特許第6594370号(P6594370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 春日電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6594370-除水又は除塵用旋回ノズル 図000002
  • 特許6594370-除水又は除塵用旋回ノズル 図000003
  • 特許6594370-除水又は除塵用旋回ノズル 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594370
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】除水又は除塵用旋回ノズル
(51)【国際特許分類】
   B05B 3/02 20060101AFI20191010BHJP
   B05B 3/06 20060101ALI20191010BHJP
   F26B 5/00 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   B05B3/02 L
   B05B3/06 Z
   F26B5/00
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-84514(P2017-84514)
(22)【出願日】2017年4月21日
(65)【公開番号】特開2018-176140(P2018-176140A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183738
【氏名又は名称】春日電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076163
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】福田 勝喜
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 政浩
(72)【発明者】
【氏名】稲村 達也
(72)【発明者】
【氏名】植村 隆
(72)【発明者】
【氏名】梶原 薫
(72)【発明者】
【氏名】小川 博史
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−42451(JP,A)
【文献】 実開平6−19849(JP,U)
【文献】 特開2004−132616(JP,A)
【文献】 特開2005−345018(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3044282(JP,U)
【文献】 米国特許第8807453(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00− 9/08
F26B 1/00−25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースにノズルチューブが回転自在に組み込まれるとともに、
このノズルチューブは直線状の軸部とこの軸部の軸線に対して傾斜角が保たれた旋回部とからなり、
上記ケースには、ノズルチューブの軸部を回転自在に支持する軸受が設けられた除水または除塵用旋回ノズルであって、
軸部の軸線方向に二段重ねにされた一対の軸受を設け
上記軸部に一対の止め輪を設け、これら止め輪間に覆い部材を介在させるとともに、
一方の止め輪と覆い部材との間に板バネを介在させる一方、
上記覆い部材は、板状のフタ部とこのフタ部に連続する裾部とからなり、
上記フタ部は、上記ケースの開口部を覆うとともに、上記裾部が上記ケースの外周まで伸びてその周囲を覆うようにした
除水又は除塵用旋回ノズル。
【請求項2】
上記ノズルチューブの上記軸部には、ノズルチューブ内に導かれた圧縮エアを、上記覆い部材内に噴出するための少なくとも1つの小孔が形成された請求項1に記載された除水または除塵用旋回ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノズルチューブから噴出される圧縮エアで、除水または除塵対象物に付着した水やゴミを吹き飛ばす除水又は除塵用旋回ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、食品容器の場合は、それに食品を詰める作業をしている過程で、食品が容器の外側に付着してしまうことがある。そのため、ほとんどの場合、食品を詰め終わった後に、すべての容器を水洗いする。そして、水洗いをした容器を除水して箱詰めする場合もあるし、除水後にさらに乾燥室で乾燥してから箱詰めされる場合もある。
【0003】
上記の工程で、もし、除水作業を省略して当該容器を直接乾燥室に入れると、例えば大粒の水滴などは完全に取り除けない。
容器に水滴が付着したまま箱詰めされてしまうと、この水滴が、例えば段ボール箱の外側にしみ出たり、あるいはカビや異臭の原因になったりする。
【0004】
段ボール箱の外側に水がしみ出したり、容器の外側にカビが生えたりしていても、多くの場合、食品そのものにはほとんど影響がない。
しかし、現在の食品業界では、このようなことは絶対に許されない厳しさがある。そのために、段ボール箱に水がしみ出ていたり、容器にカビが生えていたりすれば、それが返品の要因になってしまう。
【0005】
このような理由で、特に、食品用容器では、高精度な除水機能が求められているが、この種のものとして、図2に示す除水機Rが従来から知られている。
上記除水機Rは、本体1に搬送用コンベア2を設けるとともに、この搬送用コンベア2を覆ったりそれを開放したりできるエア噴射ユニット3を設けている。
【0006】
上記エア噴出ユニット3には、圧縮エアが供給されるとともに、この圧縮エアを噴出する旋回ノズルNが複数設けられている。
そして、上記エア噴出ユニット3で搬送用コンベア2を覆った状態で、例えば、食品用パウチ等の除水対象物を、搬送用コンベア2に載せて搬送すれば、除水対象物がエア噴出ユニット3をくぐり抜ける過程で、旋回ノズルNから噴出される圧縮エアが吹きつけられ、当該容器に付着した水滴が吹き飛ばされて除水される。
【0007】
上記のようにした除水機Rに用いられている旋回ノズルNは、図3に示すとおりである。
この旋回ノズルNは、そのケース4と、ノズルチューブ5と、軸受6と、覆い板7とからなる。
【0008】
上記ケース4は、その一方に底部4aを設けるとともに、底部4aとは反対側に開口部4bを設けている。そして、底部4aには圧縮エアを導入する導入孔8を形成するとともに、この導入孔8に連続する取付けパイプ9を一体的に設けている。この取付けパイプ9は、上記したエア噴出ユニット3に固定するとともに、エア噴出ユニット3内の圧縮エアが導かれるものである。
【0009】
このようにしたケース4にはノズルチューブ5が組み込まれるが、このノズルチューブ5は、直線状にした軸部5aとこの軸部5aの軸線に対して傾斜角が設けられた旋回部5bとからなる。
上記旋回部5bの先端の噴出口5cは、そこから噴出される圧縮エアの反力で、旋回部5bが旋回できる位置及び軸部5aに対する角度を保っている。
【0010】
上記のようにしたケース4とノズルチューブ5の軸部5aとの間に、ボールベアリングからなる軸受6の内輪6aと外輪6bとを圧入している。
したがって、上記ノズルチューブ5の軸部5aは、ボールベアリングBに支持されて回転する。
【0011】
上記の構成のもとで、エア噴出ユニット3に圧縮エアが供給されると、その圧縮エアは、取付けパイプ9からノズルチューブ5に導かれ、噴出口5cから勢いよく噴出される。
このときの圧縮エアの噴出反力で上記旋回部5bが軸部5aの軸線を中心に旋回するとともに、圧縮エアの噴出方向も旋回する。
【0012】
一方、上記ノズルチューブ5の軸部5aには覆い板7を固定し、この覆い板7で開口部4bからケース4内に水滴等が進入しないようにしている。
また、上記覆い板7と軸受6間における軸部5aには小孔10を形成し、この小孔10から圧縮エアを噴き出して、ケース4内に水滴が進入するのを積極的に防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−042451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のようにした旋回ノズルNは、ノズルチューブ5の軸部5aが一つの軸受6で支持されている。ところがノズルチューブ5の旋回部5bは、軸受6で支持されている軸部5aに対して偏心回転しているので、上記軸受6には常に偏荷重が作用する。この偏荷重のために軸受6も偏摩耗し、それが軸部5aを歳差運動させてしまう。
【0015】
上記のように軸部5aが歳差運動をすれば、その分、旋回部5b、特にその噴出口5cの旋回半径が大きくなってしまう。旋回半径が大きくなれば、圧縮エアの命中箇所が不正確になるとともに、圧縮エアによる衝撃力が低下するという問題が発生する。
【0016】
しかも、上記旋回部5bの旋回トルクは非常に小さく、例えば、旋回中に指を差し入れても、ほとんど痛さを感じることなく、その旋回を止めることができる。このように小さな旋回トルクしかないので、軸部5aが歳差運動をすると、スムーズな回転が阻止されてその回転速度がさらに低下し、単位時間当たりの除水効率が落ちてしまうという問題があった。
【0017】
さらに、ノズルチューブ5の軸部5aが歳差運動をしだすと、軸部5aと軸受6とが偏磨耗してそれらの間に隙間ができてしまう。このような偏磨耗が進むと、ノズルチューブ5が回転しなくなる。
そして、除水機の場合には水道水を使うことが多いが、水道水を長く使っていると、カルキが析出して、それが上記隙間に入り込んでしまう。このように隙間にカルキが入ってしまうと、ノズルチューブ5のスムーズな回転ができなくなり、当該旋回ノズルNの寿命を短くしてしまう。
【0018】
もし、旋回ノズルNが回転しなくなったり、その回転がスムーズにいかなくなったりすると、当該除水機から旋回ノズルNを取り外して交換しなければならない。しかし、除水機は、主たるラインの途中に組み込まれることがほとんどなので、旋回ノズルNの交換のために、主たるラインのすべてを止めなければならなくなり、主たるラインにおける製造効率を著しく損なうことになる。
【0019】
この発明の目的は、寿命を長く保てるとともに、除水もしくは除塵対象物に水滴やゴミが残ることがなく、それら対象物の商品価値を落としたりしない除水または除塵用旋回ノズルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第1の発明は、除水又は除塵用旋回ノズルであって、そのノズルチューブの軸部がその軸線方向に二段重ねにされた一対の軸受で支持されてなる点に特徴を有する。
このように一対の軸受でノズルチューブの軸部が回転自在に支持されているので、軸部に歳差運動の力が作用したとしても、それを押えることができる。軸部に作用する歳差運動の作用力を押えられるので、ノズルチューブの旋回部の旋回を安定させることができる。
【0021】
このように旋回部の旋回を安定させることができるので、ノズルチューブから噴出される圧縮エアの噴出方向も安定させることができ、除水もしくは除塵対象物に水滴やゴミ等が残ったりしなくなる。しかも、当該旋回ノズルの寿命も延ばすことができる。
【0022】
さらに、上記軸部に一対の止め輪を設け、これら止め輪間に覆い部材を介在させるとともに、一方の止め輪と覆い部材との間に板バネを介在させている。一方、上記覆い部材は、板状のフタ部とこのフタ部に連続する裾部とからなり、上記フタ部は、上記ケースの開口部を覆うとともに、上記裾部が上記ケースの外周まで伸びてその周囲を覆うようにしている。
【0023】
したがって、上記覆い部材が機能して、ケースに水滴やゴミなどが進入するのを防止できる。特に、水道水を使った除水機の場合に、カルキによる問題をほとんど解消できる。
【0024】
第2の発明は、ノズルチューブの上記軸部には、ノズルチューブ内に導かれた圧縮エアを、上記覆い部材内に噴出するための少なくとも1つの小孔が形成された点に特徴を有する。
上記のように小孔を形成したので、覆い部材内を高圧に保つことができる。

【発明の効果】
【0025】
この発明の除水又は除塵用旋回ノズルによれば、ノズルチューブの軸部が歳差運動をすることがないので、常に安定した旋回を維持できる。したがって、寿命を長く保てるとともに、除水もしくは除塵対象物に水滴やゴミが残ることがなく、商品価値を落としたりしない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の断面図である。
図2】従来の除水機の斜視図である。
図3】従来の除水機に用いられた旋回ノズルの一部を断面にした図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図示の実施形態のケースCは、その一方に底部11を設け、この底部11とは反対側に開口部12を形成している。そして、この底部11には、従来と同様のエア噴出ユニットからの圧縮エアを導く導入孔13を形成するとともに、この導入孔13に連続する取付けパイプ14を一体的に設け、この取付けパイプ14を上記したエア噴出ユニットに固定するようにしている。
【0028】
上記ケースCにはノズルチューブTが組み込まれるが、このノズルチューブTは、直線状にした軸部15とこの軸部15の軸線に対して傾斜角を保った旋回部16とからなる。
そして、上記旋回部16の先端の噴出口17は、そこから噴出される圧縮エアの反力で、旋回部16が旋回できる位置及び角度を保っている。
【0029】
上記のようにしたケースCに、ノズルチューブTの軸部15が組み込まれるが、この軸部15とケースCとの間に、軸部15の軸線方向に二段重ねにされたこの発明の軸受である一対のボールベアリングB1,B2が組み込まれているが、その組み込み構造は次の通りである。
【0030】
なお、上記一対のボールベアリングB1,B2は同じ構成なので、それらの各構成要素を同じ符号を用いて説明する。
上記ボールベアリングB1,B2は、内輪18と外輪19との間にボール20を介在させてなるもので、これらボール20はケージ21で保持されている。
【0031】
一方、ノズルチューブTの軸部15には、その軸方向に間隔を保って一対の止め輪22,23をはめ付けるとともに、これら止め輪22,23間で、ボールベアリングB1,B2の内輪18を保持させている。
また、図面下側における外輪19は、図面下端をケースCに形成した段部24で支持させるとともに、上端はスペーサー25を介してケースCの内側に止めた止め輪26で止めている。
なお、図中符号27は、先端を上記外輪19に接触させた押付ネジである。
【0032】
さらに、上記軸部15であって、上記止め輪26よりも旋回部16寄りに一対の止め輪28,29を設け、これら止め輪28,29間に覆い部材30を介在させるとともに、一方の止め輪28と覆い部材30との間に板バネ31を介在させている。
上記のようにした覆い部材30は、板状のフタ部30aとこのフタ部30aに連続する裾部30bとからなる。そして、フタ部30aは、ケースCの開口部12を覆うとともに、裾部30bがケースCの外周まで伸びて、その周囲を覆うようにしている。
【0033】
上記のように覆い部材30がケースCの開口部12に覆いかぶさるようにしてそれをふさいでいるので、水滴やゴミなどがケースC内に進入するのを完全に防止できる。
また、この実施形態では、ノズルチューブTの軸部15であって、止め輪26,28間に小孔32を形成し、ノズルチューブTを通る圧縮エアをこの小孔32から噴出させるようにしている。
上記のように小孔32から圧縮エアを噴出させるようにしたので、覆い部材30で覆われた内部空間の圧力が高くなる。したがって、覆い部材30内に水滴やゴミ等がほとんど進入しない。
【0034】
上記実施形態の除水又は除塵用旋回ノズルによれば、一対のボールベアリングB1,B2でノズルチューブTの軸部15が支持されるので、軸部15の歳差運動が確実に抑制される。
このように軸部15が歳差運動をしなくなるので、その歳差運動が原因で発生していた従来の問題をことごとく解消できる。
【0035】
例えば、もし、軸部15が歳差運動をすると、旋回部16特に噴出口17の旋回半径が設定値よりも大きくなってしまう。旋回半径が設定値よりも大きくなれば、除水又は除塵対象物の目的の箇所に圧縮エアが当たらなくなり、その結果として、水滴やゴミ等が取り残されてしまう。
しかし、前記したように食品容器で水滴が残されたまま段ボール箱等に箱詰めされると、その後に大きな問題が発生するが、この実施形態ではそのようなことが一切発生しない。
【0036】
また、軸部15の歳差運動は、ベアリングB1,B2や軸部15を偏摩耗させるので、その結果、軸部15とベアリングB1,B2との間に隙間ができるとともに、そこに水道水のカルキやゴミが進入して、当該除水又は除塵用旋回ノズルそのものの寿命を短くしてしまう。
しかし、この実施形態によれば、除水又は除塵用旋回ノズルの寿命を確実に伸ばすことができる。
【0037】
さらに、ケースCの開口部12を覆い部材30で覆っているので、ケースC内に水滴やゴミなどの進入を防止できる。しかも、小孔32から圧縮エアが供給されるので、覆い部材30で覆われた内部は大気圧よりも高くなる。したがって、この圧力差によっても、水滴やゴミなどの進入を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
特に、食品用容器や機械部品等の洗浄後の水滴を除去するのに最適である。
【符号の説明】
【0039】
C…ケース、11…底部、12…開口部、T…ノズルチューブ、15…軸部、16…旋回部、B1,B2…ボールベアリング、30…覆い部材、30a…フタ部、30b…裾部、32…小孔
図1
図2
図3