk空間軌道は、k空間のサンプリングに用いられる。k空間の中心点を通る線であり、測定点を有する個々の線を、放射状のk空間部分軌道と呼ぶ。これらの線は、いわゆる円の直径として外側から中心点を通って再び外側へ通ることができるため、「スポーク」又は「センターアウトライン」とも呼ばれる。中心点から外側へのみ通る「ラジアルセンターアウト」のk空間部分軌道は特別なケースである。
 
【0022】
  ほぼ放射状のk空間軌道の例は、PROPELLER  EPI(Magn  Reson  Med.2005年11月;54(5):1232〜40頁、“PROPELLER  EPI:an  MRI  technique  suitable  for  diffusion  tensor  imaging  at  high  field  strength  with  reduced  geometric  distortions.”、Wang他)である。
 
【0023】
  撮影時間中にk空間のサンプリングで測定されたローデータセットは、例えばメモリユニット内に順次保存される。
 
【0024】
  ローデータセットは、k空間の唯一の点を測定する際に記録される信号であってよい。ローデータセットは、k空間部分軌道を測定する際に記録される信号、又はk空間の測定点から成るその他の任意の各グループの信号を含むこともできる。多くは、複数の測定点から成るそれぞれのk空間部分軌道、又は該当する測定点で記録される測定データがローデータセットとして保存される。
 
【0025】
  ローデータセットから、高い時間分解能を有する中間画像が復元される。高い時間分解能は、低い空間分解能又はサンプリングアーチファクトのある高い空間分解能によって実現することができる。時間分解能は、例えば、画像ごとのk空間部分軌道又はローデータセットの数を減らすことによって向上する。
 
【0026】
  パラレルイメージングと組み合わせることにより、k空間部分軌道の数をさらに縮小することが可能である。
 
【0027】
  復元は、全ての局所的記録ウインドウ(Aufnahmefenster)に対して行うことができる。復元を関心領域(ROI)に制限することにより、計算量を軽減できる。さらに、これにより、例えば動いている関節又は物体を取り囲む部分から受ける影響を抑制及び/又は回避することもでき、それによって生成する画像の品質が改善される。復元されたこの中間画像全体を、中間画像のシリーズと呼ぶ。
 
【0028】
  中間画像のシリーズから、距離行列が計算される。このとき、シリーズのいずれかの中間画像と、シリーズのその他のいずれかの中間画像との距離ならびにそれ自体との距離が、特定の距離メトリック又は基準のもとで計算され、距離行列の行列要素として保存される。例えば、中間画像相互のユークリッド距離を持つユークリッド距離行列を行列要素として使用してよい。
 
【0029】
【数1】
  しかしまた、2つの画像間の類似性を表し、それによって類似性の尺度として用いることのできるその他の基準も使用できる。
 
【0030】
  それぞれの中間画像とそれ自身との比較に対応する、主対角にある行列要素は、完璧な同一性の理由から、行列要素の定義に応じて最小値又は最大値を有する。従って、距離行列の画像表現においては、主対角に沿った直線を明確に検知することができる。運動の繰り返しにより、その他の類似の構造又は線がこの主対角に対して平行ならびに直角に形成される。運動が規則正しく行われるほど、形成される主対角線は類似性がより高くなる。運動が時間的に不規則に繰り返されるほど、形成される線はより直線の線形から逸脱するか、又はより多く欠損部を有するようになる。
 
【0031】
  距離行列の各行に関して、線と行の交点は、最小距離、すなわち比較に用いられた中間画像と、行の基礎になっている中間画像との最大一致を再現する。
 
【0032】
  これらの交点を見つけ出すため、動的輪郭法(スネークとも呼ばれる)を用いて、それぞれの線が曲線又はスプライン曲線によって近似又はフィッティングされる。このために、開始位置として主対角に対し平行に移行しているそれぞれの直線から出発して、関係するエネルギー関数の最小化により、一次元のスプライン曲線、すなわち一次元の多項式曲線がいずれか1つの線に、すなわちその線の線形に適合される。
 
【0033】
  そのようにして見つけ出された曲線又はスプライン曲線を使って、線と距離行列の行との交点の基礎となっているローデータセットが検出される。このように距離行列の行に対して検出されたローデータセットのサブグループから、運動のちょうど1つのフェーズを再現している画像が復元される。
 
【0034】
  有利には、この距離行列がユークリッド距離行列である。ユークリッド距離行列は、距離行列を実施する簡単なバリエーションである。
 
【0035】
  有利には、k空間部分軌道又はスポークのそれぞれ関連するサブグループに対し、k空間にできる限り均等に配分される配置を保証する順序付けスキームによって、k空間をサンプリングすることができる。
 
【0036】
  このサンプリングは、例えば非周期的順序付けスキームに従って行うことができる。
 
【0037】
  画像の品質にとっては、画像の基礎になっているk空間部分軌道のサブセットの角度がそれぞれk空間にできる限り均等に配分されるように、サンプリング軌道とも呼ばれるk空間軌道を選択することが重要である。周期運動を測定する場合には、とくに、サンプリング軌道と運動との間にうなりが生じるため、個々の運動フェーズに割り当て可能なk空間部分軌道のサブグループが、できる限り均等なk空間のサンプリングを行うことができなくなり、十分なk空間情報が提供されないという危険がある。
 
【0038】
  非周期的サンプリングにより、周期運動に伴うk空間のサンプリングのうねりを回避し、最終的に画像の基礎となるk空間部分軌道におけるk空間の中間スペースの最大サイズを最小化することができる。これにより、断層撮影又はボリューム画像の品質が改善する。
 
【0039】
  有利には、時間的に連続する放射状又はほぼ放射状のk空間部分軌道(k1...kx)が、黄金角に相当する角度を含んでいる。
 
【0040】
  黄金角、すなわち137.5°又は222.5°の角度は、運動の循環性に伴うk空間のサンプリングのうねりを回避し、最終的に画像の基礎になるk空間部分軌道における中間スペースのサイズを最小化するための簡単かつ確実なやり方である。黄金角は、運動に起因している、あるいは全体を形作っているk空間部分軌道の各サブセットに対し、できる限り均等に配分された角度を保証する。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0041】
  本発明に基づく方法を図に従って説明する。
 
【発明を実施するための形態】
【0042】
  図1には、本発明に基づく方法のプロセスの概略が、咀嚼運動の測定を使って少なくとも部分的に図示されている。従来技術から知られているMRTシステムを用いて、時間Tの間に患者の顎関節を測定する。このとき、患者は時間Tの間に咀嚼運動を行う。測定時、放射状のk空間部分軌道k1、k2、k3...kxがサンプリングされ、測定データがローデータセットr1、r2、r3...rxの形で生成され、例えばメモリユニットのメモリ部分に逐次保存される。
 
【0043】
  k空間は、例えば黄金角に従ってサンプリングされる。すなわち、
図2に示されているように、時間的に連続する放射状の2つのk空間部分軌道k1、k2、k3...kxは、常に137.5°又は222.5°に相当する黄金角を形成する。
 
【0044】
  ここでは顎関節の咀嚼運動の測定を例として説明する。しかしまた、繰り返される言語運動又は口の周期的開閉、あるいは膝関節などのその他の関節運動も測定可能である。しかしまた、その他の動いている物体の測定も可能であり、例えば呼吸運動を測定することもできる。この場合は、例えば肺−肝臓のエッジを関心領域(ROI)として選択することができる。
 
【0045】
  測定に使用するMRTシステムの形態は、とくに測定する関節又は物体に合わせられるか、あるいは測定する関節又は物体の運動半径に合わせられる。
 
【0046】
  ローデータセットr1、r2、r3...rxを撮影した時点に応じて、このローデータセットは運動のその他のフェーズ、例えば閉じている顎又は完全に開いている顎、あるいは顎の開閉中に軽く開いている顎の状態などを描写する。
 
【0047】
  運動は周期的に実施され、時間インターバルの間にさまざまなフェーズが繰り返されるため、運動の特定のフェーズの画像に対して、異なる時点に撮影された複数のローデータセットを用いることができ、そのローデータセットはそれぞれ、これらの特定の運動フェーズを描写している。
 
【0048】
  ローデータセットr1、r2、r3...rxをさまざまな運動フェーズに割り当てられるように、ローデータセットから中間画像z1、z2...zyが復元され、この中間画像は、関心領域(ROI)とも呼ばれる、運動を撮像している少なくとも1つの領域を高い時間分解能で再現する。この領域又はROIは、例えば顎関節測定の場合、顆周辺が選択される。
 
【0049】
  中間画像z1、z2...zyの十分な時間分解能を得るため、1つの中間画像対して、分解能によって規定されているよりも少ない放射状のk空間部分軌道又はローデータセットを使用し、それによって空間分解能の低い中間画像又はエイリアシングアーチファクトのある中間画像を復元する。例えば、それぞれ僅かな数の連続するローデータセットからアンダーサンプリングされた中間画像を復元することができる。
 
【0050】
  距離行列D、例えばユークリッド距離行列では、中間画像z1、z2...zyの相互の距離、すなわちそれぞれの距離寸法が検知される。このとき、距離行列Dの各行iは、中間画像ziとその他の中間画像z1、z2...zyとの距離ならびにそれ自身との距離を再現しており、この距離は例えばユークリッド距離である。
 
【0051】
  各中間画像z1、z2...zyとそれ自体との完璧な類似性により、距離行列Dは最小値を持つ主対角Hを有している。さらに、運動の循環性、すなわちさまざまな運動フェーズのどれもが何度も発生又は進行することにより、距離行列Dは、その他にも主対角Hに対して平行又は垂直に通る最小値の線を有している。咀嚼運動などの周期運動は連続して実施されるが、絶対に同じフォームでは実施されないため、これらの線は近似的にのみ直線になっている。
 
【0052】
  距離行列の線に基づいて、線と距離行列Dの行iとの交点Sを検出することにより、それぞれ1つの中間画像ziに対して、最大の類似性を持つ複数の中間画像zjが見つけ出されることがある。このために、それぞれの線が動的輪郭法を用いて近似又はフィッティングされる。
 
【0053】
  動的輪郭法では、相応に立てられたエネルギー関数を最小化することにより、スプライン曲線、すなわち多項式曲線が輪郭に近づけられる。スプライン曲線は、以下に曲線又は関数v1、v2...vzとも呼ぶ。動的輪郭法の開始値として、主対角Hに対して平行に移行している直線から出発することができる。
 
【0054】
  距離行列Dの各線に対して特定又はフィッティングされた曲線又は関数v1、v2...vz(点で表示)を用いて、関数と、距離行列Dのそれぞれ1つの行との共通集合Sが特定される。そうすることで、各行について、交点Sの基礎となるローデータセットr1、r2、r3...ryの行列要素から、それぞれ1つの特別な運動フェーズを描写している画像Bを復元することができる。