(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。タイヤの基本的な構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっているため、ここでは、右半分の断面図を示す。図中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸に直交する面で、かつタイヤ幅方向中心に位置する面である。
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、
図1の断面図における紙面左右方向である。
図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示されている。
そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、
図1においては、紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、
図1においては、紙面右側である。
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、
図1における紙面上下方向である。
図1においては、タイヤ径方向Yとして図示されている。
そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、
図1においては、紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、
図1においては、紙面下側である。
図2〜8についても同様である。
【0020】
タイヤ1は、例えば乗用車用のタイヤであり、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード11と、路面との接地面を形成するトレッド12と、一対のビード11とトレッド12との間を延びる一対のサイドウォール13とを備える。
【0021】
ビード11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状のビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出している、先端先細り形状のビードフィラー22とを備える。ビードコア21は、空気が充填されたタイヤを、図示しないホイールのリムに固定する役目を果たす部材である。ビードフィラー22は、ビード周辺部の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられている部材であり、例えば周囲のゴム部材よりもモジュラスの高いゴムにより構成される。
【0022】
タイヤ1の内部には、タイヤの骨格となるプライを構成するカーカスプライ23が埋設されている。カーカスプライ23は、一方のビードコアから他方のビードコアに延びている。すなわち、一対のビードコア21間を、一対のサイドウォール13およびトレッド12を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。
図1に示されるように、カーカスプライ23は、一方のビードコアから他方のビードコアに延び、トレッド12とビード11との間を延在するプライ本体24と、ビードコア21の周りで折り返されているプライ折り返し部25とを備える。本実施形態においては、プライ折り返し部25は、プライ本体24に重ね合わされている。
カーカスプライ23は、タイヤ幅方向に延びる複数のプライコードにより構成されている。また、複数のプライコードは、タイヤ周方向に並んで配列されている。
このプライコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されており、ゴムにより被覆されている。
【0023】
トレッド12において、カーカスプライ23のタイヤ径方向外側には、スチールベルト26が設けられている。スチールベルト26は、ゴムで被覆された複数のスチールコードにより構成されている。スチールベルト26を設けることにより、タイヤの剛性が確保され、トレッド12と路面の接地状態が良くなる。本実施形態においては、2層のスチールベルト261、262が設けられているが、積層されるスチールベルト26の枚数はこれに限らない。
【0024】
スチールベルト26のタイヤ径方向外側には、ベルト補強層としてのキャッププライ27が設けられてる。キャッププライ27は、ポリアミド繊維等の絶縁性の有機繊維層により構成されており、ゴムにより被覆されている。キャッププライ27を設けることにより、耐久性の向上、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。
【0025】
キャッププライ27のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム28が設けられている。トレッドゴム28の外表面には、図示しないトレッドパターンが設けられており、この外表面が、路面と接触する接地面となる。
【0026】
ビード11、サイドウォール13、トレッド12において、カーカスプライ23のタイヤ内腔側には、タイヤ1の内壁面を構成するゴム層としてのインナーライナー29が設けられている。インナーライナー29は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0027】
サイドウォール13において、カーカスプライ23のタイヤ幅方向外側には、タイヤ1の外壁面を構成するサイドウォールゴム30が設けられている。このサイドウォールゴム30は、タイヤがクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0028】
ビード11のビードコア21周りに設けられたカーカスプライ23のタイヤ径方向内側には、チェーハー31が設けられている。チェーハー31は、カーカスプライ23のプライ折り返し部25のタイヤ幅方向外側にも延在しており、そのタイヤ幅方向外側およびタイヤ径方向内側には、リムストリップゴム32が設けられている。このリムストリップゴム32のタイヤ径方向外側は、サイドウォールゴム30に連接している。
【0029】
本実施形態のタイヤ1には、電子部品としての、RFIDタグ40が埋設されている。
RFIDタグ40は、RFIDチップと、外部機器と通信を行うためのアンテナとを備えた、パッシブ型のトランスポンダであり、外部機器としての図示しないリーダとの間で無線通信を行う。アンテナとしては、コイル状のスプリングアンテナ、板状のアンテナ、棒状の各種のアンテナが用いられる。例えば、フレキシブル基板に対して所定のパターンをプリントすることによって形成したアンテナであってもよい。RFIDチップ内の記憶部には、製造番号、部品番号等の識別情報が格納されている。
【0030】
図1に示されるように、RFIDタグ40は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aと、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aとの間の領域に埋設されている。すなわち、RFIDタグ40は、通信に対して悪影響をおよぼす可能性のある、金属製のビードコア21から十分離れた位置に配置されている。
ここで、ビードコア21は、金属製のビードワイヤを積層巻回して環状に形成されていることから、通信に対して悪影響をおよぼす可能性が特に高い金属部材である。
【0031】
また、RFIDタグ40は、スチールベルト26とも接触しないように離間して配置されている。よって、RFIDタグ40のアンテナとスチールベルト26との接触により実質的にアンテナ長が変化して、通信障害が発生するようなこともない。なお、RFIDタグ40のアンテナ長は、使用する電波の周波数帯域等に応じて最適化されており、金属部品と接触してアンテナ長が変化すると、通信障害が発生する。
【0032】
ここで本実施形態について付言すると、キャッププライ27は、スチールベルト26よりもタイヤ幅方向外側に延出している。そして、RFIDタグ40は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aと、キャッププライ27のタイヤ幅方向外側端27Aとの間の領域に設けられている。この構成により、RFIDタグ40がスチールベルト26に接触することを確実に防いでいる。
【0033】
本実施形態についてさらに付言すると、RFIDタグ40は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aと、サイドウォール13のタイヤ最大幅部付近Aとの間の領域に埋設されている。すなわち、RFIDタグ40が、金属製のビードコア21から遠く、かつスチールベルト26からも遠い位置に配置されており、RFIDタグ40が金属製の部品による悪影響を受ける可能性が少ない。
【0034】
ここで、タイヤ最大幅部とは、タイヤを正規リムに組み付け、正規内圧を充填し、荷重を加えない無荷重状態にしたときにおける、タイヤ幅方向断面内の最大幅位置をいう。
そして、タイヤ最大幅部付近Aとは、最大幅位置を中心として断面高さ20%の範囲内、すなわち、最大幅位置を中心として、タイヤ径方向外側、断面高さ10%の位置〜タイヤ径方向内側、断面高さ10%の位置の範囲内を意味する。ここで、断面高さとは、タイヤサイズにより決まる数値で、例えば、195/65R15というサイズのタイヤの場合、「断面高さ=呼び幅×扁平率=195×0.65=126.75mm」となる。
【0035】
図2は、
図1のタイヤ1における、RFIDタグ40の埋設部周辺を示す拡大断面図である。
図2に示されるように、本実施形態においては、RFIDタグ40は、プライ本体24とプライ折り返し部25との間に挟まれた状態で配置されている。
【0036】
RFIDタグ40がプライ本体24とプライ折り返し部25との間に挟まれていることから、加硫時や使用時において、RFIDタグ40のアンテナが、タイヤ1のゴム構造体であるサイドウォールゴム30やインナーライナー29を押圧し、その部分に応力が集中するような状況を防ぐことができる。
また、追加の部品を用いることなく、RFIDタグ40のアンテナと、タイヤ1のゴム構造体であるサイドウォールゴム30やインナーライナー29との間の応力集中を防ぐことができる。
【0037】
ここで、RFIDタグ40は、タイヤの製造工程において、加硫工程の前に取り付けられている。本実施形態においては、被覆ゴムが加硫される前のカーカスプライ23のプライ本体24またはプライ折り返し部25に、RFIDタグ40を取り付ける。このとき、カーカスプライ23の被覆ゴムは加硫前の生ゴムの状態であるため、その粘着性を利用して、RFIDタグ40をカーカスプライ23に貼り付けることができる。あるいは、接着剤等を用いて貼り付けてもよい。RFIDタグ40を貼り付けた後、プライ本体24およびプライ折り返し部25を重ね合わせることにより、RFIDタグ40をカーカスプライ23によって挟み込む。その後、RFIDタグ40を含む各構成部材が組み付けられた生タイヤを、加硫工程において加硫し、タイヤを製造する。
このように、本実施形態においては、タイヤ製造時において、剛性を有し、粘着性を有する生ゴムにより被覆されているカーカスプライ23にRFIDタグ40を貼り付けることができるため、タイヤの製造工程におけるRFIDタグ40の組み付け作業が容易である。
【0038】
なお、タイヤに埋設するRFIDタグ40は、後述する
図9においてRFIDタグ40として示されるように、アンテナを含めると、長手方向を有することが多い。このようなRFIDタグ40は、その長手方向が、タイヤの周方向に対して接線の方向、すなわち
図1〜2の断面図において紙面に直交する方向となるように、タイヤ1に埋設することが好ましい。このように埋設することで、タイヤが変形したときにおいても、RFIDタグ40に応力がかかりにくい。
【0039】
なお、RFIDタグ40は、ゴム等の保護部材により被覆された状態で、プライ本体24とプライ折り返し部25との間に挟んでもよいが、保護部材で被覆することなく、直接プライ本体24とプライ折り返し部25との間に挟んでもよい。
【0040】
なお、本実施形態においては、RFIDタグ40は、プライ本体24とプライ折り返し部25との間に挟まれた状態で配置されているが、プライが複数のプライにより構成されている場合、例えば、アッププライ(内側カーカスプライ)とダウンプライ(外側カーカスプライ)により構成されている場合は、RFIDタグ40を、複数のプライ、例えばアッププライとダウンプライとの間に挟まれた状態で配置してもよい。
【0041】
なお、本実施形態においては、電子部品として、RFIDタグ40がタイヤに埋設されているが、タイヤに埋設される電子部品は、RFIDタグに限らない。例えば、無線通信を行うセンサ等の各種の電子部品であってもよい。また、電子部品は、電気信号の送受信等、電気的な情報を扱うことから、近傍に金属部品が存在することにより性能が低下する可能性がある。よって、種々の電子部品をタイヤに埋設する場合においても、本発明の効果を得ることができる。例えば電子部品は、圧電素子や、歪センサであってもよい。
【0042】
図3は、本実施形態の変形例におけるタイヤ2のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
図4は、
図3のタイヤ2における、RFIDタグ40の埋設部周辺を示す拡大断面図である。
RFIDタグ40は、本変形例に示されるように、サイドウォール13のタイヤ最大幅部付近Aに配置されていてもよい。ここで、タイヤ最大幅部とは、タイヤ2を正規リムに組み付け、正規内圧を充填し、荷重を加えない無荷重状態にしたときにおける、タイヤ幅方向断面内の最大幅位置をいう。
【0043】
この場合であっても、RFIDタグ40が、金属製のビードコア21から遠く、かつスチールベルト26からも遠い位置に配置されていることから、RFIDタグ40が金属製の部品による悪影響を受けることがない。
【0044】
本実施形態のタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0045】
(1)本実施形態に係るタイヤ1は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aと、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aとの間の領域に、RFIDタグ40が埋設されている。
これにより、RFIDタグ40を、ビードコア21等の金属製の部品から離れた位置に配置することができるため、RFIDタグ40の通信機能等の性能を保つことができる。
【0046】
(2)本実施形態に係るタイヤ1は、RFIDタグ40が、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aと、キャッププライ27のタイヤ幅方向外側端27Aとの間の領域に埋設されている。
これにより、RFIDタグ40がスチールベルト26に接触することを確実に防ぐことができる。よって、RFIDタグ40の通信機能等の性能を保つことができる。
【0047】
(3)本実施形態に係るタイヤ1は、RFIDタグ40が、サイドウォール13のタイヤ最大幅部付近Aと、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aとの間の領域に埋設されている。
これにより、RFIDタグ40が、金属製のビードコア21から遠く、かつスチールベルト26からも遠い位置に配置されるため、RFIDタグ40が金属製の部品による悪影響を受ける可能性が極めて低くなる。
【0048】
(4)本実施形態に係るタイヤ1は、RFIDタグ40が、サイドウォール13のタイヤ最大幅部付近Aに埋設されている。
これにより、RFIDタグ40が、金属製のビードコア21から遠く、かつスチールベルト26からも遠い位置に配置されるため、RFIDタグ40が金属製の部品による悪影響を受ける可能性が極めて低くなる。
【0049】
(5)本実施形態に係るタイヤ1は、サイドウォール13において、カーカスプライ23が重ね合わされている領域を有し、RFIDタグ40は、重ね合わされたカーカスプライ23間に配置されている。
これにより、加硫時や使用時において、RFIDタグ40のアンテナと、タイヤ1のゴム構造体であるサイドウォールゴム30やインナーライナー29との間の応力集中を防ぐことができる。
【0050】
(6)本実施形態に係るタイヤ1は、重ね合わされたカーカスプライ23が、一方のビードコア21から他方のビードコア21に延びるプライ本体24と、ビードコア21の周りで折り返され、プライ本体24に重ね合わされるプライ折り返し部25と、で形成される。
これにより、加硫時や使用時において、RFIDタグ40のアンテナと、タイヤ1のゴム構造体であるサイドウォールゴム30やインナーライナー29との間の応力集中を防ぐことができる。
【0051】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るタイヤ3について、
図5、6を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。
【0052】
図5は、本実施形態におけるタイヤ3のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
図6は、
図5のタイヤ3における、RFIDタグ40の埋設部周辺を示す拡大断面図である。
本実施形態においては、電子部品としてのRFIDタグ40が、カーカスプライ23とインナーライナー29との間に配置されている。
具体的には、カーカスプライ23のプライ本体24と、インナーライナー29との間に配置されている。
そして、第1実施形態と同様に、RFIDタグ40は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aと、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aとの間の領域に埋設されている。具体的には、RFIDタグ40は、サイドウォール13のタイヤ最大幅部付近Aに埋設されている。
【0053】
このような構成であっても、RFIDタグ40を、金属製のビードコア21から十分離れた位置であり、かつスチールベルト26に接触しない位置に配置することができるため、RFIDタグ40の通信状態の悪化を防ぐことができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、RFIDタグ40は、カーカスプライ23を構成する繊維層によって移動が規制されるため、走行時のタイヤの歪み等の影響を受けにくくなる。よって、追加の部品を用いることなく、既存の部品によりRFIDタグ40の耐久性を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、衝撃保護性も向上する。すなわち、タイヤが外部から衝撃を受けたとしても、タイヤ1の外壁面からRFIDタグ40までの距離が遠いため、また、タイヤ1の外壁面とRFIDタグ40との間にカーカスプライ23が存在するため、RFIDタグ40は保護される。
【0055】
本実施形態に係るタイヤ3によれば、上記(1)〜(4)に加えて以下の効果を奏する。
【0056】
(7)本実施形態においては、RFIDタグ40が、カーカスプライ23とインナーライナー29の間に配置されている。
よって、走行時のタイヤの歪み等の影響を受けにくくなり、RFIDタグ40の耐久性を向上させることができる。また、タイヤ3の外壁面からRFIDタグ40までの距離が遠くなるため、衝撃保護性を向上させることができる。
【0057】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係るタイヤ4について、
図7、8を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。
【0058】
図7は、本実施形態におけるタイヤ4のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
図8は、
図7のタイヤ4における、RFIDタグ40の埋設部周辺を示す拡大断面図である。
本実施形態においては、電子部品としてのRFIDタグ40が、カーカスプライ23とサイドウォールゴム30との間に配置されている。
具体的には、カーカスプライ23のプライ折り返し部25と、サイドウォールゴム30との間に配置されている。
そして、第1実施形態と同様に、RFIDタグ40は、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aと、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aとの間の領域に埋設されている。具体的には、RFIDタグ40は、サイドウォール13のタイヤ最大幅部付近Aに埋設されている。
【0059】
このような構成であっても、RFIDタグ40を、金属製のビードコア21から十分離れた位置であり、かつスチールベルト26に接触しない位置に配置することができるため、RFIDタグ40の通信状態の悪化を防ぐことができる。
【0060】
また、タイヤ4の外壁面からRFIDタグ40までの距離が短くなるため、通信性の向上を図ることができる。
【0061】
本実施形態に係るタイヤ4によれば、上記(1)〜(4)に加えて以下の効果を奏する。
【0062】
(8)本実施形態においては、RFIDタグ40が、カーカスプライ23とサイドウォールゴム30の間に配置されている。
よって、タイヤ4の外壁面からRFIDタグ40までの距離が短くなるため、通信性の向上を図ることができる。
【0063】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態に係るタイヤについて、
図9を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1〜第3実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。
【0064】
図9Aは、ゴムシートにより構成される保護部材43によって被覆された、RFIDタグ40を示す図である。
図9Aでは、RFIDタグ40は後述するゴムシート431に覆われて隠れている。
図9Bは
図9Aのb−b断面図、
図9Cは
図9Aのc−c断面図である。
本実施形態においては、
図9に示されるように、RFIDタグ40は保護部材43により被覆されている。保護部材43によって保護されたRFIDタグ40を用いる構成は、第1〜第3実施形態のいずれの実施形態のタイヤにも適用可能である。
【0065】
RFIDタグ40は、RFIDチップ41と、外部機器と通信を行うためのアンテナ42とを備えている。アンテナ42としては、コイル状のスプリングアンテナ、板状のアンテナ、棒状の各種のアンテナが用いられる。例えば、フレキシブル基板に対して所定のパターンをプリントすることによって形成したアンテナであってもよい。通信性をおよび柔軟性を考慮すると、コイル状のスプリングアンテナが最も好ましい。
【0066】
保護部材43は、RFIDタグ40を挟み込んで保護する2枚のゴムシート431、432により構成されている。
【0067】
保護部材43は、例えば所定のモジュラスのゴムにより構成されている。
ここで、モジュラスは、JIS K6251:2010の「3.7 所定伸び引張り応力(stress at a given elongation),S」に準拠して測定された、23℃の雰囲気下における100%伸長モジュラス(M100)を指す。
【0068】
保護部材43に採用するゴムとしては、少なくともサイドウォールゴム30よりもモジュラスが高いゴムを用いる。
例えば、保護部材43に用いられるゴムとしては、サイドウォールゴム30のモジュラスを基準として、その1.1倍〜2倍のモジュラスのゴムを用いることがより好ましい。
また、保護部材43に採用するゴムとして、サイドウォールゴム30またはインナーライナー29よりもモジュラスが高いゴムを用いることにより、例えば
図5〜8に示される実施形態において、RFIDタグ40、保護部材43、サイドウォールゴム30またはインナーライナー29の順に剛性が段階的に変化するため、タイヤが変形した場合において、RFIDタグ40埋設部においてゴム構造体内に過度な応力が発生することを防ぐことができる。
【0069】
なお、
図7〜8に示される第3実施形態では、RFIDタグ40は、タイヤ幅方向で見たときに、サイドウォールゴム30とカーカスプライ23の間の領域に配置されている。そこで、保護部材43のモジュラスを、サイドウォールゴム30よりもモジュラスが高く、かつカーカスプライ23の被覆ゴムよりもモジュラスが低い値に設定してもよい。これにより、タイヤ内のモジュラスが段階的に変化することになり、タイヤが変形した場合において、RFIDタグ40埋設部においてゴム構造体内に過度な応力が発生することを防ぐことができる。すなわち、応力の発生を抑制することができる。
【0070】
なお、
図5〜6に示される第2実施形態では、RFIDタグ40は、タイヤ幅方向で見たときに、インナーライナー29とカーカスプライ23の間の領域に配置されている。そこで、保護部材43のモジュラスを、インナーライナー29よりもモジュラスが高く、かつカーカスプライ23の被覆ゴムよりもモジュラスが低い値に設定してもよい。これにより、タイヤ内のモジュラスが段階的に変化することになり、タイヤが変形した場合において、RFIDタグ40埋設部においてゴム構造体内に過度な応力が発生することを防ぐことができる。すなわち、応力の発生を抑制することができる。このとき、インナーライナー29のモジュラスは、サイドウォールゴム30のモジュラスと同程度のモジュラスであってもよい。
【0071】
また、保護部材43を、短繊維フィラー混合ゴムにより構成してもよい。短繊維フィラーとしては、例えば、アラミド短繊維やセルロース短繊維といった有機短繊維、アルミナ短繊維等のセラミックス短繊維やガラス短繊維といった無機短繊維のような、絶縁性の短繊維を用いることができる。ゴムにこのような短繊維フィラーを混合することにより、ゴムの強度を高めることができる。
また、保護部材43として、加硫後の状態のゴムシートを用いてもよい。加硫後の状態のゴムシートは、生ゴムのように塑性変形しないため、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
また、保護部材43として、ポリエステル繊維やポリアミド繊維等による有機繊維層を設けてもよい。2枚のゴムシート431、432に、有機繊維層を埋設することも可能である。
【0072】
このように、保護部材43を、2枚のゴムシートによって構成すれば、保護部材43を含むRFIDタグ40を薄く形成できるので、タイヤ1〜3に埋設する上で好適である。また、加硫前のタイヤ1〜3の構成部材にRFIDタグ40を組み付けるときにおいて、ゴムシートによって被覆されたRFIDタグ40は、非常に簡便に装着することができる。
例えば、加硫前のカーカスプライ23、インナーライナー29、サイドウォールゴム30といった部材の所望の位置に、ゴムシートによって被覆されたRFIDタグ40を、生ゴムの粘着性を利用して適切に貼り付けることができる。また、ゴムシートも加硫前の生ゴムとすることにより、ゴムシート自身の粘着性も用いて、より簡便に貼り付けることができる。
【0073】
ただし、保護部材43は、2枚のゴムシートによって構成される態様に限らず、種々の態様を採用することができる。例えば、保護部材を構成するゴムシートは、RFIDタグ40の少なくとも一部を覆っていれば、製造工程における作業性の向上や応力緩和などの効果が得られる。
また、例えば、RFIDタグ40の全周に亘って1枚のゴムシートを巻き付ける構成や、RFIDタグ40の全周に亘って、粘度の高いポッティング剤の態様の保護部材を付着させた構成であってもよい。このような構成であっても、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
【0074】
例えば第1実施形態において、保護部材43によってRFIDタグ40を保護する構成を採用した場合、RFIDタグ40は、保護部材43により被覆されている状態で、プライ本体24とプライ折り返し部25との間に挟まれることになる。この場合、プライ本体24とプライ折り返し部25とが相対的に移動することによりRFIDタグ40が応力を受ける状況下においても、保護部材43の存在によって、RFIDタグ40が保護される。よって、RFIDタグ40の耐久性がさらに向上する。
なお、タイヤ最大幅部付近Aは、タイヤ変形時において比較的大きく屈曲する部分である。本実施形態で示されるように、保護部材43によってRFIDタグ40を保護することにより、このような部分にRFIDタグ40を埋め込んだ場合であっても、RFIDタグ40の耐久性を上げることができる。
【0075】
また、前述のとおり、第2、第3実施形態において、保護部材43によって保護されているRFIDタグ40をタイヤに埋設する構成を採用することも可能である。この場合においても、RFIDタグ40の耐久性が向上する。
【0076】
また、保護部材43を設けることにより、加硫時や使用時において、RFIDタグ40のアンテナ42がタイヤのゴム構造体であるサイドウォールゴム30やインナーライナー29を直接押圧することを防止することが可能となる。なお、保護強化の観点から、加硫後の状態のゴムシートに被覆されたRFIDタグを、加硫前のタイヤの構成部材、例えばカーカスプライ23に取り付けてもよい。
【0077】
なお、保護部材43は、RFIDタグ40の片面のみに設けてもよい。例えば、RFIDタグ40のアンテナ42がタイヤのゴム構造体であるインナーライナー29やサイドウォールゴム30を直接押圧することの防止を考慮すれば、第2実施形態において、RFIDタグ40のタイヤ幅方向内側、すなわちインナーライナー29側にのみ、保護部材としてのゴムシートや繊維層を設けてもよい。また、第3実施形態において、RFIDタグ40のタイヤ幅方向外側、すなわちサイドウォール側にのみ、保護部材としてのゴムシートや繊維層を設けてもよい。
一方、加硫工程等の製造時におけるタイヤの構成部材間の膨張・収縮量の差による、カーカスプライ23とRFIDタグ40間の応力集中を防ぐことや、使用時のタイヤの歪みにより発生する、カーカスプライ23とRFIDタグ40間の応力集中を防ぐことを考慮すれば、例えば、第2実施形態において、RFIDタグ40のタイヤ幅方向外側、すなわちカーカスプライ23側にのみ、保護部材としてのゴムシートや繊維層を設けてもよい。また、第3実施形態において、RFIDタグ40のタイヤ幅方向内側、すなわちカーカスプライ23側にのみ、保護部材としてのゴムシートや繊維層を設けてもよい。また、タイヤの構成部材間の膨張・収縮量の差に応じて、例えば第1実施形態において、RFIDタグ40のタイヤ幅方向外側にのみ、またはタイヤ幅方向内側にのみ、保護部材としてのゴムシートや繊維層を設けてもよい。
RFIDタグ40の片面のみに保護部材43を設けた場合は、全体の厚みを薄くすることができる。
【0078】
なお、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40は、その長手方向が、タイヤの周方向に対して接線の方向、すなわち
図1〜8の断面図において紙面に直交する方向となるように、タイヤに埋設されている。また、ゴムシート431、432は、タイヤ幅方向に並ぶような態様で、タイヤに埋設される。すなわち、製造工程において、ゴムシート431、432のいずれか一方の一面が、加硫前のタイヤの構成部材、例えばカーカスプライ23に貼り付けられる。
このような態様とすることで、タイヤが変形したときにおいても、RFIDタグ40に応力がかかりにくい。また、製造工程において、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40を取り付ける作業が簡便となる。
【0079】
本実施形態に係るタイヤによれば、上記(1)〜(8)に加えて以下の効果を奏する。
【0080】
(9)本実施形態においては、RFIDタグ40の周辺に、RFIDタグ40の少なくとも一部を覆うゴムシート431、432が設けられている。
例えばタイヤ最大幅付近は、タイヤ変形時において比較的大きく屈曲する部分であるが、このような部分にRFIDタグ40を配置する場合であっても、RFIDタグ40を適切に保護することができる。また、製造工程における作業性が向上する。
【0081】
(10)本実施形態においては、ゴムシート431、432が、サイドウォールゴム30よりも高いモジュラスのゴム、または短繊維フィラー混合ゴムから構成されている。
よって、RFIDタグを適切に保護することができる。
(11)本実施形態においては、ゴムシート431、432が、サイドウォールゴム30またはインナーライナー29よりも高いモジュラスであって、かつカーカスプライ23の被覆ゴムよりも低いモジュラスのゴムから構成されている。
よって、タイヤ内のモジュラスが段階的に変化するため、タイヤが変形した場合において、RFIDタグ40埋設部においてゴム構造体内に過度な応力が発生することを防ぐことができる。
【0082】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態に係るタイヤについて、
図10を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第2、第4実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。
図10Aは、保護部材44によって保護された、RFIDタグ40を示す図である。
図10Aでは、RFIDタグ40は後述するゴムシート441に覆われて隠れている。
図10Bは
図10Aのb−b断面図、
図10Cは
図10Aのc−c断面図である。
【0083】
本実施形態においては、
図5、6に示される第2実施形態と同様、電子部品としてのRFIDタグ40が、カーカスプライ23とインナーライナー29との間に配置されている。
そして、RFIDタグ40は、第4実施形態と同様、2枚のゴムシートにより構成されている保護部材により被覆されている。しかしながら、本実施形態においては、保護部材44を構成する2枚のゴムシートの厚みが異なっている。
具体的には、タイヤ内腔側、すなわちインナーライナー29側のゴムシート441が、タイヤ外表面側、すなわちカーカスプライ23側のゴムシート442よりも厚く形成されている。
【0084】
これにより、インナーライナー29側がより強固に保護されるため、加硫時や使用時において、RFIDタグ40のアンテナ42がインナーライナー29を強く押圧することを防止することができる。
【0085】
なお、本実施形態においては、インナーライナー29側をより強固に保護するために、インナーライナー29側のゴムシート441の厚みを厚く形成しているが、インナーライナー29側をより強固に保護するための、その他の構成を採用することも可能である。
【0086】
例えば、インナーライナー29側のゴムシート441のモジュラスを、カーカスプライ23側のゴムシート442のモジュラスよりも高いモジュラスに設定してもよい。この場合、タイヤの変形時における応力の吸収を考慮すれば、各部材のモジュラスの大きさの関係が、「ゴムシート441」>「ゴムシート442」>「サイドウォールゴム30」となっていることが好ましい。
【0087】
また、ゴムシート441を、短繊維フィラー混合ゴムにより構成してもよい。短繊維フィラーとしては、例えば、アラミド短繊維やセルロース短繊維といった有機短繊維、アルミナ短繊維等のセラミックス短繊維やガラス短繊維といった無機短繊維のような、絶縁性の短繊維を用いることができる。ゴムにこのような短繊維フィラーを混合することにより、ゴムの強度を高めることができる。
また、ゴムシート441として、加硫後の状態のゴムシートを用いてもよい。加硫後の状態のゴムシートは、生ゴムのように塑性変形しないため、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
また、ゴムシート441にポリエステル繊維やポリアミド繊維等の有機繊維層を設けてもよい。これらの場合は、ゴムシート441と442の厚みを同じ厚みとすることも可能である。
【0088】
これらの構成によっても、インナーライナー29側がより強固に保護されているため、加硫時や使用時において、RFIDタグ40のアンテナ42がインナーライナー29を強く押圧することを防止することができる。
【0089】
本実施形態に係るタイヤによれば、上記(1)〜(4)、(7)、(9)〜(11)に加えて以下の効果を奏する。
【0090】
(12)本実施形態においては、保護部材44を構成するゴムシートについて、タイヤ幅方向内側、すなわちインナーライナー29側のゴムシート441を、タイヤ幅方向外側、すなわちカーカスプライ23側のゴムシート442よりも厚く形成している。
これにより、インナーライナー29側がより強固に保護されるため、加硫時や使用時において、RFIDタグ40のアンテナ42がインナーライナー29を強く押圧することを防止することができる。
【0091】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態に係るタイヤ5について、
図11を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第3実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。
【0092】
本実施形態においては、サイドウォールゴム60が、保護部材としての機能を果たしている。具体的には、本実施形態においては、
図7、8に示される第3実施形態と同様、電子部品としてのRFIDタグ40が、カーカスプライ23とサイドウォールゴム60との間に配置されている。そして、本実施形態においては、サイドウォールゴム60として、インナーライナー29よりも高いモジュラスのゴムを用いている。
これにより、サイドウォールゴム60が、RFIDタグ40の保護部材として機能し、RFIDタグ40を保護することができる。
よって、部材を増やすことなく、簡単な構成によりRFIDタグ40を保護することができる。
【0093】
本実施形態に係るタイヤ5によれば、上記(1)〜(4)、(8)に加えて以下の効果を奏する。
【0094】
(13)本実施形態においては、RFIDタグ40が、カーカスプライ23とサイドウォールゴム60との間に配置されており、インナーライナー29よりも高いモジュラスのサイドウォールゴム60が、RFIDタグ40の保護部材として機能する。
よって、部品を増やすことなく、簡単な構成によりRFIDタグ40を保護することができる。
【0095】
なお、本発明のタイヤは、乗用車、ライトトラック、トラック、バス等の各種タイヤとして採用することができるが、特に乗用車用のタイヤとして好適である。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【解決手段】タイヤの周方向に延びる環状のスチールベルト26を有するトレッド12と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出するビードフィラー22を有する一対のビード11と、を備えたタイヤであって、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aと、スチールベルト26のタイヤ幅方向外側端26Aとの間の領域に、RFIDタグ40が埋設されている。