特許第6594462号(P6594462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6594462-培養装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6594462
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】培養装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20191010BHJP
   C12M 1/02 20060101ALI20191010BHJP
   C12M 1/04 20060101ALI20191010BHJP
   C12M 1/06 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   C12M1/00 D
   C12M1/02 A
   C12M1/02 B
   C12M1/04
   C12M1/06
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-4828(P2018-4828)
(22)【出願日】2018年1月16日
(65)【公開番号】特開2019-122293(P2019-122293A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2018年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165273
【氏名又は名称】月島機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】小川 綾子
(72)【発明者】
【氏名】水野 秀明
(72)【発明者】
【氏名】早川 智基
【審査官】 小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−051763(JP,A)
【文献】 特開昭51−026279(JP,A)
【文献】 特開2013−203890(JP,A)
【文献】 特開平07−256084(JP,A)
【文献】 特開昭59−098729(JP,A)
【文献】 特開平05−031332(JP,A)
【文献】 特開2016−002040(JP,A)
【文献】 特開平03−160983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00 − 1/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養液を保持する培養槽と、この培養槽内の上記培養液を撹拌する撹拌手段と、上記培養液中にガスを供給するガス供給手段と、上記培養槽の上部に上部循環ラインを介して接続されるとともに該培養槽の下部に下部循環ラインを介して接続される外部熱交換器とを備え、
上記上部循環ラインまたは上記外部熱交換器には上記培養液から上記ガスの気泡を抜く均圧管の一端が接続されており、
上記上部循環ラインにおける上記均圧管の一端から上記外部熱交換器の間、または上記外部熱交換器、または上記下部循環ラインには流量計が備えられ、
この流量計によって測定された上記均圧管の一端から上記下部循環ラインを流れて上記培養槽に循環する上記培養液の流量に基づき、上記撹拌手段および上記ガス供給手段の双方を制御する制御手段を有していることを特徴とする培養装置。
【請求項2】
上記均圧管の他端は上記培養槽における上記上部循環ラインの接続部よりも上方かつ上記培養槽内の気相部に連通するように接続されていることを特徴とする請求項1に記載の培養装置。
【請求項3】
上記撹拌手段は、上記培養槽の上部に設けられた回転装置から垂下した回転軸に上下方向に間隔をあけて取り付けられた複数段の撹拌羽根を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の培養装置。
【請求項4】
上記ガス供給手段は、上記撹拌手段の下方に備えられていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の培養装置。
【請求項5】
上記培養槽の上部には排気ラインが接続されるとともに、この排気ラインには上記培養槽内の圧力を調整する圧力調整手段が備えられ、
上記流量計によって測定された上記均圧管の一端から上記下部循環ラインを流れて上記培養槽に循環する上記培養液の流量に基づき、上記圧力調整手段および上記撹拌手段の双方と、上記ガス供給手段とを制御する制御手段を有していることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物や細胞等の培養に用いられる培養装置であって、培養液の循環にポンプを使えない、またはポンプを使うのが望ましくないプロセスにおいてポンプを使わずに外部循環を行う培養装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば剪断に弱い微生物や細胞等の培養においては、培養液の冷却等のための培養槽外の熱交換器にポンプで培養液を供給すると、剪断によって微生物や細胞等が破壊されてしまう。また、培養液がガスの気泡を多く含む場合には、キャビテーションが生じるために外部の熱交換器にポンプによって培養液を循環させること自体が不可能となる。
【0003】
そこで、特許文献1には、上下端が開放されたドラフトチューブを、縦型培養槽内に槽側壁、槽底壁および槽蓋との間に間隙が生じるように設置した培養装置において、ドラフトチューブを培養液中に埋没する状態で設け、このドラフトチューブを回転駆動装置に連結して、ドラフトチューブを回転させることでドラフトチューブの外周部の培養液に上向きの流れを生じさせ、培養槽の胴部外側に設けたジャケットに循環させた水蒸気または恒温水との間で培養液の熱交換を行うようにした培養装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2540045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1に記載された培養装置では、熱交換器が上述のように縦型培養槽の胴部外側に設けられたジャケットであるため、培養槽が大きくなると単位量当たりの培養液に対する熱交換面積は相対的に小さくなり、効率的な培養液の熱交換を行うことが困難となるので、装置の大型化に限界がある。
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたもので、例えば剪断に弱い微生物や細胞等を培養する培養装置であって、培養液の循環にポンプを使えない、またはポンプを使うのが望ましくないプロセスにおいてポンプを使わずに培養液を外部の熱交換器に循環させて効率的な熱交換を行うことが可能な培養装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、培養液を保持する培養槽と、この培養槽内の上記培養液を撹拌する撹拌手段と、上記培養液中にガスを供給するガス供給手段と、上記培養槽の上部に上部循環ラインを介して接続されるとともに該培養槽の下部に下部循環ラインを介して接続される外部熱交換器とを備え、上記上部循環ラインまたは上記外部熱交換器には上記培養液から上記ガスの気泡を抜く均圧管の一端が接続されており、上記上部循環ラインにおける上記均圧管の一端から上記外部熱交換器の間、または上記外部熱交換器、または上記下部循環ラインには流量計が備えられ、この流量計によって測定された上記均圧管の一端から上記下部循環ラインを流れて上記培養槽に循環する上記培養液の流量に基づき、上記撹拌手段および上記ガス供給手段の双方を制御する制御手段を有していることを特徴とする。
【0008】
このように構成された培養装置において、培養槽内の培養液中にガス供給手段からガスを供給すると、ガスは気泡となって撹拌手段による撹拌により微細化し、培養液の液面レベルを上昇させる。そこで、上部循環ラインの培養槽への接続部を、この上昇した培養液の液面レベルよりも下に配置することにより、培養液は上部循環ラインから外部熱交換器に流入して熱交換される。
【0009】
このとき、上部循環ラインまたは外部熱交換器には培養液からガスの気泡を抜く均圧管の一端が接続されているので、気泡が抜けた外部熱交換器内の培養液と気泡を含む培養槽内の培養液との間には比重差が生じ、比重の大きい外部熱交換器内の培養液は下部循環ラインから培養槽に循環する。
【0010】
このように、上記構成の培養装置においては、ポンプを用いることなくシェルアンドチューブ方式等の熱交換効率の高い外部熱交換器との間で培養槽内の培養液を循環させることができる。このため、例えば剪断に弱い微生物や細胞等の培養や気泡を含む培養液による培養においても、効率的な培養液の熱交換を行うことができるとともに、培養槽を大型化しても対応することが可能となり、大量の微生物や細胞等の培養を促すことができる。
【0011】
ここで、均圧管によって抜かれたガスの気泡に含まれた微生物や細胞等が大気中に漏れ出るのを防ぐには、上記均圧管の他端は上記培養槽における上記上部循環ラインの接続部よりも上方かつ上記培養槽内の気相部に連通するように接続されていることが望ましい。一方、上記撹拌手段としては、上記培養槽の上部に設けられた回転装置から垂下した回転軸に上下方向に間隔をあけて取り付けられた複数段の撹拌羽根を備えたものを用いることにより、これら上下の複数段の撹拌羽根によって気泡の微細化を一層確実に制御することが可能となる。また、ガス供給手段を、撹拌手段の下方に備えることにより、ガスの気泡を微細化することができる。
【0012】
さらに、本発明の培養装置においては、上記上部循環ラインにおける上記均圧管の一端から上記外部熱交換器の間、または上記外部熱交換器、または上記下部循環ラインに流量計を備えて、この流量計によって測定された上記均圧管の一端から上記下部循環ラインを流れて上記培養槽に循環する上記培養液の流量に基づき、上記撹拌手段および上記ガス供給手段の双方を制御する制御手段を有しているものとすることにより、培養槽に循環する培養液の流量が少ない場合は撹拌手段による気泡の微細化を促進したり、ガス供給手段によるガス供給量を増加したりして、培養槽内の培養液の液面レベルを上部循環ラインの接続部を越える位置に保持することができ、外部熱交換器への培養液の流入と培養槽への循環とを維持することができる。
【0013】
さらに、上記培養槽の上部に排気ラインを接続するとともに、この排気ラインには上記培養槽内の圧力を調整する圧力調整手段を備え、また上記と同じく上記上部循環ラインにおける上記均圧管の一端から上記外部熱交換器の間、または上記外部熱交換器、または上記下部循環ラインに流量計を備えた場合に、上記流量計によって測定された上記均圧管の一端から上記下部循環ラインを流れて上記培養槽に循環する上記培養液の流量に基づき、上記圧力調整手段および上記撹拌手段の双方と、上記ガス供給手段とを制御する制御手段を有することにより、培養槽に循環する培養液の流量が少ない場合は上述のように撹拌手段による気泡の微細化を促進したり、ガス供給手段によるガス供給量を増加したり、あるいは圧力調整手段によって培養槽内の圧力を低くして気泡を大きくしたりして、培養槽内の培養液の液面レベルを上部循環ラインの接続部を越える位置に保持することができ、外部熱交換器への培養液の流入と培養槽への循環とを維持することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上、説明したように、本発明によれば、例えば剪断に弱い微生物や細胞等を含む培養液や気泡を多く含む培養液でも、剪断やキャビテーションを生じるポンプを用いることなく培養槽と外部熱交換器との間で循環させることができ、熱交換効率の高い外部熱交換器を用いることができるとともに、培養槽の大型化を図って効率的な微生物や細胞等の培養を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態を示す概略図である。図1において符号1で示すのは培養槽であり、この培養槽1には培養する微生物や細胞等を含んだ培養液Lが保持されている。培養槽1の底部には散気管2Aが配設されるとともに、この散気管2Aは培養槽1の外部のブロア2B等に接続されて、本実施形態におけるガス供給手段2を構成する。このガス供給手段2によって供給されるガスGは、培養する微生物や細胞等の種類にもよるが、例えば空気である。また、散気管2Aは散気板や単なる配管であってもよい。なお、ガス供給手段2は、散気管2Aを設けずに、外部のブロア2B等からガスGを直接培養槽1内へ供給する構成としてもよい。
【0017】
散気管2Aよりも上方の培養槽1内には、撹拌手段3が配設されている。この撹拌手段3は、培養槽1の上部に設けられたモータ等の回転装置3Aから垂下した回転軸3Bに取り付けられた撹拌羽根3Cを備え、本実施形態ではこのような撹拌羽根3Cが上下方向に間隔をあけて複数段(図では2段)取り付けられている。この撹拌羽根3Cは、例えば回転軸3Bを中心に水平に取り付けられた円板状の支持板3aの外周部に、支持板3aの回転方向を向く例えば方形板状の複数の羽根本体3bが周方向に間隔をあけて取り付けられたものである。なお、撹拌羽根3Cは単段であってもよい。
【0018】
一方、このガスGの供給を行っていない場合の培養液Lの液面レベルよりも上方において培養槽1の側壁には、上部循環ライン(循環パイプ)4が接続されており、この上部循環ライン4は水平に延びた後に下方に延びて、例えばシェルアンドチューブ方式等の多重管型熱交換器である外部熱交換器5の上端部に接続されている。また、本実施形態では、上部循環ライン4が水平に延びる部分には均圧管6の一端が接続されており、この均圧管6は上方に延びた後、その他端が上部循環ライン4との接続部よりも上方かつガスGの供給時の液レベルよりも上方の培養槽1の気相部における側壁または天井部に接続されている。
【0019】
さらに、外部熱交換器5の下端部からは下部循環ライン(循環パイプ)7が下方に延びた後に水平に培養槽1の底部に向かって延び、この培養槽1の底部(下部)の中央に接続されている。また、この下部循環ライン7には、下部循環ライン7を通って培養槽1に循環する培養液Lの流量を測定する流量計8が備えられている。
【0020】
そして、この流量計8はコンピューター等の制御手段9に接続されていて、この制御手段9は本実施形態では第1に、流量計8によって測定された外部熱交換器5から下部循環ライン7を流れて培養槽1に循環する培養液Lの流量に基づき、図1に一点鎖線で示すよう上記撹拌手段3を制御する。ここで、この制御手段9による撹拌手段3の制御は、下部循環ライン7を流れて培養槽1に循環する培養液Lの流量が減少したときには、撹拌手段3の回転装置3Aによる撹拌羽根3Cの回転数を増やす制御とされ、逆に培養液Lの流量が増加したときには、撹拌手段3の回転装置3Aによる撹拌羽根3Cの回転数を減らす制御とされる。
【0021】
また、この制御手段9は、第2に、図1に二点差線で示すように、上記流量計8によって測定された培養液Lの流量に基づき、上記ガス供給手段2によるガスGの供給量も制御可能とされている。すなわち、流量計8によって外部熱交換器5から培養槽1に循環する培養液Lの流量が減少した場合にはガス供給手段2によるガスGの供給量を増大させ、逆に培養液Lの流量が増大したときにはガスGの供給量を減少させる。
【0022】
さらに、培養槽1の上部(均圧管6の他端の接続部よりも上方の気相部の側壁または天井部)には、排気ライン10が接続され、この排気ライン10は、バルブ等の圧力調整手段11を介して排気手段12に接続されている。そして、上記制御手段9は、第3に、図1に破線で示すようにこの圧力調整手段11にも接続されており、流量計8によって外部熱交換器5から培養槽1に循環する培養液Lの流量が減少した場合には圧力調整手段11のバルブ等を開いて培養槽1内の圧力を低くし、逆に培養液Lの流量が増大したときには圧力調整手段11のバルブ等を閉じて培養槽1内の圧力を増加させる。
【0023】
このように構成された培養装置においては、ガス供給手段2のブロア2Bから散気管2AにガスGを供給すると、供給されたガスGは気泡Bとなって培養液L中を上昇し、散気管2Aの上方の撹拌手段3における撹拌羽根3Cの支持板3aの下面に溜まる。さらに、こうして支持板3aの下面に溜まった気泡Bは、支持板3aの外周縁から上昇する際に回転する羽根本体3bに衝突することによって破砕されて微細化される。本実施形態では、このような微細化が上下方向に間隔をあけた複数段の撹拌羽根3Cにおいて生じる。
【0024】
こうして微細化された気泡Bが培養液L中に分散すると、培養槽1に保持された培養液Lの液面レベルは、図1に破線で示したガスGを供給していない状態から実線で示す状態に上昇する。そして、この液面レベルが培養槽1への上部循環ライン4の接続部を越えると、培養液Lは上部循環ライン4を通って外部熱交換器5に流入する。このとき、本実施形態では、上部循環ライン4に均圧管6が接続されているので、培養液L中に分散した気泡BのガスGは抜かれて除去され、均圧管6を通って排出されて均圧管6の他端から培養槽1の上部に放出される。
【0025】
この気泡BのガスGが抜かれた培養液Lは、外部熱交換器5において熱交換されて例えば冷却される。こうして外部熱交換器5において熱交換された培養液Lは、気泡Bが除去されているので、気泡Bが分散した培養槽1中の培養液Lよりも比重が大きくなり、下部循環ライン7を通って培養槽1に循環する。従って、上記構成の培養装置によれば、このように培養槽1中の培養液Lと上部循環ライン4から外部熱交換器5を経て下部循環ライン7を通り培養槽1に戻る培養液Lとの比重差によって培養液Lを循環させることができるので、このような培養液Lの循環にポンプを用いる必要が無くなり、例えば剪断に弱い微生物や細胞等の培養にも熱交換効率の高い外部熱交換器5を用いて熱交換を行うことが可能となるとともに、培養槽1を大型化しても効率的な熱交換ができ、大量の微生物や細胞等の培養にも対応することができる。さらに、培養液L中に気泡Bが分散していても、キャビテーションを生じることなく確実に培養液Lを循環させることができる。
【0026】
また、本実施形態では、一端が上部循環ライン4に接続された均圧管6の他端が培養槽1の上部循環ライン4との接続部よりも上方かつガスGの供給時の液レベルよりも上方の培養槽1の気相部に接続されているので、加圧培養に対応することができ、また構造が単純である。なお、本実施形態では、均圧管6の一端が上部循環ライン4に接続されているが、外部熱交換器5の培養液Lの保持部の上部に接続されていてもよい。また、均圧管6の他端は培養槽1の排気ライン10に接続されていてもよく、場合によっては大気開放されていてもよい。なお、排気ライン10や排気手段12にフィルターを設けて、このフィルターの手前の培養槽1内や排気ライン10に均圧管6を接続することにより、均圧管6から排出されるガスGに培養した微生物や細胞等が混入していても、これらが大気中に漏れ出るのを防ぐことができる。
【0027】
さらに、本実施形態では、上記撹拌手段3が、培養槽1の上部に設けられた回転装置3Aから垂下した回転軸3Bに上下方向に間隔をあけて取り付けられた複数段の撹拌羽根3Cを備えている。従って、上述したようにこれら複数段の撹拌羽根3CによってガスGの気泡Bをより確実に微細化することができるので、制御手段9による回転数の制御と相俟って培養槽1内の培養液Lの液面レベルを安定して維持することが可能となる。また、ガス供給手段2の散気管2Aが、撹拌手段3の撹拌羽根3Cの下方に備えられているので、ガスGの気泡を微細化することができる。
【0028】
さらにまた、本実施形態では、下部循環ライン7を通る培養液Lの流量が流量計8によって測定され、その測定結果に基づいて制御手段9により撹拌手段3が上述のように制御される。すなわち、このような培養装置においては、流量計8の測定結果によって外部熱交換器5から培養槽1に循環する培養液Lの流量が減少したときには、制御手段9によって撹拌手段3の回転装置3Aによる撹拌羽根3Cの回転数を増やすことにより、ガスGの気泡Bの微細化が促進され、これによって培養槽1中の培養液Lの液面レベルが上昇するので、上部循環ライン4から外部熱交換器5に流入する培養液Lの流量が増加し、外部熱交換器5から下部循環ライン7を通って培養槽1に循環する培養液Lの流量も回復する。
【0029】
また、逆に流量計8の測定結果によって外部熱交換器5から培養槽1に循環する培養液Lの流量が増大したときには、制御手段9によって撹拌手段3の回転装置3Aによる撹拌羽根3Cの回転数を減らすことにより、ガスGの気泡Bの微細化を抑制して、培養槽1中の培養液Lの液面レベルを上部循環ライン4との接続部を下回らない範囲で低下させることにより、上部循環ライン4から外部熱交換器5を介して下部循環ライン7を通り培養槽1に循環する培養液Lの流量を減少させることができる。
【0030】
そして、本実施形態では、このように上記制御手段9が撹拌手段3の撹拌羽根3Cの回転を制御するのに併せて、図1に二点差線で示すように、上記流量計8によって測定された培養液Lの流量に基づき撹拌羽根3Cの回転数及びガスGの供給量の双方を制御可能としている。すなわち、流量計8によって外部熱交換器5から培養槽1に循環する培養液Lの流量が減少した場合にはガス供給手段2によるガスGの供給量を増大させ、逆に培養液Lの流量が増大したときにはガスGの供給量を減少させることにより、液面レベルの制御を行うことができる。このように撹拌手段3による制御と併せることで、さらに確実に培養槽1内の培養液Lの液面レベルの制御を行うことができる。また、流量計8は、均圧管6から下流側の培養槽1までの間に設けられていればよい。
【0031】
また、本実施形態のように、培養槽1の排気ライン10にバルブ等の圧力調整手段11が備えられている場合には、流量計8によって測定された培養液Lの流量に基づき、培養槽1内の圧力を制御可能としてもよい。例えば、流量計8によって測定された培養液Lの流量が増大した場合には、圧力調整手段11のバルブ等を絞ることによって培養槽1内の圧力を高くすることで気泡Bが小さくなり、培養槽1内の培養液Lのレベルを、上部循環ライン4との接続部を下回らない範囲で低下させることにより、循環流量を減少させることができる。逆に、流量計8によって測定された培養液Lの流量が減少した場合には、圧力調整手段11のバルブ等を開くことによって培養槽1内の圧力を低くすることで気泡Bが大きくなり、培養槽1内の培養液Lのレベルが上昇するので、培養液Lの循環流量を増加することができる。
【0032】
さらに、これと併せて、本実施形態では、上記撹拌手段3およびガス供給手段2の双方の制御が加えられる。これにより、例えば最初は圧力調整手段11のみで制御を行い、圧力が最小になったら撹拌手段3とガス供給手段2の双方を制御するといった複合的な制御を行うことができ、より確実に培養槽1内の培養液Lの液面レベルの制御を行うことができる。なお、上記流量計8は、上部循環ライン4における均圧管6の一端から外部熱交換器5の間、またはこの外部熱交換器5に備えられていてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 培養槽
2 ガス供給手段
3 撹拌手段
3A 回転装置
3B 回転軸
3C 撹拌羽根
4 上部循環ライン
5 外部熱交換器
6 均圧管
7 下部循環ライン
8 流量計
9 制御手段
10 排気ライン
11 圧力調整手段
12 排気手段
L 培養液
G ガス
B 気泡
図1