(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列番号4の配列を含むVH CDR1、配列番号5の配列を含むVH CDR2および配列番号6の配列を含むVH CDR3を含む抗体または抗原結合性断片と比較して、ヒトIL−6に対する増加した親和性および/または増加した効力を有する、請求項1に記載の抗体または抗原結合性断片。
(i)配列番号37を含む重鎖可変領域配列、または(ii)配列番号37に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99%同一である重鎖可変領域配列を含む、請求項1または2に記載の抗体または抗原結合性断片。
(i)配列番号41を含む重鎖配列、または(ii)配列番号41に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99%同一である重鎖配列を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(i)配列番号38を含む軽鎖可変領域配列、または(ii)配列番号38に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99%同一である軽鎖可変領域配列をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(i)配列番号42を含む軽鎖配列、または(ii)配列番号42に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99%同一である軽鎖配列を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(i)20pMのIL−6を用いてHEK−Blue(商標)アッセイで評価したときに、47pM未満のIC50(例えば、40、30、20、10、5、4、3、2もしくは1pM未満のIC50)
および/または
(ii)20pMのIL−6を用いてHEK−Blue(商標)アッセイで評価したときに、4350pM未満のIC90(例えば、4000、2000、1000、100、50、40、30、20、15、10もしくは5pM未満のIC90)
を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
H311、D313、I254またはH436(配列番号41に従う番号付け)に対応する1つまたは複数の位置において、変異(例えば、1、2、3または4つの変異)を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
前記変異が、前記変異を含まない抗体または抗原結合性断片の全身蓄積と比較して、前記抗体または前記抗原結合性断片の全身蓄積を低減させ、前記全身蓄積は、前記抗体または前記抗原結合性断片の硝子体内投与後に評価される、請求項17から19のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
少なくとも60、70、80、90、95もしくは99%の前記抗体のIgG2−AアイソフォームもしくはIgG2−A/Bアイソフォーム、またはそれらの組合せを含む、請求項25に記載の組成物。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、IL−6抗体およびその断片(例えば、抗原結合性断片)または誘導体、ならびにIL−6抗体および断片をコードする核酸に関する。本発明は、かかる抗体、断片または誘導体の使用にも関する。これらの抗体およびその断片または誘導体は、例えば、IL−6関連疾患の処置において使用され得る。実施形態では、この抗体、その断片または誘導体は、IL−6、例えばヒトIL−6に結合し得る(例えば、特異的に結合し得る)。実施形態では、この抗体、その断片または誘導体は、IL−6の部位II(例えば、ヒトIL−6の部位II)に結合し得る(例えば、特異的に結合し得る)。
【0005】
一態様では、
(i)GYX
1LX
2NYLIE(配列番号45)の配列を含むVH CDR1、
(ii)VX
3TPGX
4GTIN(配列番号46)の配列を含むVH CDR2、および
(ii)VH CDR3
を含む重鎖可変領域を含む単離された抗体または抗原結合性断片が本明細書で提供され、ここで以下:X
1はAではない、X
2はSではない、X
3はIではない、およびX
4はSではない、のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、3つまたは全て)が当てはまる。実施形態では、X
1はAではなく、X
2はSではなく、X
3はIではなく、X
4はSではない。
【0006】
実施形態では、X
1は、VまたはVの保存的置換である。実施形態では、X
2は、PまたはPの保存的置換である。実施形態では、X
3は、TまたはTの保存的置換である。実施形態では、X
4は、GまたはGの保存的置換である。実施形態では、以下:X
1は、VまたはVの保存的置換である、X
2は、PまたはPの保存的置換である、X
3は、TまたはTの保存的置換である、およびX
4は、GまたはGの保存的置換である、のうちの1、2、3つまたは全てが当てはまる。実施形態では、X
1は、VまたはVの保存的置換であり、X
2は、PまたはPの保存的置換であり、X
3は、TまたはTの保存的置換であり、X
4は、GまたはGの保存的置換である。
【0007】
実施形態では、X
1は、V、I、LおよびMから選択される。実施形態では、X
1は、V、IおよびLから選択される。実施形態では、X
2は、P、GおよびAから選択される。実施形態では、X
2は、PおよびGから選択される。実施形態では、X
3は、TおよびSから選択される。実施形態では、X
4は、GおよびPから選択される。
【0008】
実施形態では、以下:X
1はVである、X
2はPである、X
3はTである、およびX
4はGである、のうちの1または複数(例えば、1、2、3つまたは全て)が当てはまる。実施形態では、X
1はVであり、X
2はPであり、X
3はTであり、X
4はGである。
【0009】
実施形態では、このVH CDR3は、配列番号33の配列を含む。
【0010】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、ヒトIL−6に対する増加した親和性および/または増加した効力を有する。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、以下:X
1はAである、X
2はSである、X
3はIである、およびX
4はSである、のうちの1または複数(例えば、1、2、3つまたは全て)が当てはまる配列を含む抗体または抗原結合性断片(例えば、他の点では同一の抗体または抗原結合性断片)と比較して、ヒトIL−6に対する増加した親和性および/または増加した効力を有する。
【0011】
一部の実施形態では、この単離された抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号31の配列を含むVH CDR1、配列番号32の配列を含むVH CDR2、および任意選択で、配列番号33の配列を含むVH CDR3を含む。
【0012】
実施形態では、この重鎖可変領域は、配列番号17と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%同一である配列を含む。実施形態では、この重鎖可変領域は、配列番号17と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99%同一である配列からなるか、または配列番号17とは5、4、3、2もしくは1個以下のアミノ酸が異なる。実施形態では、この重鎖可変領域は、配列番号17とは5、4、3、2または1個以下のアミノ酸が異なる。実施形態では、この重鎖可変領域は、配列番号17とは1〜5個のアミノ酸が異なる。
【0013】
実施形態では、この重鎖可変領域は、配列番号37に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%同一である配列を含む。実施形態では、この重鎖可変領域は、配列番号37に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%同一である配列からなる。実施形態では、この重鎖可変領域は、配列番号37とは5、4、3、2または1個以下のアミノ酸が異なる。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号37を含む重鎖可変領域配列を含む。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号37からなる重鎖可変領域配列を含む。
【0014】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号39に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%同一である配列を含む。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号39とは5、4、3、2または1個以下のアミノ酸が異なる配列を含む。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号39を含む。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、Fabである。
【0015】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号54に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%同一である配列を含む。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号54とは5、4、3、2または1個以下のアミノ酸が異なる配列を含む。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号54を含む。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、Fabである。
【0016】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、scFvである。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、scFv配列
【化1】
を含むまたはそれからなる。
【0017】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号52または配列番号53に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%同一である配列を含む。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号52または配列番号53を含む。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、scFvである。
【0018】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号41に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%同一である重鎖配列を含む。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号41とは5、4、3、2または1個以下のアミノ酸が異なる重鎖配列を含む。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号41を含む重鎖配列を含む。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号41からなる重鎖配列を含む。
【0019】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、EBI−029またはその断片と比較して、ヒトIL−6に対する増加した親和性および/または増加した効力を有する。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号4の配列を含むVH CDR1、配列番号5の配列を含むVH CDR2、および任意選択で、配列番号6の配列を含むVH CDR3を含む抗体または抗原結合性断片と比較して、ヒトIL−6に対する増加した親和性および/または増加した効力を有する。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号17を含むまたは配列番号17からなる重鎖可変領域配列を含む抗体または抗原結合性断片と比較して、ヒトIL−6に対する増加した親和性および/または増加した効力を有する。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号24を含む抗体または抗原結合性断片と比較して、ヒトIL−6に対する増加した親和性および/または増加した効力を有する。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号11を含むまたは配列番号11からなる重鎖配列を含む抗体または抗原結合性断片と比較して、ヒトIL−6に対する増加した親和性および/または増加した効力を有する。
【0020】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、表4に提供されるEBI−030またはEBI−031の1つまたは複数の配列を含む。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、
図15に示されるように、EBI−030またはEBI−031の1つまたは複数のドメイン(例えば、重鎖配列のFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4、CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ならびに/または軽鎖配列のFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4およびCKのうち、1つまたは複数)を含む。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、重鎖および軽鎖を含む。実施形態では、この重鎖および軽鎖は、1つまたは複数のジスルフィド結合によって連結される。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、Fabである。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、scFvである。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFvまたはFv断片である。
【0021】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、EBI−029の1つもしくは複数の対応する配列、またはその全体が参照によって本明細書に組み込まれるWO2014/074905に記載される抗体の配列、を含む抗体または抗原結合性断片と比較して、ヒトIL−6に対する増加した親和性および/または増加した効力を有する。実施形態では、抗体または抗原結合性断片は、トシリズマブと比較して、ヒトIL−6に対する増加した親和性および/または増加した効力を有する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0022】
増加した親和性および/または増加した効力は、本明細書に記載される方法および/または当該分野で公知の方法を使用して評価され得る。
【0023】
実施形態では、この親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して評価される。
【0024】
実施形態では、この親和性は、少なくとも1.5、1.6、1.7、1.8.1.9、2、3または4倍増加する。
【0025】
実施形態では、この効力は増加する。実施形態では、この効力は、IC50における減少および/またはIC90における減少によって示されるように、増加する。実施形態では、このIC50は、多くとも1/5、1/10、1/20、1/30、1/40または1/50に減少する。実施形態では、このIC50は、多くとも約1/50に減少する。実施形態では、このIC90は、多くとも1/10、1/20、1/30、1/40、1/50、1/60、1/70、1/80、1/90、1/100、1/200、1/300、1/400または1/500に減少する。実施形態では、このIC90は、多くとも約1/100に減少する。
【0026】
実施形態では、この効力は、例えば、HEK−Blue(商標)アッセイまたはT1165増殖アッセイを使用することによって評価される。
【0027】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、例えば、20pMの遊離IL−6を用いて本明細書に記載されるHEK−Blue(商標)アッセイを使用して取得されたIC50またはIC90値に基づいて例えば評価されるように、シス−IL−6シグナル伝達を阻害する。
【0028】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、47pM未満のIC50および/または4350pM未満のIC90を有する。実施形態では、このIC50は、47pM未満、例えば、40、30、20、10、5、4、3、2または1pM未満である。実施形態では、このIC90は、4350pM未満、例えば、4000、2000、1000、100、50、40、30、20、15、10または5pM未満である。実施形態では、このIC50および/またはIC90は、20pMのIL−6を用いてHEK−Blue(商標)アッセイで評価される。
【0029】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、20pMのIL−6を用いてHEK−Blue(商標)アッセイを使用して取得されたIC50値に基づいて例えば評価されるように、トシリズマブと比較して、より高い効力で遊離IL−6を遮断する。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、トシリズマブと比較して、900倍を超える高い効力でIL−6を阻害する。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、EBI−031またはその抗原結合性断片である。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、IL−6の阻害について、15pM未満のIC50、例えば、14.2pMのIC50を有する。
【0030】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、例えば、200pMのハイパーIL−6を用いて本明細書に記載されるHEK−Blue(商標)アッセイを使用して例えば評価されるように、トランス−IL−6シグナル伝達を遮断する。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、ハイパーIL−6によるシグナル伝達を阻害する。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、トシリズマブよりも高い効力で、例えば、トシリズマブと比較して900倍を超える高い効力で、ハイパーIL−6によるシグナル伝達を阻害する。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、1μM未満のIC50で、ハイパーIL−6によるシグナル伝達を阻害する。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、1nM未満のIC50で、ハイパーIL−6によるシグナル伝達を阻害する。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、100pM未満または50pM未満のIC50で、例えば、約14〜15pMのIC50で、ハイパーIL−6によるシグナル伝達を阻害する。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、EBI−031またはその抗原結合性断片である。
【0031】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、シス−IL−6シグナル伝達およびトランス−IL−6シグナル伝達を阻害する。
【0032】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、例えば硝子体内投与後、少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間または6ヶ月間にわたって、眼においてIL−6シグナル伝達を遮断するのに有効である。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、例えば硝子体内投与後、少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間または6ヶ月間にわたって、眼におけるIL−6シグナル伝達の95%を遮断する。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、約150日間にわたって、眼におけるIL−6シグナル伝達の95%を遮断する。
【0033】
別の態様では、配列番号37に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%同一である重鎖可変領域配列を含む単離された抗体または抗原結合性断片が本明細書で提供され、前記重鎖配列は、V28、P30、T51およびG55(アミノ酸の番号付けは、配列番号41に従う)から選択される1個または複数(例えば、1、2、3または4個)のアミノ酸を含む。
【0034】
さらなる一態様では、配列番号39に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%同一である配列を含む単離された抗体または抗原結合性断片が本明細書で提供され、前記配列は、V28、P30、T51およびG55(アミノ酸の番号付けは、配列番号41に従う)から選択される1個または複数(例えば、1、2、3または4個)のアミノ酸を含む。
【0035】
さらなる一態様では、配列番号54に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%同一である配列を含む単離された抗体または抗原結合性断片が本明細書で提供され、前記配列は、V28、P30、T51およびG55(アミノ酸の番号付けは、配列番号41に従う)から選択される1個または複数(例えば、1、2、3または4個)のアミノ酸を含む。
【0036】
配列番号41に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%同一である重鎖配列を含む単離された抗体または抗原結合性断片もまた本明細書で提供され、前記重鎖配列は、V28、P30、T51およびG55(アミノ酸の番号付けは、配列番号41に従う)から選択される1個または複数(例えば、1、2、3または4個)のアミノ酸を含む。
【0037】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、対照抗体と比較して、例えば、EBI−029またはその断片と比較して、ヒトIL−6に対する増加した親和性を有する。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、V28、P30、T51およびG55から選択される前記1個または複数のアミノ酸を含まず、その代わりにA28、S30、I51およびS55から選択される1個または複数(例えば、1、2、3または4個)のアミノ酸を含むことを除いて他の点では同一である抗体または抗原結合性断片と比較して、ヒトIL−6に対する増加した親和性を有する。実施形態では、この親和性は、少なくとも1.5、1.6、1.7、1.8.1.9、2、3または4倍増加する。実施形態では、この親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して評価される。
【0038】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、対照抗体と比較して、例えば、EBI−029またはその断片と比較して、増加した効力を有する。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、V28、P30、T51およびG55から選択される前記1個または複数のアミノ酸を含まず、その代わりにA28、S30、I51およびS55から選択される1個または複数(例えば、1、2、3または4個)のアミノ酸を含むことを除いて他の点では同一である抗体または抗原結合性断片と比較して、増加した効力を有する。
【0039】
実施形態では、この効力は、IC50における減少および/またはIC90における減少によって示されるように、増加する。実施形態では、このIC50は、多くとも1/5、1/10、1/20、1/30、1/40または1/50に減少する。実施形態では、このIC50は、多くとも約1/50に減少する。実施形態では、このIC90は、多くとも1/10、1/20、1/30、1/40、1/50、1/60、1/70、1/80、1/90、1/100、1/200、1/300、1/400または1/500に減少する。実施形態では、このIC90は、多くとも約1/100に減少する。
【0040】
実施形態では、この効力は、HEK−Blue(商標)アッセイまたはT1165増殖アッセイを使用して評価される。
【0041】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、47pM未満のIC50および/または4350pM未満のIC90を有する。実施形態では、このIC50は、47pM未満、例えば、40、30、20、10、5、4、3、2または1pM未満である。実施形態では、このIC90は、4350pM未満、例えば、4000、2000、1000、100、50、40、30、20、15、10または5pM未満である。実施形態では、このIC50および/またはIC90は、20pMのIL−6を用いてHEK−Blue(商標)アッセイで評価される。
【0042】
一部の実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、V28、P30、T51およびG55を含み、この抗体または抗原結合性断片は、A28、S30、I51およびS55を含むことを除いて他の点では同一である抗体または抗原結合性断片と比較して、ヒトIL−6に対する改善された親和性および/または改善された効力を示す。
【0043】
実施形態では、本明細書に記載される抗体または抗原結合性断片は、VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変領域またはその抗原結合性断片をさらに含む。
【0044】
実施形態では、このVL CDR1は、配列番号34の配列を含み、VL CDR2は、配列番号35の配列を含み、VL CDR3は、配列番号36の配列を含む。
【0045】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号38に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%同一である軽鎖可変領域配列をさらに含む。
【0046】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号38を含むか、または配列番号38とは5、4、3、2もしくは1個以下のアミノ酸が異なる、軽鎖可変領域配列をさらに含む。
【0047】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号38を含む軽鎖可変領域配列をさらに含む。実施形態では、この軽鎖可変領域配列は、配列番号38からなる。
【0048】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号42に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%同一である軽鎖配列をさらに含む。
【0049】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号42とは5、4、3、2または1個以下のアミノ酸が異なる軽鎖配列をさらに含む。
【0050】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号42を含む軽鎖配列をさらに含む。
【0051】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号42を含む軽鎖配列、または配列番号42とは5、4、3、2もしくは1個以下のアミノ酸が異なる配列をさらに含む。実施形態では、この軽鎖配列は、配列番号42からなる。
【0052】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、(i)配列番号31の配列を含むVH CDR1、配列番号32の配列を含むVH CDR2および配列番号33の配列を含むVH CDR3、ならびに(ii)配列番号34の配列を含むVL CDR1、配列番号35の配列を含むVL CDR1および配列番号36の配列を含むVL CDR3、を含む。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、6つ全てのCDR中に、変異、例えば、合計で多くても1、2または3つの変異を有することを除いて、上述のCDRを含む。実施形態では、この変異(複数可)は、抗体または抗原結合性断片の親和性および/または効力を減少させない。
【0053】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、IgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4抗体またはそれらの断片である。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、IgG1もしくはIgG2抗体またはそれらの断片である。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、IgG1 FabまたはIgG2 Fabである。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、IgG2抗体または抗原結合性断片である。
【0054】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、ADCC活性が低減または排除されるように工学的に操作される。
【0055】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、ヒト化もしくはヒトモノクローナル抗体またはそれらの抗原結合性断片である。
【0056】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号37を含むまたは配列番号37からなる重鎖可変領域および配列番号38を含むまたは配列番号38からなる軽鎖可変領域を含む。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、変異、例えば、合計で多くても1、2または3つの変異を有することを除いて、上述の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む。実施形態では、この変異(複数可)は、抗体または抗原結合性断片の親和性および/または効力を減少させない。
【0057】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号41を含む重鎖配列および任意選択で、配列番号42を含む軽鎖配列を含む。
【0058】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号41からなる重鎖配列および任意選択で、配列番号42からなる軽鎖配列を含む。
【0059】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号47を含む重鎖配列および任意選択で、配列番号42を含む軽鎖配列を含む。
【0060】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、変異(例えば、配列番号41および/または配列番号42と比較して、1、2、3、4または5つの合計変異)を含むことを除いて、配列番号41と同一である重鎖配列および配列番号42と同一である軽鎖配列を含む。実施形態では、この変異(複数可)は、フレームワーク領域(複数可)中にある。実施形態では、この変異は、前記変異を含まない抗体または抗原結合性断片と比較して、この抗体または抗原結合性断片の親和性および/または効力を減少させない。
【0061】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、変異(例えば、配列番号47および/または配列番号42と比較して、1、2、3、4または5つの合計変異)を含むことを除いて、配列番号47と同一である重鎖配列および配列番号42と同一である軽鎖配列を含む。実施形態では、この変異(複数可)は、フレームワーク領域(複数可)中にある。実施形態では、この変異は、前記変異を含まない抗体または抗原結合性断片と比較して、この抗体または抗原結合性断片の親和性および/または効力を減少させない。
【0062】
一実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、Fabである。
【0063】
一実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、IgG1 Fabである。
【0064】
一実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号39を含む重鎖配列および配列番号42を含む軽鎖配列を含む単離されたFabである。一実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号39からなる重鎖配列および配列番号42からなる軽鎖配列を含む単離されたFabである。
【0065】
一実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、IgG2 Fabである。
【0066】
一実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号54を含む重鎖配列および配列番号42を含む軽鎖配列を含む単離されたFabである。一実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、配列番号54からなる重鎖配列および配列番号42からなる軽鎖配列を含む単離されたFabである。
【0067】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、変異(例えば、配列番号39および/または配列番号42と比較して、1、2、3、4または5つの合計変異)を含むことを除いて、配列番号39と同一である重鎖配列および配列番号42と同一である軽鎖配列を含む。実施形態では、この変異(複数可)は、フレームワーク領域(複数可)中にある。実施形態では、この変異は、前記変異を含まない抗体または抗原結合性断片と比較して、この抗体または抗原結合性断片の親和性および/または効力を減少させない。
【0068】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、変異(例えば、配列番号54および/または配列番号42と比較して、1、2、3、4または5つの合計変異)を含むことを除いて、配列番号54と同一である重鎖配列および配列番号42と同一である軽鎖配列を含む。実施形態では、この変異(複数可)は、フレームワーク領域(複数可)中にある。実施形態では、この変異は、前記変異を含まない抗体または抗原結合性断片と比較して、この抗体または抗原結合性断片の親和性および/または効力を減少させない。
【0069】
一部の実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、ヒトIL−6のR24、K27、Y31、D34、S118またはV121のうち少なくとも1つに結合し得る。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、ヒトIL−6のR24、K27、Y31、D34、S118およびV121に結合し得る。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、ヒトIL−6のR24、K27、Y31、D34、S118およびV121のうち少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つに結合し得る。
【0070】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、ヒトIL−6の部位IIに結合し得る(例えば、特異的に結合し得る)。
【0071】
実施形態では、この抗体またはその抗原結合性断片は、70℃またはそれ超のT
mでIL−6に結合し得る。
【0072】
実施形態では、この抗体またはその抗原結合性断片は、80℃またはそれ超のT
mでIL−6に結合し得る。
【0073】
実施形態では、この抗体またはその断片(例えば、その抗原結合性断片)は、ヒトIL−6のR24、K27、Y31、D34、S118およびV121のうち少なくとも1つに結合する。
【0074】
実施形態では、この抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトIL−6のR24、K27、Y31、D34、S118およびV121のうち少なくとも2つに結合する。実施形態では、この抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトIL−6のR24、K27、Y31、D34、S118およびV121のうち少なくとも3つに結合する。実施形態では、この抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトIL−6のR24、K27、Y31、D34、S118およびV121のうち少なくとも4つに結合する。実施形態では、この抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトIL−6のR24、K27、Y31、D34、S118およびV121のうち少なくとも5つに結合する。実施形態では、この抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトIL−6のR24、K27、Y31、D34、S118およびV121に結合する。
【0075】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、ヒト化モノクローナル抗体である。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、ヒトモノクローナル抗体である。
【0076】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、PBS、pH7.4中100〜150mg/mLの濃度、例えば、約142mg/mLの濃度で、10%未満の凝集を示す。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、別の治療剤と比較して、例えば、トシリズマブ、ベバシズマブ、ラニビズマブおよび/またはEylea(登録商標)と比較して、改善された薬物動態特性を有する。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、例えば硝子体内注射によって眼に例えば硝子体内投与された場合、眼における改善された保持を有する。実施形態では、眼における改善された保持は、眼における、例えば、硝子体、網膜、眼房水、脈絡膜および/または強膜における増加した半減期によって示される。
【0077】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20日間の、硝子体における半減期を有する。実施形態では、硝子体における半減期は、少なくとも10日間である。実施形態では、硝子体における半減期は、動物において、例えば、ウサギまたはサルにおいて評価される。実施形態では、硝子体における半減期は、ヒトにおいて評価される。
【0078】
実施形態では、本明細書に記載される抗体または抗原結合性断片は、別の治療剤、例えば、トシリズマブ、ベバシズマブ、ラニビズマブおよび/またはアフリベルセプト(Eylea(登録商標))のものと比較して、低減された全身半減期(例えば、より低いT
1/2β)および/または改善された全身クリアランス、例えば、低減された全身半減期もしくはより速い全身クリアランスを有する。実施形態では、この全身半減期(例えば、T
1/2β)は、トシリズマブおよび/またはアフリベルセプト(Eylea(登録商標))の全身半減期よりも低い。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、H311、D313、I254またはH436(配列番号41に従う番号付け)に対応する1または複数の位置において、変異(例えば、1、2、3または4つの変異)を含むFcドメインを含む。実施形態では、この変異は、H311A、H311E、H311N、D313T、I254A、I254RおよびH436Aのうちの1つまたは複数から選択される。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、H311A(配列番号41に従う番号付け)に対応する変異を含むFcドメインを含む。実施形態では、このFcドメインは、IgG1 Fcドメインである。実施形態では、このFcドメインは、IgG2 Fcドメインである。
【0079】
実施形態では、このFcドメインは、配列番号50の配列を有するヒトIgG1 Fcドメインであり、任意選択で、下線を付した位置(H90、D92、I33およびH215)のうちの1つまたは複数において変異を含む:
【化2】
【0080】
実施形態では、このIgG1 Fcドメインは、H90A、H90E、H90N、D92T、I33A、I33RおよびH215A(配列番号50に従う番号付け)のうちの1または複数に対応する変異を含む。
【0081】
実施形態では、このFcドメインは、配列番号51の配列を有するヒトIgG2 Fcドメインであり、任意選択で、下線を付した位置:(H86、D88、I29およびH211)のうちの1または複数において変異を含む:
【化3】
【0082】
実施形態では、このIgG2 Fcドメインは、H86A、H86E、H86N、D88T、I29A、I29RおよびH211A(配列番号51に従う番号付け)のうちの1または複数に対応する変異を含む。
【0083】
実施形態では、このFc変異は、抗体または抗原結合性断片の全身蓄積を低減させる(例えば、クリアランスを増加させる、または半減期、例えばT
1/2βを減少させる)。実施形態では、この全身蓄積は、別の治療剤(例えば、トシリズマブ、ベバシズマブ、ラニビズマブおよび/またはアフリベルセプト)の全身蓄積と比較して低減される。実施形態では、この全身蓄積は、トシリズマブおよび/またはアフリベルセプトの全身蓄積と比較して低減される。実施形態では、この全身蓄積は、この変異を含まない対応する抗体または抗原結合性断片の全身蓄積と比較して低減される。実施形態では、この全身蓄積は、抗体または抗原結合性断片の硝子体内投与後に評価される。
【0084】
別の一態様では、被験体においてIL−6を阻害することの全身作用を低減させる方法が本明細書で提供され、この方法は、本明細書に記載される変異したFcドメインを含む抗体またはその断片を被験体に投与するステップを含む。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、IL−6の活性を阻害し得、野生型Fcドメインを有する対応する抗体またはその断片と比較して、低減されたFc活性(例えば、FcRnに対する低減された結合)を有する。一部の場合には、被験体においてIL−6を阻害することの全身作用を低減させる方法は、本明細書に記載される変異したFcドメインを含むIL−6アンタゴニストを被験体に投与することを含む。
【0085】
さらなる一態様では、本明細書に記載される抗体または抗原結合性断片をコードする配列を含む核酸が、本明細書で提供される。実施形態では、この核酸は、本明細書に開示されるアミノ酸配列をコードする。実施形態では、この核酸は、配列番号40、配列番号43または配列番号48を含む。実施形態では、この核酸は、表4に開示される配列をコードする。
【0086】
この核酸を含むベクターもまた、本明細書で提供される。この核酸またはベクターを含む細胞もまた、本明細書で提供される。
【0087】
実施形態では、本明細書に記載されるIL−6抗体または抗原結合性断片は、IL−6関連疾患を有する被験体(例えば、ヒト)の処置における使用のためのものである。実施形態では、この疾患は、眼性疾患、例えば、例えば硝子体における上昇したレベルのIL−6を特徴とする眼性疾患である。
【0088】
実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、糖尿病性網膜症、ブドウ膜炎、緑内障、ドライアイ(例えば、ドライアイ疾患またはドライアイ症候群)、アレルギー性結膜炎、眼痛、裂孔原性網膜剥離(RRD)、加齢性黄斑変性(AMD)、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、網膜静脈閉塞症(RVO)、視神経脊髄炎(NMO)、角膜移植、角膜上皮剥離、または眼に対する物理的傷害を有する被験体(例えば、ヒト)の処置における使用のためのものである。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、DMEを有する被験体(例えば、ヒト)の処置における使用のためのものである。
【0089】
実施形態では、本明細書に記載されるIL−6抗体または抗原結合性断片は、IL−6関連疾患の処置のための医薬の調製における使用のためのものである。実施形態では、この疾患は、眼性疾患、例えば、硝子体における上昇したレベルのIL−6を特徴とする眼性疾患である。実施形態では、このIL−6関連疾患は、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、糖尿病性網膜症、ブドウ膜炎、ドライアイ(例えば、ドライアイ疾患またはドライアイ症候群)、加齢性黄斑変性(AMD)、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、裂孔原性網膜剥離(RRD)、網膜静脈閉塞症(RVO)、視神経脊髄炎(NMO)、角膜移植、角膜上皮剥離、または眼に対する物理的傷害である。実施形態では、このIL−6関連疾患は、糖尿病性黄斑浮腫である。実施形態では、この医薬は、被験体の眼の硝子体への送達のため(例えば、硝子体内注射のため)に製剤化される。
【0090】
本明細書に記載される抗体または抗原結合性断片を含む組成物もまた、本明細書で提供される。実施形態では、この組成物は、薬学的に許容される担体、および1種または複数の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0091】
実施形態では、この組成物は、IL−6関連疾患の処置における使用のためのものである。実施形態では、この疾患は、眼性疾患、例えば、硝子体における上昇したレベルのIL−6を特徴とする眼性疾患である。実施形態では、この組成物は、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、糖尿病性網膜症、ブドウ膜炎、ドライアイ(例えば、ドライアイ疾患またはドライアイ症候群)、加齢性黄斑変性(AMD)、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、裂孔原性網膜剥離(RRD)、網膜静脈閉塞症(RVO)、視神経脊髄炎(NMO)、角膜移植、角膜上皮剥離、または眼に対する物理的傷害の処置における使用のためのものである。
【0092】
IL−6関連疾患を処置する方法もまた本明細書で提供され、この方法は、治療有効量の本明細書に記載されるIL−6抗体または断片を被験体に投与することを含む。実施形態では、このIL−6関連疾患は、眼性疾患、例えば、硝子体における上昇したレベルのIL−6を特徴とする眼性疾患である。実施形態では、このIL−6関連疾患は、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、糖尿病性網膜症、ブドウ膜炎、ドライアイ(例えば、ドライアイ疾患またはドライアイ症候群)、加齢性黄斑変性(AMD)、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、裂孔原性網膜剥離(RRD)、網膜静脈閉塞症(RVO)、視神経脊髄炎(NMO)、角膜移植、角膜上皮剥離、または眼に対する物理的傷害である。実施形態では、このIL−6関連疾患は、糖尿病性黄斑浮腫である。
【0093】
実施形態では、この抗体もしくは抗原結合性断片、またはこの抗体もしくは抗原結合性断片を含む組成物は、被験体の眼の硝子体に(例えば、硝子体内注射によって)送達される。実施形態では、この抗体もしくは抗原結合性断片、またはこの抗体もしくは抗原結合性断片を含む組成物は、硝子体内注射のためのものである。
【0094】
実施形態では、このIL−6関連疾患は糖尿病性黄斑浮腫であり、この抗体もしくは断片、またはこの抗体もしくは抗原結合性断片を含む組成物は、被験体の眼の硝子体に送達される。
【0095】
IL−6関連疾患の処置における使用のための(例えば、IL−6関連疾患を有する被験体、例えばヒト被験体の処置における使用のための)、抗体もしくはその断片(例えば、抗原結合性断片)(例えば、本明細書に記載されるIL−6抗体もしくはその断片)、またはかかる抗体もしくはその断片を含む組成物もまた、本明細書で提供される。
【0096】
実施形態では、前記疾患は、例えば硝子体における上昇したレベルのIL−6を特徴とする眼性疾患である。実施形態では、この疾患は、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、糖尿病性網膜症、ブドウ膜炎、ドライアイ(例えば、ドライアイ障害またはドライアイ疾患)、アレルギー性結膜炎、加齢性黄斑変性(AMD)、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、裂孔原性網膜剥離(RRD)、網膜静脈閉塞症(RVO)、視神経脊髄炎(NMO)、角膜移植、角膜上皮剥離、または眼に対する物理的傷害である。実施形態では、前記疾患はDMEである。実施形態では、前記疾患はドライアイ疾患である。実施形態では、前記疾患はドライアイ症候群である。実施形態では、前記疾患はブドウ膜炎である。実施形態では、前記疾患はAMDである。実施形態では、前記疾患はPDRである。実施形態では、前記疾患は、角膜移植、角膜上皮剥離、または眼に対する物理的傷害である。実施形態では、この抗体またはその断片(例えば、抗原結合性断片)は、眼の硝子体への送達に適切である。実施形態では、この抗体またはその断片(例えば、抗原結合性断片)は、眼の硝子体に送達される。
【0097】
IL−6関連疾患を処置する方法もまた本明細書で提供され、この方法は、IL−6抗体またはその断片(例えば、その抗原結合性断片)、例えば、本明細書に記載されるIL−6抗体またはその断片を被験体に投与することを含む。実施形態では、このIL−6抗体またはその断片(例えば、その抗原結合性断片)は、治療有効量で投与される。実施形態では、このIL−6関連疾患は、硝子体における上昇したレベルのIL−6を特徴とする眼性疾患である。実施形態では、このIL−6関連疾患は、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、糖尿病性網膜症、ブドウ膜炎、ドライアイ症候群、ドライアイ疾患、加齢性黄斑変性(AMD)、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、網膜静脈閉塞症(RVO)、視神経脊髄炎(NMO)、角膜移植、角膜上皮剥離、または眼に対する物理的傷害である。
【0098】
実施形態では、この抗体またはその断片(例えば、その抗原結合性断片)は、眼の硝子体への送達に適切である。実施形態では、この抗体またはその断片(例えば、その抗原結合性断片)は、被験体の眼の硝子体に送達される。実施形態では、このIL−6関連疾患は糖尿病性黄斑浮腫であり、この抗体またはその断片は、被験体の眼の硝子体に送達される。
【0099】
本明細書に開示されるIL−6抗体または組成物、および任意選択で、使用のための指示を含むキットもまた、本明細書で提供される。
【0100】
本明細書に開示されるIL−6抗体または組成物を含む容器またはデバイス、例えば、薬物送達デバイスもまた、本明細書で提供される。実施形態では、前記デバイスは、眼への、例えば、硝子体への、抗体または組成物の送達のために構成される。前記容器またはデバイスを含むキットもまた、本明細書で提供される。
【0101】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、免疫グロブリンと同義であり、当該分野で一般に公知と理解すべきである。用語抗体は、抗体を産生する任意の特定の方法によって限定されない。例えば、用語抗体には、とりわけ、組換え抗体、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体が含まれる。本明細書で使用する場合、抗体は、テトラマーであり、他のものが開示されない限り、各々、ポリペプチド鎖の2つの同一の対から構成され、各対は、1つの軽鎖および1つの重鎖を有する。各鎖のアミノ末端は、抗原認識において主な役割を果たす約100〜120またはそれ超のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、抗体エフェクター機能において主な役割を有する定常領域を含む。ヒト軽鎖のクラスは、カッパ軽鎖およびラムダ軽鎖と呼ばれる。重鎖のクラスは、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファまたはイプシロンであり、抗体のアイソタイプを規定する。抗体アイソタイプは、それぞれ、IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEである。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域は、約12またはそれ超のアミノ酸の「J」領域によって繋がれ、重鎖は、約3個またはそれ超のアミノ酸の「D」領域もまた含む。
【0102】
各重鎖/軽鎖対の可変領域(VHおよびVL)は、それぞれ、抗原結合部位を形成する。したがって、インタクトなIgG抗体は、例えば、2つの結合部位を有する。二機能性または二特異性抗体を除いて、これら2つの結合部位は同じである。
【0103】
抗体重鎖および軽鎖の可変領域は、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域によって繋がれた、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を示す。用語「可変」とは、可変ドメインの特定の部分が、抗体間で配列において広く異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合および特異性に関与するという事実を指す。可変性は、より高度に保存されたフレームワーク領域(FR)によって分離されたCDR中に主に存在する。各ドメインに対するアミノ酸の割り当ては、当該分野で公知の方法を記載する、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1987年および1991年))、またはChothiaおよびLesk、J Mol Biol 196巻:901〜917頁(1987年);Chothiaら、Nature 342巻:878〜883頁(1989年)の定義に従って行われる。
【0104】
「野生型」とは、ある対立遺伝子もしくは多型と、または抗原結合性分子のアミノ酸を変化させるためにある形態の操作、例えば、変異誘発、組換え方法の使用などによって取得されたバリアントもしくは誘導体と比較して、集団において最も広く見られる対立遺伝子もしくは種、または操作されていない動物から取得された抗体を指し得る。
【0105】
用語「抗体断片」とは、インタクトなまたは全長の鎖または抗体の一部分、一般的には、標的結合領域または可変領域を指す。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片が含まれるがこれらに限定されない。「機能的断片」または「抗IL−6部位II抗体のアナログ」は、IL−6が受容体に結合する能力を防止し得るもしくは実質的に低減させ得る、IL−6/IL−6R複合体がgp130に結合する能力を低減させ得る、またはリガンドがgp130に結合する能力もしくはシグナル伝達を開始させる能力を低減させ得る、断片である。本明細書で使用する場合、「抗原結合性断片」または「機能的断片」は、一般に、「抗体断片」と同義であり、IL−6が受容体に結合する能力を防止し得るまたは実質的に低減させ得る、IL−6/IL−6R複合体がgp130に結合する能力またはシグナル伝達を開始させる能力を低減させ得る、断片、例えば、Fv、Fab、F(ab’)2などを指し得る。
【0106】
抗体の「誘導体」は、本明細書に開示される抗体の少なくとも1つのCDRを含むポリペプチドである。典型的には、この誘導体は、IL−6の部位IIに結合し得る。
【0107】
「競合する」とは、第1の抗体とそのエピトープとの結合が、第2の抗体の非存在下での第1の抗体の結合と比較して、第2の抗体の存在下で検出可能に減少するように、第1の抗体またはその断片が第2の抗体またはその断片と、結合について競合し得ることを意味する。一部の場合には、この用語は、第1の抗体の存在下で検出可能に減少する、そのエピトープへの第2の抗体の結合もまた指し得る。かかる競合の機構は、非限定的な例では、立体障害、コンフォメーション変化、共通のエピトープへの結合を介してであり得る。
【0108】
用語「パーセント配列同一性」とは、核酸配列に関して、最大の対応のために整列された場合に同じである、2つの配列中の残基を意味する。配列同一性比較の長さは、少なくとも約9ヌクレオチド、例えば、少なくとも約18ヌクレオチド、少なくとも約24ヌクレオチド、少なくとも約28ヌクレオチド、少なくとも約32ヌクレオチド、少なくとも約36ヌクレオチド、または少なくとも約48もしくはそれ超のヌクレオチドに及び得る。当該分野で公知のアルゴリズムが、ヌクレオチド配列同一性を測定するために使用され得る。例えば、ポリヌクレオチド配列は、FASTA、GapまたはBestfit(Wisconsin Package Version 10.0、Genetics Computer Group(GCG)、Madison、WI)を使用して比較され得る。FASTAは、例えば、プログラムFASTA2およびFASTA3を含み、クエリー配列と検索配列との間での最良の重複の領域のアラインメントおよびパーセント配列同一性を提供する(Pearson、Methods Enzymol 183巻:63〜98頁(1990年);Pearson、Methods Mol Biol 132巻:185〜219頁(2000年);Pearson、Methods Enzymol 266巻:227〜258頁(1996年);Pearson、J Mol Biol 276巻:71〜84頁(1998年);参照によって本明細書に組み込まれる)。特定のプログラムまたはアルゴリズムについてのデフォルトパラメーターが、典型的には使用される。例えば、核酸配列間のパーセント配列同一性は、そのデフォルトパラメーター(6のワードサイズ、およびスコアリングマトリックスのためのNOPAMファクター)と共にFASTAを使用して、または参照によって本明細書に組み込まれるGCG Version 6.1中に提供されるようなそのデフォルトパラメーターと共にGapを使用して、決定され得る。
【0109】
用語「パーセント配列同一性」とは、アミノ酸配列に関して、最大の対応のために整列された場合に同じである、2つの配列中の残基を意味する。配列同一性比較の長さは、少なくとも約5アミノ酸残基、例えば、少なくとも約20アミノ酸残基、少なくとも約30アミノ酸残基、少なくとも約50アミノ酸残基、少なくとも約100アミノ酸残基、少なくとも約150アミノ酸残基、または少なくとも約200もしくはそれ超のアミノ酸残基に及び得る。ポリペプチドについての配列同一性は、典型的には、配列分析ソフトウェアを使用して測定される。パーセント配列同一性の決定のためのアルゴリズムは、当該分野で公知である。例えば、アミノ酸配列は、FASTA、GapまたはBestfit(Wisconsin Package Version 10.0、Genetics Computer Group(GCG)、Madison、WI)を使用して比較され得る。タンパク質分析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む種々の置換、欠失および他の改変に割り当てられた類似性の尺度を使用して、配列を一致させる。例えば、GCGは、「Gap」および「Bestfit」などのプログラムを含み、これらは、異なる種の生物由来の相同ポリペプチドなどの密接に関連するポリペプチド間、または野生型タンパク質とそのアナログとの間の配列相同性または配列同一性を決定するために、これらのプログラムによって特定されたデフォルトパラメーターと共に使用され得る。例えば、GCG Version 6.1(University of Wisconsin、Madison、WI)を参照のこと。ポリペプチド配列はまた、デフォルトまたは推奨パラメーターを使用してFASTAを使用して比較され得る、GCG Version 6.1を参照のこと。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、クエリー配列と検索配列との間での最良の重複の領域のアラインメントおよびパーセント配列同一性を提供する(Pearson、Methods Enzymol 183巻:63〜98頁(1990年);Pearson、Methods Mol Biol 132巻:185〜219頁(2000年))。異なる生物由来の多数の配列を含有するデータベースに対して配列を比較する場合に使用され得る別のアルゴリズムは、それらのプログラムと共に供給されるデフォルトパラメーターを使用するコンピュータープログラムBLAST、例えば、blastpまたはtblastnである。例えば、Altschulら、J Mol Biol 215巻:403〜410頁(1990年);Altschulら、Nucleic Acids Res 25巻:3389〜402頁(1997年)を参照のこと。
【0110】
タンパク質またはポリペプチドは、試料の少なくとも約60〜75%が単一の種のポリペプチドを示す場合、「実質的に純粋」、「実質的に均一」または「実質的に精製された」である。このポリペプチドまたはタンパク質は、モノマー性またはマルチマー性であり得る。実質的に純粋なポリペプチドまたはタンパク質は、約50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%純粋を構成し得る;例えば、実質的に純粋なポリペプチドまたはタンパク質は、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%純粋である。タンパク質の純度または均一性は、任意の適切な手段、例えば、タンパク質試料のポリアクリルアミドゲル電気泳動と、その後のタンパク質もしくはポリペプチドに関連する1つもしくは複数のバンドの可視化(例えば、ゲルを染色する際)、サイズ排除HPLC、カチオン交換HPLC、SDS中での還元キャピラリー電気泳動、ペプチドマッピング、またはグリカンマッピングによって、評価され得る。より高い分解能は、例えば、当該分野で公知の方法、または精製の他の手段を使用して達成され得る。
【0111】
用語「実質的類似性」とは、核酸またはその断片を指す場合、適切なヌクレオチド挿入または欠失を伴って別の核酸(またはその相補鎖)と最適に整列された場合に、配列同一性の任意の公知のアルゴリズム、例えば、FASTA、BLASTまたはGapによって測定したときに、少なくとも約85%、少なくとも約90%、および少なくとも約95%、96%、97%、98%または99%のヌクレオチド塩基においてヌクレオチド配列同一性が存在すること、例えば、85%、90%、95%、96%、98%または99%の配列同一性が存在することを意味する。
【0112】
ポリペプチドに適用する場合、用語「実質的同一性」または「実質的類似性」とは、それらのプログラムと共に供給されるデフォルトギャップウェイトを使用するプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適に整列された場合に、2つのアミノ酸配列が、少なくとも約70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性;例えば、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有することを意味する。ある特定の実施形態では、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なっている。
【0113】
「治療有効量」とは、処置されている疾患の少なくとも1つの徴候もしくは症状を好転させる(ameliorate)、またはIL−6関連疾患を処置するために有用な別の治療(例えば、別の治療剤)の予防効果(複数可)およびもしくは治療効果(複数可)を増強もしくは改善する、投与されている治療剤の量を指す。治療有効量は、限定的な量の時間にわたって、または慢性処置として、複数の用量で投与され得ることが理解される。
【0114】
「処置する」、「処置すること」および「処置」とは、疾患の1つまたは複数の徴候または症状を好転させる方法を指す。
【0115】
本明細書で使用する場合、用語「疾患」は、疾患および障害を含む。
【0116】
本明細書で言及される各特許文献および科学論文、ならびにそれが引用する特許文献および科学論文の全開示は、全ての目的のために、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
【0117】
本発明のさらなる特色および利点は、より具体的に以下に記載される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
(i)GYX1LX2NYLIE(配列番号45)の配列を含むVH CDR1、
(ii)VX3TPGX4GTIN(配列番号46)の配列を含むVH CDR2、および
(ii)VH CDR3
を含む重鎖可変領域を含む抗体または抗原結合性断片であって、以下:X1はAではない、X2はSではない、X3はIではない、およびX4はSではない、のうちの1つまたは複数が当てはまる、抗体または抗原結合性断片。
(項目2)
X1が、VまたはVの保存的置換であり、X2が、PまたはPの保存的置換であり、X3が、TまたはTの保存的置換であり、X4が、GまたはGの保存的置換である、項目1に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目3)
X1がAであり、X2がSであり、X3がIであり、X4がSである重鎖可変領域配列を含む、他の点では同一の抗体または抗原結合性断片と比較して、ヒトIL−6に対する増加した親和性および/または増加した効力を有する、項目1または2に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目4)
(i)配列番号31の配列を含むVH CDR1、配列番号32の配列を含むVH CDR2および配列番号33の配列を含むVH CDR3を含む、単離された抗体またはその抗原結合性断片。
(項目5)
配列番号4の配列を含むVH CDR1、配列番号5の配列を含むVH CDR2および配列番号6の配列を含むVH CDR3を含む抗体または抗原結合性断片と比較して、ヒトIL−6に対する増加した親和性および/または増加した効力を有する、項目4に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目6)
(i)配列番号37を含む重鎖可変領域配列、または(ii)配列番号37に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99%同一である重鎖可変領域配列を含む、前記項目のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目7)
(i)配列番号39もしくは配列番号54、または(ii)配列番号39もしくは配列番号54に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99%同一である配列を含む、前記項目のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目8)
(i)配列番号41を含む重鎖配列、または(ii)配列番号41に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99%同一である重鎖配列を含む、前記項目のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目9)
配列番号37に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%同一である重鎖可変領域配列を含む単離された抗体または抗原結合性断片であって、前記重鎖配列は、V28、P30、T51およびG55(配列番号41に従う番号付け)から選択される1個または複数(例えば、1、2、3または4個)のアミノ酸を含む、単離された抗体または抗原結合性断片。
(項目10)
配列番号39または配列番号54に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%同一である配列を含む単離された抗体または抗原結合性断片であって、前記配列は、V28、P30、T51およびG55(配列番号41に従う番号付け)から選択される1個または複数(例えば、1、2、3または4個)のアミノ酸を含む、単離された抗体または抗原結合性断片。
(項目11)
配列番号41に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%同一である重鎖配列を含む単離された抗体または抗原結合性断片であって、前記重鎖配列は、V28、P30、T51およびG55(配列番号41に従う番号付け)から選択される1個または複数(例えば、1、2、3または4個)のアミノ酸を含む、単離された抗体または抗原結合性断片。
(項目12)
前記1個または複数のアミノ酸を含まず、その代わりにA28、S30、I51およびS55から選択される1個または複数(例えば、1、2、3または4個)のアミノ酸を含むことを除いて他の点では同一である抗体または抗原結合性断片と比較して、ヒトIL−6に対する増加した親和性および/または増加した効力を有する、項目9から11のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目13)
前記抗体または前記抗原結合性断片が、V28、P30、T51およびG55を含み、そしてA28、S30、I51およびS55を含むことを除いて他の点では同一である抗体または抗原結合性断片と比較して、ヒトIL−6に対する改善された親和性および/または改善された効力を示す、項目9から11のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目14)
配列番号34の配列を含むVL CDR1、配列番号35の配列を含むVL CDR2および配列番号36の配列を含むVL CDR3をさらに含む、前記項目のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目15)
(i)配列番号38を含む軽鎖可変領域配列、または(ii)配列番号38に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99%同一である軽鎖可変領域配列をさらに含む、前記項目のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目16)
(i)配列番号42を含む軽鎖配列、または(ii)配列番号42に対して少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98もしくは99%同一である軽鎖配列をさらに含む、前記項目のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目17)
前記親和性が、少なくとも1.5、1.6、1.7、1.8.1.9、2、3または4倍増加する、項目3、5、12または13のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目18)
前記親和性が、表面プラズモン共鳴(SPR)またはフローサイトメトリーを使用して評価される、項目17に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目19)
(i)IC50における減少であって、任意選択で、前記IC50は、多くとも1/5、1/10、1/20、1/30、1/40もしくは1/50に減少する、減少
および/または
(ii)IC90における減少であって、任意選択で、前記IC90は、多くとも1/10、1/20、1/30、1/40、1/50、1/60、1/70、1/80、1/90、1/100、1/200、1/300、1/400もしくは1/500に減少する、減少
によって示されるように、前記効力が増加する、項目3、5、12または13のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目20)
前記効力が、HEK−Blue(商標)アッセイまたはT1165増殖アッセイを使用して評価される、項目3、5または13のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目21)
配列番号37を含む重鎖可変領域および配列番号38を含む軽鎖可変領域を含む、単離された抗体または抗原結合性断片。
(項目22)
配列番号41を含む重鎖配列および配列番号42を含む軽鎖配列を含む、単離された抗体または抗原結合性断片。
(項目23)
配列番号39または配列番号54を含む重鎖配列および配列番号42を含む軽鎖配列を含む、単離されたFab。
(項目24)
(i)20pMのIL−6を用いてHEK−Blue(商標)アッセイで評価したときに、47pM未満のIC50(例えば、40、30、20、10、5、4、3、2もしくは1pM未満のIC50)
および/または
(ii)20pMのIL−6を用いてHEK−Blue(商標)アッセイで評価したときに、4350pM未満のIC90(例えば、4000、2000、1000、100、50、40、30、20、15、10もしくは5pM未満のIC90)
を有する、前記項目のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目25)
例えば、トシリズマブおよび/またはEylea(登録商標)と比較して、硝子体内投与された場合、眼における改善された保持を有する、前記項目のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目26)
H311、D313、I254またはH436(配列番号41に従う番号付け)に対応する1つまたは複数の位置において、変異(例えば、1、2、3または4つの変異)を含む、前記項目のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目27)
前記変異が、H311A、H311E、H311N、D313T、I254A、I254RおよびH436Aのうちの1つまたは複数から選択される、項目26に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目28)
H311A変異(配列番号41に従う番号付け)を含む、前記項目のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目29)
前記変異が、前記変異を含まない抗体または抗原結合性断片の全身蓄積と比較して、前記抗体または前記抗原結合性断片の全身蓄積を低減させる、項目26から28のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目30)
前記変異が、前記変異を含まない抗体または抗原結合性断片の全身蓄積と比較して、前記抗体または前記抗原結合性断片の全身蓄積を低減させ、前記全身蓄積は、前記抗体または前記抗原結合性断片の硝子体内投与後に評価される、項目26から28のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目31)
トシリズマブおよび/またはEylea(登録商標)の全身半減期よりも短い全身半減期を有する、前記項目のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目32)
IgG2−AアイソフォームまたはIgG2−A/BアイソフォームであるがIgG2−Bアイソフォームではない、前記項目のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目33)
配列番号47を含む重鎖配列、および任意選択で、配列番号42を含む軽鎖配列を含む、単離された抗体または抗原結合性断片。
(項目34)
IL−6関連疾患を有する被験体(例えば、ヒト)の処置における使用のための、前記項目のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目35)
前記疾患が、硝子体における上昇したレベルのIL−6を特徴とする眼性疾患である、項目34に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目36)
糖尿病性黄斑浮腫(DME)、糖尿病性網膜症、ブドウ膜炎、ドライアイ(例えば、ドライアイ疾患またはドライアイ症候群)、加齢性黄斑変性(AMD)、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、網膜静脈閉塞症(RVO)、視神経脊髄炎(NMO)、角膜移植、角膜上皮剥離、または眼に対する物理的傷害を有する被験体(例えば、ヒト)の処置における使用のための、項目34または35に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目37)
DMEを有する被験体(例えば、ヒト)の処置における使用のための、項目36に記載の抗体または抗原結合性断片。
(項目38)
項目1から37のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片、および任意選択で、薬学的に許容される担体を含む組成物。
(項目39)
少なくとも60、70、80、90、95もしくは99%の前記抗体のIgG2−AアイソフォームもしくはIgG2−A/Bアイソフォーム、またはそれらの組合せを含む、項目38に記載の組成物。
(項目40)
10%、5%、2%、1%または0.5%未満の前記抗体のIgG2−Bアイソフォームを含む、項目38または39に記載の組成物。
(項目41)
IL−6関連疾患の処置における使用のための、項目38から40のいずれかに記載の組成物。
(項目42)
上昇したレベルのIL−6を特徴とする眼性疾患の処置における使用のための、項目41に記載の組成物。
(項目43)
糖尿病性黄斑浮腫(DME)、糖尿病性網膜症、ドライアイ(例えば、ドライアイ疾患またはドライアイ症候群)、アレルギー性結膜炎、ブドウ膜炎、加齢性黄斑変性(AMD)、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、裂孔原性網膜剥離(RRD)、網膜静脈閉塞症(RVO)、視神経脊髄炎(NMO)、角膜移植、角膜上皮剥離、または眼に対する物理的傷害の処置における使用のための、項目41に記載の組成物。
(項目44)
治療有効量の項目1から37のいずれか一項に記載のIL−6抗体または抗原結合性断片を被験体に投与することを含む、IL−6関連疾患を処置する方法。
(項目45)
前記IL−6関連疾患が、硝子体における上昇したレベルのIL−6を特徴とする眼性疾患である、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記IL−6関連疾患が、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、糖尿病性網膜症、ブドウ膜炎、ドライアイ(例えば、ドライアイ疾患またはドライアイ症候群)、加齢性黄斑変性(AMD)、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、網膜静脈閉塞症(RVO)、視神経脊髄炎(NMO)、角膜移植、角膜上皮剥離、または眼に対する物理的傷害である、項目44または45に記載の方法。
(項目47)
前記抗体または前記抗原結合性断片が、前記被験体の眼の硝子体に送達される、項目45に記載の方法。
(項目48)
前記IL−6関連疾患が糖尿病性黄斑浮腫であり、前記抗体またはその断片が、前記被験体の眼の硝子体に送達される、項目44から47のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
項目1から37のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合性断片をコードする配列を含む核酸。
(項目50)
配列番号40、配列番号43または配列番号48を含む核酸。
(項目51)
項目49または50に記載の核酸を含むベクター。
(項目52)
項目51に記載のベクターを含む細胞。
【発明を実施するための形態】
【0144】
IL−6は、関節リウマチなどのいくつかの疾患において役割を果たすものとしてと関連付けられており、眼性疾患を含むいくつかの疾患において顕著に上方調節されることが報告されている。IL−6は、シス−機構およびトランス−機構の両方を介して作用し得る。シス機構では、遊離IL−6は、膜結合型IL−6受容体(IL−6Rは、IL−6RαおよびCD126とも呼ばれる)に結合し、次いで、このIL−6/IL−6R複合体は、gp130(CD130、オンコスタチンM受容体、IL−6RベータおよびIL−6シグナル伝達因子とも呼ばれる)と相互作用して、この複合体を含有する細胞においてシグナル伝達を活性化すると考えられている。トランス機構では、遊離IL−6は、可溶性IL−6受容体(sIL−6R)に結合する。次いで、このIL−6/sIL−6R複合体は、細胞膜中に存在するgp130に結合し得る。これらの機構間の重要な差異は、より多くの細胞型が、その発現がより限定的であるIL−6Rよりもgp130を発現することである。したがって、IL−6シグナル伝達を阻害することが望ましい疾患、例えば、IL−6シグナル伝達を広く阻害することが望ましい疾患では、シス−IL−6シグナル伝達およびトランス−IL−6シグナル伝達の両方を阻害することが有用である。本出願人らは、IL−6によるシスシグナル伝達およびトランスシグナル伝達の両方を阻害できるIL−6アンタゴニスト、例えば、抗IL−6抗体、断片および誘導体を工学的に作製した。さらに、本出願人らは、より迅速な全身クリアランスを達成するために、かかるIL−6アンタゴニストを工学的に作製した。IL−6アンタゴニスト、例えば、IL−6抗体およびその断片または誘導体は、その全内容が参照によって本明細書に組み込まれるWO2014/074905に記載されている。本発明は、改善されたIL−6抗体およびその使用に関する。
【0145】
本明細書で使用する場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」または「この(the)」が含まれるがこれらに限定されない単数形の用語は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数形を含む。
【0146】
IL−6アンタゴニスト(IL−6a)の特色
一般に、本明細書に記載されるIL−6アンタゴニスト(IL−6a)は、IL−6の部位II(部位2)に特異的に結合し、IL−6関連眼疾患および特定の他の疾患の処置において有用である。IL−6関連眼疾患は、その疾患の望ましくない症状または生物学的活性が、IL−6の発現または存在と関連する疾患である。一部の実施形態では、このIL−6aは、遊離IL−6および結合型IL−6の両方に対して高い親和性を有し、生物中で比較的安定であり、IL−6Rに結合したIL−6(本明細書でIL−6/IL−6R複合体またはIL−6/IL−6Rと呼ばれる)のgp130への結合を阻害でき、治療効果を有し得る。一般に、このIL−6aは、抗体である、または抗体に由来する。例えば、IL−6aは、IL−6の部位IIに特異的に結合できる高親和性のヒト化Fabであり、シス−IL−6シグナル伝達およびトランス−IL−6シグナル伝達の両方を強力に遮断する。別の例では、このIL−6aは、全長抗体、例えば、IgG1またはIgG2抗体である。
【0147】
一部の実施形態では、Fabは、Fcを工学的に操作した配列としても構成され、または全長抗体中にある。一部の実施形態では、このFcを工学的に操作したIL−6a(例えば、Fcを工学的に操作したFab)は、適切な対照と比較して、例えば、工学的に操作したFcを有さない対応する抗体、その断片または誘導体と比較して、より迅速な全身クリアランスを有する。IL−6aのこれらおよび他の特色は、本明細書にさらに記載される。
【0148】
本出願人らは、IL−6の部位IIに選択的に結合してIL−6シグナル伝達の広い阻害を提供するIL−6アンタゴニストを設計したが、それは、かかる分子が、IL−6が遊離であるか膜のIL−6RまたはsIL−6Rに結合しているかに関わらず、IL−6へのgp130の結合を阻害できるからである。さらに、IL−6受容体とは反対にリガンド(IL−6)を標的化することで、受容体媒介性のクリアランスおよびADCC(抗体依存的細胞媒介性細胞傷害)に起因する毒性を回避できる。
【0149】
IL−6は、疾患において病理的役割および保護的役割の両方を果たすので、増加したIL−6に関連する疾患を処置するためのIL−6アンタゴニスト(IL−6a)の使用は、状態のある特定の態様を改善できるが、顕著な有害作用、例えば全身作用もまた引き起こし得る。IL−6経路のこの二重性(即ち、望ましいおよび/または望ましくない作用を有する能力)は、全身性阻害剤を用いてIL−6関連障害を処置することを望ましくないものにし得る。したがって、本明細書で提供される組成物および方法は、少なくとも1つのIL−6活性を阻害するが、IL−6の正の活性に対して過度の影響を有さない処置のために有用であり得るが、これは一部には、これらの組成物が、局所的送達、例えば、眼への局所的送達のために製剤化され得るからである。例えば、ある特定の態様では、このIL−6aは、特定の部位への送達のために適切なサイズのものであるように設計される。一部の実施形態では、このIL−6aは全長抗体である。一部の実施形態では、このIL−6aは、抗体に由来し、眼の硝子体におけるより長い滞留性および限定的な全身性漏出を有し得る形式である。一部の実施形態では、このIL−6aは、対応する未改変の抗体と比較して、眼の硝子体におけるより長い滞留性および/またはより限定的な全身性漏出を有する改変された抗体(例えば、改変されたFcドメインを有する抗体)である。一部の実施形態では、このIL−6aはIgG2抗体である。
【0150】
一部の態様では、このIL−6aは、比較的小さいIL−6a、例えば、抗体の断片、または全長抗体未満である抗体の他の誘導体、例えば、IL−6抗体に由来するFabである。一部の場合には、IL−6aは、組織の1つの部分から、対応する全長IL−6抗体と比較して増加した動態で別の部分へと通過できる形式である。一部の実施形態では、このIL−6aは、Fab単独と比較して、それが送達される位置における増加した滞留を有する可能性がより高いより大きい分子になるように工学的に操作されたFabであり、例えば、このIL−6aは、Fcドメインを介してダイマー化される。ある特定の実施形態では、このFcドメインは、Fc部分が、野生型Fcを含む同じIL−6結合性実体と比較して全身蓄積を低減させ得る消失または低減されたFcRn結合を有するように工学的に操作されている。この操作されたFcドメインは、例えば、IgG1ドメインまたはIgG2ドメインであり得る。
【0151】
典型的には、本明細書に記載されるIL−6アンタゴニストは、IL−6の少なくとも1つの望ましくない作用を好転させる際に有効であるように、それらの標的IL−6に対する十分に高い親和性を有し、治療剤として有用であるのに十分に安定である。
【0152】
一般に、IL−6a、例えば、眼における使用に適切なIL−6aのPKは、治療効果を提供するために、送達の部位、例えば硝子体における、十分に長い半減期を有する。非限定的な例では、PKは、少なくとも8日間、10日間、14日間、21日間、28日間または30日間の半減期であり得る。
【0153】
部位IIに結合するIL−6アンタゴニストの同定
一般に、当該分野で公知の任意の方法が、IL−6に結合し得る分子を生成するために使用され得、例えば、ポリペプチドライブラリーまたは分子ライブラリーが、IL−6に結合するポリペプチドまたは化合物の能力についてのアッセイにおいて、候補化合物についてスクリーニングされ得る。かかる候補化合物が同定されると、その化合物の結合部位は、当該分野で公知の方法を使用して決定され得る。例えば、分子は、部位I、部位IIまたは部位IIIにおいて変異したIL−6に結合するその化合物の能力と比較して、野生型IL−6に結合する能力および結合について試験され得る。実施形態では、本明細書に記載されるIL−6aは、IL−6/IL−6Rα複合体に結合する能力およびIL−6に結合する能力を保持し、IL−6/IL−6Rαのgp130への結合を防止する。実施形態では、本明細書に記載されるIL−6aは、例えば、IL−6の部位IIに結合することによって、IL−6/IL−6Rα複合体への結合についてgp130と競合し得る。かかる結合活性は、当該分野で公知の方法を使用してアッセイされ得る。
【0154】
IL−6a候補は、例えば、HEK−Blue(商標)IL−6アッセイシステム(InvivoGen、San Diego)を使用して試験され得る。HEK−Blue(商標)IL−6細胞は、ヒトIL−6RおよびSTAT3誘導性SEAPレポーター遺伝子を安定にトランスフェクトしたHEK293細胞である。IL−6の存在下では、STAT3は活性化され、SEAPが分泌される。SEAPは、例えば、QUANTI−Blue(商標)(InvivoGen、San Diego)を使用して評価される。これらの細胞へのIL−6アンタゴニストの添加は、遊離IL−6および可溶性受容体結合型IL−6の両方を阻害した結果として、SEAPの分泌を防止する、またはSEAPのレベルを減少させる。
【0155】
K
Dとは、特定の抗体−抗原相互作用または抗体断片−抗原相互作用の結合親和性平衡定数を指す。実施形態では、本明細書に記載される抗体または抗原結合性断片は、250pM未満またはそれと等しい、例えば、225pM、220pM、210pM、205pM、150pM、100pM、50pM、20pM、10pMもしくは1pM未満またはそれと等しいK
Dで、抗原(例えば、IL−6)に結合する。K
Dは、当該分野で公知の方法を使用して、例えば、BiaCore(商標)システムを例えば使用する表面プラズモン共鳴を使用して決定され得る。
【0156】
K
offとは、特定の抗体−抗原相互作用または抗体断片−抗原複合体の解離速度定数を指す。解離速度定数は、例えばBiaCore(商標)システムを使用する表面プラズモン共鳴を使用して決定され得る。比較的緩徐なK
offは、治療剤の望ましい特色に寄与し得る、例えば、かかる処置を必要とする被験体への阻害剤のより低頻度の投与を可能にする。
【0157】
特異性
一部の実施形態では、本明細書に記載されるIL−6aは、標的、例えばIL−6に特異的に結合する。一般に、「特異的結合」は、本明細書で使用する場合、分子が、選択された分子に優先的に結合し、1または複数の他の分子に対してはるかに低い結合親和性を示すことを示す。実施形態では、別の分子に対する結合親和性は、標的に対する結合親和性よりも、1桁、2桁、3桁またはそれを超える桁数だけ低い。
【0158】
上で議論したように、IL−6は、遊離IL−6として、および可溶性IL−6Rαに結合したIL−6として存在し得る。本出願人らは、IL−6の部位Iに結合する阻害剤と比較して、IL−6アンタゴニストに対する最適な標的として、IL−6の部位IIを同定した。部位I阻害剤は、IL−6Rαへの遊離IL−6の結合を阻害し得る。しかし、かかる阻害剤は、既にあるIL−6/IL−6R複合体によって開始される活性を、この複合体のK
offによって限定される置き換えによる場合を除き防止することができない。別の選択肢、IL−6Rαに結合する阻害剤は、飽和濃度で存在しない限り、IL−6活性を防止するその能力が限定的であり得るので、あまり適切ではない。IL−6受容体の量は一般に、IL−6の量と比較して非常に高いので、このアプローチは、受容体に結合することによってIL−6活性を阻害する組成物を望ましくない大量に投与することを必要とし得る。実施形態では、本明細書に記載されるIL−6アンタゴニスト(例えば、本明細書に記載される抗体ならびにその断片および誘導体)は、IL−6がIL−6Rに結合している場合であっても、IL−6の活性を遮断できる。したがって、本明細書に記載されるIL−6aの利点は、IL−6受容体を標的化する阻害剤と比較して、比較的少量の組成物が、治療効果を達成するために投与される必要があり得ることである。抗受容体抗体は、それらのPKを顕著に限定する受容体媒介性クリアランスによって迅速に取り除かれ、したがって、より多い用量、より頻繁な投薬またはそれら両方を必要とすることが報告されている。したがって、抗受容体IL−6抗体および抗部位I IL−6抗体の両方は、リガンドの正常な受容体媒介性クリアランス経路を妨害することによってIL−6の組織濃度を顕著に増加させ、それによって、組織中の潜在的に望ましくないレベルのIL−6に被験体を曝露させるという点において、問題を有する。さらに、IL−6Rαを標的化する阻害剤の使用は、阻害が求められる部位および望ましくない部位の両方の近傍での阻害剤の存在、例えば全身処置を必要とし得る。gp130が結合する部位である部位IIに結合するIL−6aの使用は、遊離IL−6およびIL−6Rに結合しているが、gp130を介したIL−6経路を未だ活性化していないIL−6を介した阻害を可能にする。したがって、理論に束縛されることは望まないが、本明細書に記載されるIL−6アンタゴニストは、両方の形態のIL−6(可溶性および受容体結合型)に結合するように設計され、具体的には、これらのIL−6アンタゴニストは、両方の形態においてアクセス可能である、IL−6の部位IIに結合する。本明細書に記載されるIL−6aを含有する組成物は、IL−6によるシスシグナル伝達およびトランスシグナル伝達の両方を阻害できる。
【0159】
一部の場合、本明細書で提供される化合物および方法は、IL−6関連障害の少なくとも1つの徴候または症状を処置する、例えば、血管形成および/または炎症を阻害するために十分な、有効なIL−6遮断を提供するように設計される。
【0160】
本明細書に記載される化合物は、例えば硝子体中の、望ましくなく高いレベルのIL−6を特徴とする眼疾患を処置するために有用である(Yuukiら、J Diabetes Compl 15巻:257頁(2001年);Funatsuら、Ophthalmology 110巻:1690頁、(2003年);Ohら、Curr Eye Res 35巻:1116頁(2010年);Nomaら、Eye 22巻:42頁(2008年);Kawashimaら、Jpn J Ophthalmol 51巻:100頁(2007年);Kauffmanら、Invest Ophthalmol Vis Sci 35巻:900頁(1994年);Miaoら、Molec Vis 18巻:574頁(2012年)を参照のこと)。
【0161】
一般に、本明細書に記載されるIL−6aは、IL−6シグナル伝達の強力なアンタゴニストである。一部の実施形態では、本明細書に記載されるIL−6aは、IL−6に対する高い親和性、例えば、10pMのIL−6を使用するHEK−Blue IL−6アッセイにおいて、100pM未満またはそれと等しいIC50を有する。IL−6aの高い親和性は、IL−6aのK
D、例えば、1nM未満もしくはそれと等しい、500pM未満もしくはそれと等しい、400pM未満もしくはそれと等しい、300pM未満もしくはそれと等しい、240pM未満もしくはそれと等しい、または200pM未満もしくはそれと等しいK
Dに基づいて決定され得る。
【0162】
増加したIL−6の発現または活性に関連する障害を処置するために有用な生物的IL−6a(例えば、タンパク質またはポリペプチド、例えば、抗体、その断片または誘導体)を産生するために、典型的には、この生物的IL−6aは、高い産生性を有することが望ましい。例えば、適切な産生性は、1g/L超もしくはそれと等しい(例えば、2g/L超もしくはそれと等しい、5g/L超もしくはそれと等しい、または10g/L超もしくはそれと等しい)。
【0163】
IL−6アンタゴニストを有効に投与するために、この阻害剤は、投与される濃度と適合性の溶解度を有することが必要である。例えば、全長抗体IL−6aの場合、溶解度は、20mg/ml超もしくはそれと等しい、10mg/ml超もしくはそれと等しい、5mg/ml超もしくはそれと等しい、または1mg/ml超もしくはそれと等しい。
【0164】
さらに、実行可能な処置であるために、この阻害剤は、送達部位および活性部位の体温における高い安定性、ならびに貯蔵安定性を有さなければならない。実施形態では、この阻害剤は、60℃超もしくはそれと等しい(例えば、60℃超もしくはそれと等しい、62.5℃超もしくはそれと等しい、65℃超もしくはそれと等しい、70℃超もしくはそれと等しい、73℃超もしくはそれと等しい、または75℃超もしくはそれと等しい)T
mを有する。実施形態では、この阻害剤は、45℃超もしくはそれと等しい、例えば、50℃超もしくはそれと等しい、51℃超もしくはそれと等しい、55℃超もしくはそれと等しい、または60℃超もしくはそれと等しいT
onsetを有する。T
mおよびT
onsetを決定する方法は、当該分野で公知の方法を使用して決定され得る。
【0165】
所望の特色を有するアンタゴニストは、当該分野で公知の適切な型の分子、例えば、親IL−6抗体の十分な特色(例えば、所望の結合特性)を一般に保持または維持するIL−6部位II標的化抗体の断片および誘導体を含む抗体から、選択され得る。かかるアンタゴニストには、F
ab断片、scFv、Fc部分を含むように工学的に操作されたF
ab断片、および親IL−6部位II標的化抗体とは異なるフレームワークを有するように工学的に操作された全長抗体が含まれる。
【0166】
一部の態様では、本明細書に開示されるIL−6aは、IL−6の部位IIに結合し得る抗体またはその断片と競合または交差競合し得るヒト抗体の抗原結合部位を含む。例えば、抗体またはその断片は、本明細書に開示されるVHドメインおよびVLドメインから構成され得、このVHおよびVLドメインは、本明細書に開示されるIL−6/部位II結合性抗体のCDRのセットを含む。
【0167】
任意の適切な方法は、例えば、IL−6上の種々の部位を変異させることによって、IL−6aが結合するドメインおよび/またはエピトープを決定するために使用され得る。変異がIL−6aとIL−6リガンドとの結合を防止または減少させる部位は、IL−6aへの結合に直接関与するか、または例えばIL−6のコンフォメーションに影響を与えることによって、結合部位に間接的に影響を与えるかのいずれかである。他の方法が、IL−6aが結合するアミノ酸を決定するために使用され得る。例えば、PEPSCANベースの酵素結合イムノアッセイ(ELISA)などのペプチド結合スキャンが使用され得る。この型のペプチド結合スキャンでは、抗原に由来する短い重複するペプチドが、結合メンバーへの結合について体系的にスクリーニングされる。これらのペプチドは、ペプチドのアレイを形成するために、支持体表面に共有結合的にカップリングされ得る。ペプチドは、線状または制約されたコンフォメーションであり得る。制約されたコンフォメーションは、ペプチド配列の各末端に末端システイン(cys)残基を有するペプチドを使用して産生され得る。これらのcys残基は、ペプチドがループ型コンフォメーションで保持されるように、支持体表面に直接的または間接的に共有結合的にカップリングされ得る。したがって、この方法で使用されるペプチドは、抗原の断片に対応するペプチド配列の各末端に付加されたcys残基を有し得る。cys残基がペプチド配列の中央部またはその近傍にさらに位置する二重ループ型ペプチドもまた、使用され得る。これらのcys残基は、ペプチドが二重ループ型コンフォメーションを形成するように、支持体表面に直接的または間接的に共有結合的にカップリングされ得、1つのループは、中心cys残基のそれぞれの側にある。ペプチドは、合成により生成され得、したがって、cys残基は、IL−6部位II配列中に天然には存在しないにもかかわらず、所望の位置において工学的に作製され得る。任意選択で、線状および制約されたペプチドは共に、ペプチド結合アッセイでスクリーニングされ得る。ペプチド結合スキャンは、結合メンバーが結合するペプチドのセットを(例えばELISAを使用して)同定することであって、これらのペプチドは、IL−6aの断片に対応するアミノ酸配列を有する(例えば、IL−6aの約5、10または15連続する残基を含むペプチド)こと、および結合メンバーが結合した残基のフットプリントを決定するためにペプチドを整列させることであって、このフットプリントは、重複するペプチドに共通する残基を含むこと、を含み得る。あるいは、またはさらに、このペプチド結合スキャン法は、少なくとも選択されたシグナル:ノイズ比でIL−6aが結合するペプチドを同定するために使用され得る。
【0168】
例えば、部位特異的変異誘発(例えば、本明細書に記載されるとおり)、水素重水素交換、質量分析、NMRおよびX線結晶解析が含まれる、当該分野で公知の他の方法が、抗体が結合する残基を決定するためおよび/またはペプチド結合スキャン結果を確認するために使用され得る。
【0169】
典型的には、本明細書に記載されるように有用なIL−6aは、ヒト抗体分子、ヒト化抗体分子、またはそれらの結合性断片である。一般に、この抗体は、モノクローナル抗体である。かかる抗体の起源は、ヒト、マウス、ラット、ラクダ類(camelid)、ウサギ、ヒツジ、ブタまたはウシであり得、当業者に公知の方法に従って生成され得る。
【0170】
一般に、IL−6aは、IL−6(例えば、ヒトIL−6)に、例えば、IL−6の部位IIに特異的に結合し得る抗体の少なくともCDRを含む。本発明のCDRまたはCDRのセットを保有するための構造は、抗体の重鎖もしくは軽鎖配列またはそれらの実質的な部分であり得、ここで、このCDRまたはCDRのセットは、再編成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされる天然に存在するVHおよびVL抗体可変ドメインのCDRまたはCDRのセットに対応する位置に位置する。免疫グロブリン可変ドメインの構造および位置は、Kabatら、1983年(National Institutes of Health)、および任意のインターネット検索エンジンを使用して「Kabat」の下で見出され得るそのアップデートを参照して、決定され得る。
【0171】
本明細書に開示されるIL−6aは、典型的には、抗体VHドメインおよび/またはVLドメインを一般に含む抗体である。VHドメインは、重鎖CDR(VHCDR)のセットを含み、VLドメインは、軽鎖CDR(VLCDR)のセットを含む。かかるCDRの例は、実施例中で本明細書に提供される。抗体分子は、VHCDR1、VHCDR2およびVHCDR3ならびにフレームワークを含む抗体VHドメインを含み得る。これは、あるいは、またはまた、VLCDR1、VLCDR2およびVLCDR3ならびにフレームワークを含む抗体VLドメインを含み得る。
【0172】
本明細書に開示されるものなどのVHCDR1および/もしくはVHCDR2および/もしくはVHCDR3ならびに/または本明細書に開示されるものなどのVLCDR1および/もしくはVLCDR2および/もしくはVLCDR3を含むIL−6アンタゴニストが、本明細書に開示される。このIL−6aは、本明細書に記載される抗体、断片または誘導体のうちいずれかの1つまたは複数のCDRを含み得る。このIL−6aは、VHCDRのセット(例えば、VHCDR1、VHCDR2およびVHCDR3)を含み得、任意選択で、VLCDRのセット(例えば、VLCDR1、VLCDR2およびVLCDR3)もまた含み得る。これらのCDRは、本明細書に記載される1または複数の抗体、断片または誘導体に由来し得る。例えば、これらのVLCDRは、VHCDRと同じまたは異なる抗体に由来し得る。
【0173】
一般に、VHドメインは、VLドメインと対形成して、抗体の抗原結合部位を提供する。例えば、配列番号1または配列番号3のHCドメインは、配列番号2のLCドメインと対形成する。一部の場合には、VHまたはVLドメイン単独が、IL−6aとして使用され得る。
【0174】
一部の態様では、このIL−6aは、以下を含む、抗体分子、その断片または誘導体である:(i)本明細書に記載されるVHドメイン(例えば、配列番号37)と少なくとも60、70、80、85、90、95、98もしくは99%のアミノ酸配列同一性を有するVHドメイン配列、または(ii)VHドメイン配列由来のVHCDRのセット(例えば、VHCDR1、VHCDR2および/もしくはVHCDR3)。実施形態では、この抗体分子、その断片または誘導体は、配列番号37のVHCDR1、VHCDR2およびVHCDR3を含む。実施形態では、この抗体分子、その断片または誘導体は、配列番号37のVHCDR1、VHCDR2およびVHCDR3とは1個以下、2個以下、3個以下、4個以下、または5個以下のアミノ酸が合計で異なる、VHCDR1、VHCDR2およびVHCDR3を含む。
【0175】
この抗体分子、その断片または誘導体は、任意選択で以下もまた含み得る:(i)本明細書に記載されるVLドメイン、例えば、配列番号38のVLドメインと少なくとも60、70、80、85、90、95、98もしくは99%のアミノ酸配列同一性を有するVLドメイン配列、または(ii)VLドメイン由来のVLCDRのセット(例えば、VLCDR1、VLCDR2および/もしくはVLCDR3)。実施形態では、この抗体分子、その断片または誘導体は、配列番号38のVLCDR1、VLCDR2およびVLCDR3を含む。実施形態では、この抗体分子、断片または誘導体は、配列番号38のVLCDR1、VLCDR2およびVLCDR3とは1個以下、2個以下、3個以下、4個以下、または5個以下のアミノ酸が合計で異なる、VLCDR1、VLCDR2およびVLCDR3を含む。2つのアミノ酸配列のパーセント同一性を計算するために使用され得るアルゴリズムには、例えば、デフォルトパラメーターを使用する、例えば、BLAST、FASTAまたはSmith−Watermanアルゴリズムが含まれる。
【0176】
本明細書に記載されるIL−6aは、抗体定常領域またはその一部、例えば、ヒト抗体定常領域またはその一部を含み得る。例えば、VLドメインは、ヒトCKまたはCL鎖を含む抗体軽鎖定常ドメインに、そのC末端において付加され得る。同様に、VHドメインに基づくIL−6aは、任意の抗体アイソタイプ、例えば、IgG、IgA、IgEおよびIgMならびにアイソタイプサブクラスのうちいずれか、特に、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4に由来する免疫グロブリン重鎖の全てまたは一部(例えば、CH1ドメイン)に、そのC末端において付加され得る。実施形態では、この抗体または抗原結合性断片は、ADCC活性が低減または排除されるように工学的に操作される。
【0177】
一実施形態では、本発明の抗体はIgG2抗体である。一実施形態では、本発明の抗体は、本明細書に記載されるIgG2フレームワーク、IgG2定常領域またはIgG2 Fc領域を含む。
【0178】
IgG2抗体は、3つの主要な構造的アイソフォームとして存在し得る:IgG2−A、IgG2−BおよびIgG2−A/B(Wypych J.ら Journal of Biological Chemistry. 2008年、283巻:16194〜16205頁)。この構造的不均一性は、Fabアームを重鎖ヒンジ領域に連結するジスルフィド結合の異なる立体配置に起因する。IgG2−Aアイソフォームでは、Fabアームをヒンジ領域に連結するジスルフィド結合は存在しない。IgG2−Bアイソフォームでは、両方のFabアームが、重鎖および軽鎖をヒンジ領域に連結するジスルフィド結合を有する。IgG2−A/Bアイソフォームは、IgG2−AアイソフォームとIgG2−Bアイソフォームとの間のハイブリッドであり、一方のFabアームだけが、この一方のFabアームの重鎖および軽鎖をヒンジ領域に連結するジスルフィド結合を有する。ジスルフィドシャッフリングとも呼ばれる、異なる構造的アイソフォームのうちの2つまたは全ての間でのIgG2抗体の変換が、天然に存在する抗体および組換え抗体の両方について、in vivoおよびin vitroで天然に発生する。結果として、当該分野におけるIgG2抗体の製剤は、IgG2−A、IgG2−BおよびIgG2−A/Bアイソフォームの不均一な混合物を含む。異なるIgG2アイソフォームは、独自のおよび異なる機能的特性、例えば、安定性、凝集、粘度、Fc受容体結合または効力における差異を有し得る。IgG2抗体製剤中の、複数のアイソフォームの存在、または特定のアイソフォームの増加したレベルは、安定性、凝集または効力に負の影響を与え得る。
【0179】
本発明は、IgG2−AまたはIgG2−A/Bアイソフォームで主に存在することの利点を有する抗体を提供する。本発明の抗体は、IgG2−Bアイソフォームでは存在しない、または実質的な量の時間にわたってIgG2−Bアイソフォームでは存在しない。したがって、本発明の抗体を含む組成物および製剤は、当該分野で公知の他のIgG2抗体よりも不均一性が低く、したがって、治療適用での使用により好ましい。
【0180】
本発明の抗体を含む組成物は、主に、抗体のIgG2−Aおよび/またはIgG2−A/Bアイソフォームを含む。一実施形態では、本明細書に記載される抗体を含む組成物は、少なくとも50、60、70、80、90、95、96、97、98または99%の、抗体のIgG2−AまたはIgG2−A/Bアイソフォームを含む。一実施形態では、本明細書に記載される抗体を含む組成物は、合計で、少なくとも60、70、80、90、95、96、97、98または99%の、IgG2−AおよびIgG2−A/Bアイソフォームを含む。かかる実施形態では、本明細書に記載される抗体を含む組成物は、実質的な量の、抗体のIgG2−Bアイソフォームを含まない。例えば、この組成物は、10%、5%、2%、1%、0.5%または0.1%未満の、抗体のIgG2−Bアイソフォームを含む。
【0181】
一部の場合には、本発明の抗体は、特定のアロタイプ、例えば、特定の地理的起源を有する集団において優勢であるアロタイプを有する配列を創出するために、当該分野で公知の方法を使用してさらに改変される。一部の場合には、ヒト重鎖定常領域は、この目的のために改変される。
【0182】
IL−6aは、抗体分子、その結合性断片、または抗体フレームワーク内に1もしくは複数のCDR、例えば、CDRのセットを有するバリアントであり得る。例えば、抗体(例えば、本明細書に記載される抗体またはその断片もしくは誘導体)の1もしくは複数のCDRまたはCDRのセットが、抗体分子を提供するために、フレームワーク(例えば、ヒトフレームワーク)中に移植され得る。これらのフレームワーク領域は、ヒト生殖系列遺伝子配列に由来し得る、または起源が非生殖系列であり得る。
【0183】
VHおよび/またはVLのフレームワーク残基は、例えば、部位特異的変異誘発を使用して、本明細書で議論および例示されるように、改変され得る。
【0184】
アミノ酸変化が、当該分野で公知の方法およびパラメーターを使用して、IL−6の部位IIに標的化された抗体IL−6a(本明細書で「参照IL−6抗体」と呼ぶ)に由来する1もしくは複数のフレームワーク領域および/または1もしくは複数のCDRにおいて作製され得る。IL−6の部位II(例えば、ヒトIL−6の部位II)への結合を保持し、典型的には、参照IL−6抗体と比較して少なくとも同じ結合または増加した親和性を有する得られたIL−6アンタゴニストもまた、本明細書に含まれる。一部の場合には、安定性などのパラメーターを改善するために、参照IL−6a(例えば、参照抗体)と比較して、誘導されたIL−6aの結合親和性における減少を生じる変化が、有用なIL−6aを創出するために導入され得る。一部の実施形態では、例えば、FcRn結合または薬物動態(PK)パラメーター、例えば、硝子体における半減期または全身半減期(例えば、血液、血漿、血清、リンパ液、肝臓、腎臓、他の組織または体液における)にその言及が関連する一部の場合には、参照抗体は、IL−6に特異的に結合しない抗体であり得る。
【0185】
IL−6aポリペプチドのアミノ酸配列における変化は、1もしくは複数のアミノ酸残基(複数可)を天然に存在しないもしくは非標準的なアミノ酸で置換すること、1もしくは複数のアミノ酸残基を天然に存在しないもしくは非標準的な形態に改変すること、または1もしくは複数の天然に存在しないもしくは非標準的なアミノ酸を配列中に挿入することを含み得る。本発明の配列における変更の数および位置の例は、本明細書の別の箇所に記載されている。天然に存在するアミノ酸には、それらの標準的な一文字コードによってG、A、V、L、I、M、P、F、W、S、T、N、Q、Y、C、K、R、H、D、Eと特定される20種の「標準的な」L−アミノ酸が含まれる。非標準的なアミノ酸は、ポリペプチド骨格中に取り込まれ得る、または既存のアミノ酸残基の改変から生じ得る、任意の他の残基が含まれる。非標準的なアミノ酸は、天然に存在するものまたは天然に存在しないものであり得る。いくつかの天然に存在する非標準的なアミノ酸、例えば、4−ヒドロキシプロリン、5−ヒドロキシリシン、3−メチルヒスチジンおよびN−アセチルセリンが、当該分野で公知である。それらのN−アルファ位置において誘導体化されるアミノ酸残基は、アミノ酸配列のN末端にのみ位置する。このアミノ酸は、典型的には、L−アミノ酸である。一部の場合には、このアミノ酸はD−アミノ酸である。したがって、変更は、L−アミノ酸をD−アミノ酸に改変すること、またはL−アミノ酸をD−アミノ酸で置き換えることを含み得る。メチル化、アセチル化および/またはリン酸化形態のアミノ酸もまた公知であり、本発明におけるアミノ酸は、かかる改変に供され得る。
【0186】
本発明の抗体ドメインおよび結合メンバー中のアミノ酸配列は、本明細書で議論される非天然のまたは非標準的なアミノ酸を含み得る。非標準的なアミノ酸(例えば、D−アミノ酸)は、当該分野で公知の方法を使用して、例えば、分子の合成において、またはアミノ酸の合成後改変もしくは置き換えによって、アミノ酸配列中に取り込まれ得る。一部の場合には、D−アミノ酸が、IL−6aのPKを増加させるために使用される。
【0187】
本発明のCDR由来配列を保有する新規VHまたはVL領域は、可変ドメイン全体内に変異を生成するために、1つまたは複数の選択されたVHおよび/またはVL核酸配列のランダム変異誘発を使用して生成され得る。例えば、エラープローンPCRが使用され得る(Chaoら、Nature Protocols、1巻:755〜768頁(2006年))。一部の実施形態では、1個または2個のアミノ酸置換が、可変ドメイン全体、またはCDRのセット内で作製される。当該分野で公知の他の方法、例えば、部位特異的変異誘発が、典型的には1つまたは複数のCDRにおいて変異を生成するために使用され得る。
【0188】
抗体IL−6aを産生するための1つの方法は、1個または複数のアミノ酸を付加、欠失、置換または挿入することによって、本明細書に開示されるものなどのVHドメインを変更することである。変更されたVHドメインは、本明細書に記載されるようにかつ当該分野で公知の方法を使用しても変更され得るVLドメイン(例えば、本明細書に開示されるVLドメイン)と組み合わされ得る。かかる変更された分子は、IL−6の部位IIに結合するそれらの能力について、および任意選択で他の所望の特性、例えば、参照分子と比較して増加した親和性について、試験される。一部の場合には、バリアントVHまたはVLドメインは、1、2、3、4または5つのかかる変更(例えば、1、2、3、4または5個のアミノ酸置換)を有し得る。
【0189】
実施形態では、本発明のIL−6aは、IL−6の部位IIに結合し、抗原結合部位を含む、例えば、IL−6の部位IIに結合できる、抗体の断片である。本発明の抗体断片は、一般に、参照(親)抗体分子、例えば、配列番号41および配列番号42を含む抗体分子から出発して取得される。抗体断片は、組換えDNA、酵素的切断(例えば、ペプシンまたはパパインを使用する)、抗体の化学的切断(例えば、ジスルフィド架橋の化学的還元)などの、当該分野で公知の方法を使用して生成され得る。抗体の抗原結合部位を含む抗体断片には、Fab、Fab’、Fab’−SH、scFv、Fv、dAb、Fdおよびジスルフィド安定化可変領域(dsFv)などの分子が含まれるがこれらに限定されない。例えば、F(ab’)2、F(ab)3、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)およびミニボディ(minibody)を含む、1つまたは複数の抗体の抗原結合部位を含む種々の他の抗体分子が、工学的に作製され得る。抗体分子ならびにそれらの構築および使用のための方法の例は、HolligerおよびHudson、2005年、Nat Biotechnol 23巻:1126〜1136頁に記載されている。結合性断片の非限定的な例は、VL、VH、定常軽鎖ドメイン(CL)および定常重鎖ドメイン1(CH1)ドメインから構成されるFab断片;VHおよびCH1ドメインから構成されるFd断片;単一抗体のVLおよびVHドメインから構成されるFv断片;VHまたはVLドメインから構成されるdAb断片;単離されたCDR領域;2つの連結されたFab断片を含む二価断片、F(ab’)2断片;VHドメインとVLドメインとが、これら2つのドメインを会合させて抗原結合部位を形成させるペプチドリンカーによって連結される、単鎖Fv分子(scFv);二特異性単鎖Fvダイマー(例えば、WO1993/011161に開示されるとおり)、ならびに遺伝子融合を使用して構築された多価または多特異性断片であるダイアボディ(例えば、WO94/13804に開示されるとおり)である。Fv、scFvまたはダイアボディ分子は、VHドメインとVLドメインとを連結するジスルフィド架橋の取込みによって安定化され得る。CH3ドメインに繋がれたscFvを含むミニボディもまた、IL−6aとして使用され得る。IL−6aとして使用され得る抗体の他の断片および誘導体には、抗体ヒンジ領域由来の1個または複数のシステインを含む、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端における数個のアミノ酸残基の付加によってFab断片とは異なるFab’、および定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab’断片であるFab’−SH、が含まれる。
【0190】
一部の場合には、抗体断片であるIL−6aは、半減期または取込みを増加させるためのPEG化など、望ましい特性を改善または導入するために、化学的に改変されている。
【0191】
dAb(ドメイン抗体)は、抗体の、小さいモノマー性の抗原結合性断片(抗体重鎖または軽鎖の可変領域)である。VH dAbは、ラクダ類(例えば、ラクダおよびラマ)中に天然に存在し、ラクダ類を標的抗原で免疫化し、抗原特異的B細胞を単離し、個々のB細胞からdAb遺伝子を直接クローニングすることによって産生され得る。本発明のIL−6aは、実質的に本明細書に示されるようなVHもしくはVLドメイン、または実質的に本明細書に示されるようなCDRのセットを含むVHもしくはVLドメインを含むdAbであり得る。
【0192】
本発明の抗体は、2つの異なる可変領域が同じ分子中で組み合わされた、二特異性抗体を含む。Il−6aは、当該分野で公知の方法を使用して調製された、例えば、化学的にまたはハイブリッドハイブリドーマから調製された、二特異性抗体の一部として取り込まれ得る。かかる分子は、上で議論した型の二特異性抗体断片であり得る。二特異性抗体を生成するための方法の1つの非限定的な例は、異なる特異性を有する2つの抗体の結合ドメインが使用され得、短い可撓性ペプチドを介して直接連結され得る、BiTE(商標)テクノロジーである。これは、2つの抗体を、短い単一のポリペプチド鎖上で組み合わせる。ダイアボディおよびscFvは、可変ドメインだけを使用して、Fc領域なしに構築され得、抗イディオタイプ反応の影響を潜在的に低減させる。二特異性抗体は、IgG全体として、二特異性Fab’2として、Fab’PEGとして、ダイアボディとして、さもなければ二特異性scFvとして、構築され得る。さらに、2つの二特異性抗体が、四価抗体を形成するために、当該分野で公知の慣用的な方法を使用して、連結され得る。
【0193】
二特異性抗体全体とは対照的に、二特異性ダイアボディは、E.coliにおいて構築および発現され得ることに一部起因して、有用である。適切な結合特異性のダイアボディ(および多くの他のポリペプチド、例えば抗体断片)は、ライブラリーからファージディスプレイ(WO1994/13804)を使用して容易に選択され得る。ダイアボディの一方のアームが、例えば、IL−6の部位IIに対する特異性を伴って一定に保たれる場合、他方のアームが変動されるライブラリーが作製され得、適切な特異性の抗体が選択される。
【0194】
二特異性抗体全体は、WO1996/27011、WO1998/50431およびWO2006/028936に記載されるような、代替的な工学的作製方法によって作製され得る。
【0195】
一部の場合には、本発明のIL−6aは、例えば、以下にさらに議論するように、非抗体タンパク質足場中に1つまたは複数のCDR、例えば、CDRのセットを取り込むことによって、非抗体分子内に抗原結合部位を含む。一部の場合には、これらのCDRは、非抗体足場中に取り込まれる。IL−6部位II結合部位は、非抗体タンパク質足場、例えば、フィブロネクチンもしくはチトクロムB上のCDRの配置によって、またはIL−6部位IIに対する結合特異性を付与するためにタンパク質足場内のループのアミノ酸残基をランダム化もしくは変異させることによって、提供され得る。タンパク質中の新規結合部位を工学的に作製するための足場は、当該分野で公知である。例えば、抗体模倣物のためのタンパク質足場は、少なくとも1つのランダム化されたループを有するフィブロネクチンIII型ドメインを含むタンパク質(抗体模倣物)を記載する、WO200034784に開示されている。1つまたは複数のCDR、例えば、HCDRのセットを移植する適切な足場は、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーの任意のドメインメンバーによって提供され得る。この足場は、ヒトまたは非ヒトタンパク質であり得る。非抗体タンパク質足場の利点は、かかる足場が、少なくとも一部の抗体分子よりも小さいおよび/または製造がより容易である足場分子中に抗原結合部位を提供できることである。結合メンバーの小さいサイズは、有用な生理学的特性、例えば、細胞に進入し、組織中に深く貫通し、もしくは他の構造内の標的に到達する能力、または標的抗原のタンパク質空洞内に結合する能力を付与し得る。安定な骨格および1つまたは複数の可変ループを有するタンパク質が典型的であり、ループ(単数または複数)のアミノ酸配列は、標的抗原に結合する抗原結合部位を創出するために、特異的にまたはランダムに変異される。かかるタンパク質には、S.aureus由来のプロテインAのIgG結合ドメイン、トランスフェリン、テトラネクチン、フィブロネクチン(例えば、10番目のフィブロネクチンIII型ドメインを使用する)、リポカリンならびにガンマ−クリスタリン(gamma−crystalline)および他のAffilin(商標)足場(Scil Proteins、Halle、Germany)が含まれる。他のアプローチの例には、サイクロチドに基づく合成マイクロボディ−−分子内ジスルフィド結合を有する小さいタンパク質、ミクロタンパク質(microprotein)(例えば、Versabodies(商標)、Amunix Inc.、Mountain View、CA)およびアンキリンリピートタンパク質(DARPin、例えば、Molecular Partners AG、Zurich−Schlieren、Switzerlandから)が含まれる。かかるタンパク質には、小さい工学的に操作されたタンパク質ドメイン、例えば、イムノドメイン(immuno−domain)(例えば、米国特許出願公開第2003/082630号および米国特許出願公開第2003/157561を参照のこと)などもまた含まれる。イムノドメインは、抗体の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。
【0196】
IL−6aは、例えば、抗原に結合する能力に加えて、別の機能的特徴を分子に付与するために、さらなるアミノ酸を含み得る。
【0197】
一部の場合には、IL−6aは、検出可能な標識を保有する、あるいは(例えば、ペプチジル結合またはリンカーを介して)毒素または標的化部分もしくは酵素にコンジュゲート化される。例えば、IL−6aは、抗原結合部位が抗原に結合し、したがって、触媒部位をIL−6またはIL−6/IL−6R複合体に標的化するように、触媒部位(例えば、酵素ドメイン中)ならびに抗原結合部位(例えば、IL−6の部位IIに対する結合部位)を含み得る。この触媒部位は、一部の場合には、例えば、IL−6、IL−6R、またはIL−6a/IL−6複合体と会合する他の分子の切断によって、IL−6の生物学的機能をさらに阻害し得る。
【0198】
一部の態様では、本発明は、IL−6aの生物学的作用機能を変更、例えば、増加、減少または排除するように、参照抗体と比較して改変された抗体IL−6aを含む。一例では、Fc領域が改変されているか、または未改変の親と比較して改変されたIL−6aの薬物動態を変更させるために、親Fcドメインが、改変されたFcドメインで置き換えられる。一部の実施形態では、このIL−6aは、IgG2フレームワークを有するように工学的に操作される。他の実施形態では、このIL−6aは、IgG1またはIgG2フレームワーク中にあり、親または他の参照IL−6aと比較して、pH6.0においてIL−6aの結合親和性を増加させるが、pH7.0においては結合親和性を実質的に変更させない、改変されたFcを有する。実施形態では、Fcドメインが改変され、このIL−6aは、親または他の参照IL−6aと比較して、低減された全身蓄積、減少した半減期および/または増加した全身クリアランスを有する。
【0199】
一部の実施形態では、抗体IL−6aは、補体結合および補体依存的細胞傷害を増加させるために改変される。他の態様では、この抗体IL−6aは、参照抗体と比較して、抗体がエフェクター細胞を活性化する能力および抗体依存的細胞傷害(ADCC)に関与する能力を増加させるために改変される。一部の場合には、本明細書に開示される抗体は、エフェクター細胞を活性化し抗体依存的細胞傷害(ADCC)に関与するそれらの能力を増強するため、かつ補体に結合し補体依存的細胞傷害(CDC)に関与する能力を増強するために、改変され得る。
【0200】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体は、補体に結合し補体依存的細胞傷害(CDC)に関与するそれらの能力を低減させるために改変される。他の実施形態では、これらの抗体は、エフェクター細胞を活性化し抗体依存的細胞傷害(ADCC)に関与するそれらの能力を低減させるために改変される。さらに他の実施形態では、本明細書に開示される抗体は、エフェクター細胞を活性化し抗体依存的細胞傷害(ADCC)に関与するその能力を低減させるため、かつ補体に結合し補体依存的細胞傷害(CDC)に関与するその能力を低減させるために、改変され得る。
【0201】
例えば、注射によって眼中に送達される場合、IL−6aの用量の頻繁な送達を回避することが、一般に有利である。この特色を促進するために、ある特定の実施形態では、送達の部位、例えば硝子体における本明細書に開示されるIL−6aの半減期は、少なくとも4日間、例えば、少なくとも7日間、少なくとも9日間、少なくとも11日間または少なくとも14日間である。ある特定の実施形態では、IL−6aの平均半減期は、少なくとも2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、25日間、30日間、40日間、50日間または60日間である。抗体の半減期を増加させる方法は、例えば、米国特許第6,277,375号ならびに国際公開番号WO1998/23289およびWO1997/3461に記載されるように、当該分野で公知である。一部の実施形態では、IL−6aの半減期は、全身半減期、例えば、血液、血清、血漿、リンパ液、肝臓、腎臓または他の組織もしくは体液における半減期よりも、標的送達部位、例えば硝子体においてより大きい。
【0202】
別の実施形態では、本発明は、容器を含む製造物品を提供する。この容器は、本明細書に開示されるIL−6aを含有する組成物、およびこの組成物がIL−6関連障害を処置するために使用できることを示す添付文書またはラベルを含む。典型的には、この組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含む組成物中のIL−6aである。
【0203】
一部の場合には、本発明は、本明細書に開示されるIL−6aを含有する組成物と、処置を必要とする被験体にこの組成物を投与するための指示とを含むキットである。
【0204】
例えば、送達の部位またはその近傍でのIL−6aの保持を増強するために、大きいIL−6aが望ましい実施形態では、IL−6aのサイズを増加させるがIL−6aの機能(例えば、IL−6またはIL−6/IL−6R複合体に対するIL−6の結合親和性)に顕著に有害な影響を与えない部分を、Il−6aと会合させてもよい。例えば、Fabは、FabおよびFc部分を含む単一のポリペプチドとして発現されるように遺伝子操作され得る。
【0205】
IL−6aについて比較的小さいサイズが望ましい実施形態では、IL−6抗体の断片、例えば、scFvまたはFab断片が使用され得る。IgG抗体は、サイズが約150kDであり、Fabは約50kDであり、scFvは約25kDである。一部の実施形態では、本明細書に記載されるIL−6aは、サイズが約50kD未満である。かかるアンタゴニストは、例えば、50kD未満もしくはそれと等しくかつ10kD超、50kD未満もしくはそれと等しくかつ20kD超、または50kD未満もしくはそれと等しくかつ25kD超もしくはそれと等しくすることができる。
【0206】
一部の場合には、IL−6アンタゴニスト、例えば、ジスルフィドを有する抗体または他の阻害剤の安定性は、ジスルフィド架橋のうちの1つまたは複数が親分子中よりも安定であるバリアントを創出することによって改善される。
【0207】
本発明に記載される特定のIL−6a分子の別の利点は、送達の様式、送達の部位または活性の様式のために適切なサイズを有する有効な分子の入手可能性であり得る。例えば、Fab形式のIL−6aは、外用適用に使用され得る。かかる分子を工学的に作製する方法は、本明細書に記載されており、当該分野で公知である。
【0208】
適応症/IL−6関連疾患
本発明のIL−6aで処置され得る疾患には、上昇したIL−6がその疾患状態と関連しているまたはその疾患状態への必要条件としてである疾患が含まれる。かかる疾患には、IL−6によって駆動される血管形成および炎症が疾患病理に寄与する疾患が含まれる。これには、IL−6が正常レベルと比較して上昇している疾患、例えば、IL−6が眼の硝子体において上昇している疾患(例えば、糖尿病性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症およびブドウ膜炎など)または眼の組織において上昇している疾患が含まれる。例には、ドライアイ(例えば、ドライアイ疾患またはドライアイ症候群)、アレルギー性結膜炎、ブドウ膜炎、加齢性黄斑変性(AMD)、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、裂孔原性網膜剥離(RRD)、網膜静脈閉塞症(RVO)、視神経脊髄炎(NMO)が含まれるがこれらに限定されない特定の眼疾患が含まれる。処置され得る他の眼性障害には、角膜移植、角膜上皮剥離または眼に対する他のかかる物理的傷害などの外傷によって引き起こされる障害が含まれる。したがって、本発明は、IL−6関連疾患を有する被験体を、本明細書に記載されるIL−6aで処置することを含む。
【0209】
一部の実施形態では、このIL−6関連疾患は炎症性疾患である。一部の実施形態では、この疾患は緑内障である。
【0210】
一部の実施形態では、この疾患は眼痛である。
【0211】
一部の実施形態では、被験体の処置は、その被験体がIL−6関連疾患を有するかどうか、および任意選択で、その被験体が他の非IL−6阻害処置、例えば、ステロイドまたは抗VEGF治療剤に対して抵抗性であるかどうかを決定することもまた含む。
【0212】
眼などの特異的位置、例えば硝子体において有効な特定の抗体ベースの治療剤に関する1つの問題は、全身投与から生じる有害作用である。1つの解法は、本明細書に記載される分子によって例示されるように、全身的とは対照的に局所的に送達できる治療剤を提供することである。例えば硝子体に局所的に送達される一部の治療剤は、ある程度まで全身的に出現するので、比較的迅速な全身代謝回転を有する分子を設計することが有利である。本出願人らは、例えば、親分子または参照抗体と比較して、迅速な全身代謝回転のために設計されたIL−6抗体の例を工学的に作製した。これを、分子のFcRn結合を改変するため、例えば、IL−6aのFcRn媒介性のリサイクルを低減させるために、Fcドメインを変異させることによって達成した。
【0213】
糖尿病性黄斑浮腫(DME)。糖尿病性黄斑浮腫(DME)には、低減された視力および潜在的には失明を引き起こす、網膜血管の閉塞および漏出が関与する。DMEに対する標準的な処置は、ステロイドまたは抗VEGF抗体の局所的投与を含む。しかし、多くの患者は、これらの治療に対して不応性である。糖尿病性黄斑浮腫の病因には、血管形成、炎症および酸化ストレスの構成要素が関与する。IL−6は、低酸素症および高血糖症によって誘導され、血管炎症、血管透過性および病理的血管形成を増加させ得る。IL−6は、VEGF発現を直接誘導し得、動物モデルにおいて脈絡膜新生血管形成を促進し得る。DME患者では、眼のIL−6レベルは、黄斑の厚さおよび疾患重症度と正に相関する。IL−6レベルは、報告によれば、抗VEGF治療に失敗する患者では上昇するが、抗VEGF応答性患者では減少する。したがって、本明細書に記載されるIL−6aの投与は、抗VEGF治療剤と組み合わせた、または抗VEGF治療に応答しない患者のためを含む抗VEGF処置の代替法として、糖尿病患者の処置のために有用である。IL−6aによる黄斑浮腫の処置はまた、病理を阻害するためにいずれかの機構を完全に阻害する必要性を除去し、したがって、各サイトカインの所望の生理学的役割の一部を防止することによって、安全性を改善し得る。したがって、VEGF阻害と組み合わせた局所的IL−6a処置は、用量頻度を減少させ得、処置の有害作用を低減させ得る。
【0214】
DMEでは、硝子体IL−6レベルと、疾患重症度およびVEGF不応性被験体の両方との間に、正の相関が存在する。したがって、本明細書に記載されるIL−6aは、ステロイド治療、抗VEGF治療またはそれら両方に対して不応性であるDME被験体を処置するために使用され得る。一部の場合には、IL−6aは、例えばDMEを処置するために、抗VEGF治療またはステロイド治療と組み合わせて使用される。
【0215】
本明細書に記載されるIL−6aは、障害、例えば、がん、例えば、前立腺がん、白血病、多発性骨髄腫、炎症性疾患(例えば、慢性炎症性増殖性疾患)および自己免疫性疾患、例えば、関節リウマチ、キャッスルマン病(巨大または血管濾胞性リンパ節過形成(giant or angiofollicular lymph node hyperplasia)、リンパ様過誤腫(lymphoid hamartoma)、血管濾胞性リンパ節過形成(angiofollicular lymph node hyperplasia))、若年性特発性関節炎(多関節型若年性特発性関節炎(polyarticular juvenile idiopathic arthritis)および全身型若年性特発性関節炎が含まれる)、スチル病(若年性特発性関節炎および成人発症スチル病を包含する)、成人発症スチル病、アミロイドAアミロイドーシス、リウマチ性多発筋痛、圧痕浮腫を伴う寛解型血清反応陰性対称滑膜炎(remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema)、脊椎関節炎(spondyloarthritides)、ベーチェット病(眼の症状発現の処置を含む)、アテローム動脈硬化症、乾癬、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎(炎症性ミオパチー)、再発性多発軟骨炎、後天性血友病A、多発性硬化症、炎症による貧血、およびクローン病を処置するためにも使用され得る。
【0216】
IL−6アンタゴニストは、特定の神経性疾患、例えば、抑うつおよびアルツハイマー病の処置にも有用である。
【0217】
本明細書に記載されるIL−6aで処置され得る他の疾患には、全身性硬化症、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、移植片対宿主病およびTNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)が含まれるがこれらに限定されない。
【0218】
投薬
IL−6抗体またはその断片は、例えば、異常に高いレベルのIL−6を発現する被験体(例えば、患者)に投与され得る。この抗体またはその断片は、1回投与され得るか、または複数回投与され得る。この抗体は、例えば、1日3回から6ヶ月またはそれ超毎に1回までで投与され得る。投与は、スケジュール通り、例えば、1日3回、1日2回、1日1回、2日毎に1回、3日毎に1回、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月毎に1回、2ヶ月毎に1回、3ヶ月毎に1回および6ヶ月毎に1回であり得る。この抗体またはその断片は、ミニポンプもしくは他の経路、例えば、移植可能な緩徐放出性カプセルを介して、またはこの抗体もしくはその断片を産生するカプセル化された細胞によって、持続的に投与され得る。この抗体またはその断片は、粘膜、頬側、鼻腔内、吸入可能な、静脈内、皮下、筋内、非経口、眼内または腫瘍内経路を介して投与され得る。この抗体またはその断片は、1回、少なくとも2回、または少なくとも、状態が処置、軽減もしくは治癒されるまでの期間にわたって、投与され得る。この抗体またはその断片は、一般に、状態が存在する限りにわたって投与される。この抗体またはその断片は、一般に、本明細書に記載される医薬組成物の一部として投与される。抗体の投薬量は、一般に、0.1〜100mg/kg、0.5〜50mg/kg、1〜20mg/kgおよび1〜10mg/kgの範囲である。この抗体またはその断片の血清濃度は、任意の適切な方法によって測定され得る。本明細書に記載される特定の化合物の1つの特色は、それらが、比較的低頻度の投薬、例えば、1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回、4週間毎に1回、2週間毎に1回、8週間毎に1回、12週間毎に1回、16週間毎に1回、32週間毎に1回、1ヶ月毎に1回、2ヶ月毎に1回、3ヶ月毎に1回、または6ヶ月毎に1回を要求することである。一部の場合には、この化合物は、例えば、被験体の状態によって決定されるように、必要に応じて投与される。比較的低頻度の投薬を可能にする本明細書に記載されるIL−6アンタゴニストの特色は、少なくとも部分的には、IL−6に結合したときの緩徐なオフレート(off rate)によって達成される高い効力と、比較的高い濃度の化合物を送達する能力との組合せである。
【0219】
一部の場合には、このIL−6aは、単剤治療として投与される。他の実施形態では、このIL−6aは、メトトレキセートまたは他の疾患改変性抗関節炎薬物と随伴して投与される。
【0220】
抗体の生成
抗体IL−6aまたはその誘導体もしくは断片は、モノクローナル抗体方法論(例えば、KohlerおよびMilstein(1975年)Nature 256巻:495頁を参照のこと)などの、当該分野で公知の方法を使用して産生され得る。Bリンパ球のウイルス性形質転換または発がん性形質転換などの、モノクローナル抗体を産生するための他の技術もまた使用され得る。
【0221】
キメラまたはヒト化抗体は、当該分野で公知の方法を使用して調製されるマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて調製され得る。重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAは、目的のマウスハイブリドーマから取得され得、標準的な分子生物学の技術を使用して、非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含有するように工学的に作製され得る。例えば、キメラ抗体を創出するために、マウス可変領域は、当該分野で公知の方法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)を使用して、ヒト定常領域に連結され得る。ヒト化抗体を創出するために、マウスCDR領域は、当該分野で公知の方法(例えば、米国特許第5,225,539号、ならびに米国特許第5,530,101号;米国特許第5,585,089号;米国特許第5,693,762号;および米国特許第6,180,370号を参照のこと)を使用して、ヒトフレームワーク中に挿入され得る。
【0222】
実施形態では、本明細書に記載されるIL−6a(例えば、抗IL−6抗体またはその誘導体もしくは断片)は、ヒトIL−6に特異的に結合し得る。実施形態では、このIL−6aは、IL−6の部位II(例えば、ヒトIL−6の部位II)に特異的に結合し得る。
【0223】
一部の実施形態では、IL−6a抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。かかる抗体は、マウス免疫系ではなくヒト免疫系の部分を含むトランスジェニックまたはトランスクロモソミック(transchromosomic)マウスを使用して生成され得る。これらのトランスジェニックおよびトランスクロモソミックマウスには、「ヒトIgマウス」、例えば、HuMAb Mouse(登録商標)およびKM Mouse(登録商標)が含まれる(例えば、米国特許第5,545,806号;米国特許第5,569,825号;米国特許第5,625,126号;米国特許第5,633,425号;米国特許第5,789,650号;米国特許第5,877,397号;米国特許第5,661,016号;米国特許第5,814,318号;米国特許第5,874,299号;および米国特許第5,770,429号;米国特許第5,545,807号;PCT公開番号:WO92/03918、WO93/12227、WO94/25585、WO97/13852、WO98/24884およびWO99/45962;ならびにPCT公開番号WO01/14424を参照のこと)。
【0224】
別の一態様では、ヒト抗IL−6抗体は、導入遺伝子および導入染色体(transchomosome)上にヒト免疫グロブリン配列を保有するマウス、例えば、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入染色体を保有するマウスを使用して、惹起され得る。かかるマウスは、PCT公開番号WO02/43478に詳細に記載されている。
【0225】
ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する他のトランスジェニック動物系は、当該分野で入手可能であり、抗体IL−6aを惹起するために使用され得る。例えば、Xenomouse(商標)(Abgenix,Inc.)と呼ばれる代替的なトランスジェニック系が使用され得る;かかるマウスは、例えば、米国特許第5,939,598号;米国特許第6,075,181号;米国特許第6,114,598号;米国特許第6,150,584号;および米国特許第6,162,963号に記載されている。さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスクロモソミック動物系は、当該分野で入手可能であり、抗体IL−6aを惹起するために使用され得る。例えば、ヒト重鎖導入染色体およびヒト軽鎖導入染色体の両方を保有するマウスは、Tomizukaら(2000年、Proc Natl Acad Sci USA 97号:722〜727頁)に記載されている。ヒトモノクローナル抗体は、ヒト抗体応答が免疫化の際に生成され得るようにヒト免疫細胞が再構成されたSCIDマウスを使用しても調製され得る。かかるマウスは、例えば、米国特許第5,476,996号および米国特許第5,698,767号に記載されている。
【0226】
ファージディスプレイライブラリー
一部の場合には、抗体IL−6a抗体またはその誘導体もしくは断片は、ファージを使用してヒト抗体のライブラリーを合成し、このライブラリーをIL−6、例えば、ヒトIL−6またはその断片を用いてスクリーニングし、IL−6に結合するファージを単離し、このファージから抗体を取得することを含む方法において、産生される。
【0227】
組換えヒト抗体IL−6aは、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーをスクリーニングすることによっても単離され得る。一般に、このライブラリーは、B細胞から単離されたmRNAから調製されたヒトVLおよびVHのcDNAを使用して生成される、scFvファージディスプレイライブラリーである。かかるライブラリーを調製およびスクリーニングするための方法は、当該分野で公知である。ファージディスプレイライブラリーを生成するためのキットは、市販されている(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27−9400−01;およびStratagene SurfZAP(商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。抗体ディスプレイライブラリーを生成およびスクリーニングする際に使用され得る他の方法および試薬は、当該分野で公知である(例えば、全て参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,223,409号;PCT公開番号WO92/18619、WO91/17271、WO92/20791、WO92/15679、WO93/01288、WO92/01047、WO92/09690;Fuchsら、Bio/Technology 9巻:1370〜1372頁(1991年);Hayら、Hum Antibod Hybridomas 3巻:81〜85頁(1992年);Huseら、Science 246巻:1275〜1281頁(1989年);McCaffertyら、Nature 348巻:552〜554頁(1990年);Griffithsら、EMBO J 12巻:725〜734頁(1993年);Hawkinsら、J Mol Biol 226巻:889〜896頁(1992年);Clacksonら、Nature 352巻:624〜628頁(1991年);Gramら、Proc Natl Acad Sci USA 89巻:3576〜3580頁(1992年);Garradら、Bio/Technology 9巻:1373〜1377頁(1991年);Hoogenboomら、Nuc Acid Res 19巻:4133〜4137頁(1991年);およびBarbasら、Proc Natl Acad Sci USA 88巻:7978〜7982頁(1991年)を参照のこと)。
【0228】
所望の特徴を有するヒトIL−6抗体を単離および産生するための一例では、ヒトIL−6抗体が、参照によって本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO93/06213に記載されるエピトープインプリント法を使用して、IL−6に対する類似の結合活性を有するヒト重鎖および軽鎖配列を選択するために、最初に使用される。この方法で使用される抗体ライブラリーは、一般に、全て参照によって本明細書に組み込まれる、PCT公開番号WO92/01047;McCaffertyら、Nature 348巻:552〜554頁(1990年);およびGriffithsら、EMBO J 12巻:725〜734頁(1993年)に記載されるように調製およびスクリーニングされるscFvライブラリーである。
【0229】
初期ヒトVLおよびVHドメインが一旦選択されると、「ミックスアンドマッチ(mix and match)」実験が実施され、この実験では、初期に選択されたVLおよびVHセグメントの異なる対が、好ましいVL/VH対の組合せを選択するために、IL−6結合についてスクリーニングされる。IL−6aの望ましい特色について選択するために、選択された対のVLおよび/またはVHセグメントは、ランダムに変異され得る。このin vitro親和性成熟は、例えば、選択されたVHおよびVLドメインの一方または両方のCDRに対して相補的なPCRプライマーを使用してVHおよびVLドメインを増幅することによって達成され得、これらのプライマーは、得られたPCR産物が、ランダム変異がVHおよび/またはVL中に導入されたVHおよびVLセグメントをコードするように、特定の位置における4ヌクレオチド塩基のランダム混合物を含む。かかるランダムに変異したVHおよびVLセグメントは、IL−6への、例えば、IL−6の部位IIへの結合について、再スクリーニングされ得る。
【0230】
組換え免疫グロブリンディスプレイライブラリーからの抗体IL−6aのスクリーニングおよび単離の後、選択された抗体をコードする核酸が、ディスプレイパッケージから(例えば、ファージゲノムから)回収され得、当該分野で公知の組換えDNA技術を使用して他の発現ベクター中にサブクローニングされ得る。かかる抗体は、本明細書に記載されるものなどの抗体断片を産生するために、さらに操作され得る。
【0231】
薬物動態(PK)
PKについての試験は、本明細書に記載される方法および/または当該分野で公知の方法を使用して実施され得る。動物の使用を必要とする決定、例えば、PKの決定に対する1つの障壁は、ヒトIL−6が、かかる試験に一般に使用される一部の動物のIL−6と、50%未満の相同性を有することである。したがって、PKを試験する1つの方法は、ヒトIL−6を発現するトランスジェニックマウスを使用することである。一部の実施形態では、非ヒト霊長類が、PKを決定するために使用される。
【0232】
一部の実施形態では、抗IL6抗体は、例えば、FcRn結合のpH感受性を変更させることによって、そのPKを変更させるように変異される。かかる変異を取得する方法は、実施例に記載されている。したがって、一部の実施形態では、IL−6aは、親IL−6aまたは参照分子と比較して、変更された全身PKを有する。一部の場合には、PKは、硝子体において変更されない、または改善される。一部の実施形態では、このIL−6aは、親IL−6aまたは参照分子と比較して、低減された全身PK(例えば、例えば循環液、例えば、血液、血漿、リンパ液または血清においてアッセイされる、減少した半減期および/または増加したクリアランス)を有する。
IL−6アンタゴニストを試験するためのモデル
【0233】
IL−6アンタゴニストは、特に、処置の有効性、および有利なIL−6特性に対する限定的な有害作用について、IL−6関連送達のための疾患のモデルにおいて試験され得る。例えば、ブドウ膜炎は、完全フロイントアジュバント(CFA)免疫化において光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)を使用して、ラットまたはマウスにおける実験的自己免疫性ブドウ膜炎モデル(Caspi、Invest Ophthalmol Vis Sci 52巻:1873年;Agarwalら、900巻:443〜69頁、2012年)において試験され得る。他のモデルには、樹状細胞誘導性ブドウ膜炎、培養されたエフェクターT細胞の養子移入、IRBP TCR Tgマウスにおける自発的EAU、エンドトキシン誘導性ブドウ膜炎、自己免疫性網膜ブドウ膜炎についての、当該分野で公知のモデルが含まれる(Harutaら、Invest Ophthalmol Vis Sci 53巻:3264頁(2011年);Yoshimuraら、Rheumatology 48巻:347〜354頁(2009年))。
【0234】
IL−6関連疾患の処置におけるIL−6aの効果を試験するために使用され得る他のモデル系は、例えば、脈絡膜新生血管形成(CNV)モデル(Izumi−Nagaiら、Am J Pathol 170巻:6頁(2007年);Krzystolikら、Arch Ophthalmol 120巻:338頁(2002年))および糖尿病モデル、例えば、Kernら(Animal Models Of Diabetic Complications Consortium(P01 DK57733)、Update Report(2001年9月〜2004年1月))に記載されるモデル系である。関節リウマチにおいてIL−6aを試験するために有用な動物モデルは、当該分野で公知であり、例えば、Asquithら(Eur J Immunol 39巻:2040〜4頁(2009年))およびKolliasら(Ann Rheum Dis 70巻:1357〜62頁(2011年)を参照のこと。
【0235】
例えば、AMDおよびDMEのヒト状態のCNVモデルが、代表的である。網膜新生血管形成モデルは、例えば、虚血性網膜症、例えば、糖尿病性網膜症または未熟児網膜症を研究するために有用である。種々の脈絡膜および網膜新生血管形成モデルが、当該分野で公知であり(例えば、Grossniklaus, H.E.ら Prog Retin Eye Res. 2010年11月;29巻(6号):500〜19頁.doi: 10.1016/j.preteyeres.2010.05.003. 2010年5月19日に電子出版;Saisin, Yら(2003年)Journal of Cellular Physiology、195巻:241〜248頁;Takahashi, K.ら(2003年)Investigative Ophthalmology & Visual Science、44巻(1号):409〜415頁;Lima e Silva, R.ら(2007年)FASEB Journal、21巻:3219〜3230頁;Tobeら(1998年)American Journal of Pathology、153巻(5号):1641〜1646頁;Dong, Aら(2011年)PNAS、108巻(35号):14614〜14619頁;Dongら(2009年)J Cell Physiol 219巻:544〜552頁;Smith, LEら 1994年 Invest Ophthalmol Vis Sci 1994年;35巻:101〜111頁;Shen, J.ら(2007年)Investigative Ophthalmology & Visual Science、48巻(9号):4335〜4341頁を参照のこと)、IL−6aの有効性を調査するために使用され得る。脈絡膜新生血管形成(CNV)は、例えば、レーザー、光、手術または遺伝子改変によって誘導され得る。酸素誘導性網膜新生血管形成のモデルは、当該分野で公知であり、例えば、Smith, LEら 1994年 Invest Ophthalmol Vis Sci 1994年;35巻:101〜111頁;Shen, J.ら(2007年)Investigative Ophthalmology & Visual Science、48巻(9号):4335〜4341頁に記載されている。
【0236】
虚血/再灌流モデルもまた使用され得る。例えば、Zheng, Lら Investigative Ophthalmology & Visual Science、48巻1号、361〜367頁、2007年を参照のこと。例えば、1日目に、流体バッグに取り付けられた30ゲージ針が、麻酔されたマウスの角膜中に挿入され、眼内圧(IOP)が、およそ120mmHgに上昇して、虚血を生じさせる。30〜90分後、針が除去され、IOPが正常化され、網膜循環の再流が生じる。TNF−αおよびICAM−1を含む炎症マーカーの発現は、2〜6日目に、ウエスタンブロットおよびqPCRによって評価され得る。さらに、神経節細胞の喪失が、3〜14日目に組織学によって評価され得、毛細血管変性が、10〜14日目にトリプシン消化技術によって測定される。治療的研究のために、試験物品(例えば、1μLの適切な濃度、例えば、20mg/mLのIL6a)が、虚血の誘導の直前または直後のいずれかに、硝子体内注射される。
【0237】
組合せ治療
一部の実施形態では、IL−6aは、第2の治療的実体と組み合わせて投与される。例えば、IL−6aは、例えば、ラニビズマブなどのVEGF阻害剤を含む処置レジメンにおいて投与される。一部の実施形態では、IL−6aは、例えば、抗PDGF抗体または抗PDGF受容体抗体(例えば、イマチニブ)などのPDGF阻害剤を含む処置レジメンにおいて投与される。一部の実施形態では、IL−6aは、補体経路阻害剤、例えば、ランパリズマブ(lampalizumab)(D因子阻害剤)またはC5阻害剤と組み合わせて投与される。
【0238】
IL−6アンタゴニストの送達
本明細書に記載されるIL−6アンタゴニストまたは組成物は、IL−6阻害のために標的化されている細胞もしくは組織と直接接触して、またはかかる細胞もしくは組織の近傍のいずれかで、局所的に送達され得る。かかる送達方法の非限定的な例には、IL−6アンタゴニストを含む物質の注射、注入または移植が含まれる。
【0239】
実施形態では、このIL−6aまたは組成物は、例えば、硝子体内注射、眼科インサート(ophthalmic insert)または遺伝子送達を介して、眼内投与、例えば、硝子体内投与される。
【0240】
一部の実施形態では、このIL−6a組成物は、眼科製剤として投与される。これらの方法は、IL−6a組成物および眼科的に許容される担体の投与を含み得る。一部の実施形態では、この眼科製剤は、液体、半固体、インサート、フィルム、マイクロ粒子またはナノ粒子である。このIL−6a組成物は、例えば、外用的に、または注射(例えば、硝子体内注射)によって、投与され得る。
【0241】
一部の実施形態では、このIL−6a組成物は、硝子体内投与のために製剤化される。
【0242】
一部の実施形態では、このIL−6a組成物は、例えば眼への外用投与のために製剤化される。この外用製剤は、液体製剤または半固体であり得、例えば、外用製剤には、水性溶液、水性懸濁物、軟膏またはゲルが含まれ得る。眼科IL−6a製剤は、眼の前面、上眼瞼下、下眼瞼上、および結膜嚢中に、外用適用され得る。典型的には、この眼科製剤は無菌である。IL−6a眼科製剤は、眼科製剤の調製に適切な1種または複数の医薬賦形剤を含み得る。かかる賦形剤の例は、保存剤、緩衝剤、キレート剤、抗酸化剤、および浸透圧を調節するための塩である。軟膏および懸濁物の両方を含む眼科製剤は、典型的には、選択された投与経路に適した粘度を有する。一部の実施形態では、この眼科製剤は、約1,000から約30,000センチポアズまでの粘度を有する。
【0243】
一部の実施形態では、この製剤は、ポリマーを含む液体製剤である。かかるポリマーは、液体製剤のバイオアベイラビリティを改善し、その粘度を上昇させ、または眼からのそのドレナージを低減させるために、使用され得る。適切なポリマーには、Waghら(Asian J Pharm、2巻:12〜17頁、2008年)に記載されるポリマーが含まれるがこれらに限定されない。非限定的な例では、このポリマーは、ヒアルロン酸ナトリウム(sodium hyaluronase)、キトサン、シクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)、ポリガラクツロン酸(polygalactoronic acid)、キシログルカン、キサンタンガム、ジェランガム、チオマー(thiomer)、ポリ(オルトエステル)(例えば、Einmahl、Adv Drug Deliv Rev 53巻:45〜73頁、2001年)、またはタマリンド種子ポリサッカライド(例えば、Ghelardiら、Antimicrob Agents Chemother 48巻:3396〜3401頁、2004年)である。
【0244】
一部の実施形態では、眼科送達のためのIL−6a組成物を含む製剤は、界面活性剤、アジュバント、緩衝液、抗酸化薬、張度調整剤、防腐剤(例えば、EDTA、BAK(塩化ベンザルコニウム)、亜塩素酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、ポリクオタニウム−1(polyquaterium−1)、増粘剤または粘度改変剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、グリコール400、プロピレングリコールヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピル−グアー(hydroxpropyl−guar)、ヒアルロン酸およびヒドロキシプロピルセルロース)などのうちの1つまたは複数を含み得る。製剤中の添加剤には、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ソルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ヒマシ油および過ホウ酸ナトリウムが含まれ得るがこれらに限定されない。
【0245】
一部の実施形態では、精製水または脱イオン水が、この組成物中で使用される。pHは、約5.0から8.5の範囲内、例えば、pH7.0、pH7.3、pH、7.4またはpH7.5になるように、任意の生理学的および眼科的に許容されるpH調整性の酸、塩基または緩衝液を添加することによって調整され得る。酸の眼科的に許容される例には、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸、塩酸などが含まれ、塩基の例には、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、トロメタミン、トリスヒドロキシメチルアミノ−メタンなどが含まれる。製剤において使用され得る塩および緩衝液の例には、クエン酸塩/デキストロース、炭酸水素ナトリウム、塩化アンモニウム、ならびに上述の酸および塩基の混合物が含まれる。
【0246】
一部の実施形態では、眼科組成物の浸透圧は、約10ミリオスモル(milliosmolar)(mOsM)から約400mOsMまで、例えば、200から400mOsMまで、または220から370mOsMまでであり得る。一般に、浸透圧は、生理学的および眼科的に許容される塩または賦形剤を使用して調整され得る。一部の実施形態では、塩化ナトリウムが製剤中に含まれ、例えば、塩化ナトリウムが、組成物の総重量に基づいて、0.01重量%から1重量%まで、または0.05重量%から0.45重量%までの範囲の濃度で製剤中に存在する。カチオン、例えば、カリウム、アンモニウムなど、およびアニオン、例えば、クロライド、シトレート、アスコルベート、ボレート、ホスフェート、ビカーボネート、サルフェート、チオサルフェート、ビサルフェート、重硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムなどから構成される、1つまたは複数の塩の等価な量もまた、所望の範囲内の質量オスモル濃度を達成するために、塩化ナトリウムに加えて、またはその代わりに使用され得る。一部の実施形態では、糖、例えば、マンニトール、デキストロース、ソルビトール、グルコースなどもまた、質量オスモル濃度を調整するために使用される。
【0247】
一部の実施形態では、これらの方法は、眼の外部表面と接触した薬剤のデポーを形成または供給することを含む。デポーとは、涙または他の眼クリアランス機構によって迅速に除去されない薬剤の供給源を指す。これは、単一の適用によって、眼の外部表面上の流体中に存在する薬剤の、継続性で持続性の高い濃度を可能にする。一部の実施形態では、このデポーは、最大で8時間またはそれ超にわたって残存し得る。一部の実施形態では、この眼科デポー製剤には、水性ポリマー性懸濁物、軟膏および固体インサートが含まれるがこれらに限定されない。
【0248】
一部の実施形態では、半固体組成物は、温度、pHまたは電解質濃度が変化すると粘度の増加が生じる液体製剤中のポリマーの存在に典型的には起因して、眼への適用の際に粘度が増加する液体製剤である。このポリマーは、例えば、酢酸フタル酸セルロース(celluloseacetophthalate)、ポリアクリル酸、ジェランガム、ヒアルロン酸塩(hyaluronase)、キトサン、アルギン酸の塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)、またはエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマー(例えば、Pluronic(登録商標)、BASF;ポロクサマー)であり得る。一部の実施形態では、このポリアクリル酸は、架橋アクリル酸(例えば、Carbopol(登録商標))である。一部の実施形態では、この半固体組成物は、carbopolとエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマーとの混合物;メチルセルロースとヒドロキシエチルセルロースとの混合物;またはポリエチレングリコールとエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマーとの混合物を含む。
【0249】
一部の実施形態では、IL−6a含有眼科製剤は、軟膏またはゲルである。一部の実施形態では、この眼科製剤は、油ベースの送達ビヒクルである。例えば、この製剤は、IL−6a組成物が(例えば、0.1〜2%で)添加される石油またはラノリン基剤と賦形剤とを含み得る。一般的な基剤には、鉱油、ペトロラタムおよびそれらの組合せが含まれ得るがこれらに限定されない。一部の実施形態では、この軟膏は、下眼瞼上へのリボンとして適用される。
【0250】
一部の場合には、この眼科組成物は、眼科インサートである。実施形態では、この組成物は、眼科インサートを介して硝子体内投与される。
【0251】
例えば、この眼科インサートは、生物学的に不活性、軟質、生体内分解性(bio−erodible)、粘弾性であり、治療剤への曝露後の無菌化に対して安定、空気伝搬細菌からの感染に対して抵抗性、生体内分解性、生体適合性、および/または粘弾性である。一部の実施形態では、このインサートは、眼科的に許容されるマトリックス、例えば、ポリマーマトリックスを含む。このマトリックスは、典型的にはポリマーであり、IL−6a組成物が、マトリックス内に分散され、またはポリマーマトリックスに結合される。一部の実施形態では、薬剤は、溶解または共有結合の加水分解を介してマトリックスから緩徐に放出される。一部の実施形態では、このポリマーは、生体内分解性(可溶性)であり、その溶解速度は、その中に分散された薬剤の放出速度を制御できる。別の形態では、このポリマーマトリックスは、そこに結合したまたはその中に分散された薬剤をそれによって放出するように、加水分解などによって分解する生分解性ポリマーである。さらなる実施形態では、このマトリックスおよび薬剤は、放出をさらに制御するために、さらなるポリマー性コーティングで囲まれ得る。一部の実施形態では、このインサートは、生分解性ポリマー、例えば、ポリカプロラクトン(PCL)、エチレン/酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリウレタン、ナイロン、もしくはポリ(dl−ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、またはこれらのいずれかのコポリマーを含む。一部の場合には、薬剤は、マトリックス材料中に分散され、または重合前にマトリックス材料を作製するために使用されるモノマー組成物の中に分散される。一部の実施形態では、薬剤の量は、約0.1から約50%まで、または約2から約20%までである。生分解性または生体内分解性ポリマーマトリックスは、使用済みのインサートを眼から除去する必要がないように、使用され得る。生分解性または生体内分解性ポリマーが分解または溶解するにつれて、薬剤が放出される。
【0252】
さらなる実施形態では、この眼科インサートは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるWaghら、「Polymers used in ocular dosage form and drug delivery systems」、Asian J. Pharm.、12〜17頁(2008年1月)に記載されるものが含まれるがそれらに限定されないポリマーを含む。一部の実施形態では、このインサートは、ポリビニルピロリドン(PVP)、アクリレートもしくはメタクリレートのポリマーもしくはコポリマー(例えば、RohmまたはDegussaのEudragit(登録商標)ファミリーのポリマー)、ヒドロキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリ(アミドアミン)デンドリマー、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリエチレンオキシド、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリビニルアルコール)またはポリ(フマル酸プロピレン)から選択されるポリマーを含む。一部の実施形態では、このインサートは、Gelfoam(登録商標)を含む。一部の実施形態では、このインサートは、450kDaシステインコンジュゲートのポリアクリル酸である。
【0253】
このインサートは、IL−6a組成物および外側チューブを含有するコアを含み得る(例えば、米国特許出願公開第20040009222号に記載される)。一部の場合には、この外側チューブは、薬物に対して透過性、半透過性または不透過性であり得る。一部の実施形態では、このコアは、IL−6a組成物放出の速度に対して顕著な影響を有さないポリマーマトリックスを含む。一部の場合には、外側チューブ、コアのポリマーマトリックスまたはそれら両方が、生体内分解性である。共押出された産物は、薬物送達デバイスへとセグメント化され得る。一部の実施形態では、このデバイスは、それぞれの末端が開放している(open)ように、コーティングされず、またはこのデバイスは、例えば、IL−6a組成物に対して透過性である、IL−6a組成物に対して半透過性である、もしくは生体内分解性である層で、コーティングされる。ある特定の実施形態では、このIL−6a組成物および少なくとも1種のポリマーは、粉末形態で混合される。
【0254】
一部の実施形態では、この眼科組成物は、眼科フィルムである。かかるフィルムに適切なポリマーには、Waghら(上記)に記載されるものが含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、このフィルムは、ソフトコンタクトレンズ、例えば、エチレングリコールジメタクリレートで架橋されたN,N−ジエチルアクリルアミドおよびメタクリル酸のコポリマーで構成されたレンズである。
【0255】
ある特定の実施形態では、IL−6aは、チューブ状形態のインサート中にあり、セグメント化され得る。
【0256】
一部の実施形態では、IL−6a組成物が顆粒状形態または粒状形態であるように、このIL−6a組成物は、ポリマーマトリックスによってコーティングされたまたはポリマーマトリックス中に分散された治療有効量で製剤化される。一部の実施形態では、このIL−6a組成物は、顆粒からの薬物が、マトリックス中にまたはマトリックス内に溶解し、マトリックスを介して拡散し、周囲の生理学的流体中に放出される際に、製剤から放出される。一部の実施形態では、放出の速度は、顆粒/粒子からマトリックス中へのIL−6a組成物の溶解の速度によって主に限定される;マトリックスを介した拡散および周囲の流体中への分散のステップは、主に、放出律速ではない。ある特定の実施形態では、このポリマーマトリックスは非生体内分解性であるが、他の実施形態では生体内分解性である。例示的な非生体内分解性ポリマーマトリックスは、ポリウレタン、ポリシリコーン、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)(EVA)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの誘導体およびコポリマーから形成され得る。例示的な生体内分解性ポリマーマトリックスは、ポリ酸無水物、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリアルキルシアノアクリレート、ならびにそれらの誘導体およびコポリマーから形成され得る。
【0257】
一部の場合には、このIL−6a組成物は、コラーゲン性材料中に製剤化される。例えば、インサートは、可溶性眼科薬物インサート(例えば、薬物送達のために上部結膜嚢中に導入され得るポリマー性卵形フィルム;楕円形インサート、例えば、エチレン酢酸ビニル製のOCUSERT(登録商標)(Alza Corporationが開発したピロカルピン眼治療システム);セルロース製の棒形状のインサート、Lacrisert(登録商標);ポリ(ビニルアルコール)製のNew Ophthalmic Drug Delivery Systems(NODS);またはFabrizio(Adv Drug Deliv Rev 16巻:95〜106頁、1998年)に記載されるものなどのインサート、であり得る。一部の場合には、このインサートは、コラーゲン、ゼラチンまたはポリマーを含み、このポリマーは、ポリカプロラクトン(PCL)、エチレン/酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリウレタン、ナイロン、ポリ(dl−ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、またはこれらのいずれかのコポリマーから選択される。一部の場合には、このインサートは、上眼瞼下に移植される。一部の場合には、このインサートは、後眼部中に、脈絡膜空間中に、または強膜中に移植される。一部の実施形態では、このインサートは、硝子体内または網膜下に移植される。一部の実施形態では、このインサートは、網膜下注射される。投与の方法およびそれらの調製のための技術は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるRemington’s: The Practice of Science of Pharmacy、第20版(Lippincott Williams & Wilkins、2006年)に示される。
【0258】
他の実施形態では、IL−6a組成物を含有するインサートは、眼の硝子体への薬剤の徐放を提供する。本明細書で使用する場合、「徐放」とは、その組成物が、制御された様式で延長された期間にわたって薬剤を放出することを意味する。一部の実施形態では、このインサートは、眼房水薬剤濃度が、放出の間、硝子体薬剤濃度未満のままであるような速度で薬剤を放出する。一部の実施形態では、この眼房水薬剤濃度は、約0.002μg/mLから約0.01μg/mLまで、または約0.01μg/mLから約0.05μg/mLまで、または約0.05μg/mL未満である。一部の実施形態では、この薬剤は、約1μg/日から約50μg/日まで、または約1μg/日から約10μg/日までの速度で放出される。一部の実施形態では、このインサートは、上で詳述したようなさらなる治療剤、例えば、フルオシノロンアセトニド(眼科インサートRetisert(登録商標)中で見出されるものなど)をさらに含む。
【0259】
一部の実施形態では、この眼科組成物は、ミクロスフェアまたはナノ粒子を含む。一部の実施形態では、このミクロスフェアは、ゼラチンを含む。一部の実施形態では、このミクロスフェアは、後眼部に、脈絡膜空間中に、強膜中に、硝子体内に、または網膜下に注射される。一部の実施形態では、このミクロスフェアまたはナノ粒子は、Waghら(Asian J Pharm 2巻:12〜17頁、2008年)に記載されるものなどが含まれるがこれらに限定されないポリマーを含む。一部の実施形態では、このポリマーは、キトサン、ポリカルボン酸、例えば、ポリアクリル酸、アルブミン粒子、ヒアルロン酸エステル、ポリイタコン酸、ポリ(ブチル)シアノアクリレート、ポリカプロラクトン、ポリ(イソブチル)カプロラクトン、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)またはポリ(乳酸)である。一部の実施形態では、このミクロスフェアまたはナノ粒子は、固体脂質粒子を含む。
【0260】
一部の実施形態では、IL−6a組成物は、イオン交換樹脂を含む。一部の実施形態では、このイオン交換樹脂は、無機ゼオライトまたは合成有機樹脂である。一部の実施形態では、このイオン交換樹脂には、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるWaghら、上記に記載されるものが含まれるがそれらに限定されない。一部の実施形態では、このイオン交換樹脂は、部分的に中和されたポリアクリル酸である。
【0261】
IL−6a組成物は、水性ポリマー性懸濁物中で提供され得る。一部の実施形態では、このIL−6a組成物またはポリマー性懸濁剤は、水性媒体(例えば、上記特性を有する)中に懸濁される。ポリマー性懸濁剤の例には、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrolidone)、ポリサッカライドゲル、Gelrite(登録商標)、セルロース由来ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキシ含有ポリマー、例えば、アクリル酸のポリマーまたはコポリマー、ならびに他のポリマー性粘滑薬が含まれるがそれらに限定されない。一部の実施形態では、このポリマー性懸濁剤は、水膨潤性の水不溶性ポリマー、特に、架橋カルボキシ含有ポリマーである。一部の実施形態では、このポリマー性懸濁剤は、存在するモノマーの総重量に基づいて、少なくとも約90重量%から約99.9重量%まで、または約95重量%から約99.9重量%の、1つまたは複数のカルボキシ含有モノエチレン性(monoethylenically)不飽和モノマーを含む。一部の実施形態では、このカルボキシ含有モノエチレン性不飽和モノマーには、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸(ethacrylic acid)、メチルアクリル酸(クロトン酸)、シス−アルファ−メチルクロトン酸(アンゲリカ酸)、トランス−α−メチルクロトン酸(チグリン酸)、α−ブチルクロトン酸、アルファ−フェニルアクリル酸、α−ベンジルアクリル酸、α−シクロヘキシルアクリル酸、フェニルアクリル酸(ケイ皮酸)、クマル酸(o−ヒドロキシケイ皮酸)およびウンベル酸(umbellic acid)(p−ヒドロキシクマル酸)が含まれる。一部の実施形態では、このポリマーは、多官能性架橋剤(例えば、二官能性架橋剤)によって架橋される。一部の実施形態では、この架橋剤は、存在するモノマーの総重量に基づいて、約0.01%から約5%まで、または約0.1%から約5.0%まで、または約0.2%から約1%までの量で含まれる。一部の実施形態では、この架橋剤は、非ポリアルケニルポリエーテル二官能性架橋モノマー、例えば、ジビニルグリコール、2,3−ジヒドロキシヘキサ−1,5−ジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、ジビニルベンゼン、N,N−ジアリルアクリルアミド、N,N−ジアリルメタクリルアミド(N,N−diallymethacrylamide);少なくとも4つの炭素原子および少なくとも3つのヒドロキシル基を含有する多価アルコールをアルケニルハライド、例えば、臭化アリルなどでエーテル化することによって調製された、1分子当たり2またはそれ超のアルケニルエーテル基、例えば、末端H
2C=C基を含むアルケニルエーテル基を含むポリアルケニルポリエーテル架橋剤、例えば、ポリアリルスクロース、ポリアリルペンタエリスリトールなど;約400から約8,000までの分子量を有するジオレフィン性非親水性マクロマー性架橋剤、例えば、ジオールおよびポリオールの不溶性ジアクリレートおよびポリアクリレートならびにメタクリレート、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオールまたはポリシロキサンジオールに由来するイソシアネート終結プレポリマーの、ヒドロキシアルキルメタクリレートとのジイソシアネートヒドロキシアルキルアクリレートまたはメタクリレート反応産物などである。
【0262】
一部の実施形態では、これらの架橋ポリマーは、架橋剤(単数または複数)と一緒に、存在する唯一のモノエチレン性不飽和モノマーとしてのカルボキシ含有モノエチレン性不飽和モノマー(単数または複数)から作製される。一部の実施形態では、これらのポリマーは、カルボキシ含有モノエチレン性不飽和モノマー(単数または複数)の最大で約40重量%、好ましくは約0重量%から約20重量%が、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、例えば、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレートなど、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドンなどを含む、生理学的および眼科的に無害な置換基のみを含む1つまたは複数の非カルボキシル含有モノエチレン性不飽和モノマー(単数または複数)で置き換えられているポリマーである(例えば、Muellerら、米国特許第4,548,990号)。一部の実施形態では、これらのポリマーには、ポリカルボフィル(Noveon AA−1)、Carbopol(登録商標)およびDuraSite(登録商標)が含まれる。一部の実施形態では、これらの架橋ポリマーは、従来のフリーラジカル重合触媒を使用して、等価な球の直径で約50μm以下の乾燥粒子サイズまで、モノマーを懸濁重合またはエマルジョン重合させることによって調製される。一部の実施形態では、平均乾燥粒子サイズは、等価な球の直径で、約1から約30μmまで、または約3から約20μmまでである。一部の実施形態では、これらのポリマー粒子は、より大きいポリマー粒子を機械的に製粉することによって取得される。さらなる実施形態では、かかるポリマーは、約250,000から約4,000,000まで、および3,000,000,000から4,000,000,000までの分子量を有する。他の実施形態では、架橋ポリマーの粒子は単分散であり、これは、粒子の少なくとも約80%、約90%または約95%が、主要粒子サイズ分布の1μmバンド内に入るような粒子サイズ分布をそれらが有することを意味している。さらなる実施形態では、単分散粒子サイズとは、約20%、約10%または約5%以下の、1μm未満のサイズの粒子が存在することを意味している。一部の実施形態では、この水性ポリマー性懸濁物は、約0.05から約1%まで、約0.1から約0.5%まで、または約0.1から約0.5%までの薬剤、および約0.1から約10%まで、約0.5から約6.5%まで、約0.5から約2.0%まで、約0.5%から約1.2%まで、約0.6から約0.9%まで、または約0.6から約0.8%までのポリマー性懸濁剤を含む。単数形で言及されていても、ポリマー性懸濁剤の1または複数の種が、述べられた範囲内に入る総量で使用され得ることを理解すべきである。一実施形態では、不溶性の軽く架橋されたポリマー粒子の量、pHおよび浸透圧は、互いに相関し、ならびに25番スピンドルおよび13R小試料アダプターを備えたBrookfield Digital LVT Viscometerを12rpmで使用して、室温(約25℃)で測定したとき、約500から約100,000センチポアズまで、好ましくは約1,000から約30,000センチポアズまで、または約1,000から約10,000センチポアズまでの範囲の粘度を有する組成物を得るための架橋の程度と相関する。一部の実施形態では、この粘度は、約10から約400センチポアズまで、約10から約200センチポアズまでまたは約10から約25センチポアズまでである。
【0263】
一部の実施形態では、これらの水性ポリマー性懸濁物は、眼への投与の前にそれらが有したのと同じまたは実質的に同じ、眼における粘度を保持するように、製剤化され得る。一部の実施形態では、これらは、涙液との接触の際に増加したゲル化が存在するように、製剤化され得る。例えば、DuraSite(登録商標)または他の類似のポリアクリル酸型ポリマーを含む製剤が、約6.7未満のpHで眼に投与される場合、涙液はより高いpH(およそ7)を有するので、このポリマーは、涙液と接触した際に、膨潤し得る。このゲル化またはゲル化における増加は、懸濁された粒子の捕捉をもたらし得、それによって、眼における組成物の滞留時間を延長させる。一部の実施形態では、薬剤は、懸濁された粒子が経時的に溶解するにつれて、緩徐に放出される。一部の実施形態では、この送達経路は、患者の快適さを増加させ、眼組織との薬剤接触時間を増加させ、それによって、眼における薬物吸収の程度および製剤の作用の持続時間を増加させる。これらの薬物送達系中に含まれる薬剤は、薬物自体およびその物理的形態、薬物負荷の程度、および系のpHなどの因子に依存する速度で、ならびにこれもまた存在し得る、眼表面と適合性の任意の薬物送達アジュバント、例えばイオン交換樹脂に依存する速度で、ゲルから放出される。
【0264】
一部の実施形態では、IL−6アンタゴニストは、遺伝子送達、例えば、局所的遺伝子送達を使用して被験体に提供される。かかる送達は、一過的発現系、安定な(例えば、組み込まれた)発現系、例えば、Bluebird Bio(Cambridge、MA)によって製造されたレンチウイルス送達系、またはNeurotech(Cumberland、Rhode Island)によって製造されたものなどの細胞工場(cell factory)中での送達を介してであり得る。
【0265】
全ての技術的特色は、かかる特色の全ての可能な組合せで個々に組み合わされ得る。
【0266】
均等物
本発明は、その精神または本質的特徴から逸脱することなしに、他の具体的な形態で具体化され得る。したがって、上述の実施形態は、全ての観点において、本明細書に記載される発明に対する限定ではなく例示とみなされるべきである。
【実施例】
【0267】
以下の非限定的な実施例は、本明細書に記載される発明の実施形態をさらに説明する。
【0268】
(実施例1)
脈絡膜新生血管形成(CNV)モデルにおける局所的IL−6遮断の検証
局所的IL−6遮断が、眼疾患、例えば、糖尿病性黄斑浮腫(DME)またはウエット型AMDを処置するために有効であり得るかどうかを決定するために、抗IL−6抗体を、脈絡膜新生血管形成のモデル系を使用して局所投与した。レーザー誘導性CNVモデル(eyecro.com/in−vivo/laser−induced−choroidal−neovascularization−cnv/)は、炎症および血管形成を含む、DMEの基礎をなす病理的プロセスの多くを再現する。研究を、EyeCRO(Oklahoma City、OK)においてラットにおいて実施した。各群中の6匹の動物は、0日目に両側性レーザー処置を受けて、眼1つ当たり3つの病変を生じた。3日目および10日目に、3μgのポリクローナル抗ラット−IL−6抗体(R&D Systems AF506;Minneapolis、MN)を、硝子体内(IVT)注射によって試験群に投与し、PBSまたは抗VEGFポリクローナル抗体(R&D Systems AF564)を、それぞれ、ビヒクル群および陽性対照群に投与した。in vivo血管造影を15日目および22日目に実施して、病変面積を測定した。15日目および22日目の両方で、抗IL−6処置群は、ビヒクル対照と比較して、有意に低減された新生血管形成を有した。抗IL−6処置群と抗VEGF陽性対照との間には、応答における有意差は存在しなかった。
図1は、かかる実験の結果を示す。これらのデータは、IVT投与したIL−6a、例えば抗IL6抗体が、抗VEGF陽性対照と類似のレベルまで、ラットCNVモデルにおける新生血管形成を低減させ得ることを実証している(抗IL−6対ビヒクル対照について、15日目にp=0.0054、22日目にp=0.0005)。
【0269】
これらのデータは、IL−6の局所的遮断が、眼疾患、例えば、脈管漏出が関与する疾患、例えば黄斑浮腫を処置するために有用であり得ることを示している。
【0270】
(実施例2)
候補抗体IL−6アンタゴニスト
候補抗体IL−6アンタゴニストを、最初に免疫化を伴うプロセスを使用して開発した。免疫化は、医薬品開発受託機関(CRO)が、本発明者らの指示で実施した。5匹のBALB/Cマウスに、フロイントアジュバント(Freud’s adjuvant)と共に、1M NaClを含むPBS中80μgのヒトIL−6(R&D Systems、カタログ番号206−IL/CF、Minneapolis、MN)を皮下注射した。2回の追加免疫を、80μgおよび50μgのIL−6を用いて実施した。脾臓細胞を、最も高い力価のマウスから回収し、P3x763Ag8.653骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマを形成した。
【0271】
ハイブリドーマ上清を、IL−6結合および拮抗作用についてスクリーニングした。結合ELISAのために、Costar 9018プレートを、PBS中1μg/mLのヒトIL−6で、4℃で一晩コーティングした。ウェルを、2%BSAを含有するPBSでブロッキングし、洗浄し、次いで、2%BSAを含有するPBSで1:2希釈した各ハイブリドーマ上清50μLと共にインキュベートした。60分後、ウェルを、0.1%Tween−20を含有するPBS 300μlで3回洗浄した。次いで、PBS−BSA中に1:3000希釈した抗マウス−HRPを各ウェルに添加し、30分間インキュベートした。ウェルを、上記のように洗浄し、次いで、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)基質を添加し、450nmおよび550nmでシグナルを測定した。拮抗作用研究のために、HEK−Blue(商標)−IL6レポーター細胞(InvivoGen、San Diego、CA)を、1:10希釈したハイブリドーマ上清の存在下で漸増濃度のヒトIL−6と共にインキュベートした。20〜24時間後、20μlの上清を、180μlのQuantiBlue(商標)(InvivoGen)と混合し、吸光度を655nmで測定した。
【0272】
結合研究および拮抗作用研究に基づいて、本出願人らは、ハイブリドーマ64をリードとして選択し、CROにおいてサブクローニングした。ハイブリドーマ64(マウスモノクローナル)を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して、gp130へのIL−6/IL−6Rα複合体の結合を阻害する能力について、さらに試験した。1.5μg/mlの濃度のハイブリドーマ64は、ELISAによる、固定化されたgp130へのIL−6/IL−6Rα複合体の結合を、有意に低減させた(
図2)。
【0273】
これらのサブクローンを再スクリーニングし、サブクローン64.58の可変ドメインを、5’RACE PCRによって増幅し、配列決定した。マウス可変ドメイン配列(m64と呼ぶ)は、以下の通りである:
【化4】
【0274】
ヒト化配列を創出するために、m64相補性決定領域(CDR)を、コンピューターアルゴリズムによってマウス配列との類似性について選択されたヒト生殖系列フレームワーク中に移植した。ヒト化配列(h64と呼ぶ)は、以下の通りであり(m64配列と比較して変更された残基に下線を付す)、マウス配列と約79.5%の同一性(VH)および84.4%の同一性(VL)を有する:
【化5】
【0275】
これらのヒト化配列を、DNA2.0(Menlo Park、CA)によって合成し、次いで、ヒトIgG1定常ドメインとの直列融合物として、pcDNA3.1由来発現ベクター中にクローニングした。IgGを、一過的トランスフェクションによってFreestyle(商標)−293細胞(Invitrogen、Grand Island、NY)において発現させ、プロテインAクロマトグラフィーによって精製した。結合研究および拮抗作用研究の両方において、h64 IgGは、そのm64先祖と比較して、かなり低減された効力を実証した。したがって、酵母ディスプレイを利用して、喪失した親和性を回復させた。
【0276】
ヒト化h64IgGの親和性を回復または改善するように設計された親和性成熟を実施するために、h64抗体配列を再クローニングして、pYC2/CT由来酵母ベクター中でFab分子を生成し、このとき、FabH鎖を、(G4S)3リンカー(配列番号29)を介して抗FITC scFv 4m5.3に融合させた。次いで、h64バリアントのライブラリーを、Chaoら(2006年、Nature Protocols、1巻:755〜768頁)のプロトコールに従ってエラープローンPCRによって生成した。h64バリアントを発現させ、FITC−PEG−NHSで標識した酵母によって表面捕捉し、次いで、ビオチン化ヒトIL−6と共にインキュベートした。結合したIL−6を、ストレプトアビジン−APCを用いて検出し、ディスプレイされたFabの量に対して、最も高い量の結合したIL−6を有する細胞を、BD FACSAria(商標)セルソーターで選択した。4ラウンドの選択の後、より高い親和性のバリアントの集団を選択し、配列決定した。親和性成熟によって選択されたクローン(h64−1.4と呼ぶ)の配列は、太字の選択された変異(即ち、h64 VHおよびVLの配列と比較して変異した)を伴って以下の通りであり、CDRに下線を付す。これらは、018(ならびに以下に記載される020および029 IL−6a分子)の可変ドメインである。完全Fabは、CKおよびIgG1 CH1ドメインを含むことに留意のこと。本出願に関して、「Fab」重鎖または軽鎖アミノ酸配列に対する言及は、配列が、軽鎖由来配列および重鎖由来配列からなる機能的なFabの一部であり得ることを意味している。
【化6】
【0277】
これらのh64−1.4可変ドメインを、pcDNA3.1ヒトIgG1ベクター中に再クローニングし、Freestyle(商標)−HEK293細胞(Life Technologies)において全長IgG1として発現させた。得られた精製されたIgGは、結合研究および細胞拮抗作用研究の両方において、元のh64抗体よりも顕著に強力であった。酵母系を使用して親和性を試験したところ、親和性は、元のヒト化分子についての343pMから、43pMまで増加した。アンタゴニスト効力は、HEK−Blue細胞系を使用してアッセイした場合、約10倍の増加であった。
【0278】
h64−1.4 IgGを、眼性適応症および他の適応症における使用のために、Fabとして再形式化した。さらに、別のラウンドのライブラリー生成および酵母ベースの選択を実施して、親和性をさらに改善した。4ラウンドの選択後、A79V変異を有するVHバリアントについての顕著な富化が存在した。A79Vバリアントを含む抗体、そのバリアントおよび断片を、019 IL−6a抗体、そのバリアントおよび断片と呼ぶ。
【0279】
(実施例3)
形式選択
抗体ベースのIL−6アンタゴニストに適切な形式を調査するために、上記のように選択したIL−6抗体を、Fab、scFv(V
H−V
L)およびscFv(V
L−V
H)形態の018配列を使用して、一過的発現、安定性、凝集特性、結合親和性およびIC50について試験した。
【0280】
候補IL−6a分子(018可変領域を含有する配列)のうちの1つについてのこれらの研究の結果を、表1に示す。
【表1-4】
【0281】
これらのデータは、種々の形式の抗体ベースのIL−6アンタゴニストの重要な特色を同定する方法を実証しており、018可変領域を含有するIL−6アンタゴニストについて、018Fab形式が、scFv構成と比較して、ほとんどの重要なカテゴリー、即ち、発現、安定性、凝集および結合親和性において、最も好ましい特色を有することを示している。018 FabのIC50は、治療的使用のための合理的な範囲内に入る。
【0282】
(実施例4)
IL−6a抗体、断片および誘導体の例
本出願人らは、本明細書に記載される方法を使用して以下の配列を同定した。下線を付した配列は、重鎖および軽鎖のCDRを示す。他の配列は、本明細書を通じて見出され得る。
【0283】
IgG1フレームワーク中の018重鎖(全長;fl018HC)ポリペプチド配列
【化7】
IgG1フレームワーク中の018重鎖(全長;fl018HC)核酸配列
【化8】
IgG1フレームワーク中の018 Fab重鎖(018FabHC)ポリペプチド配列。CDRに下線を付す
【化9】
018全長軽鎖(fl018LC)ポリペプチド配列。CDRに下線を付す
【化10】
これは、020および029 IL−6アンタゴニストについての軽鎖配列でもある。
IgG1フレームワーク中の018全長軽鎖(018LC)核酸配列
【化11】
019 Fab重鎖(019FabHC、A79V(太字/イタリック)を除き、018FabHCと同じ配列)
【化12】
019 VH(可変領域/019HC)
【化13】
019抗体軽鎖(019LC)配列(ポリペプチドおよび核酸)は、018LCと同じである。
【化14】
【0284】
(実施例5)
エピトープおよび構造マッピング
エピトープマッピング
機能的エピトープマッピングを、選択された候補IL−6アンタゴニストに対して実施した。候補抗体(マウス64抗体)は、ELISAにおいてIL−6へのIL−6Rαの結合を低減させなかったことが見出され、このことは、この候補抗体が部位Iに結合していないことを示している。さらなる実験を実施したところ、キメラマウス64抗体が、ELISAにおいてgp130へのIL−6/IL−6Rα複合体の結合を低減させたことが実証され、このことは、IL−6の部位IIまたは部位IIIのいずれかが、この抗体に対する結合部位を有したことを示している。マウス64抗体は、IL−6への公知の部位III結合性抗体AH−65(Immunotech、Marseille、France)の結合を顕著に遮断しないこともまた見出され、このことは、この候補抗体がIL−6の部位IIに結合することを示している。これらのデータは、部位IIに対する抗体が生成され得ることを実証し、かかる抗体を同定する方法を実証している。
【0285】
エピトープをさらに規定するために、IL−6中の変異を、4m5.3への融合物として、酵母において生成した(Boderら、2000年、Proc Natl Acad Sci USA 97巻、10701〜10705頁;Chaoら、2006年、Nat Protoc 1巻、755〜768頁)。発現させた変異は、以下の単一または二重変異を有するヒトIL−6中にあった:R24E/D27E、R30E、Y31E、D34R、S118R/V121E、W157E、Q159E/T162P、K171EおよびR179E。発現させた変異したIL−6分子を、018(Fab)との結合研究において使用した。018(Fab)に対する低減された親和性は、R24E/K27E、Y31E、D34RおよびS118R/V121Rについて観察され、その全てが、IL−6の部位II中に位置している。したがって、本明細書に記載される発明は、ヒトIL−6の24位、27位、31位、34位、118位および121位またはIL−6中の等価な部位におけるアミノ酸のうち少なくとも1、2、3、4、5または6個に結合する抗体を含む。
【0286】
部位IIエピトープの構造的規定
以下の距離を計算して、部位IIを構造的に規定した。計算は、IL−6/IL−6α/gp130ヘキサマー結晶構造、PDB 1P9Mに基づく(Boulangerら、2003年、Science 300巻:2101〜2104頁)。IL−6のヘリックス1は、部位Iと部位IIとの間に及び、部位IIの近くにあるが部位Iの方向を指す側鎖を有する特定の残基、例えば、R30を生じる。D2およびD3とは、IL−6Rαの細胞外ドメインを指す。
【0287】
IL−6の以下のアミノ酸は、gp130−D2−D3の5Å以内に入ると決定された:L19、R24、K27、Q28、R30、Y31、D34、E110、Q111、R113、A114、M117、S118、V121、Q124、F125およびK128
【0288】
以下のアミノ酸は、gp130−D2−D3の7Å以内に入ると決定された:L19、E23、R24、I25、K27、Q28、I29、R30、Y31、D34、K41、Q102、E109、E110、Q111、A112、R113、A114、V115、Q116、M117、S118、K120、V121、L122、Q124、F125およびK128。
【0289】
したがって、分子、例えば、部位IIの5Å以内または7Å以内に入るIL−6アミノ酸のうちの1つまたは複数に結合できる抗体またはその断片は、IL−6aであり得る。
【0290】
ヒトIL−6の配列を、参照のために以下に提供する(下線を付した配列はリーダー配列である)。gp130−D2−D3の7Å以内のアミノ酸は、イタリックである。アミノ酸番号付け、例えば、エピトープを規定するために使用した変異は、リーダー配列なしである:
【化15】
【0291】
h64−1.4ヒト化抗体のFab断片を試験する実験を実施したところ、この抗体が、部位II標的化に起因して、シスIL−6シグナル伝達およびトランスIL−6シグナル伝達の両方を遮断することができたことが実証された。Fab断片の効力は、可溶性IL−6受容体(sIL−6R)の存在下で変化しなかった。これは、sIL6Rの存在下で減少した効力を有し、シスシグナル伝達のみを遮断する抗IL−6R IgGとは対照的である。
【0292】
これらの実験は、部位IIを標的化する抗体または抗体の断片、例えばFab断片が、Il−6のシスシグナル伝達およびトランスシグナル伝達の両方を阻害するために使用できることを実証している。
【0293】
(実施例6)
霊長類研究
非霊長類活性は、霊長類の活性とは大きく異なり得るので、候補IL−6アンタゴニストは、典型的には、非ヒト霊長類を使用してPKおよび他のパラメーターについてさらに評価される。ヒトIL−6は、7つの部位においてカニクイザルおよびアカゲザルのIL−6とは異なり、そのうちの1つは、部位II中にあり(アミノ酸28)、アフリカミドリザルIL−6の部位IIにおいて同じである。これは、約1/3〜1/4にだけ、018配列を含む抗体の結合を減少させるようである。非ヒト霊長類IL−6に結合する能力は、IL−6アンタゴニストの有用な特色であり、例えば、非ヒト霊長類における毒性学試験などの試験を可能にすることによって、薬物としてのこの候補の開発を促進する。
【0294】
ほとんどのIL−6抗体と同様に、本明細書に記載される抗IL−6抗体は、低い配列相同性に起因して、げっ歯類、ウサギまたはイヌのIL−6とは交差反応しなかった。しかし、親和性研究において、018 Fabは、ほとんどヒトにおける親和性で、カニクイザルおよびアフリカミドリザルのIL−6に結合することが見出された(表2)。
【表2】
【0295】
これらのデータは、特異的に結合する本明細書に記載されるIL−6aの能力、ならびに適切な動物における例えば毒性学についての試験および再現研究を可能にする特性を有する分子を開発する能力をさらに実証している。
【0296】
(実施例7)
IL−6aの漸増する発現
018 Fabおよび019 Fabポリペプチドの発現を増加させるために、当該分野で公知の方法を使用して、CH1/ヒンジ領域において重鎖に5つのさらなるアミノ酸(DKTHT(配列番号30))を導入する構築物を作製した。変更された018Fab重鎖の配列は、配列番号24として以下に示される。変更された018配列は、本明細書で020と呼び、変更された019配列は、本明細書で021と呼ぶ。020分子(020Fab重鎖および018Fab軽鎖)は、018Fab重鎖および018Fab軽鎖を有する親Fabと比較して、改善された発現を有した。019分子は、020分子と比較して、有意な親和性の差異を示さなかった。020および019の両方の発現は、それぞれ約2倍増加し、親和性は、この変更によって影響を受けなかった。
020重鎖(カルボキシ末端にDKTHT(配列番号30)を有するFab))
【化16】
【0297】
020Fabを使用したIL−6拮抗作用を、HEK−Blue(商標)IL−6レポーター細胞(InvivoGen、San Diego、CA)において測定した。細胞を、50nMのIL−6Rαありまたはなしで、10pMのIL−6と変動する濃度の020またはIL−6Rα抗体(Cell Sciences、Canton、MA)のいずれかとの混合物中で、インキュベートした。20〜24時間のインキュベーション後、20μLの細胞培養物上清を、180μLのQuantiBlue(商標)(InvivoGen)基質と混合し、1時間インキュベートした;次いで、吸光度を655nmで測定した。
図3Aおよび
図3Bは、これらの実験からのデータを示しており、IL−6Rの存在下または非存在下でIL−6活性を阻害する020の能力を実証している。
【0298】
(実施例8)
IgG2 IL−6抗体
018を、当該分野で公知の方法を使用して、ヒトIgG2アイソタイプフレームワークへと再形式化して、IgG1形式の抗体と比較して、FcγR結合を低減させ、ADCCを低減させた。さらに、018を全長形式、例えばIgG2に再形式化することは、分子のより大きいサイズに起因して、硝子体からのクリアランスの速度を減少させると予測される。
【0299】
抗IL6 IgG2抗体の構築/精製
上記抗IL−6配列を使用してヒトIgG2抗体を構築するために、ヒトIgG2定常ドメインを、それぞれN末端およびC末端にNheIおよびMluI制限部位を伴って、cDNAからPCR増幅した。PCR産物を精製し、NheIおよびMluI制限酵素を用いて消化し、次いで、抗IL6可変ドメイン、即ち、配列番号1(上を参照のこと)を含むpTT5ベクター中にライゲーションした。これにより、全長IgG2重鎖配列が得られた。018配列を含む全長軽鎖を含むプラスミドを使用して、軽鎖を提供した。
【0300】
FcRn結合をさらに低減させ、それによって、IL−6aのリサイクルを低減させるために、重鎖中に点変異を作成した。これらの変異は、QuikChange(登録商標)変異誘発(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)によって作成した。重鎖および軽鎖プラスミドを、ポリ(エチレンイミン)(PEI)を使用して、HEK293−6E細胞の100mLの一過的培養物中に共トランスフェクトし、約5日間培養して発現を可能にした。これにより、抗IL−6部位II結合部分およびIgG2構造を含む抗体が生成された。018のCDRを含むかかる構造は、本明細書で018IgG2または029と呼ぶ。点変異は、残基I253において作成した。
【0301】
IgG2分子は、十分に発現され、020Fabと比較して僅かに改善された効力で、細胞アッセイにおいてIL−6を遮断する。
【化17】
【0302】
変更されたFcRn結合
IL−6は、特定の肯定的な全身作用を有し得る。したがって、硝子体中での良好な保持を有するが、限定的な全身半減期を有するIL−6aを工学的に作製することが、有利である。FcRn結合の低減または排除は、循環中に逃れる任意の薬物の全身蓄積を低減させ、それによって、IL−6aの安全性を改善するはずである。
【0303】
したがって、FcRn媒介性の輸送は、眼からの抗体の流出を増加させ得るので、020 IgG2をさらに改変して、残基I254、H311またはH436(配列番号23を参照のこと)(Martinら、Molecular Cell、7巻:4号、867〜877頁(2001年)に従う番号付け)においてFc変異を導入することによって、FcRn結合を消失させた。変異した部位は、配列番号23中で太字で示される;I254を、AまたはRに変異させ、H311を、AまたはEに変異させ、H311を、Tに変異させたD313と共にNに変異させ、H436を、Aに変異させた(番号付けは、配列番号23中で下線を付したリーダー配列の後に始まる)。かかる配列を含むIL−6アンタゴニストを、018IgG2mと呼ぶ。
【0304】
変異部位(太字)を示す抗IL−6重鎖(IgG2)(通常のフォント:VH;イタリックのフォント:CH)(リーダー配列なし)
【化18】
【0305】
変異部位(太字)を示す抗IL−6重鎖(IgG2)(通常のフォント:VH;イタリックのフォント:CH)、リーダー配列(下線を付した)あり
【化19】
【0306】
したがって、一部の実施形態は、Nに変異したH311と共に、I254における変異(例えば、AまたはR)、H311における変異(AまたはEに変異した)、H436における変異(Aに変異した)、またはD313における変異(Tに変異した)を有する、配列番号23に示される重鎖配列を有する抗体を含む。
【0307】
したがって、配列番号25は、I133(例えば、I133AまたはI133R)、H190(例えば、H190AまたはH190E)、H315(例えば、H315A)、またはH190と共にD192(例えば、H190Nと共にD192T)において変異させた場合、その配列を含まない親または他の参照分子と比較して、低いpH、例えば、pH5.5もしくはリソソームpHにおける低減されたFc結合を有するポリペプチドおよび/または低減された全身半減期を有するポリペプチドを産生するために、抗体、その断片または誘導体において使用され得る配列を提供する。
【化20】
抗IL−6軽鎖(IgG2)(通常のフォント:VK;イタリックのフォント:CK)
【化21】
【0308】
(実施例9)
製剤安定性
抗IL−6/IgG1 Fab断片(IgG1CH1ドメインを含む)の安定性を、示差走査型蛍光定量を使用して、PBS中で最初に、次いで一定範囲の緩衝液および賦形剤中で、T
mを決定することによって試験した。クエン酸緩衝液、pH5.5は、T
mを80℃超まで増加させることが見出された。したがって、一部の実施形態では、IL−6aは、クエン酸緩衝液中に提供され、一部の場合には、少なくとも80℃のT
mを有する。
【0309】
SEC−MALSを使用して凝集を試験したところ、リン酸緩衝食塩水(PBS)中20mg/mlで、凝集は観察されなかった。
【0310】
(実施例10)
増強されたPKのためのpH感受性抗体
IL−6は、特定の肯定的な全身作用を有し得る。したがって、硝子体中での良好な保持を有するが、限定的な全身半減期を有するIL−6aを工学的に作製することが、有利である。FcRn結合の低減または排除は、循環中に逃れる任意の薬物の全身蓄積を低減させ、それによって、IL−6aの安全性を改善するはずである。したがって、FcRn媒介性の輸送は、眼からの抗体の流出を増加させ得るので、020 IgG2をさらに改変して、残基I253、H310またはH435(Martinら(Molecular Cell、7巻:4号、867〜877頁(2001年))に従う番号付け)においてFc変異を導入することによって、FcRn結合を消失させた。かかる抗体は、本明細書でIL−6pH抗体または抗IL−6pHと呼ばれ、以下にさらに記載される。
【0311】
pH感受性結合を有する抗体の生成
ヒスチジンのpKaは、約6.0であり、結合界面において挿入されたヒスチジンは、低pHにおける側鎖プロトン化の際に結合を妨害し得る。本明細書に記載される抗IL−6部位II標的化抗体を使用して、018由来のCDRのヒスチジンリッチバリアントを含むライブラリーを生成し、このライブラリーを、酵母ディスプレイを使用してpH感受性結合についてスクリーニングした。生成されたライブラリーは、各残基が、野生型残基(即ち、親抗体中と同じ)またはヒスチジン残基のいずれかであるように縮重コドンによってコードされたCDRを有する、コンビナトリアルライブラリーであった。スクリーニングを、生理学的pH(7.4)における高い結合およびエンドソームpH(5.5)における低い結合について交互にソートすることによって実施した。
【0312】
pH7.4における比較的高い結合(親分子についての192pMと比較して、変異体について407pMの一価Kd)およびpH5.5における比較的低い結合(親についての195pMと比較して、変異体について2.362nMの一価Kd)を有する、酵母で選択された変異体が同定された。これは、pH5.5における親和性における、およそ5.8倍の変化を構成する。この変異体は、軽鎖CDR1中に複数のヒスチジン変異を含有した。したがって、この変異体は、pH7.4における親分子と類似の結合、およびH5.5における親和性の有意な喪失を実証した。この観察を、当該分野で公知の方法によって、ELISA、FACSおよびSPR分析を使用して検証した。
【0313】
これらのデータは、IL−6のシス活性およびトランス活性の両方を阻害するために使用され得るIL−6の部位IIを標的化する抗IL−6の特色を有する、抗体に基づくIL−6aが創出され得ることを実証しており、pH5.5における変更された結合によって少なくとも一部もたらされる、野生型Fcドメインを有する親抗体または他の抗体と比較して増加したPKを有している。
【0314】
(実施例11)
マウスレーザー脈絡膜新生血管形成(CNV)モデルにおける局所的IL−6遮断の有効性
局所的IL−6遮断が、眼疾患、例えば、糖尿病性黄斑浮腫(DME)またはウエット型AMDを処置するために有効であり得るかどうかを決定するために、モノクローナル抗IL−6抗体を、脈絡膜新生血管形成のモデル系において局所投与した。Saishinら Journal of Cellular Physiology、195巻:241〜248頁(2003年)に記載されるレーザー誘導性CNVモデルを、この実施例において使用した。レーザー誘導性CNVモデルは、炎症および血管形成を含む、糖尿病性黄斑浮腫(DME)の基礎をなす病理的プロセスの多くを再現する。
【0315】
モノクローナル抗マウスIL−6抗体(Bio X Cellから購入されるラットIgG1アイソタイプ抗体であるMP5−20F3、カタログ番号BE0046)を、硝子体内(IVT)注射によって試験群に投与した。対照は、VEGFトラップの硝子体内注射または抗HRPアイソタイプ対照抗体(西洋ワサビペルオキシダーゼに対するラットIgG1、クローンHRPN、BioXCellから購入した;カタログ番号BE0088)の硝子体内注射を受けた。全ての抗体群について、1μL容積中の20μgのタンパク質を、試験眼中に注射し、反対側の眼は、さらなる対照として未処置のままにした。
【0316】
マウスを、レーザーの後、7日目に安楽死させ、脈絡膜フラットマウントを、Griffonia Simplicifolia(GSA)レクチンで染色して、病変面積を測定した。
図4は結果を示す。抗IL−6抗体処置群は、対照抗体処置群と比較して、新生血管形成における統計的に有意な低減を示した(p<0.05)。平均して、抗IL−6抗体処置群は、抗VEGF陽性対照と比較して低減された新生血管形成もまた示した。
【0317】
これらのデータは、IVT投与されたIL−6a、例えば、モノクローナル抗IL−6抗体が、マウスCNVモデルにおいて新生血管形成を有意に低減させ得ることを実証している。これらの結果は、抗IL−6抗体が、抗VEGF抗体と少なくとも同程度の、またはおそらくはそれよりも大きい、新生血管形成における低減を生じさせ得ることを、さらに示唆している。これらのデータは、IL−6の局所的阻害が、眼疾患、例えば、ウエット型AMDまたは黄斑浮腫、例えば、糖尿病性黄斑浮腫などの、脈管漏出が関与する疾患を処置するために有用であることを示している。
【0318】
(実施例12)
改善されたIL−6抗体の開発
【0319】
EBI−029抗体のバリアントを生成した。変異A28V、S30P、I51TおよびS55Gの寄与をより良く特徴付けるために、特定の組合せを、野生型EBI−029 Fabディスプレイベクター中に導入し、結合を測定した。結果を
図5に示す。2μMのIL−6との一晩の競合の後、全ての変異体は、野生型EBI−029 Fabと比較して、ディスプレイに関してそれらの細胞表面上に残存するビオチン化IL−6の有意により高いレベルを有した。最も高い親和性から最も低い親和性までの結合の順位は、A28V/S30P/I51T/S55G>A28V/I51T/S55G>S30P/I51T/S55G>I51T/S55G>wtであった。四重変異A28V/S30P/I51T/S55Gは、本明細書でEBI−030とも呼ぶ。
【0320】
EBI−030の配列を以下に示す。
【化22】
030重鎖可変領域配列(029と比較した変異が太字で示される):
【化23】
030軽鎖可変領域配列:
【化24】
030 Fab(IgG1)重鎖ポリペプチド配列(CDRに下線を付した、029と比較した変異が太字で示される):
【化25】
【0321】
実施形態では、配列番号39のカルボキシ末端におけるDKTHT配列(配列番号30)は、Fab配列中に含まれない。
030 Fab重鎖核酸配列:
【化26】
030はまた、IgG2 Fab重鎖ポリペプチド配列としても産生され得る:
【化27】
【0322】
(実施例13)
バリアントFab断片の発現および精製
以下の変異体組合せ、A28V/I51T/S55G、S30P/I51T/S55GおよびA28V/S30P/I51T/S55G(EBI−030)を含有するVHドメインインサートを、BamHI−HF/NheI−HFを用いた二重消化によって酵母ディスプレイベクターから生成した。インサートを、1%アガロースゲル電気泳動によって精製し、リーダー配列、ヒトIgG1 CH1ドメインおよびC末端Hisタグを含有するpTT5由来哺乳動物発現ベクター中にライゲーションした。形質転換体を、LB−Amp上で選択し、ミニプレップし、インサートを配列決定によって確認した。一過的トランスフェクションを、トランスフェクション試薬としてPEIを使用して、野生型EBI−029軽鎖(本明細書で配列番号12として開示される)と対形成した各変異体Fab重鎖について、HEK−6E細胞(Canadian Research Council)において実施した。野生型EBI−029 Fabもまた、対照として発現させた(野生型Fab重鎖は、本明細書で配列番号24として開示される)。上清を5日後に回収し、発現されたFabを、Ni−NTAアガロース(Life Technologies)を使用するアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。精製したタンパク質を、数ラウンドの濃縮/希釈によってPBS、pH7.4へと緩衝液交換し、タンパク質の濃度および純度を、吸光度280およびSDS−PAGEによって決定した。
【0323】
(実施例14)
バリアント抗体は、表面プラズモン共鳴を使用して評価した場合、改善された結合を示した
IL−6に対するバリアント029 Fab分子の親和性を、Reichert SR7000Dc Spectrometerでの表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した。10mM酢酸ナトリウム、pH4.5中20μg/mLのヒトIL−6を、標準的なアミンカップリングを介して、500kDaカルボキシメチルデキストランチップ上に固定化した。10mM HEPES、150mM NaCl、pH7.3中での各Fab分子の段階希釈を、25μL/分の流量で25℃で注入した。4分後、ローディングを停止させ、ランニング緩衝液(10mM HEPES、150mM NaCl、pH7.3)を5分間流すことによって、解離を測定した。センサグラムトレースは、チップ上のIL−6の混合型の配向または非特異的抗体結合に潜在的に起因して、1:1結合モデルにあまりあてはまらない。その代り、曲線を、TraceDrawerソフトウェアを使用して、2種(低親和性および高親和性種、表3中で「低親和性」および「高親和性」と表示される)のあてはめ(fit)にあてはめた。ここで、ka1、kd1およびKD1は、低親和性種についての会合速度、解離速度および平衡結合定数であり、ka2、kd2およびKD2は、高親和性種についての会合速度、解離速度および平衡結合定数である。全ての変異体Fabは、最も高い親和性から最も低い親和性までの以下の順位で、wt EBI−029 Fabと比較して、顕著により緩徐な解離を有した−A28V/S30P/I51T/S55G(EBI−030)>S30P/I51T/S55G>A28V/I51T/S55G>WT(EBI−029)。
【表3】
【0324】
(実施例15)
バリアント抗体は、HEK−Blue(商標)IL6レポーター細胞において、改善されたアンタゴニスト効力を示した
HEK−Blue(商標)IL6レポーター細胞株(Invivogen)を使用して、異なる変異体EBI−029 Fab断片間でIL6シグナル伝達阻害の効力を比較した。HEK−Blue(商標)IL6細胞は、IL−6R遺伝子を安定に発現し、4つのSTAT3結合部位に融合させたIFNβ最小プロモーターの制御下に分泌型アルカリホスファターゼレポーター遺伝子を含有する、改変されたHEK293株である。IL6拮抗作用を測定するために、10μLの400pMヒトIL−6(R&D Systems 206−IL−010/CF)を、96ウェルプレート中で一定範囲の濃度の各Fabバリアント10μLと混合し、RTで30分間インキュベートした。対数期にあるHEK−Blue(商標)IL6細胞をトリプシン処理し、アッセイ培地(DMEM、4.5g/lグルコース、10%熱不活化FBS、2mM L−グルタミン、Pen−Step)中に280,000細胞/mLで再懸濁した。180μLの細胞懸濁物を、IL−6/Fab混合物の各ウェルに添加して、最終IL−6濃度を20pMにした。これらの細胞を、37℃/5%CO
2で20時間インキュベートした。次いで、各ウェルからの上清20μLを、180μLのQuanti−Blue(商標)試薬(Invivogen)と混合し、37℃で40分間インキュベートし、その後、650nMにおける吸光度をSpectraMax M5プレートリーダーで測定した。IL−6なしのウェルからのバックグラウンドシグナルを減算し、次いで、阻害剤なしのIL−6処理細胞によって除算して、シグナル伝達率値を導出した。全ての変異体が、以下のようなアンタゴニスト効力の順位で、wt EBI−029 Fabと比較して、有意に高い効力を示した:A28V/S30P/I51T/S55G(EBI−030)>A28V/I51T/S55G>S30P/I51T/S55G>WT(EBI−029)。これらの結果を
図6に示す。
【0325】
(実施例16)
バリアント抗体は、T1165増殖アッセイにおいて改善されたアンタゴニスト効力を示した
T1165.85.2.1細胞(R&D Systems)は、マウス、ラットまたはヒトのIL−6に応答して増殖するマウス形質細胞腫細胞株である。EBI−029 Fab変異体からの拮抗作用を測定するために、25μLの2ng/mLヒトIL−6(R&D Systems 206−IL−010/CF)を、96ウェルプレート中で一定範囲の濃度の各Fabバリアント25μLと混合し、RTで30分間インキュベートした。対数期にあるT1165細胞をペレット化し、アッセイ培地(90%RPMI 1640、10%FBS、2mM L−グルタミン、Pen−Strep)中に2×105細胞/mLで再懸濁した。50μLの細胞懸濁物を、IL−6/Fab混合物の各ウェルに添加して、最終IL−6濃度を0.5ng/mLにした。これらの細胞を、37℃/5%CO2で72時間インキュベートした。100μLのCell−Titer Glo(登録商標)試薬(Promega)を各ウェルに添加し、RTで10分間インキュベートした。ルミネセンスを、SpectraMax M5プレートリーダーで測定した。全ての変異体が、wt EBI−029 Fabと比較して有意に高い効力を示し、試験した範囲のFab濃度を超えると、測定可能なIL−6シグナル伝達はなかった(
図7を参照のこと)。
【0326】
(実施例17)
バリアント抗体の薬物様特性の比較
各Fabバリアントの熱安定性を、示差走査型蛍光定量(DSF)によって決定した。2.5mg/mLまたは5mg/mLのタンパク質2μLを、BioRad 96ウェルPCRプレート中で、18μLのPBSおよび2μLの50×Sypro Orangeと混合した。このプレートを、25℃および95℃からの線形温度増加を用いてBioRad CFX96 RT−PCR Systemにおいて実行し、蛍光を経時的に測定した。T
mを、融解曲線の一次導関数の最低点として計算した。全てのバリアントは、76℃におけるwt EBI−029 Fabの測定されたT
mと一致して、76℃と78℃との間の測定されたT
m値を有した。
【0327】
凝集を測定するために、試料を、Wyatt miniDawn TREOS光散乱装置およびWyatt Optilab rEX屈折率装置と組み合わせてAgilent 1260 HPLCを使用するSEC−MALSによって評価した。20〜100μgのタンパク質を注入し、1mL/分の流量で実行した。全てのバリアントが、野生型EBI−029 Fabと一致して、光散乱によって測定した場合、45000Daと52000Daとの間の分子量を有した。
【0328】
これらの結果は、EBI−030が、その薬物様特性に関して、EBI−029と比較して同様に良好に挙動することを示している。
【0329】
(実施例18)
全長EBI−029およびEBI−030 IgG2抗体ならびに変異体Fcドメインを有するIgG2抗体の産生
EBI−029およびEBI−030をIgG2および変異体Fc IgG2に再形式化する
リーダー配列(MDWTWRILFLVAAATGAHS;配列番号49)を含むEBI−029およびEBI−030の重鎖可変ドメインを、N末端EcoRI部位およびC末端NheI部位を導入したプライマーを使用して、FabベクターからPCR増幅した。PCR産物を、1%アガロースゲル上で精製し、EcoRI−HFおよびNheI−HFを用いて二重消化した。野生型IgG2重鎖配列またはH311A変異を有するバリアントIgG2ドメイン(H311は、配列番号41中の番号付けに対応する;これは、Martinら、Molecular Cell、7巻:4号、867〜877頁(2001年)に提供された番号付けではH310に対応する)を含むpTT5ベースの骨格ベクターを、EcoRI−FH/NheI−HFを用いて同様に消化し、1%アガロースゲル上で精製した。インサートを、Quikligase酵素(New England Biolabs)を使用して、消化された骨格中にライゲーションし、TOP10細胞(Life Technologies)中に形質転換し、LB−Amp上で選択した。クローンをミニプレップし、配列決定して、インサートを確認した。眼の組織から逃れる分子の全身蓄積を低減させるために、H311A変異を選択して、FcRnに対するFc結合親和性を低減させた。
【0330】
一過的トランスフェクションによるIgG2バリアントの発現および精製
EBI−029 IgG2、EBI−029 IgG2−H311A、EBI−030 IgG2およびEBI−030 IgG2−H311Aを、一過的トランスフェクションによってHEK−6E細胞において発現させた。各重鎖を含有するpTT5ベクターを、トランスフェクション試薬としてPEIを使用して、EBI−029 LCプラスミドと共トランスフェクトした。上清を5日後に回収し、発現されたIgG2分子を、プロテインAアガロースを使用するアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。精製したタンパク質を、数ラウンドの濃縮/希釈によってPBS、pH7.4へと緩衝液交換し、タンパク質の濃度および純度を、吸光度280およびSDS−PAGEによって決定した。
【0331】
CHOの安定なプールの産生
EBI−029 IgG2、EBI−030 IgG2またはEBI−030 IgG2−H311Aを産生する安定なCHOプールを、製造業者の指示に従って、Freedom CHO−Sキット(Life Technologies)を使用して生成した。簡潔に述べると、各重鎖を、EBI−029 LCと組み合わせて、標準的な消化/ライゲーションによってpCHO 1.0ベクター中にクローニングした。構築物を、Freestyle MAX試薬を使用してCHO−S細胞中にトランスフェクトし、安定なプールを、漸増濃度のピューロマイシンおよびMTXを用いて選択した。2ラウンドの選択の後、プールを、分析的プロテインAクロマトグラフィーによって抗体産生についてスクリーニングし、最も高い産生体を、スケールアップおよびサブクローニングのために選択した。
【0332】
配列を以下に示す。
030重鎖ポリペプチド配列(IgG2フレームワーク中、CDRに下線を付した):
【化28】
030軽鎖ポリペプチド配列(IgG2フレームワーク中、CDRに下線を付した):
【化29】
030重鎖核酸配列:
【化30】
030軽鎖核酸配列:
【化31】
H311A変異を有する030重鎖ポリペプチド配列(311Aは太字であり、CDRに下線を付す)、本明細書で031重鎖ポリペプチド配列とも呼ぶ:
【化32】
031重鎖核酸配列:
【化33】
【0333】
(実施例19)
HEK−Blue−IL6アッセイにおけるEBI−030対EBI−029 IgG2の効力比較
HEK−Blue(商標)IL6レポーター細胞株(Invivogen)を使用して、EBI−029 IgG2抗体とEBI−030 IgG2抗体との間で、IL6シグナル伝達阻害の効力を比較した。安定なCHOプールにおいて産生されたEBI−030 IgG2のプレップと共に、HEK−6E細胞から精製した3つのタンパク質プレップを比較した−EBI−029 IgG2、EBI−030 IgG2およびEBI−030 IgG2−H311A(031またはEBI−031とも呼ぶ)。さらに、承認された抗IL6R抗体トシリズマブを、対照として含めた。IL6拮抗作用を測定するために、400pMのヒトIL−6(R&D Systems 206−IL−010/CF)を、96ウェルプレート中で変動する濃度の各抗体と混合し、RTで30分間インキュベートした。対数期にあるHEK−Blue(商標)IL6細胞をトリプシン処理し、アッセイ培地(DMEM、4.5g/lグルコース、10%熱不活化FBS、2mM L−グルタミン、Pen−Step)中に280,000細胞/mLで再懸濁した。180μLの細胞懸濁物を、IL−6/Fab混合物の各ウェルに添加して、最終IL−6濃度を20pMにした。これらの細胞を、37℃/5%CO
2で20時間インキュベートした。次いで、各ウェルからの上清20μLを、180μLのQuanti−Blue(商標)試薬(Invivogen)と混合し、37℃で40分間インキュベートし、その後、650nMにおける吸光度をSpectraMax M5プレートリーダーで測定した。
【0334】
結果を
図8および表5に示す。EBI−030(H311A変異ありまたはなしの、HEK細胞中で産生されたEBI−030、およびCHO細胞中で産生されたEBI−030が含まれる)は、EBI−029と比較して、大きく改善された効力(IC50における約1/50の減少およびIC90における1/100未満への減少)を示した。効力における増加は、SPRによって測定した親和性における増加よりも大きかった。
【表5】
【0335】
EBI−031(本明細書でEBI−030 IgG2−H311Aとも呼ぶ)は、EBI−029のIC50の1/75未満のIC50、およびEBI−029のIC90の約1/350のIC90を有した。HEK細胞において産生されたEBI−030は、EBI−029のIC50の1/50未満のIC50、およびEBI−029のIC90のおよそ1/4000のIC90を有した。
【0336】
(実施例20)
硝子体IL−6遮断の持続時間に対する増加した効力のモデル化分析
硝子体内投与後のIL−6遮断の程度および持続時間に対する増加した効力の影響を、薬物動態モデルを使用してシミュレートした(
図9)。遊離抗体(A)、遊離IL−6(IL)および抗体/IL−6複合体(AIL)における変化を記述する微分方程式を、以下のように規定した:
d/dt(A)=−A
*kae−A
*IL
*k1+AIL
*k2
d/dt(IL)=kpi−IL
*kie−A
*IL
*k1+AIL
*k2
d/dt(AIL)=−AIL
*kaie+A
*IL
*k1−AIL
*k2
式中、kaeは、硝子体からの遊離抗体クリアランスの速度であり、k1は、抗体/IL−6結合についての会合速度であり、k2は、抗体/IL6複合体についての解離速度であり、kpiは、IL−6産生の速度であり、keiは、硝子体からの遊離IL−6クリアランスの速度であり、kaieは、硝子体からの抗体/IL−6複合体クリアランスの速度である。出発パラメーター値および速度を、表6に示すように規定した。
【表6】
【0337】
A
0を、5mLの硝子体容積を有するヒト眼中への50μL用量の50mg/mL抗体の前提に基づいて計算した。IL
0を、約200pg/mLの、DME患者における硝子体IL−6についての臨床的に測定された値に基づいて推定した。k1を、1E5M
−1s
−1の典型的な抗体会合速度に基づいて推定し、k2を変動させて、100pMから1pMまでの範囲の効力値をシミュレートした。kaeを、ヒトPKについて、以前に測定されたように1.8の比率での約11日間のウサギにおける測定された硝子体クリアランス半減時間から導出した。kieを、24時間のクリアランス半減時間において推定し、kpiを、IL
0*kieとして計算した。
【0338】
遊離抗体および遊離IL−6のシミュレーションを、300日間の時間経過にわたってBerkeley Madonnaソフトウェアを使用して実施した(
図10)。95% IL−6遮断のカットオフを選択して、阻害の持続時間を測定した。このモデルは、抗体効力を増加させることで、眼におけるIL−6阻害の持続時間が、k2/k1=100pMについての130日間から、k2/k1=10pMについての200日間からk2/k1=1pMについての225日間まで、有意に延長されることを予測する。
【0339】
(実施例21)
IL−6aの薬物動態
薬物動態(PK)実験を、PharmOptima(Portage、MI)によって雄性New Zealand White Rabbitにおいて実施した。全ての動物は、12〜13月齢であり、重量が2.61〜3.42kgであった。以下のタンパク質を比較した:EBI−029−IgG2(配列番号11および配列番号12)、EBI−029−IgG2−H311A(配列番号10および配列番号12)、EBI−030(配列番号41および配列番号42)、EBI−030−IgG2−H311A(配列番号47および配列番号42)、EBI−029 Fab(配列番号24および配列番号12)、Eylea(登録商標)(VEGFトラップ)およびトシリズマブ(TCZ;抗IL6R抗体)。全てのタンパク質を、PBS、pH7.4中13.8mg/mLで製剤化した。EBI−029−IgG2、EBI−029−IgG2−H311A、EBI−030、EBI−030−IgG2−H311A、EBI−029 Fabおよびトシリズマブは、ウサギにおいてそれらの標的抗原に結合しないが、Eylea(登録商標)は、ウサギVEGFに結合する。
【0340】
硝子体内PKの調査のために、9匹の動物の各眼に、50μLの試験物品を注射した。注射前に、塩酸リドカイン(注射剤2%)、0.5%プロパラカインまたは0.5%テトラカインを、眼表面に適用した。注射を、眼の背側側頭側(dorsotemporal)四分円を介して挿入したBD 300μLインスリンシリンジ(31G×5/16インチ針)を用いて硝子体中央部内に実施した。全身PKの調査のために、3匹の動物に、耳静脈を介して100μLの試験物品を注射した。
【0341】
逐次的な血液試料を、0.083、1、4、8、24、72、168、240および336時間の時点においてIVTアームおよびivアームの両方における3匹の動物から収集し、クエン酸塩−リン酸塩−デキストロース溶液で1:1希釈し、氷上に配置した。血漿を、4000rpmで4℃で10分間の冷却血液試料の遠心分離によって回収し、−80℃で凍結貯蔵した。
【0342】
眼の組織を、IVTアーム中の全ての動物の両眼から、用量後0.25、24、168および336時間の時点で回収した。動物を、静脈内バルビツレート過量を介して安楽死させた。眼房水を回収するために、安楽死の直後に、針を有するシリンジを角膜下に挿入し、眼房水を緩徐に引き出した。眼房水を、事前ラベルしたチューブに移し、ドライアイス上に配置したか、または−80℃で凍結させた。硝子体液を回収するために、小さいスライスを、メスを使用して、眼球除去した眼の強膜中に導入し、硝子体を、シリンジを介して開口部を通じて引き出した。この試料を、シリンジ上の目盛によって測定し、事前ラベルしたチューブに移し、ドライアイス上に配置したか、または−80℃で凍結させた。
【0343】
網膜および脈絡膜を回収するために、小さいスライスを、メスを用いて、縁に対して並行かつ尾側で、眼球除去した眼の強膜中に導入した。ハサミを使用して、眼の眼球周囲の開口を続けて、眼球を2つの半分に分離した。後側眼球を、内部が上を向くように位置させた。ギルナイフ(gill knife)を使用して、網膜を、眼球から注意深く収集した。網膜を眼球から収集したところで、脈絡膜を、残りの眼球から類似の様式で収集した。両方の試料を別々に、事前秤量し事前ラベルしたPrecellys(登録商標)チューブに移し、秤量し、ドライアイス上に配置したか、または−80℃で凍結させた。網膜および脈絡膜組織を、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で10倍希釈し、ホモジナイズし、−80℃で貯蔵した。
【0344】
各組織におけるタンパク質濃度を、ELISAによって評価した。EBI−029−IgG2、EBI−029−IgG2−H311A、EBI−030、EBI−030−IgG2−H311AおよびEBI−029 Fabについて、Costar半容積プレートを、PBS中1μg/mLのヒトIL−6で、RTで1時間コーティングした。ウェルを、2%BSAを含有するPBSでブロッキングし、洗浄し、次いで、希釈剤としてPBS+5%ウサギ血漿+0.05%Tween−20を使用して、各試料についての一連の希釈物と共にインキュベートした。精製されたタンパク質を使用する検量線もまた、各プレート上に含めた。試料を、RTで60分間インキュベートし、次いで、0.05%Tween−20を含有するPBS 300μlで3回洗浄した。次いで、PBS、1%BSA、0.05%Tween−20中に1:10,000希釈した抗カッパ−HRP(Genway Inc.)を各ウェルに添加し、30分間インキュベートした。ウェルを、上記のように洗浄し、次いで、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)基質を添加し、シグナルを、Spectramaxプレートリーダーで450nmおよび550nmにおいて測定した。タンパク質濃度を、Softmax Pro 6ソフトウェアを使用して検量線に基づいて計算した。各ELISAを、少なくとも3つの独立したプレート上で反復し、平均半減時間を報告した。
【0345】
トシリズマブについて、抗トシリズマブFab(BioRad HCA252)を捕捉試薬として使用し、抗ヒト−IgG−Fc−HRP(Sigma A0170)を検出抗体として使用したこと以外上記と同様のELISAによって、タンパク質濃度を決定した。2つの異なるELISAアッセイを使用して、遊離および総Eylea(登録商標)を測定した。遊離Eylea(登録商標)について、ウェルを、組換えVEGF(R&D Systems)でコーティングし、結合したタンパク質を、抗ヒト−IgG−Fc−HRP(Sigma A0170)を用いて検出した。総Eylea(登録商標)を測定するために、抗ヒトFc抗体(Sigma I2136)を捕捉のために使用し、抗ヒトIgG−CH2−HRP(BioRad MCA647P)を検出のために使用した。各ELISAを、少なくとも3つの独立したプレート上で反復し、平均半減時間を報告した。
【0346】
結果の要約
ほとんどの動物において、注射されたタンパク質に対する頑強な抗体形成が、240時間および336時間の時点で観察された。この抗体形成は、タンパク質クリアランスに影響を与え得る、またはELISAを妨害し得るので、データ分析を、最大で168時間かつ168時間を含む時点に限定した。硝子体内PKについて、EBI−029およびEBI−030 IgG2タンパク質の全てが、Eylea(登録商標)(T
1/2=6.3日間)、トシリズマブ(T
1/2=4.8日間)またはEBI−029 Fab断片(T
1/2=3.9日間)と比較して、有意により緩徐に(それぞれ、EBI−029、EBI−029−H311A、EBI−030およびEBI−030−H311Aについて、T
1/2=9.3、9.0、15.7および9.8日間)取り除かれた(
図11、表7)。類似の傾向が、網膜、脈絡膜および眼房水において観察され、EBI−030およびEBI−030−H311Aは、Eylea(登録商標)およびトシリズマブと比較して、より高いレベルで蓄積した(
図12および
図13を参照のこと)。全てのタンパク質が、IVT投与後に血漿中で検出可能であり、EBI−029、EBI−030およびトシリズマブは、Eylea(登録商標)またはEBI−030−H311Aよりも有意に高いレベルで蓄積した(
図14を参照のこと)。同様に、Eylea(登録商標)およびEBI−030−H311Aは、IV投与後に血漿からより迅速に取り除かれ、EBI−030−H311Aの半減時間は、低減されたFcRn結合に起因して、野生型IgG2の半減時間のおよそ半分であった(表7)。
【表7】
【0347】
(実施例22)
高濃度でのEBI−031の溶解度
精製されたEBI−031を、Amicon Ultra−15スピンコンセントレーターを使用して、PBS、pH7.4中で3mg/mLから142mg/mLまで濃縮した。濃縮前および濃縮後プレップを、Wyatt miniDawn TREOS光散乱装置およびWyatt Optilab rEX屈折率装置と組み合わせてTosoh G3000SWXL 7.8×30 SECカラム上で実行することによって、凝集について評価した。20μgのタンパク質を注入し、PBS中1mL/分の流量で実行した。約150kDaの予測分子量におけるピークについての質量分率は、2つの濃度についておよそ等しく(3mg/mLプレップについて90.9%、142mg/mLプレップについて91.3%)、このことは、濃縮の間にタンパク質凝集において顕著な増加が存在しなかったことを示している。これらの結果は、EBI−031が、測定可能な凝集をほとんど伴わずに(10%凝集未満)、最大で142mg/mLまで濃縮され得ることを実証している。
【0348】
(実施例23)
EBI−031は、シス−IL6シグナル伝達およびトランス−IL6シグナル伝達を遮断する
HEK−Blue(商標)IL6レポーター細胞株(Invivogen)を使用して、シス−IL6シグナル伝達およびトランス−IL6シグナル伝達を遮断することについての、EBI−031およびトシリズマブの効力を比較した。シス−シグナル伝達について、遊離IL−6(最終濃度=20pM)を、96ウェルプレート中で一定範囲の濃度のEBI−031またはトシリズマブと混合し、RTで30分間インキュベートした。対数期にあるHEK−Blue(商標)IL6細胞をトリプシン処理し、アッセイ培地(DMEM、4.5g/lグルコース、10%熱不活化FBS、2mM L−グルタミン、Pen−Step)中に再懸濁し、50,000細胞を、200μLの最終容積で各ウェルに添加した。プレートを、37℃/5%CO
2で20時間インキュベートした。次いで、各ウェルからの上清50μLを、150μLのQuanti−Blue(商標)試薬(Invivogen)と混合し、37℃で40分間インキュベートし、その後、650nMにおける吸光度をSpectraMax M5プレートリーダーで測定した。IL−6なしのウェルからのバックグラウンドシグナルを減算し、次いで、阻害剤なしのIL−6処理細胞によって除算して、シグナル伝達率値を導出した。EBI−031(IC50=14.2pM)は、トシリズマブ(IC50=12.9nM)と比較して、900倍を超えて高い効力で遊離IL−6を遮断する(
図16A)。
【0349】
トランス−シグナル伝達の遮断を測定するために、遊離IL−6の代わりに、200pMの最終濃度でハイパーIL−6を使用したこと以外、実験を上記のように実施した。ハイパーIL−6は、IL−6と可溶性IL−6受容体との間の遺伝子融合物である(Fischerら、Nature Biotechnology 15巻:142〜145頁(1997年))。EBI−031は、ハイパーIL−6を強力に遮断したが(IC50=32pM)、トシリズマブは、1μM濃度まで、シグナル伝達を有意に阻害することができなかった(
図16B)。
【0350】
これらの結果は、EBI−031が、pMの親和性で、部位II、またはgp130と接触する部位においてヒトIL−6に結合し、細胞アッセイにおけるIL−6およびIL−6/sIL−6Rα複合体のシグナル伝達を、トシリズマブよりも900倍を超えて強力に遮断することを示している。
【0351】
(実施例24)
IL−6シグナル伝達の硝子体内EBI−031抑制についてのコンピューターシミュレーション
コンピューターシミュレーションを、実施例20に記載したように実施して、ヒトにおけるEBI−031の硝子体内投与がIL−6シグナル伝達の95%を抑制するであろう時間の長さを予測した。効力アッセイで測定した場合にk2/k1=14pMになるように、k2を0.12 d−1に設定した。T1/2クリアランスを、ヒトに対して1.8の比率でのウサギにおける測定された硝子体内クリアランス半減時間に基づいて、18日間に設定した。全ての他のパラメーターは表6に記載する。このモデルは、EBI−031が、硝子体内投与後約150日間にわたってIL−6シグナル伝達の95%を遮断するはずであると予測する(
図17)。これらのモデル化結果は、EBI−031が、長い期間、例えば、最大で約6ヶ月間にわたって、眼におけるIL−6シグナル伝達を実質的に遮断できることを示している。
【0352】
(実施例25)
EBI−031アイソフォームの特徴付け
EBI−031はIgG2抗体である。以前に議論したように、IgG2抗体は、3つの異なる構造的アイソフォーム、IgG2−A、IgG2−BおよびIgG2−A/Bアイソフォームで存在する(
図18)。この実施例では、EBI−031試料中の構造的アイソフォームを同定するための実験を実施した。
【0353】
RP−HPLC分析
逆相高速液体クロマトグラフ(RP−HPLC)を使用して、EBI−031の種々の構造的アイソフォームを分解した。IgG2ジスルフィド媒介性構造的アイソフォームを分解するために以前に使用された増強分析RP−HPLC法(Dillonら、Journal of Chromatography A、2006年、1120巻:112〜120頁を参照のこと)を、EBI−031を分解するために最適化した。
【0354】
およそ30μgを含むEBI−031試料を、Zorbax 300SB−C8カラム(150mm×2.1mm、5.0μm、300Å)上にロードした。カラム温度を75℃に設定した。移動相Aは、0.1%TFAを含む水であり、移動相Bは、55%IPA、40%ACN、4.9%水および0.1%TFAであった。流量は0.5mL/分であった。このカラムを、90%移動相Aおよび10%移動相Bで2分間最初に平衡化し、その後、10%Bから25%Bまでの2分間のステップ勾配が続いた。溶出を、21分間にわたる25〜32%Bの線形勾配で達成した。UV吸光度を、214nmおよび/または280nmにおいてモニタリングした。
【0355】
この分解がジスルフィドに関連するかどうかを決定するために、試料を、室温で2分間5mM DTTおよび10mMシステインで処理し、次いで、RP−HPLC法で分析した(
図19)。強力な還元剤であるDTTによる処理は、IgG2抗体の還元を引き起こし、初期ピーク(ピーク0およびピーク1)への溶出を生じる(
図19、中央のパネル)。DTTと比較してより穏やかな還元剤であるシステインによる処理もまた、DTT処理試料において見られた程度までではなかったものの、アイソフォーム分布を初期ピーク(ピーク0およびピーク1)に向けてシフトさせる(
図19、下のパネル)。
【0356】
このデータは、RP−HPLC法が、異なるジスルフィド接続性を有する構造的アイソフォームを分解したことを実証している。異なるジスルフィド結合構造を、非還元ペプチドマッピングおよび質量分析的分析によって確認した:初期に溶出するピーク(ピーク1)は、IgG2−A/Bアイソフォームを含み、後に溶出するピーク(ピーク2)は、IgG2−Aアイソフォームを含む。重要なことに、EBI−031試料では、IgG2−BアイソフォームB(ピーク0)は検出されなかった(
図19、上のパネル)。
【0357】
異なるEBI−031試料の比較
上記RP−HPLC分析を使用して、異なるEBI−031発現細胞株から収集したEBI−031試料を分析して、産生された抗体のアイソフォーム分布を比較した。EBI−031試料を、クローン性細胞株の200Lスケールの培養物、親細胞株からの10Lスケールの培養物、および細胞の安定にトランスフェクトされたプールから収集した。EBI−031を、クローン性および親EBI−031発現細胞株から、3ステップクロマトグラフィー法を使用して精製した。EBI−031を、プロテインA精製を使用して、細胞の安定にトランスフェクトされたプールから精製した。これらの試料を、上記方法によって分析した。
【0358】
図20に示される結果は、3つ全てのEBI−031試料が、アイソフォームIgG2−AおよびIgG2−A/Bを含有したが、実質的な量のIgG2−Bは含有しなかったことを示している。このデータは、産生が、クローン性EBI−031発現細胞株からであれ、親EBI−031発現細胞株からであれ、EBI−031を安定に発現する不均一な細胞集団からであれ、このEBI−031 IgG2抗体が、他のIgG2抗体よりも不均一ではない混合物として産生されることを実証している。
図21は、クローン性EBI−031発現細胞株、例えば、
図20の上のパネルの200Lスケールの培養物由来のEBI−031試料からのアイソフォームの分布を示す。曲線下面積もまた測定し、アイソフォーム間の分布を図の下の表に示す。
【0359】
(実施例26)
霊長類研究における薬物動態
EBI−031の薬物動態を、霊長類研究において調査した。2匹の雄性アフリカミドリザルを試験した。50mg/mLのEBI−031 50μlを、眼中に硝子体内注射した。Madonnaソフトウェアを、曲線あてはめに使用した。
【0360】
霊長類研究からのデータを、曲線あてはめを使用してモデル化した。硝子体中の抗体(A)および硝子体の外側、例えば全身の抗体(Ap)における変化を記述する微分方程式を、以下のように規定した:
d/dt(A)=−A
*kae
d/dt(Ap)=A
*kae(Dil)−Ap
*kape
【0361】
出発パラメーター値および速度を、以下の表に示すように規定した:
【表8】
【0362】
あてはめのために含まれる他の考慮事項には、以下が含まれる:希釈および両方の速度定数を、あてはめのために浮動させた。初期Aを一定に維持した(5mLの眼中、2×50mlの50mg/mL)。
図22A、22Bおよび23に示されるモデル化の結果は、硝子体排除速度定数が、2匹のサルについて、それぞれ4.6日間および5.7日間の半減期を生じたことを示した。平均硝子体排除速度定数は、5.2日間であると計算された。全身排除は、1.1日間および0.63日間(平均0.85日間)としてモデル化された。これらの結果は、硝子体におけるEBI−031の半減期が、霊長類では全身半減期よりも有意に長かったことを実証している。
【0363】
(実施例27)
EBI−031の薬物動態
別の薬物動態(PK)実験を実施し、この実験では、EBI−031の20mg/mL溶液50μlを、ウサギの眼中に硝子体内注射した。試験した時点は、1、3、7および14日(例えば、24、72、168および336時間)であった。2匹の動物(4つの眼)を、各時点について分析した。EBI−031製剤を投与するための方法、眼の組織を回収するための方法、およびタンパク質濃度を決定するための方法は、実施例21に記載したように実施した。
【0364】
結果を
図24A〜24Iに示す。1〜14日目にわたって硝子体液中のタンパク質濃度を分析すると、EBI−031の半減期は、8.95日間であると決定された(
図24A)。しかし、これらの結果に影響を与え得る強い抗体応答が14日目に検出された。1〜7日目にわたって硝子体液中のタンパク質濃度を分析すると、EBI−031の半減期は、18.88日間であると決定された。
【0365】
EBI−031は、硝子体内注射後に眼の他の区画においても検出された。EBI−031は、眼房水(
図24B)、脈絡膜(
図24C)、結膜(
図24D)、角膜(
図24E)、毛様体(
図24F)、水晶体(
図24G)、網膜(
図24H)および強膜(
図24I)にも透過した。これらの組織における薬物濃度は、硝子体において検出された濃度よりも、1桁から2桁低かった。
【0366】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。